説明

ウエザーストリップ

【課題】作業性、見栄え、メンテナンス性、およびシール性に優れ、ウレタン接着剤を使用することなく、ネジなどでガラス板をサポートフレーム2に固定することができる上向開閉式窓用ウエザーストリップを提供する。
【解決手段】自動車の上向開閉式窓を構成するガラス板1を支持するサポートフレーム2に取付けられ、ガラス板1と車体パネル3との間をシールするウエザーストリップであって、サポートフレーム2の周端部に位置する取付部2aに組付く断面略U字状の基部11と、基部11と一体に設けられ車体パネル3に弾接する中空シール部12と、基部11の他方側下端部から横設され、先端部にガラス板1の下面に弾接するスポンジ製のスポンジシール部14を有するリップ片13とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の上向開閉式窓を構成するガラス板と、そのガラス板を支持するサポートフレームとの間に取付けられるウエザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1〜図3を参照して一例を説明する。従来、自動車のサンルーフを構成するガラス板1は、サポートフレーム2によって支持され、ガラス板1と車体パネル3との間のシール性は、サポートフレーム2の端部に取り付けたウエザーストリップ20によって行なわれている。また、ガラス板1は、サポートフレーム2にウレタン接着剤21によって固定されている。
【0003】
図1・図2・図4を参照して従来の他例を説明する。図3のウエザーストリップ20にガラス板1と接触するスポンジリップ22とウレタン逃げ溝23を設けたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエザーストリップは、サポートフレームに固定されガラス裏面をシールする様に設定されるが、ガラスとフレームの固定とシールを行うウレタン系の接着剤より外側に設定される為、水がウエザーストリップとガラスとの間をくぐってサポートフレームに至り、ひいては室内へ侵入してしまう問題がある。更に、サポートフレーム内に水がとどまれば、板金が腐食するという問題もある。
【0005】
また、ウレタン接着剤21を使用した従来技術にあっては、当該ウレタン接着剤21が乾燥するまでに相当の時間を必要とするので、その間、治具や両面接着テープで仮固定する必要が生じ、作業性が悪いといった問題と、ウレタン接着剤21を使用すると、サポートフレーム2はそのまま残して、ガラス板1のみを取り替えることが困難であるといったメンテナンス上の問題もある。
【0006】
さらに、ウレタン接着剤21が所定の接着箇所から、はみ出し易く、見栄えが悪くなるといった問題もある。
【0007】
こうした問題を解消するために、ウレタン接着剤に代えて、例えば、ネジによってガラス板1をサポートフレーム2に固定することが考えられる。しかし、そうするとガラス板1とサポートフレーム2との間のシール性を確保することができないといった新たな問題が発生する。
【0008】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、水がウエザーストリップとガラスの間をくぐってサポートフレーム、ひいては室内へ侵入することを確実に防止することのできるウエザーストリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図1,図2および図5乃至図8を参照して説明する。請求項1に記載の上向開閉式窓のウエザーストリップ10は、自動車の上向開閉式窓9を構成するガラス板1を支持するサポートフレーム2に取付けられ、前記ガラス板1と車体パネル3との間をシールするウエザーストリップであって、前記サポートフレーム2の周端部に位置する取付部2aに組付く断面略U字状の基部11と、前記基部11と一体に設けられ車体パネル3に弾接する中空シール部12と、前記基部11と一体に設けられ、先端部に前記ガラス板1の下面に弾接するスポンジ製のスポンジシール部14を有するリップ片13と、からなり、前記スポンジシール部14は、前記リップ片13とガラス板1との間に挟まれるように配設されるものである。
【0010】
請求項2に記載のウエザーストリップ10は、上向開閉式窓が図5・図6に示す如くサンルーフであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載のウエザーストリップ10は、上向開閉式窓が図7乃至図10に示す如くバックウインドウであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載のウエザーストリップ10は、請求項1〜3のいずれかに記載のウエザーストリップにおいて、スポンジシール部が、比重0.05〜0.4の高発泡スポンジ材で形成されたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載のウエザーストリップ10は、請求項1〜4のいずれかに記載のウエザーストリップにおいて、サポートフレームが、図9・図10に示す如くウレタン接着剤により、図5・図7に示す如くネジ4により、又は図6・図8に示す如く、クリップ6によりガラス板1に固定されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3に記載の上向開閉式窓のウエザーストリップ10は、基部11と一体に設けられ、先端部に、ガラス板1の下面に弾接するスポンジ製のスポンジシール部14を有するリップ片13を設けたので、水がウエザーストリップとガラスの間をくぐってサポートフレーム、ひいては室内へ侵入することを確実に防止することができる。
【0015】
すなわち、ガラス板1と基部11の間から水Wが浸入しても、その水Wはリップ片13の上に溜まるのみであり、溜まった水Wはスポンジシール部14によりせき止められるため、サポートフレーム2の末端部を伝って水Wが室内へ侵入することを確実に防止できる。また、水Wがサポートフレーム2に到達しないことから、サポートフレーム2の腐食をも防止できる。
【0016】
また、ガラス板1とサポートフレーム2との間の固定方法に関わらず、スポンジシール部14を有するリップ片13によってガラス板1とサポートフレーム2との間のシール性を確保することができるので、例えば、ネジ、又はクリップによってガラス板1を固定することもできる。これによると、接着剤が乾燥するまで必要としていた治具や両面接着テープによる仮固定を不要とすることができるので、作業性が大幅に向上する。
【0017】
さらに、接着剤の使用を不要とすると、サポートフレーム2をそのまま残して、ガラス板1のみの交換も容易となり、メンテナンス性を向上させることもできる。
【0018】
またさらに、接着剤が所定の接着箇所からはみ出すといった問題も発生しないので、見栄えにも優れたものにすることもできる。
【0019】
請求項4に記載の上向開閉式窓のウエザーストリップ10は、基部11と一体に設けられ、先端部に、ガラス板1の下面に弾接するスポンジ製のスポンジシール部14を有するリップ片13を設けたので、水がウエザーストリップとガラスの間をくぐってサポートフレーム、ひいては室内へ侵入することを確実に防止することができる。
【0020】
また、スポンジシール部14を、比重0.05〜0.4の高発泡スポンジ材で形成したので、ガラス板1とサポートシールとの間の密着性を高めることができ、これによりシール性をさらに向上させることができる。
【0021】
この場合、スポンジシール部14の比重が0.05未満であると、ウエザーストリップの押出同時成形を安定して行うことが困難になり、0.3を超えると、サポートフレームとの密着性が不足し、シール性が低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る上向開閉式窓のウエザーストリップ10の第一実施形態を、図1・図2・図5に示す。これは、自動車のサンルーフを構成するガラス板1を支持するサポートフレーム2に取付けられ、前記ガラス板1と車体パネル3との間をシールするものであり、基部11、中空シール部12およびリップ片13を有する。また、リップ片13を挟んだ状態で、サポートフレーム2にガラス板1をネジ4及びナット5により縫付けるようになっている。
【0023】
基部11は、サポートフレーム2の周端部であり、垂直状に立設された取付部2aを挟持して組付く断面略U字状である。中空シール部12は、基部11と一体に設けられ、ルーフパネル3の周端部に弾接する。そして、リップ片13も、基部11と一体に設けられ、その先端部に、ガラス板1の下面に弾接するスポンジ製のスポンジシール部14を有する。
【0024】
また、基部11には、ガラス板1の周端部に弾接させている。また、本実施形態におけるスポンジシール部14は、リップ片13の本体部15の先端から立設状態で設け、その上端部をガラス板1の下面に弾接させている。すなわち、スポンジシール部14は、ガラス板1とリップ片13との間に挟まれる形とされ、その間を確実にシールしている。このスポンジシール部14は、比重0.45〜0.65程度のEPDMで形成することができる。
【0025】
本実施形態における上向開閉式窓用ウエザーストリップ10は、先端部にスポンジシール部14を有するリップ片13によって、ガラス板1とサポートフレーム2との間のシール性を確保するので、ウレタン接着剤に代えて、ネジ4によってガラス板1をサポートフレーム2に固定することができる。これにより、ウレタン接着剤が乾燥するまで行っていた治具や両面接着テープによる仮固定を不要とすることができるので、作業性を大幅に向上させることができる。
【0026】
また、ウレタン接着剤を使用しないタイプにすれば、サポートフレーム2はそのまま残し、ガラス板1のみの交換を行うことも容易である。これにより、メンテナンス性の向上を図ることができる。さらに、ウレタン接着剤が所定の接着箇所からはみ出すといった問題も発生しないので、見栄えにも優れる。
【0027】
またさらに、ガラス板1と基部11との間から侵入した水Wは、リップ片13の上に溜まり、サポートフレーム2まで達しないので、当該サポートフレーム2の腐食が防止され、また、水Wがサポートフレーム2の末端部を伝って室内へ侵入するといった事態を未然に回避することができる。
【0028】
本発明に係る上向開閉式窓用ウエザーストリップ10の第二実施形態を、図1および図6に示す。このウエザーストリップ10は、リップ片13のスポンジシール部14を、比重0.05〜0.3の高発泡スポンジ材で形成している。従って、ガラス板1に対する密着性にきわめて優れ、シール性をさらに高めることができる。この第二実施形態においては、リップ片13を挟んだ状態で、サポートフレーム2にガラス板1をクリップ6により縫付けるようになっている。
【0029】
また、この第二実施形態では、シール片の本体部15に、上端がガラス板1の下面に弾接する堰部16を立設している。この堰部16を設けることによって、建て付けのバラツキが発生しても、高発泡スポンジ材製で変形し易いスポンジシール部14がガラス板1によって潰され、シール性が低減してしまうといった事態を未然に回避することができる。
【0030】
また、ガラス板1を、ウレタン樹脂によってサポートフレーム2に固定したとしても、そのウレタン樹脂のはみ出しを、スポンジシール部14と、この堰部16で確実に防止することができる。
【0031】
図7〜図10は、上向開閉式窓がバックウインドウの実施形態である。図7・図9において、車体パネル3は、図示しないリンクにより開閉可能とされる可動ルーフであり、サポートフレーム2もまた、図示しないリンクにより前記可動ルーフに対し回動可能に形成されている。可動ルーフ閉止時には、図7・図9の状態とされるとともに、可動ルーフ格納時には、可動ルーフとウエザーストリップ10との間の弾接が解かれるよう構成されている。
【0032】
図8・図10においては、車体パネル3は、車体に形成された前記可動ルーフの格納部を図示しないリンクにより開閉可能としたデッキカバーであり、サポートフレーム2もまた、図示しないリンクにより前記可動ルーフおよびデッキカバーに対し回動可能に形成されている。可動ルーフ閉止時には、図8・図10の状態とされるとともに、可動ルーフ格納時には、デッキカバーとウエザーストリップ10との間の弾接が解かれるよう構成されている。
【0033】
なお、ガラス板1は、サポートフレーム2に対し、図7ではボルト4およびナット5で固定され、図8ではクリップ6で固定され、図9・図10ではウレタン接着剤で固定されている。また、図7〜図10中の12aは副中空シール部であり、図9中の仮線18aはガラス板1を取付ける前のウレタン接着材の形状である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ウエザーストリップを取付ける自動車の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】従来技術を示すもので、図2のX−X線断面図である。
【図4】他の技術を示すもので、図2のX−X断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態を示すもので、図1のX−X断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態を示すもので、図1のX−X断面図である。
【図7】本発明の第三実施形態を示すもので、図1のY−Y断面図である。
【図8】本発明の第四実施形態を示すもので、図1のZ−Z断面図である。
【図9】本発明の第五実施形態を示すもので、図1のY−Y断面図である。
【図10】本発明の第五実施形態を示すもので、図1のZ−Z断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ガラス板
2 サポートフレーム
2a 取付部
3 車体パネル
4 ネジ
5 ナット
6 クリップ
9 上向開閉式窓
10 ウエザーストリップ
11 基部
12 中空シール部
12a 副中空シール部
13 リップ片
14 スポンジシール部
15 本体部
16 堰部
17 インサート
18 ウレタン接着材
18a ウレタン接着材
20 ウエザーストリップ
21 ウレタン接着剤
22 スポンジリップ
23 ウレタン逃げ溝
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の上向開閉式窓を構成するガラス板(1)を支持するサポートフレーム(2)に取付けられ,前記ガラス板と車体パネル(3)との間をシールするウエザーストリップであって、前記サポートフレームの周端部に位置する取付部(2a)に組付く断面略逆U字状の基部(11)と、前記基部と一体に設けられ車体パネルに弾接する中空シール部(12)と、前記基部と一体に設けられ,先端部に前記ガラス板の車内側面に弾接するスポンジ製のスポンジシール部(14)を有するリップ片(13)と、からなり、前記スポンジシール部は、前記リップ片とガラス板との間に挟まれるよう配設されるウエザーストリップ。
【請求項2】
上向開閉式窓がサンルーフであることを特徴とする請求項1記載のウエザーストリップ。
【請求項3】
上向開閉式窓がバックウインドウであることを特徴とする請求項1記載のウエザーストリップ。
【請求項4】
スポンジシール部は,比重0.05〜0.4の高発泡スポンジ材で形成されたものである請求項1〜3のいずれかに記載のウエザーストリップ。
【請求項5】
前記サポートフレームは、ウレタン系接着剤又はネジ又はクリップによりガラス板に固定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のウエザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−8312(P2007−8312A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191465(P2005−191465)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】