説明

エアロック扉装置

【課題】 できるだけエアロック扉装置の構造を簡潔にして動作トラブルや故障の発生を極力抑えると共に、差圧管理が破綻するような2つの扉の同時開状態になることがないエアロック扉装置を提供すること。
【解決手段】 調圧部屋に設けた出入口通路1の前後に、スライド式の第1扉5と第2扉6を設け、当該両扉5,6の間に、機械的インターロック部材を架設すると共に、当該ロック部材の両端部を、前記第1扉5と第2扉6の各扉に、第1扉5の開放を許容するとき第2扉6をロックし、第2扉6の開放を許容するとき第1扉5をロックする機械的インターロック機構を介して機械的に連繋したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院,研究所,原子力施設などのように、内部の圧力が調整された部屋や建屋(以下、単に「調圧部屋」という)設置された例えば人の出入口において、当該部屋の内部と外部を、気密に遮断する機能を備えていると共に、人の出入りの際に扉を開閉しても部屋の内部と外部の間に設定されている気圧差を損なうことなく出入りをすることができるように形成されたエアロック扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロック扉は、上記のように各施設における所定の調圧部屋に設けられた出入口において、その部屋の内部と外部の間に設定する圧力差(差圧)を所定に維持,管理するために設けられる扉装置であり、特許文献1〜6などにより従来から多くの提案がなされている。
【0003】
しかし乍ら、提案されているエアロック扉装置は、必要十分な差圧管理を実現するために複雑な構造であったり、設備が大がかりになっているなどの問題がある。
例えば、調圧部屋の出入口に設ける扉装置を、複数の扉で個々に仕切られた少なくとも1以上の調圧用の出入口ブース(調圧ブースともいう)に形成し、出入りする人は、入口扉を開けて調圧ブースに一旦入り、その入口扉を閉じ、当該ブースの出口扉を開けて調圧部屋の内部に入るといった、調圧ブースの入口扉と出口扉に設定された扉の開閉パターンに従って人が出入りしている。
【0004】
前記の各扉はモータ等の駆動力により開閉タイミングと開閉動作がシーケンス制御とインターロック制御の組合せなどにより一定の制御パターンで制御されているが、制御系にトラブルが発生すると、2つの扉が同時に開いて調圧部屋の内部と外部の間での差圧管理ができなくなったり、人がエアロック扉装置の調圧ブースの中に閉じ込められたりする問題がある。
【0005】
上記のような電気制御系の問題に鑑み、複数の扉を純機械的構成によってインターロック制御して、一つの扉を開けると次の扉が開かず、当該一の扉を閉じないと次の扉が開けられないようにしたものがある。しかし、この機械式のものは構造が結構複雑なため動作トラブルや故障が生じ易く、従って、インターロック機構が故障すれば、電気制御タイプのものと同様の問題を招来する。
【特許文献1】実開昭62−57194号公報
【特許文献2】特開昭59−159091号公報
【特許文献3】特開昭61−120090号公報
【特許文献4】特開昭62−44688号公報
【特許文献5】特開平3−24495号公報
【特許文献6】特開2001−235576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は上記のような従来のエアロック扉装置の問題点に鑑み、できるだけエアロック扉装置の構造を簡潔にして動作トラブルや故障の発生を極力抑えると共に、差圧管理が破綻するような2つの扉の同時開状態になることがないエアロック扉装置を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明エアロック扉装置の構成は、調圧部屋に設けた出入口通路の前後に、スライド式の第1扉と第2扉を設け、当該両扉の間に、機械的インターロック部材を架設すると共に、当該ロック部材の両端部を、前記第1扉と第2扉の各扉に、第1扉の開放を許容するとき第2扉をロックし、第2扉の開放を許容するとき第1扉をロックする機械的インターロック機構を介して機械的に連繋したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、第1扉と第2扉の間に架設する機械的インターロック部材は、1本の軸部材と、該軸部材の両端に設けた係止部と、該係止部に係止されるように各扉に設けた受け部により形成する。
【0009】
また、上記インターロック部材における係止部とその受け部は、軸部材に設けた係止部の回転動作又は進退動作によって受け部に離脱するように連繋させている。ここで、係止部の回転動作又は進退動作は、手動又はモータやシリンダなどの駆動力によって行えばよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、部屋に設けた出入口通路の前後に、スライド式の第1扉と第2扉を設け、当該両扉の間に、機械的インターロック部材を架設すると共に、当該ロック部材の両端部を、前記第1扉と第2扉の各扉に、第1扉の開放を許容するとき第2扉をロックし、第2扉の開放を許容するとき第1扉をロックする機械的インターロック機構を介して機械的に連繋し、調圧部屋内外の差圧管理をするためのエアロック扉装置を形成したので、構造が至って簡潔であると共に、差圧管理が破掟してしまう2つの扉の同時開閉状態を招来することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明エアロック扉装置の実施の形態例について、図を参照しつつ説明する。
図1は本発明エアロック扉装置の一例を適用した出入口通路の例を透視した斜視図、図2は図1のエアロック扉装置を模式的に示した平断面図、図3と図4は、それぞれ図2のエアロック扉装置の動作態様例を示した平断面図、図5(a)〜(d)は機械的インターロック機構の第1例とこの第1例におけるロック機構の動作態様を模式的に示した斜視図、図6(a)〜(d)は機械的インターロック機構の第2例とこの第2例におけるロック機構の動作態様を模式的に示した斜視図、図7(a)〜(d)は機械的インターロック機構の第3例とこの第3例におけるロック機構の動作態様を模式的に示した斜視図、図8(a)〜(d)は機械的インターロック機構の第4例とこの第4例におけるロック機構の動作態様を模式的に示した斜視図である。
【0012】
図1,図2において、1は、内部の圧力が調整された建屋や部屋の出入口2に設けられた出入口通路である。この通路1は、外部に臨んだ第1出入口3(以下、A出入口3ともいう)と前記出入口2に臨設した第2出入口4(以下、B出入口4ともいう)を備えていると共に、両出入口3,4に、横引き式の第1扉5(以下、A扉5という)と第2扉(以下、B扉6という)を、夫々に具備している。7は両扉5,6に仕切られた調圧ブース、Wは出入口通路1を形成する側壁,天井,床などの壁面である。
【0013】
上記のA扉5とB扉6を備えた出入口通路1では、出入口2を有する調圧部屋(図に表れず)の内,外において圧力差を設けた差圧管理が行われている。例えば、調圧部屋の内部は外部の大気圧より低い圧力に保ち、当該部屋の内部の気体などが外部に流出することがないようにしている。
【0014】
このような調圧された部屋の内外で管理された差圧を維持するには、外部から出入口2を通って調圧部屋に入る場合、並びに、調圧部屋の出入口2から外部に出る場合に、A扉5,B扉6の開閉をインターロック機構により制御して、出入りする者を一旦調圧室7に止どめると共に、両扉5,6が同時に開かれることがないようにし、調圧部屋の内部と外部との間に付けた所定の圧力差が、人の出入りのために扉5,扉6が開閉されても、損なわれることがないようにしている。
【0015】
次に、本発明において、A扉5とB扉6の同時開扉がないようにする機械的インターロック機構の構成例と、それぞれの作用について、図5〜図8を参照しつつ説明する。
【0016】
図1〜図4に示したA扉5とB扉6を備えた出入口通路1には、両扉5,6の開閉をロック,アンロック制御するための機械的インターロック機構が設けられている。このインターロック機構は、両扉5,6の間に、当該両扉5,6に両端部がほぼ届く長さに形成させて架設した1本の軸部材8と、この軸部材8の両端部に形成した係止部8a,8bと、該係止部8a,8bを受け入れてA扉5とB扉6の開閉をロック,アンロック制御するため当該扉5,6に設けた受け部9a,9bとから形成されている。
【0017】
そして、前記インターロック機構は、軸部材8がスライド動作又は回転動作されることによって、軸部材8の両端に設けた係止部8a,8bと対応するそれぞれの受け部9a,9bの係合関係を、一方がロック側のときは他方はアンロック側、他方がロック側のときは一方がアンロック側となるように交互に切換える機能を具備している。
次に図5〜図8によりこのインターロック機構の具体例について説明する。
【0018】
図5(a)は、上記インターロック機構の第1例の要部を模式的に示した斜視図である。図5(a)において、A扉5とB扉6の一端には、軸部材8の両端に形成した係止部8a,8bを受け入れる穴を設けた受け部9a,9bが設けられている。このインターロック機構の動作は、図5(b)〜(d)に示すように、軸部材8をその長さ方向にスライドさせることにより、当該部材8の両端の係止部8aがA扉5の受け部9aの穴から離脱する一方、係止部8bがB扉6の受け部9bに深く進入して、A扉5の横引き移動(開扉)を許容する一方で、B扉の開扉を不能(横引き不能)にしている(図5(b)参照)。図5(c)は、A扉5とB扉6のいずれもがロック状態にあることを示している。図5(d)は、図5(b)の場合とは逆に、B扉6がアンロック状態で開扉でき、A扉5がロック状態で開扉不能であることを示している。
図5(a)〜(d)の機能において、軸部材8のスライド動作は、人力又は駆動力のいずれによる型式であってもよい。
【0019】
図6(a)はインターロック機構の第2例の要部を模式的に示した斜視図であり、図6(a)において軸部材8の両端には係止部として形成した当該軸部材8上で位相が異なる平面から見て略T状をなすキー部材81a,81bが設けられている一方、A扉5とB扉6の一端には、前記キー部材81a,81bを受け入れるキー溝91a,91bを切欠きとして備えた丸穴92a,92bによる受け部が設けられている。ここで、丸穴92a,92bの内径は、キー部材81a,81bを摺動回転させ得る大きさの径である。
【0020】
図6(a)のインターロック機構は、図6(b)〜(d)に示すように、軸部材8を回転させて、A扉5における受け部の丸穴92aの内側でキー部材81aを回転させて当該キー部材81aと丸穴92aにおけるキー溝91aの位相を一致させると、A扉5が横引き可能になる一方、上記軸部材8の回転によって前記キー部材81aと位相が異なるキー部材81bが、B扉6における受け部の丸穴92bの中でそのキー溝91bと位相がズレてB扉6の横引きは不能の状態におかれる(図6(b)参照)。
【0021】
図6(c)はA扉5,B扉6のいずれもがロック状態にあることを示している。図6(d)は、図6(b)の場合とは逆に、B扉6がアンロック状態で開扉でき、A扉5がロック状態で開扉不能であることを示している。
【0022】
図7(a)のインターロック機構の第3例は、軸部材8の回転動作を当該軸部材8の両端において係止部として設けたカンヌキ82a,82bと、軸部材8の回転を前記カンヌキ82a,82bの昇降動作に変換する運動変換部83a,83bと、前記カンヌキ82a,82bがその昇降動作によって出入りする受け部として設けられたカンヌキ受け93aと93bとを備えて形成されている。
前記運動変換部83aと83bは、カンヌキ82aと82bの下端に設けた水平カム溝84a,84bと、軸部材8の両端に180度の位相差を付けて設けられたクランク状のカム85a,85bにより形成されている。
【0023】
図7(c)に示す両扉5,6がロック状態にある(カム85a,85bが互に水平姿勢にある)とき、図7(c)の軸部材8を時計回り方向に約45度回転させると、運動変換部83a,83b(カム溝84aとカム85a、カム溝84bとカム85bの作用によって、カンヌキ82aがその受け93aから抜け出す一方、カンヌキ82bはその受け93bに更に深く入り、A扉5は横引き可能であるが、B扉6は閉止(開扉不能)されたままである(図7(b)参照)。
一方、図7(c)の状態において、軸部材8を上記例とは逆方向に回転すると、カンヌキ82aと82bとは、図7(b)とは逆の関係になり、A扉5は開扉不能であるが、B扉6は開扉6は開扉(横引き)可能の状態になる。ここで軸部材8の回転を人力で行うかモータ等の動力を利用するかは、先の例と同様に任意である。
【0024】
図8(a)〜(d)は、本発明における機械的インターロック機構の第4例を示す。第4例のインターロック機構では、軸部材8の両端に、係止部としてキー溝86a,86bとなる開放部を有するリング87a,87bを、軸上で前記キー溝86a,86bに位相差を付けて設ける一方、両扉5,6の側に前記リング87a,87bの受け部として、そのリング87a,87bが前記キー溝86a,86bを通して係合する穴94a,94bを有するリング受け95a,95bが設けられている。
【0025】
第4例のインターロック機構の作用効果は、図6(a)〜(d)により説明したインターロック機構の作用効果と同じであるから省略するが、図8(c)の両扉5,6のロック状態から軸部材8を反時計回り方向に約45度回転すると、図8(b)の状態になってA扉5は開扉可能でB扉6は開扉不能の状態となり(図8(b)参照)、軸部材8を時計回り方向に約45度回転すると、図8(b)とは逆の図8(d)の状態になる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は以上の通りであって、部屋に設けた出入口通路の前後に、スライド式の第1扉と第2扉を設け、当該両扉の間に、機械的インターロック部材を架設すると共に、当該ロック部材の両端部を、前記第1扉と第2扉の各扉に、第1扉の開放を許容するとき第2扉をロックし、第2扉の開放を許容するとき第1扉をロックする機械的インターロック機構を介して機械的に連繋してエアロック扉装置としたので、エアロック扉装置におけるインターロック機構の構造を大巾に簡素化して動作トラブルや故障が生じ難い装置を作製することができ、これによって差圧管理に破綻を来すことのないエアロック扉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明エアロック扉装置の一例を適用した出入口通路の例を透視した斜視図。
【図2】エアロック扉装置を模式的に示した平断面図。
【図3】図2のエアロック扉装置の動作態様例を示した平断面図。
【図4】図2のエアロック扉装置の動作態様例を示した平断面図。
【図5】(a)〜(d)は機械的インターロック機構の第1例と、この第1例におけるロック機構の動作態様とを模式的に示した斜視図。
【図6】(a)〜(d)は機械的インターロック機構の第2例と、この第2例におけるロック機構の動作態様とを模式的に示した斜視図。
【図7】(a)〜(d)は機械的インターロック機構の第3例と、この第3例におけるロック機構の動作態様とを模式的に示した斜視図。
【図8】(a)〜(d)は機械的インターロック機構の第4例と、この第4例におけるロック機構の動作態様とを模式的に示した斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1 出入口通路
2 調圧部屋(又は、建屋)の出入口
3 第1出入口
4 第2出入口
5 A扉
6 B扉
7 調圧ブース
8 軸部材
8a,8b 係止部
81a,81b キー部材
82a,82b カンヌキ
83a,83b 水平カム
91a,91b キー溝
92a,92b 丸穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調圧部屋に設けた出入口通路の前後に、スライド式の第1扉と第2扉を設け、当該両扉の間に、機械的インターロック部材を架設すると共に、当該ロック部材の両端部を、前記第1扉と第2扉の各扉に、第1扉の開放を許容するとき第2扉をロックし、第2扉の開放を許容するとき第1扉をロックする機械的インターロック機構を介して機械的に連繋したことを特徴とするエアロック扉装置。
【請求項2】
第1扉と第2扉の間に架設する機械的インターロック部材は、1本の軸部材と該軸部材の両端に設けた係止部と、該係止部に係止されるように各扉に設けた受け部により形成した請求項1のエアロック扉装置。
【請求項3】
インターロック部材における係止部とその受け部は、軸部材に設けた係止部の回転動作又は進退動作によって受け部に離脱するように連繋させた請求項2のエアロック扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−155954(P2009−155954A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336795(P2007−336795)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】