説明

ウイルス感染の予防および処置のための材料および方法

本発明はウイルス感染を予防および処置するための新規かつ好都合な方法を提供する。本明細書において具体的に例示されるのはホルシトシドAおよびジャカラノン、つまり連翹(レンギョウ)などの従来の漢方材料から単離された化合物の治療的使用である。同様に提供されるのは、ウイルス感染を予防および処置するための銀翹散組成物の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月30日付で出願された米国特許仮出願第61/291,073号の恩典を主張するものであり、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ウイルス感染は多くの急性および慢性の致死的疾患に関与する。世界中で約33.4百万人がヒト免疫不全ウイルス(HIV)を抱えて生活しているものと推定される(1)。さらに、推定20億人がB型肝炎ウイルスに感染しており、600,000人が毎年、急性または慢性の感染結果によって死亡している(2)
【0003】
インフルエンザは急性のウイルス感染であり、世界的に最も広く蔓延したウイルス感染のうちの1つである。主なA型インフルエンザの大流行としては、1957年のアジアインフルエンザの大流行(H2N2)、1968年の香港インフルエンザの大流行(H3N2)、1970年のH1N1 (ロシアインフルエンザ)の再出現、1997年および2003年のH5N1鳥インフルエンザ、ならびに2009年4月の豚インフルエンザ(H1N1)のつい最近の発生が挙げられる。2009年11月時点で、世界中の207超の国および地方または地域で、少なくとも8768例の死亡を含む、汎発性インフルエンザH1N1 2009の、検査室で確認された事例が報告されている(3)。さらに、鳥インフルエンザH5N1ウイルスは依然として、健康上の重大な懸念となっている。世界保健機関によれば、H5N1は、報告されている事例の通り60%を超える高い死亡率をもたらす。
【0004】
多大な努力にもかかわらず、有効な抗ウイルス薬の開発は主として、経験によっている。HIVに治療法はない。また、抗ウイルス処置は、慢性肝炎感染を有する一部の患者の状態を改善しうるが、急性肝炎に特異的な処置はない。さらに、季節性A型インフルエンザウイルスのほぼ全ての流行株は、アダマンタンおよびノイラミニダーゼ阻害剤を含めて、FDAに認可された抗ウイルス薬に耐性がある(4,5)
【0005】
過去の研究において、本発明者らは、公知のノイラミニダーゼ阻害剤オセルタミビルに匹敵するレベルの、H5N1、H1N1およびH9N2ノイラミニダーゼの一連の強力な阻害剤を特定した(6)。本発明者らはまた、生物活性誘導の精製技術を用いて、朝鮮人参(Panax ginseng)およびサラシナショウマ(Cimicifuga)種を含む薬草において抗炎症活性に関与する生物活性分子を分析かつ特定した(7, 8)。これらの進歩は印象的であるが、天然源から有用な治療用化合物を単離かつ特定するための努力は、依然として困難で、主として経験によっている。また、ウイルス株は経時的に変化するので、耐性変異の出現が抗ウイルス剤の有効性をさらに弱めてしまう。それゆえ、さらなる新規の抗ウイルス治療用物質の開発が緊急に必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
本発明はウイルス感染を予防および/または処置するための新規かつ好都合な材料および方法を提供する。本明細書において具体的に例示されるのはホルシトシドAおよびジャカラノン、つまり連翹(Fructus forsythiae) (レンギョウ(Lian Qiao))などの従来の漢方材料から単離された化合物の治療的使用である。同様に提供されるのは、ウイルス感染を予防および/または処置するための、薬草配合物、および薬草配合物を含む組成物である。好ましくは、本発明の化合物および組成物は、経口投与のために配合される。
【0007】
一つの態様において、本発明の治療方法は、ウイルス感染を予防および/または処置するために用いることができる。この方法は、そのような処置を必要としている対象に、以下の式を有する、単離された化合物Aまたはそのプロドラッグ、代謝産物もしくは塩を含む組成物の有効量を投与する段階を含む:

(式中
R1〜R17は、独立して、-H、アシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【0008】
別の態様において、この方法は対象に、化合物A (もしくはその塩)の単離プロドラッグ、および/または代謝産物の有効量を投与する段階を含む。化合物Aの例示される代謝産物は化合物Bである。化合物Bの化学構造は以下のように示される:

(式中
R'1〜R'6は、独立して、-H、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【0009】
化合物Aの別の例示される代謝産物は化合物Cである。化合物Cの化学構造は以下のように示される:

(式中
R''1〜R''13は、独立して、-H、アシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【0010】
別の態様において、この方法は、そのような処置を必要としている対象に、以下の式を有する、単離された化合物Dまたはそのプロドラッグ、代謝産物もしくは塩を含む組成物の有効量を投与する段階を含む:

(式中
R1'''〜R2'''は、独立して、-H、アシル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルキル、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドであり、かつ
R3'''〜R4'''は、独立して、-H、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【0011】
本発明は同様に、ウイルス感染の予防および/または処置のための医薬物としての式A〜Dの化合物の使用を提供する。一つの態様において、本発明は、ウイルス感染の予防および/または処置のための医薬物としての、ホルシトシドAおよびジャカラノン、ならびにそのプロドラッグ、代謝産物または塩の使用を提供する。
【0012】
さらなる態様において、この方法は、塩、立体異性体、互変異性体、結晶質、多形体、非結晶質、溶媒和物、水和物、エステル、プロドラッグ、代謝産物およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない形態で、単離された化合物を含んだ組成物を投与する段階を含む。
【0013】
さらなる態様において、本発明は対象に、銀翹散(Yin Qiao San; YQS)組成物、またはその画分の有効量を投与する段階によりウイルス感染を処置、予防または改善するための治療方法を提供する。同様に提供されるのは、ウイルス感染を処置、予防または改善するための医薬物としての、銀翹散組成物またはその画分の使用である。
【0014】
本発明は、本明細書において記述される逆相HPLC法によって分画された、銀翹散組成物の画分をさらに具現する。具体的な態様において、本発明は、銀翹散組成物のメタノール抽出液の1つまたは複数の画分F2〜F5を提供し、そのHPLCクロマトグラフを図12に示す。具体的な態様において、本発明は、銀翹散組成物のメタノール抽出液の画分F2および/またはF3を提供し、そのHPLCクロマトグラフを図12に示す。具体的な態様において、本発明は、銀翹散組成物の画分S11を提供し、そのHPLCクロマトグラフを図14に示す。
【0015】
一つの態様において、本発明の治療方法は、H1N1、H9N2、H3N2、H5N1、H2N2、H7N7、H7N1およびその任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、A型、B型またはC型インフルエンザウイルスによって引き起こされるウイルス感染を予防および/または処置するために用いることができる。
【0016】
さらなる態様において、ウイルス感染を予防および/または処置するための方法は、例えば、ザナミビル、オセルタミビル、ペラミビル、セルタミビルおよびそれらの組み合わせのいずれかより選択される第2の抗ウイルス剤を対象に投与する段階をさらに含み、かつこの第2の抗ウイルス剤は本発明の化合物の投与の前に、本発明の化合物の投与と同時に、または本発明の化合物の投与の後に投与することができる。
【0017】
さらなる態様において、ウイルス感染を予防および/または処置するための方法は、本発明の化合物に加えて、連翹(Fructus forsythiae)、荊芥連翹湯(Herba seu Flos Schizonepetae Tenuifoliae)、牛蒡子(Fructus Arctii Lappae)、淡豆シ(Semen Sojae Preparatum)、淡竹葉(Herba Lophatheri Gracilis)、炙甘草(Radix Glycyrrhizae Uralensis)および乾姜(Radix Platycodi Grandiflori)を含むが、これらに限定されない、従来の漢方材料を対象に投与する段階をさらに含む。
【0018】
さらなる態様において、ウイルス感染を処置するための方法は、対象におけるウイルス感染のレベルを判定する段階をさらに含み、この判定は任意で、複数回行われて継時的な変化をモニタリングしてもよい。
【0019】
別のさらなる態様において、ウイルス感染を処置するための方法は、対象における1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを判定する段階をさらに含み、この判定は任意で、複数回行われて継時的な変化をモニタリングしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】連翹由来のホルシトシドA (化合物A1)およびジャカラノン(化合物D1)を含む生物活性化合物の抽出スキームを示す。連翹を挽いて、還流下10×ミリ-Q水で抽出し、2時間煮沸する。抽出過程を1回繰り返す。毎回、得られた抽出物を集め、混ぜ合わせ、蒸発乾固し、MeOHに再溶解する。バイオアッセイ誘導の単離スキームを用いて、有意な抗ウイルス効果および/またはCOX-2抑制効果を示す画分を、純粋な化合物が得られるまで逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によってさらに精製する。
【図2】ホルシトシドA (化合物A1)の逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)クロマトグラム(A)およびUV吸光度(B)を示す。化合物A1は1 mL/分の流速で10%〜90%のアセトニトリルの勾配溶出を用いた逆相HPLCによって精製される。A: 単一のピークが254、210および280 nmでPhoto-diode Array検出器を用いて検出されることを示す。化合物A1はおよそ6.8分の位置に溶出される。B: 化合物A1のUV吸光度が210、290および330 nmで最大になることを示す。
【図3】ジャカラノン(化合物D1)の逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)クロマトグラム(A)およびUV吸光度(B)を示す。化合物D1は1 mL/分の流速で10%〜90%のアセトニトリルの勾配溶出を用いた逆相HPLCによって精製される。A: 単一のピークが254、210および280 nmでPhoto-diode Array検出器を用いて検出されることを示す。化合物D1はおよそ10.75分の位置に溶出される。B: 化合物D1のUV吸光度が230 nmで最大になることを示す。
【図4】ホルシトシドA (化合物A1)の1H (上部パネル)および13C (下部パネル)化学シフトを示す。化合物A1の構造はBruker 500 MHz DRX NMR分光計により、溶媒としてTMSを含むメタノール-dを用い、1H NMRの場合には500 MHzでおよび13C NMRの場合には125 MHzで操作して、解明される。
【図5】ジャカラノン(化合物D1)の1H (上部パネル)および13C (下部パネル)化学シフトを示す。化合物D1の構造はBruker 500 MHz DRX NMR分光計により、溶媒としてTMSを含むメタノール-dを用い、1H NMRの場合には500 MHzでおよび13C NMRの場合には125 MHzで操作して、解明される。
【図6】ホルシトシドAおよびジャカラノンの化学構造を示す。
【図7】インフルエンザウイルス複製に及ぼすホルシトシドA (化合物A1)またはオセルタミビルの阻害効果を示す。MDCK細胞にインフルエンザウイルス(A) H1N1 (A/HK/54/98)、(B) H1N1-R (A/Vicotria/07159200/07)、(C) H9N2 (A/Quail/HK/G1/97)または(D) H3N2 (A/H3N2/1174/99)を感染させる。ホルシトシドA (化合物A1) (100 ug/ml)とともに48時間のインキュベーションの後、細胞培養上清中のウイルス力価(TCID50)をMDCK細胞における力価測定によって測定する。(E) 細胞にH1N1 (A/HK/54/98)ウイルスを感染させた後に、オセルタミビル(100 μM)またはPBSを対照として細胞に加える。細胞培養上清中のウイルス力価(TCID50)をMDCK細胞における力価測定によって測定する(全ての図は3回の実験からの代表的な結果である)。
【図8】初代ヒト血中マクロファージにおけるインフルエンザウイルス複製に及ぼすホルシトシドA (化合物A1)の阻害効果を示す。初代ヒト血中マクロファージにH1N1 (A/HK/54/98); H9N2 (A/Quail/HK/G1/97); およびH3N2 (A/H3N2/1174/99)を含むヒトインフルエンザウイルスを2のm.o.i.で感染させる。次いで細胞を48時間ホルシトシドA (化合物A1) (100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、細胞培養上清を回収し、ウイルス力価(TCID50)をMDCK細胞における力価測定によって測定する(3回の実験からの代表的な結果)。
【図9】免疫細胞化学(A〜B)およびウエスタンブロット分析(C)によって判定した場合のインフルエンザウイルスに及ぼすホルシトシドA (化合物A1)の阻害効果を示す。(A) MDCK細胞にヒトインフルエンザウイルスH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を0.2のm.o.i.で感染させる。次いで細胞を6または10時間、化合物A1 (100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、細胞を固定する。インフルエンザ核タンパク質およびM1タンパク質をInfluenza Detection Kitで染色する。(B) 感染後6および10時間の時点でウイルスタンパク質を発現している細胞の数をカウントし、ウイルスタンパク質を発現している細胞の割合を計算する。(C) MDCK細胞にヒトインフルエンザウイルスH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を2のm.o.i.で感染させるか、またはモック感染(M)させる。その後、細胞を次に、ホルシトシドA (化合物A1) (100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。感染後2、4、9または24時間の時点でタンパク質を回収する。インフルエンザM1タンパク質の発現をウエスタンブロット分析によって分析する。アクチンをローディング対照として用いる。AおよびC、3回の実験からの代表的な図; B、n=3、P<0.05。
【図10】透過電子顕微鏡法によるウイルス粒子の微細構造検査を示す。MDCK細胞にヒトインフルエンザウイルスH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を2のm.o.i.で感染させる。次いで細胞を18時間ホルシトシドA (化合物A1) (100 μg/ml) (C〜D)またはDMSO (A〜B)とともにインキュベートする。次いで細胞を固定し、透過電子顕微鏡法によって微細構造を調べる。(B)および(D)中の矢印はインフルエンザウイルス粒子を示す。倍率: A、3200×; B、6300×; C、4800×; D、8900×。
【図11】シクロオキシゲナーゼ2 (COX-2)に及ぼすジャカラノン(化合物D1)の阻害効果を示す。(A) 初代ヒト血中マクロファージにH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を2のm.o.i.で感染させる。細胞を次いで3時間、化合物D1 (10 μg/mlもしくは20 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、総RNAを回収し、COX-2 mRNAレベルをTaqMan Gene Expressionアッセイ(n=5)によって調べる。(B) 細胞にH9N2/G1 (AQuail/HK/G1/97)を2のm.o.i.で感染させるか、またはモック感染させる。その後、細胞を48時間、化合物D1 (10 μg/mlまたは20 μg/ml)で処理する。次いで細胞培養上清を回収し、プロスタグランジンE2レベルをProstaglandin E2 EIA Kit (n=4)によって測定する。P<0.05; #P<0.01; ##P<0.005。
【図12】銀翹散(YQS)配合物の逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)クロマトグラムを示す。画分は1 mL/分の流速で10%〜90%のアセトニトリルの勾配溶出を用いた逆相HPLCによって分離される。計5画分を得る。
【図13】ウイルス複製に及ぼすYQSおよびYQS画分の阻害効果を示す。MDCK細胞にH1N1 (A/HK/54/98) (A)またはH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97) (B)を2のm.o.i.で感染させる。次いで細胞を48時間YQS (100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、細胞培養上清を回収し、ウイルス力価(TCID50)をMDCK細胞における力価測定によって測定する。(C) MDCK細胞にH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を2のm.o.i.で感染させる。次いで細胞を48時間YQS画分(F1〜F5) (100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、細胞培養上清を回収し、ウイルス力価(TCID50)をMDCK細胞における力価測定によって測定する。3回(A〜B)または2回(C)の独立した実験からの代表的な図。
【図14】逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって得られたYQSの典型的なクロマトグラムを示す。画分は1 mL/分の流速で10%〜90%のアセトニトリルの勾配溶出を用いた逆相HPLCによって分離される。計13画分を得る。
【図15】YQSおよびYQS画分がインターロイキン(IL)-1βを誘導することを示す。(A) 初代ヒト血中マクロファージにH1N1 (A/HK/54/98)を2のm.o.i.で感染させるか、またはモック感染させる。次いでH1N1感染細胞を3時間YQS (100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、総RNAを回収し、IL-1β mRNAレベルをTaqMan Gene Expressionアッセイによって調べる。(B) 初代ヒト血中マクロファージにH1N1 (A/HK/54/98)を2のm.o.i.で感染させるか、またはモック感染させる。次いでH1N1感染細胞を3時間YQS画分(S1〜S13) (100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、総RNAを回収し、IL-1β mRNAレベルをTaqMan Gene Expressionアッセイによって調べる。3回の実験からの代表的な図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は対象におけるウイルス感染を予防、処置および/または改善するための新規かつ好都合な材料および方法を提供する。本明細書において具体的に例示されるのはホルシトシドAおよびジャカラノン、つまり連翹(レンギョウ)などの従来の漢方材料から単離された化合物の治療的使用である。同様に提供されるのは、ウイルス感染を予防および/または処置するための、薬草配合物、およびその組成物である。好ましくは、本発明の化合物および組成物は、経口投与のために配合される。
【0022】
一つの態様において、この方法は対象に、単離された化合物Aまたはそのプロドラッグ、代謝産物もしくは塩の有効量を投与する段階を含む。化合物Aの化学構造は以下のように示される:

(式中
R1〜R17は、独立して、-H、アシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【0023】
別の態様において、この方法は対象に、化合物A (もしくはその塩)の単離プロドラッグおよび/または代謝産物の有効量を投与する段階を含む。化合物Aの例示される代謝産物は化合物Bである。化合物Bの化学構造は以下のように示される:

(式中
R'1〜R'6は、独立して、-H、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【0024】
化合物Aの別の例示される代謝産物は化合物Cである。化合物Cの化学構造は以下のように示される:

(式中
R''1〜R''13は、独立して、-H、アシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【0025】
別の態様において、この方法は、そのような処置を必要としている対象に、以下の式を有する、単離された化合物Dまたはそのプロドラッグ、代謝産物もしくは塩を含む組成物の有効量を投与する段階を含む:

(式中
R1'''〜R2'''は、独立して、-H、アシル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルキル、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドであり、かつ
R3'''〜R4'''は、独立して、-H、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【0026】
一つの態様において、C-R'''1はエーテル結合またはエステル結合を形成する。別の態様において、R'''3〜R'''4は、独立して、-H、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アルコキシまたはヒドロキシルアルキルである。
【0027】
さらなる態様において、本発明は対象に、化合物A、化合物B、化合物Cおよび化合物D (ならびにそのプロドラッグ、代謝産物および塩)の組み合わせのいずれかの有効量を投与する段階によりウイルス感染を処置、予防または改善するための方法を提供する。
【0028】
本発明は同様に、ウイルス感染の予防および/または処置のための医薬物としての式A〜Dの化合物の使用を含む。一つの態様において、本発明は、ウイルス感染の予防および/または処置のための医薬物としての、ホルシトシドAおよびジャカラノン、ならびにそのプロドラッグ、代謝産物または塩の使用を提供する。
【0029】
「アルキル」は、1〜8個の炭素原子の直鎖飽和一価基または3〜8個の炭素原子の分枝飽和一価基を意味する。アルキルは、直鎖であってよい、1〜4個または1〜3個の炭素原子の炭化水素基を含んでもよい。例としてはメチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、ペンチルなどが挙げられる。
【0030】
「アシル」は-C(O)R基を意味し、ここでRは、例えば、水素、アルキルもしくはシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロまたはアルキルハロである。例としてはホルミル、アセチル、エチルカルボニルなどがさらに挙げられる。
【0031】
「カルボキシル」は-C(O)OH基を意味する。
【0032】
「カルボアルコキシ」は-C(O)R基を意味し、ここでRは、例えば、水素、アルキルもしくはシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロ、またはアルキルハロである。
【0033】
「カルボキサミド」は-C(O)R基を意味し、ここでRは、例えば、-NH2またはアルキルアミノである。
【0034】
「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、例えばブロモおよびクロロを意味する。
【0035】
「ハロアルキル」は、1つまたは複数の、同じまたは異なる、ハロ原子で置換されたアルキル、例えば、-CH2Cl、-CH2Br、-CF3、-CH2CH2Cl、-CH2CCl3などを意味する。
【0036】
「アミノ」は-NH2基を意味する。
【0037】
「アルキルアミノ」は-NHR基または-NR2基を意味し、ここで各Rは、独立して、アルキル基である。例としてはメチルアミノ、(1-メチルエチル)アミノ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジ(1-メチルエチル)アミノなどが挙げられる。
【0038】
「ヒドロキシ」は-OH基を意味する。
【0039】
「ヒドロキシアルキル」は1つまたは複数の、好ましくは1つ、2つまたは3つのヒドロキシ基で置換された、本明細書において定義されるアルキル基を意味する。代表例としてはヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチルエチル、2,3-ジヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシブチルおよび2-(ヒドロキシメチル)-3-ヒドロキシ-プロピル、好ましくは2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシプロピルおよび1-(ヒドロキシメチル) 2-ヒドロキシエチルが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0040】
「アルコキシ」は-ORa基を意味し、ここでRaはアルキル基である。例示的なアルコキシ基としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシなどが挙げられる。
【0041】
本発明は、単離された鏡像異性体化合物を含む組成物を投与する段階によりウイルス感染を予防、処置または改善するための方法をさらに提供する。本発明の化合物の単離された鏡像異性体は互いを実質的に含まない(すなわち、鏡像異性体過剰にある)。換言すれば、化合物の「R」型は化合物の「S」型を実質的に含まず、すなわち、「S」型の鏡像異性体過剰にある。逆に、化合物の「S」型は化合物の「R」型を実質的に含まず、すなわち、「R」型の鏡像異性体過剰にある。本発明の一つの態様において、単離された鏡像異性体化合物は少なくとも約80%鏡像異性体過剰にある。好ましい態様において、化合物は少なくとも約90%鏡像異性体過剰にある。より好ましい態様において、化合物は少なくとも約95%鏡像異性体過剰にある。さらにより好ましい態様において、化合物は少なくとも約97.5%鏡像異性体過剰にある。最も好ましい態様において、化合物は少なくとも約99%鏡像異性体過剰にある。
【0042】
本発明は、塩、立体異性体、互変異性体、結晶質、多形体、非結晶質、溶媒和物、水和物、エステル、プロドラッグ、代謝産物およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない形態で、単離された化合物を含んだ組成物を投与する段階によりウイルス感染を予防、処置または改善するための方法をさらに提供する。
【0043】
本明細書において用いられる「プロドラッグ」という用語は、本発明の化合物の代謝前駆体または薬学的に許容されるその形態をいう。一般に、プロドラッグは化合物の官能性誘導体を含み、これは対象への投与時に不活性でありうるが、活性な代謝化合物へとインビボで容易に変換可能である。
【0044】
適当なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、「Design of Prodrugs」, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記述されている。好ましくは、本発明のプロドラッグは、溶解性、生物学的利用性および安定性を含むが、これらに限定されない、本発明の化合物の望ましい質を増強する。ゆえに、本発明の方法において利用される化合物は、望ましいなら、プロドラッグ形態で送達されうる。本発明において利用される化合物のプロドラッグは、日常的な操作でまたはインビボで、親化合物へと修飾が切断されるように、化合物に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。
【0045】
「代謝産物」という用語は、対象における本発明の化合物のインビボでの代謝を通じて産生される、例えば、活性な中間体または最終産物を含めて、薬理学的に活性な産物をいう。代謝産物は、例えば、酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド、エステル化、脱エステル化、酵素的切断などを含むが、これらに限定されない、対象において投与された化合物の同化過程および/または異化過程から生じうる。
【0046】
代謝産物は、典型的には、本発明の化合物の放射性標識(例えば、14Cまたは3H)同位体を調製し、それを、ラット、マウス、モルモット、サルのような動物に、またはヒトに、検出可能な(例えば、約0.5 mg/kg超の)用量で非経口的に投与し、代謝作用に十分な時間、代謝作用を行わせ(典型的には約30秒から約30時間)、その変換産物を尿、血液または他の生体サンプルから単離することにより特定される。これらの産物は、標識されているので、容易に単離される(それ以外は、代謝産物中に残存しているエピトープに結合できる抗体の使用によって単離される)。代謝産物の構造は従来のやり方で、例えば、MS、LC/MSまたはNMR分析によって決定することができる。一般に、代謝産物の分析は、薬物代謝研究の当業者に周知の技法によって行われる。
【0047】
本明細書において用いられる「対象」という用語は、本発明による組成物を用いた処置が提供されうる、霊長類のような哺乳類を含む、生物を記述する。開示される処置方法から恩恵を受けうる哺乳類種は、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル、ならびにイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、マウス、ラット、モルモットおよびハムスターのような飼い馴らされた動物を含むが、これらに限定されることはない。
【0048】
本明細書において用いられる「抗ウイルス」という用語は、ウイルスの増殖、生存、複製、機能および/または播種を予防すること、阻害すること、抑制すること、低減すること、損なうこと、および/または妨害することを含むが、これらに限定されることはない。
【0049】
一つの態様において、本発明は、本発明の化合物の有効量を投与する段階によりウイルス感染を処置、予防または改善するための治療方法を提供する。
【0050】
具体的な態様において、本発明は対象に、ホルシトシドA (化合物A1)またはそのプロドラッグ、代謝産物もしくは塩の有効量を投与する段階によりウイルス感染を処置、予防または改善するための治療方法を提供する。ホルシトシドA (化合物A1)の化学構造は以下である。

【0051】
別の具体的な態様において、本発明は対象に、ジャカラノン(化合物D1)またはそのプロドラッグ、代謝産物もしくは塩の有効量を投与する段階によりウイルス感染を処置、予防および/または改善するための治療方法を提供する。ジャカラノン(化合物D1)の化学構造は以下である。

【0052】
ホルシトシドA (化合物A1)およびジャカラノン(化合物D1)は、本明細書において記述される単離およびバイオアッセイ誘導の手順を用いて連翹および関連する植物から単離することができる。
【0053】
別の具体的な態様において、本発明は対象に、化合物A1 (またはその塩)のプロドラッグおよび/または代謝産物の有効量を投与する段階によりウイルス感染を処置、予防または改善するための治療方法を提供する。化合物A1の例示される代謝産物は化合物B1である。化合物B1の化学構造は以下である。

【0054】
化合物A1の別の例示される代謝産物は化合物C1である。化合物C1の化学構造は以下である。

【0055】
さらなる態様において、本発明は対象に、ホルシトシドA (化合物A1)、化合物B1、化合物C1および化合物D1 (ならびにそのプロドラッグ、代謝産物または塩)の組み合わせのいずれかの有効量を投与する段階によりウイルス感染を処置、予防または改善するための治療方法を提供する。
【0056】
本発明は、ウイルス感染を予防および/または処置するための、薬草配合物、および薬草配合物を含む組成物(改良された銀翹散配合物)をさらに提供する。
【0057】
一つの態様において、組成物は、括弧内に示した通りの相対重量を有する薬草: レンギョウ(Lian Qiao)/連翹(Fructus forsythiae suspensae) (25%〜35%)、スイカズラ(Jin Yin Hua)/金銀花(Flos Lonicerae Japonicae) (25%〜35%)、ゴボウシ(Niu Bang Zi)/牛蒡子(Fructus Arctii Lappae) (1%〜7%または15%〜25%)、カンキョウ(Jie Ceng)/(乾姜(Radix Platycodi Grandiflori) (1%〜7%)、ハッカ(Bo He)/薄荷(Herba menthae haplocalycis) (1%〜7%)、タントウシ(Dan Dou Chi)/淡豆シ(Semen Sojae Preparatum) (3%〜7%)、シャカンゾウ(Gan Cao)/炙甘草(Radix Glycyrrhizae Uralensis) (8%〜20%)、ササクサ(Dan Zhu Ye)/淡竹葉(Herba Lophatheri Gracilis) (1%〜5%)およびケイガイ(Jing Jie) (1%〜5%)からなる薬草配合物を含む。
【0058】
一つの態様において、組成物は、括弧内に示した通りの相対重量を有する薬草:
レンギョウ(Lian Qiao)/連翹(Fructus forsythiae suspensae) (25%〜40%)、カズラ(Jin Yin Hua)/金銀花(Flos Lonicerae Japonicae) (25%〜40%)、ゴボウシ(Niu Bang Zi)/牛蒡子(Fructus Arctii Lappae) (15%〜25%)およびシャカンゾウ(Gan Cao)/炙甘草(Radix Glycyrrhizae Uralensis) (10%〜20%)からなる薬草配合物を含み、かつ組成物は、以下の薬草: ケイガイ(Jing Jie)、ハッカ(Bo He)/薄荷(Herba menthae haplocalycis); タントウシ(Dan Dou Chi)/淡豆シ(Semen Sojae Preparatum)、ササクサ(Dan Zhu Ye)/淡竹葉(Herba Lophatheri Gracilis)およびカンキョウ(Jie Ceng)/(乾姜(Radix Platycodi Grandiflori)のいずれも含まない。
【0059】
好ましい態様において、組成物は、表1に示した通りのYQS-F9の薬草配合物を含む。ある種の好ましい態様において、組成物は、表1に示した通りのYQS-F5、YQS-F6AまたはYQS-F1から選択される薬草配合物を含む。ある種の態様において、組成物は、表1に示した通りの1つまたは複数の薬草配合物を含む。一つの態様において、組成物は、表1に示した通りのYQS-従来配合物を含まない。
【0060】
表1は、本願発明の薬剤処方の態様について示す。
【0061】
(表1)銀翹散(Ying Qiao San; YQS)中の薬草成分の百分率分布

従来のYQS煎薬の総乾燥重量は66 gである。
【0062】
有利には、本発明の組成物は驚くほどに優れた抗ウイルス効果を示す。具体的には、本発明の組成物は、ウイルス感染を有する対象においてIL-1βレベルを増強する。
【0063】
一つの態様において、本発明は対象に、本発明の組成物、またはその画分の有効量を投与する段階によりウイルス感染を処置、予防または改善するための治療方法を提供する。同様に提供されるのは、ウイルス感染を処置、予防または改善するための医薬物としての、本発明の組成物、またはその画分の使用である。
【0064】
さらなる態様において、本発明は対象に、銀翹散(YQS)組成物(表1に示した通りのYQS-従来配合物)、またはその画分の有効量を投与する段階によりウイルス感染を処置、予防または改善するための治療方法を提供する。同様に提供されるのは、ウイルス感染を処置、予防または改善するための医薬物としての、銀翹散組成物またはその画分の使用である。
【0065】
銀翹散組成物は、薄荷(Herba menthae haplocalycis)、荊芥連翹湯(Herba seu Flos Schizonepetae Tenuifoliae)、連翹(Fructus forsythiae suspensae)、牛蒡子(Fructus Arctii Lappae)、淡豆シ(Semen Sojae Preparatum)、淡竹葉(Herba Lophatheri Gracilis)、炙甘草(Radix Glycyrrhizae Uralensis)、金銀花(Flos Lonicerae Japonicae)および乾姜(Radix Platycodi Grandiflori)からなる薬草混合物である。
【0066】
具体的な態様において、銀翹散組成物は、括弧内に示した通りの相対重量を有する薬草: 薄荷(Herba menthae haplocalycis) (約60)、荊芥連翹湯(Herba seu Flos Schizonepetae Tenuifoliae) (約40)、連翹(Fructus forsythiae suspensae) (約100)、牛蒡子(Fructus Arctii Lappae) (約60)、淡豆シ(Semen Sojae Preparatum) (約50)、淡竹葉(Herba Lophatheri Gracilis) (約40)、炙甘草(Radix Glycyrrhizae Uralensis) (約50)、金銀花(Flos Lonicerae Japonicae) (約100)および乾姜(Radix Platycodi Grandiflori) (約60)からなる。
【0067】
一つの態様において、本発明は、1 mL/分の流速で10%アセトニトリル(CH3CN)〜90% CH3CNの勾配溶出を用いた逆相HPLC (Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μm, 250×4.6 mm ID)によって分画された、銀翹散組成物の画分を提供する。210、254および280 nmに設定されたAgilent 1200シリーズの高速走査Photo-diode Array検出器を用いてピーク検出を達成する。
【0068】
具体的な態様において、本発明は、銀翹散組成物の1つまたは複数の画分F2〜F5を提供し、そのHPLCクロマトグラフを図12に示す。具体的な態様において、本発明は、銀翹散組成物の画分F2および/またはF3を提供し、そのHPLCクロマトグラフを図12に示す。具体的な態様において、本発明は、銀翹散組成物の画分S11を提供し、そのHPLCクロマトグラフを図14に示す。
【0069】
本明細書において用いられる「処置する」という用語は、病状の進行、重症度および/または範囲、寛解後の疾患の再発または戻しの機会を低減すること、抑制すること、阻害すること、軽減すること、またはそれらに影響を与えることを含むが、これらに限定されることはない。一つの態様において、処置することは、感染と関連する症状の重症度に直接影響を与えること、もしくは感染と関連する症状の重症度を治癒すること、抑制すること、阻害すること、低減すること、感染と関連する症状の発症を遅らせること、感染と関連する症状を低減すること、またはそれらの組み合わせを含むことができる。別の態様において、処置することは、進行を遅らせること、寛解を促進させること、寛解を誘導すること、寛解を増強すること、回復を早めること、代替的な治療用物質の効力を増大すること、もしくは代替的な治療用物質に対する耐性を低下させること、またはそれらの組み合わせを含む。
【0070】
本明細書において用いられる「抑制する」または「阻害する」という用語は、症状の重症度を低減すること、急性発症の重症度を低減すること、症状の数を低減すること、疾患に関連する症状の発生率を低減すること、症状の潜伏性を低減すること、症状を改善すること、二次的症状を低減すること、二次感染を低減すること、患者生存を引き延ばすこと、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されることはない。
【0071】
本明細書において用いられる「予防する」という用語は、症状の発症を遅らせること、疾患の再発を防ぐこと、再発症状発現の数もしくは頻度を低下させること、症候性の症状発現の間の潜伏期間を増加させること、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されることはない。
【0072】
本明細書において用いられる「有効量」という用語は、ウイルス感染を予防、改善または処置できる量をいう。「有効量」という用語は同様に、ウイルス感染を予防、改善または処置できる量、ならびに/あるいはCOX-2および/またはPGE2のレベルを阻害または低減できる量を含む。ある種の態様において、有効量はウイルス力価(例えば、TCID50)の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の減少を可能にする。ウイルス力価の減少は、例えば、異なる時点で対象から得た生体サンプルから決定することができる。
【0073】
有利には、本発明の化合物および組成物は、ウイルス複製を抑止、阻害、低減および/または遅延できる。具体的な態様において、MDCK細胞におけるインフルエンザウイルスH1N1 (A/HK/54/98)、H1N1 (A/Vicotria/07159200/07)、H9N2 (A/Quail/HK/G1/97)およびH3N2 (A/H3N2/1174/99)の複製は、ホルシトシドA (化合物A1)により、それぞれ、約15倍、3倍、24倍および12倍抑制される。
【0074】
さらに、本発明の化合物および組成物は、ウイルス感染中の免疫反応を調節するのに有用である。例えば、本発明の化合物および組成物は、IL-1βレベルを増強する。本発明の化合物および組成物は同様に、特にウイルス感染の間に、COX-2およびプロスタグランジンE2 (PGE-2)活性を阻害することができる。別の態様において、新規かつ好都合な治療方法は、化合物、例えばアダマンタンおよびノイラミニダーゼ阻害剤、ザナミビル、オセルタミビル、ペラミビルおよびセルタミビル、インターフェロン、ヌクレオシド、siRNAまたはそれらの組み合わせのいずれかを含むが、これらに限定されない、既存の抗ウイルス療法に耐性がある対象のウイルス感染を予防、処置または改善することができる。
【0075】
本発明の化合物、薬学的組成物および治療方法は、A型インフルエンザ、B型インフルエンザまたはC型インフルエンザの亜類型のいずれかを含むが、これらに限定されない、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染を予防、処置または改善するのに有用である。
【0076】
本明細書において用いられる「インフルエンザウイルス」という用語は、動物もしくはヒト対象において疾患を引き起こしうる、または実験分析に対しての興味深い候補であるインフルエンザウイルスの任意の株を含む。インフルエンザウイルスはFields, B., et al., Fields' Virology, 4th ed., Philadelphia: Lippincott Williams and Wilkins; ISBN: 0781718325, 2001に記述されている。
【0077】
本明細書において用いられる「A型インフルエンザウイルス」は、動物もしくはヒト対象において疾患を引き起こしうる、または実験分析に対しての興味深い候補であるA型インフルエンザウイルスの任意の株を包含する。Macken, C., Lu, H., Goodman, J., & Boykin, L., 「The value of a database in surveillance and vaccine selection.」 in Options for the Control of Influenza IV. A.D.M.E. Osterhaus, N. Cox & A. W. Hampson (Eds.) Amsterdam: Elsevier Science, 2001, 103-106)に記述されているように、多数のA型インフルエンザ分離株が部分的にまたは完全に配列決定されている。Macken, C., Lu, H., Goodman, J., & Boykin, L., 「The value of a database in surveillance and vaccine selection.」 in Options for the Control of Influenza IV. A.D.M.E. Osterhaus, N. Cox & A. W. Hampson (Eds.) Amsterdam: Elsevier Science, 2001, 103-106)を参照されたい。このデータベースにはまた、B型およびC型インフルエンザゲノムセグメントに対する完全な配列が含まれる。
【0078】
インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科の、エンベロープを有するマイナス鎖RNAウイルスである。インフルエンザウイルスはA型、B型およびC型インフルエンザに分類され、そのうちA型インフルエンザは最も病原性が高く、動物の種類を用いて遺伝子再集合を起こしうる唯一のタイプであると考えられている。A型、B型およびC型インフルエンザは、その核タンパク質およびマトリックスタンパク質の差異によって識別することができる。以下にさらに論じられるように、A型インフルエンザのサブタイプは赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子における変異によって定義され、通常は、対応するタンパク質に結合する抗体によって識別される。
【0079】
A型インフルエンザウイルスゲノムは、8つのRNAセグメントに区分された10個の遺伝子からなる。これらの遺伝子は10種のタンパク質、すなわち、エンベロープの糖タンパク質である赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA); マトリックスタンパク質(M1); 核タンパク質(NP); 本明細書ではポリメラーゼまたはポリメラーゼ複合体ともいわれるRNA依存性RNA転写酵素の成分である3つのポリメラーゼ(PB1、PB2およびPA); イオンチャネルタンパク質(M2)、ならびに非構造タンパク質(NS1およびNS2)をコードする。B型インフルエンザウイルスゲノムの構成はA型インフルエンザのそれに非常に似ているが、C型インフルエンザウイルスゲノムは7つのRNAセグメントを含み、NA遺伝子を欠いている。
【0080】
A型インフルエンザウイルスの分類は、赤血球凝集素遺伝子およびノイラミニダーゼ遺伝子に基づく。潜在的な赤血球凝集素およびノイラミニダーゼ遺伝子は、当技術分野において公知であるように、UniProtKB/Swiss-Prot Release 57.5 (07-Jul-2009)またはUniProtKB/TrEMBL Release 40.5 (07-Jul-2009)を用いて決定することができる。世界保健機構(WHO)の命名法では、各ウイルス株を、起原となった動物宿主(ヒト以外であれば特定)、地理的な起原、株番号、分離された年、ならびにHAおよびNAの抗原型の記述によって定義する。例えば、ヒトでの流行はH1、H2およびH3型HAならびにN1およびN2型NAを有するウイルスによって引き起こされてきた。例えば、H5N1/97「鳥インフルエンザ」事件は、最初に確認されたヒトへの鳥類インフルエンザウイルスの直接感染であり、重度のウイルス性肺炎を伴う重篤な感染および30%超(>30%)の死亡率をもたらした(9)。他のA型インフルエンザの流行としては、1957年のアジアインフルエンザの大流行(H2N2)、1968年の香港インフルエンザの大流行(H3N2)、1970年のH1N1 (ロシアインフルエンザ)の再出現、および2009年4月のつい最近の豚インフルエンザH1N1が挙げられる。
【0081】
一つの態様において、対象の化合物、薬学的組成物および治療方法は、H1N1、H1N2、H1N3、H1N4、H1N5、H1N6、H1N7、H1N8、H1N9、H2N1、H2N2、H2N3、H2N4、H2N5、H2N6、H2N7、H2N8、H2N9、H3N1、H3N2、H3N3、H3N4、H3N5、H3N6、H3N7、H3N8、H3N9、H4N1、H5N2、H5N3、H5N4、H5N5、H5N6、H5N7、H5N8、H5N9、H6N1、H6N2、H6N3、H6N4、H6N5、H6N6、H6N7、H6N8、H6N9、H7N1、H7N2、H7N3、H7N4、H7N5、H7N6、H7N7、H7N8、H7N9、H8N1、H8N2、H8N3、H8N4、H8N5、H8N6、H8N7、H8N8、H8N9、H9N1、H9N2、H9N3、H9N4、H9N5、H9N6、H9N7、H9N8、H9N9、H10N1、H10N2、H10N3、H10N4、H10N5、H10N6、H10N7、H10N8、H10N9、H11N1、H11N2、H11N3、H11N4、H11N5、H11N6、H11N7、H11N8、H11N9、H12N1、H12N2、H12N3、H12N4、H12N5、H12N6、H12N7、H12N8、H12N9、H13N1、H13N2、H13N3、H13N4、H13N5、H13N6、H13N7、H13N8、H13N9、H14N1、H14N2、H14N3、H14N4、H14N5、H14N6、H14N7、H14N8、H14N9、H15N1、H15N2、H15N3、H15N4、H15N5、H15N6、H1N7、H15N8およびH15N9の株のいずれかを含むが、これらに限定されない、A型インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染を予防、処置または改善するのに有用である。
【0082】
具体的な態様において、対象の化合物、薬学的組成物および治療方法は、H1N1、H9N2、H3N2、H5N1、H2N2、H7N7およびH7N1の株のいずれかを含むが、これらに限定されない、A型インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染を予防、処置または改善するのに有用である。
【0083】
別の具体的な態様において、対象の化合物、薬学的組成物および治療方法は、H1N1 (A/HK/54/98、オセルタミビル感受性株)、H1N1 (A/Vicotria/07159200/07、オセルタミビル耐性株)、H9N2 (A/Quail/HK G1/97)、H3N2 (A/H3N2/1174/99)、H5N1 (A/H5N1/97)、H1N1 (A/54/98)、H9N2/G1およびH6N1 (A/Teal/HK/W312/97)を含むが、これらに限定されない、A型インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染を予防、処置または改善するのに有用である。
【0084】
別の具体的な態様において、対象の化合物、薬学的組成物および治療方法は、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、HIVウイルス; A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、F型肝炎ウイルスおよびG型肝炎ウイルスを含む肝炎ウイルス: 癌ウイルス; ヒト乳頭腫ウイルス(HPV); ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV-1); ウシ白血病ウイルス(BLV); エプスタイン・バー・ウイルス; 1型単純ヘルペスウイルス; 2型単純ヘルペスウイルス; コロナウイルス; ならびにポリオウイルスを含むが、これらに限定されない、ウイルスによって引き起こされる感染を予防、処置または改善するのに有用である。
【0085】
一つの態様において、対象の化合物、薬学的組成物および治療方法は、水痘帯状ヘルペス(水痘または帯状疱疹(herpes zoster)としても公知)、単純ヘルペス、サイトメガロウイルスおよび単純ヘルペスウイルス-8 (AIDS関連カポジ肉腫ウイルスとしても公知)を含むが、これらに限定されない、ウイルスによって引き起こされる感染を予防、処置または改善するのに有用である。具体的な態様において、本発明は、帯状疱疹(shingles)として一般に知られている、帯状疱疹(herpes zoster)再活性化と関連する神経痛または神経衰弱症を処置するために用いられる。別の具体的な態様において、本発明は、ウイルス感染によって引き起こされる慢性疲労症候群を処置するために用いられる。
【0086】
当技術分野において公知であるように、遺伝的変異はA型インフルエンザのようなウイルスにおける2つの主要な機構によって生じる。遺伝的浮動は、宿主免疫反応からの選択圧のために抗原的に重要な位置で起こることが多い、点突然変異、およびあるサブタイプの全ウイルスゲノムセグメントの別のものによる置換を伴う、遺伝的変化によって起こる。さらに、ヒト、ブタ、トリ、ウマ、水生哺乳類などを含む多くの異なるタイプの動物種がウイルスに感染しうる。ウイルス変種によって引き起こされる感染の予防、処置または改善に有用な治療方法は、本発明の態様である。
【0087】
さらに、対象の化合物、薬学的組成物および治療方法は、細菌、真菌、寄生微生物、RNA、DNA、レトロウイルスベクター、腫瘍/発癌ウイルス、プリオン、原生動物、環境毒素、および感染性病原体の組み合わせを含むが、これらに限定されない、病原体によって引き起こされる感染を予防、処置または改善するのに有用である。
【0088】
一つの態様において、対象の化合物、薬学的組成物および治療方法は、対象における発熱を処置または改善するのに有用である。
【0089】
一つの態様において、ウイルス感染を処置または改善するための対象の方法は、
(i) そのような処置を必要としている対象に、
a) 化合物A

b) 化合物B

c) 化合物C

d) 化合物D

(式中
R1〜R17, R'1〜R'6およびR''1〜R''13が、独立して、-H、アシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドであり;
R1'''〜R2'''が、独立して、-H、アシル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルキル、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドであり、かつ
R3'''〜R4'''が、独立して、-H、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである);
e) これらの化合物のプロドラッグ、代謝産物および/または塩; ならびに
f) それらの任意の組み合わせ
からなる群より選択される単離された化合物の有効量を投与する段階;
(ii) 対象における1種または複数種のウイルスの存在および/またはレベルを判定する段階であって、該判定は任意で、複数回行われて継時的な変化をモニタリングしてもよい、前記段階; ならびに/あるいは任意で、
(iii) 対象における1つまたは複数のバイオマーカーの存在および/またはレベルを判定する段階であって、該判定は任意で、複数回行われて継時的な変化をモニタリングしてもよい、前記段階
を含む。
【0090】
1種類のウイルスまたは複数種類のウイルスの存在および/またはレベルを患者のような、関心対象の対象の評価の目的で得た生体液のサンプルから判定することができる。ウイルスの存在および/またはレベルは血液、組織、血清、血漿、尿、唾液および涙液のような生体サンプルにおいて測定することができる。一つの態様において、サンプルは血液サンプルである。別の態様において、サンプルは尿サンプルである。別の態様において、サンプルは唾液サンプルである。別の態様において、サンプルは体液サンプルである。
【0091】
1種類のウイルスまたは複数種類のウイルスの存在および/またはレベルは、当技術分野において公知であるように、例えば、力価測定、ウイルス力価、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロットおよび免疫学的アッセイのような、方法で判定することができる。
【0092】
ウイルス感染により、宿主細胞において劇的な変化が急速に誘導される。ウイルス感染によって引き起こされるさまざまな結果のなかで、共通の特徴は、アポトーシス死から自食作用への病原体に対する細胞反応の変化である(10)。自食作用状態への切り替えは、ウイルス感染ヒトマクロファージにおける炎症性サイトカインの誘導と関連する(10)。例えば、コロナウイルスおよびポリオウイルスは、ウイルスの生存および複製に有利な、宿主細胞における自食作用の過程を誘導することができる。
【0093】
インフルエンザウイルス感染ヒトマクロファージは、アポトーシスの開始の遅延ならびにさまざまな炎症性サイトカインおよび関連分子の過剰誘導を示す。例えば、H5N1/97ウイルスは分化した初代ヒト血中マクロファージにおいて高レベルの炎症性サイトカインを誘導することが分かっている(11)。このサイトカイン調節異常は疾患の発病および重症度の一因となる(12〜13)。さらに、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)であるp38Kも、H5N1感染マクロファージにおいてTNF-αの過剰誘導に重要な役割を果たす(14)。H5N1およびH9N2/G1感染のようなインフルエンザも、ヒト血中マクロファージにおいてIFN-βおよびIFN-α(IFNA1、2および8のようなIFN-αサブタイプを含む)の過剰誘導を誘発する。さらに、インターフェロン調節因子3 (IRF3)は、H5N1ウイルスに感染したヒトマクロファージにおいてIFN-β、IFN-λ1およびTNF-αを含むサイトカインの過剰誘導に重要な役割を果たす(15)
【0094】
宿主細胞における炎症性サイトカインの誘導と関連する、アポトーシス死から自食作用状態への細胞反応の切り替えは、リステリアおよびマイコバクテリウムのような細胞内微生物によって引き起こされる感染を含む、細菌感染、真菌感染および微生物感染のような他の病原性感染においても見られる。
【0095】
本出願の化合物は感染中のサイトカインおよびサイトカイン関連分子の調節を調節または補助することにより有用な免疫調節性を有する。また、これらのサイトカインおよび関連分子は、感染の状態および進行の重症度、治療方法、投与量、投与経路の妥当性、ならびに/または他の薬剤(pharmaceutical agent)の投与の必要性の判定のためなどの、バイオマーカーとして役立ちうる。
【0096】
バイオマーカーは、TNF-α; インターロイキン-1ベータ(IL-1β)、COX-2、プロスタグランジン(例えば、PEG2)、インターフェロン-ベータ(IFN-β)、IFNA1、2および8などのIFN-αサブタイプを含むインターフェロン-アルファ(IFN-α)、ならびにインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)のようなインターフェロン; p38K; IRF3; インターロイキン-1 (IL-1)、インターロイキン-2 (IL-2)、インターロイキン-3 (IL-3)、インターロイキン-4 (IL-4)、インターロイキン-5 (IL-5)、インターロイキン-6 (IL-6)、インターロイキン-7 (IL-7)、インターロイキン-8 (IL-8)、インターロイキン-9 (IL-9)、インターロイキン-10 (IL-10)、インターロイキン-11 (IL-11)、インターロイキン-12 (IL-12)、インターロイキン-13 (IL-13)、インターロイキン-14 (IL-14)、インターロイキン-15 (IL-15)、インターロイキン-16 (IL-16)、インターロイキン-17 (IL-17)、インターロイキン-18 (IL-18)、インターロイキン-19 (IL-19)、インターロイキン-20 (IL-20)、インターロイキン-21 (IL-21)、インターロイキン-22 (IL-22)、インターロイキン-23 (IL-23)、インターロイキン-24 (IL-24)、インターロイキン-25 (IL-25)、インターロイキン-26 (IL-26)、インターロイキン-27 (IL-27)、インターロイキン-28 (IL-28)、インターロイキン-29 (IL-29)、インターロイキン-30 (IL-30)、インターロイキン-31 (IL-31)、インターロイキン-32 (IL-32)、インターロイキン-33 (IL-33)、インターロイキン-34 (IL-34)、インターロイキン-35 (IL-35)のようなインターロイキンファミリー; インターロイキン受容体ファミリー; マクロファージ炎症性タンパク質2 (MIP-2)およびマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)のようなマクロファージ炎症性タンパク質ファミリー; マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF); 単球走化性タンパク質-1 (MCP-1); ならびにIgA、IgG、IgM、IgDおよびIgEのような免疫グロブリンを含むが、これらに限定されることはない。
【0097】
免疫グロブリンはIgG、IgM、IgD、IgE、IgAならびに、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2のようなサブタイプを含む。それらは、全抗体から消化されたか、または他の手段によって産生されたかの、単量体または多量体の形態の分子をさらに含む。
【0098】
さらなる具体的な態様において、本発明の化合物によって調節されるサイトカインおよび関連分子は、TNF-α、IFN-β、サブタイプ1、2および8を含むIFN-α、IFN-γ、p38K、IRF3、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-14、IL-17、IL-18、1L-23、IL-24、IL-25、IL27、IL-32、G-CSF、M-CSF、MCP-1、MIP-2、MIP-1α、IgA、IgG、IgM、IgDならびにIgEからなる群より選択される。
【0099】
バイオマーカーの存在および/またはレベルを患者のような、関心対象の対象から得た生体液のサンプルから判定することができる。ウイルスの存在および/またはレベルは血液、組織、血清、血漿、尿、唾液および涙液のようなサンプルにおいて測定することができる。一つの態様において、サンプルは血液サンプルである。別の態様において、サンプルは尿サンプルである。別の態様において、サンプルは唾液サンプルである。別の態様において、サンプルは体液サンプルである。
【0100】
さらなる態様において、バイオマーカーのレベルは、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫学的アッセイ、マイクロアレイおよびラジオイムノアッセイなどの、定量的な免疫学的検出法によって判定することができる。
【0101】
さらに、複数のマーカーを測定することができる。さらに、複数のマーカーの分析が別々にまたは同時に行われてもよい。対象由来の複数サンプルの効率的な処理のために、いくつかのマーカーを1回の試験のなかに組み合わせてもよい。
【0102】
一つの態様において、本発明は、単離された化合物を投与する段階による治療方法を提供する。本明細書において用いられる場合、「単離(された)」は、本来存在しうる任意の環境から取り除かれた化合物をいう。例えば、単離されたホルシトシドAは連翹に存在するときのホルシトシドA化合物をいうものではない。好ましい態様において、本発明の化合物は少なくとも75%純粋、好ましくは少なくとも90%純粋であり、より好ましくは95%超純粋であり、最も好ましくは99%超純粋(実質的に純粋)である。
【0103】
一つの具体的な態様において、本発明の治療用組成物は化合物A、B、C、そのプロドラッグ、代謝産物または塩、およびそれらの任意の組み合わせを、他のホルシトシド化合物の非存在下において含む。
【0104】
さらなる具体的な態様において、本発明の治療用組成物は化合物A1 (ホルシトシドA)、B1、C1、D1、そのプロドラッグ、代謝産物または塩、およびそれらの任意の組み合わせを、他のホルシトシド化合物の非存在下において含む。
【0105】
本発明は同様に、薬学的に許容される担体と組み合わせることができる形態で治療用組成物または薬学的組成物を投与する段階による治療方法を提供する。これに関連して、化合物は、例えば、単離されても、または実質的に純粋でもよい。「担体」という用語は、化合物がともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤または媒体をいう。そのような薬学的担体は水ならびに鉱油のような石油、落花生油、ダイズ油およびゴマ油などの植物油、動物油または合成由来の油のものを含む、油のような滅菌液であってよい。生理食塩溶液ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液を、特に注射可能な溶液のための、液体担体として利用することもできる。
【0106】
適当な投与方法は、経口投与、吸入投与または非経口投与、例えば静脈内の、皮下の、局所の、経皮の、皮内の、経粘膜の、腹腔内の、筋肉内の、嚢内の、眼窩内の、心臓内の、経気管の、皮下の、表皮下の、関節内の、被膜下の、くも膜下の、髄腔内の、硬膜外のおよび胸骨内などの注射、注入およびエレクトロポレーション、ならびに対象に(一時的にまたは永続的に)挿入される任意の医療装置または物体の成分としての同時投与を含むが、これらに限定されることはない。
【0107】
一つの態様において、対象の方法は、アダマンタンおよびノイラミニダーゼ阻害剤、ザナミビル、オセルタミビル、ペラミビルおよびセルタミビル; インターフェロン; ヌクレオシド; siRNA; またはそれらの組み合わせのいずれかのような化合物を含むが、これらに限定されない、第2の抗ウイルス剤を対象に投与する段階をさらに含み、かつこの第2の抗ウイルス剤は本発明の化合物または薬学的組成物の前に、本発明の化合物または薬学的組成物の後に、または本発明の化合物または薬学的組成物と同時に投与することができる。
【0108】
具体的な態様において、対象の方法は、ザナミビル、オセルタミビル、ペラミビル、セルタミビルおよびそれらの組み合わせのいずれかからなる群より選択される第2の抗ウイルス剤を対象に投与する段階をさらに含み、この第2の抗ウイルス剤は本発明の化合物または薬学的組成物の前に、本発明の化合物または薬学的組成物の後に、または本発明の化合物または薬学的組成物と同時に投与することができる。
【0109】
別の具体的な態様において、対象の化合物または薬学的組成物は、任意で、ワクチンとしての少なくとも1つの第2の抗ウイルス剤とともに投与されてもよい; または少なくとも1つの第2の抗ウイルス剤の前に、少なくとも1つの第2の抗ウイルス剤と同時に、もしくは少なくとも1つの第2の抗ウイルス剤の後に投与されてもよい、少なくとも1つの第2の抗ウイルス剤と組み合わせて用いることができる。
【0110】
適当な薬学的賦形剤はデンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、コメ、穀粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。治療用組成物は、必要なら、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、カプセル、粉末、徐放性配合物などの形態をとることができる。組成物をトリグリセリドのような慣例の結合剤および担体と配合することができる。適当な薬学的担体の例はE. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記述されている。そのような組成物は、患者への適切な投与の形態を与えるために適当な量の担体とともに、治療的有効量の治療用組成物を含有する。配合は投与の方法に適合すべきである。
【0111】
一つの態様において、組成物は、ヒトへの局部的注射投与のために適合された薬学的組成物として日常的な手順にしたがって配合される。典型的には、局部的注射投与のための組成物は滅菌した等張の水性緩衝液の溶液である。必要なら、組成物は可溶化剤および注射部位での痛みを和らげるためにリドカインのような局部麻酔薬を含んでもよい。一般的に、それらの成分は、例えば、活性剤の量を知らせるアンプルまたはサッシェのような密閉容器中の乾燥した凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、別個にまたは単位剤形中に一緒に混合して与えられる。組成物が注射により投与される場合、投与前に成分を混合できるように注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0112】
本発明の治療用組成物または薬学的組成物を中性または塩形態として配合することができる。薬学的に許容される塩は塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどを含むが、これらに限定されることはない。
【0113】
本発明は同様に、修飾されていない化合物と比べて、対象に投与されるといっそう安定である、すなわち、投与されるといっそう長時間の有効性を有するような、化合物の修飾を提供する。そのような修飾は当技術、例えば、マイクロカプセル化などの分野の当業者に周知である。
【0114】
特定の疾患、病状または障害の処置において有効である本発明の治療用組成物または薬学的組成物の量は、疾患、病状または障害の性質に依るものと考えられ、標準的な臨床技法によって判定されうる。一般に、投与量は約0.001 mg/kgから約2 mg/kgに及ぶ。さらに、最適な投与量範囲を特定するのを補助するために、インビトロでのアッセイ法が任意で利用されてもよい。配合物の中で利用される的確な用量はまた、投与経路、および疾患、病状または障害の重症度に依るものと考えられ、実施者の判断および各患者の状況によって決定されるはずである。有効な用量はインビトロまたは動物モデルの試験系から導出された用量反応曲線から推定することができる。例えば、ラットでの試験から得られたデータに基づいてヒトに有効なmg/kg用量を得るために、ラットにおいて有効なmg/kg投与量を6で割る。
【0115】
本発明は同様に、1つまたは複数の成分、例えば、投与に適した化合物、担体で満たされた1つまたは複数の容器を含む薬学的包装またはキットを提供する。
【0116】
投与の方法は、従来の漢方医療にしたがって実践することもできる。特定の疾患、病状または障害の処置において有効である配合物の組成および投与量は、標準的な医療技法により疾患、病状または障害の性質に左右されるであろう。
【0117】
処方量の従来の漢方薬は、ヒトまたは動物に投与するのに適した、任意の形態の薬物へ容易に作出することができる。適当な形態には、例えば、チンキ剤、煎薬および乾燥抽出物が含まれる。これらは、経口的に服用することができ、静脈注射、粘膜または吸入を通じて適用することができる。活性成分はカプセル、粉末、小丸薬(pallets)、顆粒、錠剤、トローチ、坐薬、経口溶液、殺菌された胃腸溶性の懸濁注射液、少量または多量の注射液、凍結粉末注射液、殺菌された粉末注射液などへ配合することもできる。上記の方法の全てが当業者に公知であり、書籍に記述されており、薬草医学の実施者によって一般的に使用されている。
【0118】
チンキ剤は、例えば、ワインまたは酒のような、アルコールの溶液中に薬草を懸濁することによって調製される。一定期間の懸濁の後、酒(アルコール溶液)を、例えば、1日に2回または3回、スプーン1杯ずつ毎回投与することができる。
【0119】
煎薬は薬草調製物の一般的な形態である。これは土器の中で伝統的には調製されるが、ガラス、エナメルまたはステンレス製の容器の中で調製されてもよい。配合物を水の中に一定時間浸し、その後、水の量が、例えば、半分に減るまで沸騰させ煮立てることができる。
【0120】
抽出物は薬草の必須成分の濃縮調製物である。典型的には、必須成分は、薬草を適切な選択の溶媒、典型的には、水、エタノール/水混合液、メタノール、ブタノール、イソ-ブタノール、アセトン、ヘキサン、石油エーテルまたは他の有機溶媒に懸濁することによって薬草から抽出される。
【0121】
抽出過程を浸漬、浸出、浸透、向流抽出、ターボ抽出を用いて、または二酸化炭素超臨界(温度/圧力)抽出によってさらに促進することもできる。薬草残屑を取り除くためのろ過の後、抽出溶液を噴霧乾燥、真空乾燥炉、流動層乾燥または凍結乾燥によってさらに蒸発し、かくして濃縮し、軟抽出物(extractum spissum)および/または最終的に乾燥抽出物(extractum siccum)を得ることができる。軟抽出物または乾燥抽出物をさらに、投与のために望ましい濃度まで適当な液体中に溶解し、丸薬、カプセル、注射液などのような形態へ加工処理してもよい。
【0122】
一つの態様において、対象の方法は、本発明の化合物に加えて、連翹、荊芥連翹湯、牛蒡子、淡豆シ、淡竹葉、炙甘草および乾姜を含むが、これらに限定されない、従来の漢方材料を対象に投与する段階をさらに含む。
【0123】
材料および方法
植物材料
薬草の薄荷(60 g)、荊芥連翹湯(40 g)、連翹(100 g)、牛蒡子(60 g)、淡豆シ(50 g)、淡竹葉(40 g)、炙甘草(50 g)、金銀花(100 g)および乾姜(60 g)ならびに薬草抽出物はPuraPharm International (H.K.) Ltdによって提供される。
【0124】
生物活性分子の抽出および単離
Purapharm International (H.K.) Ltd.から入手した連翹を乾燥し、挽いて粉末にする。生物活性化合物を抽出するための方法は図1に示されており、以下のように例示される。
【0125】
手短に言えば、連翹(100 g)を乾燥し、挽いて粉末にし、次いで、生物活性化合物を目的に2回抽出する。各抽出の間に、粉末を2時間還流下で10×ミリ-Q水に懸濁する。各抽出液からの上清を回収し、混ぜ合わせ、真空下で蒸発乾固して淡黄色の粉末22.23 gを得る。粉末をMeOHに再溶解し、分画する。
【0126】
得られたMeOH抽出液を、流速1 mL/分で10%アセトニトリル(CH3CN)〜90% CH3CNの勾配溶出を用いて逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC) (Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μm、250×4.6 mm ID)により精製する。
【0127】
210、254および280 nmに設定されたAgilent 1200シリーズの高速走査Photo-diode Array検出器を用いてピーク検出を達成する。溶出ピークは1 nmの間隔にて200 nm〜300 nmで走査し、最大および最小の吸光度を決定する。計13画分を得る。
【0128】
各画分をその生物活性について調べる。画分4はCOX-2阻害効果を示し、画分5は顕著な抗ウイルス効果を示す; したがって、それらをさらなる精製に供する。HPLCを用いて精製過程を繰り返すことにより、抗ウイルス効果を有する純粋な化合物(化合物A1) (6.1 mg)およびCOX-2阻害効果を有する純粋な化合物(化合物D1) (2.8 mg)を得る。
【0129】
分子構造の解明
純粋な化合物の構造は1Hおよび13C NMR分光分析を通じて、ならびにTOF-ESI-MSおよびEI-MS分光分析を通じて解明する。NMRスペクトルは、Bruker 500 MHz DRX NMR分光計に、溶媒としてTMSを含むメタノール-dを用い、1H NMRの場合には500 MHzでおよび13C NMRの場合には125 MHzで操作して、記録する。化合物A1に対する精密質量の決定はmicrOTOF II ESI-TOF質量分析計(Bruker Daltonics)に記録し、サンプルはMeOHに溶解する。化合物D1に対する精密質量の決定は5975C EI-MS (Agilent Technologies)に記録する。
【0130】
銀翹散(YQS)抽出物の調製
YQS抽出物は中国薬局方(2005)にしたがって調製される。手短に言えば、薄荷3 gおよび荊芥連翹湯2 gを1時間還流下にて20倍のミリ-Q水で2回抽出する。精油および水抽出物を回収する。残留物を、連翹(5 g)、牛蒡子(3 g)、淡豆シ(2.5 g)、淡竹葉(2 g)および炙甘草(2.5 g)を含む他の5種類の薬草と混ぜ合わせ、その後、2時間還流下にて10倍のミリ-Q水で2回抽出する。上清を回収し、先の水抽出物と混ぜ合わせる。得られた抽出物を次に、減圧下で凍結乾燥する。乾燥ペーストを金銀花(5 g)および乾姜(3 g)と混ぜ合わせ、その後、10倍のMeOHで3回抽出する。MeOH抽出物およそ5 gが得られる。
【0131】
抗ウイルスバイオアッセイのためのYQS抽出物の分画
YQSのMeOH抽出物を、1 mL/分の流速で10%アセトニトリル(CH3CN)〜90% CH3CNの勾配溶出を用いた逆相HPLC (Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μm, 250×4.6 mm ID)によって分画する。
【0132】
210、254および280 nmに設定されたAgilent 1200シリーズの高速走査Photo-diode Array検出器を用いてピーク検出を達成する。計5画分を得る。
【0133】
IL-1βバイオアッセイのためのYQS抽出物の分画
YQS抽出物を、1 mL/分の流速で10%アセトニトリル(CH3CN)〜90% CH3CNの勾配溶出を用いた逆相HPLC (Lichrospher 100 RP C18 EC 5 μm, 250×4.6 mm ID)によって分画する。
【0134】
210、254および280 nmに設定されたAgilent 1200シリーズの高速走査Photo-diode Array検出器を用いてピーク検出を達成する。計13画分を得る。
【0135】
ヒトインフルエンザウイルスの調製
ヒトインフルエンザH1N1ウイルス(A/HK/54/98 (オセルタミビル感受性株)およびA/Vicotria/07159200/07 (オセルタミビル耐性株)、H9N2 (A/Quail/HK/G1/97)ならびにH3N2 (A/H3N2/1174/99)は、参照により全体が組み入れられるLee et al. 2005およびMok et al. 2007 (14, 16)に記述されているように調製する。
【0136】
手短に説明するために、まず初めに、ウイルスをヒトから単離する。単離されたヒトインフルエンザH1N1ウイルス(A/HK/54/98 (オセルタミビル感受性株)およびA/Vicotria/07159200/07 (オセルタミビル耐性株)、H9N2 (A/Quail/HK/G1/97)およびH3N2 (A/H3N2/1174/99)を限界希釈法によってクローニングする。種ウイルスストック液をMDCK (メイディン・ダービー・イヌ腎臓; Madin-Darby canine kidney)細胞にて調製する。
【0137】
ウイルス感染
MDCK細胞およびマクロファージに37℃で30分間0.2または2の感染多重度(m.o.i.)で表示のウイルスを感染させる。ウイルス接種材料を含有する上清を次いで取り除き、細胞をMEMまたはマクロファージ無血清培地(Invitrogen)中でインキュベートする。
【0138】
組織培養感染量(TCID50)の決定
TCIDアッセイの前に、MDCK細胞を96ウェルプレートの1ウェルあたり2×104個の細胞で播種する。感染後48時間の時点でウイルス感染細胞から培養上清を回収する。連続2倍希釈の上清サンプルを調製し、希釈サンプルをウイルス吸着のために1時間MDCK細胞とともにインキュベートする。
【0139】
次いでウイルス接種材料を取り除く。細胞を1回洗浄し、1 μg/mlのTPCK処理トリプシンを補充したMEMで満たす。4日のインキュベーションの後、細胞を30分間10%ホルムアルデヒドで固定し、0.5%のクリスタルバイオレットで染色して、ウイルス誘導性の細胞変性効果を判定する。リード・ミュンヒ(Reed-Muench)式を用いてTCID50力価を計算する。
【0140】
免疫細胞化学的染色
感染後の表示の時点で、細胞を固定し、ウイルス核タンパク質およびM1タンパク質を、製造元のプロトコルにしたがってInfluenza Detection Kit (Oxoid)で染色する。
【0141】
タンパク質抽出およびウエスタンブロット分析
全細胞溶解物を、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する全溶解用緩衝液(50 mM Tris-HCl, pH 7.4、150 mM NaCl、50 mM NaF、10 mM b-グリセロリン酸塩、0.1 mM EDTA、10%グリセロール、1% Triton X-100)で調製する。ウエスタンブロット分析のため、タンパク質10 μgをサンプル用緩衝液(125 mM Tris, pH 6.8、4%ドデシル硫酸ナトリウム、20%グリセロール、5% β-メルカプトエタノール、0.01%ブロモフェノール・ブルー)中で熱変性し、10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ECL(商標) Western Blotting Detection Reagents (GE Healthcare)液によるタンパク質レベルのアッセイのためにニトロセルロース膜上に転写する。
【0142】
透過電子顕微鏡法
感染後18時間の時点で、細胞を氷上にて15分間、カコジル酸緩衝液(0.1 Mカコジル酸ナトリウム-HCl緩衝液, pH 7.4)中2.5%のグルタルアルデヒドで固定する。次いで細胞を培養皿からかき取り、ペレットを3分間5000 rpmでの遠心分離によって回収する。細胞を終夜4℃にてカコジル酸緩衝液中2.5%のグルタルアルデヒドで固定し、次いで0.1 Mスクロースを含むカコジル酸緩衝液に再懸濁する。カコジル酸緩衝液による洗浄後、細胞を室温にて30分間カコジル酸緩衝液中1%の四酸化オスミウム中にて固定する。細胞を3回洗浄し、次に段階的エタノールで脱水する。酸化プロピレンでの2回の洗浄後、細胞ペレットをエポキシ樹脂に埋め込む。100 nmの厚さを有する超薄切片を切り取る。透過電子顕微鏡(Philips EM208S)の下で細胞の微細構造の特徴を調べる。
【0143】
定量的逆転写-PCR分析
全RNAをTRIzol試薬(Invitrogen)で製造元の使用説明書にしたがい抽出する。cDNAをオリゴ(dT)プライマーおよびSuperscript II逆転写酵素(Invitrogen)によって全RNAから合成する。COX-2またはIL-1βをコードするmRNAのレベルをTaqMan遺伝子発現アッセイでアッセイする。
【0144】
プロスタグランジンE2アッセイ
感染後48時間の時点で、細胞培養上清を回収し、上清中のプロスタグランジンE2 (PGE2)レベルをProstaglandin E2 EIA Kit (Cayman)により製造元の使用説明書にしたがって測定する。
【実施例】
【0145】
以下は、本発明を実践するための手順を例示する実施例である。これらの実施例は、限定するものと解釈されるべきではない。
【0146】
実施例1 - ホルシトシドAおよびジャカラノンの抽出および特定
淡黄色の粉末を、逆相HPLCを用いて連翹から調製されたMeOH抽出物の反復精製により得る。詳細な手順は図1に要約されている。
【0147】
連続HPLCを用いた生物活性誘導の精製により、化合物A1と指定した抗ウイルス分子は、単一の化合物(>95%の純度)としておよそ6.8分の位置に溶出し、UV吸光度は220、290および330で最大になる(図2)。図4に示したように、化合物A1の13C NMRスペクトルは

の位置にシグナルを示す。化合物A1はそのHR-ESI-MSにおいてm/z 623の位置に[M-H]-イオンのピークを示す。
【0148】
化合物A1は、文献に報告されているデータとのその分光分析データの比較から、ホルシトシドAと特定される。ホルシトシドAの化学構造は図6Aに示されている。初期の乾燥された薬草・連翹中のホルシトシドAの%含量は1.24% (w/w)である。黄色の非晶質粉末(化合物D1) 2.8 mgを、逆相HPLCを用いて連翹から調製されたMeOH抽出物の反復精製により得る。詳細な手順は図1に要約されている。連続HPLCを用いた生物活性誘導の精製により、COX-2発現を阻害する分子は、単一の化合物(>95%の純度)としておよそ10.75分の位置に溶出し、UV吸光度は230で最大になる(図3)。化合物D1の13C NMRスペクトルはδ45 (C-7)、52 (C-9)、68 (C-4)、128 (C-2, C-6)、152 (C-3, C-5)、171 (C-8)、187 (C-1)の位置にシグナルを示す(図5)。化合物D1は182、169、150、122、109(100)、94、81、74、69、43の位置に質量対電荷(m/z)比を示す。化合物D1は、文献からの報告データとその分光分析データを比較することにより、ジャカラノンと特定され、その化学構造は図6Bに示されている(Ogura et al., 1976)。乾燥された薬草中のジャカラノンの%含量は0.036% (w/w)である。
【0149】
実施例2 - ホルシトシドAの細胞毒性の判定
インフルエンザウイルス複製に及ぼすホルシトシドA (化合物A1)の阻害効果の特定の後、ホルシトシドA (化合物A1)の細胞毒性を以下のように調べる。手短に言えば、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞を細胞1×105個/ウェルの密度で24ウェルプレート中に播種し、100 ug/mlの濃度のホルシトシドA (化合物A1)、または対照ではジメチルスルホキシド(DMSO)の添加前に18時間インキュベートする。
【0150】
48時間5% CO2とともに37℃でのインキュベーションの後、チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイによって細胞生存性を測定する。まず最初に、MTTを0.1 mg/mlの終濃度で細胞に加える。90分間のインキュベーションの後、細胞上清を除去し、各ウェルを細胞固定のためにイソプロパノールで処理する。MTT代謝産物のホルマザンを継続的に振盪しながら5分間イソプロパノールに溶解する。ホルマザンおよびバックグラウンドの光学密度を、それぞれ、560 nmおよび670 nmで測定する。
【0151】
細胞毒性指数を以下のように計算する。
(λ560サンプル1−λ670サンプル1)/(λ560DMSO−λ670DMSO)
【0152】
表1に示したように、これらの結果から、ホルシトシドA (化合物A1)はMDCK細胞に対して顕著な細胞毒性を示さないことが明らかである。
【0153】
(表1)ホルシトシドAの細胞毒性

【0154】
実施例3 - ウイルスに及ぼすホルシトシドAの阻害効果
ウイルスに及ぼすホルシトシドA (化合物A1)の阻害効果を判定するために、MDCK細胞にヒトインフルエンザウイルスを感染させ、ウイルス力価(TCID50)バイオアッセイを以下のように例示される手順にしたがって行う。
【0155】
手短に言えば、MDCK細胞を24ウェルプレートに細胞1×105個/ウェルで播種し、これにオセルタミビル感受性株H1N1 (A/HK/54/98); オセルタミビル耐性株H1N1 (A/Vicotria/07159200/07) (H1N1-R); H9N2 (A/Quail/HK/G1/97); およびH3N2 (A/H3N2/1174/99)を含むヒトインフルエンザウイルスを、それぞれ、30分間2の感染多重度(m.o.i.)で感染させる。その後、細胞をPBSで1回洗浄して非吸収ウイルスを除去し、最小必須培地(MEM)を補充して濃度100 ug/mlのホルシトシドA (化合物A1)で処理する。
【0156】
ホルシトシドA (化合物A1)またはDMSOとともに48時間のインキュベーションの後、細胞培養上清を回収し、インフルエンザウイルス複製に及ぼすホルシトシドA (化合物A1)の阻害効果を測定するためにウイルス力価(TCID50)アッセイに供する。手短に言えば、2倍に連続希釈した上清をMDCK細胞に加える。細胞をウイルス吸着のために5% CO2とともに37℃で1時間インキュベートする。次に細胞をMEMまたはリン酸緩衝生理食塩水で洗浄して、非吸収ウイルス接種材料を除去し、1 ug/mlのN-トシル-L-フェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処理トリプシンを補充した新鮮なMEMで満たす。細胞を4日間5% CO2とともに37℃でさらにインキュベートし、その後、30分間10%ホルムアルデヒドで固定し、ウイルス誘導性の細胞変性効果を調べるために0.5%クリスタルバイオレットで染色する。参照により全体が本明細書に組み入れられるMethods and Techniques in Virology, 1993 (17)に記述されているように、リード・ミュンヒ(Reed-Muench)式を用いてTCID50力価を計算する。
【0157】
図7に示したように、これらの結果から、MDCK細胞におけるウイルス複製は100 μg/mlのホルシトシドA (化合物A1)によって抑制されることが明らかである。具体的には、DMSO処理細胞と比較した場合に、インフルエンザウイルスH1N1 (A/HK/54/98)、H1N1 (A/Vicotria/07159200/07)、H9N2 (A/Quail/HK/G1/97)およびH3N2 (A/H3N2/1174/99)の複製はホルシトシドA (化合物A1)により、それぞれ、約15倍、3倍、24倍および12倍抑制される(図7A〜D) (3回の実験からの代表的な結果)。細胞にH1N1 (A/HK/54/98)を感染させた後に、タミフル(100 μM)をまた、対照として細胞に加えた(図7E)。希釈剤(PBS)処理細胞と比較した場合に、ウイルスは30倍超、抑制された(図7E)。
【0158】
実施例4 - 初代ヒト血中マクロファージにおけるインフルエンザウイルスに及ぼすホルシトシドAの阻害効果
初代ヒト血中マクロファージにH1N1 (A/HK/54/98); H9N2 (A/Quail/HK/G1/97); およびH3N2 (A/H3N2/1174/99)を含むヒトインフルエンザウイルスを2のm.o.i.で感染させる。次いで細胞を48時間ホルシトシドA (化合物A1、100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、細胞培養上清を回収し、ウイルス力価(TCID50)をMDCK細胞における力価測定によって測定する(3回の実験からの代表的な結果)。図8に示したように、これらの結果から、ホルシトシドA (化合物A1)が初代ヒト血中マクロファージにおいて抗インフルエンザウイルス効果を保有することが実証される。
【0159】
実施例5 - 免疫細胞化学およびウエスタンブロット分析によって示されるインフルエンザウイルス複製に及ぼすホルシトシドAの阻害効果
本実施例は、ホルシトシドAがインフルエンザウイルス複製を抑制することを実証する。MDCK細胞に0.2のm.o.i.でヒトインフルエンザウイルスH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を感染させる。次いで細胞を6時間または10時間ホルシトシドA (100 μg/mlの化合物A1)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、細胞を固定し、インフルエンザ核タンパク質およびM1タンパク質を、Influenza Detection Kit (Oxoid)で染色する。ウイルスタンパク質を発現している細胞の数をカウントし、ウイルスタンパク質を発現している細胞の割合を計算する。
【0160】
図9 (AおよびB)に示されるように、感染後6時間(6 h.p.i.)の時点で、DMSOまたはホルシトシドA (化合物A1)処理によってウイルスタンパク質を発現している細胞の割合を比較した場合に有意差は見られない。しかしながら、6 h.p.iから10 h.p.i.まで、ウイルスタンパク質を発現している細胞の数はDMSOでの処理時におよそ100%増加し; その一方でホルシトシドA (化合物A1)での処理時には割合が約15%増加するに過ぎない。このことは、ホルシトシドA (化合物A1)がウイルス感染細胞の数を減少させることを示している。
【0161】
MDCK細胞にヒトインフルエンザウイルスH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を2のm.o.i.で感染させるか、またはモック感染させる。その後、細胞を次に、ホルシトシドA (化合物A1) (100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。2、4、9または24 h.p.iの時点でタンパク質を回収する。
【0162】
インフルエンザM1タンパク質の発現をウエスタンブロット分析によって分析する。アクチンをローディング対照として用いる。ウイルスM1タンパク質の発現レベルを調べ、バンド強度をQuantity Oneソフトウェア(Bio-Rad)によって測定する。M1の強度をアクチンの強度に対して規準化することによって相対強度を判定する。
【0163】
図9Cに示されるように、M1タンパク質発現レベルはDMSOで処理したものと比較した場合、ホルシトシドA (化合物A1)で処理した細胞においていっそう低い。2 h.p.i.の時点で、DMSO処理細胞におけるM1の相対強度はホルシトシドA処理細胞のそれよりも4倍超高い。さらに、2〜24 h.p.i.の間にわたって、相対強度はDMSO処理細胞において0.13から1.7まで増大する。対照的に、ホルシトシドA (化合物A1)処理による細胞では、相対強度は24 h.p.i.の時点で0.39に達するに過ぎない。これらの結果は、ホルシトシドAによる処理がM1タンパク質の発現を低下させ、ウイルス負荷を低減することをさらに示している。
【0164】
実施例6 - 電子顕微鏡検査法によって示されるインフルエンザウイルス複製に及ぼすホルシトシドAの阻害効果
本実施例は、ホルシトシドAがインフルエンザウイルス複製を抑制することを実証する。MDCK細胞に2のm.o.i.でヒトインフルエンザウイルスH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を感染させる。次いで細胞を18時間ホルシトシドA (化合物A1) (100 μg/ml) (C〜D)またはDMSO (A〜B)とともにインキュベートする。次いで細胞を固定し、透過電子顕微鏡法によって微細構造を調べる。
【0165】
図10に示されるように、DMSO処理細胞(A〜B)において、大部分のウイルス粒子は細胞から完全に分離された。対照的に、ホルシトシドA (化合物A1)処理細胞では、ウイルス粒子の一部が依然として細胞に付着している(C〜D)。
【0166】
感染細胞をさらに高い倍率により透過電子顕微鏡法の下でさらに観察する。細い頸部に付着した、ほんのごく一部のウイルス粒子が、DMSOとともにインキュベートされた細胞に依然として結び付いている(B、矢印)。対照的に、ホルシトシドA処理細胞では、出芽ウイルス粒子が厚い柄によって細胞とつながったままである(D、矢印)。このことは、ホルシトシドA (化合物A1)処理による緩徐または異常な出芽過程を示している。
【0167】
実施例7 - シクロオキシゲナーゼ2 (COX-2)およびインフルエンザウイルス感染に及ぼすジャカラノンの阻害効果
初代ヒト血中マクロファージにH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を2のm.o.i.で感染させる。細胞を次いで3時間ジャカラノン(化合物D1)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、総RNAを回収し、COX-2 mRNAレベルをTaqMan Gene Expressionアッセイによって調べる。
【0168】
図11Aに示されるように、ジャカラノン(化合物D1)はH9N2/G1感染時のCOX-2 mRNAレベルを抑制し、抑制は用量依存的に行われる。ジャカラノンはCOX-2 mRNAレベルを10 μg/mlで約20%および20 μg/mlで40%抑制する。
【0169】
細胞をジャカラノン(化合物D1)とともに48時間インキュベートした後に、細胞培養上清中のプロスタグランジンE2 (PGE2)レベルをプロスタグランジンE2 EIA Kit (Cayman)によって測定する。図11Bは、非感染マクロファージをジャカラノン(化合物D1)だけで処理することでは、モック処理細胞と比較した場合に、PGE2レベルの何らの変化も引き起こさないことを示す。H9N2/G1の感染はPGE2レベルを顕著に誘導する。RNAでの結果と一致して、ジャカラノン(化合物D1)はPGE2レベルを用量依存的に抑制する。
【0170】
実施例8 - インフルエンザウイルス複製に及ぼすYQS配合物の阻害効果
MDCK細胞にH1N1 (A/HK/54/98)またはH9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)を2のm.o.i.で感染させる。次いで細胞を銀翹散(YQS) (100 μg/ml)またはDMSOとともに48時間インキュベートする。その後、細胞培養上清を回収し、ウイルス力価(TCID50)をMDCK細胞における力価測定によって測定する。
【0171】
図13Aは、YQSがH1N1およびH9N2/G1ウイルス複製を阻害することを示す。YQSに加えて、細胞を、H9N2/G1 (A/Quail/HK/G1/97)で感染させた後にYQS画分(F1〜F5) (100 μg/ml) (図12に示されるように)またはDMSOとともにインキュベートする。
【0172】
48時間のインキュベーションの後、細胞培養上清を回収し、ウイルス力価(TCID50)をMDCK細胞における力価測定によって測定する。図13Cに示されるように、画分F2〜F5はウイルス阻害効果を示す。F2〜F5のなかで、画分F2およびF3は最も強力な抗ウイルス効果を有する。
【0173】
実施例9 - YQS配合物によるインターロイキン-1ベータの誘導
初代ヒト血中マクロファージにH1N1 (A/HK/54/98)を2のm.o.i.で感染させるか、またはモック感染させる。次いでH1N1感染細胞を3時間YQS (100 μg/ml)またはDMSOとともにインキュベートする。その後、総RNAを回収し、インターロイキン(IL)-1β mRNAレベルをTaqMan Gene Expressionアッセイによって調べる。図15Aは、YQSがH1N1によって誘導されるIL-1β mRNA産生を増強することを示す。
【0174】
初代ヒト血中マクロファージ細胞を、H1N1で感染させた後にYQS画分[S1〜S-13、100 μg/ml] (図14に示されるように)またはDMSOとともにインキュベートする。図15Bは、H1N1感染が、モック感染細胞と比較した場合に、IL-1β mRNAレベルを約3倍(DMSO)増大することを示す。YQS画分S11による処理は、モック感染細胞と比較した場合に、IL-1βレベルを約20倍増大する。
【0175】
本明細書において引用される、刊行物、特許出願および特許を含む、全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み入れられるものと個別的かつ具体的に示され、本明細書においてその全体が記載される場合と同じ程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0176】
本発明を記述する文脈において用いられる「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」という用語ならびに類似の指示対象は、本明細書において特に指示のない限りまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を網羅するものと解釈されるべきである。
【0177】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において特に指示のない限り、該範囲内に入る各別個の値に個別に言及する速記法としての役割を果たすように単に意図され、および各別個の値は、あたかもそれが本明細書において個別に列挙されたかのように本明細書に組み入れられる。特に明記しない限り、本明細書において与えられる正確な値は全て、対応するおよその値の代表例である(例えば、特定の要因または測定に対して与えられた正確で例示的な値は全て、適当な場合に、「約」によって修正される、対応するおよその測定もまた提供するものと考えることができる)。
【0178】
本明細書において提供された任意のおよび全ての実施例、または例示的な言語(例えば「のような」)の使用は、単に本発明をより良く照らし出すよう意図され、特に指示のない限り本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書におけるいかなる言語も、それと同様のことが特に明確に述べられない限り、任意の要素が本発明の実践に不可欠であることを示すように解釈されるべきではない。
【0179】
1つの要素または複数の要素に対して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」または「含む(containing)」のような用語を用いた本発明の任意の局面または態様の本明細書における記述は、特に明記しない限りまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、その特定の1つの要素または複数の要素「からなる」、「から本質的になる」、またはその特定の1つの要素または複数の要素「を実質的に含む」本発明の類似の局面または態様に対する支持を提供するように意図されている(例えば、特定の要素を含むものとして本明細書において記述された組成物は、特に明記しない限りまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、その要素からなる組成物もまた記述するものとして理解されるべきである)。
【0180】
本明細書において記述される実施例および態様は例示の目的のためだけであること、ならびにそれに照らしてさまざまな修正または変更が当業者に提案されるものと考えられ、それらは本出願の趣旨および範囲のなかに含まれるものであることが理解されるべきである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるウイルス感染を予防および/または処置するための方法であって、以下からなる群より選択される単離された化合物の有効量を、そのような予防および/または処置を必要としている対象に、投与する段階を含む、前記方法:
a) 化合物A

b) 化合物B

c) 化合物C

d) 化合物D

e) a)〜d)のいずれかのプロドラッグまたは代謝産物;
f) a)〜e)のいずれかの塩;
g) それらの任意の組み合わせ;
(式中
R1〜R17、R'1〜R'6およびR''1〜R''13は、独立して、-H、アシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドであり、
R1'''〜R2'''は、独立して、-H、アシル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルキル、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドであり、かつ
R3'''〜R4'''は、独立して、-H、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【請求項2】
対象がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
化合物が、以下からなる群より選択される、請求項1記載の方法:
a) ホルシトシドA (化合物A1)

b) 化合物B1

c) 化合物C1

d) 化合物D1

e) a)〜d)のいずれかのプロドラッグまたは代謝産物;
f) a)〜e)のいずれかの塩; および
g) それらの任意の組み合わせ。
【請求項4】
化合物がホルシトシドAまたはジャカラノンである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
A型、B型またはC型インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染を予防および/または処置するために用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
H1N1、H9N2、H3N2、H5N1、H2N2、H7N7およびH7N1からなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる感染を予防および/または処置するために用いられる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
H1N1 (A/HK/54/98、オセルタミビル感受性株)、H1N1 (A/Vicotria/07159200/07、オセルタミビル耐性株)、H9N2 (A/Quail/HK/G1/97)、H3N2 (A/H3N2/1174/99)、H5N1 (A/H5N1/97)、H1N1 (A/54/98)、H9N2/G1およびH6N1 (A/Teal/HK/W312/97)からなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる感染を予防および/または処置するために用いられる、請求項5記載の方法。
【請求項8】
ザナミビル、オセルタミビル、ペラミビル、セルタミビルおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される第2の抗ウイルス剤を対象に投与する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
IL-1βレベルを増強するために用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
COX-2レベルを低減するために用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
PGE2レベルを低減するために用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
対象におけるウイルス感染のレベルを判定する段階をさらに含み、この判定は任意で、複数回行われて継時的な変化をモニタリングしてもよい、請求項1記載の方法。
【請求項13】
投与が経口的である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
化合物が任意の他のホルシトシド化合物の非存在下で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
以下からなる群より選択される単離された化合物の抗ウイルス量を含む治療用組成物:
a) 化合物A

b) 化合物B

c) 化合物C

d) 化合物D

e) a)〜d)のいずれかのプロドラッグまたは代謝産物;
f) a)〜e)のいずれかの塩;
g) それらの任意の組み合わせ;
(式中
R1〜R17、R'1〜R'6およびR''1〜R''13は、独立して、-H、アシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドであり、
R1'''〜R2'''は、独立して、-H、アシル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルキル、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドであり、かつ
R3'''〜R4'''は、独立して、-H、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルボキサミドである)。
【請求項16】
化合物が、以下からなる群より選択される、請求項15記載の組成物:
a) ホルシトシドA (化合物A1)

b) 化合物B1

c) 化合物C1

d) 化合物D1

e) a)〜d)のいずれかのプロドラッグまたは代謝産物;
f) a)〜e)のいずれかの塩; および
g) それらの任意の組み合わせまたは塩。
【請求項17】
化合物がホルシトシドAまたはジャカラノンである、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
経口投与のために配合される、請求項15記載の組成物。
【請求項19】
任意の他のホルシトシド化合物を含まない、請求項15記載の組成物。
【請求項20】
対象におけるウイルス感染を処置するための方法であって、薄荷(Herba menthae haplocalycis)、荊芥連翹湯(Herba seu Flos Schizonepetae Tenuifoliae)、連翹(Fructus forsythiae suspensae)、牛蒡子(Fructus Arctii Lappae)、淡豆シ(Semen Sojae Preparatum)、淡竹葉(Herba Lophatheri Gracilis)、炙甘草(Radix Glycyrrhizae Uralensis)、金銀花(Flos Lonicerae Japonicae)および乾姜(Radix Platycodi Grandiflori)からなる銀翹散(Yin Qiao San)組成物を、そのような処置を必要としている対象に投与する段階を含み、ウイルス感染を有する対象においてIL-1βレベルを増強する該方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公表番号】特表2013−516400(P2013−516400A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546519(P2012−546519)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003482
【国際公開番号】WO2011/080593
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(312016344)パラファーム カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(511167870)バーシテック リミテッド (5)
【Fターム(参考)】