ウェーハの分割方法
【課題】ウェーハの表面側のデバイスを破損させることないウェーハの分割方法を提供する。
【解決手段】ウェーハWのデバイス領域Waに相当する大きさの凹部10aをサポート部材1に形成し、ウェーハWのデバイス領域Waを凹部10aに対面させてウェーハWの外周余剰領域Wbとサポート部材1の外周部10bとを接着することにより、デバイス領域Waをサポート部材1に接触させずに保持する。そして、その状態でウェーハをデバイスに分割した後、サポート部材1をウェーハから剥離することにより、ウェーハをサポート部材から剥離するときにデバイスが破損するのを防ぐことができる。
【解決手段】ウェーハWのデバイス領域Waに相当する大きさの凹部10aをサポート部材1に形成し、ウェーハWのデバイス領域Waを凹部10aに対面させてウェーハWの外周余剰領域Wbとサポート部材1の外周部10bとを接着することにより、デバイス領域Waをサポート部材1に接触させずに保持する。そして、その状態でウェーハをデバイスに分割した後、サポート部材1をウェーハから剥離することにより、ウェーハをサポート部材から剥離するときにデバイスが破損するのを防ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハにレーザ光を照射してデバイスに分割する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パルスレーザ光を用いてウェーハを個々のデバイスに分割する加工方法が試みられている。このレーザ光を用いた分割方法では、例えば被加工物がシリコンウェーハの場合は、被加工物の一方の面から内部に集光点を合わせてシリコンウェーハに対して透過性を有する例えば波長が1064nm のパルスレーザ光を照射し、ウェーハの内部に分割予定ラインに沿って変質層を連続的に形成する。そして、この変質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割予定ラインに沿って分割することができる(例えば、特許文献1参照)。実際の加工時には、ウェーハのデバイスが形成された表面側に保護テープを貼着し、保護テープ側をレーザ加工装置のチャックテーブルに保持し、露出しているウェーハの裏面側からパルスレーザ光を照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えばウェーハの表面側のデバイスが、加速度センサー等のマイクロマシンデバイスのように非常に脆いデバイスの場合には、表面側に保護テープを貼着してしまうと、その剥離時にデバイスが破損してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その課題は、ウェーハの表面側のデバイス面を破損させることないウェーハの分割方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウェーハを分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割するウェーハの分割方法に関するもので、ウェーハと同径またはウェーハよりも大きい外径を有するサポート部材の表面にウェーハのデバイス領域に相当する大きさの凹部を形成するサポート部材準備ステップと、サポート部材準備ステップの後に、ウェーハのデバイス部を凹部に対面させサポート部材の表面上にウェーハを載置し、外周余剰領域及びサポート部材の外周部に接着剤を塗布し、サポート部材の外周部にウェーハの外周余剰領域を固着する固着ステップと、固着ステップの後に、ウェーハに対して透過性を有するレーザ光をウェーハの裏面側から分割予定ラインに沿って照射し、ウェーハの内部に分割予定ラインに沿って変質層を形成する変質層形成ステップと、変質層形成ステップが実施されたウェーハの裏面に、環状のフレームに貼着されたエキスパンドテープを貼着するエキスパンドテープ貼着ステップと、エキスパンドテープ貼着ステップの後に、サポート部材をウェーハの表面から取り外すサポート部材取り外しステップと、サポート部材取り外しステップの後に、エキスパンドテープを拡張することによりウェーハを分割予定ラインに沿って破断するテープ拡張ステップとを含む。
【0007】
このウェーハの分割方法では、変質層形成ステップにおいて、ウェーハの内部に分割予定ラインに沿って変質層を形成すると共にデバイス領域と外周余剰領域との境界部に沿ってウェーハに対して透過性を有するレーザ光をウェーハの裏面側から照射して境界部に沿ってウェーハの内部に変質層を形成し、サポート部材取り外しステップにおいて、ウェーハを境界部に沿って形成された変質層に沿って破断してサポート部材と共にサポート部材に固着されたウェーハの外周余剰領域をエキスパンドテープから取り外すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ウェーハのデバイス領域に相当する大きさの凹部をサポート部材に形成し、ウェーハのデバイス領域を凹部に対面させてウェーハの外周余剰領域とサポート部材の外周部とを接着することにより、デバイス領域をサポート部材に接触させずにウェーハを保持し、その状態でウェーハをデバイスに分割した後、サポート部材をウェーハから剥離するため、ウェーハをサポート部材から剥離するときにデバイスが破損するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明をステップごとに示したフローチャートである。
【図2】ウェーハの一例を示す斜視図である。
【図3】凹部が形成されたサポート部材を示す断面図である。
【図4】ウェーハのデバイス領域とサポート部材の凹部とが対面した状態を略示的に示す断面図である。
【図5】ウェーハとサポート部材とが接着された状態を略示的に示す断面図である。
【図6】ウェーハの内部に変質層を形成する状態を略示的に示す断面図である。
【図7】ウェーハをエキスパンドテープに貼着した状態を略示的に示す断面図である。
【図8】接着剤に紫外線を照射する状態を略示的に示す断面図である。
【図9】ウェーハからサポート部材を取り外す状態を略示的に示す断面図である。
【図10】ウェーハがテープ拡張装置の保持テーブルに保持された状態を略示的に示す断面図である。
【図11】テープ拡張装置においてエキスパンドテープを拡張させた状態を略示的に示す断面図である。
【図12】ウェーハの境界部に沿って変質層を形成する状態を略示的に示す断面図である。
【図13】サポート部材と共にサポート部材に固着されたウェーハの外周余剰領域をエキスパンドテープから取り外す状態を略示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図1に示すフローチャートに沿って、適宜他の図を参照しながら、図2に示すウェーハWを分割する場合について説明する。
【0011】
図2に示すウェーハWは、複数のデバイスDが形成されたデバイス領域Waと、デバイス領域Waを囲繞しデバイスが形成されていない外周余剰領域Wbとから構成されている。デバイス領域Waと外周余剰領域Wbとは、境界部Wabによって仕切られている。デバイスDは、分割予定ラインLによって区画されて形成され、表面W1側に形成されている。デバイスDには、例えばマイクロマシンデバイスのように機械的強度が弱いものが含まれる。
【0012】
[1]第1の実施形態
(1)サポート部材準備ステップ(ステップS1)
図3に示すように、表面に凹部10aが形成されたサポート部材1を準備する。このサポート部材1は、例えば厚さが700μm程度のシリコンウェーハ、ガラス等であり、ウェーハWと同径か、または、ウェーハWよりも大径に形成されている。凹部10aは、例えば平板状のサポート部材1の表面を研削砥石によって研削することによって形成することができる。凹部10aは、ウェーハWのデバイス領域Waに相当する大きさに形成され、デバイス領域Waと同径か、またはデバイス領域Waよりも若干大径に形成される。また、凹部10aは、例えば40〜50μmの深さを有するように形成する。凹部10aの外周側は、凹部10aよりもリング状に厚く形成された外周部10bを構成している。
【0013】
(2)固着ステップ(ステップS2)
サポート部材準備ステップの後に、図4に示すように、ウェーハWの表面側において突出したデバイス領域Waとサポート部材1の凹部10aとを対面させる。そして、図5に示すように、ウェーハWの外周余剰領域Wb及びサポート部材1の外周部10bの表面に接着剤2を塗布し、サポート部材1の外周部10bにウェーハWの外周余剰領域Wbを固着する。接着剤2としては、紫外線硬化樹脂を用いる。このようにしてウェーハWとサポート部材1とを貼り合わせることにより、ウェーハWのデバイス領域Waは、凹部10aに収容され、サポート部材1と接触しない状態となる。すなわち、凹部10aの深さと接着剤2の厚さとを足した値は、ウェーハWのデバイス領域Waの突出部分の高さよりも大きい。
【0014】
(3)変質層形成ステップ(ステップS3)
固着ステップの後に、図6に示すように、ウェーハWに対して透過性を有するレーザ光3aをレーザ光照射ヘッド3からウェーハWの裏面W2側に照射し、レーザ光3aをウェーハWの内部に集光させる。このレーザ光3aの照射は、サポート部材1とともにウェーハWを図6における前後方向に移動させながら、図1に示した分割予定ラインLに沿って行う。そうすると、ウェーハWの内部に変質層Cが形成される。この変質層Cは、後に外力を加えて切断を行う際の起点となるものであり、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性のいずれかがその周囲とは異なる状態となった層のことであり、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。この変質層Cは、図2に示したすべての分割予定ラインLに沿って形成する。
【0015】
(4)エキスパンドテープ貼着ステップ(ステップS4)
次に、図7に示すように、変質層形成ステップが実施されたウェーハWの裏面W2に、エキスパンドテープTを貼着する。このエキスパンドテープTは、例えばポリ塩化ビニルからなるシート基材の一方の面に粘着層を塗布して構成され、伸張可能に形成されている。エキスパンドテープTの周縁部には環状のフレームFが貼着されており、ウェーハWは、エキスパンドテープTを介してフレームFと一体化される。
【0016】
(5)サポート部材取り外しステップ(ステップS5)
サポート部材1がガラスなどの紫外線を透過させる材質により形成され、接着剤2が紫外線硬化樹脂で構成されている場合は、エキスパンドテープ貼着ステップの後に、図8に示すように、サポート部材1側から紫外線を照射し、接着剤2を硬化させて接着力を低下させる。そして、接着剤2の接着力が低下した後、図9に示すように、サポート部材1を剥離して取り外す。デバイス領域Waがサポート部材に貼着されていないため、取り外し時にデバイスが破損することがない。
【0017】
(6)テープ拡張ステップ(ステップS6)
サポート部材取り外しステップの後に、図10に示すように、テープ拡張装置4の保持テーブル40にテープT側を載置し、フレームFをフレーム保持部41において保持する。フレーム保持部41は、シリンダ42によって駆動されるピストン43に固定されており、ピストン43とともに昇降する構成となっている。テープ拡張ステップでは、図11に示すように、フレーム保持部41が保持テーブル40との関係で相対的に下降するようにフレーム保持部41と保持テーブル40とを上下方向に相対移動させる。そうすると、下降するフレームFによってテープTが伸張されて拡張し、これによって変質層Cに対して水平方向の外力がはたらくため、変質層CにおいてウェーハWが破断され、個々のデバイスDごとに分割される。
【0018】
以上のように、固着ステップにおいてはデバイス領域Waがサポート部材1と接触しない状態でウェーハWが保持されるため、サポート部材取り外しステップにおいてウェーハからサポート部材を取り外す際にデバイスが破損するおそれがない。したがって、テープ拡張ステップにおいては、破損のない個々のデバイスを得ることができる。
【0019】
[2]第2の実施形態
第2の実施形態として、第1の実施形態で用いた紫外線硬化樹脂からなる接着剤2に代えて、図12に示すように、例えばエポキシ樹脂、ワックス等の、紫外線硬化樹脂以外の接着剤2aを用いた場合について説明する。
【0020】
サポート部材準備ステップ(ステップS1)は、第1の実施形態の場合と同様に行われる。次の固着ステップ(ステップS2)も、接着剤の種類が異なる以外は、第1の実施形態の場合と同様に行われる。
【0021】
変質層形成ステップ(ステップS3)では、図12に示すように、ウェーハWの内部に分割予定ラインに沿って変質層Cを形成するとともに、ウェーハWとレーザ光照射ヘッド3とを相対的に回転させながら、裏面W2側から、デバイス領域Waと外周余剰領域Wbとの境界部Wabに沿って、ウェーハWに対して透過性を有するレーザ光3bをレーザ光照射ヘッド3から照射してウェーハWの内部に集光し、境界部Wabに沿ってウェーハWの内部に変質層Cabを形成する。
【0022】
エキスパンドテープ貼着工程(ステップS4)を第1の実施形態と同様に行った後、サポート部材取り外しステップ(ステップS5)では、図13に示すように、例えば外周余剰領域Wbと内径がほぼ等しいサイズの硬質リング部材をエキスパンドテープT側から押圧するなどにより、図12に示した変質層Cabに沿って破断させてデバイス領域Waと外周余剰領域Wbとに分離させた後、サポート部材1及び接着剤2aとともに外周余剰領域Wbを取り外す。
【0023】
その後、第1の実施形態と同様にテープ拡張ステップ(ステップS6)を実施し、個々のデバイスDごとに分割する。第2の実施形態においても、固着ステップにおいてはデバイス領域Waがサポート部材1と接触しない状態でウェーハWが保持されるため、サポート部材取り外しステップにおいてウェーハからサポート部材を取り外す際にデバイスが破損するおそれがない。したがって、テープ拡張ステップにおいて、破損のない個々のデバイスを得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
W:ウェーハ
W1:表面 W2:裏面 Wa:デバイス領域 Wb:外周余剰領域 Wab:境界部
L:分割予定ライン D:デバイス C、Cab:変質層
T:エキスパンドテープ F:フレーム
1:サポート部材 10a:凹部 10b:外周部
2、2a:接着剤
3:レーザ光照射ヘッド 3a、3b:レーザ光
4:テープ拡張装置 40:保持テーブル 41:フレーム保持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハにレーザ光を照射してデバイスに分割する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パルスレーザ光を用いてウェーハを個々のデバイスに分割する加工方法が試みられている。このレーザ光を用いた分割方法では、例えば被加工物がシリコンウェーハの場合は、被加工物の一方の面から内部に集光点を合わせてシリコンウェーハに対して透過性を有する例えば波長が1064nm のパルスレーザ光を照射し、ウェーハの内部に分割予定ラインに沿って変質層を連続的に形成する。そして、この変質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割予定ラインに沿って分割することができる(例えば、特許文献1参照)。実際の加工時には、ウェーハのデバイスが形成された表面側に保護テープを貼着し、保護テープ側をレーザ加工装置のチャックテーブルに保持し、露出しているウェーハの裏面側からパルスレーザ光を照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えばウェーハの表面側のデバイスが、加速度センサー等のマイクロマシンデバイスのように非常に脆いデバイスの場合には、表面側に保護テープを貼着してしまうと、その剥離時にデバイスが破損してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その課題は、ウェーハの表面側のデバイス面を破損させることないウェーハの分割方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウェーハを分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割するウェーハの分割方法に関するもので、ウェーハと同径またはウェーハよりも大きい外径を有するサポート部材の表面にウェーハのデバイス領域に相当する大きさの凹部を形成するサポート部材準備ステップと、サポート部材準備ステップの後に、ウェーハのデバイス部を凹部に対面させサポート部材の表面上にウェーハを載置し、外周余剰領域及びサポート部材の外周部に接着剤を塗布し、サポート部材の外周部にウェーハの外周余剰領域を固着する固着ステップと、固着ステップの後に、ウェーハに対して透過性を有するレーザ光をウェーハの裏面側から分割予定ラインに沿って照射し、ウェーハの内部に分割予定ラインに沿って変質層を形成する変質層形成ステップと、変質層形成ステップが実施されたウェーハの裏面に、環状のフレームに貼着されたエキスパンドテープを貼着するエキスパンドテープ貼着ステップと、エキスパンドテープ貼着ステップの後に、サポート部材をウェーハの表面から取り外すサポート部材取り外しステップと、サポート部材取り外しステップの後に、エキスパンドテープを拡張することによりウェーハを分割予定ラインに沿って破断するテープ拡張ステップとを含む。
【0007】
このウェーハの分割方法では、変質層形成ステップにおいて、ウェーハの内部に分割予定ラインに沿って変質層を形成すると共にデバイス領域と外周余剰領域との境界部に沿ってウェーハに対して透過性を有するレーザ光をウェーハの裏面側から照射して境界部に沿ってウェーハの内部に変質層を形成し、サポート部材取り外しステップにおいて、ウェーハを境界部に沿って形成された変質層に沿って破断してサポート部材と共にサポート部材に固着されたウェーハの外周余剰領域をエキスパンドテープから取り外すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ウェーハのデバイス領域に相当する大きさの凹部をサポート部材に形成し、ウェーハのデバイス領域を凹部に対面させてウェーハの外周余剰領域とサポート部材の外周部とを接着することにより、デバイス領域をサポート部材に接触させずにウェーハを保持し、その状態でウェーハをデバイスに分割した後、サポート部材をウェーハから剥離するため、ウェーハをサポート部材から剥離するときにデバイスが破損するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明をステップごとに示したフローチャートである。
【図2】ウェーハの一例を示す斜視図である。
【図3】凹部が形成されたサポート部材を示す断面図である。
【図4】ウェーハのデバイス領域とサポート部材の凹部とが対面した状態を略示的に示す断面図である。
【図5】ウェーハとサポート部材とが接着された状態を略示的に示す断面図である。
【図6】ウェーハの内部に変質層を形成する状態を略示的に示す断面図である。
【図7】ウェーハをエキスパンドテープに貼着した状態を略示的に示す断面図である。
【図8】接着剤に紫外線を照射する状態を略示的に示す断面図である。
【図9】ウェーハからサポート部材を取り外す状態を略示的に示す断面図である。
【図10】ウェーハがテープ拡張装置の保持テーブルに保持された状態を略示的に示す断面図である。
【図11】テープ拡張装置においてエキスパンドテープを拡張させた状態を略示的に示す断面図である。
【図12】ウェーハの境界部に沿って変質層を形成する状態を略示的に示す断面図である。
【図13】サポート部材と共にサポート部材に固着されたウェーハの外周余剰領域をエキスパンドテープから取り外す状態を略示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図1に示すフローチャートに沿って、適宜他の図を参照しながら、図2に示すウェーハWを分割する場合について説明する。
【0011】
図2に示すウェーハWは、複数のデバイスDが形成されたデバイス領域Waと、デバイス領域Waを囲繞しデバイスが形成されていない外周余剰領域Wbとから構成されている。デバイス領域Waと外周余剰領域Wbとは、境界部Wabによって仕切られている。デバイスDは、分割予定ラインLによって区画されて形成され、表面W1側に形成されている。デバイスDには、例えばマイクロマシンデバイスのように機械的強度が弱いものが含まれる。
【0012】
[1]第1の実施形態
(1)サポート部材準備ステップ(ステップS1)
図3に示すように、表面に凹部10aが形成されたサポート部材1を準備する。このサポート部材1は、例えば厚さが700μm程度のシリコンウェーハ、ガラス等であり、ウェーハWと同径か、または、ウェーハWよりも大径に形成されている。凹部10aは、例えば平板状のサポート部材1の表面を研削砥石によって研削することによって形成することができる。凹部10aは、ウェーハWのデバイス領域Waに相当する大きさに形成され、デバイス領域Waと同径か、またはデバイス領域Waよりも若干大径に形成される。また、凹部10aは、例えば40〜50μmの深さを有するように形成する。凹部10aの外周側は、凹部10aよりもリング状に厚く形成された外周部10bを構成している。
【0013】
(2)固着ステップ(ステップS2)
サポート部材準備ステップの後に、図4に示すように、ウェーハWの表面側において突出したデバイス領域Waとサポート部材1の凹部10aとを対面させる。そして、図5に示すように、ウェーハWの外周余剰領域Wb及びサポート部材1の外周部10bの表面に接着剤2を塗布し、サポート部材1の外周部10bにウェーハWの外周余剰領域Wbを固着する。接着剤2としては、紫外線硬化樹脂を用いる。このようにしてウェーハWとサポート部材1とを貼り合わせることにより、ウェーハWのデバイス領域Waは、凹部10aに収容され、サポート部材1と接触しない状態となる。すなわち、凹部10aの深さと接着剤2の厚さとを足した値は、ウェーハWのデバイス領域Waの突出部分の高さよりも大きい。
【0014】
(3)変質層形成ステップ(ステップS3)
固着ステップの後に、図6に示すように、ウェーハWに対して透過性を有するレーザ光3aをレーザ光照射ヘッド3からウェーハWの裏面W2側に照射し、レーザ光3aをウェーハWの内部に集光させる。このレーザ光3aの照射は、サポート部材1とともにウェーハWを図6における前後方向に移動させながら、図1に示した分割予定ラインLに沿って行う。そうすると、ウェーハWの内部に変質層Cが形成される。この変質層Cは、後に外力を加えて切断を行う際の起点となるものであり、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性のいずれかがその周囲とは異なる状態となった層のことであり、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。この変質層Cは、図2に示したすべての分割予定ラインLに沿って形成する。
【0015】
(4)エキスパンドテープ貼着ステップ(ステップS4)
次に、図7に示すように、変質層形成ステップが実施されたウェーハWの裏面W2に、エキスパンドテープTを貼着する。このエキスパンドテープTは、例えばポリ塩化ビニルからなるシート基材の一方の面に粘着層を塗布して構成され、伸張可能に形成されている。エキスパンドテープTの周縁部には環状のフレームFが貼着されており、ウェーハWは、エキスパンドテープTを介してフレームFと一体化される。
【0016】
(5)サポート部材取り外しステップ(ステップS5)
サポート部材1がガラスなどの紫外線を透過させる材質により形成され、接着剤2が紫外線硬化樹脂で構成されている場合は、エキスパンドテープ貼着ステップの後に、図8に示すように、サポート部材1側から紫外線を照射し、接着剤2を硬化させて接着力を低下させる。そして、接着剤2の接着力が低下した後、図9に示すように、サポート部材1を剥離して取り外す。デバイス領域Waがサポート部材に貼着されていないため、取り外し時にデバイスが破損することがない。
【0017】
(6)テープ拡張ステップ(ステップS6)
サポート部材取り外しステップの後に、図10に示すように、テープ拡張装置4の保持テーブル40にテープT側を載置し、フレームFをフレーム保持部41において保持する。フレーム保持部41は、シリンダ42によって駆動されるピストン43に固定されており、ピストン43とともに昇降する構成となっている。テープ拡張ステップでは、図11に示すように、フレーム保持部41が保持テーブル40との関係で相対的に下降するようにフレーム保持部41と保持テーブル40とを上下方向に相対移動させる。そうすると、下降するフレームFによってテープTが伸張されて拡張し、これによって変質層Cに対して水平方向の外力がはたらくため、変質層CにおいてウェーハWが破断され、個々のデバイスDごとに分割される。
【0018】
以上のように、固着ステップにおいてはデバイス領域Waがサポート部材1と接触しない状態でウェーハWが保持されるため、サポート部材取り外しステップにおいてウェーハからサポート部材を取り外す際にデバイスが破損するおそれがない。したがって、テープ拡張ステップにおいては、破損のない個々のデバイスを得ることができる。
【0019】
[2]第2の実施形態
第2の実施形態として、第1の実施形態で用いた紫外線硬化樹脂からなる接着剤2に代えて、図12に示すように、例えばエポキシ樹脂、ワックス等の、紫外線硬化樹脂以外の接着剤2aを用いた場合について説明する。
【0020】
サポート部材準備ステップ(ステップS1)は、第1の実施形態の場合と同様に行われる。次の固着ステップ(ステップS2)も、接着剤の種類が異なる以外は、第1の実施形態の場合と同様に行われる。
【0021】
変質層形成ステップ(ステップS3)では、図12に示すように、ウェーハWの内部に分割予定ラインに沿って変質層Cを形成するとともに、ウェーハWとレーザ光照射ヘッド3とを相対的に回転させながら、裏面W2側から、デバイス領域Waと外周余剰領域Wbとの境界部Wabに沿って、ウェーハWに対して透過性を有するレーザ光3bをレーザ光照射ヘッド3から照射してウェーハWの内部に集光し、境界部Wabに沿ってウェーハWの内部に変質層Cabを形成する。
【0022】
エキスパンドテープ貼着工程(ステップS4)を第1の実施形態と同様に行った後、サポート部材取り外しステップ(ステップS5)では、図13に示すように、例えば外周余剰領域Wbと内径がほぼ等しいサイズの硬質リング部材をエキスパンドテープT側から押圧するなどにより、図12に示した変質層Cabに沿って破断させてデバイス領域Waと外周余剰領域Wbとに分離させた後、サポート部材1及び接着剤2aとともに外周余剰領域Wbを取り外す。
【0023】
その後、第1の実施形態と同様にテープ拡張ステップ(ステップS6)を実施し、個々のデバイスDごとに分割する。第2の実施形態においても、固着ステップにおいてはデバイス領域Waがサポート部材1と接触しない状態でウェーハWが保持されるため、サポート部材取り外しステップにおいてウェーハからサポート部材を取り外す際にデバイスが破損するおそれがない。したがって、テープ拡張ステップにおいて、破損のない個々のデバイスを得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
W:ウェーハ
W1:表面 W2:裏面 Wa:デバイス領域 Wb:外周余剰領域 Wab:境界部
L:分割予定ライン D:デバイス C、Cab:変質層
T:エキスパンドテープ F:フレーム
1:サポート部材 10a:凹部 10b:外周部
2、2a:接着剤
3:レーザ光照射ヘッド 3a、3b:レーザ光
4:テープ拡張装置 40:保持テーブル 41:フレーム保持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウェーハを分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割するウェーハの分割方法であって、
該ウェーハと同径または該ウェーハよりも大きい外径を有するサポート部材の表面に該ウェーハの該デバイス領域に相当する大きさの凹部を形成するサポート部材準備ステップと、
該サポート部材準備ステップの後に、該ウェーハの該デバイス部を該凹部に対面させ該サポート部材の表面上に該ウェーハを載置し、該外周余剰領域及び該サポート部材の外周部に接着剤を塗布し、該サポート部材の外周部に該ウェーハの該外周余剰領域を固着する固着ステップと、
該固着ステップの後に、該ウェーハに対して透過性を有するレーザ光を該ウェーハの裏面側から該分割予定ラインに沿って照射し、該ウェーハの内部に該分割予定ラインに沿って変質層を形成する変質層形成ステップと、
該変質層形成ステップが実施された該ウェーハの裏面に、環状のフレームに貼着されたエキスパンドテープを貼着するエキスパンドテープ貼着ステップと、
該エキスパンドテープ貼着ステップの後に、該サポート部材を該ウェーハの表面から取り外すサポート部材取り外しステップと、
該サポート部材取り外しステップの後に、該エキスパンドテープを拡張することにより該ウェーハを該分割予定ラインに沿って破断するテープ拡張ステップと、
を含むウェーハの分割方法。
【請求項2】
前記変質層形成ステップにおいて、前記ウェーハの内部に前記分割予定ラインに沿って変質層を形成すると共に、前記デバイス領域と前記外周余剰領域との境界部に沿って該ウェーハに対して透過性を有するレーザ光を該ウェーハの裏面側から照射し、該境界部に沿ってウェーハの内部に変質層を形成し、
前記サポート部材取り外しステップにおいて、該ウェーハを該境界部に沿って形成された変質層に沿って破断し、該サポート部材と共に該サポート部材に固着された該ウェーハの該外周余剰領域を前記エキスパンドテープから取り外す、
請求項1記載のウェーハの分割方法。
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウェーハを分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割するウェーハの分割方法であって、
該ウェーハと同径または該ウェーハよりも大きい外径を有するサポート部材の表面に該ウェーハの該デバイス領域に相当する大きさの凹部を形成するサポート部材準備ステップと、
該サポート部材準備ステップの後に、該ウェーハの該デバイス部を該凹部に対面させ該サポート部材の表面上に該ウェーハを載置し、該外周余剰領域及び該サポート部材の外周部に接着剤を塗布し、該サポート部材の外周部に該ウェーハの該外周余剰領域を固着する固着ステップと、
該固着ステップの後に、該ウェーハに対して透過性を有するレーザ光を該ウェーハの裏面側から該分割予定ラインに沿って照射し、該ウェーハの内部に該分割予定ラインに沿って変質層を形成する変質層形成ステップと、
該変質層形成ステップが実施された該ウェーハの裏面に、環状のフレームに貼着されたエキスパンドテープを貼着するエキスパンドテープ貼着ステップと、
該エキスパンドテープ貼着ステップの後に、該サポート部材を該ウェーハの表面から取り外すサポート部材取り外しステップと、
該サポート部材取り外しステップの後に、該エキスパンドテープを拡張することにより該ウェーハを該分割予定ラインに沿って破断するテープ拡張ステップと、
を含むウェーハの分割方法。
【請求項2】
前記変質層形成ステップにおいて、前記ウェーハの内部に前記分割予定ラインに沿って変質層を形成すると共に、前記デバイス領域と前記外周余剰領域との境界部に沿って該ウェーハに対して透過性を有するレーザ光を該ウェーハの裏面側から照射し、該境界部に沿ってウェーハの内部に変質層を形成し、
前記サポート部材取り外しステップにおいて、該ウェーハを該境界部に沿って形成された変質層に沿って破断し、該サポート部材と共に該サポート部材に固着された該ウェーハの該外周余剰領域を前記エキスパンドテープから取り外す、
請求項1記載のウェーハの分割方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−228565(P2011−228565A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98582(P2010−98582)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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