説明

ウェブ搬送装置および画像形成装置

【課題】ウェブを搬送する速度が高速の場合でも、外部の給紙装置が突然搬送停止した場合に、エアループ機構の大幅な変更をすることなく、ウェブのエアループ弛み量の安定状態を速やかに確保してウェブ搬送機構へのダメージを回避可能とする。
【解決手段】印刷開始からのエアループ検出部13の第1ないし第4センサ13a〜13dより出力される信号をオンからオフ、またはオフからオンに切り替わる時間と、エアループ検出部13の信号切り替え時間中のウェブ取込速度累積情報35をその累積回数で割ったウェブ取込速度の平均速度とを求めた後、該平均速度の推移からエアループ弛み量の変動周期を求め、ウェブ搬送におけるエアループ弛み量の変動が、記憶装置29Aに記憶された規定範囲内となることをもってエアループ安定状態を判定する第2の制御手段(CPU28A、エアループ安定状態判定制御部33)を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ搬送装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、長尺に連続した帯状のシートであるウェブを連続的に搬送するウェブ搬送装置およびこれを用いた画像形成装置におけるウェブ搬送装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺に連続した帯状のシートとしての用紙に代表されるウェブを連続的に搬送するウェブ搬送装置およびこれを用いる画像形成装置(以下、「印刷装置」ともいう)が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
以下、図1および図2を参照して、従来技術における連続印刷用ウェブの画像形成装置におけるエアループに係る問題点を説明する。図1は、従来技術における連続印刷用ウェブの画像形成装置の一例としての印刷装置150(符号に括弧を付して示す)の模式的な全体構成図である。装置本体側の印刷装置150で印刷中、ウェブ1は印刷装置150外部の給紙装置12から搬送され、印刷装置150の筐体下側を通り、ガイドローラ2を経てウェブ取込機構3により、ウェブ1を自重で弛ませた状態にするエアループ機構17に搬送される。エアループ機構17において形成されたエアループ4は、ウェブ1の弛み量を検出するための複数のエアループセンサが配設されたエアループ検出部13で検出され、エアループ4の弛み量に応じて、ウェブ取込機構3の速度を変更することにより、エアループ4の弛み量を一定に保持するように制御される。
エアループ4を形成することで、給紙装置12によるウェブ1に作用する張力などの影響が取り除かれる。ウェブ1に作用する負荷が自重のみの状態で、ウェブ1の搬送方向下流側にガイド5を配置することで、ウェブ1の走行位置が定まる。また、ウェブ1はプレッシャローラ7で固定ローラ6に押付けられることにより、一定負荷を与えられる。ウェブ1は一定負荷を与えられた後、ウェブ搬送機構8により、画像をウェブ1に転写する転写器10aを備えた転写部10に搬送される。
【0003】
ウェブ搬送機構8によるウェブ搬送速度と同一の周速で感光ドラム9が回転し、図示しない露光装置と、図示しない現像装置とによって感光ドラム9に形成されたトナー像を転写器10aによってウェブ1上に転写する。転写後、ウェブ1は定着部11と、転写部10の搬送方向下流側に配置されたウェブ搬送機構8Aとの間のウェブ搬送速度の差を吸収するバッファ16を経て、例えば加熱ローラ11aおよびこれに圧接する加圧ローラ11bを備えた定着部11に搬送され、ウェブ1上のトナー像がウェブ1に加熱加圧・溶融定着される。こうして定着されたウェブ1は排紙ローラ18によって矢印方向に搬送され、印刷装置150外に配設された図示しない後処理機(巻き取り装置、裁断機等)や、反転機構部装置を介してまたは直接、別の印刷装置150’などに送られる。
【0004】
図2は、従来技術におけるエアループ付近の一例を示す斜視図であり、図2を参照してエアループ機構17の構成を説明する。エアループ4の弛み量を検出するためのエアループ検出部13は、最上部からこの順に、第1センサ13a、第2センサ13b、第3センサ13c、第4センサ13dにより構成されている。各センサ13a〜13dは、発光素子(図中適宜黒印で表す)と受光素子(図中適宜白印で表す)とで構成され、各センサ13a〜13dの一方に発光素子を設け、他方に受光素子を配置することで構成する。エアループ検出部13は、これに限らず、一方に発光素子と受光素子を設け、他方に鏡などの反射板を配置することで構成することも可能である。
【0005】
エアループ4が各センサ13a〜13dの光を遮るか否かにより、エアループ4の弛み量を検出することができる。図2に示すように、エアループ検出部13は、構造上、ウェブ搬送方向(図2でのウェブ取込機構3からガイド5へ向かう方向)に対し斜め(上面から見たときの対角線状)に配置される。これは、外部のウェブ供給装置(同図の例では給紙装置12)からウェブ1を取り込むために必要なウェブ搬送路を確保しつつ、各センサ13a〜13dを平行に配置した場合の操作性低下を避けるためである。
なお、上記エアループ検出部13の構成は一例であり、この他にも公知の技術で種々の構成を取り得ることは無論である。
【0006】
図2を参照して、エアループの制御を説明する。印刷動作開始直前において、ウェブ1は第3センサ13cに検出されるまで、ウェブ取込機構3によりエアループ4を形成すべくエアループ検出部13に送られる。ここで、既に第3センサ13cがエアループ4を検出している場合、ウェブ取込機構3はウェブ1を搬送しない。印刷開始時には、ウェブ取込機構3とウェブ搬送機構8、8A(以下、「ウェブ搬送機構8」で代表して説明する)とは同時に起動してウェブ1を搬送する。
【0007】
印刷中、ウェブ取込機構3によるウェブ1の搬送量が、ウェブ搬送機構8によるウェブ1の搬送量を上回る場合、エアループ4の弛み量(撓み量)は増加し、エアループ4は下降する。エアループ4が下降し、第3センサ13cがエアループ4を検出すると、ウェブ取込機構3はウェブ1の搬送量を減少させる。これにより、第3センサ13cによりエアループ4が検出されなくなるまでエアループ4の弛み量を減少させるので、エアループ4は上昇する。また、エアループ4が上昇し、第3センサ13cにより、エアループ4が検出されなくなると、ウェブ取込機構3はウェブ1の搬送量を増加させる。これにより、エアループ4が下降し、第3センサ13cによりエアループ4が検出されるまでエアループ4の弛み量を増加させる。
一方、ウェブ取込機構3によるウェブ1の搬送量が、ウェブ搬送機構8におけるウェブ1の搬送量に追いつかない場合、エアループ4の弛み量は減少し、エアループ4は上昇する。エアループ4が上昇し、第2センサ13bによりエアループ4が検出されなくなり、さらに第1センサ13aによりエアループ4が検出されない状態となると、ウェブ取込機構3およびウェブ搬送機構8の動作が同時に停止し、印刷動作が停止する。
【0008】
通常の印刷動作であれば、外部の給紙装置12がウェブ1の供給を停止する場合、印刷装置150に対し、給紙装置12がストップ(STOP)信号を送信するため、印刷装置150はウェブ搬送機構8の停止制御を正常に実行でき、印刷装置150内部のエアループ4が必要とする弛み量を確保できなくなることはない。これに対し、外部の給紙装置12がストップ(STOP)信号を送信できずにウェブ1の供給を停止した場合、印刷装置150内部のエアループ4が必要とする弛み量を確保できなくなり、印刷装置150が、第1センサ13aによるエアループ4未検出エラー(「エアループ上限位置エラー」と呼ばれる)を契機に、ウェブ搬送機構8の停止制御を実行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
印刷時、外部から印刷装置150にウェブ1を搬送する給紙装置12の緊急停止動作により、印刷装置150内部のエアループ4が必要とする弛み量を確保できなくなると、「エアループ上限位置エラー」の検出によるウェブ搬送機構8の停止制御が行われる前に、ウェブ搬送機構8の駆動力によりウェブ1に接しているウェブ搬送機構8にダメージを与えることになる。
また、エアループの弛み量を安定させる方法として、測距センサを使用したウェブループ上方からの弛み形状を安定化させる構成に係る技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。この構成の場合、使用する測距センサの精度により、距離測定にばらつきが発生するため、安定した状態を確保することが難しい。
【0010】
また、最初から最下部のセンサ(第4センサ13d)を基準としたエアループ制御を用いた場合には、前回印刷が停止した時のエアループ下限位置が正常範囲であるか判定できないこと、最下部センサは中央部のセンサと比較して故障検出に時間がかかること、起動時にエアループの弛み量が多く確保される反面エアループ形状が暴れやすいため、正常でないループ形状だった場合に、エアループの弛み量を誤検出すること等がある。
エラー検出用のセンサレベルまでエアループが検出されない状態となると、ウェブ取込機構3およびウェブ搬送機構8の動作が同時に停止する。ウェブ1を搬送する速度が1m/sec未満のような低速の印刷装置の場合には、エラー検出からウェブ搬送機構8停止までの時間は確保可能である。しかしながら、1m/sec以上の高速印刷装置の場合には、時間確保が難しくなる。ウェブ1を搬送する速度を上げていった場合、エラー検出用のセンサレベルまでエアループが検出されない状態となった時に、ウェブ取込機構3およびウェブ搬送機構8を停止しても、ウェブ1が停止するまでの搬送量が延びるため、ウェブの走行位置を定めるためのガイド5のロール間においてウェブ1が張った状態となり、ウェブ搬送機構8にダメージを与え、故障の原因となる。
【0011】
エアループ4の弛み量を増やすために、エアループ機構部の空間領域を大きくすることは、印刷装置のサイズが大きくなる上に、エアループ機構部の変更に伴う印刷装置の各手段の位置や構成を大幅に変更する必要がある。一方、エアループ機構部のサイズを変えずに弛み量をできるだけ確保するには、エアループセンサの基準位置を最下部のセンサで制御するエアループ制御を行う必要がある。また、最下部で制御するまでの期間に、給紙装置が突然停止した場合、ウェブ搬送機構8にダメージを与えることになる。また、最下部のセンサで制御するには、ウェブが安定した状態からエアループの制御位置を下げることで、エアループの制御位置切り替え後まで安定状態の維持が可能となる。そのため、短時間にウェブが安定した状態を検出し、エアループの制御位置を下げることが必要となる。
【0012】
そこで、本発明は、ウェブを搬送する速度が高速の場合でも、外部の給紙装置が突然搬送停止した場合に、エアループ機構(エアループ形成手段)の大幅な変更をすることなく、ウェブのエアループ弛み量の安定状態を速やかに確保してウェブ搬送機構(ウェブ搬送手段)へのダメージを回避可能なウェブ搬送装置およびこれを用いた印刷装置(画像形成装置)を実現し提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、本発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
すなわち、本発明は、画像形成部にウェブを搬送するための、駆動手段を備えたウェブ搬送手段と、装置本体の内部にウェブを取込むウェブ取込手段と、該ウェブ取込手段と前記ウェブ搬送手段との間で、ウェブを自重により弛ませてエアループを形成するエアループ形成手段と、該エアループ形成手段での前記エアループの弛み量を検出するエアループ検出手段とを有するウェブ搬送装置において、前記エアループ検出手段より出力される信号の切り替わり時間情報、および前記ウェブ取込手段の前記駆動手段を駆動すべく設定したウェブ取込速度データの累積であるウェブ取込速度累積情報を記憶する記憶手段と、印刷開始時から任意のタイミングとなるまでは、前記エアループ検出手段からの信号に基づいて、第1のエアループの弛み量を保持するように前記エアループ形成手段を制御し、前記任意のタイミングになってから印刷停止までは、前記エアループ検出手段からの信号に基づいて、第2のエアループの弛み量を保持するように前記エアループ形成手段を制御する第1の制御手段と、前記エアループに弛み量を持たせたウェブ搬送で、印刷開始からの前記エアループ検出手段より出力される信号をオンからオフ、またはオフからオンに切り替わる時間と、前記エアループ検出手段の信号切り替え時間中の前記ウェブ取込速度累積情報をその累積回数で割ったウェブ取込速度の平均速度とを求めた後、該平均速度の推移から前記エアループ弛み量の変動周期を求め、前記ウェブ搬送における前記エアループ弛み量の変動が、前記記憶手段に記憶された規定範囲内となることをもってエアループ安定状態を判定する第2の制御手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記課題を解決して新規なウェブ搬送装置およびこれを用いた画像形成装置を実現し提供することができる。すなわち、本発明によれば、上記構成により、ウェブ搬送時におけるエアループ弛み量が安定しているかを早期に検出できるので、ウェブ搬送手段(例えばウェブ搬送機構)へのダメージを与える期間を短くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す画像形成装置の一例としての印刷装置全体の模式的な構成図である。
【図2】上記実施形態におけるエアループ付近の一例を示す斜視図である。
【図3】上記実施形態における第1エアループと、第2エアループの上限エラー検出方法を説明する模式図である。
【図4】上記実施形態における第1エアループ弛み量と、第2エアループ弛み量との関係を説明する図である。
【図5】上記実施形態におけるエアループ弛み量の制御切り替え手順について説明するフローチャートである。
【図6】上記実施形態における印刷装置の要部の制御構成を示す制御ブロック図である。
【図7】上記実施形態におけるエアループを誤検出する状態の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例1におけるエアループ弛み量制御について説明する模式図である。
【図9】実施例1におけるウェブ搬送のエアループセンサ切り替えによる時間変動を示す線図である。
【図10】実施例1におけるウェブ取込速度変動の平均速度と、安定状態移行を判定する有効範囲との関係を示す線図である。
【図11】実施例1における印刷装置の要部の制御構成を示す制御ブロック図である。
【図12】実施例1におけるエアループ弛み量変動の安定状態を判定する手順について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を詳細に説明する。図1および図2に示した本発明を適用する従来の画像形成装置を含め、実施形態および各変形例等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品等)については、混同の虞がない限り同一符号を付すことによりその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、実施形態等のそれと区別するものとする。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態を示す連続印刷用ウェブの画像形成装置の一例としての印刷装置15の模式的な全体構成図、図2には、同装置のエアループ機構付近を示す斜視図が、それぞれ表わされている。なお、上述した従来技術と同じ構成要素・部品には、同じ符号を付したので説明を省略する。印刷装置15は、図1および図2に括弧を付して示した従来技術の印刷装置150と比較して、主として制御構成およびこれによる動作が異なる。
ここで、図1および図2を参照して、従来技術で説明しなかった技術内容を補説する。図1において、像担持体としての感光ドラム9および転写手段としての転写器10aを備えた転写部10は、搬送されてきたウェブ1に画像を形成する画像形成部として、ウェブ搬送機構8は、前記画像形成部にウェブ1を搬送するためのウェブ搬送手段として、それぞれ機能する。給紙装置12は、装置本体の外部から該装置本体の内部である印刷装置15にウェブを搬送する給送手段として、ウェブ取込機構3は、給紙装置12から給送されてきたウェブ1を印刷装置15に取込むウェブ取込手段として、それぞれ機能する。エアループ機構17は、ウェブ取込機構3とウェブ搬送機構8との間で、ウェブ1を自重で弛ませてエアループ4を形成するエアループ形成手段として、エアループ検出部3は、エアループ機構17でのエアループ4の弛み量を検出するエアループ検出手段として、それぞれ機能する。
【0018】
給紙装置12は、紙芯などの芯管の回りに長尺状のウェブ1が巻かれて形成されたウェブロールもしくはシートロールからウェブ1が繰り出し可能に保持・セットされるウェブロール支持部と、該ウェブロール支持部にセットされた前記ウェブロールからウェブ1を自動的に給送する給紙ローラ(図示せず)とを備えている。
感光ドラム9の周囲には、それぞれ図示しない、帯電ローラ等の帯電手段、光走査装置等の露光手段、現像剤中のトナーを感光ドラム9に供給して感光ドラム9上の静電潜像を現像する現像ローラ等を備えた現像装置等の現像手段、感光ドラム9上に残留したトナーや紙粉等を清掃するクリーニングブレード等を備えたクリーニング手段が配設されていて、電子写真方式による帯電・露光・現像・転写・クリーニング等の周知の動作が実行されるように構成されている。
【0019】
図2に示すように、エアループ機構17は、ウェブ取込機構3、エアループ検出部13、ウェブ搬送機構8から主に構成されている。ウェブ取込機構3は、ギア等の駆動力伝達手段を介して駆動ローラに回転駆動力を与えるべく連結された駆動手段としての駆動モータ14を備えている。駆動モータ14としては、パルス入力で回転駆動するステッピングモータを用いている。これにより、ウェブ1の搬送距離を精確に、またウェブ搬送速度の変更なども比較的簡単に行える。
ウェブ搬送機構8は、駆動ローラ21と従動ローラ22との間に巻き掛けられた搬送ベルト20と、ギア等の駆動力伝達手段を介して駆動ローラ21に回転駆動力を与えるべく連結された駆動手段としての駆動モータ19とを備えている。前記転写部よりもウェブ搬送方向の下流側のウェブ搬送機構8Aもウェブ搬送機構8と同様の構成である。駆動モータ19としては、例えばパルス入力で回転駆動するステッピングモータ等を用いれば、ウェブ1の搬送距離を精確に、またウェブ搬送速度の変更なども比較的簡単に行える。
【0020】
エアループ検出部13(一点鎖線で囲まれる領域)は、上述した第1〜第4のセンサ13a〜13dと、第1〜第4のセンサ13a〜13dを収容すると共に、所定の弛みのエアループ4を自重で形成するための上部が開口した箱体とを備えている。第1〜第4のセンサ13a〜13dは、透過型センサの場合、前記箱体のエアループ経路を挟んで対向する内側壁の何れか2面にそれぞれ受光部と発光部とが固着した状態で設置(以下、「固設」という)されている。
【0021】
図2を参照して、印刷開始からエアループ安定制御時までの制御方法について、ウェブ搬送機構8のウェブ搬送速度をV0とし、ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度をVTとした場合を説明する。
印刷開始時には、ウェブ取込機構3とウェブ搬送機構8とは、上述したと同様に同時に起動してウェブ1を搬送する。印刷開始後、エアループ4の弛み量減少により、エアループ4が上昇し、第3センサ13cがエアループ4を検出しなくなった場合、ウェブ取込機構3は、ウェブ1の搬送量を増加させるために、ウェブ搬送速度VTを加速させる。ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度VTがウェブ搬送機構8のウェブ搬送速度V0よりも大きい、V0<VTとなったところで、エアループ4の弛み量増加により、エアループ4が下降を始め、第3センサ13cによりエアループ4が検出されるまで、ウェブ搬送速度VTを加速させる。エアループ4の弛み量増加により、エアループ4が下降し、第3センサ13cがエアループ4を検出した場合、ウェブ取込機構3は、ウェブ1の搬送量を減少させるために、ウェブ搬送速度VTを減速させる。そして、ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度VTがウェブ搬送機構8のウェブ搬送速度V0よりも小さい、V0>VTとなったところで、エアループ4の弛み量減少により、エアループ4が上昇を始め、第3センサ13cによりエアループ4が検出されなくなるまで、エアループ4の弛み量を減少させ、エアループ4を上昇させる。
【0022】
再び、ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度VTがウェブ搬送機構8のウェブ搬送速度V0よりも大きい、V0<VTとなったところで、エアループ4の弛み量増加により、エアループ4が下降を始め、第3センサ13cによりエアループ4が検出されるまで、ウェブ搬送速度VTを加速させる。このウェブ取込機構3による加速、減速を繰り返して、第3センサ13cを境界にした、第1のエアループ(以下、「第1エアループ」という)制御範囲にて、安定して制御することが可能となる。
【0023】
次に、エアループ安定制御時からエアループ4の弛み量を、第2のエアループ(以下、「第2エアループ」という)弛み量に切り替える制御について説明する。印刷動作開始後に、先に述べた印刷開始からエアループ安定制御時までの制御方法を実施し、エアループ4が安定するまで一定時間経過後、または第3センサ13cによるエアループ4の検出状態、未検出状態を複数回繰り返した後に、エアループ4が安定したと判断する。その後、第2エアループの弛み量位置まで、ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度VTを加速させ、エアループ4の弛み量増加により、エアループ4を下降させる。その後は、前述した第1エアループ制御範囲で制御する方法と同様に、第4センサ13dを境界にした、第2エアループ制御範囲にて、ウェブ取込機構3の加速、減速を繰り返しながら、制御を実施する。
【0024】
図3を参照して、第1エアループの弛み量制御時と第2エアループの弛み量制御時との上限エラー検出位置方法について説明する。図3に示すように、印刷開始からエアループ安定制御時までの第1エアループ制御範囲で制御中は、上限エラー検出位置23aとし、エアループ検出部13の最上部に位置する第1センサ13aによって、エアループ4aが検出されない状態となると、上限エラーを検出し、ウェブ取込機構3およびウェブ搬送機構8の動作が同時に停止し、印刷動作が停止する。
【0025】
次に、エアループ安定制御時から印刷停止までの第2エアループ制御範囲で制御中は、上限エラー検出位置23bとし、第2センサ13bによって、エアループ4bが検出されない状態となると、上限エラーを検出し、ウェブ取込機構3およびウェブ搬送機構8の動作が同時に停止し、印刷動作が停止する。このように、制御範囲によって、上限エラー検出レベルの切り替えを行う。
【0026】
上述したように、最下部にある第4センサ13dを用いて、エアループ4の弛み量を制御した場合、センサの故障等による弛み誤検出を検出できずに、正常な弛み量を制御できない虞がある。
そこで、エアループの制御範囲を、定期的に切り替えることで、センサ故障を検出する制御方法について、図4を参照して説明する。図4は、第1エアループ弛み量と、第2エアループ弛み量との関係を示している。同図に示すように、第2エアループ制御範囲で弛み量がT2時間(期間)制御された後、第4センサ13d、さらに第3センサ13cがエアループ4を検出するまで、ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度VTを減速させ、第1エアループ制御範囲で制御させる。次に、第1エアループ制御範囲で弛み量がT1時間制御された後、ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度VTを加速させると、エアループ4は第2エアループ制御範囲に戻る。
【0027】
この時の第1エアループ制御範囲から第2エアループ制御範囲への制御切り替える時の加速量をa1、第2エアループ制御範囲から第1エアループ制御範囲への制御切り替える時の加速量をa2とした場合、各制御範囲の切り替えは、a1、a2から決定される予め決めた時間tの内に、制御範囲の切り替えが実施できない場合は、センサの故障、またはループ形状の乱れによる誤検出が発生していると判断でき、ループエラーとして印刷を停止する。
【0028】
エアループ4の弛み形状は、ウェブの種類が、例えば剛性が弱く、かつ、ウェブ幅が狭い場合には、ループ形状が形成されにくく、ウェブの腰折れが発生し、またセンサ光が透過し易くなり、ウェブを検出できない状態となりやすく、誤検出してしまう場合がある。そのため、剛性の弱いウェブの制御ラインの切り替えは、ゆっくりと切り替える必要があり、a1、a2の値を小さくして制御する。
【0029】
逆に、ウェブの種類が、例えば剛性が強く、かつ、ウェブ幅が広い場合には、a1、a2の値を大きくしても、ループ形状が乱れにくいが、全体的にループ形状は、広がりやすく、図7に示すように、センサ光が透過し易くなり、ウェブを検出できない状態となりやすく、誤検出してしまう場合がある。そのため、制御ラインの切り替え時、つまりa1、a2の値を大きくできるが、上限エラー検出方法などは、剛性の弱いウェブとは異なるエアループセンサ(第1〜第4センサ13a〜13d)の検出方法によるエラー検出が必要となる。
以上のように、ウェブの種類・特性に合わせて、切り替え加速量を切り替えたり、エラー検出方法を切り替えたりする必要があるため、ウェブの種類情報(剛性、負荷など)やウェブ幅情報などにより、制御方法を切り替える。
【0030】
図6を参照して、本実施形態の制御構成およびウェブの種類情報やウェブ幅情報などの制御情報の受け取り方法について説明する。図6は、本実施形態における印刷装置の要部の制御構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態の制御構成は、上位システムからの制御コマンド25(以下、「上位システム制御コマンド25」という)や入力装置26からの情報を受信する制御部27と、制御部27から出力される情報や、エアループ検出部13における第1〜第4センサ13a〜13dからの出力信号であるセンサ情報を記憶・保存する記憶手段としての記憶装置29と、制御部27から出力される情報や、エアループ検出部13における第1〜第4センサ13a〜13dからの出力信号であるセンサ情報を記憶装置29に記憶・保存したり、記憶装置29から必要な情報を呼び出して演算・制御したりするCPU28と、CPU28が記憶装置29の保存情報とセンサ情報とを用いて制御するエアループ弛み量制御部30と、エアループ弛み量制御部30が、駆動モータ14を含むウェブ取込機構3と駆動モータ19を含むウェブ搬送機構8とを制御するためのモータドライバを含むドライバ部31とにより構成される。
【0031】
上位システム制御コマンド25としては、例えば、本実施形態の印刷装置15とユーザが印刷条件等を含め印刷指示の指令情報を送受信可能に接続されたネットワーク上のホストコンピュータやパソコンからの指令などが挙げられる。入力装置26としては、ホストコンピュータやパソコンに備えられているキーボードやタッチパネル式の操作画面などが挙げられる。
【0032】
CPU28、記憶装置29およびタイマ32は、CPU、RAM、ROMおよび内部タイマを備えたマイクロコンピュータを用いて構成することが可能である。
記憶装置29は、制御データおよび/または設定情報を記憶する記憶手段として機能する。ここで、設定情報とは、上位システム制御コマンド25としてホストコンピュータやパソコンから送信される種々の印刷条件(ウェブの剛性情報、ウェブ幅情報を含む)等の設定情報が挙げられる。
【0033】
本実施形態では、制御部27が入力装置26または上位システム制御コマンド25から受信した、第1エアループ制御時間情報T1、第2エアループ制御時間情報T2、第2エアループ制御範囲へ制御切り替え時の加速量情報a1、第1エアループ制御範囲へ制御切り替え時の加速量情報a2、ウェブ剛性情報w1、ウェブ幅情報w2(以下、これらの各種情報を総括的に「エアループ弛み量制御情報24」ともいう)を、CPU28が記憶装置29に保存・記憶する。CPU28は、記憶装置29に保存したエアループ弛み量制御情報24を含む情報と、センサ情報とを用いて、エアループ弛み量制御部30を制御する。エアループ弛み量制御部30は、ウェブ取込機構3およびウェブ搬送機構8の制御を行う。
【0034】
CPU28は、印刷開始時から任意のタイミング(エアループ安定制御時)となるまでは、第1〜第4センサ13a〜13dからの信号およびタイマ32からの時間情報に基づいて、第1エアループの弛み量を保持するように、エアループ弛み量制御部30およびドライバ部31を介して、ウェブ取込機構3の駆動モータ14、ウェブ搬送機構8の駆動モータ19を制御する第1の制御手段における第1のエアループ弛み量制御手段として機能する。また、CPU28は、任意のタイミング(エアループ安定制御時)になってから印刷停止までは、第1〜第4センサ13a〜13dからの信号およびタイマ32からの時間情報に基づいて、第2エアループの弛み量を保持するように、エアループ弛み量制御部30およびドライバ部31を介して、ウェブ取込機構3の駆動モータ14、ウェブ搬送機構8の駆動モータ19を制御する第1の制御手段における第2のエアループ弛み量制御手段として機能する。
【0035】
さらに、CPU28は、印刷開始時からエアループ安定制御時までは、第1〜第4センサ13a〜13dからの信号およびタイマ32からの時間情報に基づいて、第1センサ13aにより検出される第1エアループの上限エラー検出位置23aにてエラーとし、エアループ安定制御時から印刷停止までは、第2センサ13bにより検出される第2エアループの上限エラー検出位置23bにてエラーとするように、エアループの上限エラー検出位置を切り替える第1の制御手段における第3のエアループ弛み量制御手段として機能する。
【0036】
図5は、本実施形態におけるエアループ弛み量の制御切り替え方法を表すフローチャートである。同図のフローチャートで使用されている用語は、例えば「弛み量」という用語を適宜省略して簡略化して表されていることを付記しておく。
図5に示すように、本実施形態では、始めに初期設定として第1/第2エアループ弛み量制御時間情報(T1,T2)と、第1/第2エアループ弛み量制御切り替え時間情報(t)の読み込みを行う(ステップS000)。次に、印刷終了まで第1エアループ弛み量の制御と、第2エアループの弛み量制御とを交互に行う(ステップS005)。
【0037】
第1エアループ弛み量の制御要求(ステップS007)であれば、T1時間分実施し(ステップS010〜S020)、制御時間経過後に、t時間分、第2エアループ弛み量制御切り替えを行う(ステップS025〜S035)。同様に、第2エアループ弛み量の制御要求(ステップS007)であれば、T2時間分実施し(ステップS040〜S050)、制御時間経過後に、t時間分、第1エアループ弛み量制御切り替えを行う(ステップS055〜S065)。
【0038】
第1/第2エアループ弛み量の制御中にエラーを検出(ステップS015、ステップS045)したならば、処理を中断しエラーを報告する(ステップS090)。第1/第2エアループ弛み量の制御切り替え中にエラーを検出(ステップS030、ステップS060)した場合も、処理を中断しエラーを報告する(ステップS090)。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、ウェブ搬送機構8を変更することなく、エアループ4が必要とする弛み量を確保することができるとともに、ウェブ1の搬送が突然停止した場合に、ウェブ搬送機構8の動作を停止するまでの時間を確保することができ、ウェブ搬送機構8に対するダメージが回避可能となる。
【0040】
以上説明したとおり、本実施形態には下記の技術構成に係る発明が含まれているので、列記する。
すなわち、第1の技術構成は、搬送されてくるウェブに画像を形成する画像形成部と、該画像形成部にウェブを搬送するウェブ搬送手段と、装置本体の外部から該装置本体の内部にウェブを搬送する給送手段と、該給送手段からのウェブを前記装置本体の内部に取込むウェブ取込手段と、該ウェブ取込手段と前記ウェブ搬送手段との間で、ウェブを自重により弛ませてエアループを形成するエアループ形成手段と、該エアループ形成手段でのエアループの弛み量を検出するエアループ検出手段とを有する画像形成装置において、印刷開始時から任意のタイミングとなるまでは、前記エアループ検出手段からの信号に基づいて、第1のエアループの弛み量を保持するように前記エアループ形成手段を制御する第1のエアループ弛み量制御手段と、前記任意のタイミングになってから印刷停止までは、前記エアループ検出手段からの信号に基づいて、第2のエアループの弛み量を保持するように前記エアループ形成手段を制御する第2のエアループ弛み量制御手段とを有することを特徴とする。
【0041】
第2の技術構成は、第1の技術構成記載の画像形成装置において、前記任意のタイミングは、前記エアループ検出手段が設定時間内にエアループの検出と未検出とを交互に検出できるエアループ安定制御時となるまでであることを特徴とする。
第3の技術構成は、第1の技術構成記載の画像形成装置において、第2のエアループの弛み量は、第1のエアループの弛み量よりも多いことを特徴とする。
第4の技術構は、第2の技術構成記載の画像形成装置において、前記印刷開始時から前記エアループ安定制御時までは、前記エアループ検出手段により検出される第1のエアループの上限エラー検出位置にてエラーとし、前記エアループ安定制御時から前記印刷停止までは、前記エアループ検出手段により検出される第2のエアループの上限エラー検出位置にてエラーとするように、エアループの上限エラー検出位置を切り替える第3のエアループ弛み量制御手段を有することを特徴とする。
【0042】
第5の技術構成は、第4の技術構成記載の画像形成装置において、前記第2のエアループの上限エラー検出位置は、前記第1のエアループの上限エラー検出位置よりもエアループの弛み量が多い状態で検出される位置であることを特徴とする。
第6の技術構成は、第1の技術構成記載の画像形成装置において、予め設定された時間内に、前記第1のエアループの弛み量から前記第2のエアループの弛み量にエアループの弛み量の切り替えが実施できない場合は、前記エアループ検出手段の故障を検出することを特徴とする。
第7の技術構成は、第1の技術構成記載の画像形成装置において、前記第1のエアループの弛み量から前記第2のエアループの弛み量への切り替えタイミング、エアループの弛み量切り替え時のエラー検出方法および切り替え加速量が、ウェブの種類によって異なることを特徴とする。
【0043】
第8の技術構成は、第1の技術構成記載の画像形成装置において、制御データおよび/または設定情報を記憶する記憶手段を有し、第1のエアループ弛み量から第2のエアループ弛み量へ、および/または第2のエアループ弛み量から第1のエアループ弛み量への切り替え時間が設定可能であることを特徴とする。
第9の技術構成は、第8の技術構成記載の画像形成装置において、前記エアループ弛み量の切り替えタイミングが任意に設定可能であることを特徴とする。
第10の技術構成は、第9の技術構成記載の画像形成装置において、前記エアループ弛み量の切り替えタイミングが、上位システムからの制御コマンド情報により任意に設定可能であることを特徴とする。
第11の技術構成は、第1の技術構成記載の画像形成装置において、第1のエアループの弛み量と第2のエアループの弛み量とを印刷中に複数回切り替えることを特徴とする。
【0044】
上記実施形態で説明したとおり、給紙装置12が突然搬送停止した場合に、エアループ機構17の大幅な変更を行わずにウェブ搬送機構8へのダメージを回避可能とした、エアループ4のエラー検出位置を下げる制御の組み込みに合わせ、エアループ4の搬送位置を下げる制御を組み込むことで、エラー検出からウェブ搬送機構8の停止までの時間を確保可能とした。
しかしながら、使用するウェブ毎に異なるエアループが形成される搬送位置において、短時間でエアループ4の搬送位置を下げる制御を行うためには、エアループ4の安定状態を認識し、エアループ4が安定した状態から下げることが必要となる。そこで、上記要求に応える新たな実施例1を創作した。
【0045】
上記実施形態の図2において、印刷開始からエアループ安定制御時までの制御方法について、ウェブ搬送機構8のウェブ搬送速度をV0とし、ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度をVTとした場合について考察する。
印刷開始時には、ウェブ取込機構3とウェブ搬送機構8とは、上記実施形態で説明したと同様に同時に起動してウェブ1を搬送する。印刷開始後、エアループ4の弛み量減少により、エアループ4が上昇し、第3センサ13cがエアループ4を検出しなくなった場合、ウェブ取込機構3は、ウェブ1の搬送量を増加させるために、ウェブ搬送速度VTを加速させる。ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度VTがウェブ搬送機構8のウェブ搬送速度V0よりも大きい、V0<VTとなったところで、エアループ4の弛み量増加により、エアループ4が下降を始め、第3センサ13cによりエアループ4が検出されるまで、ウェブ搬送速度VTを加速させる。エアループ4の弛み量増加により、エアループ4が下降し、第3センサ13cがエアループ4を検出した場合、ウェブ取込機構3は、ウェブ1の搬送量を減少させるために、ウェブ搬送速度VTを減速させる。そして、ウェブ取込機構3のウェブ搬送速度VTがウェブ搬送機構8のウェブ搬送速度V0よりも小さい、V0>VTとなったところで、エアループ4の弛み量減少により、エアループ4が上昇を始め、第3センサ13cによりエアループ4が検出されなくなるまで、エアループ4の弛み量を減少させ、エアループ4を上昇させる。
このようなウェブ取込機構3による加速、減速を繰り返して、第3センサ13cを境界にした、エアループ制御範囲での制御が可能となる。
【実施例1】
【0046】
図8〜図12を参照して、本発明の実施例1を説明する(請求項1〜6)。この実施例1は、上記実施形態に対して、主としてウェブ搬送におけるエアループ弛み量の変動が安定状態にあることを判定する制御構成等を付加したものとなっている。
図8に示すように、エアループ弛み量制御において、ウェブ取込機構3の加速、減速の繰り返しにより、第3センサ13cを境界にしたエアループ4の位置制御を行う場合、ウェブ取込機構3の加速、減速切り替え時間が短く、振幅の少ない安定したウェブ1の搬送が求められるため、ウェブ1の搬送に応じた安定状態の判定方法が必要となる。
最初に、ウェブ搬送におけるエアループ弛み量の変動が安定状態にあることの判定方法について説明する。エアループ弛み量制御は第3センサ13cの受光状態に応じてウェブ取込速度の制御を行い、第3センサ13cが遮光のエアループ位置4b1であればウェブ取込速度を一定周期で減速し、透過のエアループ位置4a1であればウェブ取込速度を一定周期で加速することで、第3センサ13cを基準位置とするウェブ搬送制御を行っている。
【0047】
図9は、第3センサ13cの位置を中心とするウェブ搬送の、エアループセンサ信号のオン/オフ(ON/OFF)切り替えの時間変動を示しており、図10は、第3センサ13cの遮光状態S0および透過状態S1の切り替え検出を契機として求めるウェブ取込速度変動の平均速度と、安定状態移行を判定する有効範囲との関係を示している。
【0048】
図9に示すように、印刷開始時などエアループ4が第3センサ13cから離れた位置にある場合、ウェブ取込速度の加速または減速する時間も長くなり、時間の経過とともに第3センサ13cを中心とする遮光S0および透過S1の時間が短くなる。
そこで本発明の実施例1では、図10に示すように、印刷開始から第3センサ13cの受光状態が遮光または透過への切り替わりを契機に、エアループセンサ信号の切り替え時間と、エアループセンサ信号切り替え時間中において、ステッピングモータ用いたウェブ取込機構3の駆動モータ14に設定するモータの回転速度データをウェブ取込速度として20mm/sec周期毎に変動履歴として後述する図11に示す記憶装置29Aの記憶域に記憶・保存し、記憶域に保存したエアループセンサ信号の切り替え時間と、ウェブ取込速度の変動履歴から求める平均速度を用いて、任意の回数分繰り返し有効値が得られることをもって安定状態への移行を判定する(後述する図11に示すCPU28A参照)。
【0049】
ウェブ取込機構3のエアループセンサ信号の切り替え時間については、図9に示すように、許容範囲(1)に納まるか否かのチェックを行う。許容範囲外[(1)+(2)]であれば、上記記憶域に保存した情報を破棄し、再度エアループセンサ信号切り替え時間と、ウェブ取込速度の変動履歴の保存を開始する。
エアループセンサ信号の切り替え時間が許容範囲(1)内であれば、図10に示すようにウェブ取込速度の変動履歴から求める平均速度について有効範囲(印刷速度の±5%の範囲に対応している)にあるか否かをチェックする。平均速度が許容範囲(1)内であれば、再度エアループセンサ信号切り替え時間と、ウェブ取込速度の変動履歴を上記記憶域に保存し、平均速度を求め、平均速度の判定を実施し、平均速度が一定期間以上有効範囲を維持することでエアループの安定状態検出と判定する。
【0050】
平均速度が許容範囲外[(1)+(2)]であれば、上記記憶域に保存した情報を破棄し、再度、ウェブ取込機構3の速度切り替え時間と、ウェブ取込速度の変動履歴を上記記憶域に保存する。
エアループの安定状態検出以降の制御では、エアループ安定状態検出時に算出した平均速度を基準に制御を行うことで、使用するウェブ1に適した速度設定となり、エアループ4の搬送位置を下げた後もエアループ4の安定状態維持が容易となる。
また、第3センサ13cのみで判定している、エアループ4の受光状態をより正確に検出するため、エアループ4の形状に合わせて複数個のセンサ(第1、第2、第4センサ13a,13b,13d)を配置することで、搬送中のウェブ1変形に対するエアループ4の搬送位置の検出精度を向上することができる。
【0051】
図11を参照して、本実施例1の制御構成について説明する。図11は、本実施例1における印刷装置15の要部の制御構成を示すブロック図である。図6に示した上記実施形態と同様の制御構成については同一符号を付すことにより説明を省略する。
本実施例1の制御構成は、図6の上記実施形態の制御構成と比較して、図11に示すように、「エアループ安定状態判定制御部33」を新たに用いる点、CPU28に代えて、「CPU28A」を用いる点、記憶装置29に代えて、「記憶装置29A」を用いる点が主に相違する。すなわち、本実施例1の基本となる制御構成は、図6の上記実施形態の基本的な制御構成である「エアループ弛み量制御部30」に加えて、CPU28Aにより制御される「エアループ安定状態判定制御部33」を有する点にある。
【0052】
本実施例1の制御構成は、上位システム制御コマンド25や入力装置26からの情報を受信する制御部27と、上記実施形態と同様の上記各情報に加えて、エアループ検出部13における第1〜第4センサ13a〜13dより出力される信号の切り替わり時間情報、およびウェブ取込機構3の駆動モータ14を駆動すべく設定したウェブ取込速度データの累積であるウェブ取込速度累積情報を記憶する記憶手段としての記憶装置29Aと、制御部27から出力される情報や、エアループ検出部13における第1〜第4センサ13a〜13dからのセンサ情報を記憶装置29Aに記憶・保存したり、記憶装置29Aから必要な情報を呼び出して演算・制御したりするCPU28Aと、CPU28Aが記憶装置29Aの保存情報とセンサ情報とを用いて制御するエアループ弛み量制御部30と、CPU28Aが記憶装置29Aの保存情報とセンサ情報とを用いて制御するエアループ安定状態判定制御部33と、エアループ弛み量制御部30やエアループ安定状態判定制御部33が、駆動モータ14を含むウェブ取込機構3と駆動モータ19を含むウェブ搬送機構8とを制御するためのモータドライバを含むドライバ部31と、により構成される。
上記実施形態と同様に、CPU28A、記憶装置29Aおよびタイマ32は、CPU、RAM、ROMおよび内部タイマを備えたマイクロコンピュータを用いて構成することが可能である。
【0053】
本実施例1では、印刷開始からエアループ検出部13が通知するセンサ情報を、CPU28Aが記憶装置29Aへ保存・記憶する。CPU28Aは、記憶装置29Aに保存したエアループ弛み制御情報24を用いて、定期的にエアループ弛み量制御部30を制御する。CPU28Aは、記憶装置29Aに保存した情報と、エアループ検出部13からのエアループ検知有無情報を用いて、エアループ弛み量制御部30を制御する。
また、CPU28Aは、記憶装置29Aに保存したセンサ情報から第3センサ13cの切り替わり時間情報34、ウェブ取込機構3の駆動モータ14を駆動すべく設定したウェブ取込速度データの累積であるウェブ取込速度累積情報35および連続性確認用速度情報36を求め、記憶装置29Aへ保存する。CPU28Aは、記憶装置29Aに保存した切り替わり時間情報34、ウェブ取込速度累積情報35および連続性確認用速度情報36を用いて、エアループ安定状態判定制御部33を制御する。エアループ安定状態判定制御部33は、ウェブ取込機構3およびウェブ搬送機構8の制御を行う。
【0054】
CPU28Aは、上記実施形態のCPU28と同様の演算・制御機能を有するとともに、エアループ4に弛み量を持たせたウェブ搬送で、印刷開始からの、エアループ検出部13における第1〜第4センサ13a〜13dより出力される信号をオンからオフ、またはオフからオンに切り替わる時間と、エアループ検出部13の信号切り替え時間中のウェブ取込速度累積情報をその累積回数で割ったウェブ取込速度の平均速度とを求めた後、該平均速度の推移からエアループ弛み量の変動周期を求め、ウェブ搬送におけるエアループ弛み量の変動が、記憶装置29Aに記憶された規定範囲内となることをもってエアループ安定状態か否かを判定する第2の制御手段としての機能を有する。
また、CPU28Aは、安定状態判定時に求めたウェブ取込速度の平均速度を基準にし、安定状態移行後のウェブ搬送制御を行うように、エアループ安定状態判定制御部33およびドライバ部31を介して、ウェブ取込機構3の駆動モータ14、ウェブ搬送機構8の駆動モータ19を制御する機能も有する。
【0055】
図12を参照して、エアループ弛み量の変動が安定状態と判定する方法を説明する。図12は、本実施例1におけるエアループ弛み量の変動が安定状態と判定する動作順序を表すフローチャートである。
図12に示すように、初めに初期化が必要か否かを判定し(S105)、初期化が必要であれば、図11の記憶装置29Aにおける、時間監視変数、切り替わり時間情報、ウェブ取込速度の累積情報、および連続性確認用速度情報の各記憶域を初期化する(S110では、変数の初期化と記載している)。
初期化が不要であれば、時間監視変数を一定周期で更新し、規定時間に到達したならばエアループ弛み量の安定状態判定処理を終了する(S120)。
規定時間に満たない場合、第3センサ13cによりエアループ4検出位置を読み込み・リードする(S130)。
エアループ4検出位置の読み込み・チェックにより、透過および遮光の切り替わりか否かを判定する(S140)。
【0056】
透過および遮光の切り替わり未検出であるならば、図11の記憶装置29Aにおける切り替わり時間情報34およびウェブ取込速度累積情報35をそれぞれ更新し、記憶装置29Aの記憶域に保存する(S150)。第3センサ13cによるエアループ4の検出位置のチェックにより、透過および遮光の切り替わりを検出したならば、切り替わり時間情報34が許容範囲に納まるか否かを判定する(S160)。
切り替わり時間情報34が許容範囲外であるならば、切り替わり時間情報34、ウェブ取込速度累積情報35および連続性確認用速度情報36における記憶装置29Aの記憶域を初期化する(S170)。
切り替わり時間情報34が許容範囲内であれば、ウェブ取込速度累積情報35を更新回数で割った平均速度を求め(S180)、平均速度が有効範囲であるか否かのチェックを行う(S190)。
【0057】
平均速度が有効範囲外であれば、切り替わり時間情報34、ウェブ取込速度累積情報35および連続性確認用速度情報36における記憶装置29Aの記憶域を初期化する(S200)。
平均速度が有効範囲内であれば、連続性があるか否かの判定を行うため、先に求めた平均速度の有無をチェックする(S210)。
連続性が無ければ、連続性確認用速度情報36における記憶装置29Aの記憶域に平均速度を保存する(S220)。
今回求めた平均速度と、連続性確認用速度情報36における記憶装置29Aの記憶域に保存した平均速度との平均値を求め(S230)、平均速度が一定期間以上有効範囲を維持すれば、エアループ弛み量の変動が安定状態の検出と判定し、用紙取込速度情報を設定する(S240)。
【0058】
以上説明したように、本実施例1によれば、上記実施形態による基本的な効果に加え、上記実施形態に対し、より安定したエアループ制御が可能となる。すなわち、本実施例1によれば、ウェブ1を搬送する速度が高速の場合でも、外部の給紙装置12が突然搬送停止した場合に、ウェブ搬送時におけるエアループ弛み量が安定しているかを早期に検出できるので、ウェブ搬送機構8へのダメージを与える期間を短くすることが可能となる。
また、エアループ機構17を大幅に変更することなく、エアループ4が必要とする弛み量を確保することができるとともに、ウェブ1の搬送が突然停止した場合に、ウェブ搬送機構8の動作を停止するまでの時間を確保することができ、ウェブ搬送機構8に対するダメージが回避可能となる。
【0059】
以上説明したとおり、本発明を、特定の実施例および実施形態等について説明したが、本発明が開示する技術事項は、上述した実施例および実施形態等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【0060】
本発明を適用可能な画像形成装置としては、図1に示した電子写真方式の印刷装置に限らず、インクジェット方式(シリアル型やライン型を含む)で画像記録・形成を行う画像形成装置等にも適用可能なことは無論である。
【符号の説明】
【0061】
1 ウェブ
2 ガイドローラ
3 ウェブ取込機構(ウェブ取込手段、エアループ形成手段)
4 エアループ
4a エアループ
4b エアループ
4a1 遮光状態のエアループ
4b1 透過状態のエアループ
5 ガイド
6 固定ローラ
7 プレッシャローラ
8、8A ウェブ搬送機構(ウェブ搬送手段、エアループ形成手段)
9 感光ドラム(画像形成手段、画像形成部)
10 転写器(転写手段、転写部、画像形成部)
11 定着部(定着手段)
12 給紙装置(給送手段)
13 エアループ検出部(エアループ検出手段)
13a 第1センサ(エアループ検出手段)
13b 第2センサ(エアループ検出手段)
13c 第3センサ(エアループ検出手段)
13d 第4センサ(エアループ検出手段)
14 駆動モータ(ウェブ取込手段の駆動手段)
15 印刷装置(画像形成装置)
16 バッファ
17 エアループ機構(エアループ形成手段)
19 駆動モータ(ウェブ搬送手段の駆動手段)
20 制御部
28A CPU
29A 記憶装置
30 エアループ弛み量制御部
31 ドライバ部
33 エアループ安定状態判定制御部
34 切り替わり時間情報
35 ウェブ取込速度累積情報
36 連続性確認用速度情報
V0 ウェブ搬送機構のウェブ搬送速度
VT ウェブ取込機構のウェブ搬送速度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2004−292133号公報
【特許文献2】特開2007−044875号公報
【特許文献3】特開2003−246517号公報
【特許文献4】特開2008−184281号公報
【特許文献5】特開2010−143723号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部にウェブを搬送するための、駆動手段を備えたウェブ搬送手段と、装置本体の内部にウェブを取込むウェブ取込手段と、該ウェブ取込手段と前記ウェブ搬送手段との間で、ウェブを自重により弛ませてエアループを形成するエアループ形成手段と、該エアループ形成手段での前記エアループの弛み量を検出するエアループ検出手段とを有するウェブ搬送装置において、
前記エアループ検出手段より出力される信号の切り替わり時間情報、および前記ウェブ取込手段の前記駆動手段を駆動すべく設定したウェブ取込速度データの累積であるウェブ取込速度累積情報を記憶する記憶手段と、
印刷開始時から任意のタイミングとなるまでは、前記エアループ検出手段からの信号に基づいて、第1のエアループの弛み量を保持するように前記エアループ形成手段を制御し、前記任意のタイミングになってから印刷停止までは、前記エアループ検出手段からの信号に基づいて、第2のエアループの弛み量を保持するように前記エアループ形成手段を制御する第1の制御手段と、
前記エアループに弛み量を持たせたウェブ搬送で、印刷開始からの前記エアループ検出手段より出力される信号をオンからオフ、またはオフからオンに切り替わる時間と、前記エアループ検出手段の信号切り替え時間中の前記ウェブ取込速度累積情報をその累積回数で割ったウェブ取込速度の平均速度とを求めた後、該平均速度の推移から前記エアループ弛み量の変動周期を求め、前記ウェブ搬送における前記エアループ弛み量の変動が、前記記憶手段に記憶された規定範囲内となることをもってエアループ安定状態を判定する第2の制御手段と、
を具備することを特徴とするウェブ搬送装置。
【請求項2】
第2の制御手段は、安定状態判定時に求めた前記ウェブ取込速度の平均速度を基準にし、安定状態移行後のウェブ搬送制御を行うことを特徴とする請求項1記載のウェブ搬送装置。
【請求項3】
エアループセンサ信号の切り替え時間判定に複数個のセンサを用いることを特徴とする請求項1記載のウェブ搬送装置。
【請求項4】
エアループセンサ信号の切り替え時間が有効であるか判定するために、印刷速度に対応した有効範囲を設けたことを特徴とする請求項1記載のウェブ搬送装置。
【請求項5】
前記ウェブ取込速度累積情報より求めた前記ウェブ取込速度の平均速度が有効であるか判定するために、印刷速度に対応した有効範囲を設けたことを特徴とする請求項1記載のウェブ搬送装置。
【請求項6】
搬送されてくるウェブに画像を形成する画像形成部と、該画像形成部にウェブを搬送するウェブ搬送装置とを有する画像形成装置において、
請求項1ないし5の何れか一つに記載のウェブ搬送装置を具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−63821(P2013−63821A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203544(P2011−203544)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】