説明

ウエハ移送システム中の清浄度評価方法

【課題】半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の、塵埃に起因した清浄度の評価効率を低コストで向上させる。
【解決手段】ウエハキャリアの一端を開放して、前記ウエハキャリアを前記ウエハ移送システムと連通させ、次いで、前記ウエハ移送システム内の塵埃を前記ウエハキャリアを介して吸引し、前記塵埃の濃度を計測する。そして、計測された前記塵埃の濃度から前記ウエハ移送システム中の清浄度を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の清浄度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化が進むにつれて、ウエハに付着する塵埃が前記半導体デバイスの製造歩留まりや品質、信頼性に対して高い影響を及ぼすようになってきている。したがって、前記半導体デバイスを製造するための半導体製造装置のクリーン化が重要な課題となってきている。
【0003】
前記半導体製造装置内には、所定のウエハキャリアから前記半導体デバイスの基板となるべきウエハが随時搬入されることになるが、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内に直接ウエハを搬入すると、前記半導体製造装置の内部が一旦外気に晒されることになる。したがって、前記半導体製造装置がクリーンルーム内に設置されているとしても、前記半導体製造装置内にウエハを搬入する際に、前記半導体製造装置内が汚染されてしまうことになる。結果として、上述した半導体製造装置のクリーン化の要請に反することになる。
【0004】
このような問題に鑑み、近年では前記ウエハキャリアと前記半導体製造装置との間に、比較的高いクリーン度に保持されたウエハ移送システムを配置し、前記ウエハキャリアからのウエハを前記ウエハ移送システム内に搬送して収納した後、前記ウエハ移送システムから前記半導体製造装置内へ前記ウエハを移送するような構成を採っている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−188320号公報
【0005】
しかしながら、上記ウエハ移送システムを用いた場合においても、前記ウエハキャリアの蓋を開にして前記ウエハ移送システムと連通させて、所定のウエハを前記ウエハキャリアから前記ウエハ移送システム内に移送する際に、前記蓋の開動作に伴って多量の塵埃が生じてしまう。したがって、ウエハキャリアの所定のバッチにおいては、前記蓋の開動作に伴って、内部のウエハに多量の塵埃が付着してしまい、最終的に得る半導体デバイスの製造歩留まりや品質、信頼性を劣化させてしまうことになる。
【0006】
かかる観点より、上記ウエハ移送システム内の清浄度を適宜モニタリングし、清浄度が劣化した場合は、前記ウエハ移送システム内を適宜清浄する必要がある。
【0007】
従来、前記ウエハ移送システム内の清浄度のモニタリングは、例えば清浄度測定用のウエハを別途用意し、このウエハを前記ウエハ移送システム内に複数回出し入れし、前記ウエハに付着した塵埃を前記ウエハ移送システム内に出し入れした回数で除し、前記ウエハ移送システム内への1回当たりの移送において付着した塵埃の量(濃度)を計測することにより実施していた。なお、このような操作は一般にPWP(Particle Wafer per Pass)と称される。
【0008】
しかしながら、上述したPWPにおいては、その操作に対して専用のウエハを準備する必要があるとともに、通常の半導体製造工程とは別にPWP専用の工程を設ける必要があり、実質的な半導体デバイスの製造時間が長時間化してしまうという問題があった。このような観点から、従来のPWPでは前記半導体デバイスの製造コストを必然的に押上げてしまう結果となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の、塵埃に起因した清浄度の評価効率を低コストで向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明の一態様は、半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の清浄度評価方法であって、前記ウエハキャリアの一端を開放して、前記ウエハキャリアを前記ウエハ移送システムと連通させる工程と、前記ウエハ移送システム内の塵埃を前記ウエハキャリアを介して吸引し、前記塵埃の濃度を計測する工程とを具え、計測された前記塵埃の濃度から前記ウエハ移送システム中の清浄度を評価することを特徴とする、ウエハ移送システム中の清浄度評価方法に関する。
【0011】
また、本発明の他の態様は、半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の清浄度評価方法であって、前記ウエハキャリアの一端を開放して、前記ウエハキャリアを前記ウエハ移送システムと連通させる工程と、前記ウエハ移送システムから前記ウエハキャリア内に流入してきた塵埃に対して光照射を行い、前記塵埃からの散乱光の光量を計測する工程とを具え、計測された前記光量から前記ウエハ移送システム中の塵埃の濃度を定量し、前記ウエハ移送システムの清浄度を評価することを特徴とする、ウエハ移送システム中の清浄度評価方法に関する。
【0012】
さらに、本発明のその他の態様は、半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の清浄度評価方法であって、前記ウエハキャリアの一端を開放して、前記ウエハキャリアを前記ウエハ移送システムと連通させる工程と、前記ウエハ移送システムから前記ウエハキャリア内に流入してきた塵埃に対して光照射を行い、前記光の前記塵埃を介して透過した成分の光量を計測する工程とを具え、計測された前記光量から前記ウエハ移送システム中の塵埃の濃度を定量し、前記ウエハ移送システムの清浄度を評価することを特徴とする、ウエハ移送システム中の清浄度評価方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
上記態様によれば、半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の、塵埃に起因した清浄度の評価効率を低コストで向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるウエハ移送システム中の清浄度評価方法を説明するための図である。図1に示すように、ウエハキャリア10と半導体製造装置30との間には、ウエハ移送システム20が設けられている。ウエハキャリア10は、特に明示していないものの、複数のウエハが所定の間隔で上下方向に積層されて収納されるようにして構成されている。また、その一端には、開閉自在な蓋11が設けられている。半導体製造装置30は、製造しようとする半導体デバイスの種類などに応じて適宜に設計され、例えばエッチング室や成膜室などの複数の処理室を有する。また、必要に応じて、ロード室及び/又はアンロード室を有することができる。
【0016】
ウエハ移送システム20は、通称ミニエンバイロンメントと呼ばれるウエハ搬送室21と、その上部に設けられた清浄空気供給ユニット22とを有している。この清浄空気供給ユニット22は、上側にファン221が設けられ、下側に設けられた吹出し口222を介してウエハ搬送室21内に矢印で示す方向に清浄空気が供給されるように構成されている。なお、ウエハ搬送室21内に供給された前記清浄空気は、図示しない排気ファンを介して外部に放出されるようになっている。
【0017】
また、ウエハ搬送室21内には、図示しないウエハ搬送ロボットが配置され、ウエハキャリア10から供給されたウエハを随時半導体製造装置30内に搬入するようになっている。さらに、ウエハ移送システム20は、ウエハ搬送室21の外部においてウエハキャリア10を載置するための台23を有している。
【0018】
さらに、ウエハキャリア10の蓋11側と対向する位置には、吸引チューブ12が取り付けられ、その一端には塵埃濃度測定装置13が取り付けられている。さらに、ウエハキャリア10の上面には開口部10Aが形成され、ウエハ移送システム20のウエハ搬送室21と連通したチューブ14が設けられている。
【0019】
本実施形態におけるウエハ移送システム20の清浄度評価は次のようにして行われる。最初に、塵埃濃度測定装置13を駆動させ、吸引チューブ12を介してウエハキャリア10内の空気を常に吸引した状態としておく。ウエハキャリア10内の体積は数十リットルであり、塵埃濃度測定装置13による吸引量も数十リットル/分であるので、通常はウエハキャリア10内の圧力は吸引と同時に負圧になる。一方、ウエハ移送システム20のウエハ搬送室21内は、清浄空気が常に供給されていることから常に加圧の状態にある。
【0020】
したがって、このままではウエハキャリア10内の圧力とウエハ搬送室21内の圧力との差が大きくなって、ウエハキャリア10の蓋11を開にすることができず、ウエハ移送システム20内の塵埃を計測し、その清浄度を評価することができない。
【0021】
しかしながら、本実施形態では、ウエハキャリア10とウエハ搬送室21とがチューブ14で連通しているので、ウエハキャリア10内の吸引による圧力低下はチューブ14を介してウエハ搬送室21から供給される清浄空気で補償されることになる。したがって、ウエハキャリア10内の圧力は大きな負圧となることがなく、ウエハキャリア10内の圧力とウエハ搬送室21内の圧力との差が小さくなって、ウエハキャリア10の蓋11の開動作を容易に行うことができるようになる。
【0022】
上述のような構成に基づき、ウエハキャリア10内の吸引を開始した後、ウエハキャリア10の蓋11を開とする。すると、ウエハ移送システム20、すなわちウエハ搬送室21内の塵埃dがウエハキャリア10内に吸い込まれ、さらに吸引チューブ12を介して塵埃濃度測定装置13内に吸い込まれるようになる。したがって、前記塵埃dの量を塵埃濃度測定装置13で計測することによって、ウエハ搬送室21、すなわちウエハ移送システム20の清浄度を評価することができる。
【0023】
なお、ウエハ搬送室21内で発生する塵埃dは、そのほとんどがウエハキャリア10の蓋11の開動作に伴って、蓋11の近傍から発生するものであるので、上述した吸引による塵埃dの濃度計測によって、ウエハ搬送室21、すなわちウエハ移送システム20の清浄度をほぼ正確に評価することができる。
【0024】
また、塵埃濃度測定装置13は、質量法、比色法、計数法などを利用した汎用の濃度測定装置を用いることができる。
【0025】
本実施形態によれば、PWPのように別途塵埃濃度計測用のウエハを準備することなく、また、実際の半導体デバイスの製造工程において、ウエハキャリア10からウエハ移送システム20を介して半導体製造装置30内にウエハを搬送する際に、前記半導体デバイスを構成するウエハを直接用いてウエハ移送システム20内の清浄度を評価することができるので、ウエハ移送システム20内の清浄度の評価効率を低コストで向上させることができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態におけるウエハ移送システム中の清浄度評価方法を説明するための図である。なお、図2において、図1に示す構成要素と同一又は類似の構成要素に関しては同一の参照数字を用いて表している。
【0027】
本実施形態は、上記第1の実施形態の変形例に相当するものであって、塵埃濃度測定装置13がウエハキャリア10内に直接配置されている点において、上記第1の実施形態と相違する。また、以下に説明するように、塵埃濃度測定装置13がウエハキャリア10内に配置されているので、装置による吸引及び排気を同じウエハキャリア10内で行うようになる。したがって、上記第1の実施形態のようにウエハキャリア10内が負圧になって蓋11の開動作を実施できなくなることがない。このような観点から、本実施形態においては、前記負圧を補償するようなウエハキャリア10とウエハ移送システム20のウエハ搬送室21とを連結するチューブ14が設けられていない。
【0028】
なお、その他の構成については上記第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0029】
本実施形態におけるウエハ移送システム20の清浄度評価は次のようにして行われる。最初に、塵埃濃度測定装置13を駆動させ、吸引チューブ12を介してウエハキャリア10内の空気を常に吸引した状態としておく。この際、吸引した空気は図示しない所定のフィルターを介して同じウエハキャリア10内に排出される。この結果、ウエハキャリア10内の圧力変化をほとんど生じることなく、上述した吸引操作を行うことができる。
【0030】
次に、ウエハキャリア10の蓋11を開とする。すると、ウエハ移送システム20、すなわちウエハ搬送室21内の塵埃dがウエハキャリア10内に吸い込まれ、さらに吸引チューブ12を介して塵埃濃度測定装置13内に吸い込まれるようになる。したがって、前記塵埃dの量を塵埃濃度測定装置13で計測することによって、ウエハ搬送室21、すなわちウエハ移送システム20の清浄度を評価することができる。
【0031】
なお、この場合においても、ウエハ搬送室21内で発生する塵埃dは、そのほとんどがウエハキャリア10の蓋11の開動作に伴って、蓋11の近傍から発生するものであるので、上述した吸引による塵埃dの濃度計測によって、ウエハ搬送室21、すなわちウエハ移送システム20の清浄度をほぼ正確に評価することができる。
【0032】
また、塵埃濃度測定装置13は、質量法、比色法、計数法などを利用した汎用の濃度測定装置を用いることができるが、ウエハキャリア10内に設置する観点から小型のものを選択する。
【0033】
本実施形態によれば、PWPのように別途塵埃濃度計測用のウエハを準備することなく、また、実際の半導体デバイスの製造工程において、ウエハキャリア10からウエハ移送システム20を介して半導体製造装置30内にウエハを搬送する際に、前記半導体デバイスを構成するウエハを直接用いてウエハ移送システム20内の清浄度を評価することができるので、ウエハ移送システム20内の清浄度の評価効率を低コストで向上させることができる。
【0034】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態におけるウエハ移送システム中の清浄度評価方法を説明するための図である。なお、図3において、図1に示す構成要素と同一又は類似の構成要素に関しては同一の参照数字を用いて表している。
【0035】
第1の実施形態では、塵埃濃度測定装置13を用い、ウエハキャリア10内の空気を吸引して直接的に塵埃dの濃度を計測してウエハ移送システム20の清浄度を評価したが、本実施形態では、塵埃dの濃度を光学的手法を用いて間接的に計測し、ウエハ移送システム20の清浄度を評価するようにしている。
【0036】
上記観点から、本実施形態では、ウエハキャリア10の蓋11と対向する側に開口部10Bを形成するとともに、その後方にレーザ光源23を配置している。なお、レーザ光源23から発せられたレーザ光L1は開口部10Bを介してウエハキャリア10内に導入されるようになっている。また、ウエハキャリア10の上面には開口部10Cが形成されるとともに、開口部10Cには受光素子24が連結されている。さらに、受光素子24の後方には光計測器25が連結されており、受光素子24で受光した光の量を計測するように構成されている。
【0037】
本実施形態においては、第1の実施形態のように、吸引による塵埃dの直接的な計測を目的としているものではないので、ウエハキャリア10内が吸引によって負圧となるようなことがない。したがって、前記負圧を補償するようなウエハキャリア10とウエハ移送システム20のウエハ搬送室21とを連結するチューブ14が設けられていない。
【0038】
なお、その他の構成については上記第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0039】
本実施形態におけるウエハ移送システム20の清浄度評価は次のようにして行われる。最初に、レーザ光源23を駆動させ、レーザ光L1を、開口部10Bを介してウエハキャリア10内に導入する。次いで、ウエハキャリア10の蓋11を開とする。すると、ウエハ移送システム20、すなわちウエハ搬送室21内の塵埃dがウエハキャリア10内に流入するようになる。このとき、ウエハキャリア10内にはレーザ光L1が導入されているので、レーザ光L1は流入した塵埃dによって反射され、散乱される。
【0040】
したがって、レーザ光L1から塵埃dによって生成された散乱光L2を受光素子24で受光し、電気信号に変換した後光計測器25に送信することにより、光計測器25では散乱光L2の光量に応じた強度の電気信号を受信することになる。すなわち、受光素子24及び光計測器25によって、散乱光L2の光量を計測できることになる。一方、散乱光L2の光量は、ウエハキャリア10内に流入した塵埃d、すなわちウエハ移送システム20内の塵埃dの濃度に応じて変化し、塵埃dの濃度が増大するにつれて散乱光L2の光量も増大する。
【0041】
その結果、予め散乱光L2の光量と塵埃dの濃度との相関を求めておくことにより、散乱光L2の光量を計測することによって、ウエハ移送システム20内の塵埃dの濃度を後に適宜間接的に同定することができるようになる。図4は、塵埃dの濃度と散乱光L2の光量との相関の一例を示すグラフである。図4(a)に示すように、ウエハ移送システム20内に塵埃dが存在しない場合は、光計測器25のノイズ成分のみが観測されるのに対し、図4(b)に示すように、ウエハ移送システム20内に塵埃dが存在する場合は、塵埃dに起因した散乱光L2が、時間の経過とともにランダムに計測されるようになる。
【0042】
なお、受光素子24及び光計測器25は、CCD素子及びそれに付随した計測器を有するCCDイメージセンサなど汎用のものから適宜に選択して用いることができる。
【0043】
また、上述のように散乱光L2を生成できるものであれば、レーザ光源を用いる必要はなく、任意の光源を使用することができる。
【0044】
本実施形態によれば、PWPのように別途塵埃濃度計測用のウエハを準備することなく、また、実際の半導体デバイスの製造工程において、ウエハキャリア10からウエハ移送システム20を介して半導体製造装置30内にウエハを搬送する際に、前記半導体デバイスを構成するウエハを直接用いてウエハ移送システム20内の清浄度を評価することができるので、ウエハ移送システム20内の清浄度の評価効率を低コストで向上させることができる。
【0045】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態におけるウエハ移送システム中の清浄度評価方法を説明するための図である。なお、図5において、図1及び図3に示す構成要素と同一又は類似の構成要素に関しては同一の参照数字を用いて表している。
【0046】
第1の実施形態では、塵埃濃度測定装置13を用い、ウエハキャリア10内の空気を吸引して直接的に塵埃dの濃度を計測してウエハ移送システム20の清浄度を評価したが、本実施形態でも、第3の実施形態と同様に、塵埃dの濃度を光学的手法を用いて間接的に計測し、ウエハ移送システム20の清浄度を評価するようにしている。
【0047】
上記観点から、本実施形態では、ウエハキャリア10の蓋11と対向する側に開口部10Bを形成するとともに、その後方にレーザ光源23を配置している。なお、レーザ光源23から発せられたレーザ光L1は、レーザ光源23及びウエハキャリア10間に設けられた絞り27によって適宜所定のビーム径にまで絞った後、開口部10Bを介してウエハキャリア10内に導入されるようになっている。また、ウエハキャリア10の蓋11が設けられた側の側面には、受光素子24が開口部10Bと対向するようにして配置されている。
【0048】
なお、受光素子24は、レーザ光L1と干渉しないようにして配置された配線28によって駆動用電源26に接続されるとともに光計測器25に接続されている。
【0049】
本実施形態においても、第1の実施形態のように、吸引による塵埃dの直接的な計測を目的としているものではないので、ウエハキャリア10内が吸引によって負圧となるようなことがない。したがって、前記負圧を補償するようなウエハキャリア10とウエハ移送システム20のウエハ搬送室21とを連結するチューブ14が設けられていない。
【0050】
なお、その他の構成については上記第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0051】
本実施形態におけるウエハ移送システム20の清浄度評価は次のようにして行われる。最初に、レーザ光源23を駆動させ、レーザ光L1を、絞り27でビーム径を所定の径にまで絞った後、開口部10Bを介してウエハキャリア10内に導入する。次いで、ウエハキャリア10の蓋11を開とする。すると、ウエハ移送システム20、すなわちウエハ搬送室21内の塵埃dがウエハキャリア10内に流入するようになる。このとき、ウエハキャリア10内にはレーザ光L1が導入されているので、レーザ光L1は流入した塵埃dによって反射され、散乱される。
【0052】
したがって、ウエハキャリア10内に配置された受光素子24では、塵埃dの流入前後によってレーザ光源23からのレーザ光L1の受光量が異なるようになる。すなわち、ウエハキャリア10内に塵埃dが存在しない場合は、レーザ光L1はそのまま受光素子24で受光されるようになるので、受光する光量は比較的大きくなる。一方、ウエハキャリア10内に塵埃dが存在する場合、レーザ光L1は塵埃dによって散乱されるので、受光素子24で受光する光量が減少することになる。結果として、受光素子24によるレーザ光L1の受光量の減少度合いから、ウエハキャリア10内の塵埃d、すなわちウエハ移送システム20内の塵埃dの濃度を間接的に知ることができる。
【0053】
具体的には、受光素子24の受光量と塵埃dの濃度との相関を求めておくことにより、受光素子24の光量を計測することによって、ウエハ移送システム20内の塵埃dの濃度を後に適宜間接的に同定することができるようになる。図6は、受光素子24における受光量の測定時間依存性を示すグラフの一例を示すものである。図6から明らかなように、ウエハキャリア10内に塵埃dが存在しない場合、受光素子24における受光量はほぼ一定となるが(図6(a)参照)、ウエハキャリア10内に塵埃dが存在する場合、受光素子得24における受光量は、例えば塵埃dによる散乱により所定の測定時間において減少するような傾向を呈する(図6(b)参照)。
【0054】
なお、受光素子24及び光計測器25は、フォトダイオード及びそれに付随した汎用の計測器などから適宜に選択して用いることができる。また、受光素子24の前面には必要に応じてフィルターを設けることもできる。
【0055】
また、レーザ光源23の代わりに他の光源をも用いることができるが、上記のようにフォトダイオードなどを受光素子24として用いる場合は、特定の波長の光しか受光することができないので、上述のようにレーザ光源23を用いることが好ましい。
【0056】
本実施形態によれば、PWPのように別途塵埃濃度計測用のウエハを準備することなく、また、実際の半導体デバイスの製造工程において、ウエハキャリア10からウエハ移送システム20を介して半導体製造装置30内にウエハを搬送する際に、前記半導体デバイスを構成するウエハを直接用いてウエハ移送システム20内の清浄度を評価することができるので、ウエハ移送システム20内の清浄度の評価効率を低コストで向上させることができる。
【0057】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0058】
例えば、上記第1の実施形態では、チューブ14をウエハキャリア10の上面に取り付けたが、ウエハ搬送室21内の清浄な空気を取り込み、吸引による負圧を補償するものであれば、任意の箇所に取り付けることができる。例えば、特に図示しないが、ウエハキャリア10のブリージングフィルターを介して供給するようにすることもできる。
【0059】
また、本発明は、ウエハ移送システム20内に清浄度を評価する場合の他、その他の密閉容器であって、塵埃の発生が問題となるようなあらゆる製品及び装置の清浄度評価に対しても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1の実施形態におけるウエハ移送システム中の清浄度評価方法を説明するための図である。
【図2】第2の実施形態におけるウエハ移送システム中の清浄度評価方法を説明するための図である。
【図3】第3の実施形態におけるウエハ移送システム中の清浄度評価方法を説明するための図である。
【図4】塵埃dの濃度と散乱光L2の光量との相関の一例を示すグラフである。
【図5】第4の実施形態におけるウエハ移送システム中の清浄度評価方法を説明するための図である。
【図6】受光素子24における受光量の測定時間依存性を示すグラフの一例を示すものである。
【符号の説明】
【0061】
10 ウエハキャリア
11 ウエハキャリアの蓋
12 吸引チューブ
13 塵埃濃度測定装置
14 チューブ
20 ウエハ移送システム
21 ウエハ搬送室
22 清浄空気供給ユニット
23 レーザ光源
24 受光素子
25 光計測器
26 駆動用電源
27 絞り
28 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の清浄度評価方法であって、
前記ウエハキャリアの一端を開放して、前記ウエハキャリアを前記ウエハ移送システムと連通させる工程と、
前記ウエハ移送システム内の塵埃を前記ウエハキャリアを介して吸引し、前記塵埃の濃度を計測する工程とを具え、
計測された前記塵埃の濃度から前記ウエハ移送システム中の清浄度を評価することを特徴とする、ウエハ移送システム中の清浄度評価方法。
【請求項2】
前記吸引は、前記ウエハキャリアの前記一端と対向する他端側から行うとともに、前記ウエハキャリアの、前記一端と異なる所定の位置に設けられた開口部を介して、前記ウエハキャリアを前記ウエハ移送システムと再度連通させ、前記吸引に伴う前記ウエハキャリア内の圧力減少を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のウエハ移送システム中の清浄度評価方法。
【請求項3】
前記吸引は前記ウエハキャリア内で行い、前記塵埃の濃度を計測した後、前記吸引に伴う排気を前記ウエハキャリア内で行うことを特徴とする、請求項1に記載のウエハ移送システム中の清浄度評価方法。
【請求項4】
半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の清浄度評価方法であって、
前記ウエハキャリアの一端を開放して、前記ウエハキャリアを前記ウエハ移送システムと連通させる工程と、
前記ウエハ移送システムから前記ウエハキャリア内に流入してきた塵埃に対して光照射を行い、前記塵埃からの散乱光の光量を計測する工程とを具え、
計測された前記光量から前記ウエハ移送システム中の塵埃の濃度を定量し、前記ウエハ移送システムの清浄度を評価することを特徴とする、ウエハ移送システム中の清浄度評価方法。
【請求項5】
半導体製造装置とウエハキャリアとの間に設けられ、前記ウエハキャリアから前記半導体製造装置内へウエハを移送するためのウエハ移送システム中の清浄度評価方法であって、
前記ウエハキャリアの一端を開放して、前記ウエハキャリアを前記ウエハ移送システムと連通させる工程と、
前記ウエハ移送システムから前記ウエハキャリア内に流入してきた塵埃に対して光照射を行い、前記光の前記塵埃を介して透過した成分の光量を計測する工程とを具え、
計測された前記光量から前記ウエハ移送システム中の塵埃の濃度を定量し、前記ウエハ移送システムの清浄度を評価することを特徴とする、ウエハ移送システム中の清浄度評価方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−60025(P2009−60025A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227899(P2007−227899)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】