説明

エアコン用スプレー製品

【課題】従来の噴射力を維持又は増大させても、エアコンに設けられたフィンに対して噴射する際に、薬液の跳ね返りが少ないエアコン用スプレー製品を提供する。
【解決手段】噴射部において、噴孔を挟んだ対称位置に高さ0.1〜1mmの一対の突起を設けて、楕円状に薬液を噴射する噴射部を備えることを特徴とする、エアコン用防汚、消臭スプレー製品。薬液の跳ね返りを少なくすることが出来るので、薬液を有効に塗布する事が可能。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンに設けられたフィンに対して噴射した際に、薬液の跳ね返りが少ないエアコン用スプレー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用エアコンの汚れや悪臭を除去するため、簡単に使用できるエアコン用スプレー製品が開発されている。このスプレー製品は、エアコンに設けられたフィンを通して内部まで薬液を到達させるために、噴射領域を狭めたり、噴射力を高めたりする工夫がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平11−92795号公報(第1−6頁)
【特許文献2】特開2000−273001号公報(第1−8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが従来の製品においては、噴射領域を狭めたり、高めたりしたことで、エアコンに設けられたフィンに対して噴射する際に薬液の跳ね返りがあり、床面や使用者に薬液が付着するという問題があった。
そこで本発明では、従来の噴射力を維持又は増大させても、エアコンに設けられたフィンに対して噴射する際に、薬液の跳ね返りが少ないエアコン用スプレー製品を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、エアコンのフィンの伸長方向と噴射パターンとの関係が薬液の跳ね返りに影響を及ぼすとの知見を得た。そして薬液の跳ね返りを少なくするための要件についてさらに検討を進めた結果、以下の(1)〜(5)で説明されるエアコン用スプレー製品によって目的が達成されることを見出し本発明に至った。
(1)面に対して楕円状に薬液を噴射する噴射部を備えることを特徴とするエアコン用スプレー製品。
(2)前記噴射部において、噴孔を挟んだ対称位置に一対の突起を設けることを特徴とする(1)に記載のエアコン用スプレー製品。
(3)前記突起の突出高が0.1〜1mmであることを特徴とする(2)に記載のエアコン用スプレー製品。
(4)前記薬液がエアゾール剤であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のエアコン用スプレー製品。
(5)(1)に記載のエアコン用スプレー製品を用いて、エアコンに設けられたフィンに対して、フィンの伸長方向と楕円の長径方向とを一致させて薬液を噴射する方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明のエアコン用スプレー製品は、従来の噴射力を維持又は増大させても、エアコンに設けられたフィンに対して噴射した際に、薬液の跳ね返りを少なくすることができる。またエアコンのフィンに対して薬液をむらなく噴射することができるため、薬液を有効に塗布することが可能である。その結果、優れた洗浄効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のエアコン用スプレー製品(以下、「本発明のスプレー製品」とも言う)は、楕円状に薬液を噴射する噴射部を備えたものであって、エアゾール製品、手動式スプレー製品等として用いることができる。
【0007】
次に、本発明のスプレー製品について、図面を用いて具体的に説明する。図1に記載されるように、基部1aと噴射部1bからなる噴射ボタン1は、バルブ5と連結されて本体4に取り付けられている。そして、本体4の内部には薬液が充填されている。また、図2に拡大して示すように噴射部1bにおける噴射面1cには噴孔2(直径D:0.5〜1mm)が開口している。さらに噴射面1c上には噴孔2を挟んで対称位置に一対の突起3a、3bが突出している。尚、突起3a、3bの突起幅Wに制限はないが、噴口2の直径Dに対して50〜80%とするのが望ましい。また突起3a、3bは0.1〜1mmの突出高Hをもち、突起3a、3bの周壁Bは噴孔2に対して、図示するように略垂直となるように設けられているか、テーパー状又は逆テーパー状、すなわち噴孔2にかぶさる方向又はその逆方向に傾斜していてもよい。尚、突起3a、3bはそれぞれ複数に分割されて、全体として一つの突起となる構成でもよい。このような突起3a、3bを備えることで、噴射の際突起方向への広がりが抑えられるため、突起3a、3bの存在しない開放方向により広がる。その結果、噴射パターンが楕円状になる。さらに、上記の突出高Hの長さや周壁Bの傾斜を調節することにより、楕円の形状が適宜変更可能である。また、突起3a、3bは噴射される薬液と接触することから、薬液に耐性をもつ材質とすることがよく、例えば、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン等の樹脂を用いるのがよい。噴射部1bとしては、具体的にはワイド噴口F−180(0.8)(丸一社製)等を用いることができる。また、噴射ボタン1の代わりに、図3に示すような、トリガー式キャップ8を用いてもよい。トリガー式キャップ8は、本体4(図1参照)の上端部に嵌合されるカバー部9と、カバー部9に揺動可能に枢支されている操作部10とから構成されている。さらに操作部10は、図1および図2に記載と同様の噴射部1bと、その下方に設けられたトリガーと称せられる操作用の操作レバー11から構成されている。
【0008】
本発明の噴射部からエアコンのフィンに薬液を噴射する際は、図4に示すように楕円状である噴射領域7の長径方向をフィン6の伸長方向と一致させる。このためには、フィンの伸長方向と、突起3a、3bを結ぶ方向が垂直となるようにする。また、噴射部1bを回転自在にすれば、通常の使用形態のまま、フィンの伸長方向に合わせて突起3a、3bの並びを調節できる。すなわち、図示するような噴射部1bならば、フィンの伸長が縦方向である場合に効果的となる。
【0009】
本発明の噴射部からフィンまで約20cmの距離から噴射した場合には、長径10〜20cm、短径5〜10cmの楕円状となるのが好ましい。また噴射される薬液の平均粒子径は、100〜200μmとなるのが好ましい。この平均粒子径はロージンラムラー計算法に基づいて、噴射距離50cmでのD50値(検出された粒子の体積を累積し、累積値が50%となった時点の粒子径)として求められるものである。
【0010】
本発明のスプレー製品は、エアコンのフィンは勿論、その内部に薬液を到達させるために、噴射力を49mN/5cm以上、好ましくは98mN/5cm以上とするのがよい。さらに噴射量を75〜180g/30秒、好ましくは90〜150g/30秒とするのがよい。
【0011】
このような噴射力や噴射量とするには、本発明のスプレー製品をエアゾール製品とするのがよく、例えば、バルブのステムとアンダータップの穴径を大きくして、ベーパータップを小さくする又は無くしたり、内圧を上げる等して所期の条件に調整すればよい。具体的には、ステム穴径として0.5mm×2個〜1.2mm×3個、アンダータップ穴径として2.0〜2.2mm、ベーパータップ穴径として0.3〜2mm又は無し、内圧は0.3〜0.5Mpaとすることが挙げられる。
【0012】
本発明のスプレー製品は、洗浄剤、抗菌剤、防黴剤、消臭剤、芳香剤、防錆剤、消泡剤、PH調整剤、溶剤、噴射剤、界面活性剤等から選ばれたそれぞれの1種又は2種以上を組合せて薬液として用いることができる。例えば、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミン、アルキルポリグリコシド、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、加水分解コラーゲンペプチド塩、アシルメチルタウリン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキル硫酸塩、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩、ラニネートおよびその塩、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアミン塩、アルキルアミドプロピルアミノオキシド、アルキルベタイン、酢酸ベタイン、脂肪酸石鹸等の洗浄剤;PCMX、IPBC、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヒノキチオール、フェノール系化合物、ポリフェノール、カテキン、タンニン、これらの誘導体等の天然物、2−(4'−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール等の抗菌剤、防黴剤;ラウリルメタアクリレート、ゲラニルクロトネート、ミリスチン酸アセトフェノン、グリオキザール、アビエチン酸、フラボノイド、ポリフェノール等の消臭剤;バラ油、ラベンダー油、ベルガモット油、シナモン油、シトロネラ油、レモン油、ハッカ油等の精油類;ピネン、リナロール、メントール、シトラール、シトロネラール、バニリン、ボルネオール等の芳香物質類、これらの配糖体等の芳香剤;クエン酸三ナトリウム、クエン酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の防錆剤;シリコン等の消泡剤;クエン酸、燐酸一水素ナトリウム、燐酸ニ水素ナトリウム、燐酸一水素カリウム、燐酸ニ水素カリウム等のPH調整剤;水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、変性アルコール等のアルコール、エチレングリコール、ブチルジグリコール等のグリコール、メチルエチルケトン等のケトン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、ケロシン等の脂肪族炭化水素等の溶剤;プロパン、プロピレン、n−ブタン、イソブタン等の液化石油ガス、ジメチルエーテル、CFC、HCFC、HFC等のクロロフロロカーボン等の液化ガス、窒素、炭酸ガス、圧縮空気、亜酸化窒素等の圧縮ガス等の噴射剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・アセチレニックグリコール等の界面活性剤等が挙げられる。これらの中でもポリフェノール及びその由来物質は、フィンに付着した花粉やハウスダストを包み込む働きをもつことから、洗浄効果をよりよくするために用いることがよい。また必要に応じて、殺虫剤、忌避剤、防虫剤、撥水剤、分解酵素、帯電防止剤等を用いてもよい。
【実施例】
【0013】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
実施例1:跳ね返り試験
市販のエアコン用スプレー製品(エアコン洗浄スプレー;アース製薬社製、以下、「市販品」とも言う)と、図3に記載する本発明のスプレー製品とを用いて、以下の試験を行った。本発明のスプレー製品では、前記市販品の噴射部を図2に記載したもの(ワイド噴口F−180(0.8)(丸一社製))に換えたものを使用した。尚、噴孔径はいずれも0.8mmを用い、噴射部以外は同一条件とした。
【0015】
エアコン用スプレー製品の缶に感熱紙を巻きつけ、エアコンのフィンに対して約5cmの距離から10秒間薬液を噴射し、フィンから手元への薬液の跳ね返りを感熱紙の濡れを見て観察した。同時にエアコンの約1m下に感熱紙を敷き、同様にして床面への跳ね返りを観察した。
【0016】
試験の結果、市販品では略真円状に薬液は噴射され、缶への跳ね返りが見られ、床面においてはエアコンの下から18cmの距離まで跳ね返りが見られた。一方、本発明のスプレー製品では、楕円状に薬液は噴射され、缶及び床面のいずれにも跳ね返りは確認されなかった。平均粒子径(D50)を測定したところ、市販品では約244μm、本発明のスプレー製品では約109μmであった。
【0017】
実施例2:洗浄試験
図3に記載する本発明のスプレー製品を用いて以下の試験を行った。エアコンのフィンに人工汚垢(牛脂、大豆油、脂肪酸、クロロホルム及び赤色色素の混合物)を50g塗布し、エアコン用スプレー製品を約5cmの距離から約30秒間噴射し、赤色色素の除去状態を目視で観察して洗浄効果の評価とした。さらに試験の精度を高めるためにフィンに噴射した薬液を採取して乾燥させ、その中に含まれた人工汚垢の重量を測定した。そして人工汚垢の塗布量との関係から除去率(%)を算出した。
【0018】
試験の結果、フィンに塗布した人工汚垢はきれいに洗浄されていた。この時の除去率は99%であり優れた洗浄効果を奏することが確認された。
【0019】
また、エアコンのフィンに対する塗布面積、噴射力を測定したところ、本発明のスプレー製品は、市販品と比べて、塗布面積は約3倍、噴射力は約1.5倍に増大しており、これらによってむらのない優れた洗浄効果が得られたものと考えられる。
【0020】
一方、噴射力が高まればエアコンのフィンからの跳ね返りが増えると思われるが、本発明のスプレー製品では、跳ね返りがなく予想外の効果を奏するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明のスプレー製品の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明のスプレー製品の噴孔周辺を示す斜視図である。
【図3】図3は本発明のスプレー製品の他の例を示す斜視図である。
【図4】図4はフィンに対する噴射パターンを示す模式図である。
【符号の説明】
【0022】
1 噴射ボタン
1a 基部
1b 噴射部
1c 噴射面
2 噴孔
3a 突起
3b 突起
4 本体
5 バルブ
6 フィン
7 噴射領域
8 トリガー式キャップ
9 カバー部
10 操作部
11 操作レバー
B 周壁
H 突出高
D 直径
W 突起幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面に対して楕円状に薬液を噴射する噴射部を備えることを特徴とするエアコン用スプレー製品。
【請求項2】
前記噴射部において、噴孔を挟んだ対称位置に一対の突起を設けることを特徴とする請求項1に記載のエアコン用スプレー製品。
【請求項3】
前記突起の突出高が0.1〜1mmであることを特徴とする請求項2に記載のエアコン用スプレー製品。
【請求項4】
前記薬液がエアゾール剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアコン用スプレー製品。
【請求項5】
請求項1に記載のエアコン用スプレー製品を用いて、エアコンに設けられたフィンに対して、フィンの伸長方向と楕円の長径方向とを一致させて薬液を噴射する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−21107(P2006−21107A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200848(P2004−200848)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】