説明

エアバッグドア

【課題】少ないエネルギーで基材を破断させてエアバッグドアの適切な開放変位を実現する。
【解決手段】ドアパネル20の外部輪郭ラインに沿うよう形成したドア破断予定線40は、ドアパネル20の先端縁22に沿って延在する先端破断予定線42と、該ドアパネル20の側端縁24,24に沿って延在する側端破断予定線44,44とからなる。そして側端破断予定線44,44は、先端縁22側からヒンジ端縁26側に向け、側端縁24,24から徐々に離間する方向へ延在する斜延部46を有している。すなわち斜延部46は、ドアパネル20の開放変位に際し、基材12が破断し易い方向へ延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグドアに関し、更に詳細には、車両内装部材を構成する基材に設けたドアパネルからなり、このドアパネルの外部輪郭ラインに沿うよう形成したドア破断予定線が、このドアパネルの先端縁側から側端縁側へ回り込むように破断することで、該ドアパネルがそのヒンジ端縁を中心として開放することが許容されるエアバッグドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年生産される殆どの乗用車には、対向車との衝突事故の発生時に乗員保護を図るため、運転席エアバッグ装置および助手席エアバッグ装置が標準的に装備されている。ここで、助手席の乗員保護用のエアバッグ装置50は、例えば図8に例示するように、乗員室内の前方に組付けた車両内装部材であるインストルメントパネル10の内部に、乗員席側から見えないよう格納した状態で搭載されている。このためインストルメントパネル10には、エアバッグ装置50に対応する位置にエアバッグドアAD1が設けられており、該エアバッグ装置50の作動により膨張を開始したエアバッグ52の押圧力により、エアバッグドアAD1を構成するドアパネル20が外方へ開放するようになっている(図10)。
【0003】
エアバッグドアAD1は、その開放態様から分類すると、(a)1枚のドアパネル20から構成される片開きタイプ(図9)、(b)2枚のドアパネル20からなる両開きタイプ(図12)、(c)4枚のドアパネルから構成される四方開きタイプ(図示せず)等が実用化されている。更に、インストルメントパネル10に対する配設態様から分類すると、基材12と別体に形成されて後工程で該基材12に組付けられる基材別体タイプと、基材12に一体的に形成されて常には該基材12の一部として構成される基材一体タイプとに大別される。
【0004】
図8等に例示したエアバッグドアAD1は、(a)のタイプでかつ基材一体タイプのものであって、エアバッグ装置50が作動してエアバッグ52の押圧力がドアパネル20の裏面に加わった場合、該ドアパネル20の外部輪郭ラインに沿うよう形成したドア破断予定線30が、このドアパネル20の先端縁22側から側端縁24,24側へ回り込むように破断することで、当該のドアパネル20がそのヒンジ端縁26を中心として開放することが許容される。ここで、前述したドアパネル20およびその周囲のドア周辺部位にはエアバッグ52の強烈な押圧力が加わるため、エアバッグ装置50に連結されたインサート部材38でエアバッグドアAD1の裏側を支持することで、押圧力に起因した破損を防止するようになっている。なお、このようなエアバッグドアに関する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2001−315605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図8および図9に例示した片開きタイプのエアバッグドアAD1では、基材12に形成されるドア破断予定線30が、ドアパネル20の先端縁22に沿って延在する先端破断予定線32と、該ドアパネル20の側端縁24,24に沿って延在する側端破断予定線34,34とからなる略コ字形を呈しており、ヒンジ端縁26を中心として開放するドアパネル20のパネル開放方向(図9の上下方向)と側端破断予定線34,34の延在方向とが一致している。従ってドア破断予定線30は、先ずエアバッグの押圧力を受けてドアパネル20が浮き上がることでパネル開放方向と交差した先端破断予定線32が破断し、次いでドアパネル20の開放変位に伴ってパネル開放方向に沿った側端破断予定線34,34が破断するようになる(図10)。しかしながら、エアバッグ52の押圧力による基材12の破断力はドアパネル20の開放変位に従って斜め側方(外方)に向けて作用するようになるため、図10および図11に例示するように、実際には側端破断予定線34,34に沿って適切に破断せず、該側端破断予定線34,34の途中から側方(外方)へ逸脱して破断するようになる場合が多い。すなわち基材12は、脆弱化されたドア破断予定線30に沿って適切に破断せずに脆弱化されていない一般部分で破断するようになるため、エアバッグ52の膨張力の多くがエアバッグドアAD1の開放に消費されてしまう不都合があった。
【0006】
なお、図12に例示した両開きタイプのエアバッグドアAD1においても、各々のドアパネル20,20が開放するに際し、図13に例示したように、ドア破断予定線30の側端破断予定線34,34から逸脱して基材12が破断するようになり、前述した片開きタイプのエアバッグドアAD1と同様の不都合が発生し易くなっている。
【0007】
従って本発明は、ドアパネルの開放に際して基材が破断し易い方向へドア破断予定線を延設することで、少ないエネルギーで基材を破断させて該ドアパネルの適切な開放変位を実現するようにしたエアバッグドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、
車両内装部材を構成する基材に設けたドアパネルからなり、前記ドアパネルの外部輪郭ラインに沿うよう形成したドア破断予定線が、このドアパネルの先端縁側から側端縁側へ回り込むように破断することで、該ドアパネルがそのヒンジ端縁を中心として開放することが許容されるエアバッグドアにおいて、
前記ドア破断予定線は、前記ドアパネルの先端縁に沿って延在する先端破断予定線と、該ドアパネルの側端縁に沿って延在する側端破断予定線とからなり、
前記側端破断予定線は、前記先端縁側からヒンジ端縁側に向け、前記側端縁から徐々に離間する方向へ延在する斜延部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエアバッグドアによれば、基材に設けたドア破断予定線における側端破断予定線に、ドアパネルが開放するに際して基材が破断し易い方向へ延在する斜延部を設けた。従って基材は、脆弱化されて最も破断し易いドア破断予定線に沿って破断するため、破断に要するエネルギーが最小限に抑えられるようになり、ドアパネルの開放変位が円滑になされると共に、該ドアパネルを所望とする開放角度まで適切に開放させ得る等の有益な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明に係るエアバッグドアにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお後述する各実施例では、基材、表皮材およびこれらの間に介在される発泡体からなる3層構造の車両内装部材であるインストルメントパネルに、本願のエアバッグドアを設けた場合を例示する。従って、図8〜図13に既出の部材、部位と同一の部材、部位には、同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0011】
(第1実施例)
図1は、インストルメントパネルに実施された第1実施例に係るエアバッグドアを示した説明図である。第1実施例のエアバッグドアADは、外側が表皮材14および発泡体16で覆われた基材12に設けた1枚のドアパネル20からなる片開きタイプであり、前述したエアバッグ装置50が作動してエアバッグ52の押圧力を受けた場合には、図面上方に位置するヒンジ端縁26を中心としてドアパネル20が開放する構造となっている。すなわち、エアバッグドアADの開放時には、ドアパネル20の外側に位置する発泡体16および表皮材14が該ドアパネル20と共に押し上げられるようになっている。このようなエアバッグドアADは、基材12に一体的に形成されて常には該基材12の一部を構成する基材一体タイプであって、表皮材14および発泡体16により開放前には外方からは視認されない。
【0012】
基材12は、例えばポリプロピレン(PP)やAS等に強化剤を添加した合成樹脂素材を材質とする比較的硬質のインジェクション成形部材であって、インストルメントパネル10の意匠形状に応じた形状に成形され、エアバッグドアADは該基材12の成形時にその一部分として同時に形成される。そして、エアバッグドアADを構成するドアパネル20の外部輪郭ラインには、該ドアパネル20の先端縁22側から側端縁24側へ回り込むように延在する略コ字形のドア破断予定線40が形成されている。このドア破断予定線40は、基材12の成形工程時または該基材12の成形後の後工程において、ドアパネル20の外部輪郭ラインに沿って連続状の溝またはミシン目状の細孔群を形成することで得られた脆弱部分である。
【0013】
また、前述した材質からなる基材12は靭性が低く、エアバッグ52の強烈な押圧力が瞬時に加わった場合にエアバッグドアADおよびその周辺部位18が破損し易いため、エアバッグ装置50に連結されたインサート部材38で、これらエアバッグドアADおよび周辺部位18の裏側を支持するようになっている。なおインサート部材38は、例えばオレフィン系の熱可塑性エラストマ等から形成され、矩形筒体状に形成されて周辺部位18を裏側から支持する筒体部38Aと、この筒体部38Aの内側に形成されてドアパネル20を裏側から支持するドア支持部38Bと、筒体部38Aとドア支持部38Bとを連結するヒンジ部38Cとからなっている。
【0014】
表皮材14は、インストルメントパネル10の質感向上を図るために配設されるもので、(a)樹脂シート材から真空成形されたもの、(b)樹脂粉末からパウダースラッシュ成形されたもの、(c)ウレタン原料からスプレー成形されたもの、(d)ウレタン原料から反応射出成形されたもの等が好適に使用され、インストルメントパネル10の外部意匠面形状を前提として厚さが1mm程度に予備成形されたものである。この表皮材14は、例えば表面全体に本革に似せたシボ模様等が再現されている一方、エアバッグドアADに対応した裏面所要位置に、前述したドア破断予定線40に沿った表皮破断予定線36が形成されている。
【0015】
発泡体16は、例えばウレタン原料を発泡させて形成されるウレタンフォームであって、図示しない発泡成形型にセットした前述の基材12および表皮材14の間でウレタン原料を発泡・硬化させることで、5〜10mm程度の厚さでこれら基材12と表皮材14との間に介在させたものである。従って、表皮材14の適宜部位を指先等で押圧すると該押圧部位が陥凹的に変形するようになり、インストルメントパネル10の触感向上に寄与するようになっている。また万一、衝突事故時に前方へ投げ出された乗員がインストルメントパネル10の外面に衝突した場合には、その衝撃を吸収して傷害程度の軽減を図ることにも寄与する。
【0016】
そして第1実施例のエアバッグドアADでは、エアバッグ装置50の作動時におけるドアパネル20の円滑な開放を実現するため、該ドアパネル20の先端縁22側から側端縁24側へ回り込むように破断する前述のドア破断予定線40の形態を、図9等に例示した従来のものから変更したものとなっている。具体的にドア破断予定線40は、図1に例示したように、略矩形状のドアパネル20の先端縁22に沿って延在する先端破断予定線42と、該ドアパネル20の側端縁24,24に沿って延在する側端破断予定線44,44とからなり、かつ側端破断予定線44,44が、先端縁22側からヒンジ端縁26側に向け、側端縁24,24から側方(外方)へ徐々に離間する方向へ延在する斜延部46を有していることを特徴としている。
【0017】
この斜延部46は、先端破断予定線42から所要距離離間した位置を基点Pとして、該基点Pからヒンジ端縁26の間に延在している。ここで、先端破断予定線42から基点Pまでの間隔W1は、後述する本願発明者が行なった実験の結果に基づき、該先端破断予定線42からヒンジ端縁26までの開放幅Wの0.7倍以下、換言すると0≦W1/W≦0.7となる範囲内で適宜に設定されるようになっている。すなわち側端破断予定線44,44は、W1/W=0の条件では図4に例示するように、その全体が斜延部46として延在した態様となり、また0<W1/W≦0.7の条件では図1や図5に例示したように、基点Pとヒンジ端縁26との間が斜延部46となった態様となり、W−W1が該斜延部46の延在幅W2となる。
【0018】
更に、側端縁24,24に対する斜延部46の延在角度Rは、5〜30度の範囲内に設定されている。この延在角度Rの範囲設定も、後述する本願発明者が行なった実験の結果に基づいて算出されたものである。
【0019】
すなわち第1実施例のエアバッグドアADでは、基材12に形成されたドア破断予定線40における側端破断予定線44,44が、図9に例示した従来のエアバッグドアAD1のドアパネル20が開放するに際して、基材12が破断した方向と略一致する方向へ延在する斜延部46を有している。換言すると側端破断予定線44,44は、エアバッグドアADのドアパネル20が開放するに際し、基材12が破断し易い方向へ延在するように形成されている。従ってエアバッグドアADの開放時では、図2および図3に例示するように、ドア破断予定線40の先端破断予定線42から側端破断予定線44,44に沿って基材12がスムーズに破断するようになる。よって基材12は、脆弱化されて最も破断し易いドア破断予定線40に沿って必然的に破断するため、破断に要するエネルギーが最小限に抑えられるようになり、ヒンジ部38Cを中心として開放するインサート部材38のドア支持部38Bに支持されたドアパネル20は、その開放変位が円滑になされると共に所望の開放角度まで適切に開放するようになる。
【0020】
なお、表皮材14に形成した前述の表皮破断予定線36の延在形状もドア破断予定線40と略同一形状に形成すると共に、該ドア破断予定線40に沿ったスリット等を発泡体16に形成するようにすれば、図2および図3に例示したように、ドアパネル20の開放に際して形成された基材12の基材破断縁48と、表皮材14の破断ラインおよび発泡体16の破断ラインとが一致するようになる。従って、ドアパネル20の開放により開口形成されたエアバッグ挿通口28へ発泡体16が殆ど露出しないため、該エアバッグ挿通口28を介して膨張展開するエアバッグ52が発泡体16と接触する不都合も好適に回避される。
【0021】
(第2実施例)
図6は、インストルメントパネルに実施された第2実施例に係るエアバッグドアを示した説明図である。第2実施例のエアバッグドアADは、外側が表皮材14および発泡体16で覆われた基材12に設けた2枚のドアパネル20,20からなる両開きタイプであり、前述したエアバッグ装置50が作動してエアバッグ52の押圧力を受けた場合には、夫々のドアパネル20,20がヒンジ端縁26,26を中心として図面の上方および下方へ開放する構造となっている。
【0022】
そして第2実施例のエアバッグドアADでは、エアバッグ装置50の作動時における両ドアパネル20,20の円滑な開放を実現するため、各ドアパネル20,20の先端縁22側から側端縁24側へ回り込むように破断する略H字形を呈するドア破断予定線40の形態を、第1実施例と同様の形態に変更したものとなっている。具体的にドア破断予定線40は、図6に例示したように、略矩形状の両ドアパネル20,20の先端縁22に沿って延在する(境界ラインに沿って延在する)先端破断予定線42と、各々のドアパネル20,20の側端縁24,24に沿って延在する側端破断予定線44,44とからなり、かつ側端破断予定線44,44が、先端縁22側からヒンジ端縁26側に向け、側端縁24,24から外方へ徐々に離間する方向へ延在する斜延部46を有していることを特徴としている。すなわち各々のドアパネル20,20は、先端破断予定線42を共通として対向的に設けた片開きタイプと見なすことができるので、各々のドアパネル20,20の側端縁24,24に隣接する側端破断予定線44,44を、第1実施例と同様に該側端縁24,24から外方へ徐々に離間する方向へ延設したものである。
【0023】
夫々のドアパネル20,20に対応した側端破断予定線44,44は、第1実施例と同等の設定条件で形成されており、先端破断予定線42から所要距離離間した位置を基点Pとして、該基点Pからヒンジ端縁26の間に斜延部46が延在している。すなわち、先端破断予定線42から基点Pまでの間隔W1は、該先端破断予定線42からヒンジ端縁26までの開放幅Wの0.7倍以下、換言するとW1/W=0〜0.7の範囲内で適宜に設定されており、W−W1が斜延部46の延在幅W2となる。更に、側端縁24,24に対する斜延部46の延在角度Rは、5〜30°の範囲内で設定されている。
【0024】
すなわち第2実施例のエアバッグドアADでも、基材12に形成されたドア破断予定線40における側端破断予定線44,44が、図12に例示した従来のエアバッグドアAD1の各ドアパネル20,20が開放するに際して、基材12が破断した方向と略一致する方向へ延在する斜延部46を有している。換言すると側端破断予定線44,44は、エアバッグドアADの各ドアパネル20,20が開放するに際し、基材12が破断し易い方向へ延在するように形成してある。従ってエアバッグドアADの開放時では、図7に例示するように、ドア破断予定線40の先端破断予定線42から側端破断予定線44,44に沿って基材12がスムーズに破断するようになる。よって基材12は、脆弱化されて最も破断し易いドア破断予定線40に沿って必然的に破断するため、破断に要するエネルギーが最小限に抑えられるようになり、ヒンジ部38Cを中心として開放するインサート部材38の各ドア支持部38B,38Bに支持された両ドアパネル20,20は、その開放変位が円滑になされると共に所望の開放角度まで適切に開放するようになる。
【0025】
なお第1実施例と同様に、表皮材14に形成した前述の表皮破断予定線36の延在形状もドア破断予定線40と略同一形状に形成すると共に、該ドア破断予定線40に沿ったスリット等を発泡体16に形成するようにすれば、図7に例示したように、各ドアパネル20,20の開放に際して基材12に形成された基材破断縁48と、表皮材14の破断ラインおよび発泡体16の破断ラインとが一致するようになる。従って、ドアパネル20,20の開放により開口形成されたエアバッグ挿通口28へ発泡体16が殆ど露出しないため、該エアバッグ挿通口28を介して膨張展開するエアバッグ52が発泡体16と接触する不都合も好適に回避される。
【0026】
(実験例)
本願発明者は、エアバッグドアADのドアパネル20の外部輪郭ラインに沿って基材12に形成されるドア破断予定線40の側端破断予定線44に関し、その適切な形成態様を確認するために次のような2種類の実験を行なった。
【0027】
・実験1
側端破断予定線44の延在角度Rを一定としたもとで、先端破断予定線42から基点Pまでの間隔W1と先端破断予定線42からヒンジ端縁26までの開放幅Wとの比率を様々に変更させた場合において、基材12が側端破断予定線44の斜延部46に沿って適切に破断するか否かを調べる実験である。
・実験2
先端破断予定線42から基点Pまでの間隔W1を一定としたもとで、側端縁24に対する側端破断予定線44の延在角度Rを様々に変更させた場合において、基材12の破断が側端破断予定線44の斜延部46に沿って適切に進行するか否かを調べる実験である。
【0028】
【表1】

【0029】
表1は、前述した実験1の実験結果を纏めたものである。この実験結果によれば、側端縁24に対する側端破断予定線44の延在角度R=15°とした場合、0≦W1/W≦0.7の範囲内においては、基材12が側端破断予定線44に沿って適切に破断し、W1/Wが0.8以上においては側端破断予定線44に沿って適切に破断しなかった。すなわち、W1/W≧0.8では、側端縁24に沿って平行に延在する側端破断予定線44の平行部分が長くなり、この平行部分の途中で逸脱して破断するようになり、図9に例示した従来の場合と同様になってしまう。従って、先端破断予定線42から基点Pまでの間隔W1は、該先端破断予定線42からヒンジ端縁26までの開放幅Wの0.7倍以下の範囲内で設定するのが望ましい。例えば、開放幅W=150mmである場合は、側端縁24から基点Pまでの間隔W1は0〜100mmの範囲(斜延部46は150〜50mmの範囲)内で設定すればよい。
【0030】
【表2】

【0031】
表2は、前述した実験2の実験結果を纏めたものである。この実験結果によれば、先端破断予定線42から基点Pまでの間隔W1を一定とした場合(W1/W=0.5)、延在角度R=5〜30°の範囲内においては、基材12が側端破断予定線44に沿って適切に破断するようになり、R<5°およびR>35°においては側端破断予定線44に沿って適切に破断しなかった。従って、側端縁24に対する斜延部46の延在角度Rは、5〜30°の範囲内で設定すればよい。
【0032】
従って、実験1および実験2の実験結果を総合すると、先端破断予定線42から基点Pまでの間隔W1を該先端破断予定線42からヒンジ端縁26までの開口幅Wの0.7倍以下で、かつ側端縁24に対する斜延部46の延在角度Rを5〜30°の範囲内としたもとで、側端破断予定線44の延在態様を設定するのが望ましいことが判明した。
【0033】
なお前述した各実施例では、直線状に延在する斜延部46を例示したが、この斜延部46は緩やかな曲線状に延在する態様や折れ線状に延在する態様等であってもよい。
【0034】
また前述した各実施例では、3層タイプのインストルメントパネル10を例示したが、本願のエアバッグドアADは、基材12および表皮材14からなる2層タイプのインストルメントパネルや、基材12のみからなる単層タイプのインストルメントパネルにも好適に実施可能である。
【0035】
更に前述した各実施例では、車両内装部材としてインストルメントパネル10を例示したが、本願のエアバッグドアADが実施可能な車両内装部材はこれに限定されるものではなく、これ以外にドアパネル、ピラーガーニッシュ等も対象とされる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係るエアバッグドアは、車両内装部材を構成する基材に設けたドアパネルからなり、ドアパネルの外部輪郭ラインに沿うよう基材に形成したドア破断予定線が、このドアパネルの先端縁側から側端縁側へ回り込むように破断することで、該ドアパネルがそのヒンジ端縁を中心として開放することが許容されるエアバッグドアである。従って、エアバッグ装置を搭載した種々自動車等に装備されたエアバッグドアへ好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】インストルメントパネルに実施された第1実施例に係る片開きタイプのエアバッグドアを示した説明図である。
【図2】図1に例示したエアバッグドアの開放状態を示した概略斜視図である。
【図3】基材がドア破断予定線に沿って適切に破断し、ドアパネルが開放した後の状態を、該ドアパネルを省略して示した説明図である。
【図4】側端破断予定線の態様を変更したエアバッグドアを示した説明図である。
【図5】側端破断予定線の態様を変更したエアバッグドアを示した説明図である。
【図6】インストルメントパネルに実施された第2実施例に係る両開きタイプのエアバッグドアを示した説明図である。
【図7】基材がドア破断予定線に沿って適切に破断し、各ドアパネルが開放した後の状態を、該ドアパネルを省略して示した説明図である。
【図8】インストルメントパネルに実施された片開きタイプのエアバッグドアを示した一部破断斜視図である。
【図9】インストルメントパネルに実施された従来の片開きタイプのエアバッグドアを示した説明図である。
【図10】図9に例示したエアバッグドアの開放状態を示した概略斜視図である。
【図11】ドアパネルが開放するに際し、基材がドア破断予定線から逸脱して破断するようになった不都合を示した説明図である。
【図12】インストルメントパネルに実施された従来の両開きタイプのエアバッグドアを示した説明図である。
【図13】各ドアパネルが開放するに際し、基材がドア破断予定線から逸脱して破断するようになった不都合を示した説明図である。
【符号の説明】
【0038】
12 基材
20 ドアパネル
22 先端縁
24 側端縁
26 ヒンジ端縁
40 ドア破断予定線
42 先端破断予定線
44 側端破断予定線
46 斜延部
P 基点
R 延在角度
W 開放幅
W1 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装部材を構成する基材(12)に設けたドアパネル(20)からなり、前記ドアパネル(20)の外部輪郭ラインに沿うよう形成したドア破断予定線(40)が、このドアパネル(20)の先端縁(22)側から側端縁(24,24)側へ回り込むように破断することで、該ドアパネル(20)がそのヒンジ端縁(26)を中心として開放することが許容されるエアバッグドアにおいて、
前記ドア破断予定線(40)は、前記ドアパネル(20)の先端縁(22)に沿って延在する先端破断予定線(42)と、該ドアパネル(20)の側端縁(24,24)に沿って延在する側端破断予定線(44,44)とからなり、
前記側端破断予定線(44,44)は、前記先端縁(22)側からヒンジ端縁(26)側に向け、前記側端縁(24,24)から徐々に離間する方向へ延在する斜延部(46)を有している
ことを特徴とするエアバッグドア。
【請求項2】
前記斜延部(46)は、前記先端破断予定線(42)から所要距離離間した位置を基点(P)として、該基点(P)からヒンジ端縁(26)の間に延在している請求項1記載のエアバッグドア。
【請求項3】
前記先端破断予定線(42)から基点(P)までの間隔(W1)は、該先端破断予定線(42)からヒンジ端縁(26)までの開放幅(W)の0.7倍以下に設定される請求項2記載のエアバッグドア。
【請求項4】
前記側端縁(24,24)に対する前記斜延部(46)の延在角度(R)は5〜30°の範囲内で設定される請求項1〜3の何れかに記載のエアバッグドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−69442(P2006−69442A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257382(P2004−257382)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】