説明

エアバッグ用基布及びエアバッグ

【課題】
軽量・柔軟で収納性が高く、空気遮蔽性、耐熱性および難燃性を満足し、樹脂被膜と布帛との接着性に優れ、目ズレやホツレの起き難いエアバッグ用基布およびそれからなるエアバッグを提供し、乗員の安全を確保しながら自動車等の軽量化、省燃費化に貢献する。
【解決手段】
合成繊維織物の少なくとも一方の面が樹脂で被覆されたエアバッグ用基布であって、該合成繊維織物の樹脂被覆面に位置する経糸または緯糸の断面周囲が、該樹脂により90%以上包囲されていることを特徴とするエアバッグ用基布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装備され車両の衝突事故時、瞬時に膨出して乗員を保護するエアバッグに関するものであり、更に詳しくは、樹脂を付与したエアバッグ用基布及びエアバッグであって、難燃性、軽量、風合い、収納性に優れたエアバッグ用基布及びエアバッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種交通機関、特に自動車の事故発生の際に、乗員の安全を確保するためのエアバッグ装置が種々開発され、その有用性が認識されて、自動車においては非常に高い割合で装備されるようになってきた。このエアバッグ装置は車輌の衝突などにおける急激な減速状態を検知するセンサー、センサーより信号を受けて高圧ガスを発生するインフレーター、インフレーターからの高圧ガスにより膨出・展開して乗員に与える衝撃を緩和するエアバッグ、及びエアバッグ装置が正常に機能しているか否かを判断する診断回路より構成されている。
【0003】
該エアバッグに使用される材料としては様々な態様のものがあるが、例えば、ポリアミドなどの高強力長繊維織物にクロロプレンゴムなどの耐熱性エラストマーをコーティング処理した布帛材料がある。耐熱性エラストマーを布帛表面に塗布することにより、ポリアミド繊維布帛のみでは不足する耐熱性や難燃性、空気遮蔽性などの性能の向上を図るものである。このコーティング処理は、布帛の目ズレやホツレの防止にも大きく役立つものである。
【0004】
しかしながら布帛にコーティング処理を施すことにより布帛材料が硬化してしまい、コンパクトに折り畳み難く、収納性の面で問題があった。また、耐熱性や難燃性、空気遮蔽性を満足するためには、布帛の単位面積あたりの耐熱性エラストマー塗布量が50g/m以上となり、エアバッグの重量が大きくなってしまうという問題もあった。
【0005】
このような問題点を解消するために耐熱性エラストマーの塗布量を抑えたエアバッグ用基布が検討されており、例えば特許文献1には、エラストマー樹脂が織物を構成する織糸部1.0に対して、織物目合い部に3.0以上の膜厚比で偏在していることを特徴とするエアバッグが開示されている。しかし、収納性については改善されているものの、樹脂被膜と織物の接着性の面については十分とは言えず、更に、20g/m以下の低塗布量とした場合、この様に樹脂が偏在している状態では、難燃性を満足することは困難である。
【0006】
また、特許文献2には、繊維布帛からなるエアバッグ用基布において、該布帛の少なくとも片面が樹脂で被覆されており、かつ該布帛を構成する少なくとも一部の単糸が該樹脂で包囲されており、かつ該布帛を構成する少なくとも一部の単糸が該樹脂で包囲されていないことを特徴とするエアバッグ用基布が開示されている。収納性を改善しながら、樹脂被膜と織物の接着性を向上させたものとなっているが、難燃性の点では不十分であると言わざるを得ないのが実状である。
【0007】
【特許文献1】特許第2853936号公報
【特許文献2】特開2004−124321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる従来のエアバッグ用基布の欠点に鑑み、軽量・柔軟で収納性が高く、空気遮蔽性、耐熱性および難燃性を満足し、樹脂被膜と布帛との接着性に優れ、目ズレやホツレの起き難いエアバッグ用基布およびそれからなるエアバッグを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、合成繊維織物の少なくとも一方の面が樹脂で被覆されたエアバッグ用基布において、合成繊維織物上の樹脂の分布状態をコントロールすることによって、つまり、樹脂により被覆された織物表面にある経糸および緯糸の周囲を包囲するように樹脂を塗布することで、樹脂の総塗布量が極少量であっても優れた難燃性・空気遮蔽性、そして十分な滑脱抵抗を発揮させることが出来ることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、合成繊維織物の少なくとも一方の面を樹脂で被覆する際に、経糸及び緯糸を包囲するように樹脂を付着・浸透させ、該経糸および緯糸の樹脂被覆面側の断面において、断面外周が該樹脂により90%以上包囲されているエアバッグ基布である。ここで言う包囲とは、糸断面の外周に位置するフィラメント上に連続的に樹脂が付着している状態のことを言い、該場所において樹脂の連続性が途切れて空隙となっている部分は包囲されていないとみなす。
【0011】
経糸および緯糸の樹脂による包囲率が90%に満たない場合、難燃性や空気遮蔽性、滑脱抵抗が不十分となる虞がある。
【0012】
樹脂の総塗布量を上げることで合成繊維織物の機械的特性を向上し、難燃性や空気遮蔽性を向上することは可能であるが、当然、織物の重量は重くなってしまい、風合いも悪いものとなり柔軟性も損なわれる。本発明は、樹脂の塗布量を20g/m以下とした場合に、特にその効果を奏する。
【0013】
樹脂として、シリコーン化合物よりなるものを用いることが好ましい。
【0014】
また、前記エアバッグ用基布を用いたエアバッグである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軽量・柔軟で収納性が高く、空気遮蔽性、耐熱性および難燃性を満足し、樹脂被膜と布帛との接着性に優れ、目ズレやホツレの起き難いエアバッグ用基布およびそれからなるエアバッグを提供できるので、エアバッグの普及促進に貢献でき、更にはエアバッグ装置の軽量化による自動車の低燃費化を可能とし、地球環境の保護にも貢献ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明において合成繊維織物とは、合成繊維糸条を用いて製織される織物を意味する。織物は機械的強度に優れ、厚さを薄くできるという点で優れている。織物の組織は特に限定されるものでなく、平織、綾織、朱子織およびこれらの変化織、多軸織などを挙げることができる。なかでも、機械的強度により優れた平織物が特に好ましい。
【0017】
合成繊維糸条の種類は特に限定されるものでなく、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン46などのポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維;ポリビニルアルコール繊維;ポリ塩化ビニリデン繊維;ポリ塩化ビニル繊維;アクリルなどのポリアクリロニトリル系繊維;ポリウレタン繊維;芳香族ポリアミド繊維;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などを挙げることができる。なかでも、製造が容易で、かつ耐熱性に優れるという理由により、ポリアミド繊維およびポリエステル繊維が好ましく、耐衝撃性に優れ、熱容量が大きいという理由によりポリアミド繊維がより好ましい。これらの合成繊維には、耐熱向上剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤などを含有させてもよい。
【0018】
糸条の形態は特に限定されるものでなく、例えば、フィラメント糸、紡績糸、混紡糸、混繊糸、交撚糸、捲回糸などを挙げることができる。なかでも、生産性、コスト面、機械的強度に優れ、また、単糸の広がりにより低通気性が得られやすいという理由により無撚あるいは甘撚のフィラメント糸が好ましい。単糸(単繊維ともいう)の断面形状は特に限定されるものでなく、例えば、丸、扁平、三角、長方形、平行四辺形、中空、星型などを挙げることができる。生産性やコストの点では丸断面が好ましく、布帛の厚さを薄くできる為にエアバッグの収納性が良くなるという点では扁平断面が好ましい。
【0019】
糸条がフィラメント糸の場合、その単糸強度は5.4g/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは7.0g/dtex以上である。単糸強度が5.4g/dtex未満であると、エアバッグとしての物理的特性を満足することが困難となる虞がある。
【0020】
糸条の繊度は155〜470dtexであることが好ましく、より好ましくは235〜470dtexである。繊度が155dtex未満であると、布帛の強度を維持することが困難となる虞がある。繊度が470dtexを越えると、布帛の厚さが増大し、エアバッグの収納性が悪くなる虞がある。
【0021】
本発明において用いられる樹脂としては、耐熱性エラストマーが上げられるが、中でもシリコーン化合物が好ましく用いられる。シリコーン化合物は特に限定されるものでなく、例えば、ジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、トリメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、メチルシリコーンレジン、メチルフェニルシリコーンレジン、メチルビニルシリコーンレジン、アルキッド変性シリコーンレジン、エポキシ変性シリコーンレジン、アクリル変性シリコーンレジン、ポリエステル変性シリコーンレジンなどを挙げることができる。なかでも、硬化後にゴム弾性を有し、強度、伸び等に優れ、コスト面でも有利という理由によりメチルビニルシリコーンゴム等が好ましく用いられる。
【0022】
シリコーン化合物は通常市販されているものを用いることができ、そのタイプは、無溶剤型、溶剤希釈型、水分散型など特に限定されない。
【0023】
本発明においてシリコーン化合物には、シリコーン被膜硬化後の粘着性低減やシリコーン被膜の補強などの目的で、ポリウレタン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物など、他の高分子材料を含んでいてもよい。さらに、硬化剤、接着向上剤、充填剤、補強剤、顔料、難燃助剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
合成繊維織物の少なくとも一方の面を樹脂で被覆する方法としては、コーティング方式が用いられる。中でも塗布用ナイフと台(ベッド)の間に合成繊維織物を挟みこんだ状態でコーティングを行う、所謂ナイフオンベッド方式が好ましい。ナイフオンベッド方式によれば、糸の周囲を包囲するように樹脂が付着・浸透しやすくなるものと考えられる。
【0025】
ナイフとベッドによる合成繊維織物の挟み力は0.5〜4.0N/cmとすることが好ましい。ここで挟み力とは、ナイフを合成繊維織物に押し付ける力を、合成繊維織物に接触しているナイフの幅で除したものである。挟み力が0.5N/cm未満の場合、樹脂の塗布量が多くなりすぎる虞があり、収納性・柔軟性が損なわれ、重量が重くなってしまう。挟み力が4.0N/cmを超えると、合成繊維織物の表面に、均一な樹脂被膜が形成されない虞がある。より好ましい挟み力は1.0〜3.0N/cmである。他のコーティング方式としては、コーティングを行う際の合成繊維織物の張力や、ナイフの刃圧を適宜調整する事で、フローティング方式を用いて製造することも可能である。
【0026】
ベッドの材質は特に限定されないが、天然ゴムや合成樹脂など適度な弾力を持つ素材が好ましい。中でも種々の硬度を持つものが容易に作成可能であるウレタン樹脂からなるものが好ましい。
【0027】
ナイフは金属製が好ましく、錆び難さや柔軟性・磨耗強さを考慮すると特にステンレス製が好ましい。ナイフの形状は特に限定されないが、合成繊維織物との接触部における刃の厚さが0.05〜0.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.2mmである。接触部における刃の厚さが0.5mmを超えると挟み力を大きくしても塗布量が多くなりすぎる虞があり、収納性・柔軟性が損なわれ、重量も重くなってしまう。刃の厚さが0.05mmに満たない場合、合成繊維織物との接触部である先端の刃の強度が不十分であり、折れ曲がりが発生して塗布量がばらついたり、スジやシワ、斑となったりする虞がある。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。なお、実施例における各種評価は下記の方法に従って測定した。
【0029】
(1)樹脂による糸の包囲率:エアバッグ用基布の樹脂被覆面に位置する経糸および緯糸の断面外周が該樹脂により包囲されている比率である。エアバッグ用基布を経糸あるいは緯糸に沿って切断し、露出した緯糸あるいは経糸の樹脂被覆面側に位置する断面について反射電子像(組成像)を撮影する。撮影には株式会社日立ハイテクノロジーズ製、走査電子顕微鏡S−3000Nを用いた。反射電子像では、樹脂部はフィラメント部よりも輝度がより強く映り、細部においても識別が可能である。図1が経糸断面の反射電子像の一例を示すものであるが、その周囲のほとんどが該樹脂により覆われていることがわかる。糸断面の周長を100%とし、それに対して樹脂により被覆されている部分の比率を測定し、包囲率(%)とする。ここで言う包囲とは、糸断面の外周に位置するフィラメント上に連続的に樹脂が付着している状態のことを言い、該場所において樹脂の連続性が途切れて空隙となっている部分は包囲されていないとみなす。
【0030】
(2)通気性:エアバッグ用基布の空気遮蔽性を評価するもので、JIS L 1096 8.27.1 A法(フラジール形法)にしたがって測定をした。
【0031】
(3)滑脱抵抗力:エアバッグ用基布の目ズレ・ホツレの発生し易さの程度を評価する。測定試料の幅を1cmに変更して測定した以外は、JIS L1096 8.21.3 ピン引掛け法にしたがった。
【0032】
(4)剛軟性:エアバッグ用基布の柔軟性を評価するもので、JIS L 1096 8.19.1 A法(45°カンチレバー法)にしたがって測定をした。
【0033】
(5)難燃性:FMVSS302に規定される方法により燃焼速度[mm/min.]を測定し、これをもって評価した。
【0034】
[実施例1]
丸断面のナイロン66繊維、470dtex/72フィラメントの糸を経糸および緯糸として製織し、経糸と緯糸の織密度がともに46本/2.54cmの平織の織物を得た。次いでこの織物を経糸と緯糸の織密度がともに46本/2.54cmを保持するようにして定法により精練、熱セットをおこなった。次に、粘度15,000mPa・sの無溶剤系シリコーン樹脂にて、接触部における刃の厚さ0.1mmのステンレス製ナイフとウレタン製ベッドを用いて、挟み力2.5N/cmで押し付けてコーティングをおこなった。その後ピンテンター乾燥機を用いて180℃、60秒で熱処理をし、樹脂塗布量が12g/mのエアバッグ用基布を得た。こうして得られたエアバッグ用基布を糸目方向に沿って切断した断面(図1)において、樹脂被覆面側に位置する糸の周囲を樹脂が包囲している比率が95%であり、12g/mの低塗布量でありながら、難燃性・滑脱抵抗力・柔軟性・空気遮断性に優れたものであった。
【0035】
[実施例2]
丸断面のナイロン66繊維、350dtex/72フィラメントの糸を経糸および緯糸として製織し、経糸と緯糸の織密度がともに58本/2.54cmの平織の織物を得た。次いでこの織物を経糸と緯糸の織密度がともに58本/2.54cmを保持するようにして定法により精練、熱セットをおこなった。次に、粘度15,000mPa・sの無溶剤系シリコーン樹脂にて、接触部における刃の厚さ0.1mmのステンレス製ナイフとウレタン製ベッドを用いて、挟み力2.5N/cmで押し付けてコーティングをおこなった。その後の熱処理は実施例1と同条件である。こうして得られたエアバッグ用基布は、樹脂塗布量が15g/mであり、糸目方向に沿って切断した断面(図2)において、樹脂被覆面側に位置する糸の周囲を樹脂が包囲している比率が95%であり、このエアバッグ用基布は難燃性・滑脱抵抗力・柔軟性・空気遮断性に優れたものであった。
【0036】
[実施例3]
丸断面のナイロン66繊維、470dtex/72フィラメントの糸を経糸および緯糸として製織し、経糸と緯糸の織密度がともに53本/2.54cmの平織の織物を得た。次いでこの織物を経糸と緯糸の織密度がともに53本/2.54cmを保持するようにして熱セットをおこなった。次に、粘度15,000mPa・sの無溶剤系シリコーン樹脂にて、接触部における刃の厚さ0.1mmのステンレス製ナイフとウレタン製ベッドを用いて、挟み力2.5N/cmで押し付けてコーティングをおこなった。その後ピンテンター乾燥機を用いて180℃、60秒で熱処理をし、樹脂塗布量が15g/mのエアバッグ用基布を得た。こうして得られたエアバッグ用基布は、糸目方向に沿って切断した断面において、樹脂被覆面側に位置する糸の周囲を樹脂が包囲している比率が100%であり、15g/mの低塗布量でありながら、難燃性・滑脱抵抗力・柔軟性・空気遮断性に優れたものであった。
【0037】
[比較例1]
丸断面のナイロン66繊維、470dtex/72フィラメントの糸を経糸および緯糸として製織し、経糸と緯糸の織密度がともに46本/2.54cmの平織の織物を得た。次いでこの織物を経糸と緯糸の織密度がともに46本/2.54cmを保持するようにして定法により精練、熱セットをおこなった。次に、粘度15,000mPa・sの無溶剤系シリコーン樹脂にて、接触部における刃の厚さ0.1mmのステンレス製ナイフとウレタン製ベッドを用いて、挟み力6.0N/cmで押し付けてコーティングをおこなった。その後ピンテンター乾燥機を用いて180℃60秒で熱処理をし、樹脂塗布量が12g/mのエアバッグ用基布を得た。こうして得られたエアバッグ用基布は、糸目方向に沿って切断した断面(図3)において、樹脂被覆面側に位置する糸の周囲を樹脂が包囲している比率が75%であった。このエアバッグ用基布は柔軟性、空気遮蔽性には優れているものの、難燃性・滑脱抵抗力が劣るものであった。
【0038】
[比較例2]
実施例1で製織、精練、熱セットを行った織物と同じ織物を用いて、接触部における刃の厚さ0.1mmのステンレス製ナイフを用いてフローティング方式にてコーティングをおこなった。使用した樹脂は、粘度15,000mPa・sの無溶剤系シリコーン樹脂である。その後、実施例1と同じ条件で熱処理を実施し、樹脂塗布量が12g/mのエアバッグ用基布を得た。こうして得られたエアバッグ用基布は、糸目方向に沿って切断した断面において、樹脂被覆面側に位置する糸の周囲を樹脂が包囲している比率が85%であった。このエアバッグ用基布は柔軟性、空気遮蔽性、難燃性には優れているものの、滑脱抵抗力が劣るものであった。
【0039】
[比較例3]
実施例1で製織、精練、熱セットを行った織物と同じ織物を用いて、ローラー上に織物を通し、任意の隙間幅でセットされたナイフにより、ナイフオンロール方式にてコーティングをおこなった。使用した樹脂は、粘度15,000mPa・sの溶剤系シリコーン樹脂であり、ナイフは一般にJ刃と呼ばれるもので接触部における刃の厚さは10mmであった。その後、実施例1と同じ条件で熱処理を実施し、樹脂塗布量が20g/mのエアバッグ用基布を得た。こうして得られたエアバッグ用基布は、糸目方向に沿って切断した断面(図4)において、樹脂被覆面側に位置する糸の周囲を樹脂が包囲している比率が65%であった。このエアバッグ用基布は柔軟性、空気遮蔽性には優れているものの、難燃性と滑脱抵抗力が劣るものであった。
【0040】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1で得られたエアバッグ用基布の経糸断面の反射電子像である。
【図2】実施例2で得られたエアバッグ用基布の経糸断面の反射電子像である。
【図3】比較例1で得られたエアバッグ用基布の経糸断面の反射電子像である。
【図4】比較例3で得られたエアバッグ用基布の経糸断面の反射電子像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維織物の少なくとも一方の面が樹脂で被覆されたエアバッグ用基布であって、該合成繊維織物の樹脂被覆面に位置する経糸および緯糸の断面外周が、該樹脂により90%以上包囲されていることを特徴とするエアバッグ用基布。
【請求項2】
樹脂の塗布量が20g/m以下であることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ用基布。
【請求項3】
樹脂がシリコーン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ用基布。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用基布を用いたエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−138305(P2008−138305A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323963(P2006−323963)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】