説明

ウォッシャポンプシステム及びその制御方法

【課題】1つのポンプ装置を用いた簡易な構成において、少なくとも3つ以上の流体供給経路に対してウォッシャ液を選択的に供給可能とする。
【解決手段】ウォッシャポンプシステム1が、インペラ2の回転方向に応じて大小関係が逆転する吐出圧力をもってそれぞれウォッシャ液を吐出する2つの吐出口3,4を有するポンプ装置5と、各吐出口にそれぞれ連通する第1および第2の導出流路6,7を有し、ウォッシャ液の圧力差に応じて2つの導出流路の一方を閉鎖すると共に他方を開放するバルブ機構8と、ポンプ制御装置11とを備え、バルブ機構に接続されたサブバルブ機構10が、第1の導出流路に連通する第1および第2の分配流路112,114を有し、第1の導出流路から吐出されたウォッシャ液の圧力の大きさに応じて、2つの分配流路のいずれか一方を選択的に閉鎖すると共にいずれか他方の分配流路を開放する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流体供給経路にウォッシャ液を選択的に供給するウォッシャポンプシステム及びその制御方法に関し、特に、自動車におけるウインドウ等の洗浄に好適なウォッシャポンプシステム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載され、ウォッシャタンク内のウォッシャ液をフロントウインドウ及びリアウインドウのいずれかに選択的に供給するウォッシャポンプシステムが存在する。
【0003】
この種のウォッシャポンプシステムとして、例えば、インペラの回転方向に応じて大小関係が逆転する吐出圧力をもってウォッシャ液を吐出する2つの吐出口を有したポンプ装置と、これら各吐出口にそれぞれ連通する2つの導出流路を有し、吐出圧力の圧力差によって作動することにより、2つの導出流路のうち、圧力の低い方の導出流路を閉鎖すると共に圧力の高い方の導出流路を開放するバルブ機構とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、ポンプ(インペラ)の回転方向を変更するだけで、ウォッシャ液の供給経路(フロントウインドウ向けまたはリアウインドウ向け)を容易に変更することができる。しかしながら、上記従来技術において、更に別の供給先(例えば、ヘッドランプ)にウォッシャ液を供給しようとした場合(すなわち、3つ以上の流体供給経路に対するウォッシャ液の供給が必要な場合)、新たに別のウォッシャポンプを準備する必要があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、1つのポンプ装置を用いた簡易な構成において、少なくとも3つ以上の流体供給経路に対してウォッシャ液を選択的に供給可能としたウォッシャポンプシステム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、複数の流体供給経路にウォッシャ液を選択的に供給するウォッシャポンプシステム(1)であって、インペラ(2)の回転方向に応じて大小関係が逆転する吐出圧力をもってそれぞれウォッシャ液を吐出する2つの吐出口(3,4)を有するポンプ装置(5)と、前記各吐出口にそれぞれ連通する第1および第2の導出流路(6,7)を有し、前記各吐出口から吐出されるウォッシャ液の圧力差に応じて、当該2つの導出流路のうち低圧側の導出流路を閉鎖すると共に高圧側の導出流路を開放するバルブ機構(8)と、前記バルブ機構に接続されたサブバルブ機構(10)と、前記インペラの回転動作を制御するポンプ制御装置(11)とを備え、前記サブバルブ機構は、前記第1の導出流路に連通する第1および第2の分配流路(112,114)を有し、前記第1の導出流路から吐出されたウォッシャ液の圧力の大きさに応じて作動することにより、前記2つの分配流路のいずれか一方を選択的に閉鎖すると共にいずれか他方の分配流路を開放する構成とする。
【0008】
また、第2の発明として、前記サブバルブ機構は、前記第1の導出流路から吐出されたウォッシャ液の圧力の大きさに応じて作動する弁体(63)を有し、前記弁体は、初期状態において、前記2つの分配流路うちの一方を閉鎖すると共にその他方を開放する一方、ウォッシャ液の所定以上の圧力によって変位または変形することにより、前記一方の分配流路を開放すると共に前記他方の分配流路を閉鎖するダイヤフラムからなる構成とすることができる。
【0009】
また、第3の発明として、前記弁体は、前記初期状態において前記第1の導出流路と前記他方の分配流路とを連通する連通孔(97)を有する構成とすることができる。
【0010】
また、第4の発明として、前記サブバルブ機構は、前記ウォッシャ液の圧力による前記弁体の変位または変形に抗する向きに当該弁体を付勢する付勢手段(101)を更に有する構成とすることができる。
【0011】
また、第5の発明は、第1の発明に係るウォッシャポンプシステムの制御方法であって、前記ポンプ制御装置が、前記インペラの回転方向と、少なくとも一方の回転方向におけるインペラの回転動作とを制御することにより、前記第2の導出流路、前記第1の分配流路、及び前記第2の分配流路のいずれかにウォッシャ液を選択的に供給する構成とする。
【0012】
また、第6の発明として、前記ポンプ装置は、前記インペラを回転駆動する電動モータを有し、前記ポンプ制御装置は、前記電動モータの駆動電圧を調節することにより、前記インペラの回転速度を制御する構成とすることができる。
【0013】
また、第7の発明として、前記ポンプ制御装置は、前記電動モータに印加する電圧をデューティ制御する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記第1および第5の発明によれば、1つのポンプ装置を用いた簡易な構成において、インペラの回転方向と、一方の回転方向におけるインペラの回転動作(すなわち、第1の導出流路に導かれるウォッシャ液の圧力の大小)とを制御することにより、3つの流体供給経路(第2の導出流路、第1の分配流路、及び第2の分配流路)に対してウォッシャ液を選択的に供給することが可能となるという優れた作用効果を奏する。
また、上記第2の発明によれば、ウォッシャ液の圧力の大きさに応じて2つの分配流路のいずれか一方を閉鎖すると共にいずれか他方の分配流路を開放する機構を容易に実現することができる。
また、上記第3の発明によれば、ウォッシャ液の圧力の大きさに応じて2つの分配流路のいずれか一方を閉鎖すると共にいずれか他方の分配流路を開放する機構をより簡易な流路構成により実現することができる。
また、上記第4の発明によれば、初期状態の弁体によって2つの分配流路うちの一方を確実に閉鎖することが可能となる。
また、上記第6の発明によれば、第1の導出流路に導かれるウォッシャ液の圧力を容易に調節する(すなわち、第1および第2の分配流路の閉鎖または開放を選択する)ことができる。
また、上記第7の発明によれば、電源から一定の電源電圧が供給される場合においても、電動モータに印加する電圧を容易に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るウォッシャポンプシステムの構成図である。
【図2】バルブ機構を備えたポンプ装置の側面図である。
【図3】サブバルブ機構の断面斜視図である。
【図4】サブバルブ機構の弁体の上面側から見た斜視図である。
【図5】サブバルブ機構の動作を示す図である。
【図6】ウォッシャポンプシステムの動作手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るウォッシャポンプシステムについて図面を参照しながら説明する。説明にあたり、方向を示す用語については、参照する図面の表示に従って定めるが、これらは実用上の各構成要素の配置とは必ずしも一致しないものとする。なお、図1に示すウォッシャポンプ5およびバルブ機構8の断面は、図2中のI−I断面に相当する。
【0017】
図1に示すように、ウォッシャポンプシステム1は、図示しない自動車に搭載され、フロントウインドウ、リアウインドウ、及びヘッドランプに対応する3方向の供給経路に対してウォッシャ液の供給を可能とするものである。ウォッシャポンプシステム1は、回転駆動されるインペラ2の回転方向に応じて大小関係が逆転する吐出圧力をもってそれぞれウォッシャ液を吐出する第1および第2の吐出管(吐出口)3,4を有するウォッシャポンプ(ポンプ装置)5と、各吐出管3,4にそれぞれ連通する第1および第2の導出流路6,7を有し、各吐出管3,4から吐出されたウォッシャ液の圧力差に応じて、当該2つの導出流路6,7のうち低圧側の導出流路を閉鎖すると共に高圧側の導出流路を開放するバルブ機構8と、このバルブ機構8に配管9を介して接続されたサブバルブ機構10と、インペラ2の回転動作を制御するポンプ制御装置11とを主として備える。
【0018】
ウォッシャポンプ5は、図2に示すように、電動モータ21が収容された本体ケース22を有している。本体ケース22内には、電動モータ21の回転軸21a(図1参照)に取り付けられたインペラ2が収容されたポンプ室24が形成されている。ポンプ室24には、図示しないウォッシャ液タンクからウォッシャ液供給管25を介してウォッシャ液が供給される。また、ポンプ室24に連通する第1および第2の吐出管3,4は、インペラ2の軸に垂直な方向に略左右対称に突設されている。
【0019】
このウォッシャポンプ5では、インペラ2(電動モータ21)が正転(図1中に矢印Aで示す反時計回り方向に回転)する場合には、第2の吐出管4の吐出圧が第1の吐出管3の吐出圧よりも高くなる。一方、インペラ2が逆転(図1中に矢印Bで示す時計回り方向に回転)する場合には、第1の吐出管3の吐出圧が第2の吐出管4の圧力よりも高くなる。
【0020】
バルブ機構8は、図1に示すように、略左右対称な形状を有する第1および第2の分割ハウジング31,32から構成されると共に、左右両端が閉じられた略筒状を呈するハウジング本体33を有している。ハウジング本体33には、その軸方向(図1中の左右方向)に垂直な方向に周壁から第1および第2の流入管35,36が突設されており、これら2つの流入管35,36はウォッシャポンプ5の2つの吐出管3,4にそれぞれ接続されている。また、ハウジング本体33には、その内側から左右壁をそれぞれ貫くようにして軸方向外側に延設された第1および第2の流出管37,38が突設されている。
【0021】
2つの分割ハウジング31,32は、樹脂製のダイヤフラムからなる膜状弁体41が介装された状態で互いに嵌合されている。膜状弁体41は、分割ハウジング31,32の嵌合部の間に挟持される環状の外周部41aと、略中心に設けられた肉厚で比較的硬質の円板部41bと、それら外周部41aと円板部41bとを繋ぐ可撓性を有する環状の可撓部41cとを有する。円板部41bは、ウォッシャ液の圧力(より厳密には、吐出管3,4から吐出されるウォッシャ液の圧力差)によって可撓部41cが撓み変形することにより、軸方向(図1中の左右方向)に変位可能となっている。
【0022】
ここで、第1,第2の流出管37,38の内側に位置する環状の端縁37a,38aは、それぞれ膜状弁体41に対する弁座として機能する。すなわち、膜状弁体41の円板部41bは、ウォッシャ液の圧力によって右方向に変位することにより、その右側面が端縁37aに密接して第1の流出管37を閉鎖する。一方、膜状弁体41は、円板部41bが左方向に変位することにより、その左側面が端縁38aに密接して第2の流出管38を閉鎖する。
【0023】
バルブ機構8では、ハウジング本体33の周壁(嵌合部を除く)と第1,第2の流出管37,38との間に環状の連通路51,52が形成されている。これら連通路51,52と、第1,第2の流入管35,36と、第1,第2の流出管37,38とによって、図1中の実線の矢印Cおよび1点鎖線の矢印Dでそれぞれ示すように、ウォッシャ液を輸送する第1および第2の導出流路6,7が画成されている。ここで、第1および第2の導出流路6,7は、連通路51,52および第1,第2の流出管37,38によって画成される部位が膜状弁体41によって左右に分離されており、これにより、互いに独立した流路として形成されている。なお、ここでは、バルブ機構8をウォッシャポンプ5と別体に設けて互いに連結した例を示したが、バルブ機構8の構成要素の一部またはその全てをウォッシャポンプ5と一体に設けた構成も可能である。
【0024】
サブバルブ機構10は、図3に示すように、第1の分割ハウジング61と、この第1の分割ハウジング61の一端側(ここでは、下側)に連結された第2の分割ハウジング62と、これら2つの分割ハウジング61,22の間に介装されたゴム製のダイヤフラムからなる膜状弁体63とを有する。
【0025】
第1の分割ハウジング61は、有底の(ここでは、上端が閉鎖された)円筒状を呈する本体部71と、この本体部71の周面から水平方向(軸方向と垂直な方向)に延設された流入管72と、本体部71の内側からその上壁の中心を貫くようにして軸方向に延設された第1の分岐管73と、本体部71の一端(ここでは、下端)から周方向外側に張り出すように、その外周面の全周に渡って形成された鍔状部74とを有する。流入管72は、配管9(図1参照)を介してバルブ機構8の第1の流出管37に連通する。
【0026】
第2の分割ハウジング62は、有底の(ここでは、下端が閉鎖された)円筒状を呈する本体部81と、この本体部81の内側からその下壁の中心を貫くようにして垂直方向に延設された第2の分岐管83と、本体部81の一端(ここでは、上端)から周方向外側に張り出すように、その外周面の全周に渡って形成された鍔状部84とを有する。本体部81は、第1の分割ハウジング61の本体部71よりも小さい径を有すると共に、この本体部71と同軸上に配置されている。また、第2の分岐管83は、第1の分岐管73よりも小さい径を有すると共に、第1の分岐管73と同軸上に配置されている。
【0027】
鍔状部74において下方に突設された外周縁をなす嵌合部91は、鍔状部84において上方に突設された外周縁をなす嵌合部92の内側に嵌合している。膜状弁体63は、図4にも示すように、互いに連結された鍔状部74,84の間に挟持される環状の外周部63aと、略中心に設けられた肉厚で比較的硬質の円板部63bと、それら外周部63aと円板部63bとを繋ぐ可撓性を有する環状の可撓部63cとを有する。
【0028】
円板部63bは、流入管72に流入するウォッシャ液の圧力によって可撓部63cが撓み変形することにより、軸方向(図3中の略上下方向)に変位可能となっている。また、可撓部63cは、内周側の平板部95と、この平板部95の外周側に連なる凸状断面を有する湾曲部96とを有している。平板部95には、複数(ここでは、3つ)の貫通孔(連通孔)97が、互いに周方向に均等な間隔をおいて形成されており、さらに、これら貫通孔97の周縁には、円形断面を有して可撓部63cの上下に突出する肉厚部97aが形成されている。
【0029】
第2の分岐管83の外周には、軸方向に延在する圧縮バネ101が取り付けられている。この圧縮バネ101は、その下端部が本体部81の下壁の上面に当接すると共に、その上端部が膜状弁体63の円板部63bの下部に嵌着されている。ここで、円板部63bは、その下部が縮径されることにより、圧縮バネ101のコイル径と略同一の径(やや大径)となっている。
【0030】
ここで、第1および第2の分岐管73,83の内側に位置する環状の端縁73a,83aは、それぞれ膜状弁体63に対応する弁座として機能する。膜状弁体63は、図5(A)に示すように、その初期状態において、円板部63bの上面が端縁73aに密接して第1の分岐管73を閉鎖する。このとき、円板部63bは、圧縮バネ101によって上方(端縁73a側)に付勢されているため、第1の分岐管73を確実に閉鎖することが可能となっている。一方、膜状弁体63は、流入管72に流入するウォッシャ液の圧力が所定値を越えると、この圧力によって円板部63bが圧縮バネ101に抗して下方に変位する。これにより、図5(B)に示すように、円板部63bの下面が端縁83aに密接して第2の分岐管83を閉鎖する。このとき、膜状弁体63の全ての貫通孔97は、その周縁の肉厚部97aが鍔状部84の上面(閉鎖部)に密接することにより閉鎖される。
【0031】
サブバルブ機構10では、第1の分割ハウジング61における本体部71の周壁と第1の分岐管73との間に環状の連通路111が形成されている。そして、第1の分岐管73が閉鎖された場合には、この連通路113と、第2の分岐管83とによって、図5(A)中の矢印Eで示すようにウォッシャ液を輸送する第2の分配流路114が画成される。このとき、第1の分割ハウジング61側から流入したウォッシャ液は、開放状態にある各貫通孔97を通って第2の分割ハウジング62側に流れる。このような貫通孔97の構成により、ウォッシャ液の圧力の大きさに応じて第1の分岐管73を閉鎖すると共に第2の分岐管83を開放する機構をより簡易な流路構成により実現することができる。
【0032】
また、サブバルブ機構10では、第2の分岐管83と全ての貫通孔97とが閉鎖された場合には、連通路111と、第1の分岐管73とによって、図5(B)中の矢印Fで示すようにウォッシャ液を輸送する第1の分配流路112が画成される。このとき、上述の第2の分配流路114は、第2の分岐管83の閉鎖のみならず、全ての貫通孔97の閉鎖によって二重に遮断された状態となっている。なお、第2の分割ハウジング62における本体部81の周壁と第2の分岐管83との間に環状の連通路113には圧縮バネ101が収容されている。
【0033】
このような構成により、サブバルブ機構10では、バルブ機構8から供給されるウォッシャ液の圧力の大きさに応じて2つの分配流路112,114のいずれか一方を閉鎖すると共にいずれか他方の分配流路を開放する機構を容易に実現することができる。なお、ここでは、サブバルブ機構10が配管9を介してバルブ機構8と接続された例を示したが、サブバルブ機構10の構成要素の少なくとも一部(例えば、流入管72)を、バルブ機構8と一体に設ける構成も可能である。
【0034】
ポンプ制御装置11は、マイクロプロセッサやスイッチング素子等から構成されるインバータ回路(図示せず)を内蔵し、PWM(Pulse Width Modulation)方式により、電動モータ21の電源のON/OFFに関するデューティ比を変更して電動モータ21の回転速度を制御する。このポンプ制御装置11により、ウォッシャポンプシステム1では、第1の導出流路6に導かれるウォッシャ液の圧力を調節する(すなわち、第1および第2の分配流路112,114の閉鎖または開放を選択する)ことが容易となる。また、電源から一定の電源電圧が供給される場合においても、電動モータ21に印加する電圧を調節することが容易となるという利点もある。なお、図2では、ポンプ制御装置11は、ウォッシャポンプ5に付設されているが、ウォッシャポンプ5と別体に設けても良い。
【0035】
次に、図6を参照して、上記構成のウォッシャポンプシステム1の制御方法について説明する。
【0036】
まず、オペレータ(ここでは、自動車の運転者)がウォッシャ液を供給するためのスイッチ操作を行うと、ポンプ制御装置11は、そのスイッチ操作に応じて生成された実行指令がリアウインドウ、フロントウインドウ、及びヘッドランプのいずれに対するものであるかを判定する。その実行指令がリアウインドウに対するものである場合(S101:Yes)、ポンプ制御装置11は、電動モータ21を低速で正転(図1中の矢印Aの方向に回転)させるように制御する(S102)。このとき、図1中の矢印Dで示したように、低圧(例えば、圧力150kPa)のウォッシャ液が第2の導出流路7を介してリアウインドウに向けて供給される。
【0037】
また、実行指令がリアウインドウに対するものではなく(S101:No)、フロントウインドウに対するものである場合(S104:Yes)、ポンプ制御装置11は、電動モータ21を低速で逆転(図1中の矢印Bの方向に回転)させるように制御する(S105)。このとき、図1中の矢印Cで示したように、低圧(例えば、圧力150kPa)のウォッシャ液が第1の導出流路6を介してサブバルブ機構10に向けて供給される。更に、サブバルブ機構10では、図5(A)中の矢印Eで示したように、低圧のウォッシャ液が第2の分配流路114を介してフロントウインドウに向けて供給される。
【0038】
また、実行指令がリアウインドウに対するものでもフロントウインドウに対するものでもない場合(S101:No,S104:No)、ポンプ制御装置11は、電動モータ21を高速で逆転(図1中の矢印Bの方向に回転)させるように制御する(S107)。このとき、図1中の矢印Dで示したように、高圧(例えば、圧力220kPa)のウォッシャ液が第1の導出流路6を介してサブバルブ機構10に向けて供給される。更に、サブバルブ機構10では、図5(B)中の矢印Fで示したように、高圧のウォッシャ液が第1の分配流路112を介してヘッドランプに向けて供給される。なお、ヘッドランプに対しては、ウォッシャ液の圧力のみで泥等を落とす必要があるため、リアウインドウやフロントウインドウに比べて高圧かつ大流量のウォッシャ液による洗浄が有効である。
【0039】
このように、本発明に係るウォッシャポンプシステム1では、ウォッシャポンプ5と共に、ウォッシャ液の圧力の大きさに応じて作動するサブバルブ機構10を設けたため、1つのウォッシャポンプ5を用いた簡易な構成において、インペラ2の回転方向と、一方の回転方向におけるインペラ2の回転動作とを制御することにより、3つの流体供給経路(リアウインドウ、フロントウインドウ、及びヘッドランプ向け)にウォッシャ液を選択的に供給することが可能となる。なお、上記実施形態では、サブバルブ機構10は、第1の流出管37側に接続される構成としたが、第2の流出管38側に接続することも可能である。また、第1,第2の流出管37,38の両方にそれぞれ接続される2つのサブバルブ機構を設けることにより、4つの流体供給経路にウォッシャ液を選択的に供給することが可能となる。
【0040】
本発明を特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、上記実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、本発明に係るウォッシャポンプシステム及びその制御方法は、上述のようなリアウインドウ、フロントウインドウ、及びヘッドランプ向けのみならず、3つ又は4つの任意の流体供給経路にウォッシャ液を選択的に供給する用途に使用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ウォッシャポンプシステム
2 インペラ
3 第1の吐出管(吐出口)
4 第2の吐出管(吐出口)
5 ウォッシャポンプ(ポンプ装置)
6 第1の導出流路
7 第2の導出流路
8 バルブ機構
10 サブバルブ機構
11 ポンプ制御装置
21 電動モータ
35 第1の流入管
36 第2の流入管
37 第1の流出管
38 第2の流出管
63 膜状弁体
63a 外周部
63b 円板部
63c 可撓部
72 流入管
73 第1の分岐管
83 第2の分岐管
97 貫通孔(連通孔)
101 圧縮バネ(付勢手段)
112 第1の分配流路
114 第2の分配流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体供給経路にウォッシャ液を選択的に供給するウォッシャポンプシステムであって、
インペラの回転方向に応じて大小関係が逆転する吐出圧力をもってそれぞれウォッシャ液を吐出する2つの吐出口を有するポンプ装置と、
前記各吐出口にそれぞれ連通する第1および第2の導出流路を有し、前記各吐出口から吐出されるウォッシャ液の圧力差に応じて、当該2つの導出流路のうち低圧側の導出流路を閉鎖すると共に高圧側の導出流路を開放するバルブ機構と、
前記バルブ機構に接続されたサブバルブ機構と、
前記インペラの回転動作を制御するポンプ制御装置と
を備え、
前記サブバルブ機構は、前記第1の導出流路に連通する第1および第2の分配流路を有し、前記第1の導出流路から吐出されたウォッシャ液の圧力の大きさに応じて作動することにより、前記2つの分配流路のいずれか一方を選択的に閉鎖すると共にいずれか他方の分配流路を開放することを特徴とするウォッシャポンプシステム。
【請求項2】
前記サブバルブ機構は、前記第1の導出流路から吐出されたウォッシャ液の圧力の大きさに応じて作動する弁体を有し、
前記弁体は、初期状態において、前記2つの分配流路うちの一方を閉鎖すると共にその他方を開放する一方、ウォッシャ液の所定以上の圧力によって変位または変形することにより、前記一方の分配流路を開放すると共に前記他方の分配流路を閉鎖するダイヤフラムからなることを特徴とする、請求項1に記載のウォッシャポンプシステム。
【請求項3】
前記弁体は、前記初期状態において前記第1の導出流路と前記他方の分配流路とを連通する連通孔を有することを特徴とする、請求項2に記載のウォッシャポンプシステム。
【請求項4】
前記サブバルブ機構は、前記ウォッシャ液の圧力による前記弁体の変位または変形に抗する向きに当該弁体を付勢する付勢手段を更に有することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のウォッシャポンプシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のウォッシャポンプシステムの制御方法であって、
前記ポンプ制御装置が、前記インペラの回転方向と、少なくとも一方の回転方向におけるインペラの回転動作とを制御することにより、前記第2の導出流路、前記第1の分配流路、及び前記第2の分配流路のいずれかにウォッシャ液を選択的に供給することを特徴とするウォッシャポンプシステムの制御方法。
【請求項6】
前記ポンプ装置は、前記インペラを回転駆動する電動モータを有し、
前記ポンプ制御装置は、前記電動モータの駆動電圧を調節することにより、前記インペラの回転速度を制御することを特徴とする、請求項5に記載のウォッシャポンプシステムの制御方法。
【請求項7】
前記ポンプ制御装置は、前記電動モータに印加する電圧をデューティ制御することを特徴とする、請求項6に記載のウォッシャポンプシステムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−57179(P2011−57179A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212263(P2009−212263)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】