説明

エアバッグ装置用アクチュエータ

【課題】エアバッグ装置への組付作業効率を高めることが可能なエアバッグ装置用アクチュエータを提供すること。
【解決手段】アクチュエータAは、車両に搭載されるエアバッグ装置Mのエアバッグ18の膨張時の制御に使用される。アクチュエータAは、エアバッグ18から延びる連結部材29の先端29b側を係止させる係止部材35と、係止部材35と連結部材29との係止状態を解除可能に作動するアクチュエータ本体45と、を備える。係止部材35が、エアバッグ18を車体側に固定する固定部材32側に、配設される。アクチュエータ本体45が、係止部材35と別体として、作動時に、係止部材35を、連結部材29との係止を解除させるように移動可能に、構成されるとともに、固定部材32側に配設された係止部材35に対応させて、固定部材8に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグの膨張時における内圧制御や形状制御等に使用されるエアバッグ装置用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータとしては、エアバッグから延びる連結部材を係止する係止ピンと、作動時に係止ピンを移動させて連結部材との係止状態を解除させるアクチュエータ本体と、を備える構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のアクチュエータでは、エアバッグから延びる連結部材の先端側に形成される連結部を、折り畳まれたエアバッグを収納させた収納部材から突出させ、この連結部に、収納部材側に取り付けられるアクチュエータの係止ピンを挿通させて、エアバッグから延びる連結部材を、係止ピンに係止させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−315504公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のアクチュエータでは、アクチュエータ本体の作動時に、係止ピンを、アクチュエータ本体側から分離させつつ、移動させる構成であるものの、車両搭載時には、係止ピンは、アクチュエータ本体から突出されるように、アクチュエータ本体と一体的に構成されている。そのため、従来のアクチュエータでは、エアバッグ装置とともに車両に搭載させる際に、収納部材から突出している連結部材の連結部に、アクチュエータ本体から突出している係止ピンを挿通させつつ、アクチュエータ本体を収納部材に取り付ける構成であることから、アクチュエータ本体の取付作業時に、収納部材から突出している連結部材の長さを調整する必要があり(特に、連結部材が短い場合には、エアバッグから引き出しておく必要があるが、エアバッグが折り畳まれた状態では連結部材を引き出し難く)、エアバッグ装置への組付作業効率を向上させる点に、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグ装置への組付作業効率を高めることが可能なエアバッグ装置用アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置用アクチュエータは、車両に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグの内圧制御や形状制御に使用されるエアバッグ装置用アクチュエータであって、
エアバッグから延びる連結部材の先端側を係止させる係止部材と、係止部材と連結部材との係止状態を解除可能に作動するアクチュエータ本体と、を備える構成とされ、
係止部材が、エアバッグを車体側に固定する固定部材側に、配設され、
アクチュエータ本体が、係止部材と別体として、作動時に、係止部材を、連結部材との係止を解除させるように移動可能に、構成されるとともに、固定部材側に配設された係止部材に対応させて、固定部材に取り付けられることを特徴とする。
【0008】
本発明のエアバッグ装置用アクチュエータでは、エアバッグから延びる連結部材を係止させる係止部材が、アクチュエータ本体と別体として、エアバッグを車体側に固定する固定部材側に、形成されていることから、折り畳まれたエアバッグを固定部材に連結させる際に、同時に、エアバッグから延びる連結部材を、係止部材に係止させておくことができる。その後、アクチュエータ本体を、固定部材側に取り付けることとなるが、このとき、連結部材の先端が、固定部材側に配設される係止部材に係止されていることから、従来のごとく、アクチュエータを固定部材側に取り付ける取付作業時に、連結部材の長さを調整する必要がなく、アクチュエータ本体を、単に、係止部材に対応させつつ固定部材側に取り付ければよいことから、迅速に固定部材側に取り付けることができる。その結果、本発明のエアバッグ装置用アクチュエータでは、アクチュエータ本体の固定部材への取付作業を、エアバッグを固定部材側に連結させる作業と別の場所で行なうことも、容易であり、例えば、エアバッグを固定部材側に連結させて半組付状態(サブアッセンブリー)とした状態で、運搬し、エアバッグ装置を車両に搭載させる際に、アクチュエータ本体を、固定部材側に取り付けることも可能となる。
【0009】
したがって、本発明のエアバッグ装置用アクチュエータでは、エアバッグ装置への組付作業効率を高めることができる。
【0010】
また、本発明のエアバッグ装置用アクチュエータにおいて、係止部材を、固定部材からアクチュエータ本体側に突出するように配置するとともに、連結部材に形成される係止孔に挿通可能な係止ピンから、構成し、アクチュエータ本体の作動時に、アクチュエータ本体から離隔されるように移動して、連結部材における係止孔周縁との係止状態を解除させるように構成することが、好ましい。
【0011】
上記構成のエアバッグ装置用アクチュエータでは、エアバッグの連結部材には、係止ピンを挿通させる係止孔が形成されるのみであって、部分的に大きく出っ張るような部材が配置されないことから、アクチュエータ本体の作動後において、連結部材の先端が、エアバッグの内部に引き込まれるような態様となった際に、エアバッグを構成する基材に引っ掛かることを、抑制できる。
【0012】
さらに、上記構成のエアバッグ装置用アクチュエータにおいて、アクチュエータ本体を、作動時に点火されて駆動用ガスを発生可能とされるスクイブと、スクイブの外周側を覆うカバー部と、を備える構成とし、
係止ピンを、カバー部に形成される挿通孔を経て、先端側をカバー部内に挿入させるように配置させ、アクチュエータ本体の作動時に、挿通孔から抜けるように移動させる構成とすることが、好ましい。
【0013】
上記構成のエアバッグ装置用アクチュエータでは、アクチュエータ本体の作動時に、カバー部内に充満される駆動用ガスの圧力を利用して、係止ピンを移動させることができることから、係止ピンを迅速に移動させることができる。また、上記構成のエアバッグ装置用アクチュエータでは、車両搭載状態において、係止ピンの先端が、アクチュエータ本体のカバー部内に配置されることから、アクチュエータ本体の作動前に、係止ピンが、連結部材の係止孔から抜けることを確実に防止することができる。
【0014】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置用アクチュエータにおいて、係止ピンを、固定部材側から延びる連結部位によって、周方向側において略放射状となる少なくとも2箇所を固定部材に対して連結させるとともに、アクチュエータ本体の作動時に、連結部位を塑性変形させるように押し出される構成とし、
連結部位を、アクチュエータ本体の作動後に、固定部材との連結状態を維持させる構成とすることが好ましい。
【0015】
上記構成のエアバッグ装置用アクチュエータでは、係止ピンが、周方向側において略放射状となる位置に配置される連結部位によって、固定部材側に支持されていることから、アクチュエータ本体の作動時に、軸方向に沿って突出する(押し出される)ように移動する係止ピンの移動方向を安定させることができる。また、アクチュエータ本体の作動後にも、係止ピンは、連結部位により、固定部材側との連結を維持されていることから、移動した係止ピンが、周辺の部材と当たることを抑制できる。
【0016】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置用アクチュエータにおいて、固定部材を、
エアバッグを収納する収納部材と、
エアバッグを収納部材に取り付けるための取付手段を有する構成とされて、エアバッグの折り畳み時に、取付手段を外部に突出させつつエアバッグの内部に配置されるとともに、エアバッグを収納部材に取り付ける取付部材と、
を備える構成とし、
係止ピンを、取付部材に、形成させる構成とすることが、好ましい。
【0017】
上記構成のエアバッグ装置用アクチュエータでは、連結部材の先端側を係止ピンに係止させた状態で、エアバッグを折り畳むことができることから、連結部材の長さ寸法が、エアバッグを構成する基材と比較して、短く設定されている場合等にも、エアバッグを、連結部材の先端側と係止ピンとの係止を維持させた状態で、容易に折り畳むことができる。
【0018】
具体的には、取付部材としては、エアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を、収納部材に取り付ける板金製のリテーナを例示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態であるアクチュエータが使用されるステアリングホイール用エアバッグ装置を説明する図である。
【図2】実施形態のアクチュエータが使用されるステアリングホイール用エアバッグ装置の縦断面図である。
【図3】実施形態のアクチュエータが使用されるステアリングホイール用エアバッグ装置の部分底面図である。
【図4】図3のIV−IV部位の断面図である。
【図5】図3のV−V部位の断面図である。
【図6】実施形態のアクチュエータにおける係止部材が設けられるリテーナと、アクチュエータ本体と、アクチュエータ本体をバッグホルダに取り付ける取付ブラケットと、を示す概略分解斜視図である。
【図7】実施形態のアクチュエータにより作動を制御されるエアバッグを平らに展開した状態の斜視図である。
【図8】図7のエアバッグにおける排気孔の周囲を示す部分拡大斜視図であり、開き前と開き後とを示す。
【図9】実施形態のアクチュエータの作動前と作動後をと示す縦断面図である。
【図10】本発明の他の形態のアクチュエータにおける係止ピンを示す平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態のエアバッグ装置用アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」と省略する)Aは、ステアリングホイールWに搭載されるステアリングホイール用のエアバッグ装置Mに使用されるものである。アクチュエータAは、エアバッグ装置Mのインフレーター6とともに、図1に示す制御装置62によって、作動を制御されるように構成されている。
【0021】
なお、実施形態における前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両に搭載されたステアリングホイールWの直進操舵時を基準とするものであり、実施形態の場合、ステアリングホイールWを組み付けるステアリングシャフトSS(図2の二点鎖線参照)の軸方向に沿った上下を上下方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の前後を前後方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の左右を左右方向として、前後・上下・左右の方向を示すものである。
【0022】
制御装置62は、図2に示すように、座席SEに着座した運転者(乗員)MDの体格や着座位置を検知可能な乗員検知センサ、例えば、ステアリングホイールWと運転者MDとの距離を検知可能な位置検知センサ63や、運転者MDの重量を検知可能な重量検知センサ64と、電気的に接続されるとともに、車両の加速度や加速の方向等を検知可能な衝突検知センサ65と電気的に接続され、これらの位置検知センサ63や重量検知センサ64、あるいは、衝突検知センサ65からの電気信号を入力させて、インフレーター6を作動させるとともに、アクチュエータAを作動させる。そして、実施形態の場合、アクチュエータAは、エアバッグ装置Mの作動時におけるエアバッグ18の膨張時、エアバッグ18の内圧上昇を抑制可能に、エアバッグ18内に流入した膨張用ガスをエアバッグ18外へ排気させて、好適な膨張モードでエアバッグ18を膨張させるように、制御装置62に制御されて、作動する。
【0023】
エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、ステアリングホイールWの中央のボス部Bにおける上部に配置されている。ステアリングホイールWは、操舵時に把持するリング部Rと、中央に配置されてステアリングシャフトSSに連結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する図示しない所定数のスポーク部と、を備えて構成されている。また、ステアリングホイールWは、構成部品上では、エアバッグ装置Mとステアリングホイール本体1とから構成されている。
【0024】
ステアリングホイール本体1は、リング部Rやボス部B等の各部を連結するように配置されるアルミニウム合金等からなる芯金2と、リング部Rや図示しないスポーク部の部位の芯金2を被覆する合成樹脂製の被覆層3と、ボス部Bの下部に配置される合成樹脂製のロアカバー4と、を備えて構成されている。
【0025】
エアバッグ装置Mは、図2に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ18と、エアバッグ18に膨張用ガスを供給するインフレーター6と、エアバッグ18とインフレーター6とを収納して保持する収納部材としてのバッグホルダ8と、バッグホルダ8の側壁部10に保持されて折り畳まれたエアバッグ18の上方を覆うエアバッグカバーとしてのパッド13と、エアバッグ18とインフレーター6とをバッグホルダ8に取り付けるための取付部材としてのリテーナ32と、を備えて構成されている。
【0026】
インフレーター6は、上部に膨張用ガスを吐出する複数のガス吐出口6bを備えた略円柱状の本体部6aと、本体部6aの外周面から突出して配置される略四角板状のフランジ部6cと、を備えて構成されている。フランジ部6cにおける四隅には、リテーナ32の後述するボルト33cを挿通させるための挿通孔6dが、形成されている(図5参照)。
【0027】
収納部材としてのバッグホルダ8は、エアバッグ18を車体側(ステアリングホイール本体1)側に固定させる固定部材を構成するものであって、板金製とされて、略四角板形状の底壁部9と、底壁部9の周縁から上下に延びる側壁部10と、を備えて構成されている。底壁部9の中央付近には、図2に示すように、円形に開口してインフレーター6の本体部6aを下方から上方へ挿通可能な挿通孔9aが、形成されている。挿通孔9aの周縁には、リテーナ32の各ボルト33cを挿通させる4つの挿通孔9bが、形成されている(図5参照)。また、挿通孔9aの周縁であって、実施形態の場合、前縁側となる領域には、リテーナ32に形成される後述する係止ピン35のピン本体40を挿通可能に、略円形に開口した挿通孔9cが、形成されている(図4,5参照)。バッグホルダ8の側壁部10の上端には、図示しないが、四隅付近となる部位に、外方へ延びる取付片が、形成されている。この取付片には、図示しないホーンスイッチ機構の取付基板が取り付けられており、実施形態の場合、この図示しない取付基板を利用して、バッグホルダ8がステアリングホイールWの芯金2に取付固定され、エアバッグ装置Mが、ステアリングシャフトSSに装着済みのステアリングホイール本体1のボス部Bの上部に搭載されることとなる。また、バッグホルダ8の側壁部10には、リベット16等を利用して、パッド13の側壁部15が取り付けられている(図2参照)。
【0028】
パッド13は、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂から形成されて、図2に示すように、ボス部Bの上部を覆う天井壁部14と、天井壁部14の外周縁から下方に延びてバッグホルダ8の外周側を覆う略筒状の側壁部15と、を備えて構成されている。天井壁部14における側壁部15の内側の部位は、折り畳まれたエアバッグ18の上方を覆う部位として構成され、エアバッグ18の膨張時に押されて前後両側に開く二枚の扉部15aを、配設させている。パッド13の側壁部15は、上述したように、リベット16を利用して、バッグホルダ8の側壁部10に取り付けられている。
【0029】
エアバッグ18は、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から構成されるもので、実施形態の場合、図7に示すように、外形形状を同一の略円形状として、膨張完了時に乗員側に配置される乗員側壁部26と、膨張完了時にステアリングホイールW側に配置される車体側壁部19と、の外周縁相互を結合させて袋状として、膨張完了形状を、図1の二点鎖線に示すように、ステアリングホイールWの上面側を略全面にわたって覆い可能な略円板状として、形成されている。エアバッグ18における車体側壁部19の中央には、図7に示すように、流入用開口20が、円形に開口して形成されている。この流入用開口20は、インフレーター6の本体部6aを下方から挿入させて、インフレーター6のガス吐出口6bから吐出される膨張用ガスを、エアバッグ18の内部に流入させるための部位である。流入用開口20の周縁には、リテーナ32の各ボルト33cを挿通させる取付孔21が、4箇所に、形成されている。また、車体側壁部19における流入用開口20の前方の領域には、円形に開口した排気孔24が、形成されている。排気孔24と流入用開口20との間には、排気孔24の後縁近傍と、流入用開口20の前縁近傍と、の2箇所に、排気孔24を塞ぐフラップ28から延びるベルト29を挿通可能に、左右方向に沿って形成されるスリット状の挿通孔23A,23Bが、形成される。また、流入用開口20の前縁側であって、流入用開口20と挿通孔23Bとの間には、リテーナ32に形成される係止ピン35のピン本体40を突出させる貫通孔22が、形成されている(図4,5参照)。
【0030】
エアバッグ18における車体側壁部19の外周面側には、排気孔24を塞ぐように、フラップ28が、配設されている(図7,8参照)。実施形態の場合、フラップ28は、排気孔24における流入用開口20から離れる側の縁部(前縁側)に、結合されている。具体的には、フラップ28は、エアバッグ18と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されるもので、外形形状を、排気孔24を塞ぎ可能な略長方形状とされて、流入用開口20から離れて配置される一辺(実施形態の場合、前側の辺)を、車体側壁部19に結合されている。そして、フラップ28は、この車体側壁部19への結合部位をヒンジ部28aとして、排気孔24から流入しようとする膨張用ガスに押された際に、図8のBに示すように、ヒンジ部28aと対向する先端28b(流入用開口20側の一辺)側から開くように、構成されている。
【0031】
実施形態のエアバッグ18では、フラップ28には、先端側から流入用開口20側に向かって延びる連結部材としてのベルト29が、配置されている。このベルト29は、可撓性を有したポリエステル糸等からなる帯状の布材から形成されて、元部29a側をフラップ28の先端28b付近に結合され、フラップ28のヒンジ部28aから、ヒンジ部28aと対向して配置されて開きの先端側となる先端28bへ向かう方向(実施形態の場合、前後方向)に沿って延びるように、配設されている。ベルト29の先端29b側には、リテーナ32に形成される係止ピン35のピン本体40(アクチュエータAの係止部材)を挿通可能な係止孔29cが、形成されている。このベルト29は、図7に示すように、フラップ28側となる元部29a側と、係止孔29c側となる先端29b側と、を、エアバッグ18の外周側に位置させ、中間部位をエアバッグ18の内周側に位置させるように、エアバッグ18の車体側壁部19に形成される挿通孔23A,23Bに、それぞれ、挿通されて、図4,5に示すように、先端29b側に形成される係止孔29c周縁を、係止ピン35のピン本体40に係止された状態で、車両に搭載されることとなる。実施形態の場合、ベルト29の先端29bは、エアバッグ18の外周側において、エアバッグ18の車体側壁部19における流入用開口20の周縁部位を介して、バッグホルダ8の底壁部9とリテーナ32における本体部33の押え板部33aとにより挟持されつつ、係止孔29c周縁を、係止ピン35のピン本体40に係止されている。このベルト29の長さ寸法は、ピン本体40が係止孔29c周縁を係止した状態でエアバッグ18が膨張する際に、フラップ28により排気孔24を塞ぎ可能な寸法に設定されており、実施形態の場合、エアバッグ18とベルト29をともに平らに展開して重ねた状態において、エアバッグ18に形成される貫通孔22と、ベルト29の係止孔29cとの位置を略一致させるような寸法に、設定されている。
【0032】
そして、実施形態のエアバッグ18では、係止孔29c周縁が係止ピン35のピン本体40により係止された状態でエアバッグ18が膨張する場合には、フラップ28の先端28b側が、挿通孔23Aに挿通されるベルト29の元部29a側により押えられることとなり、図8のAに示すように、フラップ28が排気孔24を塞いだ状態で、エアバッグ18が膨張することとなる。一方、アクチュエータAが作動して、係止孔29cからピン本体40が抜けた状態でエアバッグ18が膨張する場合には、排気孔24から流出しようとする膨張用ガスにフラップ28が押され、ベルト29を挿通孔23A,23Bにおいて抜き移動させつつ、図8のBに示すように、フラップ28が開いて排気孔を開口させることから、排気孔24からエアバッグ18外へ膨張用ガスが流出し、エアバッグ18の内圧の上昇を抑制することができる。実施形態のエアバッグ18では、ベルト29の先端29bは、車体側壁部19における流入用開口20周縁の部位を介して、バッグホルダ8の底壁部9とリテーナ32における本体部33の押え板部33aとにより挟持されているが、押え板部33aには、後述するごとく、ベルト29を挿通可能にベルト29の厚み分凹ませた凹部33bが、形成され(図6参照)、ベルト29の先端29bは、図4,5に示すように、この凹部33bの部位に挿入されていることから、係止孔29cからピン本体40が抜ければ、ベルト29の先端29bを、底壁部9とリテーナ32の本体部33との間から容易に引き抜くことができ、フラップ28を迅速に開かせることができる。
【0033】
なお、実施形態の場合、制御装置62が、位置検知センサ63からの信号により、運転者MDがステアリングホイールWに接近しすぎていることを検知したり、あるいは、重量検知センサ64からの信号により、運転者MDが小柄であることを検知している場合において、エアバッグ装置Mのインフレーター6の作動と同時、若しくは、若干遅らせて、膨張時のエアバッグ18の内圧を低減させるように、制御装置62が、アクチュエータAを作動させることとなる。
【0034】
取付部材としてのリテーナ32は、エアバッグ18を車体側(ステアリングホイール本体1)側に固定させる固定部材を構成するものであって、板金製とされて、図6に示すように、本体部33と、アクチュエータを構成する係止部材としての係止ピン35と、を、備える構成である。本体部33は、図2〜5に示すように、エアバッグ18の内周側に配置されて、エアバッグ18における流入用開口20周縁を押え可能な略四角環状との押え板部33aと、押え板部33aの四隅において下方へ突出するように形成される取付手段としてのボルト33cと、を、備えている。押え板部33aにおいて、係止ピン35の周囲の部位は、図6に示すように、押え板部33aの幅方向の全域にわたって、ベルト29の厚さ分上方に浮き上がらせるように、形成されている。すなわち、押え板部33aにおける係止ピン35の周囲の部位は、押え板部33aの他の部位よりも、ベルト29の厚さ分上方に凹ませるように、構成されている。この凹部33bは、図3,6に示すように、押え板部33aの外周縁にかけて幅広とするように構成されているが、狭幅となる内周側の領域の幅寸法T1(図6参照)を、ベルト29の幅寸法T2(図8のA参照)より大きくして、ベルト29を挿通可能に構成されており、車両搭載時に、この凹部33bの領域に、エアバッグ18の車体側壁部19における流入用開口20の周縁の部位を介して、係止孔29c周縁を係止ピン35のピン本体40に係止されているベルト29の先端29bを挿通させる構成である(図4,5参照)。リテーナ32は、ボルト33cをエアバッグ18の取付孔21から突出させた状態で、エアバッグ18内に収納されて、バッグホルダ8への取付時、各ボルト33cを、バッグホルダ8の底壁部9を経て、インフレーター6のフランジ部6cから突出させて、ナット42止めすることにより、エアバッグ18とインフレーター6とをバッグホルダ8に取付固定している。
【0035】
アクチュエータAは、エアバッグ18から延びるベルト29(連結部材)の先端29b側を係止させる係止部材としての係止ピン35と、係止ピン35とベルト29との係止状態を解除可能に作動するアクチュエータ本体45と、を備えている。実施形態の場合、アクチュエータAは、インフレーター6の前方となる位置に、配設されている(図2参照)。
【0036】
係止部材としての係止ピン35は、図4〜6に示すように、リテーナ32の本体部33における前側の領域に、配置されている。係止ピン35は、実施形態の場合、リテーナ32の本体部33における押え板部33aの一部を切り欠くようにして形成される取付座36と、取付座36から下方に突出するように配設されるピン本体40と、を備えて構成されている。
【0037】
取付座36は、押え板部33aと一体として形成されるもので、略円板状の取付板部37と、取付板部37と周囲の押え板部33aとを連結するように押え板部33a側から延びる連結部位38と、を備えている。連結部位38は、実施形態の場合、図5,6に示すように、取付板部37の外周縁に沿った周方向側(ピン本体40の周方向側)において放射状となる2箇所に、形成されている。各連結部位38は、アクチュエータ本体45の作動時に、塑性変形され、かつ、アクチュエータ本体45の作動後に、ピン本体40と押え板部33aとの連結状態を維持するように、構成されている。具体的には、実施形態では、各連結部位38は、外形形状を略帯状とされるとともに、中間部位を上方に突出させるような断面略逆U字形状に、湾曲して形成され、アクチュエータ本体45の作動時において、ピン本体40がアクチュエータ本体45から離隔されるように上昇移動する際に、湾曲状態を伸ばすように塑性変形されることとなる(図9のB参照)。実施形態の場合、取付座36は、プレス加工により押え板部33aと一体成形されている。
【0038】
ピン本体40は、外形形状を略円柱状として、取付板部37から下方に突出するように、形成されている。実施形態の場合、ピン本体40は、金属製として、かしめにより取付板部37に固着されている。このピン本体40は、図4,5に示すように、車両搭載時に、エアバッグ18の貫通孔22、及び、バッグホルダ8の底壁部9に形成される挿通孔9cを経て、底壁部9の下面よりも下方に突出している先端40a側を、アクチュエータ本体45の後述するカバー部53に形成される挿通孔55aを経て、カバー部53内に挿入させるように、構成されている。実施形態の場合、ピン本体40は、長さ寸法を、カバー部53内に挿入されている先端40a側の端面(先端面40b)と、アクチュエータ本体45のスクイブ46(ホルダ48の頭部49)と、の間に隙間を有するような寸法に、設定されている(図4,5参照)。
【0039】
アクチュエータ本体45は、図4,5に示すように、作動時に点火されて駆動用ガスを発生可能とされるスクイブ46と、スクイブ46を保持するホルダ48と、スクイブ46の外周側を覆うカバー部53と、を備える構成とされるもので、実施形態の場合、軸方向を上下方向に沿わせた略円柱状として、構成されている。
【0040】
スクイブ46は、アクチュエータ本体45の作動時に、制御装置62からの電気信号を入力して、点火され、本体部46a内に内蔵されている火薬を燃焼させて、ホルダ48の上端側に形成される開口から駆動用ガスGを吐出させる構成であり、本体部46aの下端側に配置されるターミナル46bを、外部に露出させるように、ホルダ48に保持されている。実施形態の場合、スクイブ46は、ターミナル46bに、制御装置62から延びるリード線52aに連結されるコネクタ52(図4の二点鎖線参照)を、接続させることにより、制御装置62と電気的に接続されている。
【0041】
スクイブ46を保持するホルダ48は、金属製とされて、ターミナル46bの領域を除いた略全域にわたってスクイブ46の外周側を覆うような略円柱状として構成され、上端側においてスクイブ46の本体部46aの外周側を覆っている頭部49と、頭部49の下方に配置されて周方向に沿った全域にわたって突出する大径のフランジ部50と、下端側においてフランジ部50より小径とされる小径部51と、を、有している。頭部49の上面側には、スクイブ46の作動時に発生する駆動用ガスGを吐出可能な開口49aが、形成されている。
【0042】
カバー部53は、板金製とされるもので、スクイブ46の上部側(ホルダ48の頭部49)の外周側を覆うように、構成されている。詳細に説明すれば、カバー部53は、ホルダ48におけるフランジ部50の上面側から延びる略円筒状として、構成され、ホルダ48の頭部49における周方向側を覆い可能な略円筒状の周壁部54と、周壁部54の先端側(上端側)を閉塞するように形成される天井壁部55と、を備えている。また、実施形態の場合、カバー部53は、周壁部54の元部側(下端54a側)を、ホルダ48のフランジ部50の上面側に形成される嵌合凹溝50aに嵌合させることにより、スクイブ46を保持させたホルダ48と一体化されている。カバー部53における天井壁部55の中央には、係止ピン35のピン本体40を挿通可能な挿通孔55aが、形成されている。この挿通孔55aの内径寸法は、作動前の状態で、内周縁とピン本体40との間に極力隙間を生じさせないように、ピン本体40の外径寸法より僅かに大きくするように、構成されている。
【0043】
このアクチュエータ本体45は、図3〜6に示すように、取付ブラケット57を利用して、バッグホルダ8に取り付けられている。アクチュエータ本体45をバッグホルダ8に取り付ける取付ブラケット57は、図5,6に示すように、略帯状の板金素材を略階段状に曲げ加工して形成されるもので、下端側に、バッグホルダ8の底壁部9に略沿って形成されるとともにアクチュエータ本体45を保持可能とされる保持片部58を、備え、上端側に、バッグホルダ8の底壁部9に略沿って形成されるとともにバッグホルダ8に取り付けられる取付片部59を、備える構成とされている。保持片部58は、アクチュエータ本体45におけるホルダ48の小径部51を挿通可能な挿通孔58aを有し、この挿通孔58aの周縁58bで、ホルダ48のフランジ部50の下面50b側を支持するように、構成されている。この保持片部58は、小径部51を挿通させた挿通孔58aの周縁58bの部位を、ホルダ48のフランジ部50の下面50bと固着させることにより、アクチュエータ本体45を保持する構成である。取付片部59には、リテーナ32に形成されるボルト33cの1つ(実施形態の場合、前右隅に配置されるボルト33ca)を挿通可能な挿通孔59aが、形成されている。すなわち、実施形態の場合、アクチュエータ本体45は、エアバッグ18及びインフレーター6をバッグホルダ8に取り付けるリテーナ32を利用して、エアバッグ18及びインフレーター6とともに、取付ブラケット57の取付片部59を介して、バッグホルダ8に取り付けられている。
【0044】
次に、実施形態のエアバッグ装置M及びアクチュエータAの車両への搭載について説明する。まず、ボルト33c(33ca)とピン本体40とを取付孔21及び貫通孔22から突出させるようにして、流入用開口20から、エアバッグ18の内部にリテーナ32を配置させる。そして、貫通孔22から突出しているピン本体40を、排気孔24を閉塞しているフラップ28から延びて、挿通孔23A,23Bに中間部位を挿通させたベルト29の先端29b側に形成される係止孔29cから突出させ、係止孔29c周縁を、ピン本体40により係止させる。そして、エアバッグ18を、車体側壁部19と乗員側壁部26とを平らに展開した状態から、係止孔29c周縁のピン本体40による係止状態を維持しつつ、バッグホルダ8内に収納可能なように折り畳み、折り崩れしないように、折り畳まれたエアバッグ18の周囲を所定の折り崩れ防止材によりくるんでおく。このとき、リテーナ32のボルト33c(33ca)及びピン本体40は、折り崩れ防止材から突出させておく。次いで、リテーナ32の各ボルト33c(33ca)を挿通孔9bから突出させ、ピン本体40の先端を挿通孔9cから突出させるようにして、バッグホルダ8内の底壁部9上にエアバッグ18を収納させ、各ボルト33c(33ca)に、図示しないスプリングワッシャを嵌め、エアバッグ18をバッグホルダ8に仮固定させる。その後、バッグホルダ8にパッド13を被せて、リベット16等を利用して側壁部10,15相互を連結して、バッグホルダ8にパッド13を取り付け、さらに、バッグホルダ8の図示しない取付片に、図示しないホーンスイッチ機構を組み付ければ、エアバッグ仮組付体(サブアッセンブリー)を組み立てることができる。
【0045】
その後、エアバッグ仮組付体におけるバッグホルダ8の底壁部9の下方から、インフレーター6の本体部6aを、底壁部9の挿通孔9aに挿入させつつ、フランジ部6cの挿通孔6dにリテーナ32の各ボルト33c(33ca)を貫通させ、さらに、取付ブラケット57を予め固着させておいたアクチュエータ本体45を、カバー部53の挿通孔55aにピン本体40の先端40aを挿通させつつ、取付ブラケット57の取付片部59の挿通孔59aにボルト33caを貫通させて、各ボルト33c(33ca)にナット42を締結させれば、アクチュエータAを組み立てることができると同時に、エアバッグ装置Mを組み立てることができる。このエアバッグ装置Mは、予め、ステアリングシャフトSSに締結したステアリングホイール本体1に対して、ホーンスイッチ機構の図示しない取付基板を利用して、取り付ければ、車両に搭載することができる。なお、エアバッグ装置Mの車両への搭載時には、アクチュエータ本体45のスクイブ46のターミナル46bに、制御装置62から延びるリード線52aの先端側に配置されるコネクタ52が、接続され、インフレーター6にも、制御装置62と電気的に接続される所定のリード線が結線されることとなる。
【0046】
実施形態のアクチュエータAでは、図9に示すように、制御装置62からの作動信号を受けてスクイブ46が点火されると、内部の火薬を燃焼させて駆動用ガスGが発生し、アクチュエータ本体45におけるスクイブ46とカバー部53との間に囲まれた空間に充満されて、係止ピン35におけるピン本体40の先端面40b(下面)を、上方に押し上げることとなる。そして、ピン本体40が、連結部位38を、湾曲状態を伸ばすように塑性変形させつつ、アクチュエータ本体45から離隔されるように上昇移動することとなる(図9のB参照)。その後、係止ピン35のピン本体40が、ベルト29の先端29b側に形成される係止孔29cから抜けて、ベルト29の係止を解除することから、図8のBに示すように、ベルト29に連結されていたフラップ28が、エアバッグ18の排気孔24を開口させ、排気孔24から膨張用ガスが排気されることとなる。実施形態の場合、ピン本体40は、先端面40bを周囲の押え板部33aより上方に位置させるように、上昇移動することとなり(図9のB参照)、アクチュエータ本体45の作動後にも、連結部位38は、ピン本体40と押え板部33aとの連結状態を維持している。
【0047】
そして、実施形態のアクチュエータAでは、エアバッグ18から延びる連結部材としてのベルト29を係止させる係止ピン35(係止部材)が、アクチュエータ本体45と別体として、エアバッグ18を車体側に固定する固定部材側に、形成されていることから、折り畳まれたエアバッグ18を固定部材に連結させる際に、同時に、エアバッグ18から延びるベルト29を、係止ピン35に係止させておくことができる。詳細に説明すれば、実施形態の場合、係止ピン35は、固定部材であって、エアバッグ18を収納部材としてのバッグホルダ8に取り付けるリテーナ32(取付部材)に、形成されている。そして、ボルト33c及び係止ピン35のピン本体40を突出させるように、内部にリテーナ32を配置させ、かつ、ピン本体40を、ベルト29の先端29b側の係止孔29cに挿通させた状態のエアバッグ18を折り畳み、折り畳まれたエアバッグ18を、リテーナ32の各ボルト33cを底壁部9から突出させて、スプリングワッシャを嵌めることにより、バッグホルダ8に仮固定させれば、ベルト29の先端29bは、リテーナ32の押え板部33aとバッグホルダ8との底壁部9とにより挟持されて、係止ピン35との係止状態を維持させることができる。その後、アクチュエータ本体45を、バッグホルダ8に取り付けることとなるが、このとき、連結部材としてのベルト29の先端29bが、バッグホルダ8に仮固定されるリテーナ32に配設される係止ピン35のピン本体40に係止されていることから、従来のごとく、アクチュエータを固定部材側に取り付ける取付作業時に、連結部材の長さを調整する必要がなく、アクチュエータ本体45を、単に、係止ピン35に対応させつつバッグホルダ8に取り付ければよいことから、迅速にバッグホルダ8に取り付けることができる。その結果、実施形態のアクチュエータAでは、アクチュエータ本体45のバッグホルダ8への取付作業を、エアバッグ18をバッグホルダ8に連結させる作業と別の場所で行なうことも、容易であり、例えば、エアバッグ18をバッグホルダ8に連結させ、パッド13をバッグホルダ8に連結させた状態の半組付状態(エアバッグ仮組付体)とした状態で、運搬し、エアバッグ装置Mを車両に搭載させる際に、アクチュエータ本体45を、インフレーター6とともに、同じ作業場所で、バッグホルダ8に取り付けることも可能となる。すなわち、実施形態のアクチュエータAでは、アクチュエータ本体45をインフレーター6と略同時に、バッグホルダ8に取り付けることができることから、火薬を使用した部品を同じ場所で組み付けることができて、好ましい。
【0048】
したがって、実施形態のアクチュエータAでは、エアバッグ装置Mへの組付作業効率を高めることができる。
【0049】
また、実施形態のアクチュエータAでは、係止部材が、固定部材としてのバッグホルダ8からアクチュエータ本体45側に突出するように構成されて、ベルト29に形成される係止孔29cに挿通可能な係止ピン35から、構成され、この係止ピン35のピン本体40は、アクチュエータ本体45の作動時に、アクチュエータ本体45から離隔されるように移動して、ベルト29の係止孔29c周縁との係止状態を解除させるように構成されている。すなわち、実施形態のアクチュエータAでは、エアバッグ18のベルト29には、係止ピン35のピン本体40を挿通させる係止孔29cが形成されるのみであって、部分的に大きく出っ張るような部材が配置されないことから、アクチュエータ本体45の作動後において、ベルト29の先端29bが、エアバッグ18の内部に引き込まれるような態様となった際に、エアバッグ18を構成する基材(実施形態の場合、車体側壁部19におけるベルト29を挿通させる挿通孔23A,23Bの周縁の部位等)に引っ掛かることを、抑制できる。勿論、このような点を考慮しなければ、エアバッグの連結部材側に、突状の部材を設け、係止部材側に、この突状の部材を挿通させるような係止孔を配設させるような構成としてもよく、さらには、エアバッグの連結部材と、係止部材と、を、相互に係止可能なフック状の部材から、構成してもよい。
【0050】
さらに、実施形態のアクチュエータAでは、アクチュエータ本体45が、作動時に点火されて駆動用ガスを発生可能とされるスクイブ46と、スクイブ46の外周側を覆うカバー部53と、を備える構成とし、係止ピン35のピン本体40は、カバー部53に形成される挿通孔55aを経て、先端40a側をカバー部内に挿入させるように配置されて、アクチュエータ本体45の作動時に、挿通孔55aから抜けるように移動する構成とされている。そのため、実施形態のアクチュエータAでは、アクチュエータ本体45の作動時に、カバー部53内に充満される駆動用ガスGの圧力を利用して、係止ピン35のピン本体40を移動させることができることから、係止ピン35を迅速に移動させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、アクチュエータ本体の駆動源は、スクイブに限られるものではなく、油圧・水圧・空気圧、あるいは、インフレーター等の膨張するガス圧を発生させる場合を含めた流体圧を利用するピストンシリンダ、それらの流体圧や電気を利用したモータ、電磁ソレノイド、復元時の付勢力を利用するばね等を、使用することができる。また、実施形態のアクチュエータAでは、車両搭載状態において、係止ピン35におけるピン本体40の先端40aが、アクチュエータ本体45のカバー部53内に配置されることから、アクチュエータ本体45の作動前に、ピン本体40が、連結部材としてのベルト29の係止孔29cから抜けることを確実に防止することができる。
【0051】
さらにまた、実施形態のアクチュエータAでは、係止ピン35のピン本体40が、リテーナ32の押え板部33a側から延びる連結部位38によって、周方向側において略放射状となる2箇所を、押え板部33aに対して連結させている。すなわち、実施形態のアクチュエータAでは、係止ピン35のピン本体40が、周方向側において略放射状となる位置に配置される連結部位38によって、固定部材側に支持されていることから、アクチュエータ本体45の作動時に、軸方向に沿って突出する(押し出される)ように移動する係止ピン35のピン本体40の移動方向を安定させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、係止ピンを、押え板部側に対して1箇所のみで連結させるように構成してもよい。また、実施形態のアクチュエータAでは、ピン本体40を押え板部33a側に連結させている連結部位38は、中間部位を上方に突出させるように、湾曲して形成され、アクチュエータ本体45の作動時に、湾曲状態を伸ばすように塑性変形されることとなるが、アクチュエータ本体45の作動後にも、押え板部33a側との連結状態を維持されることとなる。すなわち、実施形態のアクチュエータAでは、アクチュエータ本体45の作動後にも、係止ピン35のピン本体40は、連結部位38により、押え板部33a側との連結を維持されていることから、移動したピン本体40が、周辺の部材と当たることを抑制できる。なお、このような点を考慮しなければ、係止ピンを押え板部側に連結する連結部位を、例えば、押え板部及び係止ピンと別体の紐状部材等から形成して、係止ピンの移動時に、係止ピンと押え板部との連結状態を解除するような構成としてもよい。
【0052】
なお、実施形態では、連結部位38は、ピン本体40の周囲において、放射状となる2箇所に形成されるとともに、中間部位を上方に突出させるような湾曲した帯状として、形成されているが、連結部位の外形形状はこれに限られるものではなく、図10に示すように、連結部材38Aとして、周方向側において略放射状となる3箇所に形成されるとともに、押え板部33a側から連なるように形成されて、ピン本体40を中心として渦巻状に伸びて、ピン本体40側を狭幅とし押え板部33a側を広幅とした略帯状とした構成のものを、使用してもよい。この連結部材38Aは、上方に突出せず、連結部材38Aから連なるような平板状としているが、渦巻状に湾曲していることから、押え板部33aの縁部と取付板部37とを結んだ直線距離よりも、長さを長くされることとなり、狭幅となる取付板部37との連結部位付近を塑性変形されつつ、ピン本体40を押し上げることができる。勿論、このような渦巻状に湾曲している連結部材38Aを、中間部位を上方に突出させるように湾曲させてもよい。
【0053】
さらにまた、実施形態のアクチュエータAでは、係止ピン35が、エアバッグ18をバッグホルダ8に取り付けるための取付部材としてのリテーナ32に、形成されている。そして、このリテーナ32は、エアバッグ18の折り畳み時に、取付手段としてのボルト33cを外部に突出させつつエアバッグ18の内部に配置されることとなり、このとき、係止ピン35のピン本体40も、貫通孔22を経て、エアバッグ18の外部に突出されることとなる。そのため、実施形態のアクチュエータAでは、連結部材としてのベルト29の先端29b側を係止ピン35に係止させた状態で、エアバッグ18を折り畳むことができる。特に、実施形態のエアバッグ18のごとく、連結部材としてのベルト29が、車体側壁部19に形成される挿通孔23A,23Bを挿通されて、中間部位をエアバッグ18の内周側に位置させ、先端29b側をエアバッグ18の外周側に位置させるように構成される場合、エアバッグ18の折り畳み時に、ベルト29の先端29b側を挿通孔23Bから突出させた状態を維持させるために、別途クリップ等を使用する必要があるが、実施形態のアクチュエータAでは、リテーナ32を内部に配置させて、ベルト29の先端29b側を係止ピン35に係止させた状態で、エアバッグ18を折り畳むことができることから、容易にエアバッグを折り畳むことができる。同様に、連結部材の長さ寸法が、エアバッグを構成する基材と比較して、短く設定されている構成のエアバッグを使用する場合にも、エアバッグを、連結部材の先端側と係止ピンとの係止を維持させた状態で、容易に折り畳むことができる。
【0054】
なお、実施形態では、取付部材として、エアバッグとインフレーターとをバッグホルダに取り付けるリテーナを例に採り説明しているが、例えば、インフレーターのフランジ部に、取付手段としてのボルトが形成されて、リテーナを使用しないタイプのエアバッグ装置では、インフレーターのフランジ部に、係止ピンを形成してもよい。このような構成のエアバッグ装置では、エアバッグは、ボルトと係止ピンとを突出させるようにして、インフレーターの一部を内部に収納させた状態で、折り畳まれることとなる。勿論、上記のような点を考慮しなければ、係止ピンを、収納部材であるバッグホルダの底壁部に、配設させる構成としてもよい。
【0055】
また、実施形態では、アクチュエータ本体45をバッグホルダ8に取り付ける取付ブラケット57が、リテーナ32のボルト33caを利用して、共止めされている。そのため、アクチュエータ本体をバッグホルダ(収納部材)側に取り付ける取付手段が不要となり、部品点数の低減や軽量化を図ることができる。勿論、アクチュエータ本体は、リテーナと別の部位で、バッグホルダに取り付ける構成としてもよい。
【0056】
なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ18から延びる連結部材としてのベルト29は、エアバッグ18の車体側壁部19に形成される排気孔24を閉塞可能なフラップ28に連結されており、アクチュエータAは、エアバッグ18の内圧制御のために使用されている。勿論、アクチュエータの用途はこれに限られるものではなく、エアバッグから延びる連結部材を、エアバッグの膨張時の外形形状を規制するテザーとして、アクチュエータを、エアバッグの形状制御のために使用してもよい。なお、本発明のアクチュエータを使用可能なエアバッグ装置は、ステアリングホイール用のものに限定されるものではなく、助手席用のエアバッグ装置に、本発明のアクチュエータを使用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
6…インフレーター、
8…バッグホルダ(固定部材、収納部材)、
13…パッド(エアバッグカバー)、
18…エアバッグ、
22…貫通孔、
24…排気孔、
28…フラップ、
29…ベルト(連結部材)、
29b…先端、
29c…係止孔、
32…リテーナ(固定部材、取付部材)、
33…本体部、
33c…ボルト(取付手段)、
35…係止ピン(係止部材)、
38…連結部位、
40…ピン本体、
40a…先端、
40b…先端面、
45…アクチュエータ本体、
46…スクイブ、
53…カバー部、
55a…挿通孔、
62…制御装置、
G…駆動用ガス、
M…エアバッグ装置、
W…ステアリングホイール、
A…アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグの膨張時の制御に使用されるエアバッグ装置用アクチュエータであって、
前記エアバッグから延びる連結部材の先端側を係止させる係止部材と、該係止部材と前記連結部材との係止状態を解除可能に作動するアクチュエータ本体と、を備える構成とされ、
前記係止部材が、前記エアバッグを車体側に固定する固定部材側に、配設され、
前記アクチュエータ本体が、前記係止部材と別体として、作動時に、前記係止部材を、前記連結部材との係止を解除させるように移動可能に、構成されるとともに、前記固定部材側に配設された前記係止部材に対応させて、前記固定部材に取り付けられることを特徴とするエアバッグ装置用アクチュエータ。
【請求項2】
前記係止部材が、前記固定部材から前記アクチュエータ本体側に突出するように配置されるとともに、前記連結部材に形成される係止孔に挿通可能な係止ピンから、構成され、前記アクチュエータ本体の作動時に、前記アクチュエータ本体から離隔されるように移動して、前記連結部材における係止孔周縁との係止状態を解除させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置用アクチュエータ。
【請求項3】
前記アクチュエータ本体が、作動時に点火されて駆動用ガスを発生可能とされるスクイブと、前記スクイブの外周側を覆うカバー部と、を備える構成とされ、
前記係止ピンが、前記カバー部に形成される挿通孔を経て、先端側を前記カバー部内に挿入させるように配置され、前記アクチュエータ本体の作動時に、前記挿通孔から抜けるように移動することを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置用アクチュエータ。
【請求項4】
前記係止ピンが、前記固定部材側から延びる連結部位によって、周方向側において略放射状となる少なくとも2箇所を、前記固定部材に対して連結される構成とされるとともに、前記アクチュエータ本体の作動時に、前記連結部位を塑性変形させるように押し出される構成とされ、
前記連結部位が、前記アクチュエータ本体の作動後に、前記係止ピンと前記固定部材との連結状態を維持されていることを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置用アクチュエータ。
【請求項5】
前記固定部材が、
前記エアバッグを収納する収納部材と、
前記エアバッグを前記収納部材に取り付けるための取付手段を有する構成とされて、前記エアバッグの折り畳み時に、前記取付手段を外部に突出させつつ前記エアバッグの内部に配置されるとともに、前記エアバッグを前記収納部材に取り付ける取付部材と、
を備える構成とされ、
前記係止ピンが、前記取付部材に、設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置用アクチュエータ。
【請求項6】
前記取付部材が、前記エアバッグと、前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を、前記収納部材に取り付ける板金製のリテーナであることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置用アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−195044(P2011−195044A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64670(P2010−64670)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】