説明

ウォッシャ液噴射装置

【課題】ウォッシャ液残量に応じてウォッシャ液の噴射状態を変化させることを低コストで達成できるウォッシャ液噴射装置を提供すること。
【解決手段】タンク1内のウォッシャ液Wをウォッシャポンプ2で吸い込みウォッシャノズル4から噴射させるウインドウォッシャ装置であって、ウォッシャ液Wのタンク残量が設定量よりも減少したときに、タンク残量が設定量よりも多いときに比べて噴射量を機械的に少なくして乗員に報せる噴射量制限手段5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両においてウインドウガラスに向けてウォッシャ液を噴射するウォッシャ液噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などにおいて、タンク内のウォッシャ液をウォッシャポンプによりウインドウガラスに向けて噴射するようにしたウォッシャ液噴射装置が知られている。
【0003】
また、このようなウォッシャ液噴射装置において、タンク内のウォッシャ液残量が減った際に、警告灯などによりユーザに向けて警告を発するようにした装置や、さらに、タンクのウォッシャ液残量が少なくなると、ウォッシャポンプを駆動するモータを断続的に駆動させてウォッシャ液の噴射状態を通常時とは異ならせて報せる制御装置(例えば、特許文献1参照)や、同じくタンクのウォッシャ液残量が少なくなると、ウォッシャ液の残量に応じてウォッシャ液の吐出量を減らす制御装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】実開昭62−192965号公報
【特許文献2】特開2005−75218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術は、ウォッシャ液の残量を電気的に検出し、この残量に応じ警告灯などを用いて報知したり、ウォッシャポンプの駆動を制御したりする構成であったため、ウォッシャ液の残量を検出するセンサや、ウォッシャポンプの噴射状態を変化させるアンプ・ハーネスなどを含む制御回路や、警告灯などの電機部品が必要であった。このため、製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ウォッシャ液残量が減少したことを報知することを低コストで達成できるウォッシャ液噴射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述事情に鑑みなされたもので、前記ウォッシャ液のタンク残量に応じ、タンク残量が設定量よりも多いときの非報知状態からタンク残量が設定量よりも減少したときの報知状態に作動状態が変化して、タンク残量が少なくなったことを報知する残量報知手段が設けられていることを最も主要な特徴とするウォッシャ液噴射装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のウォッシャ液噴射装置にあっては、タンク内のウォッシャ液残量であるタンク残量が少なくなって、タンク残量があらかじめ設定量よりも減少したときには、残量報知手段が、ウォッシャ液量に応じて非報知状態から報知状態へ作動状態が変わることで、タンク残量が少なくなったことを報知する。
【0008】
しがたって、車両乗員は、タンク内のウォッシャ液残量が少なくなったことを知ることができる。
【0009】
しかも、残量報知手段が、タンク内のウォッシャ液面の高さに応じて作動状態が変わるため、残量を検出するセンサや電気的に報知を行う警告灯やその制御回路が不要で、製造コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
この実施の形態のウォッシャ液噴射装置は、タンク(1)内のウォッシャ液(W)をウォッシャポンプ(2)で吸い込みウォッシャノズル(4)から噴射させるウインドウォッシャ装置であって、前記ウォッシャ液(W)のタンク残量に応じ、タンク残量が設定量よりも多いときの非報知状態からタンク残量が設定量よりも減少したときの報知状態に作動状態が変化して、タンク残量が少なくなったことを報知する残量報知手段(5)が設けられていることを特徴とする。
【実施例1】
【0012】
図1〜図4に基づいて本発明の最良の実施の形態の実施例1のウォッシャ液噴射装置Aについて説明する。
【0013】
まず、その構成について説明する。
【0014】
実施例1のウォッシャ液噴射装置Aは、図1に示すようにタンク1と、ウォッシャポンプ2と、ホース3と、ウォッシャノズル4と、噴射量制限手段(残量報知手段)5と、を備えている。
【0015】
タンク1は、ウォッシャ液Wを貯留するもので、図外のエンジンルームなどに設置されている。
【0016】
ウォッシャポンプ2は、タンク1の下部に取り付けられ、モータ23(図4参照)の駆動により吸込管21からウォッシャ液Wを吸い込み、吐出管22から吐出する。また、吸込管21の先端の吸込口21aはタンク1の底部1aの近傍に開口されている。なお、ウォッシャポンプ2の駆動は、図外の運転席の近傍に設けられたスイッチ、例えば、図外のワイパ装置と連動させるスイッチを操作することで行われる。
【0017】
吐出管22には、3ホースが接続され、このホース3の先端に、ウォッシャノズル4が接続されている。このウォッシャノズル4は、図外のフロントウインドウの下部近傍の車体に配置され、図2に示すように、ホース3が接続された流入口41と、図外のフロントウインドウに向けてウォッシャ液を噴出する2つの噴射口42,43と、これら噴射口42,43と流入口41との間に配置された中間室44と、が形成されている。
【0018】
噴射量制限手段5は、吸込口21aに設けられた吸込量制限手段51と、ウォッシャノズル4に設けられた噴射状態変更手段としての圧力感応バルブ52と、を備えている。
【0019】
吸込量制限手段51は、図3および図4に示すように、バルブ部材51aとフロート51bとを備えている。すなわち、バルブ部材51aは、EPDM樹脂などの樹脂製のもので、吸込口21aを開閉可能に吸込口21aよりも一回り大きな円盤形状に形成され、その上端部51fが吸込管21の先端上部に溶着などにより取り付けられている。
【0020】
この取付状態において、バルブ部材51aは、吸込口21aを閉じた閉弁状態となる。また、吸込口21aの下端部51gには、図4において二点鎖線で示す閉弁状態のバルブ部材51aの下端部51gとの間に、あらかじめ設定された流量を確保する微小隙間21bを形成する切欠あるいは傾斜面が形成されている。さらに、バルブ部材51aの上部には、薄肉となったヒンジ部51cが形成され、バルブ部材51aの下端部51gが吸込口21aから離れる方向に変位して吸込口21aを開く開弁作動が可能となっている。
【0021】
フロート51bは、バルブ部材51aに浮力を伝達して上述のヒンジ部51cを中心としたバルブ部材51aの開弁作動を行わせるもので、紐状連結部材51dによりバルブ部材の下端部51gに連結されている。
【0022】
すなわち、吸込量制限手段51にあっては、図1(a)に示すように、ウォッシャ液Wのタンク残量が所定以上のときは、フロート51bが浮き上がりバルブ部材51aを上方へ引っ張り開弁させる。このようなバルブ部材51aの開弁状態でウォッシャポンプ2を駆動させた場合には、全開の吸込口21aから通常液量のウォッシャ液Wが吸い込まれ、その吐出圧は、通常液圧となる。
【0023】
一方、図1(b)に示すように、ウォッシャ液Wのタンク残量が少なくなったときには、フロート51bの浮力がバルブ部材51aに作用しなくなり、バルブ部材51aが閉弁状態となる。このようなバルブ部材51aの閉弁状態でウォッシャポンプ2を駆動させた場合には、微小隙間21bからのみ吸込可能であるため、吸込液量が通常液量よりも減少し、ウォッシャポンプ2の吐出液圧は、通常液圧よりも低下した減少液圧となる。
【0024】
なお、バルブ部材51aが閉弁状態となるウォッシャ液Wの液面wの高さは、フロート51bの大きさや紐状連結部材51dの長さなどに基づいて、あらかじめ所定の高さに設定されている。
【0025】
圧力感応バルブ52は、ウォッシャポンプ2からの吐出液圧に応じて噴射状態を変化させる噴射状態変更手段として設けられたものであり、図2に示すように、ウォッシャノズル4の中間室44において、流入口41と一方の噴射口43との間に配置されている。この圧力感応バルブ52は、板ばねにより形成され、非弾性変形状態では、流入口41と噴射口43との間を遮断した閉弁状態となり、一方、二点鎖線で示す弾性変形状態で、両者41,43を連通した開弁状態となるよう構成されている。
【0026】
すなわち、圧力感応バルブ52は、ウォッシャポンプ2の吐出液圧に応じ、吐出液圧が通常液圧であるときには、二点鎖線で示すように弾性変形した開弁状態となり、両方の噴射口42,43からウォッシャ液を噴射させる。一方、ウォッシャポンプ2の吐出液圧が減少液圧であるときには、非弾性変形状態である閉弁状態となり、一方の噴射口42からのみウォッシャ液Wを噴射可能とする。
【0027】
次に、実施例1の作用について説明する。
【0028】
図1(a)に示すように、ウォッシャ液Wのタンク残量が多いときには、吸込量制限手段51のフロート51bの浮力によりバルブ部材51aが開弁状態となっている。
【0029】
この開弁状態でウォッシャポンプ2を駆動させたときには、吸込口21aが全開となっているため、通常液量が吸入され、吐出液圧が通常液圧となり、ウォッシャノズル4では、圧力感応バルブ52が開弁状態となり、2つの噴射口42,43からウォッシャ液Wが噴射される。このように2つの噴射口42,43からウォッシャ液Wが噴射される状態が、非報知状態である。
【0030】
一方、図1(b)に示すように、ウォッシャ液Wのタンク残量が少なくなったときには、液面wの低下に伴い、吸込量制限手段51のフロート51bの位置が下がり、バルブ部材51aが閉弁状態となる。
【0031】
この閉弁状態でウォッシャポンプ2を駆動させたときには、吸込口21aでは微小隙間21bしか開口されていないため、吸入液量が通常液量よりも制限され、吐出液圧が減少液圧となる。このため、ウォッシャノズル4では、圧力感応バルブ52が閉弁状態となり、ウォッシャ液Wが一方の噴射口42からのみから噴射される。このように、ウォッシャ液Wが一方の噴射口42からのみから噴射される状態が、報知状態である。
【0032】
以上のように、実施例1では、ウォッシャノズル4におけるウォッシャ液の噴射状態が、両方の噴射口42,43から噴射する非報知状態から一方の噴射口42のみから噴射される報知状態に変化し、噴射量が通常の液量よりも減少したことで、乗員は、ウォッシャ液Wのタンク残量が減ったことを知ることができる。特に、本実施例1では、ウォッシャ液Wが噴射される噴射口42,43の数が2から1へ減少するため、単に噴射量を量的に減少させる場合に比べて、より明確にタンク残量が少なくなったことを乗員に報せることができる。
【0033】
また、上述のようにタンク残量が減少した際には、バルブ部材51aが閉弁し吸込口21aが塞がれてウォッシャポンプ2による吐出量が減少するため、残り少ないウォッシャ液Wの使用期間を、両噴射口42,43から噴射する通常の状態を維持した場合よりも延長することができる。
【0034】
さらに、本実施例1では、上述のようにウォッシャ液Wのタンク残量が少なくなったときに、ウォッシャノズル4からの噴射状態を変更することを、フロート51bを用いて機械的に吸込量を制限する吸込量制限手段51と、ウォッシャポンプ2の吐出液圧の変化に機械的に対応して噴射口42,43の噴射状態を切り換える圧力感応バルブ52と、により行うようにした。このため、従来のように、液量センサや、この液量センサの検出に応じてウォッシャポンプの駆動状態を変更する制御回路などを用いる装置と比較して、製造コストを低く抑えることができる。
【実施例2】
【0035】
次に、図5および図6に基づいて本発明実施の形態の実施例2のウォッシャ液噴射装置について説明する。
【0036】
なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0037】
実施例2のウォッシャ液噴射装置では、吸込量制限手段(残量報知手段)としてベント管251が設けられている。
【0038】
このベント管251は、一端の開口251aが吸込管21内に配置され、他端の開口251bが、タンク残量が設定残量よりも減少したときにウォッシャ液Wの液面wの上に露出するよう配置され、略L字形状に形成されている。
【0039】
この実施例2において、吸込量制限手段以外の構成は、実施例1と同様である。
【0040】
次に、実施例2の作用について説明する。
【0041】
タンク1のウォッシャ液Wのタンク残量が多いとき(図1(a)の状態のとき)には、ベント管251の他端の開口251bは、ウォッシャ液Wの中に配置されている。
【0042】
この状態でウォッシャポンプ2を駆動させたときには、ウォッシャポンプ2は、吸込口21aおよびベント管251からウォッシャ液Wを吸入する。したがって、ウォッシャポンプ2は、通常液量を吸い込むため、吐出液圧が通常液圧となり、ウォッシャノズル4では、圧力感応バルブ52が開弁状態となり、2つの噴射口42,43からウォッシャ液Wが噴射される非報知状態となる。
【0043】
一方、ウォッシャ液Wのタンク残量が少なくなったときには、ウォッシャ液Wの液面wの低下に伴い、ベント管251の他端の開口251bが液面wよりも上方の空中に露出する。
【0044】
この状態でウォッシャポンプ2を駆動させたときには、ウォッシャポンプ2は、ベント管251から空気を吸い込み始め、ウォッシャ液の吸入量が通常液量よりも減少し、かつ、吐出液圧も減少する。
【0045】
そこで、ウォッシャノズル4では、圧力感応バルブ52が閉弁状態となり、噴射口42のみからウォッシャ液Wが噴射される報知状態となる。
【0046】
したがって、実施例1と同様に、ウォッシャ液Wのタンク残量が減ったことを乗員に報せることができる。また、残り少ないウォッシャ液Wの使用期間を、延長することができる。
【0047】
さらに、本実施例2では、吸込量制限手段としてベント管251を用いたため、構成の簡略化を図り、製造コストを抑えることができる。なお、ベント管251としては、ウォッシャ液Wのタンク残量が減ったときのウォッシャポンプ2の吸込量および吐出液圧を適正にすることのできる最適の径のものを選択する。
【実施例3】
【0048】
次に、図7に基づいて本発明実施の形態の実施例3のウォッシャ液噴射装置Cについて説明する。
【0049】
なお、他の実施例と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0050】
この実施例3は、残量報知手段の一態様の噴射量制限手段として、環流切換手段330を用いた例である。
【0051】
この環流切換手段330は、環流路331とフロートバルブ(開閉弁)332と、を備えている。
【0052】
環流路331は、ウォッシャポンプ302の吐出側の吐出管322とタンク301とを接続した管であって、この環流路331のタンク側の開口端には、ウォッシャ液Wをタンク301内に吐出する吐出ノズル333が設けられている。
【0053】
フロートバルブ332は、吐出ノズル333の開口333aの近傍に軸334を中心に回動可能に設けられ、開口333aを開閉する。
【0054】
すなわち、このフロートバルブ332は、ウォッシャ液W中で浮力が発生するよう形成されており、図7(a)に示すように、ウォッシャ液Wの液面wがフロートバルブ332よりも高いタンク残量のときには、このフロートバルブ332が浮き上がり吐出ノズル333の開口333aを塞ぐ。なお、フロートバルブ332は、この開口333aを塞いだ状態よりも上方への回動は規制されている。
【0055】
一方、図7(b)に示すように、液面wが吐出ノズル333よりも下がったタンク残量では、フロートバルブ332が自重で下方へ回動し、吐出ノズル333の開口333aを開く。
【0056】
なお、ウォッシャポンプ302の吐出管322は、ウォッシャノズル304,304に接続されている。
【0057】
次に、実施例3の作用について説明する。
【0058】
タンク301のウォッシャ液Wのタンク残量が設定量よりも多いときには、図7(a)に示すように、吐出ノズル333の開口333aがフロートバルブ332により閉じられている。
【0059】
したがって、ウォッシャポンプ302の作動時に、還流路331におけるウォッシャ液Wの流れが生じないため、吐出管322の液圧は、通常液圧となり、ウォッシャノズル304,304からウォッシャ液Wが勢いよく噴射される。このときの噴射状態が非報知状態に相当する。
【0060】
一方、ウォッシャ液Wのタンク残量が、図7(b)に示すように設定量よりも減少して液面wの高さが吐出ノズル333よりも下がると、フロートバルブ332が下方に回動して吐出ノズル333の開口333aが開かれ、還流路331は、ウォッシャ液Wが流通可能な状態となる。
【0061】
この状態でウォッシャポンプ2を作動させたときには、吐出管322に送られたウォッシャ液Wの一部が還流路331を通ってタンク301へ戻される。したがって、吐出管322における吐出液圧が低下し、かつ、ウォッシャノズル304,304からのウォッシャ液Wの吐出量が減少する。このように噴射量が減少した状態が報知状態である。
【0062】
よって、ウォッシャノズル304,304の噴射状態が通常の噴射状態と異なることから、実施例1と同様に、ウォッシャ液Wのタンク残量が少なくなったことを乗員に報せることができる。また、ウォッシャノズル304からのウォッシャ液Wの噴射量が減ることで、残り少ないウォッシャ液Wの使用期間を、延長することができる。
【0063】
また、本実施例3では、上述のようにウォッシャ液Wのタンク残量が少なくなったときに、ウォッシャノズル304からの噴射状態を変更することを、フロートバルブ332による液面wに対応した機械的な開口333aの開閉により行うようにした。このため、従来のように、液量センサや、この液量センサの検出に応じてウォッシャポンプの駆動状態を変更する制御回路などを用いる装置と比較して、安価に製造することができる。
【実施例4】
【0064】
次に、図8および図9に基づいて本発明実施の形態の実施例4のウォッシャ液噴射装置Dについて説明する。
【0065】
なお、他の実施例と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0066】
実施例4は、残量報知手段として、警告音を発する警告音発生手段430を用いた例である。
【0067】
この警告音発生手段430は、図8に示すように、実施例3で説明した還流路331と、この還流路331に取り付けられた吐出ノズル431と、吐出ノズル431に取り付けられた発音部材432と、を備えている。
【0068】
発音部材432は、図9に示すように、円筒状のケーシング433と、このケーシング433に回転可能に支持された回転軸434とを備えている。
【0069】
さらに、回転軸434の上部と下部のそれぞれには、4枚の発音羽根435と入力羽根436とが一体に形成されている。
【0070】
入力羽根436は、吐出ノズル431の吐出孔431aからの吐出前方に配置されている。したがって、吐出ノズル431の吐出孔431aからウォッシャ液Wが吐出された際に、入力羽根436が圧力を受け、回転軸434が回転する。
【0071】
また、発音羽根435は、ケーシング433内に収容されている。そして、ケーシング433の外周には、笛用穴433a,433aが開口されている。したがって、回転軸434が回転して発音羽根435によりケーシング433内に空気流が形成されたときには、この空気流が笛用穴433a,433aで絞られることで警告音が発生される。
【0072】
次に、実施例4の作用について説明する。
【0073】
ウォッシャポンプ302の作動時には、吐出管322に吐出されたウォッシャ液Wの一部が還流路331を介してタンク301へ戻され、このとき、発音部材432では、入力羽根436がウォッシャ液Wの吐出を受けて、回転軸434が回転する。
【0074】
ここで、ウォッシャ液Wのタンク残量が、図8(a)に示すように発音部材432が水没する量のときは、発音羽根435が回転しても、ウォッシャ液Wに水没していることから抵抗を受け、回転速度が遅く、また、空気流が形成されないことから、笛用穴433aでは警告音が発生しない。すなわち、警告音が発生しない非報知状態となる。
【0075】
一方、ウォッシャ液Wのタンク残量が、図8(b)に示すように発音部材432が液面w上に配置される量のときには、発音羽根435がウォッシャ液Wの抵抗を受けず、回転軸434が高速回転する。これにより、ケーシング433の内部では、発音羽根435の回転で空気流が発生し、笛用穴433aにおいて、警告音が発生される報知状態となる。
【0076】
したがって、発音部材432から発せられる警告音により、ウォッシャ液Wのタンク残量が減ったことを乗員に報せることができる。
【0077】
また、本実施例4では、上述のようにウォッシャ液Wのタンク残量が少なくなったときに、警告音を発することを、液面wの高さに対応した発音部材432の作動状態の変化により行うようにした。このため、従来のように、液量センサや、電気的に駆動する警告灯や、液量センサの検出に応じて警告灯の作動状態を変更する制御回路などを用いる装置と比較して、安価に製造することができる。
【0078】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1〜実施例4を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1〜実施例42に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0079】
すなわち、実施例1〜実施例4では、ウォッシャ液噴射装置として、フロントウインドウにウォッシャ液を噴射させるものを示したが、リアウインドウなど他のウインドウに噴射するものにも適用できる。
【0080】
また、実施例1および実施例2では、噴射量制限手段として、吸込量制限手段51(251)と、噴射状態変更手段としての圧力感応バルブ52と、を設けた例を示したが、噴射状態変更手段(圧力感応バルブ52)を設けずに、吸込量制限手段51(251)のみを設けた構成としてもよい。このような構成にあっても、ウォッシャ液Wのタンク残量が減ったときにはウォッシャノズル4からの噴射量を減少させることができ、乗員は、ウォッシャ液のタンク残量が少なくなったことを知ることができる。
【0081】
また、吸込量制限手段51において、バルブ部材51aとして樹脂製のものを示したが、ゴムや金属など他の素材で形成してもよい。
【0082】
また、バルブ部材51aが吸込口21aを塞いでウォッシャポンプ2の吸込を制限した際に、所定の流量を確保する手段として、微小隙間21bに代えて、バルブ部材51aあるいは吸込管21の側面にオリフィスを開口してもよい。また、バルブ部材51aを吸込口21aよりも小径に形成し、バルブ部材51aの外周と吸込口21aとの間に隙間を形成してもよい。
【0083】
また、バルブ部材51aの吸込口21aへの取り付けは、実施例1で示した溶着に限らず、ヒンジ部材などを用いて取り付けてもよい。
【0084】
そして、バルブ部材51aは、ヒンジ部51cで回動して吸込口21aを開閉する構造に限らず、例えば、上下方向にスライドして開閉する手段など、他の構造のものを用いてもよい。また、バルブ部材51aは、吸込口21aに取り付けたが、吸込管21の途中に設けてもよい。また、フロート51bとして、バルブ部材51aと別体のものを示したが、バルブ部材51aと一体に形成することもできる。さらに、ウォッシャポンプ2が吸込を行う吸込口の高さを異ならせて複数設け、高い位置の吸込口にバルブ部材を設け、液面wが吸込口よりも低下したときに、バルブ部材が吸込口を塞いで、低い位置の吸込口からのみ吸込が可能となるように構成してもよい。
【0085】
このようなウォッシャ液噴射装置の一例を図10に示す。図10に示すようにウォッシャポンプ702の吸込側に2つの吸込管721,723が設けられている。吸込管723は、タンク1の底部1aに配置され、一方、吸込管721は、それよりも高い位置に配置されている。また、吸込管721には、フロート752が一体に形成されたバルブ部材751が、上下にスライド可能に取り付けられている。
【0086】
したがって、図10(a)に示すように、ウォッシャ液Wの液面wが高い場合は、バルブ部材751が浮き上がり、吸込管721の吸込口を開いている。よって、ウォッシャポンプ702は、両吸込管721,723からウォッシャ液Wを吸い込む。一方、図10(b)に示すように、ウォッシャ液Wの液面wが低くなると、バルブ部材751が閉弁して、ウォッシャポンプ702は、一方の吸込管723からのみ吸い込むことになり、噴射液圧および噴射量が減少する。
【0087】
また、実施例1および実施例2のウォッシャノズル4は、2つの噴射口42,43を備えたものを示したが、噴射口の数は、実施例で示した2つに限定されず、1または3以上の複数形成してもよい。噴射口を3以上の複数形成した場合、圧力感応バルブ52は、3つの噴射口のうちの1または2のいずれの数閉じるようにしてもよい。
【0088】
また、実施例1および実施例2では、噴射状態変更手段として、ウォッシャポンプの吐出液圧減少時に、噴射口を閉じるものを示したが、これに限定されず、要は、ウォッシャポンプの吐出液圧減少時に、通常時とは異なる噴射状態を形成するものであればよい。このようなものとしての吐出液圧が通常液圧であるときには、風車状のバルブが回転してウォッシャ液が断続的に噴射され、一方、ウォッシャポンプ吐出液圧の減少時には、バルブの回転が停止して、ウォッシャ液が連続的に噴射される手段でもよい。
【0089】
また、実施例3では、ウォッシャノズル304に圧力感応バルブ52を用いない例を示したが、実施例1,2と同様に、ウォッシャノズル304に圧力感応バルブ52を設け、ウォッシャポンプ302の吐出圧の変化に応じて、噴射口の数を変更するようにしてもよい。
【0090】
また、実施例3において、フロートバルブ332に替えて、図10に示したバルブ部材751およびフロート752を用いてもよい。
【0091】
また、実施例4で示した警告音発生手段430と、実施例1,2で示した噴射量制限手段5および吸込量制限手段51とを、併設し、タンク残量が減少したときには、噴射量を減少させるとともに、警告音を発生させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1のウォッシャ液噴射装置Aを示す構成および作動の説明図で、(a)はウォッシャ液のタンク残量が設定量よりも多い場合を示し、(b)はウォッシャ液のタンク残量が設定量よりも減少した場合を示している。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1のウォッシャ液噴射装置Aの圧力感応バルブを示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の実施例1のウォッシャ液噴射装置Aの要部を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例1のウォッシャ液噴射装置Aの要部を示す断面図であり、図3のS4−S4線の位置で縦に切断した状態を示す。
【図5】本発明の実施の形態の実施例2のウォッシャ液噴射装置Bの要部を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態の実施例2のウォッシャ液噴射装置Bの要部を示す断面図であり、図5のS6−S6線の位置で縦に切断した状態を示す。
【図7】本発明の実施の形態の実施例3のウォッシャ液噴射装置Cを示す構成および作動の説明図で、(a)はウォッシャ液のタンク残量が設定量よりも多い場合を示し、(b)はウォッシャ液のタンク残量が設定量よりも減少した場合を示している。
【図8】本発明の実施の形態の実施例4のウォッシャ液噴射装置Dを示す構成および作動の説明図で、(a)はウォッシャ液のタンク残量が設定量よりも多い場合を示し、(b)はウォッシャ液のタンク残量が設定量よりも減少した場合を示している。
【図9】本発明の実施の形態の実施例4のウォッシャ液噴射装置Dの要部を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態のウォッシャ液噴射装置の他の例の要部を示す断面図であり、a)はウォッシャ液のタンク残量が設定量よりも多い場合を示し、(b)はウォッシャ液のタンク残量が設定量よりも減少した場合を示している。
【符号の説明】
【0093】
1 タンク
2 ウォッシャポンプ
4 ウォッシャノズル
5 噴射量制限手段
42 噴射口
43 噴射口
51 吸込量制限手段
51a バルブ部材
51b フロート
52 圧力感応バルブ
251 ベント管
251a開口
251b開口
301 タンク
302 ウォッシャポンプ
304 ウォッシャノズル
322 吐出管
330 環流切換手段
331 環流路
332 フロートバルブ(開閉弁)
430 警告音発生手段
432 発音部材
A 実施例1のウォッシャ液噴射装置
B 実施例2のウォッシャ液噴射装置
C 実施例3のウォッシャ液噴射装置
D 実施例4のウォッシャ液噴射装置
W ウォッシャ液
w 液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内のウォッシャ液をウォッシャポンプで吸い込みウォッシャノズルから噴射させるウインドウォッシャ装置であって、
前記ウォッシャ液のタンク残量に応じ、タンク残量が設定量よりも多いときの非報知状態からタンク残量が設定量よりも減少したときの報知状態に作動状態が変化して、タンク残量が少なくなったことを報知する残量報知手段が設けられている
ことを特徴とするウォッシャ液噴射装置。
【請求項2】
前記残量報知手段は、非報知状態での前記ウォッシャノズルからの噴射量よりも報知状態での前記ウォッシャノズルからの噴射量を減少させることで報知する噴射量制限手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のウォッシャ液噴射装置。
【請求項3】
前記噴射量制限手段として、前記タンク内に開口された前記ウォッシャポンプの吸込側に設けられ、前記タンク残量に応じタンク残量が減少したときにタンク残量が多いときに比べて吸込量を機械的に減少させる吸込量制限手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載のウォッシャ液噴射装置。
【請求項4】
前記吸込量制限手段は、前記吸込側の流路断面積を変更可能なバルブ部材と、前記ウォッシャ液のタンク残量が所定以上のときに前記バルブ部材を流路断面積を拡大する側に開かせるフロートと、を備えていることを特徴とする請求項3に記載のウォッシャ液噴射装置。
【請求項5】
前記吸込量制限手段は、一端の開口が前記ウォッシャポンプの吐出側に配置され、他端の開口が、タンク残量が設定量よりも減少したときにウォッシャ液の液面上に露出するようタンク内に配置されたベント管を備えていることを特徴とする請求項3に記載のウォッシャ液噴射装置。
【請求項6】
前記噴射量制限手段として、前記ウォッシャノズルに設けられ、前記ウォッシャポンプからの吐出液圧に応じて噴射状態を変化させる噴射状態変更手段を備えていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のウォッシャ液噴射装置。
【請求項7】
前記噴射状態変更手段が、前記吐出液圧が低くなると、ウォッシャノズル先端に設けられた噴射口の一部を閉じる圧力感応バルブであることを特徴とする請求項6に記載のウォッシャ液噴射装置。
【請求項8】
前記噴射量制限手段として、前記ウォッシャポンプの吐出側と前記タンクを結ぶ環流路と、タンク残量が設定量よりも多いときには環流路を閉じ、タンク残量が設定量よりも少なくなったときに環流路を開く開閉弁と、を備えた環流切換手段を備えている
ことを特徴とする請求項2に記載のウォッシャ液噴射装置。
【請求項9】
前記残量報知手段が、前記ウォッシャポンプの吐出側と前記タンクを結ぶ環流路と、前記環流路の液圧により回転可能に前記タンク内に設けられ、回転時に空気中で音を発する発音部材と、を有した警告音発生手段を備え、
前記発音部材が、タンク残量が設定量よりも多いときにウォッシャ液中に没して非報知状態となり、タンク残量が設定量よりも減少したときにウォッシャ液上に露出して報知状態となるよう配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のウォッシャ液噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−45392(P2007−45392A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101319(P2006−101319)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】