説明

ウォッシャーノズル

【課題】本発明は、ウォッシャーノズルに関し、従来のウォッシャーノズルにおいて、噴射口に洗浄液が上下方向に拡散するのを抑制するガイド板を設けた場合に、そのガイド板の噴射方向の長さを洗浄液の上下方向の拡散角度に応じて自在に可変できなかったことが課題であって、それを本発明により解決することである。
【解決手段】ウォッシャーノズル1におけるノズル本体2には上下二段の噴射口が設けられ、噴射液をガイドするガイド板3が、前記噴射口の外周部に設けられると共に噴射方向の長さが可変手段で可変できるようになっているウォッシャーノズル1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントガラス・リアガラスなどに洗浄液を噴射するウォッシャーノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用のウォッシャーノズルを、車両のエンジンフードの上に固定するものは、車両のデザイン上で外観を損ねるので、車両のエンジンフードの後部下面に設けるようにしたものが知られている(特許文献1)。これは、拡散噴射流を車両幅方向へ広範囲に着水させ、上矯正板部(拡散制限部)と開口下壁面部とで協働させて拡散噴射口から噴射される拡散流の車両上下方向への拡散を制限し整流して、拡散噴射流をワイパーアームとエンジンフード後端縁との間の極めて狭い隙間から干渉せずに目標ポイントに着水させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−59651号公報
【特許文献2】特開2001−10452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例に係る図7(A),(B)に示すウォッシャーノズル1では、供給部10からの洗浄液を頭部9におけるノズル本体2のチップ11に設けた自励発振用発振室を有して噴射口から車両に向けて噴射する。しかしながら、ノズル本体2のガイド板3は洗浄液における上下方向の拡散を制限すると共に整流するものであるが、そのガイド板3の構造は、前記ノズル本体2若しくはチップ11と一体にしてガイド板3が形成されるものであって固定構造である。よって、洗浄液の上下方向における拡散角度を変えようとすると、前記ガイド板3の噴射方向の長さを変えた専用の水路を個別に設けない限り、前記上下方向の拡散角度可変させる事はできない。また、特許文献2に記載されているウォッシャノズル装置は、図8に示すように、噴射口に液案内部を設けて左右に開くようにして洗浄液のジェット噴射方向を定めるもの同図8(A)、予め水路の噴射角度が決められているもの同図8(B)が知られている。この場合も、水路内の案内面の角度若しくは水路自体の角度で噴射方向を決定するものであって噴射角度は一定である。ウォッシャノズルの噴射角度を適宜に可変させることはできない。このように、洗浄液の上下方向の角度を変えたウォッシャーノズルをそれぞれ用意する必要があり、洗浄液の噴射において上下方向の拡散角度を容易に可変させることができなかった。本発明に係るウォッシャーノズルは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るウォッシャーノズルの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、
ウォッシャーノズルにおけるノズル本体には上下二段の噴射口が設けられ、噴射液をガイドするガイド板が、前記噴射口の外周部に設けられると共に噴射方向の長さが可変手段で可変できるようになっていることである。
また、前記ガイド板における噴射方向の長さを可変する可変手段は、該ガイド板の外周面にカット用のスリットが適宜間隔をおいて設けられていることである。または、前記ガイド板における噴射方向の長さを可変する可変手段は、噴射方向に追加若しくは削減できる着脱手段を有した着脱自在な噴射口カバーであることであり、更に、噴射口に設けられ流路を分ける中央の仕切り板は、該仕切り板の表裏面が流路の水流に対して平行であること、また、噴射液をガイドするガイド板が、前記上下二段の噴射口の上下方向における外周部に1対で突設されると共に可変手段によってその突出量aが0<a≦0.2mm以下にされていることを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のウォッシャーノズルによれば、噴射口のガイド板が、噴射方向に長くなったり、短くなったりすることで、噴射液が上下に開いた角度で噴射されたり、上下の間隔を狭くして噴射されたりする。更に、ガイド板のガイド部長さをほぼゼロにした場合には、上下の噴射液が重なり、一段噴射の状態になる。このように、ガイド板の長さは、カットしたり追加したりすることで、容易に長さを変えることができるようになると言う優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るウォッシャーノズル1におけるノズル本体2の斜視図(A)と使用状態の説明図(B)と、ガイド板をカットしてガイド長さを短くした場合の斜視図(C)と説明図(D)とである。
【図2】同本発明のウォッシャーノズル1におけるノズル本体2aの斜視図(A)と使用状態の説明図(B)と、ガイド板3にカバー8を取り付けてガイド長さを長くした場合の斜視図(C)と説明図(D)とである。
【図3】本発明に係るウォッシャーノズル1のノズル本体2におけるガイド長さの変化に対する洗浄液の拡散状態を試験する説明図(A)と、試験結果を示す図(B)である。
【図4】本発明のウォッシャーノズル1の使用例を示す一部断面図(A)と一部平面図(B)と、ノズル本体2の正面図(C)と縦段面図(D)、A−A線に沿った断面図(E)とB−B線に沿った断面図(F)とである。
【図5】同本発明のウォッシャーノズル1の使用例を示す一部断面図(A)と、ノズル本体2の正面図(B)と縦断面図(C)と、一部平面図(D)とC−C線に沿った断面図(E),D−D線に沿った断面図(F)とである。
【図6−A】ガイド長さが0>であって上下の噴射口の数が異なる場合で、上の噴射液6の拡散角度が30°で、下の噴射液7の拡散角度が60°で二分割されている場合の噴射液の拡散の様子を示す説明図(A)と、ノズル本体2の正面図(B),縦断面図(C),E−E線に沿った断面図(D),F−F線に沿った断面図(E)とである。
【図6−B】ガイド長さが0で上下の噴射口の数が異なる場合で、上の噴射液6の拡散角度が30°で、下の噴射液7の拡散角度が60°で二分割されている場合の噴射液の拡散の様子を示す説明図(A)と、ノズル本体2の正面図(B),縦断面図(C),G−G線に沿った断面図(D),H−H線に沿った断面図(E)とである。
【図7】従来例に係るウォッシャーノズル1の構成を示す分解斜視図(A)と、縦断面図(B)である。
【図8】従来例に係るウォッシャノズルの噴射角度θを設けるための手段を示す例であり、噴射口に案内面を設けた場合の実施例(A)と、水路を始めから所定の角度θにして設けている場合(B)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るウォッシャーノズル1は、図1に示すように、洗浄液の噴射口を制御するガイド長さを、初期状態の長さから長くしたり短くしたりすることが、容易にできるようにするものである。
【実施例1】
【0009】
図1(A),(B)に示すように、ウォッシャーノズル1におけるノズル本体2には、発振流路5の噴射口側に仕切り板4が在って、上下二段の噴射口が設けられている。前記仕切り板4は、噴射口に設けられ流路を分けるもので、該仕切り板4の表裏面が流路の水流に対して平行で角度が0である。そして、洗浄液として噴射される噴射液6,7をガイドするガイド板3が、前記噴射口の外周部に設けられると共に噴射方向の長さが可変手段で可変できるようになっている。
【0010】
前記ガイド板3における噴射方向の長さを可変する可変手段は、該ガイド板3の外周面に設けられているカット用のスリット3aである。前記スリット3aは、図では1個所に設けているが、これは適宜間隔をおいて複数個所に設けるようにしても良い。図1(B)に示すように、噴射液6,7が拡散して噴射されるのは、ノズル内部より外部へ噴射されるとノズル先端上下の圧力が低下し、噴射液6,7の間の圧力との圧力差が発生する。その結果、噴射液6,7の上下間隔が広がることになる。
【0011】
前記スリット3aにおいてカットする場合には、合成樹脂製のガイド板3がウォッシャーノズル1の頭部9に嵌合されている状態で、カット用工具(ニッパ等)でカットするものである。
【0012】
図1(C),(D)に示すように、前記ガイド板3のガイド長さが短くなると、噴射液6,7が互いに上下方向で中心軸cに近づく。これは、ノズル内部より外部へ噴射されると噴射液6,7の間の圧力が低下し、ノズル先端上下と噴射液6,7との間に圧力差が発生する。その結果、噴射液6,7が中央方向(引き付合う方向)に引き寄せられ、噴射液6,7は上下間隔が狭くなって図示のように、ガイド部の長さがほぼ0(ゼロ)の場合は一段噴射となって重なる状態になるのである。
【実施例2】
【0013】
本発明の第2実施例は、図2に示すように、前記ガイド板3における噴射方向の長さを可変する可変手段は、噴射方向に追加若しくは削減できる着脱手段を有した着脱自在な噴射口カバー8である。
【0014】
図2(A),(B)に示すノズル本体2aにおいては、ガイド板3のガイド部の長さがほぼゼロになっていて、図2(C),(D)に示すように、着脱自在なカバー8を前記ガイド板3の噴射口側に装着する。これにより、ガイド板3の、ガイド部が長くなる。場合によっては、連続して嵌合させた複数個のカバー8、8…をガイド板3に装着するようにしても良い。或いは、長さの異なるカバー8を準備し、必要に応じて装着しても良い。カバー8をガイド板3に装着するには、凹凸の係止突起と係止溝などの組合せにより着脱自在に取り付けるものである。
【0015】
前記ガイド板3のガイド部の長さにより、噴射液6,7の上下方向の間隔bを広げるようにすることができる。なお、ガイド板3のガイド部の長さを可変することで、噴射液6,7の間隔bを変えるものなので、この可変手段は、他の公知の機械的手段による方法によって伸縮させるようにすることができて、例えば、ネジ式で回転により直進させて、噴射方向に伸縮させることも可能である。
【0016】
図3(A),(B)に示すように、ガイド板3のガイド部の長さaと、噴射液6,7の間隔bとの関係を示す実験を行った。図示のように、ガイド板3が上下方向における外周部に1対で突設されると共に可変手段によってその突出量aが0<a≦0.2mm以下では、上下の噴射液6,7が重なり一段噴射の状態になって、それ以上に、a寸法が長くなるにつれて、ノズル先端部と噴射液の間の圧力差が拡大することで、間隔bが広がっていくのが判る。
【0017】
以上のようなウォッシャーノズル1の使用例について説明する。図4(A)に示すように、ノズル本体2の噴射液6,7を一段噴射にすれば、フード12後端の下に搭載される場合など、フード後端とワイパーアーム及びワイパーブレードとの隙間が狭い場合に用いる。また、図4(B),(C),(D)に示すように、噴射液6,7における横方向の拡散幅が異なる場合(拡散角度が30°と60°)は、同一噴射面の4個所に噴射液6,7の集中部ができる。
【0018】
また、図5(A)に示すように、噴射液6,7の間隔が広い場合には、フード12の上面若しくはカウルパネルの上にウォッシャーノズル1が取り付けられ、ワイパーアームなどの障害物がない場合に適用できる。ウインドシールド13のガラス面に広く噴射液でウエット状態にすることができる。図5(B),(C)に示すように、拡散幅が異なると、図5(D)に示すように、噴射液6,7のそれぞれの両端に集中部ができる。
【0019】
前記噴射液6,7の拡散幅が同じ場合で、ガイド長さが長い場合には上下に噴射液が開き、それぞれの両端に噴射液の集中部ができる。また、ガイド長さが短い場合には、重なって噴射液6,7が噴射され、同一噴射面に2個所に噴射液の集中部ができる。
【0020】
上下の噴射口の数が異なる場合において、例えば、上の噴射液6の拡散角度が30°で、下の噴射液7の拡散角度が60°で分割板4aで二分割されている場合である。この場合、図6(A)に示すように、ガイド長さが長いと、上下に開いて噴射液6,7が噴射され、上側は30°に広がり両端に集中部(a,b)ができる。下側は、60°に拡散するが、中央の仕切りである分割板4aによって振幅が分断され、両端と中央との3個所に集中部(c,d,e)ができる。一方、ガイド長さが短い場合には、図6(B)に示すように、薄く重なって噴射液6,7が噴射され、同一噴射面の5個所に噴射液の集中部(a〜e)ができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係るウォッシャーノズルは、自動車を始めとして各種の車などに、洗浄液噴射装置として使用でき、ウォッシャーノズルの取付の条件が種々異なっても適宜対応させることができるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 ウォッシャーノズル、
2 ノズル本体、
3 ガイド板、 3a スリット、
4 仕切り板、 4a 分割板、
5 発振流路、
6 噴射液、
7 噴射液、
8 カバー、
9 頭部、
10 供給部、
11 チップ、
12 フード、
13 ウインドシールド、
14 ワイパーブレード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォッシャーノズルにおけるノズル本体には上下二段の噴射口が設けられ、
噴射液をガイドするガイド板が、前記噴射口の外周部に設けられると共に噴射方向の長さが可変手段で可変できるようになっていること、
を特徴とするウォッシャーノズル。
【請求項2】
ガイド板における噴射方向の長さを可変する可変手段は、該ガイド板の外周面にカット用のスリットが適宜間隔をおいて設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載のウォッシャーノズル。
【請求項3】
ガイド板における噴射方向の長さを可変する可変手段は、噴射方向に追加若しくは削減できる着脱手段を有した着脱自在な噴射口カバーであること、
を特徴とする請求項1に記載のウォッシャーノズル。
【請求項4】
噴射口に設けられ流路を分ける中央の仕切り板は、該仕切り板の表裏面が流路の水流に対して平行であること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のウォッシャノズル。
【請求項5】
噴射液をガイドするガイド板が、前記上下二段の噴射口の上下方向における外周部に1対で突設されると共に可変手段によってその突出量aが0<a≦0.2mm以下にされていること、
を特徴とする請求項3に記載のウォッシャーノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−A】
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【図6−B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−245994(P2011−245994A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121491(P2010−121491)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000229704)日本ビニロン株式会社 (12)
【Fターム(参考)】