説明

エアバッグ用基布およびその製造方法

【課題】基布の縫製部の目ズレを改善し、内圧保持性の高いエアバッグを提供するための、エアバッグ用基布およびその製造方法を提供する。
【解決手段】合成繊維糸からなる織物で構成されるエアバッグ用基布であって、タテ糸クリンプ率/ヨコ糸密度が0.10〜0.20であるとともにヨコ糸クリンプ率/タテ糸密度が0.05〜0.20であり、さらにタテ糸の引抜き強力が15〜30N/本であるとともにヨコ糸の引抜き強力が10〜20N/本であることを特徴とするエアバッグ用基布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両衝突時に乗員の衝撃を吸収し、その保護を図るエアバッグに関するものであり、さらに詳しくはバッグ展開性に優れたエアバッグ用基布およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグは、300〜1000dtexのナイロン66またはナイロン6フィラメントを用いた平織物に、耐熱性、難燃性、空気遮断性などの向上のため、クロロプレン、クロルスルホン化オレフィン、シリコーンなどのエラストマー樹脂を塗布、積層した基布を裁断し、袋体に縫製して作られていた。
【0003】
しかしながら、これらのエラストマー樹脂を塗布、積層する際、一般にナイフコート、ロールコート、リバースコートなどのコーティング方法が採用されているが、フィラメント織物で構成されているエアバッグ用基布に対して、通常クロロプレンエラストマー樹脂の場合では、基布表面に90〜120g/m塗布されているため、厚みが厚くなり、収納性の面でもパッケージボリュームが大きくなるという問題があった。
【0004】
また、クロロプレンエラストマー樹脂に比べ、より耐熱性、耐寒性に優れたシリコーンエラストマー樹脂の場合では、塗布量を40〜60g/mとして軽量化しつつ、収納性の面でもかなり向上したものではあるが、まだ不十分であり、またパッケージを折り畳んで収納する際に折り畳みにくいという問題があった。またさらにエラストマーの塗布、積層の工程が繁雑で生産性の面でも問題があった。
【0005】
そこで近年、このような問題点を解消するために、樹脂の塗布を行わない、いわゆるノンコート基布を使用したエアバッグが注目されてきた。
【0006】
その対応技術として、ナイロン66、ナイロン6などのポリアミド系繊維織物、あるいはポリエステル系繊維織物から構成される高密度ノンコートエアバッグの検討が進められている。
【0007】
例えば、タテ糸とヨコ糸のクリンプ率、織物のカバーファクターなどから低通気性を鋭意検討した高密度織物が提案されており(例えば、特許文献1参照)、また、ヨコ糸の織り密度をタテ糸の織り密度よりも小さくし、タテ糸とヨコ糸のクリンプ率の差を小さくすることでエアバッグ等方的に展開するエアバッグ用基布が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、これらのエアバッグ基布では、2000年に米国法規FMVSS208の改正に伴い、インフレーターのデュアル化に対応した高温・高出力のインフレーターに対応できないという問題を有する。つまり、高出力化に伴いエアバッグの縫製部の目ズレが大きくなり、その目ズレ部から高温ガスが漏れるため、乗員のダメージを軽減できないという問題を有する。
【特許文献1】特開2002−317343号公報
【特許文献2】特開2000−303303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、基布の縫製部の目ズレを改善し、内圧保持性の高いエアバッグを提供するための、エアバッグ用基布およびその製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち本発明のエアバッグ用基布は、合成繊維糸からなる織物で構成されるエアバッグ用基布であって、タテ糸クリンプ率/ヨコ糸密度が0.10〜0.20であるとともにヨコ糸クリンプ率/タテ糸密度が0.05〜0.20であり、さらにタテ糸の引抜き強力が15〜30N/本であるとともにヨコ糸の引抜き強力が10〜20N/本であることを特徴とするものである。
【0011】
また、かかるエアバッグ用基布の製造方法は、製織機がウォータージェットルームで巻き取り時にカットロールを用いて製織時タテ糸張力を200〜250g/本の範囲内にすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、糸同士の摩擦が高いため目ズレしにくく、かつ基布の通気度が低いので、内圧保持性の高いエアバッグ用基布を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のエアバッグ用基布についてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明のエアバッグ用基布は、基布の低通気性および縫製部目ズレを改善するにあたって、織物のタテ糸およびヨコ糸のクリンプ率ならびにタテ糸およびヨコ糸の引抜き強力が重要な要素であることを見いだしたものである。
【0015】
本発明のエアバッグ用基布は、合成繊維糸からなる織物で構成されるエアバッグ用基布であって、タテ糸クリンプ率/ヨコ糸密度が0.10〜0.20の範囲内であり、かつヨコ糸クリンプ率/タテ糸密度が0.05〜0.20の範囲内であるとともに、タテ糸の引抜き強力が15〜30N/本でかつヨコ糸の引抜き強力が10〜20N/本であることを特徴とする。
【0016】
本発明に用いるエアバッグ用基布を構成する合成繊維糸としては、該合成繊維固有の収縮率からナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン4・6およびナイロン6とナイロン6・6の共重合、ナイロン6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸やアミンなどを共重合したポリアミド系繊維糸からなるものが好ましく、これらの合成繊維糸をタテ糸およびヨコ糸に用いて構成される織物によりエアバッグ用基布を形成する。これらの中でもナイロン6・6、ナイロン6が耐衝撃性の面から好ましい。さらに、ナイロン6・6が耐熱性の面から特に好ましい。かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤を含んでいてもよい。たとえば熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤などを含有せしめることができる。
【0017】
合成繊維糸の総繊度は350〜700dtexの範囲内にあることが、インフレーターの高出力化に伴う基布の機械的特性面、縫製部の目ズレ軽減から好ましく、さらに400〜500dtexの範囲内であれば収納性の面からも特に好ましい。
【0018】
本発明のエアバッグ用基布は、タテ糸クリンプ率/ヨコ糸密度が0.10〜0.20の範囲内であり、かつヨコ糸クリンプ率/タテ糸密度が0.05〜0.20の範囲内であるものである。
【0019】
ここでタテ糸およびヨコ糸クリンプ率はJIS L1096−00(8.7.2B法)で求めたものである。タテ糸クリンプ率/ヨコ糸密度が0.10より小さいと基布の柔軟性が損なわれ、また、タテ糸クリンプ/ヨコ糸密度が0.20より大きいと糸同士の摩擦力が小さくなり、縫製部の目ズレが生じやすくなる。
【0020】
ヨコ糸クリンプ率/タテ糸密度についても同様に、0.05より小さいと織物の柔軟性が損なわれ、また、0.20より大きいと糸同士の摩擦力が小さくなり、目ズレが生じやすくなる。
【0021】
本発明のエアバッグ用基布をエアバッグとして用いた場合、タテ糸クリンプ率/ヨコ糸密度およびヨコ糸クリンプ率/タテ糸密度の双方が0.10〜0.20の範囲内にあることが、エアバッグの等方展開性において、より好ましい。
【0022】
本発明のエアバッグ用基布は上記範囲のクリンプ率を有するとともに、糸同士の摩擦力を特定の範囲とすることにより、縫製部の目ズレを改善できたものである。
【0023】
そこで、糸同士の摩擦力はJIS L1096−00(8.21.2A法)による引抜き強力において、タテ糸の引抜き強力が15〜30N/本の範囲内かつヨコ糸の引抜き強力が10〜20N/本の範囲内であるものである。
【0024】
タテ糸の引抜き強力が15N/本より小さいと糸同士の摩擦力が小さく、目ズレが生じやすくなり、また、タテ糸の引抜き強力が30N/本より大きいと糸同士の摩擦力が大きすぎることから基布の柔軟性が損なわれる。
【0025】
ヨコ糸の引抜き強力も同様に10N/本より小さいと糸同士の摩擦力が小さく、目ズレが生じやすくなり、また、ヨコ糸の引抜き強力が20N/本より大きいと糸同士の摩擦力が大きすぎることから基布の柔軟性が損なわれる。
【0026】
本発明のエアバッグ用基布をエアバッグとして用いた場合、タテ糸およびヨコ糸双方の引抜き強力が15〜20N/本の範囲内にあることが、エアバッグの等方性において、より好ましい。
【0027】
エアバッグを高速展開したときに生じる目ズレは、上記のクリンプ率、引抜き強力と共に、基布の滑脱抵抗力による要因が大きい。
【0028】
滑脱抵抗力は糸同士の摩擦力と密接に関係しているが、目ズレに対する直接的な指標として用いられている。
【0029】
本発明のエアバッグ用基布は、ASTM D-6479-2002によるタテ方向の滑脱抵抗力が450〜700Nであり、かつヨコ方向の滑脱抵抗力が350〜600Nであることが好ましい。
【0030】
タテ方向の滑脱抵抗力が450Nより小さいと縫製部の目ズレが大きくなり好ましくなく、また、700Nより大きいと柔軟性が損なわれた基布となってしまい、好ましくない。
【0031】
ヨコ方向の滑脱抵抗力も同様に350Nより小さいと縫製部の目ズレが大きくなり好ましくなく、また、600Nより大きいと柔軟性が損なわれた基布となってしまい、好ましくない。
【0032】
本発明のエアバッグ用基布をエアバッグとして用いた場合、タテ方向とヨコ方向双方の滑脱抵抗力が500〜600Nの範囲内にあることが、エアバッグの等方性において、より好ましい。
【0033】
エアバッグとして高い内圧を保持するためには、上述の縫製部からの目ズレを改善させると共に、基布自体が低通気性を満たしていることが重要である。
【0034】
本発明のエアバッグ用基布は、基布の通気性がクリンプ率と密接に関係していることを見出したことによるものである。
【0035】
クリンプ率、および引抜き強力を上述の範囲内とすれば、19.6kPaにおける高圧法による通気度が0.01〜1.2L/cm/secの範囲内にすることが可能となり、エアバッグ用基布として従来にない、低通気性を実現できる。なお、通気度の測定法については後述する。
【0036】
エアバッグ用基布の抗目ズレ性、低通気性を改善させるためには、織物のカバーファクターを上げる高密度化が一つの手段として知られている。しかし、織機の性能や、物理的条件により、織物の高密度化には限界があり、限界織密度を超えると織物に皺や耳緩みなどが生じ、織物としての品位を満たすことができない。
【0037】
そこで本発明のエアバッグ用基布はカバーファクター(CF)が2100〜2400の範囲内である織物が好ましいものである。カバーファクターが2100より小さいと上述のクリンプ率、引抜き強力、滑脱抵抗力、通気度を満たすことができにくくなり、また、カバーファクターが2400より大きいと織物としての品位を満たすことができず、織物の量産性も悪くなり好ましくない。
【0038】
本工程で用いる織機はウォータージェットルーム、エアージェットルーム、レピアルームなどが用いられるが、特に生産性を高めるためには高速製織が比較的容易なウォータージェットルームが好ましい。
【0039】
本発明のエアバッグ用基布はウォータージェットルームを用いて平織りにて製織すればよいが、製織時のタテ糸張力を200〜250g/本の範囲内に制御することが重要である。タテ糸張力が200g/本より小さいとタテ糸クリンプ/ヨコ糸密度の値が大きくなってしまい、引抜き強力、滑脱抵抗力が小さくなり、目ズレが生じやすくなるため好ましくない。また、タテ糸張力を250g/本より大きくするとタテ糸クリンプ/ヨコ糸密度の値が小さくなり、柔軟性が損なわれた基布になってしまうため好ましくない。
【0040】
タテ糸張力を200〜250g/本の範囲内で制御し、量産性を安定させるためには図1に示すようにフリクションローラー5の前にカットロール4を用いるとよい。カットロールの本数は1本でも複数でもよいが、3本以上になると大型の設備になってしまうため、量産性が最も安定で設備的に簡単に導入できる、2本ロールが最も好ましい。
【実施例】
【0041】
次に、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例中における各種評
価は、下記の方法に従って行なった。
(1)密度
JIS L1096−00に基づき、密度を測定した。
(2)カバーファクター
カバーファクター(CF)は次式により計算した。
【0042】
CF=N×D1/2+N×D1/2
ただし、N:タテ糸密度(本/2.54cm)、
:タテ糸繊度(dtex)、
:ヨコ糸密度(本/2.54cm)、
:ヨコ糸繊度(dtex)
(3)クリンプ率
JIS L1096−00(8.7.2B法)に基づきクリンプ率を測定した。
【0043】
なお、本測定は40gの荷重を用いて測定した。
(4)引抜き強力
JIS L1096−00(8.21.2A法)にしたがって、引抜き強力を求めた。
(5)滑脱抵抗力 :ASTM D-6479-2002に基づき、50mm×300mmの織物サンプルを引っ張りつかみ間隔200mm、引張速度200mm/minで引っ張った時の最高強力を測定した。
(6)通気度
基布の通気度:流体(空気)を19.6kPaの圧力に調整して流し、その時通過する空気流量を測定した。
(7)展開試験の外周縫製部目ズレ
エアバッグ用基布を裁断して直径760mmの2枚の円形基布を得、両者の周縁部同士を縫製し、運転席用エアバッグを作成した。周縁部の縫製には1350dtexのナイロン66糸を使用し、2重環縫いにより行い、インフレーター取付口や展開後の高温ガスが排出されるベントホールなどのその他の縫製は1350dtexのナイロン66糸を使用し、本縫いを行った。得られたエアバッグを所定形状に折り畳んで、高出力・高温のインフレーター(230kPa)とともにエアバッグ装置に取り込み、該エアバッグをインフレーターから発生するガスにより膨張展開した後の外周縫製部の目ズレ量を測定し、最大目空き量が1mm以内のものは○、1mmを越える場合は×とし、エアバッグとしての使用可否を評価した。特に状態が好ましいものは◎とした。
【0044】
実施例1
総繊度420dtex、72フィラメント、強度8.4cN/dtex、伸度22%、無撚りのナイロン6・6繊維の丸断面フィラメント糸を用い、フリクションローラーの前に2本のカットロールを装置したウォータージェットルームを用いて、タテ糸張力が240g/本、タテ糸とヨコ糸の織密度がともに55本/2.54cmになるように調整し、平組織の織物を得た。
【0045】
次いでこの織物をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/lおよびソーダ灰0.5g/lを含んだ80℃温水浴中に1分間浸漬し精練処理を行った後、160℃で1分間乾燥させ、次いで基布のタテ糸とヨコ糸の織密度がそれぞれ55本/2.54cm、55本/2.54cmになるように張力を調整し、190℃で1分間熱セットして、エアバッグ用基布を得た。
【0046】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1および表2に示した。
糸同士の摩擦力が高いため滑脱抵抗力が高く、このエアバッグ用基布は抗目ずれ性に優れ、展開試験の外周縫製部目ズレも優れていた。
【0047】
実施例2
総繊度420dtex、72フィラメント、強度8.4cN/dtex、伸度22%、無撚りのナイロン6・6繊維の丸断面フィラメント糸を用い、フリクションローラーの前に2本のカットロールを装置したウォータージェットルームを用いて、タテ糸張力が220g/本、タテ糸とヨコ糸の織密度がともに55本/2.54cmになるように調整し、平組織の織物を得た。
【0048】
次いでこの織物をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/lおよびソーダ灰0.5g/lを含んだ80℃温水浴中に1分間浸漬し精練処理を行った後、160℃で1分間乾燥させ、次いで基布のタテ糸とヨコ糸の織密度がそれぞれ55本/2.54cm、55本/2.54cmになるように張力を調整し、190℃で1分間熱セットして、エアバッグ用基布を得た。
【0049】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1および表2に示した。
糸同士の摩擦力が高いため滑脱抵抗力が高く、このエアバッグ用基布は抗目ずれ性に優れ、展開試験の外周縫製部目ズレも優れていた。
【0050】
実施例3
総繊度420dtex、72フィラメント、強度8.4cN/dtex、伸度22%、無撚りのナイロン6・6繊維の丸断面フィラメント糸を用い、フリクションローラーの前に2本のカットロールを装置したウォータージェットルームを用いて、タテ糸張力が210g/本、タテ糸とヨコ糸の織密度がともに55本/2.54cmになるように調整し、平組織の織物を得た。
【0051】
次いでこの織物をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/lおよびソーダ灰0.5g/lを含んだ80℃温水浴中に1分間浸漬し精練処理を行った後、160℃で1分間乾燥させ、次いで基布のタテ糸とヨコ糸の織密度がそれぞれ55本/2.54cm、55本/2.54cmになるように張力を調整し、190℃で1分間熱セットして、エアバッグ用基布を得た。
【0052】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1および表2に示した。
糸同士の摩擦力が高いため滑脱抵抗力が高く、このエアバッグ用基布は抗目ずれ性に優れ、展開試験の外周縫製部目ズレも優れていた。
【0053】
比較例1
総繊度420dtex、72フィラメント、強度8.4cN/dtex、伸度22%、無撚りのナイロン6・6繊維の丸断面フィラメント糸を用い、カットロールを用いずに通常の製織方法でタテ糸張力が170g/本、タテ糸とヨコ糸の織密度がともに55本/2.54cmになるように調整し、平組織の織物を得た。
【0054】
次いでこの織物をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/lおよびソーダ灰0.5g/lを含んだ80℃温水浴中に1分間浸漬し精練処理を行った後、160℃で1分間乾燥させ、次いで基布のタテ糸とヨコ糸の織密度がそれぞれ55本/2.54cm、55本/2.54cmになるように張力を調整し、190℃で1分間熱セットして、エアバッグ用基布を得た。
【0055】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1および表2に示した。
糸同士の摩擦力が低いため滑脱抵抗力が低く、展開試験の外周縫製部目ズレが大きくなり、高出力、高温インフレーターには適さなかった。
【0056】
比較例2
総繊度420dtex、72フィラメント、強度8.4cN/dtex、伸度22%、無撚りのナイロン6・6繊維の丸断面フィラメント糸を用い、カットロールを用いずに通常の製織方法でタテ糸張力が150g/本、タテ糸とヨコ糸の織密度がともに55本/2.54cmになるように調整し、平組織の織物を得た。
【0057】
次いでこの織物をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/lおよびソーダ灰0.5g/lを含んだ80℃温水浴中に1分間浸漬し精練処理を行った後、160℃で1分間乾燥させ、次いで基布のタテ糸とヨコ糸の織密度がそれぞれ55本/2.54cm、55本/2.54cmになるように張力を調整し、190℃で1分間熱セットして、エアバッグ用基布を得た。
【0058】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1および表2に示した。
糸同士の摩擦力が低いため滑脱抵抗力が低く、展開試験の外周縫製部目ズレが大きくなり、高出力、高温インフレーターには適さなかった。
【0059】
比較例3
総繊度420dtex、72フィラメント、強度8.4cN/dtex、伸度22%、無撚りのナイロン6・6繊維の丸断面フィラメント糸を用い、カットロールを用いずに通常の製織方法でタテ糸張力が120g/本、タテ糸とヨコ糸の織密度がともに55本/2.54cmになるように調整し、平組織の織物を得た。
【0060】
次いでこの織物をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/lおよびソーダ灰0.5g/lを含んだ80℃温水浴中に1分間浸漬し精練処理を行った後、160℃で1分間乾燥させ、次いで基布のタテ糸とヨコ糸の織密度がそれぞれ55本/2.54cm、55本/2.54cmになるように張力を調整し、190℃で1分間熱セットして、エアバッグ用基布を得た。
【0061】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1および表2に示した。
糸同士の摩擦力が低いため滑脱抵抗力が低く、展開試験の外周縫製部目ズレが大きくなり、高出力、高温インフレーターには適さなかった。
【0062】
比較例4
総繊度420dtex、72フィラメント、強度8.4cN/dtex、伸度22%、無撚りのナイロン6・6繊維の丸断面フィラメント糸を用い、フリクションローラーの前に2本のカットロールを装置したウォータージェットルームを用いて、タテ糸張力が210g/本、タテ糸とヨコ糸の織密度がともに46本/2.54cmになるように調整し、平組織の織物を得た。
【0063】
次いでこの織物をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/lおよびソーダ灰0.5g/lを含んだ80℃温水浴中に1分間浸漬し精練処理を行った後、160℃で1分間乾燥させ、次いで基布のタテ糸とヨコ糸の織密度がそれぞれ46本/2.54cm、46本/2.54cmになるように張力を調整し、190℃で1分間熱セットして、エアバッグ用基布を得た。
【0064】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を表1および表2に示した。
糸同士の摩擦力が低いため滑脱抵抗力が低く、展開試験の外周縫製部目ズレが大きくなり、高出力、高温インフレーターには適さなかった。
【0065】
比較例5
総繊度420dtex、72フィラメント、強度8.4cN/dtex、伸度22%、無撚りのナイロン6・6繊維の丸断面フィラメント糸を用い、フリクションローラーの前に2本のカットロールを装置したウォータージェットルームを用いて、タテ糸張力が210g/本、タテ糸とヨコ糸の織密度がともに58本/2.54cmになるように調整し、平組織の織物を得ようとしたが、製織性不良のため、平織物を得ることができなかった。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ウォータージェットルームの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0069】
1:ビーム
2:バックローラー
3:綜絖(ヘルド)
4:カットロール
5:フリクションローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維糸からなる織物で構成されるエアバッグ用基布であって、タテ糸クリンプ率/ヨコ糸密度が0.10〜0.20であるとともにヨコ糸クリンプ率/タテ糸密度が0.05〜0.20であり、さらにタテ糸の引抜き強力が15〜30N/本であるとともにヨコ糸の引抜き強力が10〜20N/本であることを特徴とするエアバッグ用基布。
【請求項2】
タテ方向の滑脱抵抗力が450〜700Nであり、かつヨコ方向の滑脱抵抗力が350〜600Nであることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ用基布。
【請求項3】
19.6kPaにおける通気度が0.01〜1.2L/cm/secの範囲内にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアバッグ用基布。
【請求項4】
次式で算出されるカバーファクター(CF)が2100〜2400であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用基布。
カバーファクター(CF)=N×D1/2+N×D1/2
ただし、N:タテ糸密度(本/2.54cm)
:タテ糸繊度(dtex)
:ヨコ糸密度(本/2.54cm)
:ヨコ糸繊度(dtex)
【請求項5】
ウォータージェットルームにて巻き取り時にカットロールを用いて、製織時のタテ糸張力を200〜250g/本の範囲内に制御して製織することを特徴とするエアバッグ用基布の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ用基布、もしくは請求項5に記載のエアバッグ基布の製造方法によって得られるエアバッグ用基布で構成されたことを特徴とするエアバッグ。

【図1】
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【公開番号】特開2006−256474(P2006−256474A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76619(P2005−76619)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】