ウォッシャーノズル
【課題】自励式の発振流路を備えた構造の簡単なノズルよりなるウォッシャーノズルを提供する。
【解決手段】ノズル14は外面が球形で、ノズルボデー12に形成される噴射部13に圧入されて回動可能に装着され、内部には発振流路となる上下方向に一定高さの作用室23が形成されている。作用室23は一定幅で矩形をなし、奥側の中央部には洗浄液が供給される噴出孔26が形成され、また出口は外向きに拡開する噴口25となっている。作用室23を形成する上壁は噴口25より外向きに突出して庇27を形成し、噴口25より外向きに噴射する拡散流を上側より抑え込み、拡散流の上下方向の範囲を狭めて、拡散流を偏平化させる機能を果すようになっている。
【解決手段】ノズル14は外面が球形で、ノズルボデー12に形成される噴射部13に圧入されて回動可能に装着され、内部には発振流路となる上下方向に一定高さの作用室23が形成されている。作用室23は一定幅で矩形をなし、奥側の中央部には洗浄液が供給される噴出孔26が形成され、また出口は外向きに拡開する噴口25となっている。作用室23を形成する上壁は噴口25より外向きに突出して庇27を形成し、噴口25より外向きに噴射する拡散流を上側より抑え込み、拡散流の上下方向の範囲を狭めて、拡散流を偏平化させる機能を果すようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントガラス等のウィンドガラスに洗浄液を噴射するためのウォッシーノズルに関する。
なお、本発明における上下方向とは、車両の上下方向と同じ方向を示すものである。
【背景技術】
【0002】
車両のウィンドガラスに洗浄液を噴射するウォッシャーノズルとして、洗浄液を車両幅方向に拡散させてウィンドガラス等に噴射する、いわゆるフルイディスク式ノズルが知られる(特許文献1)。こうしたタイプのノズルは一般に内部に自励式の発振流路を形成したノズルチップを有している。
【0003】
このノズルチップは通常樹脂の成形品で、分割して成形後、ノズルボデーに組付けられるようになっているが、自励式の発振流路を一体形成した樹脂製のノズルチップも知られる。特許文献2に開示されるものがそうで、図1に示すように、ノズルチップに相当するノズル本体1内に自励式の発振流路が一体形成されている。このノズル本体1は図2及び図3に示すように、ノズル支持体2に押込んで装着され、ノズル支持体2は外面が球状で、ノズル本体1と共にノズル3を構成し、該ノズル3はノズルボデー4の噴射部奥側に形成される球面部に圧入されて回動可能に取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−57641号
【特許文献2】特開2006−89025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されるウォッシャーノズルは、ノズル3を回動することによりノズル3の噴口3aから振動しながら噴射される洗浄液の噴射角度を調整することができること、洗浄液は、ノズル本体1とノズル支持体2との間より液漏れすることなくノズル本体1を通して噴口3aから全て噴射されること、ノズル本体1は一体成形品で、分割型に比べ部品点数も少ない利点がある。
【0006】
本発明は、部品点数を従来のノズルより少なくして構造をより簡単にしたウォッシャーノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係わる発明は、ノズルボデーと、該ノズルボデーに装着されるノズルよりなり、該ノズルが硬質樹脂、例えばポリブチレンテレフタレートPBTやポリアミド等よりなるウォッシャーノズルにおいて、前記ノズルには内部に自励式の発振流路を構成し、一側が開口した噴口をなす上下方向に一定高さの中空の作用室と、該作用室の奥側中央部に開口する噴出孔とを備え、該噴出孔から作用室内に加圧して供給された洗浄液が前記噴口より車両幅方向に拡散して噴射されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記噴口は出口が外向きに拡開して形成されることを特徴とし、
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明において、前記作用室を形成する上壁は前記噴口より延長して外向きに突出した庇を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係わる発明によると、ノズルは内部に発振流路を形成する作用室を形成し、単体で形成されることにより、ウォッシャーノズルの構造が簡素化されること、図1に示す従来のノズル本体1では、発振流路をアンダーカットすることなく形成するには金型に複数のスライド型を設け、各スライド型をそれぞれ図1の矢印方向にスライドさせて型抜きする必要があり、金型の構造が複雑なものとなるが、請求項1に係わる発明においては、一つのスライド型を有する金型で作用室をアンダーカットすることなく形成することができ、金型の構造を簡素化することができること等の効果を有する。
【0010】
請求項2に係わる発明によると、噴口より噴射する洗浄液の拡散角度を拡げ、広い範囲にわたって洗浄液を噴射することができる。
【0011】
請求項3に係わる発明によると、洗浄液が上下方向に拡散するのが庇によって抑えられ、拡散流の上下方向の範囲を狭め、拡散流を扁平化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】発振流路の従来例を示す断面図。
【図2】従来のウォッシャーノズルの分解斜視図。
【図3】同断面図。
【図4】本実施形態のウォッシャーノズルの断面。
【図5】図4のA−A線断面図。
【図6】作用室のサイズを示す図。
【図7】拡散角度を測定する際の寸法を示す図。
【図8】孔位置を変えたときの洗浄液の拡散角度を示す折れ線グラフ。
【図9】作用室の幅を変えたときの洗浄液の拡散角度を示す折れ線グラフ。
【図10】噴口の広がり角度を変えたときの洗浄液の折れ線グラフ。
【図11】孔径を変えたときの洗浄液の折れ線グラフ。
【図12】作用室の奥行きを変えたときの洗浄液の拡散角度を示す折れ線グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態のウォッシャーノズルについて図面により説明する。
図4は、ウォッシャーノズル11の縦断面、図5は図4のA−A線断面を示すもので、ウォッシャーノズル11は硬質樹脂、例えばポリブチレンテレフタレートよりなるノズルボデー12と、該ノズルボデー12の奥側に向かって窄まる噴射部13に圧入され、噴射部奥側に装着される同材質のノズル14とより構成され、以下、これらノズルボデー12とノズル14について順に詳述する。
【0014】
ノズルボデー12は車両のボデー側に捩じ込んで取付けられる取付部16と、該取付部上に一体形成されるヘッド17とより形成され、取付部16には流路となる中空部18が図の上下方向に形成され、ヘッド17には奥側に形成される球状の装着部19に向かって窄まり、該装着部19に開口する前記噴射部13と、前記装着部19と中空部18に連通する流路21とを備えている。
【0015】
ノズル14は外面が球形で、噴射部13より圧入されて前記装着部19に装着されて回動可能となり、内部には上下方向に一定高さの作用室23が直径方向に形成され、奥側の上下には中心部に向かって先端を筒状にして切込んだ切込溝24が上下対称形に形成されている。
【0016】
前記作用室23は図5に示すように一定幅で、矩形をなし、上下方向の高さが一定で、出口が外向きに拡開する噴口25となっている。そして奥側の中央部には前記切込溝24のうち、下側の切込溝24に通ずる噴出孔26が形成され、中空部18より噴出孔26を経て作用室23に供給された洗浄液は作用室内で自励発振して、前記噴口25より拡散流として噴射されるようになっている。
【0017】
作用室23を形成する上壁は噴口25より延長して作用室外の外向きに突出した庇27を形成している。この装着部19に装着されるノズル14の回動は、庇27が噴射部13に当るまでの範囲内で行われ、したがってノズル14の回動範囲内では噴口25が常に噴射部内を向くようにしてある。庇27は以上のようにノズル14回動時のストッパーとしての機能を果すと共に、噴口25より外向きに噴射する拡散流を上側より抑え込み、拡散流の上下方向の範囲を狭めて、拡散流を偏平化させる機能を果すようになっている。
【0018】
本実施形態のウォッシャーノズル11によると、ノズル14は単体で、内部に作用室23が形成され、構造が簡単であること、ノズル14を回動することによりノズル11より噴射される洗浄液の噴射角度を調整することができること、図1に示す従来のノズル本体では、発振流路をアンダーカットすることなく形成するには金型に複数のスライド型を設け、各スライド型をそれぞれ図1の矢印方向にスライドさせて型抜きする必要があり、金型の構造が複雑となるのに対し、本実施形態のノズル14は一つのスライド型を有する金型でスライド型を一方向にスライドさせることにより(図5において左方向に引き抜くことにより)、作用室23をアンダーカットすることなく形成することができ、金型の構造を簡素化できること、洗浄液の拡散角度を拡げることができること、洗浄液の上下方向の拡散が庇27により抑制され、拡散流の上下方向の範囲を狭めて拡散流を扁平化させることができること、庇27はノズル14の回動範囲を規制し、墳口25を常に噴射部内にとどめることができること等の効果を有する。
【実施例1】
【0019】
図6に示す作用室23の幅bが4mm、奥行きcが5.3mm、孔径dが1.2mm、噴口25の拡がり角度θが45°であり、孔位置aを0.6〜2.4mmに変えた種々のノズル14を用い、該ノズル14より400mm離れた箇所に垂直に立て掛け、ペーパーを貼り付けたボード28(図7参照)に対し、ノズル14より水道水を噴射させた。
【0020】
水道水をノズル14より噴射させたときの拡散流を上方よりスロー再生可能なカメラにより撮影し、スロー再生して目視により観察したところ、従前のフルイディスク式ノズルと同様、うねった拡散流となっていることが確、ペーパーの水の濡れた部分について図7のx方向の最大濡れ長さlをスケールにより測定し、この測定値とノズル14からボード28に至るまでの距離400mmとからx方向の拡散角度αを求め。こうした測定をNo.1〜No.7までペーパーを取り替えて変えて次々と行ったところ、孔位置aによってx方向の拡散角度αは以下の表1及び図8に示すようになった。この結果から孔位置aは大きい程ノズル14からのx方向の拡散角度も大きくなったが、流量が両サイドに集中する傾向が認められた。
【0021】
y方向に関しても同様にペーパーの水の濡れた部分よりy方向の最大濡れ長さを測定し
(No.1〜No.7)、この測定値とノズル14とボード28間の距離400mmからy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表1及び図8に示す。この結果からノズル14からのy方向の拡散角度は孔位置1.5mmで最小となり、濡れ部分が最も扁平となった。図8中、実線はx方向の拡散角度、点線はy方向の拡散角度を示す。以下の実施例についても同様である。
【実施例2】
【0022】
孔位置aを1.5mmとし、作用室23の幅bを3.1〜4.9mmに変えた以外は実施例1と同じサイズの作用室23を備えたノズル14を用い、実施例1と同様にペーパーを貼り付けた前記ボード28にノズル14より水道水を噴射させたのち、実施例1と同様の方法によりペーパーの水の濡れた部分よりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。この測定をNo.8〜No.14に示すように、作用室23の幅bを3.1〜4.1mmに変えたノズルを用いて、その都度ペーパーを取替えて行い、それぞれノズル14からのx方向及びy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表2及び図9に示す。表2及び図9に見られるように、ノズル14からの水道水の拡散角度αは作用室の幅bが4mmで最大となり、またy方向の拡散角度は同じく幅bで最小となって扁平化した。
【実施例3】
【0023】
孔位置aを1.5mmとし、噴口25の拡がり角度θを10〜50°に変えた以外は実施例1と同じサイズの作用室23を備えたノズル14を用い、実施例1と同様にペーパーを貼り付けた前記ボード28にノズル14より水道水を噴射させたのち、実施例1と同様の方法によりペーパーの水の濡れた部分よりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。この測定をNo.15〜No.20に示すように、噴口25の拡がり角度θを10〜50°に変えたノズルを用いて、その都度ペーパーを取替えて行い、それぞれのx方向及びy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表3及び図11に示す。表3及び図10に見られるように、水道水のノズル14からのx方向の拡散角度αは25〜45°で広がり、またy方向の拡散角度は45°で最低となった。
【実施例4】
【0024】
孔位置aを1.5mmとし、孔径dを0.8〜1.8mmに変えた以外は実施例1と同じサイズの作用室23を備えたノズル14を用い、実施例1と同様にペーパーを貼り付けた前記ボード28にノズル14より水道水を噴射させたのち、実施例1と同様の方法によりペーパーの水の濡れた部分よりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。この測定をNo.21〜No.26に示すように、孔径dを0.8〜1.8mmに変えたノズルを用いて、その都度ペーパーを取替えて行い、それぞれのx方向及びy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表4及び図11に示す。表4及び図11に示すように、洗浄液のx方向の拡散角度αは孔径が1.2mm以上ではほぼ一定となり、またy方向の拡散角度は孔径が大きくなるほど大きくなった。
【実施例5】
【0025】
孔位置aは、実施例1から流量の偏在が比較的少なく、かつy方向の拡散角度が少ない1.5mmを選び、幅bは前記実施例2からx方向の拡散角度αが最大で、かつy方向の拡散角度が最小の4mm、噴口25の拡がり角度θは前記実施例3からx方向の拡散角度αが最大範囲のうちの45°、孔径dは前記実施例4からx方向の拡散角度αが最大範囲である1.2mmを選んで、奥行きcを4.4〜6。2mmに変えたノズル14を用い、実施例1と同様にペーパーを貼り付けた前記ボード28にノズル14より水道水を噴射させたのち、実施例1と同様の方法によりペーパーの水の濡れた部分よりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。この測定をNo.27〜No.34に示すように、奥行きcを4.4〜6。2mmに変えたノズルについて、それぞれ実施例1と同様の方法によりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表5及び図12に示す。表5及び図12に示すように、水道水のx方向の拡散角度αは奥行きeが4.4mmで最大となり、またy方向の拡散角度も比較的少なく扁平化した。
【0026】
以上の結果から、図6に示す孔位置aは1.5mm、作用室23の幅bは4mm、噴口25の拡がり角度θは45°、孔径dは1.2mmで、洗浄液の流量分布が一定し、x方向の拡散角度αが最も広がり、拡散流も扁平化した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【符号の説明】
【0032】
11・・ウォッシャーノズル
12・・ノズルボデー
13・・噴射部
14・・ノズル
16・・取付部
17・・ヘッド
18・・中空部
19・・装着部
21・・流路
23・・作用室
24・・切込溝
25・・噴口
26・・噴出孔
27・・庇
28・・ボード
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントガラス等のウィンドガラスに洗浄液を噴射するためのウォッシーノズルに関する。
なお、本発明における上下方向とは、車両の上下方向と同じ方向を示すものである。
【背景技術】
【0002】
車両のウィンドガラスに洗浄液を噴射するウォッシャーノズルとして、洗浄液を車両幅方向に拡散させてウィンドガラス等に噴射する、いわゆるフルイディスク式ノズルが知られる(特許文献1)。こうしたタイプのノズルは一般に内部に自励式の発振流路を形成したノズルチップを有している。
【0003】
このノズルチップは通常樹脂の成形品で、分割して成形後、ノズルボデーに組付けられるようになっているが、自励式の発振流路を一体形成した樹脂製のノズルチップも知られる。特許文献2に開示されるものがそうで、図1に示すように、ノズルチップに相当するノズル本体1内に自励式の発振流路が一体形成されている。このノズル本体1は図2及び図3に示すように、ノズル支持体2に押込んで装着され、ノズル支持体2は外面が球状で、ノズル本体1と共にノズル3を構成し、該ノズル3はノズルボデー4の噴射部奥側に形成される球面部に圧入されて回動可能に取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−57641号
【特許文献2】特開2006−89025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されるウォッシャーノズルは、ノズル3を回動することによりノズル3の噴口3aから振動しながら噴射される洗浄液の噴射角度を調整することができること、洗浄液は、ノズル本体1とノズル支持体2との間より液漏れすることなくノズル本体1を通して噴口3aから全て噴射されること、ノズル本体1は一体成形品で、分割型に比べ部品点数も少ない利点がある。
【0006】
本発明は、部品点数を従来のノズルより少なくして構造をより簡単にしたウォッシャーノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係わる発明は、ノズルボデーと、該ノズルボデーに装着されるノズルよりなり、該ノズルが硬質樹脂、例えばポリブチレンテレフタレートPBTやポリアミド等よりなるウォッシャーノズルにおいて、前記ノズルには内部に自励式の発振流路を構成し、一側が開口した噴口をなす上下方向に一定高さの中空の作用室と、該作用室の奥側中央部に開口する噴出孔とを備え、該噴出孔から作用室内に加圧して供給された洗浄液が前記噴口より車両幅方向に拡散して噴射されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記噴口は出口が外向きに拡開して形成されることを特徴とし、
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明において、前記作用室を形成する上壁は前記噴口より延長して外向きに突出した庇を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係わる発明によると、ノズルは内部に発振流路を形成する作用室を形成し、単体で形成されることにより、ウォッシャーノズルの構造が簡素化されること、図1に示す従来のノズル本体1では、発振流路をアンダーカットすることなく形成するには金型に複数のスライド型を設け、各スライド型をそれぞれ図1の矢印方向にスライドさせて型抜きする必要があり、金型の構造が複雑なものとなるが、請求項1に係わる発明においては、一つのスライド型を有する金型で作用室をアンダーカットすることなく形成することができ、金型の構造を簡素化することができること等の効果を有する。
【0010】
請求項2に係わる発明によると、噴口より噴射する洗浄液の拡散角度を拡げ、広い範囲にわたって洗浄液を噴射することができる。
【0011】
請求項3に係わる発明によると、洗浄液が上下方向に拡散するのが庇によって抑えられ、拡散流の上下方向の範囲を狭め、拡散流を扁平化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】発振流路の従来例を示す断面図。
【図2】従来のウォッシャーノズルの分解斜視図。
【図3】同断面図。
【図4】本実施形態のウォッシャーノズルの断面。
【図5】図4のA−A線断面図。
【図6】作用室のサイズを示す図。
【図7】拡散角度を測定する際の寸法を示す図。
【図8】孔位置を変えたときの洗浄液の拡散角度を示す折れ線グラフ。
【図9】作用室の幅を変えたときの洗浄液の拡散角度を示す折れ線グラフ。
【図10】噴口の広がり角度を変えたときの洗浄液の折れ線グラフ。
【図11】孔径を変えたときの洗浄液の折れ線グラフ。
【図12】作用室の奥行きを変えたときの洗浄液の拡散角度を示す折れ線グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態のウォッシャーノズルについて図面により説明する。
図4は、ウォッシャーノズル11の縦断面、図5は図4のA−A線断面を示すもので、ウォッシャーノズル11は硬質樹脂、例えばポリブチレンテレフタレートよりなるノズルボデー12と、該ノズルボデー12の奥側に向かって窄まる噴射部13に圧入され、噴射部奥側に装着される同材質のノズル14とより構成され、以下、これらノズルボデー12とノズル14について順に詳述する。
【0014】
ノズルボデー12は車両のボデー側に捩じ込んで取付けられる取付部16と、該取付部上に一体形成されるヘッド17とより形成され、取付部16には流路となる中空部18が図の上下方向に形成され、ヘッド17には奥側に形成される球状の装着部19に向かって窄まり、該装着部19に開口する前記噴射部13と、前記装着部19と中空部18に連通する流路21とを備えている。
【0015】
ノズル14は外面が球形で、噴射部13より圧入されて前記装着部19に装着されて回動可能となり、内部には上下方向に一定高さの作用室23が直径方向に形成され、奥側の上下には中心部に向かって先端を筒状にして切込んだ切込溝24が上下対称形に形成されている。
【0016】
前記作用室23は図5に示すように一定幅で、矩形をなし、上下方向の高さが一定で、出口が外向きに拡開する噴口25となっている。そして奥側の中央部には前記切込溝24のうち、下側の切込溝24に通ずる噴出孔26が形成され、中空部18より噴出孔26を経て作用室23に供給された洗浄液は作用室内で自励発振して、前記噴口25より拡散流として噴射されるようになっている。
【0017】
作用室23を形成する上壁は噴口25より延長して作用室外の外向きに突出した庇27を形成している。この装着部19に装着されるノズル14の回動は、庇27が噴射部13に当るまでの範囲内で行われ、したがってノズル14の回動範囲内では噴口25が常に噴射部内を向くようにしてある。庇27は以上のようにノズル14回動時のストッパーとしての機能を果すと共に、噴口25より外向きに噴射する拡散流を上側より抑え込み、拡散流の上下方向の範囲を狭めて、拡散流を偏平化させる機能を果すようになっている。
【0018】
本実施形態のウォッシャーノズル11によると、ノズル14は単体で、内部に作用室23が形成され、構造が簡単であること、ノズル14を回動することによりノズル11より噴射される洗浄液の噴射角度を調整することができること、図1に示す従来のノズル本体では、発振流路をアンダーカットすることなく形成するには金型に複数のスライド型を設け、各スライド型をそれぞれ図1の矢印方向にスライドさせて型抜きする必要があり、金型の構造が複雑となるのに対し、本実施形態のノズル14は一つのスライド型を有する金型でスライド型を一方向にスライドさせることにより(図5において左方向に引き抜くことにより)、作用室23をアンダーカットすることなく形成することができ、金型の構造を簡素化できること、洗浄液の拡散角度を拡げることができること、洗浄液の上下方向の拡散が庇27により抑制され、拡散流の上下方向の範囲を狭めて拡散流を扁平化させることができること、庇27はノズル14の回動範囲を規制し、墳口25を常に噴射部内にとどめることができること等の効果を有する。
【実施例1】
【0019】
図6に示す作用室23の幅bが4mm、奥行きcが5.3mm、孔径dが1.2mm、噴口25の拡がり角度θが45°であり、孔位置aを0.6〜2.4mmに変えた種々のノズル14を用い、該ノズル14より400mm離れた箇所に垂直に立て掛け、ペーパーを貼り付けたボード28(図7参照)に対し、ノズル14より水道水を噴射させた。
【0020】
水道水をノズル14より噴射させたときの拡散流を上方よりスロー再生可能なカメラにより撮影し、スロー再生して目視により観察したところ、従前のフルイディスク式ノズルと同様、うねった拡散流となっていることが確、ペーパーの水の濡れた部分について図7のx方向の最大濡れ長さlをスケールにより測定し、この測定値とノズル14からボード28に至るまでの距離400mmとからx方向の拡散角度αを求め。こうした測定をNo.1〜No.7までペーパーを取り替えて変えて次々と行ったところ、孔位置aによってx方向の拡散角度αは以下の表1及び図8に示すようになった。この結果から孔位置aは大きい程ノズル14からのx方向の拡散角度も大きくなったが、流量が両サイドに集中する傾向が認められた。
【0021】
y方向に関しても同様にペーパーの水の濡れた部分よりy方向の最大濡れ長さを測定し
(No.1〜No.7)、この測定値とノズル14とボード28間の距離400mmからy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表1及び図8に示す。この結果からノズル14からのy方向の拡散角度は孔位置1.5mmで最小となり、濡れ部分が最も扁平となった。図8中、実線はx方向の拡散角度、点線はy方向の拡散角度を示す。以下の実施例についても同様である。
【実施例2】
【0022】
孔位置aを1.5mmとし、作用室23の幅bを3.1〜4.9mmに変えた以外は実施例1と同じサイズの作用室23を備えたノズル14を用い、実施例1と同様にペーパーを貼り付けた前記ボード28にノズル14より水道水を噴射させたのち、実施例1と同様の方法によりペーパーの水の濡れた部分よりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。この測定をNo.8〜No.14に示すように、作用室23の幅bを3.1〜4.1mmに変えたノズルを用いて、その都度ペーパーを取替えて行い、それぞれノズル14からのx方向及びy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表2及び図9に示す。表2及び図9に見られるように、ノズル14からの水道水の拡散角度αは作用室の幅bが4mmで最大となり、またy方向の拡散角度は同じく幅bで最小となって扁平化した。
【実施例3】
【0023】
孔位置aを1.5mmとし、噴口25の拡がり角度θを10〜50°に変えた以外は実施例1と同じサイズの作用室23を備えたノズル14を用い、実施例1と同様にペーパーを貼り付けた前記ボード28にノズル14より水道水を噴射させたのち、実施例1と同様の方法によりペーパーの水の濡れた部分よりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。この測定をNo.15〜No.20に示すように、噴口25の拡がり角度θを10〜50°に変えたノズルを用いて、その都度ペーパーを取替えて行い、それぞれのx方向及びy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表3及び図11に示す。表3及び図10に見られるように、水道水のノズル14からのx方向の拡散角度αは25〜45°で広がり、またy方向の拡散角度は45°で最低となった。
【実施例4】
【0024】
孔位置aを1.5mmとし、孔径dを0.8〜1.8mmに変えた以外は実施例1と同じサイズの作用室23を備えたノズル14を用い、実施例1と同様にペーパーを貼り付けた前記ボード28にノズル14より水道水を噴射させたのち、実施例1と同様の方法によりペーパーの水の濡れた部分よりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。この測定をNo.21〜No.26に示すように、孔径dを0.8〜1.8mmに変えたノズルを用いて、その都度ペーパーを取替えて行い、それぞれのx方向及びy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表4及び図11に示す。表4及び図11に示すように、洗浄液のx方向の拡散角度αは孔径が1.2mm以上ではほぼ一定となり、またy方向の拡散角度は孔径が大きくなるほど大きくなった。
【実施例5】
【0025】
孔位置aは、実施例1から流量の偏在が比較的少なく、かつy方向の拡散角度が少ない1.5mmを選び、幅bは前記実施例2からx方向の拡散角度αが最大で、かつy方向の拡散角度が最小の4mm、噴口25の拡がり角度θは前記実施例3からx方向の拡散角度αが最大範囲のうちの45°、孔径dは前記実施例4からx方向の拡散角度αが最大範囲である1.2mmを選んで、奥行きcを4.4〜6。2mmに変えたノズル14を用い、実施例1と同様にペーパーを貼り付けた前記ボード28にノズル14より水道水を噴射させたのち、実施例1と同様の方法によりペーパーの水の濡れた部分よりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。この測定をNo.27〜No.34に示すように、奥行きcを4.4〜6。2mmに変えたノズルについて、それぞれ実施例1と同様の方法によりx方向及びy方向の拡散角度を求めた。結果を以下の表5及び図12に示す。表5及び図12に示すように、水道水のx方向の拡散角度αは奥行きeが4.4mmで最大となり、またy方向の拡散角度も比較的少なく扁平化した。
【0026】
以上の結果から、図6に示す孔位置aは1.5mm、作用室23の幅bは4mm、噴口25の拡がり角度θは45°、孔径dは1.2mmで、洗浄液の流量分布が一定し、x方向の拡散角度αが最も広がり、拡散流も扁平化した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【符号の説明】
【0032】
11・・ウォッシャーノズル
12・・ノズルボデー
13・・噴射部
14・・ノズル
16・・取付部
17・・ヘッド
18・・中空部
19・・装着部
21・・流路
23・・作用室
24・・切込溝
25・・噴口
26・・噴出孔
27・・庇
28・・ボード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルボデーと、該ノズルボデーに装着されるノズルよりなり、該ノズルが硬質樹脂よりなるウォッシャーノズルにおいて、前記ノズルには内部に自励式の発振流路を構成し、一側が開口した噴口をなす上下方向に一定高さの中空の作用室と、該作用室の奥側中央部に開口する噴出孔とを備え、該噴出孔から作用室内に加圧して供給された洗浄液が前記噴口より車両幅方向に拡散して噴射されることを特徴とするウォッシャーノズル。
【請求項2】
前記噴口は出口が外向きに拡開して形成されることを特徴とする請求項1記載のウォッシャーノズル。
【請求項3】
前記作用室を形成する上壁は前記噴口より延長して外向きに突出した庇を形成することを特徴とする請求項1又は2記載のウォッシャーノズル。
【請求項1】
ノズルボデーと、該ノズルボデーに装着されるノズルよりなり、該ノズルが硬質樹脂よりなるウォッシャーノズルにおいて、前記ノズルには内部に自励式の発振流路を構成し、一側が開口した噴口をなす上下方向に一定高さの中空の作用室と、該作用室の奥側中央部に開口する噴出孔とを備え、該噴出孔から作用室内に加圧して供給された洗浄液が前記噴口より車両幅方向に拡散して噴射されることを特徴とするウォッシャーノズル。
【請求項2】
前記噴口は出口が外向きに拡開して形成されることを特徴とする請求項1記載のウォッシャーノズル。
【請求項3】
前記作用室を形成する上壁は前記噴口より延長して外向きに突出した庇を形成することを特徴とする請求項1又は2記載のウォッシャーノズル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−192849(P2012−192849A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58722(P2011−58722)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(506241514)株式会社多田製作所 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(506241514)株式会社多田製作所 (3)
【Fターム(参考)】
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