説明

ウエ−ハの基準面形成方法及びその装置

【課題】半導体インゴットを切断したスライスドウエ−ハなどのウエーハの表面にある凹凸やうねり成分を変形させることなく、スライスドウエ−ハの表面に平坦な基準面を形成しようとする。
【解決手段】ウエ−ハ1を紫外線透過性のプレート2上にストレスの無い状態に配置し、このプレート2とウエ−ハ1の間に紫外線硬化性樹脂5を導入し、充填する。そして、プレート2側から紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂5を硬化させる。紫外線硬化性樹脂の硬化後にプレ−トからウエ−ハを分離すると、紫外線硬化性樹脂により形成された平坦な基準面を有するウエ−ハを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウエ−ハの製造工程においてインゴットから切断したスライスドウエ−ハやその他の各種ウエ−ハの少なくとも一面を高平坦度に研削するために、該ウエ−ハの他の一面側に平坦な基準面を形成する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体インゴットからウエ−ハを切断するための装置が種々用いられており、その中でマルチワイヤ−ソ−による切断は、一度に多数枚を切断できる装置として知られており、多用されている。この装置により得られたスライスドウエ−ハは、表面に凹凸があり、大きなうねり成分を有しているので、そのまま研削するには問題があった。
【0003】
すなわち、ウエーハ研削盤のロ−タリ−チャックテ−ブルに設けられた真空チャックに上記スライスドウエ−ハを吸着保持させると、該ウエ−ハは吸着面側に存在する大きなうねり成分が弾性変形して内部応力を保持したまま吸着面に沿った状態でチャックに吸着され、その状態で研削される。研削後、チャックからウエ−ハを外すと、その表面の粗さは良好に研削されていても上記内部応力により全体がスプリングバックして弾性変形前の状態に戻るので、研削面に大きなうねり成分に伴う凹凸が残留し、高い平坦度を得ることができなかった。
【0004】
上記のような欠点を解消するため、出願人らは、先に、スライスドウエ−ハに溶融ワックスを塗布し、このウエーハをプレートに軽く押圧して接着し、その後冷却してワックスを固化し、プレートとスライスドウエーハを分離することにより、スライスドウエ−ハに平面形状の基準面を形成する方法を提供した。(特許文献1)
【特許文献1】特開2000−005982号公報(請求項1)
【0005】
上記方法により、従来に比べて優良な基準面を得ることができるようになったが、基準面を形成する過程で熱を利用するのでワックスの膨張や収縮による体積変化が基準面の平坦度に影響を与えることがあること。溶融ワックスの冷却硬化後にスライスドウエーハがプレートから剥がれ難いことがあること。スライスドウエ−ハをプレートに押圧する際に、スライスドウエーハに部分的な圧力がかかって、変形、または、内部応力が残存したままの状態でワックスが固化して基準面が形成され、僅かながらスプリングバックによる変形が残留することがあること。等により、更なる改善が求められるようになってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容易かつ簡便な方法によって、スライスドウエ−ハその他のウエーハの基準面の形成において、ウエーハを変形することなく更に平坦度の高い基準面が得ることができるような基準面形成方法およびその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
半導体インゴットを切断したスライスドウエ−ハその他のウエ−ハを紫外線透過性のプレート上にストレスの無い状態に配置し、このプレートとウエ−ハの間に紫外線硬化性樹脂を導入させて充填し、プレート側から紫外線を照射する。この紫外線照射により紫外線硬化性樹脂は固化するので、その後プレ−トからウエ−ハを分離すると、紫外線硬化性樹脂により形成された平坦な基準面を有するウエ−ハを得ることができる。
【0008】
上記ウエ−ハの表面及びプレートの表面には、硬化した紫外線硬化樹脂に対して、ウエ−ハの表面側がプレートの表面側に比べて剥離性が小さく、密着性が大きくなるように、硬化した紫外線硬化性樹脂と密着性を向上させるためのウエ−ハ表面処理層をウエ−ハの表面に形成し、プレートの表面側には紫外線硬化樹脂の硬化後に容易に剥離ができるようにプレート表面処理層を予め形成しておくようにするとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、上記プレ−トの貼付面を基準とする平坦度の高い基準面をウエ−ハに形成することができる。また、基準面を形成する過程において基準面形成用の樹脂に熱をかけないことから、温度変化による体積の膨張や収縮の影響を受けることが無くなり、より高精度な基準面を得ることができると共に、冷却工程が必要ないので、一連の工程に要す時間を短縮することができる。また、基準面形成過程でウエーハをプレートに押圧せずに基準面を形成することできるため、ウエーハに内部応力が残存しないようにでき、スプリングバックにより基準面形成後に平坦性が損なわれることもない。さらに、プレ−トからウエ−ハを分離する際、無理してウエ−ハをプレ−トから分離する必要がなく、上記ウエーハや基準面に損傷を与える虞もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、基準面作成の概要を示すものであり、表面に多数の凹凸と大きなうねりを有するウエ−ハ1は、紫外線を透過することができ基準面形成用の主面(貼付面)を有するプレート2を用いて基準面が形成される。上記ウエ−ハ1はプレート2の上に配置され、ウエ−ハ1とプレート2の間に紫外線硬化性樹脂5を流入、充填し、プレート2側から紫外線を照射して該紫外線硬化性樹脂を硬化させる。硬化後にプレート2と紫外線硬化性樹脂5の間を剥がしてウエーハを取り出せば、紫外線硬化性樹脂5によって基準面が形成されたウエ−ハを得ることができる。
【0011】
図に示すものでは、予め、上記ウエ−ハ1の表面にはウエ−ハ表面処理層3を形成し、プレート2の表面にはプレート表面処理層4を形成している。上記ウエ−ハ表面処理層3は、硬化した紫外線硬化性樹脂5とウエーハ1の密着性を更に良くしており、プレート表面処理層4は、硬化した紫外線硬化性樹脂5がプレート2から一層容易に剥がすことができるようにしている。
【0012】
図2は、基準面作成方法の実施例の一つを示すものであり、表面に多数の凹凸と共にうねり成分を有するウエ−ハ1(図2のA)は、うねり成分が矯正された状態で真空チャック6に吸引され(図2のB)、プレート2上に移送され、該プレートに接し若しくは近接した状態に保持される(図2のC)。そして、上記プレート2の側面を囲む樹脂チャンバー7内に紫外線硬化性樹脂5が導入される(図2のD)。
【0013】
このようにしてプレート2とウエ−ハ1の間に生じた隙間に紫外線硬化性樹脂5が流入、充填されるが、この際、プレート2とウエ−ハ1の間に気泡が封入されないよう樹脂チャンバー7内を真空によって吸引しながら流入させ、充填するようにすることが好ましい。次にウエーハの保持を開放しうねり成分を発現させてウエーハをストレスがかかっていない状態としプレート2側から紫外線を照射し、プレート2とウエ−ハ1の間の紫外線硬化性樹脂5を硬化させる(図2のE)。このとき、樹脂がある程度ゲル化したときに上記真空チャック6を解除すると、ウエーハがプレート上で移動せず、定位置に保持することができる。その後、充分に硬化させ、余分な紫外線硬化性樹脂を除くと、プレート2とうねり成分を発現したウエ−ハ1の間に硬化した紫外線硬化性樹脂層5aが形成される(図2のF)。そして適宜の剥離手段によりプレート2からウエ−ハ1を剥がした後、再び上記真空チャック6に吸着して樹脂チャンバーから搬出すれば(図2のG)、硬化した紫外線硬化性樹脂層5aによって基準面8が形成されたウエ−ハを得ることができる。
【0014】
上記方法に使用される紫外線硬化性樹脂は、反応性プレポリマーと光重合開始剤を含むものであり、適宜に、重合禁止剤、添加剤などを混合することによって得られる。
【0015】
この紫外線硬化性樹脂の反応性プレポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸,メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)クリレート,n−ブチル(メタ)アクリレート,イソブチル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート,n−ラウリル(メタ)アクリレート,n−ステアリル(メタ)アクリレート,イソステアリル(メタ)アクリレート,メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート,メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート,テトラフルフリル(メタ)アクリレート,シクロヘキシル(メタ)アクリレート,ベンジル(メタ)アクリレート,フェノキシエチル(メタ)アクリレート,イソボルニル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート,ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート,ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート,2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート,2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート,2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート,2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート,グリシジル(メタ)アクリレート,2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート,エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,EO−変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート,グリセリンジ(メタ)アクリレート,tert−ブチル(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート,トリフロロメチル(メタ)アクリリレート,2,2,3,3,−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート,2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート,パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート,1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート,1,10−デカンジオールジ(メタクリレート),ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート,ビスフェノールAのエチレンオキシド(EO)−変性付加物(ジ)(メタ)アクリレート,ビスフェノールFのエチレンオキシド(EO)−変性付加物(ジ)(メタ)アクリレート,ビスフェノールAのプロピレンオキシド(PO)−変性付加物(ジ)(メタ)アクリレート,ビスフェノールFのプロピレンオキシド(PO)−変性付加物(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられ、1または2種以上を約50〜98重量%程度含有している。
【0016】
上記紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン,ベンゾイン,ベンゾイン誘導体,1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン,2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン,2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モンフォリノポロパノン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられ、これらの1または2種以上を約1〜10重量%程度含有している。
【0017】
上記紫外線硬化性樹脂の重合禁止剤は、例えば、ヒドロキノン,ヒドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられ、これらの1または2種以上を0.01〜1%含有している。
【0018】
上記紫外線硬化性樹脂の添加剤は、例えば、ガラスビーズ,シルクパウダー,(低分子)ポリエチレン,アクリル,四フッ化エチレン,酸化珪素,セルロース誘導体,シランカップリング剤等が挙げられ、必要に応じて約1〜10重量%程度配合される。
【0019】
上記した紫外線硬化性樹脂を硬化させるために使用する紫外線照射用の紫外線ランプは、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプなどが挙げられる。
この紫外線(365nm)の照度は1mW/cm以上、紫外線積算光量は100mJ/cm程度以上が必要で、市販品ではアズワン製ハンディーUVランプSLUV−6等を使用することができる。
【0020】
紫外線を照射することにより得られる基準面を形成する硬化した紫外線硬化性樹脂の厚みは、紫外線硬化性樹脂の粘度や液量などによって変化させることができ、ウエ−ハ表面に生じている凹凸やうねり成分に応じた適宜の厚さに形成することができ、通常、約10〜200μm程度の厚みとするのが適当である。
また、硬化した紫外線硬化性樹脂のダイナミック硬度は、温度、紫外線硬化性樹脂の組成、紫外線光量、照射時間等により変化するが、通常、約5〜50程度にするとよく、こうすると研削加工時の真空チャックによるスライスドウェーハの保持にも十分耐えることができる。
【0021】
上記したウエ−ハの表面に形成するウエ−ハ表面処理層3は、上記紫外線硬化性樹脂をウエーハに密着させるために有効である。上記紫外線硬化性樹脂は、硬化後にプレートから容易に剥離できることが重要であるので、そのために紫外線硬化性樹脂のウェーハに対する接着性も必然的に弱くなる傾向にある。
そこで、予めウェーハの表面をウェーハ表面処理剤で処理してウエ−ハ表面処理層を形成することにより、硬化した紫外線硬化性樹脂がウェーハに一層密着することができるようになる。ウェーハに密着した紫外線硬化性樹脂はその後の研削加工で剥がれることなく、ウエーハの研削加工を確実に行うことができる。
【0022】
このウエーハ表面処理剤は、樹脂と溶剤を含んでいる。こうした樹脂は、例えば、メタクリル酸メチルおよびその共重合樹脂,ポリビニルブチラール,ポリスチレン,スチレン−イソプレン共重合樹脂,スチレン−ブタジエン共重合樹脂,塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂,エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂,セラック,セルロース誘導体,低分子ポリスチレン,脂肪族飽和炭化水素樹脂,テルペン樹脂,テルペン−フェノール樹脂,ロジンとその誘導体,等が挙げられ、これらの1種または2種以上を、約1〜30重量%程度含有している。
【0023】
上記のウエーハ表面処理剤の溶剤は、上記樹脂を薄く均一に拡げる働きがあり、例えば、純水、エタノール,イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン,メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、シクロヘキサン,n−ヘキサン等の炭化水素系溶剤、ブチルセロソルブ,エチルカルビトール等のグリコールエーテル系溶剤を挙げることができ、これらの1種または2種以上を、約70重量%以上配合するとよい。
【0024】
こうしたウエーハ表面処理剤は、例えば、スピンコーターなどでウエーハに塗布することができ、塗布後に熱処理を行って含有している溶剤を揮発、乾燥させてウエ−ハ表面処理層3を形成することによって使用可能となる。このウエ−ハ表面処理層の厚さは約0.1〜5μm程度にするとよい。
【0025】
上記したプレート2の表面に形成したプレート表面処理層4は、上記紫外線硬化性樹脂が硬化した後、ウエーハをプレートから剥離、分離する際に、これを確実かつ容易にするのに有効である。上記紫外線硬化性樹脂はプレート2からの剥離性を重視して設計されるので、通常、プレート表面処理層は無くても紫外線硬化性樹脂が硬化した後でプレートから剥がすことは可能である。しかし、プレート表面の状態により剥がし難くなったり、時にはウェーハが割れてしまうことがあるので、ウェーハの剥離をより確実に行うためにはプレート表面処理層を設けることが有効な手段である。
【0026】
このプレート表面処理層を形成するプレート表面処理剤は、樹脂と溶剤を含むものである。このプレート表面処理剤の樹脂は、例えば、フルオロエチレン−ビニルエーテル共重合樹脂,塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂,エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂,ビニルアルコール等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用し、約1〜30重量%程度含有している。
【0027】
上記プレート表面処理剤の溶剤は、例えば、純水、エタノール,イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン,メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、シクロヘキサン,n−ヘキサン等の炭化水素系溶剤、ブチルセロソルブ,エチルカルビトール等のグリコールエーテル系溶剤を例示することができ、これらの1種または2種以上を、約70重量%程度以上含有している。
【0028】
このプレート表面処理剤は、スピンコーターなどでガラスプレート(基板)に塗布することができ、塗布後に熱処理を行って含有している溶剤を揮発させることによってプレート表面処理層4を形成することができる。このプレート表面処理層の厚さは約0.05〜5μm程度にするとよい。
【0029】
また、上記プレート表面処理層は、PVD法、CVD法(例えばイオン化蒸着法、プラズマCVD法、アークイオンプレーティング法、DCマグネトロンスパッタリング法、イオンビーム蒸着法、レーザーアブレーション法など)によって成膜できる炭素質アモルファス膜も利用できる。
【0030】
上記炭素質アモルファス膜と紫外線硬化樹脂との離型性を向上させる目的で、該炭素質アモルファス膜にF(フッ素)を含有させることも推奨される。F含有炭素質アモルファス膜の成分比率は特に限定されないが、F含有量が多くなると、膜の硬度が下がり耐久性が下がることがある。逆にF含有量が少なくなると紫外線硬化樹脂との離型性が十分でないことがある。したがって所望の効果が得られる様に適宜F含有量を決定すればよい。
【0031】
尚、成膜に用いる原料としては、固体や気体のいずれでもよく、上記成膜法に応じて適宜選択すればよい。例えば固体成膜原料としては、グラファイト、又はグラファイトとSi,Al、4A族元素、5A族元素、6A族元素から選択された元素の化合物など所望のスパッタターゲットを用いることができる。また気体成膜原料としては、炭化水素、アルコール類、ハロゲン化炭化水素、ケトン、CO、CO2など炭素を含むガスを用いることができ、更に窒素、アンモニア、アミン類、各種シランを含有させてもよい。前記の原料中で常温では液体であっても気化させて気体として取扱うこともできる。またFを含有させるには、CF4、各種フロン、炭化フッ素等の原料を所要量添加して成膜すればよい。
【0032】
また、上記プレートと上記炭素質アモルファス膜(以下、F含有炭素質アモルファス膜についても同じ)との親和性を高め、耐剥離性を向上させるために中間層を設ける事も有効である。この中間層は、4A族元素(Ti,Zr,Hf)、5A族元素(V,Nb,Ta)、6A族元素(Cr,Mo,W)、鉄族元素(Fe,Co,Ni)、Al、Si、またはこれらの炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種を含む膜である。したがって実質的に前記4A族元素等の少なくとも1種を含むアモルファス膜であれば、他の元素や炭化物等が含まれていてもよい。尚、上記親和性や耐剥離性をより高めるには、好ましくはSiとCを含むアモルファス膜であり、更に好ましくは実質的(不純物が微量含まれていてもよい)にSiとCからなる膜(Si−C膜ということがある)である。
【0033】
この炭素質アモルファス膜(以下、F含有炭素質アモルファス膜及び中間層を含む場合についても同じ)の膜厚は特に限定されないが、紫外線の透過が可能な膜厚にする事が必要であり、通常、0.005〜0.3μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.1μmである。膜厚が厚すぎると紫外線の透過を阻害し、一方で膜厚が薄すぎると、十分な耐久性が得られないことがあるので好ましくない。
【0034】
図3以下に、上記したウエーハの基準面形成方法に好適なウエーハの基準面形成装置の一実施例を示している。
本体10内には樹脂チャンバー7を形成する保持体11と、該保持体11に設けられたプレート2に向けて紫外線を照射するため該保持体の下方に設けられた光源12と、該保持体上にウエーハ1を移送するよう昇降可能に設けられた真空チャック6が形成されている。上記プレート2は、上述のようにプレート表面処理層4を有する基準面を形成するための主面13を有し、石英ガラス等の紫外線透過性材料で作られている。該プレートの主面の外周には傾斜面14が形成され、上記光源12から紫外線を照射した際、該主面に対向するウエーハの下面だけに紫外線が透過するよう該傾斜面14には遮光膜15が設けられている。
【0035】
図3〜図6を参照し、上記プレート2は上記保持体11の孔16に嵌着してねじ止めされ、該保持体内にはプレート上に移送されたウエーハ1の好ましくはほぼ半分の厚さ部分に対向する位置に上面17を有する内枠18が形成されており、該上面17には真空引きポート19が開口している。
【0036】
また、上記保持体11には上記内枠18に対向して基底20に樹脂供給ポート21を形成した一次樹脂溜り溝22と、該一次樹脂溜り溝22より上方に存する二次樹脂溜り溝23が形成され、上記一次樹脂溜り溝の樹脂供給ポート21から供給された樹脂が一次樹脂溜り溝22に入り、該一次樹脂溜り溝からあふれた樹脂が二次樹脂溜り溝23に入るよう構成されている。そして、その後、樹脂が上記プレート上をオーバーフローして流れるよう上記二次樹脂溜り溝は該プレートの主面よりも低く形成され上記傾斜面14の基端外周を環状に囲んでいる。
【0037】
なお、図5に示すように、上記内枠18及び一次樹脂溜り溝22等は、一次樹脂溜り溝に入った樹脂がプレートの一側から他側に向かって流れ込むようそれぞれほぼ180度の角度で設けてあるが、樹脂の流動性等に応じて最適状態で樹脂が流れ込むよう上記内枠や樹脂溜り溝の周方向の長さを変えるよう角度を適宜変化させてもよい。
【0038】
上記内枠の内面には、基準面が形成されたウエーハをプレートから剥離するための剥離手段の一例として剥離用エア供給ポート24が設けられている。該供給ポート24は、上記プレートの主面の側方に開口しており、かつ剥離力を集中できるようプレートの中心方向に向けて複数設けられている(図5参照)。
【0039】
而して、基準面を形成するため上述のように下面にウエーハ表面処理層3を有するウエーハ1は、図3に示すように、真空チャック6の吸引ポート25を真空源(図示略)に連通して真空にすることにより該チャックに吸引保持され、上記保持体11に向けて該チャックを降下することにより、プレート2に接する位置若しくは極めて近接する位置まで移送される。このとき、真空チャック6の周縁と保持体11の周縁は気密状態で接し、樹脂チャンバー7を密閉する(図3鎖線)。
【0040】
そして、上記真空引きポート19から真空引きしながら上記樹脂ポート21から樹脂5を供給すると、該樹脂は一次樹脂溜り溝22、二次樹脂溜り溝23を経てプレート2に至り、該プレート2の主面13をオーバーフローして均等にプレート上に流れ込む。この際、樹脂が真空チャック6とウエーハ1上面間に入り込まないよう該真空チャック6の真空度を真空引きポート19からの真空度より大きくなるように設定したり、真空チャックの下面にウエーハの周縁に弾性的に接するようゴムシート等の軟質シートを設けたり、ウエーハの上面全体に接するよう通気性のある有弾性シートを設けてウエーハの上面が真空チャックに密着するようにしてある。また、上記したように内枠18の上面17をウエーハ厚のほぼ半分の高さに対向するように設けると、余分の樹脂が真空引きポート19から吸引されるので、ウエーハ厚のほぼ半分まで確実に樹脂が浸るようにすることができる。この場合、上記真空引きポートと真空源の途中にバッファタンクを設けておき、吸引した樹脂を回収するようにしてある(図示略)。
【0041】
次に、上記真空チャック6の真空を開放してウエーハ1を該チャックから放し、該ウエーハの内部応力をなくした状態にし、上記光源12から紫外線を照射して樹脂を硬化させる。この際、上記ウエーハがかってに移動しないよう上記樹脂がある程度ゲル化した後に真空チャックの真空を解除するよう制御している。
【0042】
紫外線照射によりプレート2の主面13とウエーハ1間の樹脂は硬化して硬化樹脂層5aが形成されるが、上述したように遮光膜15により残部の樹脂は硬化せずに流動性を維持しているから、上記樹脂供給ポート21から残余の樹脂を回収する。そして、上記エア供給ポート24から上記プレート2と硬化樹脂層5aの間に圧縮空気を吹き込めばウエーハ1はプレート2から剥離する。その後、上記真空チャック6によりウエーハ1を吸着し、該真空チャック6を上昇させて本体から基準面8が形成されたウエーハ1を取り出せばよい。
【0043】
図7には、基準面形成装置の他の実施例が示されている。この装置は基本的に上記図3に示す装置と変わらないが、真空チャックの下面には、ウエーハの周縁が弾性的に接するようリング状の軟質シート28を設けてあり、またウエーハをプレートから剥離する剥離手段として上記のようなエアを用いないで、スクレパー26を使用している。このスクレパー26は、シリンダーその他の適宜の駆動手段(図示略)によりプレート2の主面13に沿って水平方向に移動する。また、作業終了後、上記プレート2の主面13を洗浄するよう洗浄装置27が水平方向に移動可能に設けられている。
【0044】
上記のように基準面8が形成されたウエーハ1は、ウエーハ研削盤に運ばれ、チャックテーブル上の真空チャックに上記基準面を吸着させて上面を加工し、その後ウエーハを反転して加工面側を真空チャックに吸着し、基準面を形成した硬化樹脂層とともに他面を研削加工すれば両面が平坦なウエーハが得られる。なお、硬化樹脂層ごと反対面を研削する際、ウエーハ研削盤の砥石が目詰まりするおそれがあるときは、ウエーハ研削盤の真空チャック上で半径方向に移動する別の切削ツールを設けて硬化樹脂層を削除した後、ウエーハ研削盤の砥石でウエーハの反対面を研削するようにすればよい(図示略)。また、硬化性樹脂層は、剥離用の粘着テープを用いてウエーハから除去してもよい。すなわち、上記のようにして研削した面を真空チャック等で固定し、硬化性樹脂層面の全面に粘着テープを貼り付けた後、該粘着テープを120〜180度の角度で引き剥がせば、硬化性樹脂層を取除くことができる。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
スライスドウェーハ1に、アクリル−スチレン共重合体20重量部とイソプロピルアルコール80重量部を混合したウエーハ表面処理剤をスピンコートにて約1μmの厚さになるように塗布し、100℃で1分間、熱処理を行い、ウエーハ表面処理層3を形成した。
プレート2の表面には、PVD法によるトーヨーエイテック株式会社によるGLC膜(炭素質アモルファス膜)を、厚さ0.1μmにして、プレート表面処理層4を形成した。
【0046】
紫外線硬化性樹脂は、シクロヘキシルメタクリレート91.99重量部と、重合開始剤としてベンゾイン5重量部と、重合禁止剤としてヒドロキノン0.01重量部と、添加剤として酸化珪素3重量部とを混合して調製した。
スライスドウェーハ1を真空チャック6で保持してガラス製のプレート2の上に配置し、樹脂チャンバー7内に紫外線硬化性樹脂を導入し、上記真空チャック6を解除した。上記スライスドウェーハ1とプレート2の間に、紫外線硬化性樹脂を真空で引きながら流入させて、充填し、余分な紫外線硬化性樹脂を排出した。
【0047】
上記プレート側から、紫外線(365nm)の照度を50mW/cmとし、積算光量を3000mJ/cmとして、紫外線照射により紫外線硬化性樹脂を固化させた。スライスドウェーハ1を再度真空チャック6で保持して、硬化した紫外線硬化性樹脂5aの密着したスライスドウェーハ1をガラス製のプレート2の上から分離した。得られた基準面の形成された紫外線硬化性樹脂の厚さは約80μmであった。
これによりスライスドウエ−ハ1の一面には、プレ−ト面に倣ったきわめて高平坦度の基準面8を形成することができ、研削工程のロ−タリ−チャックテ−ブルの真空チャックに高平坦度を維持した状態で密着させることができた。
【0048】
(実施例2)
スライスドウェーハ1に、スチレン−ブタジエン共重合体8重量部と、テルペン樹脂2重量部と、エチルシクロヘキサン90重量部を混合したウエーハ表面処理剤を用いて、実施例1と同様にしてウエーハ表面処理層を形成した。
プレート2の表面には、PVD法によるトーヨーエイテック株式会社によるFLC膜(F含有炭素質アモルファス膜)を、厚さ0.1μmにして、プレート表面処理層4を形成した。
【0049】
紫外線硬化性樹脂は、シクロヘキシルメタクリレート80重量部と、エチレンオキシド−変性トリメチロールプロパンアクリレート14.99重量部と、重合開始剤としてベンゾイン5重量部と、重合禁止剤としてヒドロキノン0.01重量部を混合して調製した。
上記紫外線硬化性樹脂を使用し、他は上記実施例1と同様にして、硬化された紫外線硬化性樹脂の厚さが約80μmで基準面の形成されたスライスドウェーハ1を得た。
これにより、上記実施例1と同様にスライスドウエ−ハ1の一面には、プレ−ト面に倣ったきわめて高平坦度の基準面8を形成することができ、研削工程のロ−タリ−チャックテ−ブルの真空チャックに高平坦度を維持した状態で密着させることができた。
【0050】
(実施例3)
スライスドウェーハ1に、ポリビニルブチラール10重量部とイソプロピルアルコール90重量部を混合したウエーハ表面処理剤を使用し、実施例1と同様にしてウエーハ表面処理層3を形成した。
プレート2の表面には、フルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体10重量部とメチルエチルケトン90重量部を混合したプレート表面処理剤を使用し、スピンコートにて約0.5μmの厚さになるように塗布し、100℃で1分間、熱処理を行い、プレート表面処理層を形成した。
【0051】
紫外線硬化性樹脂は、エチレングリコールジメタクリレート80重量部と、ヒドロキシエチルメタクリレート11.99重量部と、重合開始剤としてベンゾイン5重量部と、重合禁止剤としてヒドロキノン0.01重量部と、添加剤として酸化珪素3重量部を混合して調製した。
上記紫外線硬化性樹脂を使用し、他は上記実施例1と同様にして、硬化された紫外線硬化性樹脂の厚さが約80μmで基準面の形成されたスライスドウェーハ1を得た。
これにより、上記実施例1と同様にスライスドウエ−ハ1の一面には、プレ−ト面に倣ったきわめて高平坦度の基準面8を形成することができ、研削工程のロ−タリ−チャックテ−ブルの真空チャックに高平坦度を維持した状態で密着させることができた。
【0052】
上記実施例はスライスドウエーハに基準面を形成する場合について説明したが、本発明はウエーハの表面に基準面を形成する適宜の工程、例えばウエーハ表面に回路を形成した後、薄化するため裏面研削する工程において、回路面を被覆し研削盤に保持させるための基準面を形成する工程においても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明により基準面を形成する際のウエーハとプレートの関係を示す説明図。
【図2】本発明の基準面形成工程を示す説明図。
【図3】本発明の基準面形成装置の一実施例を示す説明図。
【図4】保持体の斜視図。
【図5】保持体の平面図。
【図6】保持体の断面図。
【図7】本発明の基準面形成装置の他の実施例を示す説明図。
【符号の説明】
【0054】
1 ウエーハ
2 プレート
3 ウエーハ表面処理層
4 プレート表面処理層
5 紫外線硬化性樹脂
5a 硬化した紫外線硬化性樹脂層
6 真空チャック
7 樹脂チャンバー
8 基準面
10 保持体
12 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエーハ等のウエーハを紫外線透過性を有する基準面形成用のプレートの上に配置し、上記ウエーハと上記プレートの間に紫外線硬化性樹脂を導入、充填し、プレート側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化し、これをプレートから剥離してウエーハの一面に紫外線硬化性樹脂による基準面を形成するウエ−ハの基準面形成方法。
【請求項2】
上記ウエーハには、上記した紫外線硬化性樹脂が硬化したときに紫外線硬化性樹脂との密着性を良くするウエーハ表面処理層を予め形成しておくことを特徴とする請求項1記載のウエ−ハの基準面形成方法。
【請求項3】
上記プレートには、上記した紫外線硬化性樹脂が硬化した後で紫外線硬化性樹脂との剥離を容易にするプレート表面処理層を予め形成しておくことを特徴とする請求項1又は2記載のウエ−ハの基準面形成方法。
【請求項4】
上記プレート表面処理層を、CVD法またはPVD法によりプレート表面に薄膜を付着することによって形成することを特徴とする請求項3記載のウエ−ハの基準面形成方法。
【請求項5】
基準面形成用の主面を形成したプレートを内部に有する樹脂チャンバーと、該樹脂チャンバーの上方に昇降可能に設けられウエーハを保持する真空チャックと、該樹脂チャンバーの下方に設けられ上記プレートに紫外線を照射する光源を具備し、上記真空チャックを樹脂チャンバー上に降下し、ウエーハを上記プレートに接し若しくは近接させ、プレートとウエーハ下面の間に紫外線硬化性樹脂を流入し、上記真空チャックによるウエーハの保持を開放して上記光源から紫外線を照射し、ウエーハ下面に硬化した樹脂層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のウエーハの基準面形成方法。
【請求項6】
上記ウエーハの保持は、紫外線照射により上記樹脂がゲル化した後に開放される請求項5記載のウエーハの基準面形成方法。
【請求項7】
上記請求項5に記載の方法に用いられる装置であって、基準面形成用の主面を形成したプレートを内部に有する樹脂チャンバーと、該樹脂チャンバーの上方に昇降可能に設けられウエーハを保持する真空チャックと、該樹脂チャンバーの下方に設けられ上記プレートに紫外線を照射する光源を具備し、上記樹脂チャンバーには、該樹脂チャンバー内を真空にするよう真空引きポートが設けられているウエーハの基準面形成装置。
【請求項8】
上記樹脂チャンバーには樹脂供給ポートに通じる樹脂溜り溝が形成され、該樹脂溜り溝からあふれた樹脂が上記プレート上にオーバーフローして流れるよう該樹脂溜り溝は上記プレートの主面より低く形成されている請求項7記載のウエーハの基準面形成装置。
【請求項9】
上記プレートの主面とウエーハの下面間のみに該プレートを透過した紫外線が照射されるよう上記プレートの周囲に遮光膜を形成した請求項7記載のウエーハの基準面形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−134371(P2007−134371A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323228(P2005−323228)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(394002464)日化精工株式会社 (2)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】