説明

エキシマレーザ加工装置、及びエキシマレーザ光の加工エネルギー強度の調整方法

【課題】 加工能率の高いエキシマレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】 本装置10は、エキシマレーザ光の発振器11と、発振器から出射されたエキシマレーザ光を所定の形状パターンに規制するマスク14とを備え、マスクによりパターン規制されたエキシマレーザ光により被加工物に加工を施すエキシマレーザ加工装置である。本装置は、被加工物を保持し、かつ、被加工物の被加工面がエキシマレーザ光の照射方向に対して設定角度になるように被加工物を回転させ、被加工面を位置決めする角度調整治具16と、エキシマレーザ光の発振器とマスクとの間に配置され、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の設定角度に基づき、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の角度とエキシマレーザ光の所要エネルギーとの関係に従って規定した所定の減衰率で、エキシマレーザ光を減衰させる光学的アッテネータ54とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エキシマレーザ加工装置及びエキシマレーザ光の加工エネルギー強度の調整方法に関し、更に詳細には、所望の加工に最適な加工エネルギー強度にエキシマレーザ光を調整する機能を有するエキシマレーザ加工装置、及びエキシマレーザ光の加工エネルギー強度を所望の加工に最適な強度に自動的に調整する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】エキシマレーザ光は、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと、F、Cl等のハロゲンガスとを一定の割合で混合したガス中で放電させ、放電現象によりレーザ発振させたレーザ光であって、紫外領域の短い発振波長を有する高出力パルスレーザ光として発光させることにより、種々の分野で利用されている。
【0003】エキシマレーザ光加工装置は、エキシマレーザ光を利用して被加工物に加工を施す装置であって、特に半導体装置とか電子/電気部品に微細加工を施すのに適していて、例えばインクジェット方式の記録ヘッドのオリフィス・プレートに微細孔を開口するときに、フレキシブル・プリント基板にスルーホールやビィアホールを開口するときに、或いは高分子材料に微細加工を施すとき等に使用され、適用分野が広い。特に、ポリイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン・テレフタレート等の高分子材料のエキシマレーザ光による加工は、CO2 レーザ加工装置、YAGレーザ装置による熱的溶融プロセスとは異なり、光化学反応と呼ばれるアブレーションプロセスによるものであるから、熱影響が極めて少ないので、高品位な加工が可能となる。
【0004】エキシマレーザ光による孔開け加工方法は、マスクイメージ法とコンタクトマスク法とに大別される。マスクイメージ法は、図6に示すように、エキシマレーザ光発振器60から出射されたエキシマレーザ光ビームを反射ミラー62で反射させ、次いでマスク64に照射し、マスク64の開口部66の形状パターンを通過させる。通過したエキシマレーザ光ビームをレンズ68により縮小して被加工物70に照射する方法である。図6はマスクイメージ法によるエキシマレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【0005】ところで、マスクイメージ法に従ったエキシマレーザ光による加工方法では、貫通穴の中心線が被加工物の被加工面に所定角度で斜めになっている貫通穴を被加工物に開口する場合には、エキシマレーザ光を被加工面に所定角度と同じ照射角度で照射する必要がある。換言すれば、例えばエキシマレーザ光を被加工面に垂直に照射して被加工面を垂直に貫通する貫通孔を被加工物に開口する加工方法を実施する際のように、エキシマレーザ光を被加工面に垂直に照射する場合と、エキシマレーザ光を被加工面に斜めに照射して、被加工面に斜め貫通する貫通孔を被加工物に開口する加工方法を実施する際のように、エキシマレーザ光を被加工面に斜めに照射する場合とがある。そして、発明者らは、エキシマレーザ光を被加工面に垂直に照射する場合に比べて、エキシマレーザ光を被加工面に斜めに照射する場合に、正確な加工を行うためには、より高い加工エネルギー強度が必要であることを多数回の実験を通して実験的に認識している。
【0006】また、被加工物の被加工面に対して垂直と斜めの2つの固定された角度で、エキシマレーザ光を被加工面に照射するときには、それぞれのエキシマレーザ光の光軸に、又は垂直方向のエキシマレーザ光の光軸のみに、エキシマレーザ光の光量を減衰させる機構を取り付けてエキシマレーザ光を減衰させることにより、それぞれ最適な加工エネルギー強度に設定することが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、被加工面に対する貫通穴の中心線の角度が相互に異なる多数個の貫通穴を開口する加工作業を例に上げてエキシマレーザ光の所要光量を説明すると、被加工面に対して貫通穴の中心線の角度が変わる貫通穴を開口するごとにそれぞれエキシマレーザ光の光量を設定することが、必要である。それは、次の理由に因るからである。即ち、エキシマレーザ光の光量が少なく、加工エネルギー強度が低すぎると、例えばポリマー・フィルムの場合では、0.5〜1.0J/cm2 以下、ポリイミド樹脂の場合では、1.0J/cm2 以下では、加工した際、開口の形状が安定せず、開口した貫通穴の真円度が悪くなる。逆に、エキシマレーザ光の光量が多く、加工エネルギー強度が高すぎると、エキシマレーザ光の入射側及び出射側の双方の貫通孔のエッジ形状が、ジェット効果により荒れる。また、テレセントリック光学系によってエキシマレーザ光の光学系を構成した場合には、対物レンズに入るエキシマレーザ光の光量が多すぎると、レンズ寿命が予想以上に短くなる。
【0008】そのために、従来のエキシマレーザ加工装置では、被加工面に対する貫通穴の中心線の角度が相互に異なる多数個の貫通穴を開口する加工作業を行う場合、被加工面に対する貫通穴の中心線の角度が異なる貫通穴を開口する度に、エキシマレーザ光の光量がその加工に最適な光量になるように、エキシマレーザ光の光量を調整する作業を行っていた。しかし、従来のエキシマレーザ加工装置では、貫通穴の角度を変更する毎に、エキシマレーザ光の光量を調整するために、その調整に時間を要し、加工能率が低下するという問題があった。以上の説明では、被加工物を貫通する貫通穴を開口する例を上げて、従来のエキシマレーザ加工装置の問題を説明したが、この問題は貫通穴の開口に限らず、被加工面に対してエキシマレーザ光を斜めに照射して加工する場合に普遍的な問題である。
【0009】そこで、本発明の目的は、加工能率の高いエキシマレーザ加工装置を提供し、かつ、エキシマレーザ光の加工エネルギー強度を調整する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、被加工物の被加工面に対するエキシマレーザ光の照射角度を変えて、例えば貫通穴の中心線が被加工面に所定角度で斜めになっている貫通穴を被加工物に開口する際に、エキシマレーザ光の光量の設定及び調整を自動的に行うエキシマレーザ加工装置を実現することにより、加工能率の高いエキシマレーザ加工装置を実現することを着想し、実験を重ねて本発明を完成するに到った。
【0011】上記目的を達成するために、本発明に係るエキシマレーザ加工装置は、エキシマレーザ光の発振器と、発振器から出射されたエキシマレーザ光を所定の形状パターンに規制するマスクとを備え、マスクによりパターン規制されたエキシマレーザ光により被加工物に加工を施すエキシマレーザ加工装置において、被加工物を保持し、かつ、被加工物の被加工面がエキシマレーザ光の照射方向に対して設定角度になるように被加工物を回転させ、被加工面を位置決めする角度調整治具と、エキシマレーザ光の発振器とマスクとの間に配置され、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の設定角度に基づき、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の角度とエキシマレーザ光の所要エネルギーとの関係に従って規定した所定の減衰率で、エキシマレーザ光を減衰させる光学的アッテネータとを備えていることを特徴としている。
【0012】本発明では、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の角度とエキシマレーザ光の所要エネルギーとの関係は、予め実験等により規定しておく。角度調整治具で被加工物を所定角度になるように回転させ、光学的アッテネータを自動的に制御して加工エネルギー強度を調整しているので、被加工物の被加工面に対するエキシマレーザ光の照射角度を変えて、例えば貫通穴の中心線が被加工面に所定角度で斜めになっている貫通穴を被加工物に開口する際にも、エキシマレーザ光の光量の設定及び調整を自動的に行うことできる。
【0013】本発明の好適な実施態様では、角度調整治具を支持して、X−Y面で自在に移動するX−Yステージと、X−Yステージに直交する方向にエキシマレーザ光を照射するエキシマレーザ光の光学系とを備え、角度調整治具が、被加工物を保持して回転する回転機構と、回転機構を駆動する駆動機構と、被加工物の回転角度を計測するエンコーダと、エンコーダで計測した被加工物の回転角度が所定角度になるように駆動機構を制御する制御機構とを有する。
【0014】本発明に係るエキシマレーザ光の加工エネルギー強度の調整方法は、エキシマレーザ加工装置によって被加工物に加工を施すに当たり、被加工物に施す加工寸法及び加工形状を設定し、マスクを選択するステップと、X−Y面で移動して、エキシマレーザ光の照射位置に被加工物の加工場所を位置決めし、被加工物を回転させてエキシマレーザ光の照射方向に対して被加工物の被加工面を所定角度に設定するステップと、設定した角度に基づき、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の角度とエキシマレーザ光の所要エネルギーとの関係に従って規定した所定の減衰率でエキシマレーザ光を減衰させるように光学的アッテネータを制御するステップとを有することを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、添付図面を参照して、実施の形態例に基づいて本発明をより詳細に説明する。本実施の形態例は、本発明に係るエキシマレーザ加工装置の実施形態の一例であって、図1は本実施形態例のエキシマレーザ加工装置の構成を示す模式図、図2(a)は角度調整治具の構成を示す側面図、図2(b)は平面図、図3は被加工物Wの断面図、図4(a)は角度調整治具に空気を供給する系統のブロック図、及び図4(b)は角度調整治具の真空チャックを真空吸引する系統のブロック図である。本実施形態例のエキシマレーザ加工装置10は、被加工物にエキシマレーザ光による加工を施す際に、被加工物の被加工面に対するエキシマレーザ光の照射角度に応じてエキシマレーザ光の加工エネルギー強度を自動的に調整する自動調整機構を備えたエキシマレーザ加工装置である。エキシマレーザ加工装置10は、図1に示すように、エキシマレーザ光の光源として、エキシマレーザ光発振器11と、レーザ発振を起こさせるガス放電空間を形成するためのガスをエキシマレーザ光発振器11に供給するガスユニット12とを備え、光学系として、エキシマレーザ光の光路に沿って、順次、2個の反射ミラーの組13と、光学的アッテネータ54と、マスク14と、反射ミラー18と、加工レンズ15とを備えている。
【0016】2個の反射ミラーの組13は、エキシマレーザ光の発振器11の光軸に平行な別の光軸を有するエキシマレーザ光の光路を形成する。光学的アッテネータ54は、非段階的に、又は段階的にエキシマレーザ光を減衰する。マスク14は、被加工物に施す形状パターン加工の縮小投影用形状パターンを有する。反射ミラー18は、マスク14の形状パターンを通過したエキシマレーザ光を下方に向けて方向転換させる。加工レンズ15は、マスク14の形状パターンを通過したエキシマレーザ光を縮小投影するレンズである。
【0017】エキシマレーザ加工装置10は、被加工物Wを支持する機構として、被加工物Wを載置させ、載置された被加工物Wを回転させることにより、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の角度を自在に変えることができる角度調整治具16と、角度調整治具16を支持し、X−Y面で自在に移動して、被加工物Wの加工場所を位置決めするX−Yテーブル17とを備えている。また、エキシマレーザ加工装置10は、被加工物Wの被加工面の角度に基づいて光学的アッテネータ54によるエキシマレーザ光の減衰を制御する制御装置51を備えている。本実施形態例の構成では、光学的アッテネータ54は、反射ミラー13とマスク14の間に配置されているが、エキシマレーザ発振器11と反射ミラー13の間に配置しても良い。
【0018】角度調整治具16は、図2に示すように、基台29上に、パルスモータ22と、真空チャック27を支持して回転する回転部(図示せず)と、回転部を支持するエアスピンドル25と、パルスモータ22の回転動力を回転部に伝達して回転させるハーモニックドライブ23及びカップリング24とを備えている。真空チャック27は、被加工物26の上面がエアスピンドル25によって支持された回転部の回転中心軸を含む平面と一致するように、被加工物Wを真空吸着して保持する。エアスピンドル25によって支持された回転部、従って被加工物26の回転角度は、ロータリエンコーダ28と、フォト・センサ21とにより検出される。また、図示しないが、エアスピンドル25には、エアが供給されている。
【0019】本実施形態例では、エキシマレーザ加工装置10により、図3に示すように、被加工面に対して垂直に被加工物を貫通する貫通穴W1 と、被加工面に対して垂直方向から傾斜した角度で被加工物を貫通する貫通穴W2 とを開口する。しかも、レーザ光出射側の穴位置が相互に近接しており、エッジの形状が重要視されていたために、加工エネルギーの最適化が必要な加工である。
【0020】角度調整治具16は、図4(a)に示すように、回転部を支持するエアスピンドル25にフィルタ・レギュレータ・ユニット44を介して空気源46から空気を供給し、また、図4(b)に示すように、エアタンク43、真空レギュレータ42を介して真空ポンプ41を真空チャック27に接続し、真空吸引する。
【0021】角度調整治具16は、更に、図1に示すように、制御装置51によって、コントロールされている。更に、制御装置51は、角度調整治具16のロータリエンコーダ28と接続されているロータリエンコーダ・コントローラ52、エアスピンドル25に供給するエアの圧力をモニタする圧力センサ53、及び、光学的アッテネータ54に接続されている。制御装置51には、角度調整治具16の回転角度を設定する入力ボタンが設けてあって、制御装置51は、入力された回転角度の数値に応じて、角度調整治具16のパルスモータ22と、光学的アッテネータ54のパルスモータ(図示せず)に駆動パルスを送り、それぞれのパルスモータを所定角度だけ回転させる。光学的アッテネータには、数種類の方式があるが、本実施形態例では、光学的アッテネータ54として、2枚の光学ガラス板を対向させて同角度ずつ連続可変で回転させ、光量を減衰させるタイプのアッテネータを使用している。この方式に限らず、パルス信号で光量を制御できる限り、他の方式の光学的アッテネータを使用しても良い。
【0022】以上の説明のように、本実施形態例のエキシマレーザ加工装置10では、エキシマレーザ光の加工エネルギー強度を自動的に調整する機構は、角度調整治具16と、制御装置51と、光学的アッテネータ54とから構成されている。即ち、角度調整治具16による角度設定と、光学的アッテネータ54による加工エネルギー強度の制御とを連動させることが、本発明の特徴である。
【0023】図5を参照して、本実施形態例のエキシマレーザ加工装置10を使って被加工物に貫通穴を開口する際の操作方法を説明する。図5はエキシマレーザ加工装置10を使って被加工物に貫通穴を開口する際の手順を示すフローチャートである。まず、ステップS1 では、被加工物に開口する貫通穴の穴径を設定する。これにより、所要のマスクが選択され、エキシマレーザ加工装置10のマスクが変更され、被加工面上に投影される形状が決まる。次いで、ステップS2 に移行し、被加工物に開口する貫通穴の位置を設定し、X−Yテーブル17を移動させて所定の位置に被加工物を位置決めする。以上の設定は、エキシマレーザ加工装置10の操作盤(図示せず)で行う。
【0024】続いて、ステップS3 では、被加工物の加工角度の設定を行う。加工角度の設定は、角度調整治具16の制御装置51で行う。制御装置51は、エキシマレーザ光の照射角度が被加工面に対して設定した加工角度になるように、角度調整治具16のパスルモータ22によって被加工物の被加工面を回転させ、同時に、光学的アッテネータ54を連動させ、予め設定されている関係に従って、設定された加工角度に基づきエキシマレーザ光の減衰率を自動的に設定、制御する。以下の手順では、本実施形態例のエキシマレーザ加工装置10の加工角度の設定範囲を0°から45°の範囲として説明する。本発明は、特に加工角度がこの範囲に限定されることはなく、単に説明のための例示である。
【0025】ステップS4 で加工角度が0°以上15°未満かどうか判断し、0°以上15°未満であるときには、予め設定されている減衰率で、例えば50%の減衰率で、エキシマレーザ光の加工エネルギー強度を光学的アッテネータ54によって減衰させる。エキシマレーザ加工装置10は、発振器11から出射されたエキシマレーザ光のエネルギーを50%減衰した加工エネルギー強度で被加工物を加工する。加工角度が15°以上であるときには、ステップS5 に移行する。ステップS5 では、加工角度が30°未満であるかどうか判断し、30°未満であるときには、予め設定されている減衰率で、例えば25%の減衰率で、エキシマレーザ光の加工エネルギーを光学的アッテネータ54によって減衰させる。エキシマレーザ加工装置10は、発振器11から出射されたエキシマレーザ光のエネルギーを25%減衰した加工エネルギー強度で被加工物を加工する。加工角度が30°以上であるときには、ステップS6 に移行する。ステップS6 では、加工角度が45°以下であるかどうか判断し、45°以下であるときには、設定されている減衰率で、例えば0%の減衰率で、エキシマレーザ光の加工エネルギーを予め光学的アッテネータ54によって減衰させる、換言すれば減衰させない。エキシマレーザ加工装置10は、発振器11から出射されたエキシマレーザ光の加工エネルギー強度で被加工物を加工する。
【0026】図5には図示しないが、加工レートが被加工物の材質、表面処理等に依存して変わるので、実際のレーザ加工に先立ち、被加工物の被加工面に垂直にエキシマレーザ光を照射した時の加工レートを、試し加工によって確認しておく。また、本実施形態例では、角度による加工レーザショット数の自動設定は行っていないが、角度によるアッテネータの減衰率を可変する本実施形態例と同様に、更に加工角度による分岐を細かく設定し、加工ショット数にフィードバックすれば、自動化することもできる。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、被加工物の被加工面がエキシマレーザ光の照射方向に対して設定角度になるように被加工物を回転させ、被加工面を位置決めする角度調整治具と、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の角度とエキシマレーザ光の所要エネルギーとの関係に従って規定した所定の減衰率で、エキシマレーザ光を減衰させる光学的アッテネータとをエキシマレーザ加工装置に備えることにより、エキシマレーザ光の加工エネルギー強度を所望の加工に最適な強度に自動的に調整し、加工能率を向上させることできる。
【0028】更に具体的には、以下の効果を奏する。
1)被加工物に多種の穴径及び多種の角度を持った開口加工を行うとき、角度ごとの加工レートに基づいて加工ショット数を予め設定することにより、貫通穴の加工角度が変わっても、段取り替えのためにエキシマレーザ加工装置を停止することなく、運転を継続して自動的に加工することができる。
2)加工角度に最適な加工エネルギー強度にエキシマレーザ光の強度を自動的に調整するので、従来のように、斜め加工に合わせた強エネルギーで垂直穴を開口加工する必要がなくなり、穴のエッジダメージを防ぐことができる。また、これにより、エキシマレーザ加工装置の光学系に設けた反射ミラーや加工レンズの寿命を延ばすことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例のエキシマレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2(a)は角度調整治具の構成を示す側面図、及び図2(b)は平面図である。
【図3】被加工物Wの断面図である。
【図4】図4(a)は角度調整治具に空気を供給する系統のブロック図、及び図4(b)は角度調整治具の真空チャックを真空吸引する系統のブロック図である。
【図5】実施形態例のエキシマレーザ加工装置を使って被加工物に貫通穴を開口する際の手順を示すフローチャートである。
【図6】マスクイメージ法によってレーザ加工するエキシマレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
10……実施形態例のエキシマレーザ加工装置、11……エキシマレーザ光発振器、12……ガスユニット、13……反射ミラー、14……マスク、15……加工レンズ、16……角度調整治具、17……X−Yテーブル、18……反射ミラー、21……フォト・センサ、22……パルスモータ、23……ハーモニックドライブ、24……カップリング、25……エアスピンドル、27……真空チャック、28……ロータリエンコーダ、29……基台41……真空ポンプ、42……真空レギュレータ、43……エアタンク、44……フィルタ・レギュレータ・ユニット、46……空気源、51……制御装置、62……ロータリエンコーダ・コントローラ、53……圧力センサ、54……光学的アッテネータ、60……エキシマレーザ光発振器、62……反射ミラー、64……マスク、66……マスクの開口部、68……レンズ、70……被加工物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エキシマレーザ光の発振器と、発振器から出射されたエキシマレーザ光を所定の形状パターンに規制するマスクとを備え、マスクによりパターン規制されたエキシマレーザ光により被加工物に加工を施すエキシマレーザ加工装置において、被加工物を保持し、かつ、被加工物の被加工面がエキシマレーザ光の照射方向に対して設定角度になるように被加工物を回転させ、被加工面を位置決めする角度調整治具と、エキシマレーザ光の発振器とマスクとの間に配置され、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の設定角度に基づき、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の角度とエキシマレーザ光の所要エネルギーとの関係に従って規定した所定の減衰率で、エキシマレーザ光を減衰させる光学的アッテネータとを備えていることを特徴とするエキシマレーザ加工装置。
【請求項2】 前記角度調整治具を支持して、X−Y面で自在に移動するX−Yステージと、X−Yステージに直交する方向にエキシマレーザ光を照射するエキシマレーザ光の光学系とを備え、角度調整治具が、被加工物を保持して回転する回転機構と、回転機構を駆動する駆動機構と、被加工物の回転角度を計測するエンコーダと、エンコーダで計測した被加工物の回転角度が所定角度になるように駆動機構を制御する制御機構とを有することを特徴とする請求項1に記載のエキシマレーザ加工装置。
【請求項3】 エキシマレーザ加工装置によって被加工物に加工を施すに当たり、被加工物に施す加工寸法及び加工形状を設定し、マスクを選択するステップと、X−Y面で移動して、エキシマレーザ光の照射位置に被加工物の加工場所を位置決めし、被加工物を回転させてエキシマレーザ光の照射方向に対して被加工物の被加工面を所定角度に設定するステップと、設定した角度に基づき、エキシマレーザ光の照射方向に対する被加工面の角度とエキシマレーザ光の所要エネルギーとの関係に従って規定した所定の減衰率でエキシマレーザ光を減衰させるように光学的アッテネータを制御するステップとを有することを特徴とするエキシマレーザ光の加工エネルギー強度の調整方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−271770(P2000−271770A)
【公開日】平成12年10月3日(2000.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−79818
【出願日】平成11年3月24日(1999.3.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】