説明

エアゾールキャップ及びボタン

【課題】エアゾール容器20のステム21に装着されたボタン30を覆うようにエアゾール容器20に装着され、ボタン30の誤操作による噴射口からの噴射を防止するエアゾールキャップ1であって、操作性及び取扱い性に優れ、かつステムに装着されたボタンの高さがある程度変化しても、エアゾール容器に装着させた状態で噴射状態を維持することが可能なエアゾールキャップを提供する。
【解決手段】天板部2に形成され、係合片4と係合して係合状態を維持するストッパー部5、を備え、ストッパー部5と係合片4とが係合状態にあるときに、ボタン30が押圧片3によって押圧されることによって、押圧状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器のステムに装着されたボタンを覆うようにエアゾール容器に装着され、ボタンの誤操作による噴射口からの噴射を防止するエアゾールキャップに係り、特に、噴射口からの噴射状態を維持して残留ガスを排出させることが可能なエアゾールキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
消臭剤や殺虫剤等のように、エアゾール容器の内容物を噴射口から外部へ噴射させるエアゾール製品が知られている。一般に、消臭剤や殺虫剤等のエアゾール製品に使われているエアゾール容器の内部には液状、粉状の内容物と一緒に噴射剤として圧縮された可燃性ガスが充填されており、エアゾール容器に装着されたエアゾールキャップによってステムが押圧されたときに、内容物が噴射されるように構成されている。
【0003】
ところで、エアゾール容器は、液状、粉状の内容物を使い切った後でも内容物放出用の可燃性ガスが残っていることが多い。可燃性ガスは火気があれば引火して爆発燃焼する可能性のあるガスであるため、可燃性ガスが残ったままの状態でエアゾール容器を廃棄すると思わぬ事態が生じかねない。このため、残留ガスを全て排出させてからエアゾール容器を廃棄することができるように、残留ガス排出機構を備えたエアゾールキャップが提案されている(特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1の残留ガス廃棄機構によれば、押ボタンと一体に形成したガス抜きモード設定用レバーをキャップの外周面に露出させ、このガス抜きモード設定用レバーを少し押し下げてから反時計回り方向に回動することにより、ガス抜きモード設定用レバーの梁状片部がテーパ面に案内されてガス抜きモード設定用レバーが容器本体に向けて移動する。これにより、ガス抜きモード設定用レバーとともに、押ボタンが容器本体に向けて移動し、押ボタンでステムを容器本体内に押し下げて容器本体内の残留ガスを放出する。
【0005】
また、特許文献2には、エアゾール用キャップの天板に設けられた一対の折り曲げ板を利用し、一対の折り曲げ板を折り曲げてからキャップをエアゾール容器に装着するだけでエアゾール容器内の残留ガスを排出できるように構成されたキャップが開示されている。
【特許文献1】特開2004−168356号公報
【特許文献2】特開2000−191062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の残留ガス廃棄機構では、ガス抜きモード設定用レバーがキャップの外周面に露出している。このため、通常の使用時に、ガス抜きモード設定用レバーが邪魔になる場合や、誤操作を起こす場合があり、取扱い性の観点から改良の余地が残されている。
【0007】
また、特許文献2に記載のキャップにおいては、一対の折り曲げ板を互いに折り曲げ対向させた状態で、折り曲げ板の先端に設けられた凹部と凸部とを嵌合させなければならず、操作が煩雑な部分がある。さらに、ステムに装着されたボタンの高さが変化した場合には、キャップ自体をエアゾール容器に装着させることが不可能となり、噴射状態を維持することができなくなってしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、操作性及び取扱い性に優れ、かつステムに装着されたボタンの高さがある程度変化しても、エアゾール容器に装着させた状態で噴射状態を維持することが可能なエアゾールキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成により達成される。
(1) エアゾール容器のステムに装着されたボタンを覆うように該エアゾール容器に装着され、該ボタンの誤操作による噴射口からの噴射を防止するエアゾールキャップであって、
当該エアゾールキャップの天板部に形成され、前記ボタンを押圧する押圧片と、
前記押圧片から垂設され、前記ボタンの押圧状態を維持する際に係合される係合片と、
前記天板部に形成され、前記係合片と係合して係合状態を維持するストッパー部と、を備え、
前記ストッパー部と前記係合片とが係合状態にあるときに、前記ボタンが前記押圧片によって押圧されることによって、押圧状態を維持することを特徴とするエアゾールキャップ。
(2) 前記ボタンの上面部は曲面形状を有し、
前記押圧片の先端部は、前記曲面形状に対応した湾曲形状を有することを特徴とする(1)に記載のエアゾールキャップ。
(3) 前記押圧片は前記天板部に切り込みによって形成され、
前記切り込みの略始点位置から略終点位置とを結ぶ薄肉の山折り部が折り曲げられ、前記切り込みの始点から前記略始点位置まで及び前記切り込みの終点から前記略終点位置までの部位が撓んだ状態で、前記ボタンが前記押圧片によって押圧されることによって、押圧状態を維持することを特徴とする(1)または(2)に記載のエアゾールキャップ。
(4) 前記ストッパー部は、前記係合片と並行に形成された一対の狭持片からなり、
前記係合片が前記一対の狭持片によって狭持されたときに前記係合状態が維持されることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のエアゾールキャップ。
(5) エアゾール容器のステムに装着されたボタンであって、
(1)〜(4)の何れかに記載のエアゾールキャップの押圧片によって押圧され、該押圧片の先端部の形状に対応した曲面形状の上面部を有することを特徴とするボタン。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエアゾールキャップによれば、押圧片とストッパー部とが同じ天板部に設けられている。すなわち、押圧片とストッパー部とはエアゾールキャップに一体となって形成されている。したがって、エアゾールキャップは通常の使用状態(つまり、押圧状態を維持する必要のない場合)のときにはエアゾール容器から取り外されるので、これらの構成部位が邪魔になることがなく、操作性及び取扱い性に優れたエアゾールキャップを提供することが可能である。
【0011】
また、本発明のエアゾールキャップ及びボタンによれば、押圧片の先端部がボタンの上面部の形状に対応した湾曲形状を有し、ボタンの上面部は湾曲形状に対応した曲面形状を有しているので、押圧片によってボタンを押圧した際には、曲面形状に湾曲形状が嵌まり込むようになっている。したがって、ストッパー部によって係合状態が維持されるだけでなく、特定形状同士の嵌め合いによっても押圧状態の維持効果を発揮するので、容易に押圧状態が解除されることがない。また、曲面形状であればエアゾールキャップをどのような方向から装着させた場合でも押圧片の先端部の湾曲形状とボタンの上面部の曲面形状とを嵌め合せることができるので、ユーザはエアゾールキャップを装着させる際の装着位置に気を配る必要がない。
【0012】
本発明のエアゾールキャップによれば、押圧片は切り込みの略始点位置から略終点位置とを結ぶ薄肉の山折り部によって折り曲げ可能に構成されている。すなわち、山折り部よりもくい込んだ位置に切り込みの始点と終点がくるように形成されているので切り込みの始点から略始点位置まで及び切り込みの終点から略終点位置までの部位が可撓性を有するように形成されている。したがって、ある程度の高さの範囲に対応したボタンがステムに装着されていた場合でも、山折り部を折り曲げて係合片を係合位置に固定した状態でエアゾールキャップをエアゾール容器に装着させたときに、可撓性を有する部位によってその高さの範囲を吸収することが可能である。つまり、ボタンに設計変更等があった場合でも変更毎にエアゾールキャップを新しいものと交換する必要がなく、ある程度の寸法差に対応したエアゾールキャップを提供することが可能である。
【0013】
また、本発明のエアゾールキャップによれば、係合片は、押圧片の中央位置から垂設され、係合片が一対の狭持片によって狭持されるように構成されている。つまり、押圧片によってボタンが押圧された際に、係合片はその押圧方向と垂直な方向から支えるようになっているので、ステムの反発力に反して押圧状態を維持する際に補助的な役割を果たすことが可能である。さらに、係合片は狭持片に狭持されているので、容易に押圧状態が解除されることがなく、エアゾール容器の内容物を最後まで排出させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかるエアゾールキャップの実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態のエアゾール容器に装着されたエアゾールキャップの上面図である。図2は、図1に示したエアゾールキャップのA−A線断面図である。
【0015】
本実施形態に係るエアゾールキャップ1は、エアゾール容器20のステム21に装着されたボタン30を覆うようにエアゾール容器20のマウンテンカップ部22に装着され、ボタン30の誤操作による噴射口31からの噴射を防止する役割を果たしている。
【0016】
(エアゾールキャップ1の構造について)
図1及び図2に示すように、エアゾールキャップ1は略円筒形状を有し、上面には平面状の天板部(上面部)が形成されている。エアゾールキャップ1は、主として、エアゾールキャップ1の天板部2に形成され、ボタン30を押圧する押圧片3と、押圧片3から垂設され、ボタン30の押圧状態を維持する際に係合される係合片4と、天板部2に形成され、係合片4と係合して係合状態を維持するストッパー部5と、を備えている。
【0017】
押圧片3はエアゾールキャップ1の天板部2に切り込み6によって形成され、切り込み6の略始点位置7から略終点位置8とを結ぶ薄肉の山折り部9が折り曲げ可能に形成されている。図2に示すように係合片4は、断面略直角三角形状の薄い板状に形成され、押圧片3の中央位置12から垂設されている。つまり、押圧片3が折り曲げ部9から折り曲げられる前の状態では、係合片4の斜辺15がボタン30の噴射口31と反対の方向(矢印X方向)に向いて位置し、長辺13が天板部2と並行になるように配置されている。
【0018】
また、図1に示すように押圧片3の先端部19は、ボタン30の上面部32の形状に対応したR形状(湾曲形状)に形成されている。そして本実施形態では、ボタン30の上面部32は押圧片3の先端部19のR形状に対応したR球形状(曲面形状)に形成されている。このように、互いの形状を対応させた形状に形成することによって、押圧片3によってボタン30を押圧した際に、R球形状にR形状が嵌まり込むように構成されている。
【0019】
ストッパー部5は、係合片4と並行に形成された一対の狭持片5,5であって、係合片4が狭持片5,5によって狭持されたときに係合位置が固定される。つまり、狭持片5,5間の間隔は係合片4の厚さL1にほぼ等しく、山折り部9を折り曲げた際に係合片4の短辺14が狭持片5,5の間に狭持されるようになっている。本実施形態では、山折り部9はエアゾールキャップ1の略中心部18を通るように形成され、狭持片5,5は山折り部9を折り曲げた際に、短辺14を狭持できるように略中心部12から長さL3の範囲以内に配置されるように構成されている。
【0020】
(エアゾールキャップの作用について)
次に、図3〜図5を参照してエアゾールキャップ1の作用について説明する。ここでは、非噴射状態から噴射維持状態へ移行させる場合の作用について詳細に説明する。図3(a)は、エアゾールキャップ1の押圧片3を折り曲げた状態の断面図、図3(b)はエアゾールキャップ1が装着される前のボタン付エアゾール容器の側面図、図4は、噴射維持状態のエアゾールキャップ1の上面図、図5は、押圧片3を折り曲げたエアゾールキャップ1をエアゾール容器20に装着させたときの断面図である。
【0021】
ユーザは、図1のように押圧片3が天板部2と同じ平面にある状態のエアゾールキャップ1をエアゾール容器20から取り外す。次に、図3(a)に示すように山折り部9を支軸として天板部2から押圧片3をほぼ直角に折り曲げるとともに、係合片4を狭持部5,5の間へ挿入させて、固定させる。このとき、係合片4の斜辺15は下向きに(矢印Y方向)に位置し、長辺13が天板部2と垂直になるように位置する。このように、長辺13が押圧片3を垂直方向から支えるようになっているので、ステム21の反発力に反して押圧状態を維持する際の補助的な役割を果たし容易に押圧状態が解除されることを防止することが可能である。
【0022】
次に、図3(a)の状態のエアゾールキャップ1を図3(b)のボタン付エアゾール容器に装着させると図5に示すように押圧片3がボタン30の略中央部を押圧し、押圧状態が維持されてエアゾール容器の内容物が噴射口31からの噴射状態を維持することが可能となる。また、エアゾールキャップ1を装着させると、押圧片3の先端部19のR形状とボタン30の上面部32のR球形状とが嵌め合わされた状態となるので、容易に押圧状態が解除されることがなく、押圧状態の維持効果を発揮することができる。また、R球形状であればエアゾールキャップ1をどのような方向から装着させた場合でも押圧片3の先端部19のR形状とボタン30のR球形状とを嵌め合せることができるので、ユーザはエアゾールキャップ1を装着させる際の装着位置に気を配る必要がない。
【0023】
ところで、ボタン30の高さによっては、切り込み6の始点10から略始点位置7まで及び切り込み6の終点11から略終点位置8までの部位が撓んだ状態で、押圧片3がボタン30を押圧するケースがある。このようなケースでも本実施形態のエアゾールキャップ1によれば、可撓性を有する部位によってその高さの範囲を吸収することが可能である。つまり、ある程度の高さの範囲に対応したボタン30がステム21に装着されていた場合でも、山折り部9を折り曲げて係合片4を係合位置に固定した状態で噴射口31からの噴射状態を維持することが可能である。
【0024】
また、本実施形態のエアゾールキャップによれば、噴射維持状態において押圧辺3が折り曲げられることによって、天板部2に開口部17が形成されるので、噴射口31から噴射されたエアゾール容器の内容物を開口部17から外部へ放出させることが可能である。したがって、噴射口31からの噴射の勢いを殺してから外部へ放出するので、誤って火気に引火するような危険な事態を生じることがなく、安全な噴射維持状態を実現するエアゾールキャップ1を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のエアゾール容器に装着されたエアゾールキャップの上面図である。
【図2】図1に示したエアゾールキャップ1のA−A線断面図である。
【図3】(a)図は、エアゾールキャップの押圧片を折り曲げた状態の断面図、(b)図はエアゾールキャップが装着される前のボタン付エアゾール容器の側面図である。
【図4】噴射維持状態のエアゾールキャップの上面図である。
【図5】押圧片を折り曲げたエアゾールキャップをエアゾール容器に装着させたときの断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1:エアゾールキャップ、2:天板部、3:押圧片、4:係合片、5:狭持片、6:切り込み、7:略始点位置、8:略終点位置、9:折り曲げ部、10:始点部、11:終点部、12:中央位置、13:長辺、14:短片、15:斜辺、19:先端部、20:エアゾール容器、21:ステム、22:マウンテンカップ、30:ボタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムに装着されたボタンを覆うように該エアゾール容器に装着され、該ボタンの誤操作による噴射口からの噴射を防止するエアゾールキャップであって、
当該エアゾールキャップの天板部に形成され、前記ボタンを押圧する押圧片と、
前記押圧片から垂設され、前記ボタンの押圧状態を維持する際に係合される係合片と、
前記天板部に形成され、前記係合片と係合して係合状態を維持するストッパー部と、を備え、
前記ストッパー部と前記係合片とが係合状態にあるときに、前記ボタンが前記押圧片によって押圧されることによって、押圧状態を維持することを特徴とするエアゾールキャップ。
【請求項2】
前記ボタンの上面部は曲面形状を有し、
前記押圧片の先端部は、前記曲面形状に対応した湾曲形状を有することを特徴とする請求項1に記載のエアゾールキャップ。
【請求項3】
前記押圧片は前記天板部に切り込みによって形成され、
前記切り込みの略始点位置から略終点位置とを結ぶ薄肉の山折り部が折り曲げられ、前記切り込みの始点から前記略始点位置まで及び前記切り込みの終点から前記略終点位置までの部位が撓んだ状態で、前記ボタンが前記押圧片によって押圧されることによって、押圧状態を維持することを特徴とする請求項1または2に記載のエアゾールキャップ。
【請求項4】
前記ストッパー部は、前記係合片と並行に形成された一対の狭持片からなり、
前記係合片が前記一対の狭持片によって狭持されたときに前記係合状態が維持されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエアゾールキャップ。
【請求項5】
エアゾール容器のステムに装着されたボタンであって、
請求項1〜4の何れかに記載のエアゾールキャップの押圧片によって押圧され、該押圧片の先端部の形状に対応した曲面形状の上面部を有することを特徴とするボタン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−204145(P2007−204145A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28847(P2006−28847)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】