説明

ウレタン系セメント組成物、床材及び舗装材

【課題】 蒸気洗浄や熱水洗浄等の高熱にさらされ続けても、硬化収縮によるそりが低減され、下地コンクリートから剥離せず、床の表面に亀裂が発生しない耐熱性に優れたポリウレタン系セメント組成物を提供する。
【解決手段】 (a)活性水素を含有した有機化合物、(b)水、(c)分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物、(d)水硬性セメント及び(e)流動パラフィンを含んでなるウレタン系セメント組成物、床材及び舗装材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐薬品性、耐熱水性、耐衝撃性、および耐摩耗性に優れ、食品工場、化学工場、機械工場などの工場床等、産業床及び舗装材用途に適したウレタン系セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗り床材、舗装材としては、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、メチルメタクリレート(MMA)系などの材料が用いられてきた。しかし、これらは食品工場、化学工場機械工場などの産業床用としては、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性などが必ずしも充分でなく、さらに優れる材料が求められていた。また上記床材のなかには、溶剤を多く含む材料や臭気を強く発する材料もあり、これらは、食品工場などには好ましくなかった。
【0003】
そこで、水硬性セメント、骨材、水、活性水素を含有した有機化合物、および2以上のイソシアネート基を有する化合物からなるポリウレタン系セメント組成物が提案されている(例えば特許文献1参照)。
このポリウレタン系セメント組成物は、現場で上記各成分を混合することにより、水と水硬性セメントの水和反応、ポリオールとイソシアネートとのウレタン化反応およびイソシアネートと水による炭酸ガスの発生を伴うウレア化反応が同時に進行する。そして、硬化後の組成物は硬く、耐摩耗性に優れ、加えて耐熱性や耐薬品性を持つことより、食品工場、化学工場、機械工場をはじめとする工場床等、産業床における耐久性に優れた床材として使用できる。
【0004】
この様なポリウレタン系セメント組成物は、従来の塗り床材よりも耐熱性に優れるものの、硬化時に生じる組成物の収縮が大きいために、床洗浄に使う蒸気や熱水により下地コンクリートから剥離したり、表面に亀裂が発生するなどの問題があった。
【0005】
また活性水素含有化合物とイソシアネートとの配合比率を限定し、収縮を緩和する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)が、作業性を低下しているのが実状である。
【0006】
【特許文献1】特開平8−169744号公報
【特許文献2】特開2002−12463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、蒸気洗浄や熱水洗浄等の高熱にさらされ続けても、下地コンクリートから剥離せず、床の表面に亀裂が発生しない耐熱性に優れたポリウレタン系セメント組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述の問題点を解決すべく検討を行った結果、セメント硬化性組成物に流動パラフィンを配合すると、硬化物の反りが低減し、亀裂が発生しないことを発見するに及んで本発明を完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、(a)活性水素を含有した有機化合物、(b)水、(c)分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物、(d)水硬性セメント及び(e)流動パラフィンを含んでなるウレタン系セメント組成物、床材及び舗装材を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン系セメント組成物は、硬化収縮によるそりが低減され、亀裂が発生せず、耐熱性に優れた硬化物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に使用する(a)活性水素含有化合物は、活性水素含有基を少なくとも2個有する化合物が好ましく、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリジエンポリオール、ひまし油、水素化ひまし油などが挙げられる。
【0011】
低分子量ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,4−、1,3−及び2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0012】
前記ポリエーテルポリオールとしては、前記低分子量ポリオールを開始剤として触媒の存在下に環状エーテルを開環重合付加して得られる化合物が挙げられる。かかる環状エーテルとしては、例えばエチレンオキシド、エビクロロヒドリン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド及び2,3−ブチレンオキシドのようなアルキレンオキシド、トリメチレンオキシド及びテトラヒドロフラン等がある。
【0013】
前記ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸と2価アルコールを既知の方法によって反応させて得られる化合物が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸、並びにこれらの酸の混合物が挙げられる。2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール及び2,2−ジエチルトリメチレングリコールが挙げられる。
【0014】
ポリジエンポリオールとしては、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリクロロプレンポリオール、及びこれらに水素添加したポリオールなどが挙げられる。
【0015】
前記のとおり、(a)活性水素含有化合物として、ひまし油、水素化ひまし油を使用することができるが、さらにその他アルキッド樹脂で変成された乾性油あるいは非乾性油、ジイソシアネートと乾性油のアルコールシス生成物、例えば亜麻仁油のモノ及びジグリセライドとの反応生成物であるウレタン油類、並びにアルキッド樹脂の製造に際して無水フタル酸の一部をジイソシアネート化合物で置き換えることにより得られるウレタンアルキッドなども使用できる。
【0016】
(a)活性水素含有化合物としては、前記に掲げたものに加えて、更にメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、及びメチルカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロースのアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル及びアルキルヒドロキシアルキルエーテル等などのセルロース誘導体である水溶性イソシアネート反応性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレングリコール、などを使用することもできる。
【0017】
また、モノエタノールアミンのようなアミノアルコール類及びそのアルキレンオキシド反応物、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルテトラミン、m−及びp−フェニレンジアミン並びに2,4−及び2,6−ジアミノトルエンのようなポリアミン類及びそのアルキレンオキシド反応物、ホルムアルデヒドとメラミン、尿素、アミド類、カルバメート類、ウロン類、ウレイン類、ウレイド類、イミダゾリジノン類、ピリジノン類及びトリアジノン類との低分子量初期段階縮合生成物又はプレポリマー、並びにそのような初期段階縮合生成物の低級アルキルエーテル、例えばメチル化ポリメチロールメラミン/尿素、ジメチロールとジエチロールエチレン尿素、ジヒドロキシジメチロール及びジエチロール尿素樹脂プレ縮合物、低分子量ポリイソシアネート化合物またはイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが挙げられ、ポリビニルピロリドン、並びにエチレンオキシドとセチルアルコール、オレイルアルコール及びこれらアルコールの縮合物、オクチルフェノールもしくはノニルフェノールとの水溶性付加体も使用できる。
【0018】
(a)活性水素含有化合物の数平均分子量としては、300〜3,000が好ましく、500〜2,000が特に好ましい。また水酸基数は2〜5が好ましい。
【0019】
本発明に使用する(b)水の配合量は、(e)水硬性セメント100重量部に対して5〜500重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましく、10〜50重量部が特に好ましい。
【0020】
(c)2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、有機ポリイソシアネート又はイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられる。
【0021】
有機ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4'−ジイソシアネート、4,4'ジイソシアネート−3,3'−ジメチルジフェニル、ジメチルジフェニルエーテルジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのような脂環式ジイソシアネート;2,4,6−トリイソシアネートトルエンやトリイソシアネートジフェニルエーテルのような芳香族トリイソシアネートが挙げられる。
【0022】
これら有機ポリイソシアネートは、ウレタン変性体、ウレチジオン変性体、ヌレート変性体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体、ウレア変性体などの変性体であってもよい。
【0023】
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、前記有機ポリイソシアネート又はその変性体とポリオールとをイソシアネート基過剰で反応させることにより得ることができる。ポリオールとしては、前記低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリジエンポリオールなどが挙げられる。
【0024】
また、ホルムアルデヒドとアニリン及びo−トルイジンのような芳香族アミンとを酸性条件下で反応させて得られた混合ポリアミンをホスゲン化して得られる混合物も使用できる。例えば、ポリメリックMDIとして知られているもので、塩酸の存在下でホルムアルデヒドとアニリンとを反応させ調製した混合ポリアミンのホスゲン化によって得られ、異性体及び2個を超えるイソシアネート基を含むメチレン結合ポリフェニルポリイソシアネートと混り合っているジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアメートよりなるものも使用できる。
【0025】
さらにその他のイソシアネート基末端プレポリマーとして、イソシアネートと反応し得る基を有するコールタールピッチと任意に前記のポリオールを混合したものに有機ポリイソシアネートをイソシアネート基過剰で反応させて得られる反応生成物も使用できる。
【0026】
ポリイソシアネートは単独または二種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
(d)水硬性セメントとは、水と混和することにより硬化あるいは凝結する構造材料の一群を示す。ポルトランドセメントや高いアルミナ含量を特徴とする迅速硬化型セメントが特に好ましい。ポルトランドセメントとしては普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、鉄及び炭素含量の低いセメントである白色ポルトランドセメントなどがある。
【0028】
(d)水硬性セメントとしては、その他にも、珪酸二カルシウムとアルミノ亜鉄酸四カルシウムの含有率が高く、珪酸三カルシウムとアルミン酸三カルシウムの含有率が低いことを特徴とする低熱セメント;珪酸三カルシウムと珪酸二カルシウムの含有率が異常に高く、アルミン酸三カルシウムとアルミノ亜鉄酸四カルシウムの含有率が異常に低い率を特徴とする耐硫酸塩セメント;ポルトランドセメントクリンカーと顆粒状鉱滓との混合物であることを特徴とするポルトランドブラストファーネスセメント;ポルトランドセメントと、水和石灰、顆粒状鉱滓、粉砕石灰石、コロイド状粘土、珪藻土、もしくはその他のシリカ、ステアリン酸カルシウムとパラフィンの微粉状物のうちから選ばれた一種又は二種以上の物との混合物であることを特徴とするメーソンリーセメント;アメリカ合衆国リーハイ・ヴァレーの堆積物から得られた物であることを特徴とする天然セメント;純粋な、もしくは不純な形のカルシウムの酸化物であり、若干の粘土質材料を含んでおり、もしくは含んでいないことを特徴とする石灰セメント;石灰に5〜10重量%の焼石膏を添加したことを特徴とするセレナイトセメント;火山灰、火山性珪藻土、軽石、石灰華、サントリン土もしくは顆粒状鉱滓と石灰モルタルとの混合物であることを特徴とする火山灰混合セメント;硫酸カルシウムの水和物による物で、焼石膏、キーンスセメント及び石膏プラスターを含有していることを特徴とする硫酸カルシウムセメントなどが挙げられる。
【0029】
(d)水硬性セメントの使用量としては、(c)2以上のイソシアネート基を有する化合物に対して30〜1000重量%、好ましくは50〜300重量%である。
【0030】
本発明において、(d)流動パラフィンは、常温で液状のパラフィンであり、5〜1000mPa・秒/25℃の粘度を有するものが好ましく、10〜500mPa・秒/25℃の粘度を有するものが特に好ましい。
この流動パラフィンは、ウレタン系組成物の硬化収縮を防止する機能を有し、これを用いることにより、硬化収縮による硬化物の反りを防止することができる。
【0031】
流動パラフィンの使用量としては、ウレタン系セメント組成物全量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0032】
更に、本発明のウレタン系セメント組成物は、骨材、充填剤、反応調整剤、二酸化炭素吸収剤、可塑剤、硬化促進剤、瀝青を含有していてもよい。
【0033】
かかる骨材としては、珪質骨材が好ましい。かかる珪質骨材としては、例えば砂及び低粘土含量の砂利、ガラスの粉砕物等が挙げられる。この珪質骨材は、洗浄された粒径が0.076mm〜4cmであるものが望ましい。これらの材料は、天然の状態でも、あるいは、例えば染料や顔料や被覆材の使用により、人工的に着色されたものでもよい。
骨材の使用割合は、(e)水硬性セメントに対して1〜1000重量%、好ましくは100〜500重量%である。
【0034】
上記珪質骨材の他、骨材として、プラスチック及びゴムの粉砕物等も使用できる。プラスチックの粉砕物としては、例えば無色のもしくは着色されたプラスチック・ゴムの粉砕物のチップ、旋削屑(turnings)、又は顆粒が挙げられる。射出成形その他の方法で成形された物品をトリミングする際に出るプラスチック廃物も使用できる。
【0035】
その他、鋸屑、木屑、軽石、フライアッシュバルーンやメサライト・Gライトなどの軽量骨材、ひる石、なども使用できる。
【0036】
これらの骨材は、水硬性セメントと混合して使用することが特に好ましい。
【0037】
充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウムなどの無機粉体やガラス繊維、綿、羊毛、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の天然起源又は人工起源の繊維性材料も使用でき、水硬性セメントと混合して使用することが特に好ましい。
【0038】
反応調整剤としては、1価アルコール、エポキシ基含有化合物等の連鎖停止剤が挙げられる。純粋なあるいは例えばパイン油のような炭化水素と混合したテルピネオールも使用できる。
【0039】
1価アルコールの例としては、メタノール、ヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、セチルアルコール等の飽和アルコール類、アリルアルコール及びプロパルギルアルコールのような不飽和アルコール類、及びそれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0040】
エポキシ基含有化合物としては、大豆油、ヒマシ油等の油脂を酸化して得られる混合脂肪酸をまず1価アルコール、ジオールもしくは多官能性のポリオールでエステル化し、次いで得られた混合エステルをエポキシ化することで得られるエポキシ化油脂、ジフェニロールプロパンとエピクロロヒドリンとから誘導されるビスエポキシ化合物類や、少なくとも一個のエポキシシクロヘキサン基又はエポキシシクロペンタン基を含む化合物類が挙げられる。
【0041】
本発明のセメント組成物において、イソシアネート成分と水がセメント組成物の中で共存しているが、水硬性セメントが充分量存在しており、イソシアネート成分が水と反応した際に発生する二酸化炭素を吸収するのに充分に塩基性であることから発泡は起きにくい。しかし、該セメント組成物を硬化させる際に発泡の傾向があるなら、二酸化炭素吸収剤が使用できる。またポリイソシアネートの粘度を調整するため、ポリイソシアネートに希釈剤および/又は可塑剤を併用することができる。
【0042】
二酸化炭素吸収剤としては、具体的には酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カドミウム、珪酸カルシウム、珪酸バリウム、珪酸ナトリウム、水酸化鉛、塩基性酢酸鉛等、金属の酸化物、水酸化物、塩基性塩、錯塩及び複塩などが好ましい。
【0043】
また、ポリ(シロキサン)、ポリ(アルキルシロキサン)及びポリ(ジアルキルシロキサン)、ポリエチレンオリゴマーなども消泡剤として使用できる。
【0044】
可塑剤としては、具体的にはフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ブチルベンジル、リン酸トリクレジル、リン酸トリトリル、リン酸トリ(2−クロロエチル)等の可塑剤、塩素化酸炭化水素類が挙げられる。
【0045】
硬化促進剤とは、イソシアネート基と活性水素含有基との間に反応速度を加速するとして知られている化合物である。適切な促進剤としては、例えば有機金属化合物、金属塩及び三級アミンがあり、例として、ジブチル錫ジラウレート、チタン酸テトラブチル、オクタン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸第一錫、塩化第二錫、塩化第二鉄、オクタン酸鉛、オレイン酸カリ、2−エチルヘキサン酸コバルト、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−エチルモルホリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、オキシプロピル化トリエタノールアミン、β−ジエチルアミノエタノール及びN,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシ)エチレンジアミンが挙げられる。
【0046】
瀝青(この意味とするところは、原油の蒸留残渣であり、本質的には脂肪族系の性状を有し、実質上イソシアネートとの反応性を持っていないもの)を使用してもよい。これは、一般的に柔軟性と耐水性とを改善する。コールタールピッチもまたこの組成物に加えてよい。
【0047】
これら含有してもよい物質の具体的な使用例としては、タルクや繊維性材料をウレタン系セメント組成物に加えることで遥変性を付与し、斜路や立ち面に塗装可能な材料に調整することが挙げられる。
【0048】
本発明において、各種材料を混合する場合、セメントミキサーや強制へらミキサーのような手段を使用して混合する方法が好ましい。また、該セメント組成物は例えば、こて塗り、注ぎ込み、吹きつけ、その他の適切な方法で、基材に塗布し、硬化させうる。
【0049】
また、本発明のポリウレタン系セメント組成物は、建築物の床面、階段などの床面を形成する塗り床材及び下地調整材/道路や軌道などの舗装材及び下地調整材として適し、食品工場、化学工場、機械工場などの工場床、産業床用として特に適する。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例1〜5および比較例1〜2によって具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。「部」は重量部を示す。
【0051】
(合成例)
ウレタン系セメント組成物に使用した原料は次のとおりである。
ポリオールA:エチレンジアミンにプロピレンオキシド次いでエチレンオキシドを開環付加させて得られたオキシエチレン基含量40重量%、数平均分子量500の窒素原子含有のポリオキシアルキレントリオール。
ユーリックH−30;ヒマシ油、伊藤製油(株)製。
BBP:フタル酸ブチルベンジル。
DOP:フタル酸−2−エチルヘキシル。
Disperbyk−161;3級アミノ基を有するウレタン系湿潤分散剤、ビックケミージャパン(株)製(以下湿潤分散剤1という)
ダフニーオイルKP−8:出光興産(株)製:流動パラフィン(粘度;14mPa・s/25℃。)
ダフニーオイルKP−32:出光興産(株)製:流動パラフィン(粘度;57mPa・s/25℃。)
ダフニーオイルKP−100:出光興産(株)製:流動パラフィン(粘度;200mPa・s/25℃。)
マイティ2000R;ナフタレン系セメント減水剤、花王(株)製。
MR−200;ポリメリックMDI、日本ポリウレタン(株)製。
GN;酸化クロム、バイエル(株)製。
【0052】
(合成例1)
35部のユーリックH−30、35部のDOP、2部のポリオールA、1部の湿潤分散剤1、0.5部のポリシロキサン系消泡剤を、0.2部の89重量%燐酸(試薬1級)を加えた26.8部の水と撹拌混合し、分散液1を調製した。
【0053】
(合成例2)
35部のユーリックH−30、15部のDOP、20部のダフニーオイルKP−32、
2部のポリオールA、1部の湿潤分散剤1、0.5部のポリシロキサン系消泡剤を、0.2部の89重量%燐酸(試薬1級)を加えた26.8部の水と撹拌混合し、分散液2を調製した。
【0054】
(合成例3)
34部のユーリックH−30、34部のBBP、1.5部のマイティ2000R、および、0.5部のポリシロキサン系消泡剤を、30部の水と撹拌混合し、分散液3を調製した。
【0055】
(合成例4)
34部のユーリックH−30,24部のBBP、20部のダフニーオイルKP−8、1
.5部のマイティ2000R、および、0.5部のポリシロキサン系消泡剤を、30部の水と撹拌混合し、分散液4を調製した。
【0056】
(合成例5)
10部のGN、200部の白色ポルトランドセメント、300部の3号珪砂、200部の5号珪砂、および、190部の7号珪砂を混合し、粉体1を調製した。
【0057】
(合成例6)
10部のGN、200部の白色ポルトランドセメント、300部の3号珪砂、200部
の5号珪砂、および、170部の7号珪砂、及び20部のダフニーオイルKP−32を混合し、粉体2を調製した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
<評価法>
【0061】
(硬化塗装板のそり)
【0062】
JIS A−5430(繊維強化セメント板)に規定されるフレキシブル板(3mm)を30cm四方に切り出し、その上に上記で得られた分散液及び粉体を表−3及び表−4に示す部数を配合して得られたウレタン系セメント組成物を18kg/m塗布し、20℃で相対湿度50%の恒温恒湿槽内で48時間養生した。その後、一端を机上に押さえつけ、浮き上がった対角線上の一端の高さを測定した。結果を表−3、表−4に示す。
【0063】
(熱冷繰り返し試験)
JIS A−5371付属書2に規定される舗装用平板に上記で得られた分散液及び粉体を表−3及び表−4に示す部数を配合して得られたウレタン系セメント組成物を18kg/m塗布し、20℃で相対湿度50%の恒温恒湿槽内で48時間養生した。その後、塗装表面に90℃の熱水を毎分1リットルで5分間、と5℃の冷水を毎分1リットルで5分間流下することを1サイクルとし、1000回繰り返して行った。その後、塗膜表面の状態を観察し、結果を表−3、表−4に示す。目視による観察で塗膜表面の亀裂が生じておらず、下地との接着不良が生じていない状態を「異常なし」とした。
【0064】
【表3】

【0065】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性水素を有する有機化合物、(b)水、(c)分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物、(d)水硬性セメント及び(e)流動パラフィンを含んでなるウレタン系セメント組成物。
【請求項2】
さらに珪質骨材を含有する請求項1記載のウレタン系セメント組成物。
【請求項3】
前記(e)流動パラフィンの使用量が、0.1〜10重量%である請求項1又は2記載のウレタン系セメント組成物。
【請求項4】
前記ウレタン系セメント組成物からなる床材。
【請求項5】
前記ウレタン系セメント組成物からなる舗装材。




【公開番号】特開2006−240933(P2006−240933A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60491(P2005−60491)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】