説明

ウエストゲートバルブ装置

【課題】電動式のウエストゲートバルブ装置において、バルブ全閉時に電動モータに流れる電流を低減する。
【解決手段】ウエストゲートバルブ201の弁体211を揺動アーム212に対し弁開閉方向に接離可能に取り付けるとともに、これら弁体211と揺動アームとの間にばね213を設ける。このように、ばね213を設けることにより、バルブ全閉時において弁体211が弁座112に突き当たるときの荷重をばね213によって低減することができ、電動モータ204にかかる力を小さくすることができる。これによってバルブ全閉時に電動モータ204に大きな電流が流れないようにすることができ、電動モータ204の寿命を延ばすことができる。また、バルブ全閉時の衝撃力が低減されるので、ウエストゲートバルブ201などの各部の磨耗を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路を開閉するウエストゲートバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される内燃機関(以下、エンジンともいう)には、排気エネルギを利用した過給機(以下、ターボチャージャともいう)が装備されている。
【0003】
ターボチャージャは、一般に、エンジンの排気通路を流れる排気ガスによって回転するタービンホイールと、吸気通路内の空気を強制的に燃焼室へと送り込むコンプレッサインペラと、これらタービンホイールとコンプレッサインペラとを連結する連結シャフトとを備えている。このような構造のターボチャージャにおいて、タービンホイールに排気ガスが吹き付けられて当該タービンホイールが回転すると、その回転が連結シャフトを介してコンプレッサインペラに伝達される。こうしてコンプレッサインペラが回転することによって吸気通路内の空気が強制的に燃焼室に送り込まれる。
【0004】
ターボチャージャにおいて、過給圧を制御する方法として、例えば、タービンホイールをバイパスするバイパス通路を設けるとともに、そのバイパス通路を開閉するウエストゲートバルブを設け、このウエストゲートバルブの開度を調整し、タービンホイールをバイパスする排気ガス量を調整することによって過給圧を制御する方法がある。
【0005】
このようなウエストゲートバルブを開閉するアクチュエータとして、従来、ダイアフラム式アクチュエータが用いられている。しかしながら、ダイアフラム式アクチュエータを用いた場合、ウエストゲートバルブの開度は過給圧に依存するので、使用域の全域においてウエストゲートバルブの開度を任意に制御することができない。こうした点を考慮し、電動モータを開閉駆動源としてウエストゲートバルブを開閉する装置(以下、「電動式のウエストゲートバルブ装置」ともいう)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このように開閉駆動源を電動モータとすることにより、使用域の全域において過給圧に関係なく、ウエストゲートバルブの開度を制御(アクティブ制御)することが可能となり、エンジン始動時の触媒昇温性、燃料消費率(燃費)及び応答性などの向上を図ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−274833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電動式のウエストゲートバルブ装置においては、バルブ全閉時に閉じ不良(密閉不良)が生じる場合がある。つまり、電動モータを制御してウエストゲートバルブを全閉にするときに、モータ荷重が小さいと、機械的ばらつきや渋りなどにより、バルブ全閉時の目標位置(弁体がタービンハウジング(弁座)に適正な荷重で突き当たる位置)に対して、実際の弁体の位置がバルブ開き側にずれる場合があり、こうした状況になると、バルブ閉じ不良(弁体と弁座との間に隙間が生じる不良)が生じて、排気ガスの漏れが発生する場合がある。このようなバルブ閉じ不良が生じないように、従来では、バルブ全閉時には、フルパワーでバルブを閉めている。このため、弁体が弁座に突き当ったときに電動モータに大きな電流が流れる場合があり、電動モータの寿命が低下することが懸念される。
【0008】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、バルブ全閉時に電動モータに流れる電流を低減することが可能なウエストゲートバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路(排気バイパス通路)を開閉する弁体と、その弁体を開閉方向に移動するアーム(揺動アーム)とを有するウエストゲートバルブと、電動モータの回転運動を弁開閉運動に変換して前記弁体に前記アームを介して伝達する開閉機構とを備えたウエストゲートバルブ装置を前提としており、このようなウエストゲートバルブ装置において、前記弁体は前記アームに対して弁開閉方向に接離可能に取り付けられているとともに、前記弁体とアームとの間にばねが設けられていることを技術的特徴としている。
【0010】
本発明によれば、ウエストゲートバルブの弁体をアームに対し弁開閉方向に接離可能に取り付けるとともに、これら弁体とアームとの間にばねを設けているので、バルブ全閉時において弁体が弁座(タービンハウジング)に突き当たるときの荷重をばねによって低減することができ、電動モータにかかる力を小さくすることができる。これによって、バルブ全閉時に電動モータに大きな電流が流れないようにすることができ、電動モータの寿命を延ばすことができる。さらに、バルブ全閉時において弁体が弁座に突き当たるときの衝撃力がばねによって低減されるので、電動モータ、ウエストゲートバルブ(弁体・弁座等)、及び、開閉機構(ギヤやリンク等)などの各部の磨耗を抑制することができる。
【0011】
本発明の具体的な構成として、上記開閉機構を、電動モータの回転駆動力により回転するウォームギヤ及びこのウォームギヤに噛み合うウォームホイールを有するギヤ機構と、そのギヤ機構とウエストゲートバルブとの間に連結されるリンク機構とによって構成するとともに、ウォームホイールの回転角度(ギヤ角度)を認識する角度認識手段と、ウエストゲートバルブを閉じる際に上記ウォームホイールの回転角度がバルブ全閉時の目標ギヤ角度となるように電動モータの駆動(通電)を制御する制御手段とを設けるという構成を挙げることができる。このような構成において、ウォームホイールの回転角度が上記バルブ全閉時の目標ギヤ角度となったときに電動モータへの通電を停止することが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、電動モータとウエストゲートバルブとの間の開閉機構系に、ウォームギヤとウォームホイールとが噛み合うギヤ機構を連結しているので、バルブ全閉後に電動モータへの通電を停止しても、弁体に作用する排気圧力や上記ばねの力などによって電動モータが逆向きに回転すること、つまり、弁体が弁座から離れてバルブが開くことがなくなる。このようにバルブ全閉時には電動モータへの通電を停止することが可能になるので、電力消費量の低減化を図ることができる。
【0013】
また、バルブ閉じ時において電動モータへの通電制御により上記バルブ全閉時の目標ギヤ角度に制御したときに、バルブ全閉位置(弁体の実際の閉鎖位置)がばらついても、そのばらつき分をばねにて吸収することができるので、バルブを常に確実に閉じることができる。しかも、弁体とアームとの間にばねを設けているので、上記排気圧力等によりギヤ機構等のバックラッシュ分だけ弁開き側に弁体が戻されても、その戻り分をばねにて吸収することができ、バルブ全閉状態を確実に維持することができる。
【0014】
なお、上記ウォームホイールの回転角度(ギヤ角度)については、ウォームホイールに角度センサを設けて直接検出するようにしてもよいし、角度センサ付きの電動モータを用い、その角度センサの検出信号(電動モータの回転角度検出信号)からウォームホイールの回転角度を認識するようにしてもよい。
【0015】
本発明において、上記バルブ閉鎖時の制御に用いるバルブ全閉時の目標ギヤ角度は、ウエストゲートバルブやリンク機構などの機械的ばらつき、ギヤ機構のギヤのバックラッシュ、弁体に作用する排気圧力、及び、ばねの弾性力(ばね力)を考慮して決定する。
【0016】
具体的には、予め実験等により、ウエストゲートバルブを全開位置から閉じていき、このバルブ閉じ過程においてモータ荷重が「狙いの荷重」、具体的には、ウエストゲートバルブの弁体に排気圧力がかかっても弁体が開かないモータ荷重([排気圧力+ばね力]に所定量のマージンを加えた荷重)になったときの、ウォームホイールの回転角度(ギヤ角度)を測定する。そして、その測定したギヤ角度測定値に、機械的ばらつき分(弁体のバルブ開き側へのずれ量の最大値)及びギヤ機構等のバックラッシュ分に相当するギヤ角度を加えることにより、目標ギヤ角度を決定する。ここで、上記全閉時のモータ荷重(パワー)は、上述したように、ウエストゲートバルブの弁体に作用する排気圧力と、上記ばねの力とを加えた力よりも所定マージン分だけ大きい値とすればよいので(フルパワーとする必要がないので)、ウエストゲートバルブを全閉にするときに、電動モータに流れる電流値を限界電流値(電動モータの寿命が縮まらない電流値)よりも小さくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ウエストゲートバルブの弁体を、当該弁体を移動するアームに対し弁開閉方向に接離可能に取り付けるとともに、その弁体とアームとの間にばねを設けているので、バルブ全閉時において弁体が弁座に突き当たるときの荷重をばねによって低減することが可能となり、これによってバルブ全閉時に電動モータに流れる電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用するエンジンの一例を示す概略構成図である。
【図2】ウエストゲートバルブ装置の構成を示す図である。なお、図2ではバルブ全閉状態を示している。
【図3】ウエストゲートバルブ装置の構成を示す図である。なお、図3ではバルブ全開状態を示している。
【図4】図2のX−X断面図である。なお、図4ではタービンハウジングの一部は省略している。
【図5】ウエストゲートバルブ及びリンク機構の一部の構成を示す斜視図である。
【図6】ウエストゲートバルブ開閉制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】リンク機構のウォームホイールのギヤ角度とモータ荷重との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
まず、本発明を適用するエンジン(内燃機関)について説明する。
【0021】
−エンジン−
図1は車両に搭載されるエンジン1の一例を示す概略構成を示す図である。
【0022】
この例のエンジン1は、例えば4気筒のディーゼルエンジンであって、シリンダヘッドに、各気筒に吸入空気を分配するためのインテークマニホールド2と、各気筒から排出される排気ガスを集合させるエキゾーストマニホールド3とが接続されている。
【0023】
インテークマニホールド2の入口には、空気を大気中から取り込んで当該インテークマニホールド2に導くための吸気通路4が接続されている。吸気通路4の入口にはエアクリーナ6が取り付けられている。また、インテークマニホールド2の上流(吸気流れの上流)には、エンジンの吸入空気量を調整するスロットルバルブ7が配置されている。スロットルバルブ7はスロットルモータ(図示せず)によって駆動される。スロットルバルブ7の開度はスロットル開度センサ32によって検出される。スロットルバルブ7のスロットル開度はECU(Electronic Control Unit)300によって制御される。一方、エキゾーストマニホールド3の出口には排気通路5が接続されている。排気通路5の途中には触媒9が配置されている。
【0024】
さらに、この例のエンジン1には、ターボチャージャ(過給機)100及びEGR装置120が装備されている。これらの構成について説明する。
【0025】
−ターボチャージャ−
ターボチャージャ100は、排気通路5に配置されたタービンホイール101、吸気通路4に配置されたコンプレッサインペラ102、タービンホイール101とコンプレッサインペラ102とを一体に連結する連結シャフト103などによって構成されており、排気通路5に配置のタービンホイール101が排気のエネルギによって回転し、これに伴って吸気通路4に配置のコンプレッサインペラ102が回転する。そして、コンプレッサインペラ102の回転により吸入空気が過給され、エンジン1の各気筒の燃焼室に過給空気が強制的に送り込まれる。なお、コンプレッサインペラ102の下流側(吸気流れの下流側)の吸気通路4には、コンプレッサインペラ102によって過給された空気を冷却するインタークーラ8が設けられている。
【0026】
また、この例のターボチャージャ100においては、図2及び図3にも示すように、タービンハウジング110に排気バイパス通路111が形成されており、その排気バイパス通路111を開閉するウエストゲートバルブ201が設けられている。ウエストゲートバルブ201及びその開閉駆動系(電動モータ204、ギヤ機構203及びリンク機構202等)を備えたウエストゲートバルブ装置200の詳細については後述する。
【0027】
−EGR装置−
EGR装置120はEGR通路(排気還流通路)121を備えている。EGR通路121の一端部はインテークマニホールド2とスロットルバルブ7との間の吸気通路4に接続されている。EGR通路121の他端部はエキゾーストマニホールド3に接続されており、排気ガス(EGRガス)の一部がEGR通路121を通って吸気通路4に導入される。EGRガス(空気に比較して比熱が高く酸素量の少ないガス)を吸気通路4に導入することで、筒内の燃焼温度を低下させてNOxの生成量を低減させることができる。
【0028】
EGR通路121の途中には、当該EGR通路121を開閉するEGRバルブ124が設けられている。EGR通路121におけるEGRバルブ124の上流(排気側)には、EGR通路121内を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ122が設けられている。このEGRクーラ122による冷却によってEGRガスの密度が高まり、吸入空気量を確保しながらEGR率を向上させることが可能になる。
【0029】
また、EGR装置120には、EGRクーラ122をバイパスしてEGRガスを流すためのEGRバイパス通路121aが設けられている。このEGRバイパス通路121aとEGR通路121との接続部(EGRガス流れの下流側の接続部)には、EGR通路121の開度とEGRバイパス通路121aの開度とを調整する切替制御バルブ123が設けられている。
【0030】
−ECU−
ECU300は、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMなどを備えている。
【0031】
ROMは、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、例えばエンジンの停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0032】
ECU300の入力部には、エンジン回転数センサ31、スロットル開度センサ32、及び、アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ33などのエンジン運転状態を示す各種情報を取得するための各種センサ類が接続されている。
【0033】
ECU300の出力部には、エンジン1のインジェクタ(図示せず)、スロットルバルブ7(スロットルモータ)、EGRバルブ124、切替制御バルブ123、及び、ウエストゲートバルブ装置200の電動モータ204などが接続されている。
【0034】
そして、ECU300は、上記した各種センサの検出信号に基づいて、インジェクタ(燃料噴射弁)の駆動制御(燃料噴射制御)、スロットルバルブ7のスロットルモータの駆動制御(吸入空気量制御)、及び、EGR量の制御(EGRバルブ124及び切替制御バルブ123の制御等)などを含むエンジンの各種制御を実行する。また、ECU300は下記の「ウエストゲートバルブ開閉制御」を実行する。
【0035】
−ウエストゲートバルブ装置−
次に、ウエストゲートバルブ装置200について図1〜図5を参照して説明する。
【0036】
この例のウエストゲートバルブ装置200は、ウエストゲートバルブ201、リンク機構202、ギヤ機構203、及び、電動モータ(例えばDCモータ)204などを備えている。
【0037】
まず、ウエストゲートバルブ装置200を説明する前に、タービンハウジング110の構成の一部について説明する。この例のタービンハウジング110には、図1〜図4に示すように、タービンホイール101をバイパスする排気バイパス通路111が形成されている。排気バイパス通路111は、タービンハウジング110の壁体110bを貫通する円形のウエストゲート穴111aを備えており、タービンホイール101の上流側(排気ガス流れの上流側)と排気ガス出口通路110aとに連通している。上記ウエストゲート穴111aの周縁部(排気ガス出口通路110a側の周縁部)には弁座(バルブシート)112が設けられている。
【0038】
ウエストゲートバルブ201は、タービンハウジング110に設けられた上記弁座112に着座または離座して上記排気バイパス通路111を開閉する円形の弁体211と、この弁体211を開閉方向(弁座112に対して接離する方向)に移動する揺動アーム212とを備えており、この揺動アーム212の揺動により、弁体211を排気バイパス通路111を閉鎖する位置(全閉位置:図2)と、排気バイパス通路111を完全に開放する位置(全開位置:図3)との間において移動させることができる。なお、タービンハウジング110の弁座112もウエストゲートバルブ201の構成部材に含まれる。
【0039】
そして、この例のウエストゲートバルブ201においては、揺動アーム212の先端部に、この揺動アーム212に対して直交する方向に延びる支持ピン214が設けられており、この支持ピン214に弁体211がスライド自在に設けられている。つまり、弁体211が揺動アーム212の先端部に、この揺動アーム212に対して弁開閉方向に接離可能に取り付けられており、その弁体211と揺動アーム212の先端部との間にばね(この例では「皿ばね」)213が挟み込まれている。さらに、揺動アーム212に対し離反する向きへの弁体211の移動はストッパ(例えば、止め輪やナットなど)215によって規制されており、弁体211に外力(揺動アーム212側への押圧力)が作用しない状態ときには、上記ばね213の力により弁体211がストッパ215に押圧された状態で当接する。
【0040】
なお、ストッパ215は、支持ピン214の先端部を「かしめる」ことによって設けておいてもよい。また、この例において、支持ピン214の外径に対して弁体211の貫通穴211aの内径が所定量だけ大きく形成されており、弁体211は支持ピン214に対して傾動可能となっている。
【0041】
上記ウエストゲートバルブ201の揺動アーム212は、リンク機構202及びギヤ機構203を介して電動モータ204の回転軸241に連結されている。
【0042】
リンク機構202は、リンクシャフト221、駆動アーム222、駆動ロッド223、及び、クランクアーム224などを備えている。
【0043】
リンクシャフト221の一端部には、上記ウエストゲートバルブ201の揺動アーム212の端部(弁体211とは反対側の端部)が一体的に取り付けられている。リンクシャフト221はタービンハウジング110の壁体110bを貫通してハウジング外部に突出している。また、リンクシャフト221はタービンハウジング110の壁体110bに回転自在に支持されている。
【0044】
リンクシャフト221の他端部(揺動アーム212とは反対側の端部)には駆動アーム222の一端部が一体的に取り付けられている。駆動アーム222の他端部は駆動ロッド223の一端部に連結ピン(リンク)225を介して回転自在に連結されている。駆動ロッドの他端部はクランクアーム224の先端部に連結ピン(リンク)226を介して回転自在に連結されており、この駆動ロッド223の前進・後退により駆動アーム222が揺動してリンクシャフト212がその軸心を中心として回転する。
【0045】
ギヤ機構203は、ウォームギヤ231と、このウォームギヤ231に噛み合うウォームホイール(平ギヤ)232とを備えている。ウォームギヤ231は、電動モータ204の回転軸241の先端部に取り付けられており、電動モータ204の回転駆動力によって回転する。ウォームホイール232の一面(ギヤ回転軸と直交する面)には上記リンク機構202のクランクアーム224が取り付けられている。このクランクアーム224はウォームホイール232と一体回転する。ウォームホイール232の裏側(クランクアーム224とは反対側)には、このウォームホイール232の回転角度(ギヤ角度)を検出する角度センサ(例えば、ロータリエンコーダ等)233が設けられている。この角度センサ233の出力信号(角度検出信号)はECU300に入力される。なお、このギヤ機構203及び上記リンク機構202の構成が「開閉機構」に相当する。
【0046】
そして、このような構成のウエストゲートバルブ装置200において、図3に示す状態(バルブ全開状態)から、電動モータ204への通電により電動モータ204の回転軸241が回転(正回転または逆回転)してウォームギヤ231が回転すると、ウォームホイール232が回転し、このウォームホイール232の回転つまりクランクアーム224の回転により駆動ロッド223が前進(ウエストゲートバルブ201側に向けて移動)して駆動アーム222が揺動する。この駆動アーム222の揺動によってリンクシャフト221が回転し、これに伴ってウエストゲートバルブ201の揺動アーム212が揺動して弁体211がタービンハウジング110の弁座112に着座する。これにより上記排気バイパス通路111が閉鎖される(図2に示すバルブ全閉状態となる)。
【0047】
なお、この例では、バルブ全閉状態のときには、図2に示すように、ウエストゲートバルブ201の弁体211がストッパ215から所定量だけ離れ、弁体211がタービンハウジング110の弁座112にばね213の力によって押圧された状態で突き当たるようになっている。
【0048】
一方、図2に示す状態(バルブ全閉状態)から、バルブ閉鎖時とは逆向きの電流を電動モータ204に流すと、ウォームホイール232(クランクアーム224)がバルブ閉鎖時とは逆向きに回転し、駆動ロッド223が後退して駆動アーム222が揺動し、リンクシャフト221がバルブ閉鎖時とは逆向きに回転する。これによってウエストゲートバルブ201の弁体211が弁座112から離座して上記排気バイパス通路111が開放される(図3に示すバルブ全開状態となる)。なお、ウエストゲートバルブ201を開く場合の動作としては、後述するように、使用域(エンジン回転数・要求トルク)に応じて全開状態にする動作と、ウエストゲートバルブ201の開度をエンジン回転数及び要求トルク等に応じて調整する動作とがある。
【0049】
−ウエストゲートバルブ開閉制御−
次に、ECU300が実行するウエストゲートバルブ開閉制御について図2〜図7を参照して説明する。
【0050】
まず、ウエストゲートバルブ開閉制御に用いるバルブ全閉時の目標ギヤ角度について説明する。ここで、ギヤ角度とは、上記したギヤ機構203のウォームホイール(平ギヤ)232の回転角度(ギヤ角度)のことであり、バルブ全閉時の目標ギヤ角度とは、例えばウエストゲートバルブ201の全開位置を基準(角度=0)として、その基準からバルブ全閉位置までの角度のことである。そのバルブ全閉位置(全閉角度)は、予め実験等によって測定しておく。その具体的な測定方法について図7を参照して説明する。
【0051】
図7に示すように、バルブ全開位置(ギヤ角度=0)からウエストゲートバルブ201を閉じていくと、弁体211がタービンハウジング110の弁座112に突き当たった時点P1からモータ荷重が増加しはじめる。その荷重増加過程においてモータ荷重が「狙いの荷重」、具体的には、ウエストゲートバルブ201の弁体211に排気圧力がかかっても弁体211が開かない全閉時の荷重F([排気圧力+ばね213の力]に所定量のマージンを加えた荷重)になったときの、ウォームホイール232の回転角度(ギヤ角度)を測定する。そして、その測定したギヤ角度測定値に、機械的ばらつき分(弁体211のバルブ開き側へのずれ量の最大値)及びギヤ機構203等のバックラッシュ分に相当するギヤ角度を加えることにより目標ギヤ角度θgtを決定する。
【0052】
ここで、上記全閉時のモータ荷重F(パワー)は、上述したように、タービンハウジング110内の排気圧力(弁体211に作用する排気圧力)と、ばね213の力とを加えた力よりも所定量(マージン分)だけ大きい値とすればよいので(フルパワーとする必要がないので)、ウエストゲートバルブ201を全閉にするときに、電動モータ204に流れる電流値を限界電流値(電動モータ204の寿命が縮まらない電流値)よりも小さくすることができる。
【0053】
なお、上記目標ギヤ角度θgtの基準となるバルブ全開位置(ギヤ角度=0)については、ウエストゲートバルブ201の弁体211や揺動アーム212(またはリンク機構202の駆動アーム222等)を全開ストッパ(図示せず)に突き当てたときの、ギヤ角度センサ233の検出値を基準角度出力値として学習することにより、バルブ全閉位置(弁体211の実際の閉鎖位置)を常に適正な位置に制御することが可能となり、バルブ閉鎖時の制御性を高めることができる。
【0054】
次に、ウエストゲートバルブ開閉制御の一例について図6のフローチャートを参照して説明する。図6の制御ルーチンはECU300において所定時間毎に繰り返して実行される。
【0055】
図6の制御ルーチンが開始されると、まずは、ステップST101においてウエストゲートバルブ201を閉じる領域であるか否かをマップに基づいて判定する。具体的には、エンジン回転数及び要求トルクをパラメータとし、例えば、フル過給領域(バルブ全閉領域)、過給圧調整領域(バルブ開度調整領域)、過給無し領域(バルブ全開領域)の各領域が設定されたマップを用いて、要求トルク及び現在のエンジン回転数に基づいて、運転領域が「フル過給領域」に入っているか否かを判定し、「フル過給領域」に入っている場合(バルブを閉じる領域であり、ステップST101の判定結果が肯定判定(YES)となった場合)はステップST102に進む。ステップST101の判定結果が否定判定(NO)である場合はリターンする。
【0056】
ステップST102では、電動モータ204に通電を行ってウエストゲートバルブ201を閉じていく。このバルブ閉じ過程において、角度センサ233の出力信号から得られるウォームホイール232のギヤ角度θgr(バルブ全開位置(ギヤ角度=0)からの実際のギヤ角度)と、上記バルブ全閉時の目標ギヤ角度θgtとを比較し、その実際のギヤ角度θgrが目標ギヤ角度θgtに一致した時点(ステップST103の判定結果が肯定判定(YES)となった時点)で、ウエストゲートバルブ201が全閉状態になったと判断して電動モータ204への通電を停止する(ステップST104)。なお、このバルブ閉じ制御において、実際のギヤ角度θgrが目標ギヤ角度θgtに一致するまでは電動モータ204への通電を継続する。
【0057】
次に、ステップST105において、ウエストゲートバルブ201を開く領域であるか否かを判定する。具体的には、運転状態が変化して領域が、上記「過給圧調整領域」または「過給無し領域」に遷移した場合(バルブを開く領域となり、ステップST105の判定結果が肯定判定(YES)となった場合)は、上記バルブ閉鎖時とは逆向きの電流を電動モータ204に通電してウエストゲートバルブ201を開く(ステップST106)。このとき、運転領域が上記過給圧調整領域(バルブ開度調整領域)である場合は、エンジン回転数及び要求トルクに応じた過給圧となるように、電動モータ204への通電制御を行ってウエストゲートバルブ201の開度を調整する。また、運転領域が上記過給無し領域(バルブ全開領域)である場合は、ウエストゲートバルブ201を全開位置(ギヤ角度=0)まで開く。なお、ウエストゲートバルブ201を全開位置にした後に電動モータ304への通電を停止するようにしてもよい。
【0058】
このように、この例の開閉制御では、ウエストゲートバルブ201を開いた状態から全閉にする場合には上記ステップST101〜ST104の処理を実行し、ウエストゲートバルブ201が全閉の状態からバルブを開く場合にはステップST105〜ST106の処理を実行する。
【0059】
以上説明したように、この例のウエストゲートバルブ装置によれば、ウエストゲートバルブ201の弁体211を、当該弁体211を移動する揺動アーム212に対し弁開閉方向に接離可能に取り付けるとともに、その弁体211と揺動アーム212との間にばね213を設けているので、バルブ全閉時において弁体211がタービンハウジング110の弁座112に突き当たるときの荷重をばね213によって低減することができ、電動モータ204にかかる力を小さくすることができる。これによってバルブ全閉時に電動モータ204に大きな電流が流れないようにすることができ、電動モータ204の寿命を延ばすことができる。さらに、バルブ全閉時において弁体211が弁座112に突き当たるときの衝撃力をばね213にて低減することができるので、電動モータ204、ウエストゲートバルブ201(弁体211や弁座112等)、ギヤ機構203、及び、リンク機構202の各部の磨耗を抑制することができる。
【0060】
また、バルブ閉じ時において電動モータ204への通電制御により上記バルブ全閉時の目標ギヤ角度θgtに制御したときに、バルブ全閉位置(弁体211の実際の閉鎖位置)がばらついても、そのばらつき分をばね213にて吸収することができるので、バルブを常に確実に閉じることができる。
【0061】
しかも、この例では、電動モータ204とウエストゲートバルブ201との間の開閉機構系に、ウォームギヤ231とウォームホイール232とが噛み合うギヤ機構203を連結しているので、バルブ全閉後に電動モータ204への通電を停止しても、ウエストゲートバルブ201の弁体211に作用する排気圧力やばね213の力などによって電動モータ204が逆向きに回転すること、つまり、弁体211が弁座112から離れてバルブが開くことがなくなる。このようにバルブ全閉時には電動モータ204への通電を停止することが可能になることにより、電力消費量の低減化を図ることができる。さらに、弁体211と揺動アーム212との間にばね213を設けているので、上記排気圧力等によりギヤ機構203等のバックラッシュ分だけ弁開き側に弁体211が戻されても、その戻り分をばね213にて吸収することが可能となり、バルブ全閉状態を確実に維持することができる。
【0062】
なお、この例のウエストゲートバルブ装置200では、ウエストゲートバルブ201の開閉の駆動力源を電動モータ204としているので、ウエストゲートバルブ201のアクティブ制御が可能であり、エンジン始動時の触媒昇温性、燃費及び応答性などの向上を図ることができるという効果も達成することができる。
【0063】
−他の実施形態−
以上の例では、ウエストゲートバルブ201の弁体211と揺動アーム212との間に設けるばねとして皿ばねを用いているが、これに替えて、例えば圧縮コイルばねなどの他の形態のばねを用いてもよい。
【0064】
以上の例では、ウォームホイール232に角度センサ233を設けて、ウォームホイール232のギヤ角度を直接検出するようにしているが、これに限られることなく、例えば角度センサ付きの電動モータ204を用い、その角度センサの検出信号(電動モータ204の回転角度検出信号)からウォームホイール232のギヤ角度(回転角度)を認識するようにしてもよい。
【0065】
なお、本発明を適用するエンジン(内燃機関)としては、4気筒ディーゼルエンジンのほか、例えば6気筒や8気筒などの他の任意の気筒数のディーゼルエンジンであってもよいし、任意気筒数のガソリンエンジンであってもよい。また、車両の動力源については、エンジン(内燃機関)単体のほか、エンジンと電動モータの両方を備えているハイブリッド形動力源であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路を開閉するウエストゲートバルブを電動モータで開閉駆動する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 エンジン
5 排気通路
100 ターボチャージャ(過給機)
101 タービンホイール
110 タービンハウジング
111 排気バイパス通路
112 弁座
200 ウエストゲートバルブ装置
201 ウエストゲートバルブ
211 弁体
212 揺動アーム
213 ばね
202 リンク機構
203 ギヤ機構
231 ウォームギヤ
232 ウォームホイール
233 角度センサ
204 電動モータ
300 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路を開閉する弁体と、前記弁体を開閉方向に移動するアームとを有するウエストゲートバルブと、
電動モータの回転運動を弁開閉運動に変換して前記弁体に前記アームを介して伝達する開閉機構とを備えたウエストゲートバルブ装置において、
前記弁体は前記アームに対して弁開閉方向に接離可能に取り付けられているとともに、前記弁体とアームとの間にばねが設けられていることを特徴とするウエストゲートバルブ装置。
【請求項2】
請求項1記載のウエストゲートバルブ装置において、
前記開閉機構として、前記電動モータの回転駆動力により回転するウォームギヤ及びこのウォームギヤに噛み合うウォームホイールを有するギヤ機構と、このギヤ機構と前記ウエストゲートバルブとの間に連結されるリンク機構とを備えているとともに、
前記ウォームホイールの回転角度を認識する角度認識手段と、前記ウエストゲートバルブを閉じる際に前記ウォームホイールの回転角度がバルブ全閉時の目標ギヤ角度となるように前記電動モータの駆動を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするウエストゲートバルブ装置。
【請求項3】
請求項2記載のウエストゲートバルブ装置において、
前記バルブ全閉時の目標ギヤ角度は、機械的ばらつき、前記ギヤ機構のギヤのバックラッシュ、前記弁体に作用する排気圧力、及び、前記ばねの弾性力を考慮して決定することを特徴とするウエストゲートバルブ装置。
【請求項4】
請求項2または3記載のウエストゲートバルブ装置において、
前記ウォームホイールの回転角度が前記バルブ全閉時の目標ギヤ角度となったときに、前記電動モータへの通電を停止することを特徴とするウエストゲートバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−67698(P2012−67698A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213997(P2010−213997)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】