説明

エキシマランプ装置

【課題】簡便な構造で酸素濃度の変動した大気の対流による紫外線の測定値変動を抑制した光センサを備えたエキシマランプ装置を提供する。
【解決手段】エキシマランプ2から放射される紫外エキシマ光を測定する光センサ3とエキシマランプ2とを収納する筐体4を有するエキシマランプ装置において、光センサ3は、光モニター部33と、筒状部31と、基台部32とを有し、筒状部31は、基台部32側からエキシマランプ2側に向けて形成された漸次小径化部313と、漸次小径化部313よりエキシマランプ2寄りに形成された最小内径部314と、最小内径部314よりエキシマランプ2側に向けて形成された漸次大径化部315とを有し、紫外エキシマ光の測定時、ガス導入口321から導入された不活性ガスを筒状部31内を通し、31筒状部の開口312から放出させることを特徴とするエキシマランプ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射処理に使用されるエキシマランプ装置に係わり、特に、エキシマランプから放射される紫外線を測定する光センサを備えたエキシマランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、液晶表示パネルのガラス基板の紫外線照射による洗浄工程等においては、波長200nm以下の真空紫外光、例えば、172nmの真空紫外光を放射するエキシマランプを備えたエキシマランプ装置が使用されている。このようなエキシマランプ装置においては、真空紫外光が空気中で減衰するため、筐体の開口部となる、半導体基板や液晶基板等のワークからなる被照射物とエキシマランプとの間には、石英ガラスからなる窓材を設け、窓材を通して真空紫外光を被照射物に照射している。しかしながら、石英ガラスからなる窓材は高価であるため、特許文献1に示すように、石英ガラスからなる窓材を取り除き、被照射物とエキシマランプとを近接させた構造が採用されている。
【0003】
一方、エキシマランプは、その使用時間の経過に伴う劣化によって、照射する真空紫外光の強度が徐々に低下する。照射する真空紫外光の強度が低下すると、被照射物の表面を洗浄する能力も低下する。そのため、エキシマランプからの真空紫外光の強度を随時測定して、強度が所定値以下に低下しないように、ランプ入力を上げるべくフィードバック制御したり、強度が所定値以上に出力できなくなった場合は、エキシマランプを交換する必要があった。
【0004】
特許文献1に記載のエキシマランプ装置には、エキシマランプからの真空紫外光の強度を検知する光センサを設けることが記載されている。この光センサは、例えば、172nmの紫外線を蛍光体で可視光に変換し、可視光をフォトダイオードで検知して電気信号に変換して出力を得ている。
【0005】
図7は、特許文献1に記載されている、エキシマランプ101の長手方向に対して垂直方向に沿ったエキシマランプ装置100の概略構成を示す断面図、図8は、図7に示したエキシマランプ101の構成を示す斜視図である。
図8に示すように、直方体の放電容器102を備えるエキシマランプ101は、ランプの長手方向に対して垂直方向の断面が長方形であり、放電容器102の上下両面には放電容器102の長手方向に沿って延びるように外部電極103,104が設けられている。この例では、上面に設けた一方の外部電極103は板状に構成され、下面に設けた他方の外部電極104は網状に構成されている。さらに、放電容器102の上面には、光センサ105に対向する板状に構成された外部電極103の一部が削除された開口部106が設けられている。
【0006】
図7に示すように、エキシマランプ101は、網状に構成された外部電極104が被照射物Wに対向するように、エキシマランプ装置100の筐体107の内部に複数本、例えば、図示するように、3本設置されている。筐体107は一面が開口された箱状に構成されており、その開口面と平行な方向に被照射物Wが搬送される。筐体107の前記開口面に対向する面には、エキシマランプ101からの真空紫外光を測定する光センサ105が導出入される貫通孔108が設けられている。この貫通孔108は、光センサ105が導出入されるので、エキシマランプ101の開口部106に対向する位置に設けられる。
【0007】
筐体107の貫通孔108から導出入される光センサ105には、エキシマランプ101から真空紫外光が照射される蛍光体109と、蛍光体109により変換された可視光を検知するフォトダイオード110とが設けられている。光センサ105は、エキシマランプ101からの真空紫外光を検知するときは、エアシリンダ111により筐体107の貫通孔108から筐体107の内部に導入され、エキシマランプ101の開口部106に向かって一定量移動して近接される。開口部106に近接された光センサ105は、真空紫外光を、蛍光体109により可視光に変換し、可視光をフォトダイオード110により検知する。検知が終了すると、光センサ105は、エアシリンダ111により、再び貫通孔108を通って筐体107の外部に導出される。この光センサ105の導出入は、光センサ105に連接されたエアシリンダ111により行なわれる。
【特許文献1】特開2004−97986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このエキシマランプ装置100は、筐体107の一面が開放されているので、筐体107の内部が大気状態になっている。このため、エキシマランプ101の点灯時、エキシマランプ101によって照射された真空紫外光が大気中の酸素と反応するため、大気中の酸素濃度が変動する。一方、図示しない搬送機構による被照射物Wの搬送に伴って、筐体107の内部は酸素濃度の変動した大気の対流Cが発生する。そのため、この対流Cによって、光センサ105とエキシマランプ101との間における酸素濃度が変動し、エキシマランプ101から放射される真空紫外光の酸素による吸収量が変動してしまい、光センサ105によって検知される真空紫外光の酸素による吸収量が変動してしまう。
【0009】
このように、筐体107の下方が開口されたエキシマランプ装置100においては、被照射物Wが搬送されることによって、筐体107の内部における酸素濃度を均一にすることができず、エキシマランプ101とこれに近接する光センサ105との間における酸素濃度と、エキシマランプ101と被照射物Wとの間における酸素濃度とは同じにならない。このため、光センサ105によって検知された真空紫外光の強度に基づいて、エキシマランプ101の入力を制御したとき、被照射物Wには所定値以上の真空紫外光が照射されることもあれば、所定値以下の真空紫外光が照射されることもあり、被照射物Wに対して均一な真空紫外光を照射することができない。
【0010】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、簡便な構造で酸素濃度の変動した大気の対流による紫外線の測定値変動を抑制した光センサを備えたエキシマランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、エキシマランプと、該エキシマランプから放射される紫外エキシマ光を測定する光センサと、少なくとも前記エキシマランプと前記光センサを収納する筐体とを有するエキシマランプ装置において、前記光センサは、フォトダイオードと蛍光体とを具備した光モニター部と、該光モニター部側と前記エキシマランプ側に開放した開口を有し前記エキシマランプ側の開口が前記エキシマランプに近接配置される筒状部と、前記光モニター部と前記筒状部とを連結する基台部とを有し、前記筒状部は、前記基台部側から前記エキシマランプ側に向けて内径が漸次小径化された漸次小径化部と、該漸次小径化部より前記エキシマランプ寄りに形成された最小内径部と、該最小内径部から前記エキシマランプ側に向けて内径が漸次大径化された漸次大径化部とを有し、前記基台部は、前記筒状部に導入される不活性ガスを導入するガス導入口を有し、前記紫外エキシマ光の測定時、前記ガス導入口から導入された不活性ガスを前記筒状部内を通して、前記筒状部の前記エキシマランプ側の前記開口から放出させることを特徴とするエキシマランプ装置である。
第2の手段は、第1の手段において、前記光モニター部の光入射側の開口周縁と前記筒状部の最小内径部内縁で規定される前記光モニター部の光取り込み角度は、前記筒状部の前記エキシマランプ側の前記開口端域の漸次大径化部の内周面の開き角度より小さいことを特徴とするエキシマランプ装置である。
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段において、前記筒状部は、セラミック部材であることを特徴とするエキシマランプ装置である。
第4の手段は、第1の手段ないし第3の手段のいずれか1つの手段において、前記基台部の前記ガス導入口と前記筒状部との間に、ガス圧調整空間が形成されていることを特徴とするエキシマランプ装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、不活性ガスをガス導入口から導入したときに、ガスの流れが筒状部内の最小内径部を通り、流速を増し、筒状部の開口からエキシマランプに向けて開口周囲に広がるように放出されるので、酸素濃度の変動した大気の対流による紫外線の測定値変動を抑制した光センサを備えたエキシマランプ装置を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、光センサにおける光モニター部の開口周縁と筒状部の最小内径部内縁で規定される光モニター部の光取り込み角度を、筒状部の開口端域の内周面の開き角度より小さくしたので、筒状部の開口近傍に存在する酸素濃度の変動した大気の乱流による影響を受けることなくランプから放射される紫外線を測定することができる。
請求項3に記載の発明によれば、筒状部はセラミック部材であるため、ランプの電極部に光センサを十分に近づけることができる。
請求項4に記載の発明によれば、ガス圧調整空間が形成されているので、エキシマランプに向けて筒状部開口から放出される不活性ガスの圧力を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図1ないし図6を用いて説明する。
図1は、本実施形態の発明に係るエキシマランプ装置1の全体構成を示す断面図である。
同図に示すように、このエキシマランプ装置1は、エキシマランプ2と、エキシマランプ2から放射される紫外エキシマ光を測定する筒状部31、基台部32及び光モニター部33を備える光センサ3と、少なくともエキシマランプ2と光センサ3を収納する筐体4とを有する。なお、エキシマランプ2の詳細な構成は図8に示したものとほぼ同様であるので、説明を省略する。また、エキシマランプ1は、断面矩形形状が角型のエキシマランプに限定されず、2重管タイプのエキシマランプであってもかまわない。また、断面矩形形状の角型のエキシマランプにおいて、電極は対向する電極ともメッシュ状電極であっても構わない。
【0014】
図2は、図1に示した、導入された不活性ガスの流れの状況を示した光センサ3の詳細な構成を示す断面図であり、図3は、図1に示した、光モニター部33の光取り込み角度βと筒状部31の開口端域の漸次大径化部315の内周面の開き角度αとの関係を示した光センサ3の詳細な構成を示す断面図である。
これらの図に示すように、光センサ3は、フォトダイオード331と蛍光体332とを具備した光モニター部33と、基台部32側とエキシマランプ2側にそれぞれ開放した開口311,312を有し、エキシマランプ2側の開口312がエキシマランプ2に近接配置される筒状部31と、光モニター部33と筒状部31とを連結する基台部32とを有する。また、筒状部31は、基台部32側からエキシマランプ1側に向けて内径が漸次小径化された漸次小径化部313と、漸次小径化部313よりエキシマランプ2寄りに形成された最小内径部314と、最小内径部314からエキシマランプ1側に向けて内径が漸次大径化された漸次大径化部315とを有する。さらに、基台部32には、筒状部32の開口311に流出する不活性ガスを導入するガス導入口321と、ガス導入口321と筒状部31との間に、ガス圧調整空間322とが形成されている。なお、光センサ3は、フォトダイオード331と蛍光体332との間に、例えば、キセノンエキシマ光172nmの光を蛍光体332で可視光に変換された光だけを透過する色ガラスフィルター333のようなフィルターを備えるようにしてもよい。また、筒状部31はセラミック製であり、一例を挙げればステアタイトが好適である。但しステアタイトに限定されるものではなく、他にもアルミナや窒化珪素等も使用可能である。紫外エキシマ光は、ガス導入口321から導入された不活性ガスを基台部32のガス圧調整空間322内を通して、筒状部31のエキシマランプ2側の開口312から放出しながら測定する。
【0015】
図2に示すように、筒状部31は、光センサ3側からエキシマランプ2側に向けてその内径が漸次小径化された漸次小径化部313を有し、さらに漸次小径化部313よりエキシマランプ2寄りの位置に最小内径部314を有し、さらに最小内径部314からエキシマランプ2側に漸次大径化された漸次大径化部315を有し、筒状部31と光モニター部33は基台部32により連結されている。基台部32のガス導入口321から導入された窒素ガス等の不活性ガスは、ガス導入口321より大径したガス圧調整空間322によってガス圧が均一に調整される。ガス圧が調整された不活性ガスは、筒状部31内の漸次小径化部313を通過後、最小内径部314を通るために、その流速が増大し、筒状部31の開口312からエキシマランプ2に向けて開口312周囲に広がるように放出される。
【0016】
また、図3に示すように、光モニター部33は、フォトダイオード331と蛍光体332とを有し、蛍光体332の下方にはエキシマ光取り込み用の開口334が設けられている。光モニター部33の開口334周縁(f1、f2)と筒状部31の最小内径部314内縁(n1、n2)で規定される光モニター部33の光取り込み角度βよりも、筒状部31の開口312端域の漸次大径化部315内周面の開き角度αの方が大きく作りこまれている。つまり、光センサ3の筒状部31の中心を通り筒状部31の径方向に垂直な断面において、光取り込み角度βを、筒状部31の最小内径部314の一方の内縁点n1と内縁点n1からみた光モニター部33の開口334周縁上の一方の最遠点f1を結ぶ線分と、最小内径部314の他方の内縁点n2と内縁点n2からみた光モニター部33の開口334周縁上の他方の最遠点f2を結ぶ線分との交線が作る90度以下の内角とし、開き角度αを、筒状部31の開口312端域の漸次大径化部315の内周面の開き角度とするとき、光取り込み角度β<開き角度αの関係にある。この関係にあると、筒状部31の開口312近傍に存在する酸素濃度の変動した大気の乱流による影響を受けることなくエキシマランプ2から放射される紫外線を確実に測定することが可能になる。
【0017】
図4は従来技術に係る比較例としての筒状部5と本発明に係る筒状部31との対比を示す図であり、図4(a)は従来技術に係る筒状部5の断面図、図4(b)は本発明に係る筒状部31の断面図である。
図4(a)に示すように、従来技術に係るストレートタイプの筒状部5では、筒状部5の周囲の酸素を含んだガスを筒状部5の内周面52から開口51を通る延長上で巻き込んでしまう。そのため、光モニター部33の開口334周縁と筒状部5の開口51で規定される光モニター部33の光取り込み角度β内に酸素を含んだ空気が入り込んでしまい、エキシマランプ2からの紫外エキシマ光を精度良く測定することができない。
それに対して、図4(b)に示すように、本発明に係る筒状部31では、筒状部31の周囲の酸素を含んだガスは、筒状部31の漸次大径化部315の内周面から開口312を通る延長上、つまり開き角度α内に巻き込むが、光取り込み角度β<開き角度αの関係にあるので、光取り込み角度β内には巻き込まない。その結果、エキシマランプ1からの紫外エキシマ光を精度良く測定することができる。
【0018】
図5は、図2(図3)に示した筒状部31と異なる種々の形状例を示す筒状部31A〜31Dの構成を示す断面図である。
図5(a)〜図5(d)は、図2に示した筒状部31と同様に、光取り込み角度β<開き角度αの関係にあることには変わりはない。しかし、図5(a)の筒状部31Aにおいては、漸次小径化部313Aと漸次大径化部315Aの断面がそれぞれ筒状部31Aの中心部に向かって多少湾曲するように滑らかに形成されている。これによって、筒状部31A内に流入した不活性ガスを容易に流通させることができる。また、図5(b)の筒状部31Bにおいては、漸次小径化部313Bと漸次大径化部315Bの断面がそれぞれ筒状部31Bの中心部から遠ざかる方向に多少湾曲するように形成されている。これによって、漸次小径化部313Bによって形成されるガス圧調整空間を広くすることができる。また、図5(c)の筒状部31Cにおいては、漸次小径化部313Cと漸次大径化部315Cの断面がそれぞれ段階状に形成されている。この場合、漸次小径化部313C及び漸次大径化部315Cを形成する際、特別な加工治具を製作せずに加工することができる利点がある。また、図5(d)の筒状部31Dにおいては、漸次小径化部313Dと漸次大径化部315Dとの間に形成される最小内径部314Dの断面を同一内径からなる直線状に形成する。この場合、セラミックの切削加工において筒状部31Dの内面を成形する際に、所定の内径寸法を実現する切削が容易となり、筒状部31Dを精度良く製造することができる。
【0019】
次に、本発明に係る筒状部を使用したエキシマランプ装置と従来技術に係る筒状部を使用したエキシマランプ装置との比較実験について説明する。
実験に使用した本発明に係るエキシマランプ装置における光センサ3は、図4(b)に示すような形状を有する筒状部31を有し、筒状部31内面の最小内径部314(n1とn2の間)はφ10mmであり、光モニター部33の光取り込み角度βよりも筒状部31の開口312端域の漸次大径化部315の開き角度αが大きく、光モニター部33側の開口311の開口径はφ16mm、エキシマランプ側の開口312の開口径はφ13mmであり、筒状部31の長さは35mmである。
それに対して、実験に使用した従来技術に係るエキシマランプ装置における光センサは、本発明の光センサ3とは筒状部の形状のみが異なり、図4(a)に示すような形状を有する筒状部5を有し、筒状部5の内周面52は10mmの均一内径を有しており、従って、光モニター部33側の開口51の開口径及びエキシマランプ2側の開口53の開口径もφ10mmであり、筒状部5の長さは35mmである。
【0020】
また、実験に使用した本発明及び従来技術のエキシマランプ2は共に、キセノンエキシマ放電ランプであり、ランプ構成は図8に示したものと同様である。
また、実験に使用した本発明の光モニター部33及び従来技術の光モニター部33は共に、図2(図3)に示したように、紫外可視変換の蛍光体332と色ガラスフィルター333とフォトダイオード331を備えたものである。
紫外エキシマ光の測定は、エキシマランプ2からの172nmの波長の紫外光を光モニター部33の蛍光体332で可視光に変換してフォトダイオード331で受光し、出力の電流値によって波長172nmの光の強度の換算値として検出するものである。
測定に際しては、本発明の筒状部31及び従来技術の筒状部5内に流す窒素ガス量は、それぞれ0リットル/min〜5リットル/minの範囲で段階的に変え、かつ本発明のエキシマランプ表面と筒状部31の開口312間の距離(ギャップという)及び従来技術のエキシマランプ表面の筒状部5の開口53間の距離(ギャップという)を1.5mm及び5.5mmの2種類変えて測定した。
【0021】
図6は、測定結果を示すグラフであり、横軸は筒状部内に流した単位時間当たりの窒素ガス量(リットル/min)、縦軸はフォトダイオードによって検出された検出量(mA)である。
同図に示すように、本発明のエキシマランプ装置においては、筒状部31の最小内径部(絞り)314をφ10mmとし、ギャップを1.5mm及び5.5mmの2種類変え、いずれの場合も窒素ガス量を0リットル/min〜5リットル/minと変えて測定しても、紫外線検出量はほとんど変わらず得られることが分かった。
一方、従来技術のエキシマランプ装置においては、筒状部5の内周面52をφ10mmの均一内径とし、ギャップを1.5mm及び5.5mmの2種類変え、いずれの場合も窒素ガス量を0リットル/min〜5リットル/minと変えて測定すると、紫外線検出量はギャップの大きい場合はギャップの少ない場合に比べて小さくなることが分かった。これは、ランプ近傍に存在する大気(酸素)と筒状部5から放出される窒素ガスが筒状部5の開口53付近で渦流を生じることが避けられず、この渦流が光モニター部33に到達する紫外線量に影響を与えたと考えられる。
【0022】
つまり、本発明のエキシマランプ装置における筒状部31の開口312付近においては、渦流による真空紫外光の吸収が生じても、光モニター部33の開口334周縁(f1、f2)と筒状部31の最小内径部314内縁(n1、n2)で規定される光モニター部33の光取り込み角度βよりも、筒状部31の開口312端域の内周面の開き角度αの方が大きいため、光モニター部33に到達する紫外線量に影響を与えないためと考えられ、従来技術の筒状部5の開口53から取り込む紫外線量と差が生じたものと考えられる。
【0023】
さらに、本発明のエキシマランプ装置においては、従来技術のエキシマランプ装置と比べて流す窒素流量を少なくしても紫外線検出を良好にできることが分かった。また、本発明のエキシマランプマランプ装置によれば、光センサ3をエキシマランプ2から離間させても酸素濃度の変動した大気の対流による紫外線の測定値変動を抑制した状態で紫外エキシマ光の測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るエキシマランプ装置1の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した、導入された不活性ガスの流れの状況を示した光センサ3の詳細な構成を示す断面図である。
【図3】図1に示した、光モニター部33の光取り込み角度βと筒状部31の開口端域の漸次大径化部315の内周面の開き角度αとの関係を示した光センサ3の詳細な構成を示す断面図である。
【図4】従来技術に係る比較例としての筒状部5と本発明に係る筒状部31との対比を示す図である。
【図5】図2(図3)に示した筒状部31と異なる種々の形状例を示す筒状部31A〜31Dの構成を示す断面図である。
【図6】従来技術に係る比較例としての筒状部と本発明に係る筒状部を比較実験したときの測定結果を示すグラフである。
【図7】特許文献1に記載されている、エキシマランプ101の長手方向に対して垂直方向に沿ったエキシマランプ装置100の概略構成を示す断面図である。
【図8】図7に示したエキシマランプ101の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 エキシマランプ装置
2 エキシマランプ
3 光センサ
31 筒状部
311 開口
312 開口
313 漸次小径化部
314 最小内径部
315 漸次大径化部
32 基台部
321 ガス導入口
322 ガス圧調整空間
33 光モニター部
331 フォトダイオード
332 蛍光体
333 色ガラスフィルター
334 開口
4 筐体
5 筒状部
51 開口
52 内周面
31A 筒状部
313A 漸次小径化部
315A 漸次大径化部
31B 筒状部
313B 漸次小径化部
315B 漸次大径化部
31C 筒状部
313C 漸次小径化部
315C 漸次大径化部
31D 筒状部
313D 漸次小径化部
315D 漸次大径化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマランプと、該エキシマランプから放射される紫外エキシマ光を測定する光センサと、少なくとも前記エキシマランプと前記光センサを収納する筐体とを有するエキシマランプ装置において、
前記光センサは、フォトダイオードと蛍光体とを具備した光モニター部と、該光モニター部側と前記エキシマランプ側に開放した開口を有し前記エキシマランプ側の開口が前記エキシマランプに近接配置される筒状部と、前記光モニター部と前記筒状部とを連結する基台部とを有し、
前記筒状部は、前記基台部側から前記エキシマランプ側に向けて内径が漸次小径化された漸次小径化部と、該漸次小径化部より前記エキシマランプ寄りに形成された最小内径部と、該最小内径部から前記エキシマランプ側に向けて内径が漸次大径化された漸次大径化部とを有し、
前記基台部は、前記筒状部に導入される不活性ガスを導入するガス導入口を有し、
前記紫外エキシマ光の測定時、前記ガス導入口から導入された不活性ガスを前記筒状部内を通して、前記筒状部の前記エキシマランプ側の前記開口から放出させることを特徴とするエキシマランプ装置。
【請求項2】
前記光モニター部の光入射側の開口周縁と前記筒状部の最小内径部内縁で規定される前記光モニター部の光取り込み角度は、前記筒状部の前記エキシマランプ側の前記開口端域の漸次大径化部の内周面の開き角度より小さいことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ装置。
【請求項3】
前記筒状部は、セラミック部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエキシマランプ装置。
【請求項4】
前記基台部の前記ガス導入口と前記筒状部との間に、ガス圧調整空間が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のエキシマランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−82589(P2010−82589A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256584(P2008−256584)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】