説明

エアロック運転時間短縮方法とその構造

【課題】立軸ポンプの構成を簡素化してエアロック運転時の時間短縮を図ったエアロック運転時間短縮の方法とその構造の提供。
【解決手段】羽根車室6を有し羽根車7を回転自在に支持する立軸ポンプ1の羽根車7の羽根8先端の回転面と前記羽根車室6の内壁面とに位置する対向部位の羽根車室内壁のケーシングライナー6aに凹部14を設けた。この凹部14は気水分離面に跨って設けられており、揚水管3内の残水を吸込管2側に排水する。回転方向と遠心力による水の流れの勢いをこの凹部14で低下させ、飛散した水をケーシングライナー6aの凹部14を介して降下させ排水を行う。床下の長さに関係なく揚水管の残水を速やかに処理でき、簡素な構成でコスト低減となり、メンテナンスが容易になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ポンプにおけるエアロック運転時間を短縮するエアロック運転時間短縮方法とその構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から先行待機運転の排水ポンプは、立軸ポンプ等で公知である。この排水ポンプは、排水すべき水路の水位が低くなると、排水ポンプの羽根車室の吐出側に接続されている揚水管に残存する水を羽根車によって攪拌するいわゆるエアロック状態が生じる。このエアロック状態は、羽根車に大きな背圧がかかり振動を発生させるもとになり、ポンプ設備に種々の悪影響を及ぼす。これを解決する方策として、例えば、羽根車室より直上流側吸込管の周壁に空気供給部を設けてこれに吸気弁を有する大気開放吸気管を接続している。
【0003】
又、羽根車室より直下流位置に、即ち立軸ポンプにおいては上方に対応する揚水管の下部に逃がし孔が貫通して設けられ、この逃がし孔にサイホン管状の逃がし管が接続されている。この逃がし管の折り返し水平部の位置を床盤上部に設定し、途中エアロック防止弁を介し、この折り返し水平部から上流側に排水管を配しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、揚水管近傍に設けられ床盤から上流側に垂下して設置されている水位検出手段によって検出した水位信号に基づいて制御器からこの吸気弁及びエアロック防止弁に開閉信号が入力されて開閉制御される。
【0004】
吸水井の水位が揚水開始水位以上に達した時点で吸気弁及びエアロック防止弁を弁閉して、所定の正規排水運転をし、水位が揚水遮断水位まで低下した時点で吸気弁及びエアロック防止弁を弁開して、揚水遮断運転及びエアロック運転に切り換える。このとき、揚水管内に逃がし管の折り返し水平部の位置よりも高いレベルまで残水しておれば、逃がし管のサイホン作用により揚水管内の残水は吸水井に排出されるようになっている。
【0005】
更に、揚水遮断運転切り替え時に揚水管内に残存している水を速やかに排出して、エアロック運転時間を短縮し、揚水遮断運転時の動力消費量を低減させるとともに、残存水の温度上昇を防ぐ技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。この技術の構成は、揚水管に貫設した逃がし孔にエアロック防止弁を介設したサイホン状の逃がし管を接続し、この逃がし管の出口をエゼクターの絞り部を装入した吸引室に接続するとともに、絞り部に高圧空気供給弁を介設した高圧空気供給管を接続し、吸水井の水位が揚水遮断水位に低下した時点で吸気弁を弁開して揚水遮断運転に切り替えるとともに、エアロック防止弁および高圧空気供給弁を弁開させることで、揚水管内に残存している水をサイホン作用と吸引作用との協働によって排出するようになっている。
【特許文献1】特許第3122769号公報
【特許文献2】特開平9−100793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年の大都市部では、用地難から雨水ポンプ設備などが地下化と高揚程化するようになってきている。これは、立軸ポンプの床下長さの長大化を意味し、逃がし管のサイホン作用による揚水管内の残水の排水の限界が予想される。理論的にサイホン作用は、約10mが限界となる。言い換えると、揚水管内の残水面と床盤上部に設置したエアロック防止弁の高さの差は約10mが限界となり、立軸ポンプの床下長さが長大化している実状に合わなくなる懸念がある。
【0007】
又、前述した従来の構成であると、逃がし管の折り返し水平部より低い位置での残水に対して、その機能は不十分なものであり、必ずしも揚水管全ての残水に対応しているものではない。逃がし管が10mの長さになり、更にエゼクター設置により強制的に残水を逃がす方法においては、一層コスト、維持管理の面で問題が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、前述したような問題点を解決するためになされたものであり、次の目的を達成する。
【0009】
本発明の目的は、立軸ポンプの床下長さに関係なく揚水管内の残水の排水を速やかに行い、逃がし管の配管及びエアロック防止弁の設置さらにそれらの制御機器を不要とし、簡素な構成にすることができるエアロック運転時間短縮方法とその構造を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、立軸ポンプを低コストの設備にすることができるエアロック運転時間短縮方法とその構造を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、立軸ポンプの維持管理を容易にし、メンテナンスのし易いエアロック運転時間短縮方法とその構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
本発明1のエアロック運転時間短縮方法は、
羽根車室を有し羽根車を回転自在に支持する立軸ポンプにおいて、前記羽根車の羽根先端の回転面と前記羽根車室の内壁面との境界部に位置し、前記羽根車の羽根の回転方向に所定幅と且つ前記羽根車の羽根の回転方向を横切る方向に所定長さとで囲われた縁部と、この縁部内に所定深さを有する凹部を前記羽根車室の内壁面に形成し、前記凹部を介してエアロック状態にある残水を前記羽根車室内で下方に排水処理するようにしてエアロック運転の時間を短縮するようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明2のエアロック運転時間短縮方法は、本発明1において、
前記羽根車室の内壁面には、着脱自在なケーシングライナーを配置し、このケーシングライナーに前記凹部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明3のエアロック運転時間短縮方法は、本発明1において、
前記凹部は、前記縁部の形状が略四角形であることを特徴とする。
【0014】
本発明4のエアロック運転時間短縮方法は、本発明1において、
前記凹部は、前記縁部の所定長さが前記羽根車の回転方向に直角な方向の所定長さであることを特徴とする。
【0015】
本発明5のエアロック運転時間短縮方法は、本発明1において、
前記凹部は、前記羽根車の回転方向に直角な方向を基準に、前記羽根車の回転方向を横切る方向の上端の前記所定幅の位置に対し下端の前記所定幅の位置が、前記羽根車の回転方向の進む方向に、所定の角度、傾斜するように配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明6のエアロック運転時間短縮方法は、本発明4又は5において、
前記凹部は、空気と水との分離面である気水分離面に跨って配置されているものであることを特徴とする。
【0017】
本発明7のエアロック運転時間短縮方法は、本発明1において、
前記凹部は、前記羽根車の回転方向に沿って複数個等分に配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明8のエアロック運転時間短縮構造は、
羽根車室を有し羽根車を回転自在に支持する立軸ポンプにおいて、前記羽根車の羽根先端の回転面と前記羽根車室の内壁面との境界部に位置し、前記羽根車の羽根の回転方向に所定幅と且つ前記羽根車の羽根の回転方向を横切る方向に所定長さとで囲われた縁部と、この縁部内に所定深さを有する凹部を前記羽根車室の内壁面に形成したことを特徴とする。
【0019】
本発明9のエアロック運転時間短縮構造は、本発明8において、
前記羽根車室の内壁面は、着脱自在なケーシングライナーの内壁面であり、このケーシングライナーに前記凹部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明10のエアロック運転時間短縮構造は、本発明8において、
前記凹部は、前記縁部の形状が略四角形であることを特徴とする。
【0021】
本発明11のエアロック運転時間短縮構造は、本発明8において、
前記凹部は、前記縁部の長さが前記羽根車の回転方向に直角な方向の所定長さであることを特徴とする。
【0022】
本発明12のエアロック運転時間短縮構造は、本発明8において、
前記凹部は、前記羽根車の回転方向に直角な方向を基準に、前記羽根車の回転方向を横切る方向の上端の前記所定幅の位置に対し下端の前記所定幅の位置が、前記羽根車の回転方向の進む方向に、所定の角度、傾斜するように配置されていることを特徴とする。
【0023】
本発明13のエアロック運転時間短縮構造は、本発明11又は12において、
前記凹部は、空気と水との分離面である気水分離面に跨って配置されているものであることを特徴とする。
【0024】
本発明14のエアロック運転時間短縮構造は、本発明8において、前記凹部は、前記羽根車の回転方向に沿って複数個等分に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、エアロック運転時の揚水管内残水の排水を行うために、立軸ポンプのケーシングライナーの内壁面に凹部を設け、この凹部を介して行う構成にした。このために、構造を極めて簡素にすることができた。又、床下長さに関係なく揚水管内の残水を、速やかに排水できるようになった。更に、従来のような揚水管内残水の排水のための装置を必要としない。この結果、構成が簡素化されコストダウン化を達成し、維持管理も容易となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に関する立軸ポンプ1の実施の形態を示す断面図である。立軸ポンプ1の構成は次のようになっている。立軸ポンプ1の本体は、上流側の吸込管2を下部に取り付け、揚水管3を水路の吸水井4に立て方向に設置して、上方の床盤5に固定されている。
【0027】
吸込管2の上部には羽根車室6が設けられ、この羽根車室6の内部に羽根車7が回転軸線を中心に回転可能に支持されている。この羽根車7には、半径方向に延びる複数の羽根8が等角度間隔に配置されている。羽根車7が回転駆動されると、羽根8は水を鉛直方向上方に揚水する。この羽根車7の主軸9は、揚水管3内の中心を貫通し、床盤5の上部に張り出しており、この先端部は電動機等の駆動手段(図示せず)に継手を介して連結されている。
【0028】
通常はこの主軸9の回転により羽根車7は回転し、吸込管2から吸い込まれる水を、揚水管3内のガイドベーン10により整流しながら上方に導き排水する。この揚水管3の中心線と平行に、かつ揚水管3の外周側に大気開放吸気管11が設置されている。この大気開放吸気管11の上部は、床盤5の上部に突き出し、その上端部に吸気調整弁12が接続され、その先端は大気に開放されている。
【0029】
大気開放吸気管11の下部は、その端部が吸込管2の外周に接続され、その先端には吸込管2と通じる空気供給孔13が形成されている。従って、吸込管2内と大気開放吸気管11、吸気調整弁12とは空気が自由に通る通路を形成する。そして、吸水井4側の吸込管2と大気とは、この大気開放吸気管11を通して吸入空気流量を最適に調整できる吸気調整弁12により開放状態を可能としている。このような構成の立軸ポンプ1は、図1に示す符号Aで示す揚水運転水位以上に吸水井4の水位がある場合には、吸込管2から通常に水を吸い込み鉛直方向の上方へ排水することになる。
【0030】
しかし、この揚水運転水位Aより下方に水位が下がり符号Cで示す揚水遮断水位までの間は、吸気調整弁12を通して吸込管2に吸気される大気とともに、気水混合運転となり吸気しながら揚水する状態となる。揚水遮断水位Cまで水位が低下すると、吸込管2内の水は真空破壊によって完全に落水する状態になり、羽根車室6の揚水管3側に残存している水は羽根車7により攪拌され、いわゆるエアロック運転状態となる。揚水運転水位Aと揚水遮断水位Cの間は、前述のように気水混合運転の範囲である。符号Bで示す水位は揚水開始水位である。これらの水位の位置の確認は、公知の検知手段(図示せず)により行っている。
【0031】
エアロック運転時は、羽根車室6内の水は下方の吸込管2から水が流入しないために、羽根車7とともに高速で旋回することになる。そのため、水に対し強い遠心力が生じ外周方向へ振り出されて、羽根車室6の内壁の方に押しやられる。この羽根車室6の内壁面には、本実施の形態においては着脱自在のケーシングライナー6aが固定されている。羽根車室6の羽根車7で振り出された水は、このケーシングライナー6aの内壁の方へ向かうことになる。
【0032】
ケーシングライナー6aに近づいた水の殆どは、ケーシングライナー6aに沿って揚水管3の方へすり上がっていき固定された案内羽根であるガイドベーン10へ到達する。ガイドベーン10に到達した水は、旋回力を失ってハブライン側寄りに、重力により降下し再び羽根車7に突入する。このとき、羽根車7の鉛直方向下部は、下方から吸い込まれた空気が同様に強い遠心力の作用で外周方向へ振り出され、ケーシングライナー6aに近づいた空気は吸込管2に沿って開放された下方へ排出される。
【0033】
羽根車7の流動域内で水と空気は一定の水平レベルで気水分離面Dを形成している(図2参照)。本実施の形態は、この気水分離面Dに関する立軸ポンプ1の構造を改良して、エアロック状態の時間短縮を実現したものである。次にその構造について更に詳細に説明する。図2は、エアロック運転時の羽根車7周りの水と空気の動きを示し、羽根車7の回転軸線に平行な方向の部分断面図である。
【0034】
図3は、エアロック運転時の羽根車7周りの水の動きを示し、羽根車7の回転軸線方向を直角に横切る方向の部分断面図である。羽根車7の位置は気水分離面D位置に当たり、この羽根車7の羽根8と羽根車室6の内壁(又はケーシングライナー6aの内壁)との境界部において、水は図2の実線の矢印で示すように遠心力により外周方向に振り出され複雑な動きをなしている。水の流れは羽根8の外側と内側との流れの周速の違いがある上に、遠心力が作用して水は羽根8の回転軸線側からその外側に流れようとし渦状の流れとなっている。
【0035】
この水はいずれにしても、羽根車室6の内壁(又は、ケーシングライナー6aの内壁)側に押しやられる。本実施の形態において、この羽根車室6の内壁には着脱自在のケーシングライナー6aが設けられていて、このケーシングライナー6aの内壁に凹部14、14’が形成されている。
又、空気は、図2に示すように、気水分離面D近傍において、点線の矢印で示す方向の動きをなしている。
【0036】
気水分離面Dは、ある幅の範囲で上下方向に変動しながら乱れた状態になっている。この位置に設けられる凹部14,14’は溝形状をなし、この気水分離面Dに跨って配置されている。凹部14,14’は所定長さと深さを有している半長円状または長方形状の溝である。凹部14,14’の長手方向は、羽根車の回転方向を横切る方向に設けられていて、羽根車の回転方向に所定幅を有している。
この凹部14,14’はケーシングライナー6aの内壁面に、複数個、等角度位置に形成されている。この凹部14,14’はケーシングライナー6aの内壁面に部分的に設けられた溝である。
【0037】
図4に凹部14の縁部の形状の一例を示している。この図4は羽根車7側から内壁側を矢視した矢視図となっている。図4における矢印は、羽根車7の回転方向を示している。図4の凹部14は、縁部が、幅方向の縁部14b,14cと長手方向の縁部14d,14eとで囲われた略四角形あるいは略長方形の矩形となっている。この凹部14の縁部は、幅方向の縁部14b,14cが羽根車7の回転方向にずれることなく、長手方向の縁部14d,14eを回転方向に直角な方向に一致させた形状としている。本実施の形態においては、幅に対し長手の方向の寸法を大きくしている。
【0038】
図5に凹部の縁部の形状の他の形態を示している。この図5は羽根車7側から内壁側を矢視した矢視図となっている。図5における矢印は、羽根車7の回転方向を示している。図5の凹部14’は、縁部が、幅方向の縁部14b’,14c’と長手方向の縁部14d’,14e’とで囲われた略四角形あるいは略長方形の矩形となっている。図5の凹部14’は、長手方向の縁部14d’,14e’が羽根車7の回転方向に直角な方向を基準に所定角度(例えば、α度)傾斜した形状をしている。幅に対し長手の方向の寸法を図4同様に大きくしている。即ち、凹部14’の側壁面の長手方向の上下端部に位置する幅方向の縁部14b’,14c’を、羽根車7の回転方向に直角な方向を基準に羽根車7の回転方向に沿って相互にずらした配置にした形態である。言い換えると、縁部14b’の位置に対して縁部14c’の位置が、前記羽根車の回転方向の進む方向に、所定角度傾斜するように配置されている。この凹部14’は、前述のように長手方向の縁部14d’,14e’が気水分離面Dに跨っている。即ち、水の状態と空気の状態にある中間位置に設けられている。気水分離面Dは一定のものではなく、羽根車7が有限枚数の羽根8を有しているためにかなり乱れた面であることと、揚水管3の残水の水位により上下に変化する。
【0039】
この凹部14,14’があることにより、羽根車7の羽根8の上側の水、あるいは羽根8の周囲の水は回転動作に伴なって遠心力により羽根車室6の内壁に押しやられる。このとき、水は凹部14,14’に衝突する。この衝突は図3の矢印に示すように凹部14,14’の羽根車7の回転方向側に位置する側壁である凹部壁面14aに旋回しながら水がぶつかることにより生じる。この凹部14,14’に浸入した水は、この凹部壁面14aに衝突することで旋回速度は低下し、凹部14,14’内で飛散状態になり上方への飛散した水は上方の水に合流してガイドベーン10側に流れる。
【0040】
図4に示した凹部14の形状であると、凹部14内に入った水は、凹部壁面14aに衝突して旋回速度を失うと共にさまざまな方向に飛散する。下方に飛散した水の一部は、ケーシングライナー6aを伝って降下する。残りの水は、羽根車室6内の空中部に飛散するが、旋回しながら下方に向かう強い空気の流れに押し戻され、結局はケーシングライナー6aに押しつけられながら、羽根車7との間を通って降下する。
【0041】
図5に示した凹部14’の形状であると、羽根車室6の内壁に沿い矢印で示す回転方向の水流に対し、長手方向の縁部14d’,14e’は傾斜した構造になっている。図に示すように、回転方向に直角な方向を基準に、上部の縁部14b’の位置に対し下部の縁部14c’の位置が、羽根車7の回転方向に進む方向にあるような位置関係となり、凹部14’の長手方向の縁部14d’,14e’は傾斜形状である。衝突した水には、側壁である凹部壁面14aに衝突後、下方向へ流す分力14fが働き、水は強制的に下方向にこの凹部壁面14aを伝って流れ落下する。
【0042】
下方へ飛散した水は凹部14,14’の長手方向に沿って下方へ降下し空気層側へ放出され、吸込管2から吸水井4へ排出される。このようにエアロック状態にある羽根車7の上側の水は攪拌とともにこの凹部14,14’を介して徐々に落下し羽根車室6内で下方へ排水される。この結果、揚水管3の水は減り、エアロック運転時間を短縮することになる。この構成にすると、前述した従来技術のように揚水管3の外側に揚水管3相当の長さの逃がし管を設けて排水する必要はなく、羽根車室6の構造を変えることでエアロック運転時間を簡素な構成で短縮することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、凹部の縁部の形状を矩形として説明したが、略楕円形であってもよい。又、凹部深さは凹部形状の上下方向において異なる寸法のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の立軸ポンプの構成を示す断面図である。
【図2】図2は、エアロック運転時の羽根車周りの水と空気の流れを模式的に示し、回転軸線に平行な方向の部分断面図である。
【図3】図3は、エアロック運転時の羽根車周りの水の流れを模式的に示し、回転軸線を直角に横切る方向の部分断面図である。
【図4】図4は、羽根車側から内壁側を矢視した矢視図であって、長手方向が回転方向に直角な方向である凹部の縁部形状を示す説明図である。
【図5】図5は、羽根車側から内壁側を矢視した矢視図であって、長手方向が回転方向に直角な方向に対して所定の角度傾斜した凹部の縁部形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 … 立軸ポンプ
2 … 吸込管
3 … 揚水管
4 … 吸水井
5 … 床盤
6 … 羽根車室
6a… ケーシングライナー
7 … 羽根車
8 … 羽根
9 … 主軸
10 … ガイドベーン
11 … 大気開放吸気管
12 … 吸気調整弁
13 … 空気供給孔
14,14’… 凹部
14a… 凹部壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車室を有し羽根車を回転自在に支持する立軸ポンプにおいて、
前記羽根車の羽根先端の回転面と前記羽根車室の内壁面との境界部に位置し、
前記羽根車の羽根の回転方向に所定幅と且つ前記羽根車の羽根の回転方向を横切る方向に所定長さとで囲われた縁部と、この縁部内に所定深さを有する凹部を前記羽根車室の内壁面に形成し、
前記凹部を介してエアロック状態にある残水を前記羽根車室内で下方に排水処理するようにしてエアロック運転の時間を短縮するようにした
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアロック運転時間短縮方法において、
前記羽根車室の内壁面には、着脱自在なケーシングライナーを配置し、このケーシングライナーに前記凹部が形成されている
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮方法。
【請求項3】
請求項1に記載されたエアロック運転時間短縮方法において、
前記凹部は、前記縁部の形状が略四角形である
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮方法。
【請求項4】
請求項1に記載されたエアロック運転時間短縮方法において、
前記凹部は、前記羽根車の回転方向を横切る方向の所定長さが前記羽根車の回転方向に直角な方向の所定長さである
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮方法。
【請求項5】
請求項1に記載されたエアロック運転時間短縮方法において、
前記凹部は、前記羽根車の回転方向に直角な方向を基準に、前記羽根車の回転方向を横切る方向の上端の前記所定幅の位置に対し下端の前記所定幅の位置が、前記羽根車の回転方向の進む方向に、所定の角度、傾斜するように配置されている
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載されたエアロック運転時間短縮方法において、
前記凹部は、空気と水との分離面である気水分離面に跨って配置されているものである
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮方法。
【請求項7】
請求項1に記載されたエアロック運転時間短縮方法において、
前記凹部は、前記羽根車の回転方向に沿って複数個等分に配置されている
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮方法。
【請求項8】
羽根車室を有し羽根車を回転自在に支持する立軸ポンプにおいて、
前記羽根車の羽根先端の回転面と前記羽根車室の内壁面との境界部に位置し、前記羽根車の羽根の回転方向に所定幅と且つ前記羽根車の羽根の回転方向を横切る方向に所定長さとで囲われた縁部と、この縁部内に所定深さを有する凹部を前記羽根車室の内壁面に形成した
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮構造。
【請求項9】
請求項8に記載されたエアロック運転時間短縮構造において、
前記羽根車室の内壁面は、着脱自在なケーシングライナーの内壁面であり、このケーシングライナーに前記凹部が形成されている
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮構造。
【請求項10】
請求項8に記載されたエアロック運転時間短縮構造において、
前記凹部は、前記縁部の形状が略四角形である
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮構造。
【請求項11】
請求項8に記載されたエアロック運転時間短縮構造において、
前記凹部は、前記縁部の所定長さが前記羽根車の回転方向に直角な方向の所定長さである
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮構造。
【請求項12】
請求項8に記載されたエアロック運転時間短縮構造において、
前記凹部は、前記羽根車の回転方向に直角な方向を基準に、前記羽根車の回転方向を横切る方向の上端の前記所定幅の位置に対し下端の前記所定幅の位置が、前記羽根車の回転方向の進む方向に、所定の角度、傾斜するように配置されている
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮構造。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載されたエアロック運転時間短縮構造において、
前記凹部は、空気と水との分離面である気水分離面に跨って配置されているものである
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮構造。
【請求項14】
請求項8に記載されたエアロック運転時間短縮構造において、
前記凹部は、前記羽根車の回転方向に沿って複数個等分に配置されている
ことを特徴とするエアロック運転時間短縮構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−38724(P2008−38724A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213006(P2006−213006)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000168193)株式会社ミゾタ (12)
【Fターム(参考)】