説明

ウレタンチップシートの製造方法、及びウレタンチップブロック

【課題】 ポリウレタンフォームのスクラップチップを利用することが可能なウレタンチップシートの製造方法であって、長尺かつ幅広であり、しかも厚み精度に優れるウレタンチップシートを、省スペースかつ低コストに製造し得る製造方法、及び、この製造方法に好適に使用可能なウレタンチップシート製造用ウレタンチップブロックを提供する。
【解決手段】 ウレタンチップと結合剤とを含む混合物21がシート形状に成形されてなるウレタンチップシート1の製造方法であって、(A)金型5内に上記混合物21を供給し、金型5内に形成されたキャビティ形状に当該混合物21を硬化させてウレタンチップブロック2を得る工程、(B)上記ウレタンチップブロック2の表面をスカイビングしてウレタンチップシート1を得る工程、からなることを特徴とするウレタンチップシート1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペット用裏打材やフローリング床の緩衝材、畳の芯材として好適に使用可能なウレタンチップシートの製造方法、及びウレタンチップブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より一般に使用されている畳は、稲わらを芯材とする畳床の表面に畳表を縫い付け被覆したものである。この種の畳は天然素材に基因する優れた特性(良好な保温性や感触など)を備えている反面、非常に重たい、湿りやすい、カビやダニが繁殖し易い、製法が繁雑で工場生産に向かない、などの欠点があった。そこで、このような欠点を改良すべく、芯材を構成する素材としてポリスチレンシートやポリウレタンシートといった各種合成樹脂発泡体、或いはその破砕物からなるシートを用いた新しいタイプの畳が数多く提案され、その一部は実用化されている。また、カーペットの裏打材として軟質ポリウレタンフォームを破砕したウレタンチップをウレタン系結合剤にて一体に結合し形成したポリウレタンチップシートを使用することも既に知られている。
【0003】
軟質ポリウレタンフォームを破砕したウレタンチップからウレタンチップシートを形成する方法としては、例えば、
(1)ウレタンチップと湿気硬化型ウレタン系弾性結合剤とを混合した後、この混合物を不織布と離型紙との間に挟持し、更に圧縮ローラーにて圧縮しつつスチームを作用させることにより、結合剤を反応硬化させて各々のウレタンチップ間を一体的に固着させて長尺シートを形成する方法(特許文献1:特開2000−027413号公報)や、
(2)同じくウレタンチップと湿気硬化型ウレタン系弾性結合剤とを混合した後、この混合物を一定容積の型枠内に投入し、荷重をかけることなくスチームで硬化させ、得られた硬化物を一定面積かつ一定厚みのシートにスライスし、更に厚み方向に圧縮加熱してシートを形成する方法(特許文献2:特開平7−275107号公報)、
等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上記(1)の方法においては上記圧縮ローラーの面精度が、得られる長尺シートの厚み精度を実質的に決定することから、シート幅が広くなればなる程シート厚みの精度を確保することが困難となる。即ち、ローラーの面精度はローラー長さが長くなる程、面精度を一定以上に保つことが機械加工の観点から困難となり、ローラーの加工費用も格段に高騰することとなる。特にカーペットの構成材料として当該シートを用いるような場合、僅か1mm程度の段差がつまづきの原因となり得る(上記(2)の従来技術欄参照)ことに鑑みれば、上記(1)の方法を採用して長尺シートを製造する場合には、実質的にシート幅を1m未満程度に設定せざるを得なかった。一方、上記(2)の方法は長尺シートを製造するための方法ではない。
ポリウレタンフォームの製造工程等から大量に排出されるウレタンチップを利用し、厚み精度の良い長尺シートを、より幅広に、しかも簡便に製造する技術の開発が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−027413号公報
【特許文献2】特開平7−275107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、ポリウレタンフォームのスクラップチップを利用することが可能なウレタンチップシートの製造方法であって、長尺かつ幅広であり、しかも厚み精度に優れるウレタンチップシートを、省スペースかつ低コストに製造し得る製造方法、及び、この製造方法に好適に使用可能なウレタンチップシート製造用ウレタンチップブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、以下のウレタンチップシートの製造方法、及びウレタンチップブロックを提供する。
即ち、第一に、ウレタンチップと結合剤とを含む混合物がシート形状に成形されてなるウレタンチップシートの製造方法であって、以下の(A)及び(B)の各工程、(A)金型内に上記混合物を供給し、金型内に形成されたキャビティ形状に当該混合物を硬化させてウレタンチップブロックを得る工程、(B)上記ウレタンチップブロックの表面をスカイビングしてウレタンチップシートを得る工程、からなることを特徴とするウレタンチップシートの製造方法を提供する。
第二に、ウレタンチップと結合剤とを含む混合物が、金型内にてブロック形状に成形されてなるウレタンチップシート製造用ウレタンチップブロックを提供する。
【0008】
まず、本発明のウレタンチップシートの製造方法は、ウレタンチップと結合剤とを含む混合物がシート形状に成形されてなるウレタンチップシートの製造方法であって、以下の(A)及び(B)の各工程、
(A)金型内に上記混合物を供給し、金型内に形成されたキャビティ形状に当該混合物を硬化させてウレタンチップブロックを得る工程、
(B)上記ウレタンチップブロックの表面をスカイビングしてウレタンチップシートを得る工程、
からなるウレタンチップシートの製造方法である。
【0009】
従来の圧縮ローラーを用いてウレタンチップシートを製造する方法においては、得られるウレタンチップシートの厚み精度が圧縮ローラーの面精度と密接に関連していたため、ウレタンチップシートの厚み精度を向上させるためには圧縮ローラーの面精度を向上させることが重要であった。しかし、ローラーの長さが長くなる程、ローラーの面精度を一定以上に保つことが機械加工の観点から困難となることから、製造するウレタンチップシートのシート幅としては、実質的には1m未満程度に設定せざるを得なかった。
【0010】
これに対し、本発明の製造方法においてはウレタンチップシートの厚み精度が、ウレタンチップブロックの表面をスカイビングする際の切削刃の設置位置により決定されることから、実質的に1m以上の幅を有する長尺かつ幅広のウレタンチップシートを厚み精度良く製造することができる。また、本発明の製造方法においては圧縮ローラーを使用しないことからウレタンチップシートの厚み精度がローラーの面精度に影響されることがなく、圧縮ローラー表面の面精度を向上させるための加工費用も不要となるため製造コストに優れる方法である。更に、本発明の製造方法は圧縮ローラーを一定間隔で複数本設置するスペースを不要とするため、省スペース性に優れた製造方法である。
【0011】
ここで、上記(A)工程において用いられる金型としては、上型と下型とから構成される二分割タイプの金型であっても、更に多数の金型セグメントから構成されるマルチセグメントタイプの金型であっても良いが、ウレタンチップブロックを製造するに際し、ウレタンチップと結合剤とを含む混合物に対して印加する圧力を容易に制御する観点からは、少なくとも3つ、好ましくは4つ、より好ましくは5つ以上のセグメントから構成される金型を用いることが好適である。
【0012】
また、金型キャビティの形状としては円柱形状であることが好適である。上記(A)工程で得られたウレタンチップブロックは、上記(B)工程で表面をスカイビングされるが、金型キャビティの形状を円柱形状とする、つまり、円柱形状のウレタンチップブロックを成形することにより、上記(B)工程でウレタンチップシートを製造する際のロスを低減し得る。
【0013】
上記(A)工程としては、上記金型内にシャフトを予め設置した状態でウレタンチップと結合剤とを含む混合物を硬化させ、シャフトが一体化したウレタンチップブロックを得る工程であることが好適である。上記(B)工程においてウレタンチップブロックをスカイビングするに際しては、ウレタンチップブロックを回転させる中心軸位置にシャフトを通すための穴を設け(ボーリング加工)、シャフトを通し、かかる後にシャフトを軸にしてウレタンチップブロックを回転させ、切削刃をその表面に当接することでスカイビング加工を行なっても良いが、この場合にはシャフトを通すためのボーリング加工工程、及びシャフトを通す工程が必要となる。しかも、ウレタンチップブロックに設けた穴にシャフトを通すためには、ウレタンチップブロックの幅とシャフトの長さとを加えた長さのスペースが必須となる。
【0014】
これに対し、上記のようにシャフトを予め金型内の所定位置(金型キャビティ形状を円柱形状とする場合には、当該円柱形状の中心軸位置とすることが好適である)に設置し、上記(A)工程にてシャフトが一体化したウレタンチップブロックを製造することにより、上記(B)工程においてボーリング加工費用及びシャフトを通す工程が不要となり、ウレタンチップブロックにシャフトを通すためのスペースも不要となるため、本発明の製造方法が、より省スペースかつ低コストな製造方法となり得る。なお、従来のチップモールド成形においては、得られる成形体の強度を補強すべく金型の内壁面に沿わせて針金やフレーム等を設置することが行なわれているが、成形体を回転させるためのシャフトを金型内に設置する例はない。ウレタンチップブロックをスカイビング加工する例自体が無いからである。
【0015】
本発明においてウレタンチップとは、ポリウレタンフォームが破砕されたものを意味するが、ここでいうポリウレタンフォームとしては軟質ポリウレタン発泡成形品、硬質ポリウレタン成形品、ポリウレタンゴム成形品等を例示することができる。
本発明において用いられるウレタンチップは、本発明のウレタンチップシート用に別途作成したポリウレタンフォームを破砕して調製したものであっても良いし、例えば自動車用座席や家具、寝具等のクッション材を製造する際に発生する発泡屑や切削屑、あるいは使用後の製品廃棄物を破砕して調製したものであっても良い。このような発泡屑や切削屑、あるいは使用後の製品廃棄物を利用することは、本発明のウレタンチップシート製造コストの観点、資源リサイクルの観点から好適である。なお、ポリウレタンフォームを破砕する方法としては特に限定されず、公知の方法を使用可能である。
【0016】
本発明のウレタンチップブロックは、上記ウレタンチップと結合剤とを含む混合物が金型内にて成形されてなるウレタンチップブロックであって、上記(A)工程により得られるものである。このようなウレタンチップブロックを用いることにより、ウレタンチップブロックとウレタンチップシートとを別々の場所で製造する(つまり、ウレタンチップシートをオフラインで製造する)ことが可能となり、本発明のウレタンチップシートの製造形態の選択肢が広がるため好適である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、長尺かつ幅広で、しかも厚み精度に優れるウレタンチップシートを、省スペースかつ低コストに製造することが可能である。また、ウレタンチップブロックの使用により、本発明のウレタンチップシート製造時の製造形態の選択肢が広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明をより具体的に説明する。
図1,2は、本発明のウレタンチップシート1の一実施形態を示すもので、ウレタンチップブロック2の表面を切削刃3にてスカイビングし、ウレタンチップシートを得る様子、即ち上述の(B)工程の様子を示すものである。本発明において「スカイビング」とは、いわゆる「かつらむき切削」を意味する。
図1,2においてウレタンチップブロック2は円柱形状を有すると共に、その軸位置にシャフト4を一体に具備している。当該シャフト4を軸としてウレタンチップブロック2を回転させつつ切削刃3をその表面に当接することによりスカイビングがなされ、ウレタンチップシート1が形成される。
【0019】
ここで、ウレタンチップブロック2の表面をスカイビングする方法としては特に制限されるものではないが、図2のようにウレタンチップブロック2を回転軸方向から観察する場合において、ウレタンチップブロック2の回転中心A、切削刃3とウレタンチップブロック2との当接位置T、切削刃3の刃面上の点Bにより形成される∠ATBの角度θとしては通常20〜120°、好ましくは70〜100°、より好ましくは80〜90°である。当該角度が小さすぎても大きすぎても、スカイビングし難くなる場合がある。
なお、切削刃3の刃面とは、図2において刃の先端位置(ウレタンチップブロック2との当接位置T)を含み、かつ刃の先端部断面のなす角度の二等分線を含む面を意味する。
【0020】
上記(B)工程におけるスカイビング時の、ウレタンチップシート1のライン速度としては、硬度(JIS−K6401に準拠して測定した25%硬さ。本発明において「硬度」という場合に同様である。)の高い(700N(71.4kgf)〜2000N(204.1kgf)程度)ウレタンチップブロック2を使用する場合には通常1〜10m/min、好ましくは3〜5m/minであり、比較的硬度の低い(100N(10.2kgf)〜650N(66.3kgf)程度)ウレタンチップブロック2を使用する場合には通常5〜30m/min、好ましくは10〜20m/min、より好ましくは10〜15m/minである。当該ライン速度が大きすぎても小さすぎても、得られるウレタンチップシートの厚みムラが大きくなる場合がある。
【0021】
また、ウレタンチップブロック2の比重(JIS−K6401:1997に準拠して測定した見かけ比重。本発明において「比重」という場合に同様である。)としては通常0.04〜0.50g/cm3、好ましくは0.08〜0.20g/cm3、より好ましくは0.08〜0.12g/cm3である。当該比重が小さすぎるとウレタンチップシートの硬度が低くなりすぎてクッション性に劣る場合があり、一方、大きすぎるとウレタンチップシートの硬度が高くなりすぎてクッション性に劣る場合がある。
【0022】
なお、本発明の製造方法により得られるウレタンチップシート1の厚みとしては、通常1〜50mm、好ましくは2〜20mm、より好ましくは3〜10mmである。
【0023】
図3は、ウレタンチップブロック2の製造の様子を示すもので、ウレタンチップと結合剤とを含む混合物21を金型5内に投入してウレタンチップブロック2を得る様子、即ち上述の(A)工程の様子を示すものである。図3において金型5は上金型セグメント51、左金型セグメント52、右金型セグメント53、下金型セグメント54、さらには図示されない手前壁及び奥壁にて構成され、各金型セグメントが分離可能に接合されて金型キャビティが形成されるようになっている。また、図3において金型5のキャビティは円柱形状を有すると共に、その円柱形状の軸位置に相当する位置にシャフト4が設置されている。
本実施形態において混合物21は、各金型セグメントが分離した状態(図3(a))で金型5内に投入され、その後、各金型セグメントが接合されると共に混合物が硬化する(図3(b))ことにより、金型キャビティ形状に則した成形体、即ち、円柱形状のウレタンチップブロック2が形成されるようになっている。
【0024】
上記ウレタンチップの比重としては、通常0.01〜0.20g/cm3、好ましくは0.015〜0.030g/cm3、より好ましくは0.015〜0.025g/cm3である。当該比重が小さすぎても大きすぎても、ウレタンチップシートの緩衝性に劣る場合がある。
【0025】
上記ウレタンチップの硬度としては、通常5kgf(49N)〜50kgf(490N)、好ましくは7kgf(68.6N)〜30kgf(294N)、より好ましくは10kgf(98N)〜20kgf(196N)である。当該硬度が小さすぎても大きすぎても、ウレタンチップシートの緩衝性に劣る場合がある。
【0026】
上記ウレタンチップの粒径としては通常30mm以下、好ましくは5〜20mm、より好ましくは5〜15mmである。当該粒径が小さすぎると接着不良によるヒビ割れが発生する場合があり、一方、大きすぎると高密度圧縮による硬度ムラが発生する場合がある。なお、本発明において「粒径」とは、ウレタンチップの有する最大径を意味する。
【0027】
ここで、上記混合物21を調製するに際しては、ウレタンチップブロック乃至シートの硬度を適切に調整し、かつウレタンチップブロック乃至シートの均質性を高める観点から、特定範囲の比重、硬度、粒径を有するウレタンチップの複数種を、特定の配合比で配合することが好適である。
【0028】
このような好適な配合例としては、例えば、
ウレタンチップ(I):軟質ポリウレタンフォームを破砕して得られた、比重25kg/m3未満、硬度6.5kgf(63.7N)以上で、粒径が3〜20mm程度のウレタンチップ、
ウレタンチップ(II):軟質ポリウレタンフォームを破砕して得られた、比重25kg/m3以上52kg/m3未満で、粒径が3〜20mm程度のウレタンチップ、
とした場合に、(ウレタンチップ(i))/(ウレタンチップ(ii))(質量比)が9/1〜1/9であることが好ましく、4/6〜6/4であることがより好ましい。
【0029】
上記混合物21を構成する結合剤としては、上記のウレタンチップを良好に結合可能な結合剤であれば特に制限されるものではないが、湿気硬化型ウレタン系弾性結合剤、溶剤型クロロプレン系弾性結合剤、低融点ホットメルト系弾性結合剤等を使用することができる。
中でもウレタンチップの可撓性、柔軟性を損なうことなく良好な接着強度を得る観点から、湿気硬化型ウレタン系弾性結合剤であることが好適である。このような結合剤としては市販品を用いることができ、例えばR−T60,R−T60M,R−100,T−100(いずれもトーケン樹脂化学社製)等を用いることができる。
【0030】
上記結合剤の上記ウレタンチップ100質量部(2種以上が配合される場合には、その総量100質量部)に対する配合量としては、結合剤の固形分量として通常1〜20質量部、好ましくは5〜15質量部、より好ましくは5〜10質量部である。当該配合量が少なすぎるとウレタンチップの結合不足が発生してウレタンチップシートの引張強度等に劣る場合があり、一方、多すぎるとウレタンチップシートの硬度が大きくなりすぎて緩衝性が低下する場合がある。
【0031】
上記混合物21には、更に有機溶剤、顔料、難燃剤等の添加剤が配合されていても良い。中でも有機溶剤を配合することが、接着反応時間を短縮する観点から好適である。
上記添加剤の配合量としては、上記ウレタンチップ100質量部(2種以上が配合される場合には、その総量100質量部)に対する配合量として通常3〜40質量部、好ましくは5〜30質量部、より好ましくは10〜20質量部である。当該配合量が小さすぎると接着結合不良が発生する場合があり、一方、大きすぎると接着樹脂の固まり不良が発生する場合がある。
【0032】
上記混合物21を硬化させる方法としては、用いる結合剤の種類に応じて適宜硬化方法を選定すれば良く、湿気硬化型の結合剤を用いる場合には金型5内に蒸気を注入する方法、熱硬化型の結合剤を用いる場合には金型5を加熱する方法等を採用し得る。これらの方法の複数を併用しても良い。
また、このような硬化処理を施すタイミングとしては、混合物21を金型5内に投入し型締め後に硬化処理を行なっても良いし、十分な硬化にはタイムラグが見込まれる場合には、金型5の型締め前に硬化処理を行った後に型締めを行ない、ウレタンチップブロック2の形状を整えても良い。
【0033】
ここで、目的とするウレタンチップブロックの特性(比重、弾性率等)、目的とするウレタンチップシートの特性(比重、弾性率、厚み精度等)、スカイビング加工のし易さを調整する観点からは、混合物21の投入量と金型キャビティ容積との関係を調節することが好適である。
金型5への混合物21の投入量としては、各金型セグメント(51,52,53,54)を型締めした際に形成される金型キャビティの容積に対する混合物21の体積比((投入混合物21の体積)/(金型キャビティ容積))として通常1.0〜9.5、好ましくは3.0〜8.5である。
【0034】
本発明により得られるウレタンチップシートは長尺かつ幅広で、しかも厚み精度に優れるウレタンチップシートとなり得るため、カーペットや畳を構成する材料として、あるいは床板緩衝材の構成材料として特に好適である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
粒径が3〜10mm程度の大きさに破砕され、下表1に示す割合にて配合されたチップ材70質量部と、結合剤5質量部とをブレンダーに投入し、攪拌して混合物を得た。
この混合物の1000Lを、4分割タイプの金型(円柱状キャビティ、上面円及び下面円の直径500〜800mm、円柱高さ2150mm。)に投入し、型締めして上記混合物を圧縮した。なお、混合物投入前に、上記円柱状キャビティの中心軸位置に予めシャフトを設置した。圧縮率(金型内に投入した混合物容積に対する、金型キャビティ容積(シャフトの容積分を除く)の割合)は90%であった。次いで、金型温度を約70℃に設定し、キャビティ内へ約105℃の加熱水蒸気を30L/hの導入装置により10〜15分間導入することにより結合剤を反応固化させてウレタンチップブロックを得た。
上記シャフトを軸として上記ウレタンチップブロックを回転させると共に、ウレタンチップブロック表面に切削刃を当接(ウレタンチップブロック表面の法線方向に対する刃面の当接角度は90°であった。)し、ウレタンチップブロック表面をスカイビングすることによりウレタンチップシートを得た。得られたシートの諸元を下表1に併記する。
【0037】
【表1】

【0038】
ウレタンチップ(i)
軟質ポリウレタンフォームを破砕して得られた、比重25kg/m3未満、硬度6.5kgf(63.7N)以上で、粒径が3〜10mm程度のウレタンチップ。
ウレタンチップ(ii)
軟質ポリウレタンフォームを破砕して得られた、比重25kg/m3以上52kg/m3未満で、粒径が3〜10mm程度のウレタンチップ。
ウレタンチップ(iii)
軟質ポリウレタンフォームを破砕して得られた、粒径が3mm未満のウレタンチップ。
ウレタンチップ(iv)
軟質ポリウレタンフォームを破砕して得られた、比重25kg/m3未満、硬度6.5kgf(63.7N)未満で、粒径が3〜10mm程度のウレタンチップ。
結合剤
湿気硬化型ウレタン系弾性結合剤(トーケン樹脂化学社製、商品名T−100)。
平均厚み(mm)
ダイヤルシートゲージを用いて測定した。ウレタンチップシートの幅方向に500mm間隔で厚みを測定し、平均厚みを算出した。
【0039】
実施例の結果から、本発明の製造方法は、長尺かつ幅広なウレタンチップシートを、省スペースかつ低コストに製造し得る製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態における(B)工程を説明する概略図である。
【図2】本発明の一実施形態における(B)工程を説明する概略図である。
【図3】本発明の一実施形態における(A)工程を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ウレタンチップシート
2 ウレタンチップブロック
21 ウレタンチップと結合剤とを含む混合物
3 切削刃
4 シャフト
5 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンチップと結合剤とを含む混合物がシート形状に成形されてなるウレタンチップシートの製造方法であって、以下の(A)及び(B)の各工程、
(A)金型内に上記混合物を供給し、金型内に形成されたキャビティ形状に当該混合物を硬化させてウレタンチップブロックを得る工程、
(B)上記ウレタンチップブロックの表面をスカイビングしてウレタンチップシートを得る工程、
からなることを特徴とするウレタンチップシートの製造方法。
【請求項2】
上記金型が複数の金型セグメントにて構成され、且つ上記キャビティが、上記金型セグメントが互いに分離可能に接合されて形成される請求項1記載のウレタンチップシートの製造方法。
【請求項3】
上記(A)工程が、上記金型内にシャフトを予め設置した状態で上記混合物を硬化させ、シャフトが一体化したウレタンチップブロックを得る工程である請求項1又は2記載のウレタンチップシートの製造方法。
【請求項4】
上記キャビティ形状が円柱形状であると共に、上記シャフトが当該円柱形状の中心軸位置に設置される請求項3記載のウレタンチップシートの製造方法。
【請求項5】
上記ウレタンチップが、軟質ポリウレタンフォームを破砕して得られるウレタンチップである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウレタンチップシートの製造方法。
【請求項6】
ウレタンチップと結合剤とを含む混合物が、金型内にてブロック形状に成形されてなるウレタンチップシート製造用ウレタンチップブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−95692(P2006−95692A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280822(P2004−280822)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(593143887)ブリヂストン化成品大阪株式会社 (1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】