説明

ウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法,これを用いた建築成形材ラミネート用接着剤及び該接着剤を用いた建築成形材

【課題】 初期接着性と常態接着性に優れてアルミ成形材に対するラミネート接着に適した建築成形材ラミネート用接着剤を提供する。
【解決手段】 ガラス転移温度40℃以上のポリエステルポリオールを含む原料ポリエステルポリオールに常温液状のポリエステルポリオールによる第1段階のウレタン変成と,アルキレンオキサイド付加のグリコールを添加したポリエステルポリオールによる第2段階のウレタン変成との2段階のウレタン変成を施したウレタン変成ポリエステルポリオールを2液型接着剤の主剤とする。初期接着性と常態接着性に優れ,複雑断面形状を持つアルミ成形材のエッジのめくれ,コーナーのふくれ等の接着不良を解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,金属成形材又は樹脂成形材に樹脂シートをラミネートするに用いる2液型の接着剤の主剤をなすウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法,これを用いた建築成形材ラミネート用接着剤及び該接着剤を用いた建築成形材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種ラミネート用2液型の接着剤として,例えばガラス転移温度が40℃以上のポリエステルポリオールを5〜50wt%,40℃未満のポリエステルポリオールを95〜5wt%含む原料ポリエステルポリオールにウレタン変成を施したウレタン変成ポリエステルポリオールを含有した主剤と,有機ポリイソシアネートを硬化剤として,例えば入浴剤,液体洗剤等パウチ充填商品のパウチにおけるアルミ等の金属箔ベースに樹脂フィルムをラミネートすることによって耐薬品性を確保して商品の香料,界面活性剤,有機溶剤等に起因するアルミ等の金属箔ベースと樹脂フィルムとの剥離を防止するように金属ベースに対する接着性を確保するようにしたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−322221号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合,2液型の接着剤に使用するウレタン変成ポリエステルポリオールを,ガラス転移温度に着目して,該ガラス転移温度40℃以上と40℃未満のポリエステルポリオールを用いてウレタン変性することによってアルミ等金属のベースに対する優れた常態接着性及び耐薬品性を確保したものとして評価されるが,一方で,例えばサッシの枠や框,ドアの枠等の各種建材に多用されるアルミ押出材,ステンレスフォーミング材,樹脂押出材等の金属乃至樹脂成形材に,その幅方向複数面に亘るように樹脂シートをラミネートするに使用すると,これらはその断面形状が比較的複雑なものとされることによって幅方向にエッジやコーナーを有しており,これらエッジやコーナー部分にラミネートした樹脂シートのめくれやふくれ等の接着不良が生じる傾向がある。これら成形材に対するラミネートは,自動供給される樹脂シートに接着剤を塗布し,多数の圧着ロールによって該樹脂シートを成形材に圧着挟持しながら行うのが一般であるから,これら接着不良の原因は,塗布した接着剤の初期接着性が低く,成形剤が接着強度が確保される前に圧着ロールを通過することにあるものと認められる。
【0005】
このときラインの送りスピードを落とせばこのような問題を解消することが可能となるが,送りスピードを落とすことは生産性の低下を招くために現実に不可能であり,また充分な目的の初期接着性が得られるまで,原料ポリエステルポリオールにおける40℃以上のポリエステルポリオールの比率を高めるか,ウレタン変成時の原料ポリエステルポリオールの比率を高めれば,接着剤として配合処方したときの初期接着性は得ることが可能となるが,この場合には接着剤の粘度が急激に上昇し,また経時による接着剤の結晶化等が進行してそのゼリー化,固形化等を招くことによって接着剤としての流動性を維持することができず,その保存安定性が損われるに至る。
【0006】
本発明は係る事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,初期接着性及び常態接着性に優れることによって,断面形状が比較的複雑な金属乃至樹脂成形材に対するラミネートの接着に使用してもエッジやコーナーにおけるめくれやふくれ等の接着不良がなく長期に安定した接着を確保するとともに保存安定性に優れることによってスムーズ且つトラブルのない接着をなし得るようにした2液型接着剤におけるウレタン変性ポリエステルポリオールの合成方法を提供し,またこれを用いた建築成形材ラミネート用接着剤及び該接着剤を用いた建築成形材をそれぞれ提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に沿って鋭意研究した結果,本発明者らは,2液型接着剤に配合処方するウレタン変成ポリエステルポリオールの合成を,ガラス転移温度40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上の結晶性ポリエステルポリオールを含む原料のポリエステルポリオールに常温液状のポリエステルポリオールによる第1段階のウレタン変成と,アルキレンオキサイド付加のグリコールを添加したポリエステルポリオールによる第2段階のウレタン変成との2段階のウレタン変成を施し,第1段階のウレタン変成により分子量1000〜5万とし,第2段階のウレタン変成により分子量5000〜100万のウレタン変成ポリエスエステルポリオールとするように行うことによって,これを配合処方した接着剤が,金属乃至樹脂成形材のエッジ,コーナー等のめくれやふくれを解消するに好適な優れた初期接着性と優れた常態接着性を確保し,また優れた保存安定性によってスムーズ且つトラブルのない接着をなし得るとの知見を得るに至った。
【0008】
本発明はかかる知見に基づいてなされたもので,請求項1に記載の発明は,これを,アルミ,鋼板等の金属成形材又は樹脂成形材にオレフィン系,塩化ビニール系等の樹脂シートをラミネートするに用いる水酸基末端を有するウレタン変成ポリエステルポリールを用いた主剤と硬化剤の2液型接着剤におけるウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法であって,ガラス転移温40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上である結晶性ポリエステルポリオールを含むポリエステルポリオールを原料として,該原料ポリエステルポリオールに常温液状のポリエステルポリオールを混合溶解して分子量1000〜5万のウレタン変成ポリエステルポリオールとする第1段階のウレタン変成と,ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加のグリコールを添加したポリエステルポリオールを混合溶解して分子量を5000〜100万とする第2段階のウレタン変成を施すことを特徴とするウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は,その原料ポリエステルポリオールにおける上記ポリエステルポリオール又は結晶性ポリエステルポリオールの含有量を好ましいものとするように,これを,上記原料ポリエステルポリオールにおけるガラス転移温40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上である結晶性ポリエステルポリオールの含有量を,原料ポリエステルポリオール100部のうち3〜25部とすることを特徴とする請求項1に記載のウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法としたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は,同じく第1段階及び第2段階の上記混合溶解の比率を好ましいものとするように,これを,上記第1段階のウレタン変成を,上記原料ポリエステルポリオール100部に対して30〜300部の常温液状のポリエステルポリオールを混合溶解することによって行い,上記第2段階のウレタン変成を原料ポリエステルポリオールに対して5〜40部のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加のグリコールを添加したポリエステルポリオールを混合溶解することによって行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法としたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は,2段階ウレタン変成を施したウレタン変成ポリエステルポリオールを配合処方した建築成形材ラミネート用接着剤を提供するように,これを,アルミ,鋼板等の金属成形材又は樹脂成形材にオレフィン系,塩化ビニール系等の樹脂シートをラミネートするに用いる主剤と硬化剤の2液型の接着剤であって,上記主剤が,ガラス転移温度40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上である結晶性ポリエステルポリオールを含むポリエステルポリオールに第1段階及び第2段階の2段階ウレタン変成を施すことによって水酸基末端とした分子量5000〜100万のウレタン変成ポリエステルポリオールを含有してなることを特徴とする建築成形材ラミネート用接着剤としものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は,該接着剤を使用してラミネートを行うことによってめくれやふくれの発生を抑制して生産の歩留りを高度に確保した外観良好な建築成形材を提供するように,これを,上記建材ラミネート用接着剤を用いて,アルミ,鋼板等の金属成形材又は樹脂成形材の少なくともエッジ又はコーナーを介した複数面に亘るようにオレフィン系,塩化ビニール系等の樹脂シートをラミネートしてなることを特徴とする請求項4に記載の建築成形材ラミネート用接着剤を用いた建築成形材としたものである。
【0013】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【0014】
なお本発明で部は重量部を意味するものとして用いる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,初期接着性及び常態接着性に優れることによって,断面形状が比較的複雑な金属乃至樹脂成形材に対するラミネートの接着に使用してもエッジやコーナーにおけるめくれやふくれ等の接着不良がなく長期に安定した接着を確保するとともに保存安定性に優れることによってスムーズ且つトラブルのない接着をなし得るようにした2液型接着剤におけるウレタン変性ポリエステルポリオールの合成方法を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は,その原料ポリエステルポリオールにおける上記ポリエステルポリオール又は結晶性ポリエステルポリオールの含有量を好ましいものとすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は,同じく第1段階及び第2段階の上記混合溶解の比率を好ましいものとすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は,2段階ウレタン変成を施したウレタン変成ポリエステルポリオールを配合処方した建築成形材ラミネート用接着剤を提供することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は,該接着剤を使用してラミネートを行うことによってめくれやふくれの発生を抑制して生産の歩留りを高度に確保した外観良好な建築成形材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下更に本発明を具体的に説明すれば,図1において1はドア枠,図2において2は断熱サッシの内窓に使用する額縁であり,ドア枠1はアルミを押出成形してアクリル系塗膜を形成したアルミ押出材による成形材,額縁2は同じく,例えば塩化ビニール樹脂を押出成形した樹脂押出材による成形材であり,これらドア枠1及び額縁2は,それぞれ押出成形することによってそれ自体複雑な断面形状を有しており,該ドア枠1及び額縁2は,その設置状態で室内側乃至室外側に露出する部分に,エッジ又はコーナーを介した複数面に亘るように,例えば木目調等適宜模様を表出したオレフィン系,塩化ビニール系等,本例にあっては塩化ビニール系の樹脂シート3をラミネートしたものとしてある。
【0021】
該ドア枠1,額縁2に対する上記樹脂シートのラミネートは,水酸基末端を有するウレタン変成ポリエステルポリールを用いた主剤と硬化剤の2液型接着剤を用いてあり,該接着剤は,その上記主剤が,ガラス転移温度40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上の結晶性ポリエステルポリオールを含むポリエステルポリオールに第1段階及び第2段階の2段階ウレタン変成を施すことによって水酸基末端とした分子量5000〜100万のウレタン変成ポリエステルポリオールを含有したものとしてある。
【0022】
即ちウレタン変成ポリエステルポリオールを含有した接着剤の主剤は,該ウレタン変成ポリエステルポリオールを主体として,これに,必要に応じて,例えば粘着付与剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,シランカップリング剤,加水分解防止剤,防黴剤,増粘剤,可塑剤,顔料,充填剤等の添加剤を添加して使用するものとしてある。添加剤の種類及び量は適宜に定めればよいが,該添加剤として上記粘着付与樹脂を用いるとき,例えばロジン系樹脂,テルペン系樹脂,スチレン系樹脂,クマロン−インデン系樹脂,脂肪族石油樹脂,脂環族石油樹脂,芳香族石油樹脂等の石油系樹脂,スチレン系樹脂,クマロン−インデン系樹脂等の1種もしくは2種以上とすることができ,このときその軟化点は,環球式軟化点で90〜150℃であることが好ましい。また上記主剤を硬化するために併用する硬化剤は,常法に従ってイソシアネートを用いればよく,該イソシアネートして,例えば,トリレンジイソシアネート,4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),ヘキサメチレンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート,p−フェニレンジイソシアネート,4,4’−ビフェニレンジイソシアネート,1,5−ナフタレンジイソシアネート,1,5−オクチレンジイソシアネート等が挙げることができる。
【0023】
上記主剤をなすように用いるウレタン変成ポリエステルポリオールを,その合成方法によって説明すれば,ガラス転移温度40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上の結晶性ポリエステルポリオールを含むポリエステルポリオールを原料として,該原料ポリエステルポリオールに常温液状のポリエステルポリオールを混合溶解して分子量1000〜5万のウレタン変成ポリエステルポリオールとする第1段階のウレタン変成と,ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加のグリコールを添加したポリエステルポリオールを混合溶解して分子量を上記5000〜100万とする第2段階のウレタン変成を施すことによって得られる。
【0024】
ウレタン変成ポリエステルポリオールの合成に用いるポリエステルポリオールは,例えば,テレフタル酸,イソフタル酸,アジピン酸,アゼライン酸,セバチン酸,1,10−デカンジカルボン酸,1,12−ドデカンジカルボン酸,1,16−ヘキサデカンジカルボン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と,例えば,エチレングリコール,プロピレングリコール,ジエチレングリコール,ブチレングリコール,ネオペンチルグリコール,1,6−ヘキサンジオール,1,8−オクタンジオール,1,10−デカンジオール,3−メチル−1,5−ペンタンジオール,3,3′−ジメチロールヘプタン,ポリオキシエチレングリコール,ポリオキシプロピレングリコール,ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール又はポリカプロラクトン,ポリバレロラクトン,ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等のジグリコールを原料としたものを広く使用することができる。このときその数平均分子量は,これを300〜8000とするのがよく,数平均分子量が300を下回ると初期接着性及び常態接着性を有効に得られず,また8000を上回ると接着性として粘度が適切でなく金属又は樹脂成形材に対する付着性が低下するに至り,数平均分子量が500を下回り,5000を上回るとそれぞれこの傾向を生じ易くなるから,初期接着性,常態接着性及び接着剤としての付着性を有効に確保する上で,該数平均分子量は,これを,500〜5000とするのが好ましい。
【0025】
上記原料ポリエステルポリオールには,ガラス転移温度が40℃以上の上記いずれか1種又は2種以上の高ガラス転移点のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上の同じく1種又は2種以上の高軟化点の結晶性ポリエステルポリオールを用いることが必要であるが,これらの含有量は,原料ポリエステルポリオール100部のうち3〜25部とすることが好ましい。該高ガラス転移点のポリエステルポリオール乃至高軟化点の結晶性ポリエステルポリオールが3部を下回ると初期接着性が発現しなく,また25部を上回ると,経時による接着剤の結晶化等が進行してそのゼリー化,固形化等を招くことによって接着剤としての流動性を維持することができず,その保存安定性が損われるとなり,3部を下回り,25部を上回るとそれぞれこの傾向を生じ易くなるから該含有量は,初期安定性,及び接着剤の安定性を有効に確保する上で,これを7部〜20部とするのが好ましい。
【0026】
上記第1段階のウレタン変成は,これを,上記3〜25部のガラス転移温度40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度70℃以上の結晶性ポリエステルポリオールを含有した原料ポリエステルポリオール100部に対して30〜300部の常温液状のポリエステルポリオールを混合溶解することによって行い,上記第2段階のウレタン変成は,これを原料ポリエステルポリオールに対して5〜40部のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加のグリコールを添加したポリエステルポリオールを混合溶解することによって行うことが好ましい。
【0027】
原料ポリエステルポリオールの第1段階のウレタン変成に混合溶解して併用する常温液状のポリエステルポリオールの量が,原料ポリエステルポリオール100部に対して30部を下回ると常態接着性は得られるも初期接着性が有効に得られず,300部を上回ると結晶化乃至ゼリー化の原因となり,40部を下回り,200部を上回るとそれぞれこの傾向を生じ易くなるから,該常温液状のポリエステルポリオールの混合溶解量は,初期接着性,常態接着性及び結晶化乃至ゼリー化を防止する上で,これを40〜200部とするのが好ましい。
【0028】
該第1段階のウレタン変成によって得られるウレタン変成ポリエステルポリオールの分子量は,これを1000〜5万とすることが必要であり,該分子量が1000を下回ると初期接着性を有効に得ることができず,同時にゼリー化を生じやすくなり,5万を上回ると,第2段階のウレタン反応後の粘度が高くなりすぎて,濡れ性が無くなり,初期接着性及び常態接着性を有効に確保することができなくなり,該分子量が2000を下回り,1万を上回るとそれぞれこの傾向を生じ易くなるから,該分子量は,これを,2000〜1万とするのが好ましい。
【0029】
上記第2段階のウレタン変成に用いる,ビスフェノールAのアルキレンオキサイド,例えばエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等のグリコールは,それぞれ,片側水酸基への総付加モル数が,1〜10モル以下,好ましくは5モル以下のものである。該グリコールの添加量はポリエステルポリオール全体100部に対して5〜40部とすることが必要であり,5部を下回ると金属又は樹脂成形材に対する付着性が低下し,プロピレンオキサイドにあっては初期接着性を得られなくなり,40部を上回ると樹脂シートに対する付着性を有効に得られず,10部を下回り,20分を上回るとそれぞれこの傾向を生じ易くなるから,該添加量は,これを10〜20部とするのが好ましい。なおプロピレンオキサイドを5モル以上付加した物は,凝集力が低下し,初期接着性が発現しない。
【0030】
第2段階のウレタン変成によって得られるウレタン変成ポリエステルポリオールの分子量は,5000〜100万とすることが必要であり,5000を下回ると分子量が小さいことによって凝集力に欠けて初期接着性を有効に確保できず,100万を超えると接着剤の粘度適正,塗付適正が低下し常態接着性が低下するに至り,1万を下回り,80万を上回るとそれぞれこの傾向を生じ易くなるから,該分子量は,これを1万〜80万とするのが好ましい。
【0031】
このように2段階ウレタン変成を施したウレタン変成ポリエステルポリオールを主剤とする2液型接着剤は,優れた初期接着性,優れた常態接着性を確保するとともに優れた保存安定性を確保したものとなり,アルミ,鋼板等の金属成形材や樹脂成形材に樹脂シートをラミネートするに好適なものとなり,特に初期接着性に優れるためにエッジやコーナーを備えて複雑な断面形状を呈するこの種金属成形材や樹脂成形材に,例えばエッジ部分における樹脂シートのめくれ,コーナー部分における樹脂シートのふくれ等の接着不良を解消して,ラミネートの高生産性と高歩留りを実現することができる。
【0032】
上記にアルミ押出材にアクリル系塗膜を形成した金属成形材,塩化ビニール樹脂を押出成形した樹脂成形材にオレフィン系,塩化ビニール系等の樹脂シートをラミネートするに用いた例を示したが,更にドア枠等のステンレスフォーミング材等,アルミ以外の金属成形材に同様に樹脂シートをラミネートするに用いることができる。この場合を含めて,該成形材は金属素地,そのエッチング面,陽極酸化皮膜,塗膜等を問わずに,これらを被着面として上記接着剤によって樹脂シートのラミネートを行うことが可能であり,例えば木目調を始めとする各種の樹脂シートをこれら各種建材における金属成形材又は樹脂成形材にラミネートすることによって外観良好な建築成形材を提供するに好適に使用することができる。
【実施例1】
【0033】
イソフタル酸83部(0.5モル)及びテレフタル酸83部(0.5モル)からなるジカルボン酸成分166部と,ジオール成分としてのエチレングリコール43部(0.70モル)及びネオペンチルグリコール47部(0.45モル)からなるポリエステルポリオールA(数平均分子量は2200,水酸基価は51KOHmg/g,ガラス転移温度61℃)10部とイソフタル酸,及びアジピン酸からなるジカルボン酸と,ジオール成分としての1,6-ヘキサンジオールからなるポリエステルポリオールE(アデカニューエースF1212―29 旭電化工業株式製 数平均分子量は1700,水酸基価は65KOHmg/g,ガラス転移温度−5℃)20部を150℃にて,混合溶解し,同温度にてトルエンジイソシァネート(TDI−80)3.6部添加し,2時間反応させて,第1段階のウレタン変成を施した。その中間抜きとり分析では,数平均分子量は11000 水酸基価は10KOHmg/gであった。次いでポリオールE80部,ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを各水酸基に1モル付加させたジグリコールBPX-11(旭電化工業株式製 分子量360,水酸基価は310KOHmg/g)20部を添加,150℃にて溶解均一化し,同温度にてトルエンジイソシァネート(TDI−80)30部を30分かけて滴下し,同温度で4時間反応させて第2段階のウレタン変成を施し,その後酢酸エチルにて溶解し,不揮発分40%の末端水酸基のウレタン変成ポリエステルポリオール溶液(樹脂A)を得た。この固形物の分子量は50万,水酸基価は0.2KOHmg/gであった。この得られた樹脂A37.04部に粘着付与剤(パインクリスタル6011荒川化学工業(株)製)6.06部,光安定剤(アデカスタブAO−50旭電化工業(株)製)0.32部,紫外線吸収剤(アデカスタブLA−32旭電化工業(株)製)0.32部,界面活性剤(アデカトールTN−40旭電化工業(株)製)0.32部,シランカップリング剤(KBM−803信越化学工業(株)製)0.23部及び酢酸エチル55.56部を加えて主剤を処方し,該主剤とイソシアネート硬化剤とによって接着剤を形成し,初期接着性,常態ピーリング,耐熱クリープ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【実施例2】
【0034】
イソフタル酸42部(0.25モル),テレフタル酸42部(0.25モル),及びセバチン酸101部(0.50モル)からなるジカルボン酸成分185部と,ジオール成分としてのエチレングリコール40部(0.63モル)及びネオペンチルグリコール44部(0.42モル)からなるポリエステルポリオールB(数平均分子量は3000,水酸基価は36KOHmg,ガラス転移温度45℃)をポリエステルポリオールAとし,また第2段階の反応のトルエンジイソシァネート(TDI−80)30部とした以外は,実施例1と同様とした。第1段階のウレタン変成後の中間抜きとり分析では,数平均分子量は11000,水酸基価は10KOHmg/gであった。酢酸エチルにて溶解し,不揮発分40%の末端水酸基のウレタン変成ポリエステルポリオール溶液(樹脂B)を得た。この固形物の分子量は20万,水酸基価は0.5KOHmgであった。同じく接着剤を形成して,接着剤を形成し,初期接着性,常態ピーリング,耐熱クリープ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0035】
イソフタル酸83部(0.50モル)及びセバチン101部(0.50モル)からなるジカルボン酸成分184部と,ジオール成分としてのポリカプロラクトンジオール114部(1.10モル)からなるポリエステルポリオールC(数平均分子量は2200,水酸基価は51KOHmg,融点75℃)20部とポリエステルポリオールE20部を135℃にて混合溶解し,同温度にて トルエンジイソシァネート(TDI−80)4.2部添加し,2時間反応させて第1段階のウレタン変成を施した。中間抜きとり分析では,数平均分子量は11000,水酸基価は10KOHm/gであった。次いでポリオールE80部,ジグリコールBPX―11を10部添加し,150℃にて溶解均一化し,同温度にてトルエンジイソシァネート(TDI−80)15部を30分かけて滴下し,同温度4時間反応して第2段階のウレタン変成を施した。その後酢酸エチルにて溶解し,不揮発分40%の末端水酸基のウレタン変成ポリエステルポリオール溶液(樹脂C)を得た。この固形物の分子量は10万,水酸基価は1KOHmg/gであった。同じく接着剤を形成し,初期接着性,常態ピーリング,耐熱クリープ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【実施例4】
【0036】
イソフタル酸83部(0.50モル)及びセバチン101部(0.50モル)からなるジカルボン酸成分184部と,ジオール成分としての1,4-ブタンジオール99部(1.10モル)からなるポリエステルポリオールD(数平均分子量は2200,水酸基価は51KOHmg,融点50℃)20部とポリエステルポリオールE20部を120℃にて混合溶解し,同温度にてトルエンジイソシァネート(TDI−80)4.2部添加し,2時間反応させて第1段階のウレタン変成を施した。中間抜きとり分析では,数平均分子量は11000,水酸基価は10KOHm/gであった。次いでポリオールE80部,ジグリコールBPX―11を11部添加し,150℃にて溶解均一化し,同温度にてトルエンジイソシァネート(TDI−80)30部を30分かけて滴下し,同温度4時間反応して第2段階のウレタン変成を施した。その後酢酸エチルにて溶解し,不揮発分40%の末端水酸基のウレタン変成ポリエステルポリオール溶液(樹脂D)を得た。この固形物の分子量は25万,水酸基価は5KOHmg/gであった。同じく接着剤を形成し,該接着剤の保存安定性,初期接着性,常態接着性(常態ピーリング及び耐熱クリープ性)の試験を行った。その結果を表1に示す。
【比較例1】
【0037】
ポリエステルポリオールB20部とポリエステルポリオールE80部を150℃にて均一に溶解し,同温度にてTDI−80を40部添加し,4時間反応してウレタン変成を施した。その後溶剤を添加し,濃度40%の溶液(樹脂E)を得た。この固形物の分子量は50万,水酸基価は0.2KOHmg/gであった。同じく接着剤を形成し,該接着剤の保存安定性,初期接着性,常態接着性(常態ピーリング及び耐熱クリープ性)の試験を行った。その結果を表1に示す。
【比較例2】
【0038】
ポリエステルポリオールB20部とポリエステルポリオールE60部,BPX―11を20部添加し,150℃にて均一に溶解し,同温度にてTDI−80を25部添加し,4時間反応してウレタン変成を施した。その後溶剤を添加し,濃度40%の溶液(樹脂F)を得た。この固形物の分子量は30万,水酸基価は0.4KOHmg/gであった。同じく接着剤を形成し,該接着剤の保存安定性,初期接着性,常態接着性(常態ピーリング及び耐熱クリープ性)の試験を行った。その結果を表1に示す。
【比較例3】
【0039】
イソフタル酸50部(0.3モル),テレフタル酸34部(0.2モル)及びセバチン酸101部(0.5モル)からなるジカルボン酸成分185部と,ジオール成分としてのエチレングリコール40部(0.63モル)及びネオペンチルグリコール46部(0.44モル)からなるポリエステルポリオールB(数平均分子量は3000,水酸基価は36KOHmg/g,ガラス転移温度5℃)を用いて,上記ポリエステルポリオールAを変える以外は実施例1と同様とした。中間抜きとり分析では,数平均分子量は11000,水酸基価は10KOHmg/gであった。その後酢酸エチルにて溶解し,不揮発分40%の末端水酸基のウレタン変成ポリエステルポリオール溶液(樹脂G)を得た。この固形物の分子量は20万,水酸基価は0.5KOHmgであった。同じく接着剤を形成し,該接着剤の保存安定性,初期接着性,常態接着性(常態ピーリング及び耐熱クリープ性)の試験を行った。その結果を表1に示す。
【比較例4】
【0040】
実施例1と同じく第1段階のウレタン変成を施し,次いでポリオールE100部を添加し,150℃にて溶解均一化し,同温度にてトルエンジイソシァネート(TDI−80)15部を30分かけて滴下し,同温度4時間反応して第2段階のウレタン変成を施した。その後酢酸エチルにて溶解し,不揮発分40%の末端水酸基のウレタン変成ポリエステルポリオール溶液(樹脂H)を得た。この固形物の分子量は20万,水酸基価は0.5KOHmg/gであった。同じく接着剤を形成し,該接着剤の保存安定性,初期接着性,常態接着性(常態ピーリング及び耐熱クリープ性)の試験を行った。その結果を表1に示す。
【比較例5】
【0041】
実施例1と同じく第1段階のウレタン変成を施し,次いでポリオールE20部,BPX−11を5部を添加し,150℃にて溶解均一化し,同温度にてトルエンジイソシァネート(TDI−80)7部を30分かけて滴下し,同温度4時間反応して第2段階のウレタン変成を施した。その後酢酸エチルにて溶解し,不揮発分40%の末端水酸基のウレタン変成ポリエステルポリオール溶液(樹脂I)を得た。この固形物の分子量は10万,水酸基価は1KOHmg/gであった。同じく接着剤を形成し,該接着剤の保存安定性,初期接着性,常態接着性(常態ピーリング及び耐熱クリープ性)の試験を行った。その結果を表1に示す。
【比較例6】
【0042】
実施例1と同じく第1段階のウレタン変成を施し,次いでポリオールE150部,BPX−11を50部を添加し,150℃にて溶解均一化し,同温度にてトルエンジイソシァネート(TDI−80)10部を30分かけて滴下し,同温度4時間反応して第2段階のウレタン変成を施した。その後酢酸エチルにて溶解し,不揮発分40%の末端水酸基のウレタン変成ポリエステルポリオール溶液(樹脂J)を得た。この固形物の分子量は10万,水酸基価は1KOHmg/gであった。同じく接着剤を形成し,該接着剤の保存安定性,初期接着性,常態接着性(常態ピーリング及び耐熱クリープ性)の試験を行った。その結果を表1に示す。
【比較例7】
【0043】
第2段階のウレタン変成に使用するTDI―80の量を10部とした以外,実施例1と同じとしてウレタン変成ポリエステルポリオール溶液(樹脂K)を得た。この固形物の分子量は9000,水酸基価は15KOHmg/gであった。同じく接着剤を形成し,該接着剤の保存安定性,初期接着性,常態接着性(常態ピーリング及び耐熱クリープ性)の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【試験方法】
【0045】
保存安定性試験 容器に密封した接着剤(主剤)を常温で30日間置き,その粘度の変化を目視によって判定した。
【0046】
初期接着性試験 オレフインシートに75μm厚さのドクターブレードにて接着剤を塗布,直ちに50℃の熱風乾燥機に入れ30秒保持し,予め50℃に加温したアルミ成形材(表面にアクリル系電着塗膜を形成)に貼付け,5kg(巾50mm)のローラーで圧着し,その直後にシート部分の25mm巾,長さ105mmにカット入れ,アルミ成形材の固定状態でシートの端に300gのウエイトを固定し,その直後における90℃角の曲がり内側部分の浮きの有無を目視によって確認し且つ30秒間に剥がれた90°剥離距離を測定した。更にオレフィンシートに代えて塩化ビニールシートを用い,またアルミ成形材に代えてステンレスフォーミング材(未塗装)を用いた以外,上記と同様に曲り部分の浮きの有無及び90°剥離距離を測定した。
【0047】
常態ピーリング試験 オレフインシートに75μm厚さのドクターブレードにて接着剤と塗布,直ちに50℃の熱風乾燥機に入れ60秒保持し,予め50℃に加温したアルミ成形材(表面にアクリル系電着塗膜を形成)に貼付け,5kg(巾50mm)のローラーで圧着し,これを20℃で5日間静置後,引張り試験機を用い,温度20℃,相対湿度65%の条件下で,T型剥離,180度剥離により,それぞれ剥離速度30cm/分で,オレフィンシートとアルミ成形材間のラミネート強度(kgf/25mm)を測定した。更にオレフィンシートに代えて塩化ビニールシートを用い,またアルミ成形材に代えてステンレスフォーミング材を用いた以外,上記と同様にラミネート強度を測定した。
【0048】
耐熱クリープ性試験 アルミ成形材の平面部を長さ100mm×幅25mmの寸法に切断し,予めオレフィンシートの一端部を剥離し,これを20℃で2日間保持した後,アルミ成形材を固定してオレフィンシートの一端部に500gのウエイトを取り付け,60℃の雰囲気で60分経過後の90度剥離距離を測定した。更にオレフィンシートに代えて塩化ビニールシートを用い,またアルミ成形材に代えてステンレスフォーミング材を用いた以外,上記と同様に90°剥離距離を測定した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ラミネートしたドア枠の横断面図である。
【図2】ラミネートした額縁の横断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ドア枠
2 額縁
3 樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ,鋼板等の金属成形材又は樹脂成形材にオレフィン系,塩化ビニール系等の樹脂シートをラミネートするに用いる水酸基末端を有するウレタン変成ポリエステルポリオールを用いた主剤と硬化剤の2液型接着剤におけるウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法であって,ガラス転移温度40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上の結晶性ポリエステルポリオールを含むポリエステルポリオールを原料として,該原料ポリエステルポリオールに常温液状のポリエステルポリオールを混合溶解して分子量1000〜5万のウレタン変成ポリエステルポリオールとする第1段階のウレタン変成と,ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加のグリコールを添加したポリエステルポリオールを混合溶解して分子量を5000〜100万とする第2段階のウレタン変成を施すことを特徴とするウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法。
【請求項2】
上記原料ポリエステルポリオールにおけるガラス転移温度40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上の結晶性ポリエステルポリオールの含有量を,原料ポリエステルポリオール100部のうち3〜25部とすることを特徴とする請求項1に記載のウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法。
【請求項3】
上記第1段階のウレタン変成を,上記原料ポリエステルポリオール100部に対して30〜300部の常温液状ポリエステルポリオールを混合溶解することによって行い,上記第2段階のウレタン変成を原料ポリエステルポリオールに対して5〜40部のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加のグリコールを添加したポリエステルポリオールを混合溶解することによって行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のウレタン変成ポリエステルポリオールの合成方法。
【請求項4】
アルミ,鋼板等の金属成形材又は樹脂成形材にオレフィン系,塩化ビニール系等の樹脂シートをラミネートするに用いる主剤と硬化剤の2液型の接着剤であって,上記主剤が,ガラス転移温度40℃以上のポリエステルポリオール又は軟化温度が70℃以上の結晶性ポリエステルポリオールを含むポリエステルポリオールに第1段階及び第2段階の2段階ウレタン変成を施すことによって水酸基末端とした分子量5000〜100万のウレタン変成ポリエステルポリオールを含有してなることを特徴とする建築成形材ラミネート用接着剤。
【請求項5】
上記建材ラミネート用接着剤を用いて,アルミ,鋼板等の金属成形材又は樹脂成形材の少なくともエッジ又はコーナーを介した複数面に亘るようにオレフィン系,塩化ビニール系等の樹脂シートをラミネートしてなることを特徴とする請求項4に記載の建築成形材ラミネート用接着剤を用いた建築成形材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−284529(P2007−284529A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112163(P2006−112163)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】