説明

ウール及びウール混合物のインジゴ染色方法

ウール及びウール混合物を、収縮防止剤を含浸させることにより前処理する工程にかけ、前記前処理したウール及びウール混合物ヤーンをインジゴ染色し、後染色する工程にかけ、然も、前記染色及び後染色の工程が、前記前処理したウール及びウール混合物をインジゴ染料浴中で含浸させ、次に毎回酸化工程を行う一つの工程又は複数の工程を含む、インジゴ染色方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウール及びウール混合物のインジゴ染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インジゴは、水に不溶性の建染め染料であることは一般に知られている。しかし、建染め染料を、ヒドロ硫化ナトリウム(hydrosulphide sodium)及び水酸化ナトリウムを添加することによりロイコ型へ還元すると、それは溶解して還元形になるが、色を持たない。従って、色を与えるためには、可溶性ロイコ形を酸化工程にかける。
【0003】
インジゴによる染色方法は、本来木綿ヤーンに関して知られている。そのような染色方法は、木綿ヤーンを横に広げた形態又はロープの形態にして行われる。横に広げた形態では、必要な総数の縦糸を広げた状態に配列し、染色し、一度にノリ付けして織機のビームに送る。
【0004】
ロープ形態での染色では、ヤーンをロープに形成する。一般に1本のロープは、約350〜400本のヤーンからなり、染色槽を通過する。染色後、ロープを開いてリール上でヤーンを分離し、ヤーンを互いに横に並べて広げたシートが得られるようにする。
【0005】
米国特許第5,361,438号明細書には、ヤーンを編み機で用いることができるようにインジゴ染色する方法が記載されている。特に、米国特許第5,361,438号明細書は、染色されたヤーンを、かせ枠ではなくむしろ糸巻き上に巻くことができるように、かせ、即ち束の形でヤーンを染色する方法を示唆している。そのような方法では、ヤーンはかせ形態になっており、供給及び引張りローラー上に置かれ、そのかせが、複数のインジゴ染料浴を通過して、次に酸化されるようになっている。夫々酸化が続く染料浴の数は、色の強度に依存する。
【0006】
米国特許第T100,201号明細書には、ポリスチレン繊維をインジゴ染色する方法が記載されている。そのような方法では、インジゴ染色された木綿繊維と同様な洗濯による色あせ及び退色性を与えるように、繊維を重合体塩で先ず被覆している。
【0007】
木綿ヤーンのインジゴ染色の連続的方法へ戻ると、その方法はヤーンをロープへ形成し、夫々のロープが一束のヤーンからなるようにすることにある。そのようなロープを、インジゴ染料の入った建染め染料浴中に入れ、次に酸化する。複数の建染め染料浴を与え、毎回次に酸化工程を行い、含浸と酸化とをそのように繰り返す工程の数は、ヤーンに染色すべき色の強度に依存する。
【0008】
バッチ方法によりウールヤーンをインジゴ染色する方法は、建染め染料浴中でウールヤーンを広げた形で含浸させることにより恐らく行われるであろう。次に含浸されたヤーンをばらばらの形で吊り下げ、酸化工程にかける。ウールヤーンをインジゴ染色するための適当なバッチ方法は、どの文献にも記載されておらず、恐らくそのような方法を行うことができるやり方は、ここに記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一つの目的は、ウール及びウール混合物のインジゴ染色を与えることにある。
【0010】
本発明の別の目的は、木綿ヤーンに関して知られているのと同じ染色装置を用いて、ウール及びウール混合物のインジゴ染色を与えることにある。
【0011】
本発明の更に別な目的は、適当な染色可能因子を有するウール及びウール混合物のインジゴ染色を与えることにある。
【0012】
本発明の更に別の目的は、形状安定性を有するウール及びウール混合物のインジゴ染色を与えることにある。
【0013】
本発明の更に別の目的は、既知の染色装置を用いるが、異なったパラメーターを用いたウール及びウール混合物のインジゴ染色を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明により、ウール及びウール混合物を、ヤーンを紡糸する前に、収縮防止剤(shrink resistance agent)を含浸させることにより前処理する工程にかけ、前記前処理したウール及びウール混合物をインジゴ染色し、後染色する工程にかけることを含み、然も、前記染色及び後染色の工程が、前記前処理したウール及びウール混合物を建染め染料浴中で含浸させ、次に毎回酸化工程を行う一つの工程又は複数の工程を含む、インジゴ染色方法が与えられる。
【0015】
ここで用いられる用語「ウール」とは、緩いトップ、かせ、ヤーンパッケージ等(例えば、コーン、チーズ、ビーム等)、ヤーンロープ/シート、及び織物の状態のウールを意味するものとする。更に、本発明は、連続的又はバッチとして用いてもよいが、連続的方法に明確な利点が伴われている。更に、ここに記載するパラメーターは、連続的方法に関連するものであるが、それは、バッチ又は連続的方法に関して限定される仕方で示唆しているものではない。
【0016】
本発明の特徴の一つは、ウール及びウール混合物を、染色工程前に収縮防止処理にかけることにある。収縮防止処理は、紡糸したヤーンそれ自体で行なってもよい。しかし、繊維又はウールトップに収縮防止処理を行う場合と比較して、紡糸したヤーンでは均一性が低下する。ヤーンはねじった形態になっており、従って、そのような収縮防止処理をヤーンに対して行うと、均一性がかなり減少する。しかし、紡糸工程前にそのような処理を行うと、分離した繊維は長手方向の軸に沿って互いに離れて配置され、それによりヤーンに比較して吸収性が改良される。そのような吸収性は、一層よく染料を取り込む。
【0017】
収縮処理組成物及び操作温度及び時間を以下に記載する。しかし、そのような操作温度及び時間は例としての性質しか持たず、どの場合でも限定する仕方で解釈されるべきものではない。
【0018】
処理手順:
次の組成物を用いて浴を15℃に設定する。
酢酸 0.3-0.5 g/l
硫酸ナトリウム 1.5-3.0 g/l
バソラン(Basolan)DC(ジクロロイソシアヌル酸
ナトリウム無水物、収縮防止用化学物質) 3.0-5.0 g/l
pH 3.5-4.0
【0019】
3.50〜4.0のpHを維持しながら、1℃/分で温度を50℃へ上昇し、60分間保持した。
【0020】
次に、1.5〜3.0g/lのメタ重亜硫酸ナトリウムを添加した。浴を35分間操作し、排出した。次にトップを低温(cold)で2回、高温(hot)(60℃)で1回、最後に低温で洗浄した。
【0021】
本発明の方法の工程図を、ロープ状になったウールに関して以下に示すが、その方法は連続的性質を持っている。しかし、工程図は、前処理工程及び収縮防止処理工程を示していない。工程図は、連続的方法のための既知の機械の操作パラメーターのあるものを本質的に示しているが、ロープ状のウールを染色するための操作パラメーターを有する。含浸時間及び酸化時間は、機械の速度に反比例すると考えられる。
【0022】
工程図
100%ウール

経玉形成
長い成形(M/c.速度75−100mpm)
↓ クリール張力25−30g)
ロープ染色
インジゴ染色

巻き返し(LCB上 M/C)(M/s.速度75−100mpm)
↓ ロープ張力5−10psi)
ノリ付け(sizing)

製織

織物硬化

仕上げ
【0023】
典型的な染料浴は次の通りである:
苛性ソーダ 1.5-3.0 g/l
ヒドロ亜硫酸ナトリウム 1.8-3.0 g/l
インジゴ 0.5-5.0 g/l
イオン性湿潤剤〔プリマゾール(Primasol)NF−
燐酸エステル塩〕 0.05-0.5 g/l
イオン性分散剤〔セタモール(Setamol)WS−
芳香族スルホン酸の縮合生成物〕 0.05-0.5 g/l
染料−浴温度 25℃- 35℃
pH 11.2-12.5
【0024】
ウール染色のためのスラッシャー法についての工程図は次の通りであるが、収縮防止処理及び10の前処理は示していない。
【0025】
スラッシャー染色処理工程
100%ウールヤーン

直接整経

インジゴ染色cumノリ付け

織布

仕上げ
【0026】
スラッシャー法のための典型的な染料浴は次の通りである:
苛性ソーダ 1.5-3.0 g/l
ヒドロ亜硫酸ナトリウム 1.8-3.0 g/l
インジゴ 0.5-5.0 g/l
イオン性湿潤剤(プリマゾールNF−燐酸エステル塩) 0.05-0.5 g/l
イオン性分散剤(セタモールWS−
芳香族スルホン酸の縮合生成物) 0.05-0.5 g/l
染料−浴温度 25℃- 35℃
pH 11.2-12.5
【0027】
ウール材料のかせインジゴ染料のための工程図は次の通りである。
【0028】
ウール材料のトップインジゴ染色及びかせインジゴ染色
ウールトップのSR処理

バッチ還元型でのトップ染色

酸化

洗浄

乾燥
【0029】
典型的な染料浴は次の通りである:
苛性ソーダ 1.5-3.0 g/l
ヒドロ亜硫酸ナトリウム 1.8-3.0 g/l
インジゴ 0.5-5.0 g/l
イオン性湿潤剤(プリマゾールNF−燐酸エステル塩) 0.05-0.5 g/l
イオン性分散剤(セタモールWS−
芳香族スルホン酸の縮合生成物) 0.05-0.5 g/l
染料−浴温度 25℃- 35℃
pH 11.2-12.5
【0030】
以下、ロープ形態でのウールのインジゴ染色についての処理パラメーターを参照する。しかし、工程図及びパラメーターは単に例示的なものである。更に収縮防止処理は示されていない。
【0031】
ウールヤーンのロープ染色のための染色処理法を用いた
臨界的処理パラメーター
ロープ染色でウールヤーンのインジゴ染色のための臨界的処理パラメーター
処理工程図
クリール部分 M/C速度-23mpm (速度範囲16mpm-28mpm)

洗浄箱−1 (繊維精錬:02g/l、プリマゾールNF(湿潤剤)、80℃)

洗浄箱−1 (高温洗浄)50℃

洗浄箱−3 (低温洗浄、室温)
↓ 16mpmの場合 28mpmの場合
染料箱−1(インジゴ染色) 浸漬時間−23.5秒 33.78秒 19.3秒
空気酸化 酸化時間−102 秒 146.6秒 83.78秒

染料箱−2(インジゴ染色) 浸漬時間−23.5秒 33.78秒 19.3秒
空気酸化 酸化時間−102 秒 146.6秒 83.78秒

染料箱−3(インジゴ染色) 浸漬時間−23.5秒 33.78秒 19.3秒
空気酸化 酸化時間−102 秒 146.6秒 83.78秒

染料箱−4(インジゴ染色) 浸漬時間−23.5秒 33.78秒 19.3秒
空気酸化 酸化時間−102 秒 146.6秒 83.78秒

染料箱−5(インジゴ染色) 浸漬時間−23.5秒 33.78秒 19.3秒
空気酸化 酸化時間−102 秒 146.6秒 83.78秒

染料箱−6(インジゴ染色) 浸漬時間−23.5秒 33.78秒 19.3秒
空気酸化 酸化時間−102 秒 146.6秒 83.78秒

染料箱−7(インジゴ染色) 浸漬時間−23.5秒 33.78秒 19.3秒
空気酸化 酸化時間−102 秒 146.6秒 83.78秒

染料箱−8(インジゴ染色) 浸漬時間−23.5秒 33.78秒 19.3秒
空気酸化 酸化時間−102 秒 146.6秒 83.78秒

洗浄箱−4 (高温洗浄)50℃

洗浄箱−5 (高温洗浄)50℃

洗浄箱−6 (酢酸 10g/l 、洗浄 60℃、pH 5-6)

洗浄箱−7 (酢酸 10g/l 、洗浄 40℃、pH 5)

乾燥(水蒸気加熱シリンダー、水蒸気圧 4.5バールまで)
【0032】
繊維精錬工程については上記を参照する。水酸化ナトリウムは木綿のための通常の繊維精錬剤であるが、水酸化ナトリウムはウールに対しては用いることができず、好ましい薬剤は洗剤及び湿潤剤であることが判明している。
【0033】
更に、染色工程に続き、高温洗浄した染色ウールを、酢酸で洗浄する。なぜなら、それはどのような伸び損失でも取り戻すのに役立つからである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウール及びウール混合物を、収縮防止剤を含浸させることにより予め処理する工程にかけ、前記予め処理したウール及びウール混合物ヤーンをインジゴ染色し、後染色する工程にかけ、然も、前記染色及び後染色の工程が、前記予め処理したウール及びウール混合物をインジゴ染料浴中で含浸させ、次に毎回酸化工程を行う一つの工程又は複数の工程を含む、インジゴ染色方法。
【請求項2】
収縮防止組成物が、0.3〜0.5g/lの活性酸、1.5〜3.0g/lの硫酸ナトリウム、及び3.0〜5.0g/lのジクロロイソシアヌル酸ナトリウム無水物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
収縮防止組成物が3.5〜4.0g/lのpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1.5〜3.0g/lのメタ硫酸ナトリウムを組成物に添加する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ウールを、ばらばらの状態、トップ、かせ、パッケージ、例えば、コーン、チーズ、及びビーム、ヤーンロープ/シート、及び織物の形態のウールから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
含浸及び酸化工程のウールの機械速度が、16〜28mpmである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
染料浴が、1.5〜3.0g/lの苛性ソーダ、1.8〜3.0g/lのヒドロ亜硫酸ナトリウム、0.5〜5.0g/lのインジゴ、0.05〜0.5g/lのイオン性湿潤剤(プリマゾールNF−燐酸エステルの塩)、0.05〜0.5g/lのイオン性分散剤(セタモールWS−芳香族スルホン酸の縮合生成物)の組成を有し、25℃〜35℃の染料浴温度、及び11.2〜12.5のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
実質的にここに記載し、例示したウール及びウール混合物のインジゴ染色法。


【公表番号】特表2007−518884(P2007−518884A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508890(P2005−508890)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000318
【国際公開番号】WO2005/026435
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(506094655)マルワ インダストリーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】