説明

エクジソン受容体リガンド結合ドメイン構造

本発明は昆虫の機能的エクジソン受容体の構造研究に関する。より具体的には、本発明は、コナジラミ、特にタバココナジラミ(Bernisia tabaci)のエクジソン受容体リガンド結合ドメインの結晶構造、およびその結晶の用途および該受容体と相互作用する化合物を選択しスクリーニングするための関連構造情報に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昆虫の機能的エクジソン受容体の構造研究に関する。より具体的には、本発明は、コナジラミ、特にタバココナジラミ(Bemisia tabaci)のエクジソン受容体リガンド結合ドメインの結晶構造、ならびに該受容体と相互作用する化合物を選択し、スクリーニングするための該結晶および関連構造情報の使用に関する。さらに、本発明の結晶構造を使用して、関連種の機能的エクジソン受容体のリガンド結合ポケットの構造を予測し、様々なリガンドの区別に影響を及ぼすアミノ酸残基の部位特異的変異誘発を誘導することができる。
【背景技術】
【0002】
Carroll Williamsは、1960年代に、99%を上回る昆虫種は、ヒトから見て無害または有益であることを指摘した。中にはなくてはならないものもあり、例えば、蜂は受粉においてなくてはならない役割を担っている。実際のところ、昆虫の約0.1%が害虫である。特定の害虫に特異性を示すより安全な新生代殺虫剤は、その昆虫特有のホルモンの化学構造に基づいて開発することができるとWilliamsは提案した(Williams、1967、Williams、1967)。成長および発達を制御する非ペプチドホルモン、20-ヒドロキシエクジソンおよび幼虫ホルモンの濃度は、正確に制御される。エクジステロイドまたはジュベノイド活性を有する化合物の濃度が不適切であると、昆虫の発達に重大な混乱が生じ、その後死に至る。
【0003】
この取り組みの問題点は、最初は分かっていなかったが、正常な発達において代謝的分解によってこれらのホルモンを除去するために昆虫が備えている効率的機構から生じる。この問題は、高い受容体親和性を示すが、天然のホルモンとは異なる化学構造を有し、したがって宿主の代謝経路の影響を受けない化合物を発見することによって克服されるだろう。
【0004】
昆虫の成長および発達の調節において重要な役割を果たすことが知られている2種類の非ペプチド性ホルモンは、ステロイドエクジソン、以後エクジソンと称する20-ヒドロキシエクジソンおよび以後JHと称するセスキテルペノイド幼若ホルモンである。JHは、成虫の生殖過程の調節における役割に加えて、脱皮する昆虫の幼虫状態または若虫状態の維持に関与する。エクジソンの力価は、昆虫の生活環において6倍以上も上下することが可能で、例えば、幼齢間の脱皮過程、新規クチクラの合成、(JH力価減少後の)変態の開始および成虫卵巣における卵黄形成相を制御する。双翅目キイロショウジョウバエ(Drosophiola Melanogaster)に見られる巨大な多糸性染色体によって、遺伝子発現変化のレベルで、エクジソン力価の上昇に対する応答の複雑さが理解された。エクジソンは蛋白質受容体を介して遺伝子発現の制御にその作用を発揮することがAshburnerおよびその共同研究者等によって指摘された(Ashburner他、1974)。2、3個の早期応答遺伝子はさらに、応答を後期応答遺伝子全体に伝達する遺伝子転写調節蛋白質を産生し、これらの制御蛋白質は、後期応答染色体座での作用において検出することができる(Hill他、1993)。
【0005】
過去10年間において、昆虫の発達の制御においてエクジソンが担う重要な役割の基礎となっている分子機構の解明に多大な進歩が見られた。キイロショウジョウバエを使用して、遺伝学および分子生物学の総力を結集した研究によって、この調査は進められた。本明細書で特に重要なことは、エクジソン受容体の特性の解明であった。ecrおよびuspと呼ばれる2種類の遺伝子の産物から形成されたヘテロ2量体であることが示された(Yao他、1993)。これらの遺伝子の蛋白質産物、EcRおよびUSPは、核内受容体スーパーファミリーの構成要素である。このファミリーの特徴は、一連のドメインが、N末端から順番に、転写活性化(A/B)、DNA結合(C)、核局在化(すなわち「リンカー」D)およびリガンド結合(E/F)をもたらす全体構造図である。このリガンド結合ドメインはまた、作用薬リガンドの結合に応じたトランス活性化をもたらす。
【0006】
エクジソン受容体のEcRおよびUSPサブユニットは両方とも、いくつかの昆虫からクローニングされた。例えば(Koelle他、1991、Hannan & Hill、1997、Hannan & Hill、2001、Oro他、1990、WO99/36520、WO01/02436)を参照のこと。
【0007】
1960年代からJHには少なからぬ関心が寄せられたが、その受容体の特性はあまり明らかにされてこなかった。1997年後半に報告された研究およびその後の報告では、この長い間解明が求められている受容体はまた、USPに関連する可能性があるが(Jones & Sharp、1997、Sasorith他、2002)、議論の余地が残されている。該受容体の正確な知識がなくても、JHは、30年にわたって、該ホルモンの活性を模倣した多数の異なる分子を導いてきた徹底的な化学合成計画のモデルとして役立ってきた。これらの中には、殺虫剤として登録されたものもある。最近、鱗翅目オオタバコガ(Heliothis virescens)(Billas他、2001)および双翅目キイロショウジョウバエ(Clayton他、2001)のUSPのリガンド結合ドメイン単量体の3次元構造が明らかになった。
【0008】
1980年代までは、エクジソン模倣物の開発に向けた化学的な取り組みは、構造が複雑であること、および該ステロイドを商業規模の分野に適用するには合成が困難であることが妨げとなっていた。しかし、1988年に、RohmおよびHaas Companyの科学者等(Wing他、1988、Wing、1988)が、この会社が偶発的に発見した殺虫剤ビサシルヒドラジン類は主にエクジソン受容体との相互作用を介して作用していることを報告した。この種類の構成要素は、昆虫類の目のレベルで著しい選択性を示し、例えば、RH-5992の効果は、双翅目よりも鱗翅目に対して約2桁から3桁優れている。この差は、2つの昆虫目のエクジソン受容体と該化合物との相互作用の解離定数の差と相関する(Dhadialla他、1998)。その後の研究(Sundaram他、1998)によって、場合によっては活発な輸送除去の関与が示されたが、異なる目間のエクジソン受容体自体の構造の変動が、この種の今なお使用されている殺虫剤の選択性の基礎として非常に重要な役割を果たしているということはほぼ間違いない。
【0009】
鱗翅目およびいくつかの双翅目に対するビサシルヒドラジンの選択性は、肯定および否定両方の意味合いを有する。肯定的には、脊椎動物に存在しないだけでなく、昆虫類では十分な変動を示し、害虫と益虫または無害な種類との間の区別を可能にする受容体を標的とする、安全で、より環境に優しい殺虫剤の先駆けと見なされる。否定的には、この活性範囲が比較的に狭いことによって販売が限られ、さらに化学物質を標的とする安全なエクジソン受容体によって制御することができない昆虫目が非常に多数残される。業界は、この作用様式を備えた薬剤の活性範囲を拡大しようとしてきたが、成功した例はほとんどない。
【0010】
現在の薬剤の選択性のほとんどはエクジソン受容体の構造の変化に由来しているので、新しいリガンド化学物質の設計を導くためだけでなく、作用の選択性の基礎となる受容体の原子的特徴の知識をこの設計過程に取り込むためにも、エクジソン受容体のリガンド結合ドメインの3次元構造の知識が当業界で必要とされている。
【0011】
レチノイン酸受容体およびビタミンD受容体(Wurtz他、2000)の構造およびヒト甲状腺ホルモン受容体β、ヒトエストロゲン受容体αおよびヒト黄体ホルモン受容体(Kasuya他、2003)の構造を含めたその他の核内受容体リガンド結合ドメインの公知の3次元構造をベースとした相同性モデリングを使用して、リガンド結合研究のためにエクジソン受容体の対応するドメインの構造を予測した。このような取り組みでは、他の可能性のある3次元蛋白質構造とリガンド合体の他の配置を区別することはできない。
【0012】
さらに、哺乳類細胞において治療遺伝子を制御するため、および農業に重要な、動物および植物両方の種により一般的な導入遺伝子を制御するために、エクジソン受容体およびその機能的ドメインはエクジソンスイッチの成分として使用される。エクジソン受容体のリガンド結合ドメインの3次元構造の知識は、このようなスイッチのエフェクターとして作用し、該受容体のリガンド選択性を変化させる部位特異的変異誘発を導入するための安全で、より効果的なリガンドを設計するために役立つだろう。
【非特許文献1】Williams、1967
【非特許文献2】Williams、1967
【非特許文献3】Ashburner他、1974
【非特許文献4】Hill他、1993
【非特許文献5】Yao他、1993
【非特許文献6】Koelle他、1991
【非特許文献7】Hannan & Hill、1997
【非特許文献8】Hannan & Hill、2001
【非特許文献9】Oro他、1990
【特許文献1】WO99/36520
【特許文献2】WO01/02436
【非特許文献10】Jones & Sharp、1997
【非特許文献11】Sasorith他、2002
【非特許文献12】Billas他、2001
【非特許文献13】Clayton他、2001
【非特許文献14】Wing他、1988
【非特許文献15】Wing、1988
【非特許文献16】Dhadialla他、1998
【非特許文献17】Sundaram他、1998
【非特許文献18】Wurtz他、2000
【非特許文献19】Kasuya他、2003
【非特許文献20】P.Ferrara、H.Gohlke、D.J.Price、G.KlebeおよびC.L.Brooks III、Assessing scoring functions for protein-ligand interactions、J.Med.Chem.、vol.47、3032〜3047(2004)
【非特許文献21】R.Wang、L.Lai、S.Wang、Further development and validation of empirical scoring functions for structure-based binding affinity prediction、J.Comput、Aided Mol.Des.、vol.16、11〜26(2002)
【非特許文献22】Lattman、1985、Rossmann、1990
【非特許文献23】Renaud & Moras、2000
【非特許文献24】Kleywegt & Jones、1994
【非特許文献25】Billas他、2001
【非特許文献26】Clayton他、2001
【非特許文献27】Nienaber他、2000
【非特許文献28】Ekena他、1998
【非特許文献29】Kumar他、2002
【非特許文献30】Grebe & Spindler-Barth、2002
【非特許文献31】Goodford、1984
【非特許文献32】Beddell、1984
【非特許文献33】Ho1、1986
【非特許文献34】Sheridan & Venkataraghavan、1987
【非特許文献35】Walters他、1998
【非特許文献36】Verlinde & Hol、1994
【非特許文献37】Gane & Dean、2000
【非特許文献38】Good、2001
【非特許文献39】Langer & Hoffmann、2001
【非特許文献40】Blundell他、1987
【非特許文献41】Loughney他、1999
【非特許文献42】Kuntz他、1982
【非特許文献43】Ewing他、2001
【非特許文献44】Bohm & Stahl、1999
【非特許文献45】Rarey他、1996
【非特許文献46】Goodford、1984
【非特許文献47】Becker、1941
【非特許文献48】Cymborowski、1989
【非特許文献49】Fristrom、J.W.& Yund、1976
【非特許文献50】Clement他、1993
【非特許文献51】Yang他、1986
【非特許文献52】Oberdorster他、2001
【非特許文献53】Yung他、1978
【非特許文献54】Cherbas他、1988
【非特許文献55】Appell他、1998
【非特許文献56】Inglese他、1998
【非特許文献57】Devereux他、1984
【非特許文献58】Ausubel、1992
【非特許文献59】Okayama他、1987
【非特許文献60】Sambrook他、1989
【非特許文献61】Hannan & Hill、1997
【非特許文献62】Tzertzinis他、1994
【非特許文献63】Zilliacus他、1995
【非特許文献64】Durand他、1994
【非特許文献65】Wurtz他、2000
【特許文献3】WO01/02436
【非特許文献66】Danielsen他、1989
【非特許文献67】Umesono & Evans、1989
【非特許文献68】Chung他、1998
【非特許文献69】Perlmann他、1996
【非特許文献70】Le Douarin他、1995
【非特許文献71】Molloy、2000
【非特許文献72】McPherson、1982
【非特許文献73】Teng、1990
【非特許文献74】Otwinowski & Minor、1997
【非特許文献75】Sali & Blundell、1993
【非特許文献76】Luthy他、1992
【非特許文献77】Sippl、1993
【非特許文献78】Laskowski他、1993
【非特許文献79】Vagin & Teplyakov、1997
【非特許文献80】Brunger、1992
【非特許文献81】Jones他、1991
【非特許文献82】Brunger他、1998
【非特許文献83】Renaud & Moras、2000
【非特許文献84】Kleywegt & Jones、1994
【非特許文献85】Billas他、(2003)
【非特許文献86】Goodford、1984
【非特許文献87】Ewing他、2001
【非特許文献88】Rarey他、1996
【非特許文献89】Yudt & Koide、2001
【非特許文献90】Singh他、2001
【非特許文献91】Berezov他、2002
【非特許文献92】Tran他、2001
【非特許文献93】Westin他、1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、エクジソン受容体、特に該受容体のリガンド結合ポケットの3次元構造座標の知識は、殺虫活性を有し、エクジソンスイッチの可能性のある安全なエフェクターを含むことがまた予測される可能性のある選択的作用薬/拮抗剤の設計を促進するために有用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は現在、タバココナジラミ(シルバーリーフコナジラミ)のエクジソン受容体の機能的リガンド結合ドメインに関する3次元構造の情報を入手した。機能的なタバココナジラミエクジソン受容体は、エクジソン受容体サブユニット蛋白質(BtEcR)およびultraspiracleサブユニット蛋白質(BtUSP)を含むヘテロ2量体受容体である。相手方のBtUSP蛋白質は、BtEcR受容体蛋白質と関係して、昆虫ステロイドまたはそれらの類縁体に対する非常に強い親和性を付与する。一般的にエクジソン受容体の活性を変更する化合物には、20-ヒドロキシエクジソン(以後、「エクジソン」と称する)、ポナステロンA、ムリステロンA、エクジステロイドの類縁体または、例えば、ジベンゾイルヒドラジン化学物質を有するものを含めたある種の非ステロイドエクジソン受容体作用薬もしくは拮抗薬が含まれる。
【0015】
本明細書で示した情報を使用して、その他の種類からエクジソン受容体ファミリーの関連構成要素の構造を予測することができ、ならびに殺虫剤としての活性を備えた薬剤として使用するために、タバココナジラミエクジソン受容体およびその他のエクジソン受容体と相互作用する化合物を選択し、かつ/または設計することができる。
【0016】
今後、本明細書で、「エクジソン受容体」という用語は、機能的EcR/USPヘテロ2量体受容体を意味するために使用され、そのサブユニットはEcRおよびUSPと称する。具体的に、タバココナジラミのサブユニットは、BtEcRおよびBtUSPと称する。用語、リガンド結合ドメインは、LBDと略す。
【0017】
したがって、第1の態様では、本発明は、BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDまたはその一部を含む結晶性組成物、またはリガンドと一緒に結晶化させたBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDまたはその一部を含む結晶性組成物から成る。
【0018】
第2の態様では、本発明は、エクジソン受容体と相互作用し、該受容体を介する活性を変更する化合物を選択するか、または設計する方法であって、該化合物とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのトポグラフィー領域との間の立体化学的相補性を評価する段階を含み、該ヘテロ2量体LDBの特徴は、
(a)付録Iに示した原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、あるいは
(b)全体の並進(whole body translation)および/または回転によって付録Iに示したモノマーの座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個または複数の亜集団である方法を提供する。
【0019】
「立体化学的相補性」とは、受容体またはそれらのトポグラフィー領域に結合するための正味の自由エネルギーを減少させるために、化合物またはそれらの一部が受容体とエネルギー的に有利な接触を十分な回数行うことを意味する。
【0020】
立体化学相補性または所与の化学的化合物構造が蛋白質構造の特定の部位または穴にどのようにうまく結合または合致するかは、この目的で有用な1個または複数の評価関数を使用することによって測定することができる。(例えば、P.Ferrara、H.Gohlke、D.J.Price、G.KlebeおよびC.L.Brooks III、Assessing scoring functions for protein-ligand interactions、J.Med.Chem.、vol.47、3032〜3047(2004)を参照すること)。このような評価関数の具体例は、X-SCORE(R.Wang、L.Lai、S.Wang、Further development and validation of empirical scoring functions for structure-based binding affinity prediction、J.Comput.-Aided Mol.Des.、vol.16、11〜26(2002))で、これは、所与の蛋白質-リガンド複合体の解離定数を算出する評価関数で、200組の蛋白質-リガンド複合体についての実験データを較正することによって作製された。
【0021】
「トポグラフィー領域」とは、BtEcR LBD単独、BtUSP LBD単独またはBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDの分子表面の亜集団を意味する(Connolly、1983)。この亜集団は、単一の領域か、または複数のつながりのない領域から構成されてよい。この場合、BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDまたはその構成要素相手内に取り囲まれた穴の表面はまた、分子表面の一部として処理される。
【0022】
第3の態様では、本発明は、演算処理装置、入力装置および出力装置を含むプログラム化されたコンピュータを使用して、エクジソン受容体と相互作用し、それによって受容体による活性を変更することができる可能性のある化合物を同定するためのコンピュータ支援方法であって、
(a)付録Iに示した原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492およびポナステロンA、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、あるいは前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団、あるいは全体を並進および/または回転によって付録Iに示した座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個または複数の亜集団を含むデータを該入力装置によってプログラム化されたコンピュータに入力する段階、
(b)コンピュータによる方法を使用して、付録Iに示した原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415および/もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、あるいは前記アミノ酸の1個または複数の亜集団、あるいは全体の並進および/または回転によって付録Iに示した座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個または複数の亜集団に立体化学的相補性を有する構造の一連の原子座標を作製する段階、
(c)該演算処理装置を使用して、基準データ群を化学構造のコンピュータデータベースと比較する段階、
(d)コンピュータによる方法を使用して、前記データベースから前記基準データ群の一部に類似した化学構造を選択する段階、ならびに
(e)該出力装置に、基準データ群の一部と相補的または類似した選択化学構造を出力する段階を含むコンピュータ支援方法を提供する。
【0023】
第4の態様では、本発明は、分子または分子複合体の3次元表示を作成するためのコンピュータであって、
(a)機械読み取り可能データでコードされたデータ記憶材料を含む機械読み取り可能データ記憶媒体であって、前記機械読み取り可能データは付録Iで示したBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492およびポナステロンA、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子との二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、あるいは前記アミノ酸の1個または複数の亜集団、あるいは全体の並進および/または回転によって付録Iに示した座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団を含む記憶媒体、
(b)該機械読み取り可能データを処理する指令を記憶するためのワーキングメモリー、
(c)該機械読み取り可能データを3次元表示に処理するための、前記ワーキングメモリーおよび前記機械読み取り可能データ記憶媒体に接続された中央演算処理装置、および
(d)3次元表示を受信するための、該中央演算処理装置に接続された出力ハードウェアを含むコンピュータを提供する。
【0024】
第5の態様では、本発明は、エクジソン受容体を介する活性を変更することができ、本発明による方法で得られる化合物を提供する。
第6の態様では、本発明は、BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのトポグラフィー領域に立体化学的相補性を有し、該受容体を介する活性を変更する化合物であって、該ヘテロ2量体の特徴は、
(a)付録Iに示したような原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415またはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜415において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、あるいは
(b)全体を並進および/または回転によって付録Iに示したモノマーの座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個または複数の亜集団であり、ただし、該化合物はタバココナジラミエクジソン受容体の分子の天然に生じるリガンドではない化合物を提供する。
【0025】
第7の態様では、本発明は本発明の第5または第6の態様による化合物および薬剤として許容される担体または希釈剤を含む昆虫を制御するための殺虫剤組成物を提供する。
【0026】
さらに他の態様では、本発明はエクジソン受容体LBDと相互作用する化学的実体の能力を評価する方法であって、
(a)構造座標を使用してBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDの少なくとも1個の領域のコンピュータモデルを作成する段階であって、(i)該モデルのBtEcR成分とBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415の対応する構造座標、または(ii)該モデルのBtUSP成分と付録Iで記載したBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の対応する構造座標の骨格原子の間の二乗平均偏差が1.5Å以下である段階、
(b)前記化学的実体とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのモノマーの少なくとも1個の領域の前記コンピュータモデルとの間の適合操作を実行するコンピュータによる手段を使用する段階、および
(c)前記化学的実体とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDの少なくとも1個の領域との間の関連を定量するために前記適合操作の結果を分析する段階を含む方法を提供する。
【0027】
他の態様では、本発明は化合物とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDとの間の相互作用を評価する方法であって、BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDまたはその一部またはこれらの変種を含む結晶性組成物を該化合物に曝露し、該結晶に対する該化合物の結合の程度を測定することを含む方法から成る。
【0028】
当業者であれば容易に理解されようが、本発明の方法はエクジソン受容体、具体的にタバココナジラミのエクジソン受容体と相互作用する化合物を設計し、選択する合理的な方法を提供する。通例、これらの化合物は活性を増加させるためにさらなる開発を必要とする。このようなさらなる開発は、当業界では当たり前で、本明細書で提供された構造上の情報ならびにEcRおよび場合によってUSPヌクレオチドおよび/またはポリペプチド配列を使用したスクリーニングが一助となる。in vitroでの競合結合スクリーニングは、非標識試験化合物を標識リガンド(トレーサー)に対して競合させて、試験化合物が標識リガンドの機能的受容体LBDへの結合を阻害するかどうかを観察する。in vitro競合結合スクリーニングは、LBD配列またはLBD配列に結合したD(リンカー)ドメイン配列を利用することができる。in vivoにおける細胞をベースとしたスクリーニングは、適切なリポーター遺伝子構築物を含有する、哺乳類、昆虫または酵母細胞で発現させるために適切なプロモーターに機能的に結合した完全長EcR、場合によっては、完全長USPヌクレオチド配列を使用する。あるいは、in vivoにおける細胞をベースとしたスクリーニングは、その他の転写因子のドメインをコードするヌクレオチド配列に機能的に結合したEcRおよび、場合によってUSPヌクレオチド配列の領域をコードするEFまたはDEFドメインを使用することができる。特に、BtEcRヌクレオチド配列(配列番号1)および/またはポリペプチド配列(配列番号2)および場合によってBtUSP配列ヌクレオチド配列および/またはポリペプチド配列または対応するEFもしくはDEFドメインをスクリーニングに利用して、タバココナジラミのEcR/USP結晶構造を使用した合理的な設計によって得られた改変化合物を開発することができる。特定の実施形態において、本発明の方法にはこのようなさらなる開発段階を含めるものとする。
【0029】
さらに他の態様では、本発明は、
(a)前記分子または分子複合体を結晶化する段階、
(b)前記結晶化分子または分子複合体からX線回折データ群を収集する段階、
(c)付録Iに記載された構造座標の少なくとも一部をX線回折データに適用して構造が未知の分子または分子複合体の少なくとも一部の3次元電子密度図を作成する段階を含む構造が未知の分子または分子複合体についての構造情報を得るための分子置換を利用する方法を提供する。
【0030】
「分子置換」という用語は、未知の結晶で認められた回折パターンを最も良く説明するために、未知の結晶の単位格子内で、構造座標が未知の分子(例えば、付録IのBtEcR/BtUSP。ヘテロ2量体LBD座標)の向きおよび位置を決めることによって、構造座標が未知のエクジソン受容体結晶の初期モデルの作成に関与する方法を意味する。次に、位相をこのモデルから計算し、観察された振幅と組み合わせて、座標が未知の構造の近似フーリエ合成を行うことができる。次に、これをいくつかの精密化形態のいずれかにかけることによって、未知の結晶の最終的な正確な構造を得ることができる(Lattman、1985、Rossmann、1990)。
【0031】
以下の考察から明らかになるように、本発明者等はまた、BtEcRをコードする核酸分子を単離した。
【0032】
したがって、他の態様では、本発明は少なくともBtEcRのLBDをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、該ヌクレオチド配列は、
(i)配列番号1のヌクレオチド535からヌクレオチオ1248までの配列に少なくとも90%の同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、
(ii)厳密性の高い条件で配列番号1のヌクレオチド535からヌクレオチオ1248までの配列にハイブリダイズする配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、および
(iii)配列番号2のアミノ酸P179からアミノ酸S416までの配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択される単離核酸分子を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明者等は、BtEcRおよびBtUSPをクローニングし、発現させ、結晶化し、タバココナジラミのエクジソン受容体のBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDの3次元構造を決定した。
【0034】
BtEcR LBDの折り畳み構造は、基準の核内ホルモン受容体の構造である。この構造で識別されるBtUSP/BtEcR LBDの2次元構造要素は、以下の、へリックスHI-残基182から198、へリックスH2-残基202から211、へリックスH3-残基220から244、へリックスH4-残基252から264、へリックスH5-残基267から275、鎖s0-残基275から277、鎖s1-残基282から285、鎖s2-残基288から291、へリックスH6-残基292から300、へリックスH7-残基304から319、へリックスH8-残基321から334、へリックスH9-残基342から364、へリックスH10-残基368から400およびへリックスH12-残基405から413のようにBTEcR配列内に位置する。したがって、BtEcR LBDの構造は、図1に示したように、αへリックスH1からH10およびH12、ならびにヘリックスH5とH6との間に位置するβ鎖s1およびs2を含む。他の短いβ鎖(ここではs0と表記する)がヘリックスH5と鎖s1との間に存在する。BtEcRのヘリックスH12は、すなわち作用薬構造に見いだされる(Renaud & Moras、2000)。
【0035】
BtEcR LBDの構造をその他の核内受容体に使用できるものと比較した。構造的に最も接近しているのは、レチノイン酸受容体(RAR)のLBDであった。BtEcR構造とRAR-γ2(RCSBid:1EXA)との間の骨格Cα原子に対応する(237のうち)206の二乗平均偏差は1.29Åである。これらの構造の間の主要な違いは、ヘリックスH1とH3との間のループ構造にある。RARにおいて、このループはランダムコイル構造をしており、s1〜s2 βシートループの外面に向かって存在する。EcRでは、該部分は、ヘリックスH3のN末端部分に逆平行に充填された完全なヘリックスH2を含有し、s1〜s2 βシートループの反対面と相互作用する。
【0036】
リガンドポナステロンAは、残基F194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412によって形成された全体的に囲い込まれたポケットに存在することが認められた(図2)。該ポケットは、「J型」構造をしており、リガンドに適合した主要部分(「J」の脚部)および狭い溝を介して該主要部分の延長として存在する付属部分(「J」の湾曲した尾部)を有する。該ポケットの主要部分および付属部分を繋ぐ溝の内壁は、R271残基の側鎖によって形成される。穴全体で利用可能な体積は約766Å3で、一方ポナステロンA自体の体積は434Å3で、両方の形状はVOIDOOを使用して計算された(Kleywegt & Jones、1994)。付属の穴は、本明細書で提示した構造においては占有されないようである。該ポケットの主要部分および付属部分を連結する溝の狭さから、蛋白質のいくつかの動力学的状態では、これらの2種類の部分は単一の形態的な単位を形成するよりもバラバラになり得ることが示唆される。
【0037】
個々の蛋白質原子とリガンドとの間の潜在的水素結合は、以下の通りで、A286NとポナステロンAのC-6の水酸基、T234 Oγ1とポナステロンAのC-14の水酸基、T231 Oγ1とポナステロンAのC-14の水酸基、R271 NH1とポナステロンAのC-2の水酸基、E199とポナステロンAのC-2の水酸基、E199 OとポナステロンAのC-3の水酸基、Y296 OHとポナステロンAのC-20の水酸基である(図2)。リガンドと蛋白質の他の接触は、天然では圧倒的に疎水性であり、残基P201、I227、T228、1230、M268、M269、R271、M272、R275、1283、P285、A286、M301、L308、M389、L397、P405、L408およびW412の側鎖とリガンドとの間の接触によって形成される。
【0038】
ヘリックスH12は、リガンド結合部位にぶらさがったW412の側鎖を介しておそらくリガンドを部位に固定する、すなわち作用薬型構造(Renaud & Moras、2000)で存在することが見いだされた。BtEcRのD413残基およびK261残基の間の塩橋は、H12のC末端を安定化するようである。この構造において、共活性化因子は、H12を含み、ヘリックスH3とH4との間の疎水性の割れ目の表面を含む部位に結合することができる。この割れ目の分子の詳細は、図3に示す。この割れ目およびその周囲を形成する側鎖には、残基1232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264ならびにH12の残基S406、F407、L408、E410、I411およびD413の側鎖が含まれる。H12を除いて、この溝は、R253以外はエクジソン受容体配列すべてに全体的に保存されている。この残基は、結合溝の(この構造で示したH12の位置に関して)遠位末端に存在し、この段階では、その側鎖がこれらの要素の結合時に直接に共抑制因子または共活性化因子と相互作用するかどうかははっきりしてない。
【0039】
BtUSP蛋白質の構造は、公表されたその他のUSP構造(Billas他、2001、Clayton他、2001)と類似しているが、以下の主な差異がある。V300、すなわち、ヘリックスH1の前の残基には電子密度は認められず、H1をH3に連結するループの一部はまったく認められない。その他のUSP構造では、これらの構造要素によって占有される体積の一部は、今度はH10〜H12ループによって占有される。H12は、すなわち拮抗薬型構造(Renaud & Moras、2000)で存在し、一方ヘリックスH11は形成されないようである。前記の公表された2種類の構造において、リン脂質によって占有される部位に対応する部位にはリガンドは認められず、H10〜H12ループの位置を変えたり、ヘリックスH6およびこの要素にすぐに隣にある残基(残基371から384)の位置を変えたりすると、この結合部位の実際の部分は閉塞される。我々の構造のH3の前の残基がなく、完全なUSPリガンド結合ドメインのH1〜H3ループによって通常占有される領域へのこの要素の折り畳みが可能であると、H10〜H12ループの位置の変更が引き起こされるようである。H10〜H12ループの移動は部分的に、結晶と我々の構造の近隣分子との接触において、そのループが関与することによって生じる可能性がある。あるいは、H10〜H12ループの観察された構造は、H1がないことを考慮すると溶液中でも受け入れられ得る。この構造で差異が認められるBtUSP/BtEcR LBDの2次構造要素は、以下のように、ヘリックスH3-残基301から321、ヘリックスH4-残基328から339、ヘリックスH5-残基340から353、鎖s1残基359から361、鎖s2-残基365から367、ヘリックスH6-残基371から376、ヘリックスH7-残基380から396、ヘリックスH8-残基399から411、ヘリックスH9-残基420から443、ヘリックスH10-残基448から466およびヘリックスH12-残基481から491のBtUSP配列に位置する。
【0040】
BtEcRとBtUSPリガンド結合ドメインとの間の2量体の結合は、対応するRAR-RXR複合体の結合と似ている。これらの2種類のヘテロ2量体構造は、339個の合致したCα原子について二乗平均偏差1.37Åで重ね合わせることができる。接触面は、H9、H10に含有されるEcR残基、一方のH8およびH9の間のループおよびH7、H9、H10に含有されるUSP残基および他方のH6およびH7の間のループによって形成される(図5)。該接触面に関与する残基には、一方のBtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388ならびに他方のBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465が含まれる。該接触面は、反対鎖の任意の原子のファンデルワールス表面の1.4Å位内にある任意の原子のファンデルワールス表面で全残基を計算し、その後視覚的に精査することによって予測した。
【0041】
可能性のある鎖間塩橋には、USP E429からEcR K375、USP K391からEcR E336、USP K391からEcR E347、USP K452からEcR E351およびUSP E425からEcR K375の塩橋が含まれる。これらのうち、EcR E347とUSP K391との間の塩橋のみが全種にわたって保存されており(双翅目、ユスリカ(Chironomus tentans)のEcRはBtEcRのE347に対応する位置にAspを有するが)、該接触面に結合し、特定の塩橋を破壊する化合物は特異的拮抗薬の基礎となり得よう。
【0042】
USP S447の側鎖とEcR E355Aの側鎖との間、USP S447の骨格カルボニルとEcR K358の側鎖との間、およびEcR R384とUSP S462の側鎖の間に水素結合が生じる。その他の接触は、天然では疎水的である。単一のリン酸イオンが接触面に含まれ、EcR残基R384の側鎖、EcR残基E336のカルボニル酸素およびUSP残基R383、E387およびR456の側鎖によって配位する。
【0043】
PASS(Brady & Stouten、2000)は、BtEcRのA262、S265、E266、R337、R384、G387、N388およびS391を含む残基によって結合したヘテロ2量体の接触面の端にBtEcR表面上のポケットが存在することを示す。PASSはまた、BtUSPのK337、S338、N341、E342、K416、G464、L465、C467およびH470を含む残基によって結合したヘテロ2量体の接触面の端にBtUSP表面上のポケットが存在することを示す。
【0044】
明らかに、本明細書で提供した情報によって、エクジソン受容体と相互作用する化合物の合理的な設計/選択が可能になろう。
【0045】
したがって、第1の態様では、本発明はBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDまたはその一部を含む結晶性組成物、またはリガンドと一緒に結晶化させたBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDまたはその一部を含む結晶性組成物から成る。
【0046】
第2の態様では、本発明は、エクジソン受容体と相互作用し、該受容体を介する活性を変更する化合物を選択するか、または設計する方法であって、該化合物とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのトポグラフィー領域との間の立体化学的相補性を評価する段階を含み、該ヘテロ2量体の特徴は、
(a)付録Iに示した原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、あるいは
(b)全体の並進および/もしくは回転によって付録Iに示したモノマーの座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団である方法を提供する。
【0047】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、該構造座標は、前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下であり、より好ましくは0.7Å以下である。
【0048】
前述のように、リガンドポナステロンAは、残基F194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412によって形成された全体的に囲い込まれたポケットに存在することが認められた。したがって、第2の態様の一実施形態では、化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、アミノ酸F194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412によって規定されたBtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットである。
【0049】
第2の態様の他の実施形態では、化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、一方のBtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびに他方のBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRおよびBtUSPサブユニット間の接触面である。
【0050】
第2の態様のさらに他の実施形態では、化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcRの表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝である。
【0051】
「立体化学的な相補性」とは、受容体またはそれらのトポグラフィー領域に結合するための正味の自由エネルギーを減少させるために、化合物またはそれらの一部が受容体とエネルギー的に有利な接触を十分な回数行うことを意味する。
【0052】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、該方法には、特異的なアミノ酸残基によって規定された受容体のトポグラフィー領域に位置する残基に合致する部分を有する化合物を選択することが含まれる。
【0053】
「合致する」という用語によって、例えば、受容体による化合物の保持がエネルギー的に好まれる様な方法で、水素結合を介して、または生物学的に活性のある化合物と受容体の脱溶媒和を促進させるエンタルピー減少性ファンデルワールス相互作用によって、同定された部分が表面残基と相互作用することを意味する。
【0054】
好ましくは、該方法には、BtEcR LBDのリガンド結合ポケットのE199、I227、T231、T234、R271、A286、Y296、T304、N390およびC394から成る群から選択された少なくとも1個のアミノ酸残基と水素結合を形成する化合物であって、受容体のリガンド結合ポケットの天然に生じるエクジステロイドリガンドではない化合物を選択することが含まれる。
【0055】
さらにより好ましくは、本発明は、BtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットのP201、I227、T228、I230、M268、M269、R271、M272、R275、I283、F285、A286、M301、L308、M389、L397、P405、L408およびW412から成る群から選択された少なくとも1個のアミノ酸残基の側鎖とさらに疎水性接触を行う化合物であって、受容体のリガンド結合ポケットの天然に生じるエクジステロイドリガンドではない化合物を選択することが含まれる。
【0056】
他の実施形態では、リガンドのないEcR/USPヘテロ2量体の結晶を(Nienaber他、2000)の方法によって化合物のライブラリーに曝露する。最も可能性のあるリガンドは、該結晶に選択的に結合し、差電子密度図によって同定されることができる。
【0057】
第2の態様のさらに他の実施形態では、該方法には、タバココナジラミのエクジソン受容体の拮抗薬である化合物を選択することが含まれる。
【0058】
あるいは、該方法には、タバココナジラミのエクジソン受容体の作用薬である化合物を選択することが含まれる。
【0059】
タバココナジラミのエクジソン受容体の活性の変更は、いくつかの異なる手段によって実施することができることが予想される。
【0060】
該化合物は、天然のステロイドリガンド結合を立体的またはアロステリックに妨害するために、受容体に結合することができる。具体例。
(a)リガンド結合ポケットの大きさを減少させ、それによって受容体活性に重要な1個または複数の特異的残基へのリガンドの接近を妨害するために、該化合物は、受容体のBtEcRリガンド結合ポケットに結合することができる。
(b)シグナル伝達能力のあるリガンド受容体複合体になるためのサブユニット結合を混乱させるために、該化合物はBtEcRとBtUSP結合接触面の間の接触面またはその近隣に結合することができる。
(c)リガンド結合の親和性を変更するために、該化合物はBtEcRリガンド結合ポケットから離れた部位に結合するが、受容体構造を妨害することができる。
【0061】
該化合物は、いくつかの方法でエクジソン受容体のBtEcRおよびBtUSPサブユニットの結合を妨害することができる。例えば、該化合物は、タバココナジラミのエクジソン受容体に結合接触面の1個または複数の特異的残基またはその近隣で結合し、立体的な重なりおよび/または静電気反発によって結合を妨害することができる。あるいは、該化合物は、サブユニットの結合をアロステリックに妨害するために結合することができる。さらに、該化合物はサブユニットの結合を変更し、それによって天然のリガンドに対するBtEcRサブユニットの親和性を変更するためにBtUSPサブユニットに結合することができる。
【0062】
好ましい形態では、該化合物を、一方のBtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、V379、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびに他方のBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、I408、V409、E414、E425、R428、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、A459、R461、S462およびL465の結合を阻害することによってBtEcRおよびBtUSPサブユニットの結合を妨害する様な方法で、タバココナジラミエクジソン受容体と相互作用するように選択、設計する。
【0063】
他の好ましい形態では、該化合物は受容体のシグナル伝達を妨害するために受容体に結合することができる。例えば、該化合物は、公知の化合物(例えば、天然のリガンド)から選択または変更されるか、またはデータベースから同定されることができる。このような変種は、天然のリガンドの受容体への結合と競合することが予測される。
【0064】
他の好ましい実施形態では、該化合物を、天然のリガンドをベースとして選択または設計され、該化合物はF194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412から成る群から選択された少なくとも1個のアミノ酸と相互作用するように設計または選択する。好ましい実施形態では、該化合物を、該化合物とタバココナジラミのエクジソン受容体との間の相互作用が天然のリガンドとタバココナジラミのエクジソン受容体との相互作用よりも好ましいように選択または設計する。このような化合物は、受容体活性の作用薬または拮抗薬であってよい。
【0065】
第2の態様の好ましい実施形態では、該方法にはさらに、BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのトポグラフィー領域に立体的相補性を有する化合物を得る段階、および該化合物の殺虫活性を試験する段階が含まれる。
【0066】
第3の態様では、本発明は、演算処理装置、入力装置および出力装置を含むプログラム化されたコンピュータを使用して、エクジソン受容体と相互作用し、それによって受容体による活性を変更することができる可能性のある化合物を同定するためのコンピュータ支援方法であって、
(a)付録Iに示した原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492およびポナステロンA、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、あるいは前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団、または全体を並進および/もしくは回転によって付録Iに示した座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団を含むデータを該入力装置によってプログラム化されたコンピュータに入力する段階、
(b)コンピュータによる方法を使用して、付録Iに示した原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415および/もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、あるいは前記アミノ酸の1個または複数の亜集団、または全体の並進および/または回転することによって付録Iに示した座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個または複数の亜集団に立体化学的相補性を有する構造の一連の原子座標を作製する段階、
(c)該演算処理装置を使用して、基準データ群を化学構造のコンピュータデータベースと比較する段階、
(d)コンピュータによる方法を使用して、前記データベースから前記基準データ群の一部に類似した化学構造を選択する段階、ならびに
(e)該出力装置に、基準データ群の一部と相補的または類似した選択化学構造を出力する段階を含むコンピュータ支援方法を提供する。
【0067】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、構造座標は、前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下であり、より好ましくは0.7Å以下である。
【0068】
好ましくは、該方法を使用して殺虫活性剤であるか、またはエクジソンスイッチの安全なエフェクターである可能性のある化合物を同定する。
【0069】
第3の態様のさらに好ましい実施形態では、該方法はさらに段階(d)および(e)で選択された化学構造を有する化合物を得る段階、および該化合物の殺虫活性を試験する段階を含む。
【0070】
好ましい実施形態では、アミノ酸の亜集団は、BtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットを規定するアミノ酸の亜集団、すなわちF194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412である。
【0071】
他の実施形態では、アミノ酸の亜集団は、一方のBtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびに他方のBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRおよびBtUSPサブユニット間の接触面を規定するアミノ酸である。
【0072】
さらに他の実施形態では、アミノ酸の亜集団は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcRの表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝を規定するアミノ酸である。
【0073】
本発明はまた、タバココナジラミエクジソン受容体(BtEcR/BtUSP)またはRXRなどの他の機能的パートナー蛋白質と組み合わさったBtEcR(配列番号1)を含むヘテロ2量体の活性を変更する能力を有する推定化合物のスクリーニング方法であって、第2または第3の態様によって推定化合物を同定する段階および該化合物の活性を試験する段階を含む方法を提供する。一実施形態では、試験はin vitroで実施する。好ましくは、in vitro試験はハイスループットアッセイである。他の実施形態では、該試験は、細胞をベースとした、または生物全体をベースとしたスクリーニングを使用してin vivoで実施する。
【0074】
第4の態様では、本発明は、分子または分子複合体の3次元表示を作成するためのコンピュータであって、
(a)機械読み取り可能データでコードされたデータ記憶材料を含む機械読み取り可能データ記憶媒体であって、前記機械読み取り可能データは付録Iで示したBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492およびポナステロンA、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子との二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、あるいは前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団、または並進および/もしくは回転によって付録Iに示した座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団を含む記憶媒体、
(b)該機械読み取り可能データを処理する指令を記憶するためのワーキングメモリー、
(c)該機械読み取り可能データを3次元表示に処理するための、前記ワーキングメモリーおよび前記機械読み取り可能データ記憶媒体に接続された中央演算処理装置、および
(d)3次元表示を受信するための、該中央演算処理装置に接続された出力ハードウェアを含むコンピュータを提供する。
【0075】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、構造座標は、前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下であり、より好ましくは0.7Å以下である。
【0076】
好ましい実施形態では、アミノ酸の亜集団は、BtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットを規定するアミノ酸、すなわちF194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412である。
【0077】
他の実施形態では、アミノ酸の亜集団は、一方のBtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびに他方のBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRおよびBtUSPサブユニット間の接触面を規定するアミノ酸である。
【0078】
さらに他の実施形態では、アミノ酸の亜集団は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcRの表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝を規定するアミノ酸である。
【0079】
第5の態様では、本発明は、エクジソン受容体を介する活性を変更することができる化合物であって、本発明による方法によって得られる化合物を提供する。
【0080】
第6の態様では、本発明は、BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのトポグラフィー領域に立体化学的相補性を有し、該受容体を介する活性を変更する化合物であって、該ヘテロ2量体の特徴は、
(a)付録Iに示したような原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415またはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜415において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、あるいは
(b)全体を並進および/もしくは回転によって付録Iに示したモノマーの座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団であるが、ただし、該化合物はタバココナジラミエクジソン受容体の分子の天然に生じるリガンドではない化合物を提供する。
【0081】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、構造座標は、前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下であり、より好ましくは0.7Å以下である。
【0082】
第6の態様の一実施形態では、化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、アミノ酸F194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412によって規定されたBtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットである。
【0083】
第6の態様の他の実施形態では、化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、一方のBtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびに他方のBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRおよびBtUSPサブユニット間の接触面である。
【0084】
第6の態様のさらに他の実施形態では、化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcRの表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝である。
【0085】
第7の態様では、本発明は本発明の第5または第6の態様による化合物および薬剤として許容される担体または希釈剤を含む昆虫を制御するための殺虫剤組成物を提供する。
【0086】
さらに他の態様では、本発明はエクジソン受容体LBDと相互作用する化学的実体の能力を評価する方法であって、
(a)構造座標を使用してBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDの少なくとも1個の領域のコンピュータモデルを作成する段階であって、(i)該モデルのBtEcR成分とBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415の対応する構造座標、または(ii)該モデルのBtUSP成分と付録Iで記載したBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の対応する構造座標の骨格原子の間の二乗平均偏差が1.5Å以下である段階、
(b)前記化学的実体とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのモノマーの少なくとも1個の領域の前記コンピュータモデルとの間の適合操作を実行するコンピュータによる手段を使用する段階、および
(c)前記化学的実体とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDの少なくとも1個の領域との間の関連を定量するために前記適合操作の結果を分析する段階を含む方法を提供する。
【0087】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、構造座標は、前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下であり、より好ましくは0.7Å以下である。
【0088】
好ましい実施形態では、該領域は、アミノ酸F194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412によって規定されるBtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットである。
【0089】
他の実施形態では、該領域は、一方のBtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびに他方のBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRおよびBtUSPサブユニット間の接触面である。
【0090】
さらに他の実施形態では、該領域は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcRの表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝である。
【0091】
当業者であれば容易に理解されようが、本発明の方法はエクジソン受容体と相互作用する化合物を設計し、選択する合理的な方法を提供する。通例、これらの化合物は活性を増加させるためにさらなる開発が必要とされる。このようなさらなる開発は、当業界では当たり前で、本明細書で提供した構造情報が一助となるだろう。特定の実施形態において、本発明の方法にはこのようなさらなる開発段階を含めるものとする。
【0092】
他の態様では、本発明は、化合物とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDとの間の相互作用を評価する方法であって、BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDまたはその一部またはこれらの変種を含む結晶性組成物を該化合物に曝露し、該結晶に対する該化合物の結合の程度を測定することを含む方法にある。
【0093】
したがって、他の態様では、本発明は、エクジソン受容体シグナル伝達を変更する化合物を設計または選択する方法であって、本発明の前記態様のいずれか1つによる方法によって得られた化合物の生物学的スクリーニングを行うこと、およびエクジソン受容体シグナル伝達を変更する化合物の能力を評価することを含む方法にある。これらのスクリーニングには、クローニングされたEcR配列を使用する。特に、BtEcR核酸配列(配列番号1)を使用することが可能である。
【0094】
本発明の他の態様は、リガンド選択性を変化させるために、エクジソン受容体リガンド結合ドメインの部位特異的変異誘発を導いて、リガンド結合ドメインおよび2量体化接触面の残基を変更する方法を提供する。
【0095】
その他の核内受容体LBDでは、3次元構造情報を使用してリガンドとの特異的接触に関与する残基を同定した。この情報を使用して、リガンド特異性に対象とする変化を誘導する残基の部位特異的変異誘発を導いた。例えば、これに基づいて、1個のE353Q置換をヒトエストロゲン受容体αで行うと、エストラジオールのトランス活性化能力の9倍の減少と同時にアンドロゲンの能力の10〜140倍の増加がもたらされることが発見された(Ekena他、1998)。
【0096】
エクジステロイドおよびジベンゾイルヒドラジンと結合したエクジソン受容体LBDの構造を予測するために相同性モデリングが今までは使用されてきた。得られたモデルを使用して、部位特異的変異誘発またはその結果の解釈の参考としてきた(Kumar他、2002、Grebe & Spindler-Barth、2002)。しかし、本発明で説明したポナステロンAに結合したタバココナジラミエクジソン受容体LBDのX線構造によって、今までのモデルがLBD蛋白質構造およびリガンドとの接触の重要な面を正確には反映していないことが明らかになった。例えば、1個の点突然変異、A110Pは、トウヒシントメハマキ(Choristoneura fumiferana)EcRの非ステロイドリガンドRG-102240およびRG-102317に対する応答に影響を与えずにエクジステロイドに対する応答性を減少させることが観察され(Kumar他、2002)、仮定された蛋白質-リガンド相互作用の基礎となる分子的解釈は妥当ではなかった。例えば、かれらのモデルは、この鍵となる残基近くに結合エクジステロイドリガンドのアルキル鎖を配置しているが、我々のX線構造では、BtEcRの対応する残基(A286)近くに位置するのはステロイド核のA/B環であることが示された。タバココナジラミの結晶構造では、このA286がリガンド結合ポケットの一番深いところ(すなわち、s1-s2 βシートループ)にあることを示している。したがって、このAla残基をより大きな残基と置換してもジベンゾイルヒドラジンの結合に影響がないことを解明するための(Kumar他、2002)によって進められた一連の論証では、実際に、ジベンゾイルヒドラジンリガンドは、これらの研究者が提案したポケットの底部を占有するというよりも、リガンド結合ポケットの穴のより中央またはそのH12末端近くに結合することが示唆された。
【0097】
(タバココナジラミの)エクジソン受容体のX線構造およびそれから得られた(その他の種のエクジソン受容体の)相同モデルに基づいて関連作用を理解することよって、今後、リガンド選択性に所望する変更を加えるために部位特異的変異誘発が容易に行われるようになるだろう。X線構造で結合部位においてステロイドと接触する実際の残基および2量体化接触面に関与する残基については、以下の小項目「構造の説明」の結果の部分で詳しく説明する。
【0098】
さらに他の態様では、本発明は、
(i)前記分子または分子複合体を結晶化する段階、
(ii)前記結晶化分子または分子複合体からX線回折データ群を収集する段階、
(iii)付録Iに記載された構造座標の少なくとも一部をX線回折データに適用して構造が未知の分子または分子複合体の少なくとも一部の3次元電子密度図を作成する段階を含む構造が分からない分子または分子複合体についての構造的情報を得るための分子置換を利用する方法を提供する。
【0099】
「分子置換」という用語は、未知の結晶で認められた回折パターンを最も良く説明するために、未知の結晶の単位セル内で、構造座標が未知の分子(例えば、BtEcR/BtUSP LBDヘテロ2量体。付録Iの座標)の向きおよび位置を決めることによって、構造座標が未知のエクジソン受容体結晶の初期モデルの作成に関与する方法を意味する。次に、位相はこのモデルから計算し、観察された振幅と組み合わせて、座標が未知の構造の近似フーリエ合成を行うことができる。次に、これをいくつかの精密化形態のいずれかにかけることによって、未知の結晶の最終的な正確な構造を得ることができる(Lattman、1985、Rossmann、1990)。
【0100】
本発明者等は今では、リガンドの結合がどのようにシグナル伝達を導くのかをより正確に理解できるエクジソン受容体のリガンド結合ドメインに関する3次元構造の情報を得た。このような情報によって、特定の適用のためにリガンドを開発するための合理的な基本理論、今までは使用可能な配列データから新たには予測できなかったものが提供される。
【0101】
エクジソン受容体の作用薬および拮抗薬の結合の基礎となる正確な機構は、完全には明らかになっていない。しかし、受容体部位に対する良いリガンド、例えば、10-8Mの桁の解離定数を有するものの結合は、天然に生じるエクジソン受容体リガンドに対する立体的な相補性を高めることによって生じるものと理解される。
【0102】
本発明によるこのような立体相補性は、表面残基、付録Iに記載した座標によって列挙されたようなEcRのリガンド結合ポケットに合致する分子の特徴である。「合致する」という用語によって、例えば、水素結合を介して、または部位内の生物学的に活性のある化合物の脱溶媒和を促進させる非共有的ファンデルワールス相互作用およびクーロン相互作用によって、リガンド結合ポケット内の生物学的に活性のある化合物の保持がエネルギー的に好まれるような方法で、同定された部分が表面残基と相互作用することを意味する。
【0103】
付録Iに記載した原子座標に位置するアミノ酸を特徴とするリガンド結合部位の形状および静電的または化学的特性に相補的な物質は、受容体に結合することができ、該結合が十分強いと、天然に生じるリガンドの部位への結合を実質的に阻止する。受容体に結合した物質はまた、自発的に、いかなる天然のリガンドが無くても、受容体の作用薬または拮抗薬構造のいずれかを促進し、それによって受容体によって発揮される生物学的結果を引き起こすことができる。
【0104】
リガンドと受容体部位の相補性は、天然のリガンドの結合を変更するために該ポケットに並んだ残基全部に及ぶ必要はないことは理解されよう。
【0105】
一般的に、立体化学的相補性を有する分子の設計は、分子と標的受容体との間の「適合性」を化学的、かつ/または幾何学的に最適化する技術によって達成することができる。この種の公知の技術は、それぞれの内容を本明細書に参考として援用した(Goodford、1984、Beddell、1984、Ho1、1986、Sheridan & Venkataraghavan、1987、Walters他、1998、Verlinde & Hol、1994、Gane & Dean、2000、Good、2001、Langer & Hoffmann、2001)に概説されている。(Blundell他、1987)(受容体構造に関する情報に基づいた薬剤開発)および(Loughney他、1999)(成長ホルモン受容体での適用を引き出すデータベース)もまた参照のこと。
【0106】
本発明によれば、エクジソン受容体の立体化学特性に相補的な分子を設計するのに好まれる取り組みは2種類ある。第1の取り組みは、特定の分子の部位への適合度を評価するための一般的であるが排他的ではない幾何学的基準を使用して、3次元構造のデータベースから受容体部位へ直接コンピュータで(in silico)分子を結合させることである。この取り組みにおいて、内部自由度の数(および分子構造空間における対応する局所解)は、2種類の剛体(1体目(活性部位)は2体目(リガンドとしての相補的分子)の結合部位を形成する「ポケット」または「溝」を含有する)の幾何学的(固い球体の)相互作用のみを考慮することによって減少する。
【0107】
この取り組みは、内容を本明細書に参考として援用した(Kuntz他、1982)および(Ewing他、2001)によって例示され、リガンドを設計するためのそのアルゴリズムは、市販のソフトウェアパッケージ、カリフォルニア大学運営理事会が販売するDOCK version 4.0で実行され、販売元によって「Dockプログラムセットの概要」と表題をつけられた文書で詳細に説明されている。Kuntzアルゴリズムによると、エクジソン受容体部位に代表される穴の形状は、様々な半径の重複した一連の球体として定義される。次に、結晶学的データの1種または複数の現存しているデータベース、例えば、ケンブリッジ大学で維持されているケンブリッジ構造データベースシステム(University Chemical Laboratory、Lensfield Road、Cambridge CB21EW、U.K.)、Research Collaboratory for structural Bioinformatics(Rutgers University、N.J.、U.S.A.)、LeadQuest(Tripos Associates、Inc.、St.Louis、MO)、Available Chemicals Directory(Molecular Design Ltd.、San Leandro、CA)およびNCIデータベース(National Cancer Institute、 U.S.A)によって維持されている蛋白質データバンクで、このように定義された形状に類似した分子を検索する。
【0108】
このようにして同定された分子は次に、幾何学的変数に基づいて、水素結合、イオン相互作用およびファンデルワールス相互作用などの化学的相補性に関連した基準を満たすために変更することができる。様々な評価関数を使用して、データベースから最良の分子を分類して、選択することができる。例えば、(Bohm & Stahl、1999)を参照のこと。Tripos Associates(St.Louis、MO)から販売されているソフトウェアパッケージFlexXは、この直接的結合方法で使用することができるもう1つのプログラムである(Rarey他、1996)。
【0109】
第2の好ましい取り組みは、それぞれの化学基(「プローブ」)と部位内および部位周辺の試料位置の活性部位との相互作用を評価し、選択したエネルギーレベルでの3次元輪郭面を作成することができる一連のエネルギー値をもたらすことが必要である。リガンドを設計するための化学的プローブ法は、例えば、内容を本明細書に参考として援用した(Goodford、1984)に記載されており、いくつかの市販のソフトウェアパッケージ、例えばGRID(Molecular Discovery Ltd.、West Way House、Elms Parade、Oxford OX2 9LL、U.K.の製品)で実行される。この方法によると、様々な化学的プローブ、例えば、水、メチル基、アミン窒素、カルボキシル酸素、および水酸基を有する活性部位を探索することによって、部位相補的な分子に必須の化学的特性を最初に同定する。したがって、活性部位と各プローブとの間の相互作用に好まれる部位が決定され、このような部位で得られた3次元パターンから推定相補的分子を作成することができる。これは、所望するファルマコフォアパターンを組み入れた分子を同定するための3次元データベースを検索できるプログラム、または入力情報として好ましい部位およびプローブを使用して新規設計を実施するプログラムのいずれかによって実施することができる。
【0110】
所望するファルマコフォアを有する分子を同定するための3次元データベースの検索に適したプログラムには、MACCS-3DおよびISIS/3D(Molecular Design Ltd.、San Leandro、CA)およびSybyl/3DB Unity(Tripos Associates、Inc.、St.Louis、MO)が含まれる。
【0111】
ファルマコフォア選択および設計に適したプログラムには、DISCO(Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)およびCatalyst(Accelrys、San Diego、CA)が含まれる。
【0112】
化学構造のデータベースは、Cambridge Crystallographic Data Centre (Cambridge、U.K.)、Molecular Design、Ltd.、(San Leandro、CA)、Tripos Associates、 Inc.(St.Louis、MO)およびChemical Abstracts Service(Columbus、OH)を含めたいくつかの情報源から入手できる。
【0113】
新規設計プログラムには、Ludi(Biosym Technologies Inc.、San Diego、CA)、LeapFrog(Tripos Associates、Inc.)、Aladdin(Daylight Chemical Information Systems、Irvine、CA)およびLigBuilder(Peking University、China)が含まれる。
【0114】
当業者であれば、模倣物の設計には、本発明の方法を使用して設計または同定した化学構造を構造的にわずかに変更または調節することが必要であることを認識するであろう。
【0115】
本発明は、ハードウェアまたはソフトウェア、あるいは両者を組み合わせて実行することができる。しかし、好ましくは、本発明は、演算処理装置、データ記憶系(揮発性および非揮発性メモリーおよび/または記憶素子)、少なくとも1個の入力装置および少なくとも1個の出力装置をそれぞれ含むプログラム可能なコンピュータで処理するコンピュータプログラムで実行される。プログラムコードを入力データに適用し、前述の関数を実行し、出力情報を出力する。該出力情報は、公知の様式で1個または複数の出力装置に出力される。該コンピュータは、例えば、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータまたは汎用設計の作業端末であってよい。
【0116】
それぞれのプログラムは、コンピュータシステムで伝達するハイレベルな手続き型またはオブジェクト指向型プログラム言語で実行することが好ましい。しかし、該プログラムは、所望するならば、アセンブリ言語または機械語で実行することができる。いずれにせよ、該言語はコンパイラ型またはインタープリタ言語であることができる。
【0117】
コンピュータを構成または操作するために、記憶媒体または装置が本明細書で説明した手順を実施するコンピュータによって読み取られるとき、このようなコンピュータプログラムはそれぞれ、一般的または特定な目的にプログラム可能なコンピュータによって読み取ることができる記憶媒体または装置(例えば、ROMまたは磁気ディスケット)に記憶されることが好ましい。本発明の系はまた、コンピュータプログラムで構成された、コンピュータで読み取ることができる記憶媒体として実行できると考えられ、このように構成された記憶媒体は、コンピュータが特定の、および予め定義された方法で、本明細書で説明した機能を実施するように制御させる。
【0118】
エクジソン受容体作用薬および拮抗薬の活性を測定する生物学的測定法は、当業界でよく知られている。エクジソン受容体の従来のスクリーニングでは、候補化合物の全昆虫の幼虫の脱皮または蛹化(Becker、1941、Cymborowski、1989)、成虫原基の外反(Fristrom、J.W.& Yund、1976)またはショウジョウバエBII細胞系の形態学的形質転換(Clement他、1993)を誘導する能力を調べる。ごく最近の測定法では、組換えエクジソン受容体および適切な応答因子に結合した受容体遺伝子で同時形質移入した哺乳類細胞またはその他の真核細胞を使用する。どちらの種類のスクリーニングもまた、非作用薬リガンド(拮抗薬)を検出するために再編成することができ、測定法の標準成分として与えられた作用薬による受容体活性化を該リガンドが阻害する能力によって認識することができる(Yang他、1986、Oberdorster他、2001)(Oberdorster他、2001)。さらに、完全な昆虫細胞、細胞抽出物または精製した組換えエクジソン受容体を3H-ポナステロンAなどの放射活性エクジソン受容体リガンドとインキュベートするin vitro結合測定法がある。これらの測定法は、作用薬および拮抗薬両方のリガンドはエクジソン受容体に対する結合を放射活性トレーサーと競合するので、両者を区別して検出する(Yung他、1978、Cherbas他、1988)。さらに、潜在的な作用薬および拮抗薬は、可溶性の組換えエクジソン受容体へのユーロピウム標識エクジソン受容体リガンドの結合を阻害する能力をマイクロタイターベースの様式でスクリーニングすることができる。ユーロピウムは、ランタニドフルオロフォアで、これの存在は、時間分割蛍光高度分析を使用して測定することができる。この測定法の感度は、放射性同位元素によって実現したものと一致し、測定は迅速で、高試料スループットを可能にするマイクロプレート形式で実施され、該方法は受容体作用薬/拮抗薬のスクリーニングの開発における選択方法として広く受け入れられるようになりつつある(Appell他、1998、Inglese他、1998)。候補阻害剤の結合親和性および阻害能力はまた、バイオセンサー技術を使用して測定することができる。
【0119】
本発明の明細書で提供されたタバココナジラミのエクジソン受容体のリガンド結合ポケット3次元構造は、相同性モデリング法によって、その他の生物のエクジソン受容体のリガンド結合ポケット3次元構造を予測することを可能にする。例えば、プログラムModeler(Sali & Blundell、1993)は、標的(すなわち、その他の種のEcR LBD)と鋳型(この場合BtEcR LBDの3次元構造であろう)のアラインメントから得られた空間的制約を満たすことによって相同性モデルを構築する。したがって、異なる種のリガンド結合ポケットの違いをモデル化することができる。
【0120】
他の態様では、本発明はBtEcRの少なくともリガンド結合ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を提供し、該ヌクレオチド配列は、
(i)配列番号1のヌクレオチド535からヌクレオチオ1248までの配列に少なくとも90%の同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、
(ii)厳密性の高い条件で配列番号1のヌクレオチド535からヌクレオチオ1248までの配列にハイブリダイズする配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、および
(iii)配列番号2のアミノ酸P179からアミノ酸S416までの配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択される。
【0121】
好ましい実施形態では、該核酸分子はさらに、
(i)配列番号1のヌクレオチド355からヌクレオチオ1248までの配列に少なくとも90%の同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、
(ii)厳密性の高い条件で配列番号1のヌクレオチド355からヌクレオチオ1248までの配列にハイブリダイズする配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、および
(iii)配列番号2のアミノ酸R119からアミノ酸S416までの配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択されたヌクレオチド配列を含む。
【0122】
さらに好ましい実施形態では、該核酸分子は、
(i)配列番号1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、
(ii)厳密性の高い条件で配列番号1のヌクレオチドにハイブリダイズする配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、および
(iii)配列番号2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択されたヌクレオチド配列を含む。
【0123】
さらに好ましい実施形態では、同一性の程度は少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも99%である。
【0124】
さらに好ましい実施形態では、該核酸分子は、配列番号1で記載した配列を含むか、または配列番号2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0125】
2種類のヌクレオチド配列がこれらのパーセント制限内にあるかどうかの測定では、当業者は配列の並列比較か、または複数のアラインメントを実施することが必要であることに気づくであろう。このような比較またはアライメントでは、アラインメントを実施するために使用したアルゴリズムに応じて、同一でない残基が配置に違いが生じる可能性がある。本発明の場合、当業者に公知の標準的アルゴリズムを使用して測定した前記配列の間の同一な残基の数を意味するために、2種以上のヌクレオチド配列間のパーセント同一性を参考にするものとする。例えば、ヌクレオチド配列を整列させて、BESTFITプログラムまたはその他の適切なGenetics Computer Group、Inc.University Research Park、Madison、Wisconsin、United State of America(Devereux他、1984)のプログラムを使用して同一性を計算することができる。
【0126】
厳密性の高い条件下でのハイブリダイゼーションの概念は、当業界で良く理解されている概念である。本明細書で使用した厳密さの程度を定義するために、「高い厳密性」は、0.1×SSC-0.2×SSC緩衝液、0.1%(w/v)SDSにおいて、少なくとも55℃の温度で実施するハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を含む。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件は、当業者にはよく理解されている。さらに明瞭にするためだけに、核酸分子間のハイブリダイゼーションに影響を与える変数については、本明細書に参考として援用した(Ausubel、1992)に触れられているのが見いだされる。
【0127】
本明細書を通じて、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変化した語は、記載した要素、整数もしくは段階、または要素群、整数群もしくは段階群を包含するが、その他の任意の要素、整数もしくは段階、または要素群、整数群もしくは段階群を排除しないことを意味するもの理解される。
【0128】
本明細書に含めた書類、法律文書、材料、装置、物品の考察などは、ただ単に本発明の状況を説明するためだけものである。これらの事柄のいずれかまたはすべては、この出願のそれぞれの特許請求の優先日より前に、オーストラリアにおいて存在したように、基本となる従来技術の一部を形成しておらず、または本発明に関連のある分野の一般知識ではないことを承認する。
【0129】
本発明の特性をより明瞭に理解するために、ここでそれらの好ましい形態を以下の非制限的な実施例を参照にして説明する。
【0130】
実験
方法
タバココナジラミエクジソン受容体のEcRおよびUSPサブユニットのクローニングおよび特徴付け
実験動物およびRNA単離
動物は、CSIRO Division of Entomology、Canberraで飼育維持された。シドニーの我々の研究所でハイビスカスの葉の下面から収集された第4齢の若虫に、グアニジンイソチオシアネート-CsTFA法(Okayama他、1987)を使用して迅速に全RNA単離を行った。その後、mRNAはPolyATract mRNA単離キット(Promega)を使用して精製し、UV光下において水性臭化エチジウムで定量した。
【0131】
PCRによるプローブ調製物のスクリーニング
動物は前述のように収集し、タバココナジラミのゲノムDNAは(Sambrook他、1989)で記載された方法に従って単離した。ゲノムDNAから相同なタバココナジラミEcRスクリーニングプローブを増幅するために、2種類の変性プライマーを使用して、(Hannan & Hill、1997)で記載されたようにDNA結合ドメイン(DBD)のほとんどをコードする配列を包含する165bpの産物を得た。正確な大きさの産物を得て、Bluescript SK+(Stratagene)にクローニングして、両方向にサイクルシークエンスして(Australian Genome Research Facilityのゲル分離装置を備えたABI Prism、Perkin-Elmer)、Australian National Genomic Information Serviceを介してBlastAによるデータ分析を行った。得られた情報によって、産物はL.migratoria EcR(ジーンバンク受け入れ番号AF049136)と同一性が最も高いステロイド核内受容体のDBDをコードすることが示された。変性プライマーを使用した同様の試みでは(Tzertzinis他、1994)、タバココナジラミのゲノムDNAからUSPスクリーニングプローブをクローニングすることには成功しなかった。しかし、鋳型としてライブラリーcDNAを使用して正確な大きさ(147bp)の生成物が生じ、TOPO TA(Invitrogen)でクローニングした生成物をBlastA分析することによって、この断片とUSP/RXRファミリーとの同一性は最も高いことが明らかになった。
【0132】
cDNAライブラリー構築およびスクリーニング
タバココナジラミcDNAライブラリーは、高品質mRNA 5μgからオリゴdTでプライム化したcDNA(Hannan & Hill、1997)を構築して、(Stratagene)キットを使用してLambda ZapIIベクターにクローニングした。1.9×106プラーク形成単位(pfu)から成るこの1次ライブラリーは、1.5×109pfu/mlの力価になるように1回増幅した。EcRのスクリーニングには、E.coli XL1 Blue(Stratagene)菌叢に2.5×106pfuを播種することが必要で、USPをスクリーニングするには1.5×106pfuが必要であった。プラークは、Hybond N(Amersham)膜に採取し、変性して、製造者の指示に従って固定した。プローブは、標識して、記載通りハイブリダイズした(Hannan & Hill、1997)。ラムダプラークを切除法(Stratagene)によってpBK-CMVファージミドベクターに変換し、ORFは、マルチプライマーを使用して、両方向にサイクルシークエンスを行い、GCG Wisconsinパッケージを使用して編集した。
【0133】
EcR DBDプローブでスクリーニングしたライブラリーは4個のpBK-CMVクローンを同定し、そのうちの3個(pBK-CMV4、6および8)はLBDの1078bp(メチオニンは+1)の位置で切断した。4個目のクローン(pBK-CMV7)は、ヌクレオチドレベルでは最初の3個と同一であったが、完全なLBD(173bp追加)および3'UTRにポリAテールを有していた。全体で、pBK-CMV7は416aaの蛋白質をコードする1251bpのORFを有する2291bpのcDNA挿入部を含有していた。ORF/予測ペプチドのBlastNおよびBlastP分析によって、エクジソン受容体類縁体に対する類似性が明らかになった。具体的に、最も同一性が高かったのは、トノサマバッタ(Locusta migratoria)のEcRで、DNAレベルでは73%の同一性があり、ペプチドレベルでは79%の同一性があった。コードされたペプチド(BtEcR)をその他の節足動物のものとアラインメントすると(データは示さず)、核内受容体ドメインの保存性が明らかである。具体的に、BtEcRは、DBDおよびLBDそれぞれの領域に最高の保存性(アミノ酸配列同一性88%および48%)を備えた5個の特徴的なドメイン構造(A/B、C、D、E、F)を示す。さらに、ホルモン受容体因子(HRE)結合を媒介すると考えられた(Zilliacus他、1995)PおよびDボックスに保存性が見いだされた。AF-2リガンド依存性活性化領域(Durand他、1994)の保存性もまた見いだされ、Eドメインの最後のヘリックスに位置するGlu410(BtEcRからの数字である)は不変であった。このGluと共にLys261は、相同性モデリングに基づいて、塩橋形成に関与することが示唆された(Wurtz他、2000)。タバココナジラミ結晶構造は、この近隣に塩橋があることを示しているが、実際にはLys261およびAsp413が関与している(これもまた保存性が高い)。
【0134】
該ライブラリーはまた、USP cDNAについてUSP DBDプローブでスクリーニングした。このスクリーニングで、3個の陽性クローンが同定され、予備データベース分析(BlastNおよびBlastP)の後で、1個のクローン、pBK-CMV21(a)はUSP/RXR受容体ファミリー構成要素に高い配列同一性があることが明らかになった(WO01/02436)。残りの2個のクローンのうち、1個は提供された(lodged)配列には有意な同一性を示さず、もう1つはショウジョウバエのThr3遺伝子に対応した。Thr3は、オーファン核内受容体である。pBK-CMV21(a)は、496aa蛋白質をコードする1491bp ORFを有し、逆方向にクローニングされた4.2kb cDNA insertを含有する。BlastNおよびBlastP分析によって、ORFおよびコードされた蛋白質がトノサマバッタRXRと最も高い類似性を有することが明らかになり、2種の同一性はDNAレベルで62%、蛋白質レベルで72%であった。興味深いことに、USPスクリーニングプローブに対応する領域は、クローンpBK-CMV21(a)とは確実には合致せず、2種の同一性はDNAレベルで72%にすぎなかった(データは示さず)。関連する種のUSP/RXRと予測ペプチド(BtUSP)のアミノ酸アラインメントによって、標準ドメイン構造(A/B、C、D、E/F)およびDNA結合領域における最も強い配列保存性が明らかになった。この領域では、BtUSPが完全なP-ボックスおよび不完全なD-ボックスを保持しており、該領域はDNA配列特異性に関与し(Danielsen他、1989、Umesono & Evans、1989)、完全なT-ボックスはまた、DNA結合を対象とすると考えられる(Chung他、1998)ことに注意されたい。さらに、ヘテロ2量体形成およびHREの選択を対象とする(Perlmann他、1996)と考えられるLBDの9番目の7個の反復はよく保存されている。共活性化因子の結合およびトランス活性化に関与する領域(Le Douarin他、1995)である推定AF-2部位もまた存在する。EcRのように、最も高い配列保存性は、Cドメインに見いだされるが、EcRとは対照的に、E/Fドメインの保存性は低かった。
【0135】
In-vitro翻訳およびゲル遅延度測定法
遺伝子の完全性は、結合網状赤血球溶解物の転写および翻訳(TNT、Promega)によって確認した。EcRでは、転写/翻訳は、クローンpBK-CMV 7、1.0μgによって、ベクターのT3プロモーターおよび35Sメチオニン取り込みを使用して実施した。しかし、USPでは、ORFを包含する1.7kbのSspI断片をpBluescript SK(Stratagene)にクローニングして、次に、このベクターのT3プロモーターから転写した。このBtUSPの再クローニングは、pBK-CMV 21(a)挿入物から非常に長い(1.3kb)5'UTRを除去するために実施した。これらの反応の後、該混合物2μlを製造者(Promega)の指示に従ってSDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、生成物は、Molecular Dynamics Phosphorimaging systemによって検出した。予測通り、BtEcR組換えプラスミドは50kDaの蛋白質を産生し(予測された大きさ、47.5kDa)、BtUSPプラスミドは62kDaの蛋白質を産生した(予測された大きさ、55.6kDa)。
【0136】
DNA結合機能は、電気泳動移動度シフト測定法(EMSA)によって評価した。これらの実験では、EcRおよびUSP蛋白質は、前述の通りであるが非標識メチオニンを使用して翻訳した。EcREプローブ(hsp27応答因子)は、アニーリングしたオリゴ(5'AGCTTCAAGGGTTCAATGCACTTGTCCATCG3'および5'AGCTCGATGGACAAGTGCATTGAACCCTTGA3')5pmolをクレノウ(GIGAPRIME標識キット、Geneworks)でα-32P標識することによって調製した。次に、この混合物をフェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させ、TE 100μlに再懸濁した。結合および電気泳動は、(Molloy、2000)に記載されたように実施した。反応混合物20μlでは、各翻訳抽出物2.5μlは緩衝液A(20mM HEPES pH7.9、KCl 100mM、ジチオスレイトール(DTT)2mM、EDTA 1mM、20%(v/v)グリセロール)8.0μl、2%(v/v)NP-40、2μl、BSA(10mg/ml)1μl、2mg/ml ポリ(dI-dC).ポリ(dI-dC)0.5μl、1本鎖DNA 6μgプラスまたはマイナス100mM MgCl21μlと共にインキュベートした。室温で20分後、標識プローブ0.05pmoleを添加し、該混合物を再度20分間インキュベートした。1試料にはまた、過剰な(1.25pmole)非標識EcRE DNAを添加した。該混合物10μlは、0.25×TBE、5%ポリアクリルアミドゲルで、4℃で、80Vで電気泳動することによって分析した。固定乾燥後、放射活性種はMolecular Dynamics Phosphorimaging systemによって視覚化した。一旦DNA結合条件を確立したら、反応を(MgCl2 5mM存在下で)+/-ポナステロンAにおいて繰り返した。今までのように、プローブは20分後に添加し、電気泳動は40分後に行った。一例では、プローブとポナステロンAの添加順序を逆に、すなわち、最初からプローブを含め、ポナステロンAを20分後に添加した。
【0137】
結果から、BtEcRおよびBtUSPはホモ2量体としてではなく、ヘテロ2量体としてEcRE DNAのみに結合することが示された。結合はMg2+の存在下で非常に促進されることが観察された。結合特異性はまた、非標識競合DNAとの競合が成功することによって確認した。ホルモン(ポナステロンA)が存在すると、ホルモン無しの結合と比較したとき、明らかに受容体ヘテロ2量体のEcREへの結合が促進された。さらに、該結合は特異的で、受容体-EcRE複合体の量は、非標識EcRE DNAを含めることによって減少した。ホルモンを添加する20分前にEcREを添加しても、EcREへの受容体の結合は増加しなかった。
【0138】
BtEcRのヌクレオチド配列は配列番号1、アミノ酸配列は配列番号2で示した。
【0139】
BtEcRの概念的な翻訳アミノ酸配列は、残基の長さが416個で、核内受容体の一般的な5個のドメインを示す。BtUSP蛋白質は、残基の長さが496個で、これもまた核内受容体の一般的なドメインすべてを示す。機能測定では、BtEcRおよびBtUSPサブユニットのエクジソン受容体因子への特異的かつ協調的結合が示され、この現象はエクジステロイドリガンド、ポナステロンAの添加によって促進されることが示された。
【0140】
BtEcRおよびBtUSPのリガンド結合ドメインの共発現用バキュロウイルスの構築
段階1:pFastBacDual metHis6EcRのクローニング
pBK-CMV7は、HaeIIIおよびPstIで消化して、BtEcR DおよびEドメインをコードする1.3kb DNA断片(断片A)を切断した。
【0141】
BtEcR Dドメインのアミノ末端にヘキサヒスチジンタグをコードするDNA2本鎖(リンカーA)を構築するために、2種類のオリゴヌクレオチド(1)ncoI metHis6上鎖(CATGGGTATGAGAGGATCGCATCACCATCACCATCACAGG)および(2)ncoI metHis6下鎖(CCTGTGATGGTGATGGTGATGCGATCCTCTCATACC)をキナーゼで処理し、アニーリングした。
【0142】
pFastbac Dual(Invitrogen)は、NcoIおよびNsiIで消化して、標準方法によってホスファターゼで処理した(Sambrook他、1989)。
【0143】
断片AおよびリンカーAは、NcoIおよびNsiIで処理したpFastBacDualに連結して、pFastbac metHis6EcRを構築した。
【0144】
段階2:pFastBacDual His6EcR FLAG USPのクローニング
pBK-CMV21(a)は、PCR(Tfl DNAポリメラーゼ、Promega)の鋳型として(1)avallusp5(TGTCTCGCTATGGGACCGAAAAGAGAAGCC)および(2)pstusp3(GATAATGCTGCAGATGGTGATAATT)と共に使用して、BtUSP DおよびEドメインをコードする1370bpのDNA断片(断片B)を作製した。PstI部位はBtUSPの3'UTRに存在するが、5'AvaII部位はプライマーavaIIusp5によっては導入される。
【0145】
BtUSP Dドメインのアミノ末端でFLAGタグをコードするDNA2本鎖(リンカーB)を構築するために、2種類のオリゴヌクレオチド(1)BssHuspFLAG上鎖(CGCGCTTAACTATGGACTACAAGGACGACGATGACAAGG)および(2)avauspFLAG下鎖(GGTCCCTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCCATAGTTAAG)をキナーゼで処理して、アニーリングして合成した。
【0146】
pFastbac metHis6 EcRはBssHI(PauI)およびPstIで消化した。
【0147】
断片BおよびリンカーBは、BssHI(PauI)およびPstIで処理したpFastBacDualに連結して、pFastbac His6EcR FLAG USPを構築した。
【0148】
段階3.pFastbac His6EcR FLAG USPからbacmidおよびバキュロウイルス構築物への遺伝子転移
ドナープラスミドpFastbac His6EcR FLAG USPのmini-Tn7発現カセットは、DH10Bacコンピテント細胞に形質転換し、白色コロニーを選択することによってバキュロウイルスゲノムに転位させた。白色コロニーをコロニー精製し、液体培地で増殖させた。Bacmid DNAの少量調製物は、アルカリ溶解法を使用して、剪断力を最小限にするように注意を払って作製した。得られたDNAは、0.5%アガロースゲルによる電気泳動によって高分子量bacmid DNAの存在をモニターした。
【0149】
対数期中間部のSf9昆虫細胞は、Cellfectin(Invitrogen)および標準的手順を使用してbacmidDNAで形質移入し、27℃で72時間増殖させた。培養上清からウイルスを収穫し、プラーク測定法によって力価を測定した。
【0150】
組換えヘテロ2量体EcR-USPリガンド結合ドメインの発現および精製
組換えヘテロ2量体BtEcR-BtUSP LBDの試験的規模の発現は、27℃に維持した振盪台の上に置いたスピナーフラスコまたはSchott瓶の中で、Sf9、Sf21およびまたはHi-5昆虫細胞の懸濁培養液を感染させることによって実現した。BtEcR/BtUSPリガンド結合ドメインを発現するように操作されたウイルスで感染させた昆虫細胞は、ゲル電気泳動によって、タグを付けた2種類のドメインに対応する発現ポリペプチドを含有することが示された。該組換え細胞溶解物は、対照細胞溶解物と比較して、放射標識エクジステロイド、[3H]-ポナステロンAに結合する能力が非常に高まっていた。これらの結果によって、ヘテロ2量体化して、高い親和性でエクジステロイドを結合する組換えタバココナジラミ受容体LBDを形成することができる機能的LBDを組換えウイルスが発現していることが示された。リガンドとして[3H]-ポナステロンAを用いた平衡結合研究によって、(直接曲線をあてはめることによって)Kd値1.21±0.17nMを得た。
【0151】
大規模な組換え蛋白質の産生は、制御した条件下で(27℃、35r.p.m.)、Celligen(New Brunswick Scientific)攪拌バイオリアクターによって実施した。5〜6Lの培養が成功すると、一般的に細胞1グラム当たり組換えLBD約0.2mgが含有された湿潤細胞70〜100gが得られた。ヘテロ2量体は、組換えEcRリガンド結合ドメインのHis6-タグを捕捉するニッケルキレート樹脂を使用することによって細胞抽出物から親和性精製した。親和性精製物質はイオン交換クロマトグラフィー(Pharmacia Mono-Q)またはゲル濾過(Pharmacia Superdex-200)を行うことによって、さらに精製を実現することができた。3種類のクロマトグラフィー段階はすべて、効率的で(収率>60%)安価であった。収率は、蛋白質濃度の測定および[3H]-ポナステロンAの結合から推定した。同一性、強度および純度は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE、クーマジー染色またはイムノブロット)、非変性PAGE、非変性等電点電気泳動ゲルおよび質量分析によってモニターした。
【0152】
結晶化試験用に(エクジステロイドリガンドを結合させた)組換えヘテロ2量体LBDを精製するために、組換え細胞60〜70gは過剰なリガンド(ポナステロンA)の存在下で超音波処理して可溶化し、受容体LBD-リガンド複合体は親和性精製を使用し、その後のその他のクロマトグラフィー段階(前記参照)を少なくとも1回行って、透明化した溶解物から精製した。例えば従来の結晶化試験で一般的な非還元条件の場合、ジスルフィド結合が組換えLBD分子のいくつかの内部および/または間で迅速に形成される。幸いなことに、望ましくないジスルフィド媒介オリゴマー化は、チオール特異的試薬(ヨード酢酸またはヨードアセトアミド)を使用して表面に接近できるシステイン残基を変更することによって抑制することができた。化学的変更は、第1および第2のクロマトグラフィー段階の間で実施することが好ましかった。しかし、質量分析によって、このような変更は組換え蛋白質に化学的な微小不均一性をもたらすことが示唆された。したがって、窒素雰囲気中の還元条件下で(以下参照)、化学的変更を必要としない結晶化試験を実施する方法が見いだされた。
【0153】
ヘテロ2量体のタバココナジラミリガンド結合ドメインを発現するように操作された、前述のように調製された増幅組換えバキュロウイルスを使用して、感染効率約1でCelligenバイオリアクター内においてHi-5昆虫細胞培養物5リットルを感染させた。感染49時間後に収集し、この培養物から湿重量約65gの組換え昆虫細胞を収集し、液体窒素中で即座に冷凍し、-70℃で保存した。全バッチの細胞を後で解凍し、十分なポナステロンAを含有するHEPES緩衝液130mlに懸濁して、予測した数のリガンド結合部位を飽和し(HEPES 100mM、KCl 40mM、10%グリセロール、EDTA 1mM、アジ化ナトリウム3mM、ポナステロンA 52μM、ロイペプチン8.9μM、ペプスタチン 2.7μM、フェニルメタンスルホニルフルオリド1.3mM、Na2S2O5 26mM、2-メルカプトエタノール13mM、pH7.0、4℃)、超音波処理して細胞を破壊した(4個のバッチは等量で、それぞれを直径19mmのプローブを装着したMSE Type 1174.MK2超音波処理器で13×5秒パルス、各パルスの間に25秒間塩をまぶした氷で冷却しながら処理した)。該超音波処理物は、再度一緒にして(全量210ml)、その後イオン強度は4M KCl 20.8mlを添加することによって上昇させた。この試料を超音波遠心して、細胞細片をペレットにした(Beckman L8-80M超遠心器のBeckman 60Tiローター、100000g、2時間、4℃)。上清は、HEPES緩衝液(HEPES 25mM、KCl 40mM、10%グリセロール、EDTA 1mM、アジ化ナトリウム3mM、2-メルカプトエタノール10mM、ポナステロンA 0.1μM、pH7.0)1100mlで4℃で3時間透析し(Spectrum Spectra/Por 1チューブ、長さ40cm×直径5cm)、イオン強度を低下させた。(不透明になった)透析物は、遠心によって清澄化した(Beckman J2-21遠心器のBeckman JA14ローター、12000rpm、30分、4℃)。pHは、pH7未満まで低下することが見いだされたので、0.5M HEPES pH7.0、20mlを攪拌しながら(氷上で)滴下してpHを上昇させてから、該試料を液体窒素中で即座に凍結し、-70℃で保存した。精製を再開するために、(37℃の水浴で振盪することよって)試料を迅速に解凍して、リン酸緩衝液(リン酸ナトリウム50mM、10%グリセロール、NaCl 0.3M、メルカプトエタノール10mM、ポナステロンA 0.1μM、アジ化ナトリウム3mM、pH7.4)1100mlに対して4℃で3時間2回透析した(Spectrum Spectra/Por 1チューブ、長さ40cm×直径5cm)。次に、透析物(全量200ml)を液体窒素中で即座に凍結し、-70℃で保存した。
【0154】
固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)段階で、Ni-NTA-アガロースを使用してBtEcR LBDのHis6-タグによって組換えヘテロ2量体を捕捉した。捕捉、洗浄および溶出は、以下のように、2-メルカプトエタノールおよびポナステロンAの存在下で実施した。凍結した透析物は(37℃の水浴で振盪することによって)迅速に解凍し、再度清澄化した(Beckman J2-21遠心器のBeckman JA14ローター、12000rpm、20分、4℃)。透明になった蛋白質試料に、アジ化ナトリウム3mMを含有する2Mイミダゾール、pH7.4、2mlを添加した。Ni-NTAアガロースビーズ(Qiagen、Cat.30210)の50%スラリーの一部12mlをリン酸緩衝液(リン酸ナトリウム50mM、10%グリセロール、NaCl 0.3M、2-メルカプトエタノール10mM、アジ化ナトリウム3mM、pH7.4)20mlで2回洗浄した。洗浄したビーズを蛋白質試料と一緒にして、該懸濁物をゆっくり回転させた(RotoTorque:10rpm、3時間、4℃)。次に、該ビーズを遠心によってペレットにした(Beckman J2-21遠心器のBeckman JA14ローター、10000rpm、20分、4℃)。上清を注意深く除去し、その後ビーズをミニカラム(垂直に固定した20mlシリンジ、基部にフリットとして役立つWhatman濾紙ディスクを有する)に4℃で移した。未結合の蛋白質は、ビーズのカラムをリン酸緩衝液((リン酸ナトリウム50mM、10%グリセロール、NaCl 0.3M、2-メルカプトエタノール10mM、イミダゾール20mM、ポナステロンA 0.5μM、アジ化ナトリウム3mM、pH7.4)120mlで4℃で洗浄することによって除去した。特異的に結合した蛋白質は、高濃度のイミダゾールを含有する緩衝液(リン酸ナトリウム50mM、10%グリセロール、NaCl 0.3M、2-メルカプトエタノール10mM、イミダゾール250mM、ポナステロンA 3μM、アジ化ナトリウム3mM、pH7.4)で溶出した。最大限に回収するために、該溶出緩衝液は、添加の間隔をそれぞれ20分として2×4.5mlずつに小分けしてカラムに添加した。溶出液は一緒にして、一部について蛋白質含量を測定した(Pierce Coomassie Plus測定法、ウシ血清アルブミンを使用して較正した)。IMAC段階によって精製受容体が全体で41mg得られた。この方法によって、一般的に、組換えEcRおよびUSP LBDがほぼ等量で存在する調製物が得られる。還元SDS-PAGEによるIMAC溶出物の分析を示す(図4、列1)。IMAC溶出物は液体窒素中で即座に凍結し、-70℃で保存した。
【0155】
精製を再開するために、IMAC溶出物は37℃の水浴で振盪することによって迅速に解凍した。非変性界面活性剤3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)は高親和性受容体-エクジステロイド結合を最大限にできる証拠が得られたので、IMAC溶出物をCHAPS含有Tris緩衝液(Tris 50mM、NaCl 230mM、10%グリセロール、2-メルカプトエタノール10mM、ポナステロンA 0.5μM、CHAPS 2mM、アジ化ナトリウム3mM、pH7.5)500mlで4℃で3時間2回透析した(Spectrum Spectra/Por 1チューブ、長さ150mm×直径15mm)。以下のように、追加的なリガンド結合能力はCHAPSおよび大過剰のポナステロンAの存在下で4℃で一晩試料をインキュベートすることによって満たされ、これは、透析バッグをTris 50mM、NaCl 230mM、10%グリセロール、2-メルカプトエタノール10mM、ポナステロンA 61μM、CHAPS 2mM、アジ化ナトリウム3mM、pH7.5、100mlを含有する100mlメスシリンダーに移し、4℃で一晩透析することによって実施した。しかし、CHAPSが結晶化を妨害する懸念もまたあるので、この添加物はその後のCHAPSを含まないTris緩衝液による透析段階で除去し、CHAPSはその後の精製段階では入れなかった(遊離のポナステロンAが飽和濃度で維持されている限り、リガンド結合立体化学の増進はCHAPS除去後も続くと予測された)。したがって、CHAPSは、Tris 50mM、NaCl 230mM、10%グリセロール、ジチオスレイトール溶液2mM、ポナステロンA 0.5μM、アジ化ナトリウム3mM、pH7.5、1000mlに対して4℃で3時間2回透析することによって(Spectrum Spectra/Por 1チューブ、長さ150mm×直径15mm)試料から除去した。該透析物にポナステロンAを最終濃度3μMになるように補給し、液体窒素中で即座に凍結し、-70℃で保存した。精製を再開するために、該試料は37℃の水浴で振盪することによって迅速に解凍した。次に、残留体積が約0.7mlになるまで、該ヘテロ2量体試料を限外濾過によって濃縮した(Pall MicroSep-10、BeckmanJ2-21遠心器のBeckman JA-20ローターで遠心、7500rpm、4℃)。次に、該残留液に新鮮なジチオスレイトール溶液16mM、0.1mlを補給し、氷上で2時間インキュベートして、濃縮段階中に形成される可能性があるいかなるジスルフィド結合も確実に還元した。次に、試料(蛋白質38mg)を(カラムに過剰に添加しないように)2つに分割し、各部分を高速ゲル濾過クロマトグラフィー(Pharmacia Superdex-200HR 10/30カラム、室温で、Tris 50mM、NaCl 230mM、10%グリセロール、ジチオスレイトール2mM、ポナステロンA 1μM、アジ化ナトリウム3mM、pH7.5、流速0.5ml/分)によって同様に精製した。カラム溶出物のUV吸光度(280nmでモニターした)によって、組換えヘテロ2量体複合体で予測された分子量を上回るかなりの量の物質が、それぞれの場合においてカラムによって分離されることが示された。いずれの場合でも、組換えヘテロ2量体自体の吸収ピークは鋭く左右対称で、この優勢なピークに対応する(両カラム溶出からの)溶出画分を収集して、さらに処理するために精製したヘテロ2量体の単一試料を形成した。収集した溶出液を限外濾過によって濃縮した(Pall NanoSep-10、Sigma 1K15ミニフュージ、14000g、4℃)。該残留液を回収し、限外濾過膜の洗浄液と一緒にして、ポナステロンAの最終濃度が3μMになるように補給した。濃縮した試料をスピン濾過(Costar Spin-X 0.22μm酢酸セルロースフィルター)によって滅菌して、窒素下で4℃で保存した。この段階で、組換えヘテロ2量体試料は、緩衝液(Tris 50mM、NaCl 230mM、10%グリセロール、ジチオスレイトール2mM、ポナステロンA 3μM、アジ化ナトリウム3mM、pH7.5)0.33ml中に蛋白質13.2mgを含有していた。SDS-PAGEの分析によって、精製組換えBtEcRおよびBtUSP LBDの存在が確かめられた(図4、列2)。それらの遺伝子から予測される分子量は、それぞれ35.8kDaおよび30kDaであるが、多くの昆虫のエクジソン受容体の組換えLBDは一般的に、SDS-PAGEで予測されたものよりもゆっくり泳動することが発見された。
【0156】
精製した受容体複合体の試料を以下に説明したように結晶化試験で試験した。
【0157】
結晶化
BtEcR/BtUSPヘテロ2量体リガンド結合ドメインの結晶は、ハンギングドロップ式蒸気拡散法(McPherson、1982)を使用して大きくした。ウェルの溶液はHEPESナトリウム(pH7.5)0.1M、リン酸2水素アンモニウム1.0M、4.5%トレハロースおよびジチオスレイトール10mMを含有し、ドロップ溶液はTris HCl 50mM(pH7.5)、塩化ナトリウム0.23M、10%グリセロール、ジチオスレイトール溶液10mM、アジ化ナトリウム3mM、ポナステロンA 3μMに溶かした蛋白質(40mg/ml)1μlを含有し、ウェル溶液1μlと共に混合した。結晶は、クエン酸塩0.1M(pH5.2)、7〜8.5% PEG 3350、KH2PO4 67mMおよびTCEP HCl 10mM(Tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩)を含有する他のウェル溶液でも大きくなることが発見された。液滴は、窒素雰囲気下に設置し、プレートは窒素インキュベーター内で室温(20℃)で保存した。結晶は3カ月後に出現し、最大の大きさは0.5mmであった。
【0158】
データ収集
結晶は、HEPESナトリウム(pH7.5)0.1M、リン酸2水素アンモニウム1.0M、4.5%トレハロース、ジチオスレイトール10mMおよび30%グリセロールを含有する溶液に移し、cryoloopですくい(Teng、1990)、窒素ガス流で-160℃で凍結した。次に、該結晶のX線回折データは、集束鏡、ヘリウム通路およびRigaku R-Axis IV検出器を装備したMacScience X線発生器で収集した。データ処理は、HKLセットのソフトウェアを使用して実施した(Otwinowski & Minor、1997)。データの統計は表1に示す。該結晶の単位格子定数は143.01Å×143.01Å×84.01Åで、空間群P41212またはP43212のいずれかに属した。
【0159】
相同性モデル
BtEcR/BtUSPリガンド結合ドメインヘテロ2量体の相同性モデルは、ヒトRAR-αとマウスRXR-α(RCSB id:1DKF)のリガンド結合ドメインの間のヘテロ2量体複合体の結晶構造を鋳型として使用して構築した。該構造のA-鎖(mRXR-α)は、USPの構造的鋳型で、一方B鎖(hRAR-α)はEcRの鋳型であった。ProCeryonプログラム(ProCeryon Biosciences GmbH、Salzburg、Austria)の折り畳み構造認識モジュールを使用して、それぞれの配列を構造鋳型に並べ、いくつかの手動調整を行った後、InsightII v.98.0(Accelrys、Inc.、San Diego、USA)で実行したようにこれらのアラインメントをModellerプログラム(Sali & Blundell、1993)への入力として使用して、標的蛋白質複合体のいくつかの3次元モデルを作成した。最低の目的関数値を有するモデルを最良のモデルとして選択して、その特性をProfiles-3D(Luthy他、1992)、ProsaII(Sippl、1993)およびProCheck(Laskowski他、1993)プログラムで調べた。このモデルでは、EcRおよびUSP両方のヘリックスH12は拮抗薬型構造で、すなわち、それぞれのLBDのヘリックスH3とH4との間の溝に存在することに注意されたい(Renaud & Moras、2000)。
【0160】
構造決定
構造解析は、CCP4ソフトウェアセット(Collaborative Computing Project No.4、1994)でMOLREPプログラム(Vagin & Teplyakov、1997)を使用して分子置換によって行った。分子置換には、検索構造として前記相同性モデルの4.0Åの解像に全データを使用した。正確な解析によって、相関係数が0.319であることが示され、2番目に高い値、0.278を上回ることが証明された。空間群はP43212であることが確認され、この解析によってヘテロ2量体モデルの結晶充填が発達可能であることが示された。次に、結晶学的精密化は、結晶学的R因子を0.331(Rfree=0.441)に減じるX-PLOR(Brunger、1992)内で模擬アニーリングすることによって実行し、分子置換解析が実質的に正確であることを確認した。O(Jones他、1991)を使用した反復モデル構築およびCNSを使用した結晶学的精密化(Brunger他、1998)によって、(本明細書で一貫して残基に名前をつけるために1文字アミノ酸コードを使用した)BtEcRのP179からV415およびBtUSPのV300からS492までの残基を含有するモデルを作製した。リガンドポナステロンAのように容易に解釈することができる電子密度が、BtEcR LBDの関係する部位で確認することができた(Renaud & Moras、2000)。4環の非平面部分は、リガンドの方向および位置を明確に割り当てることを可能にした。最終的な精密化統計値の詳細は、表2に示す。構造の立体化学的分析によって、ラマチャンドランプロットの未許可領域にあるのはBtEcR残基I180およびBtUSP残基T363のみであることが示された。これらの残基に関係する電子密度は乏しく、それらの骨格構造は正確にはモデル化することはできなかった。しかし、これらの残基はいずれもポナステロンA結合部位の近隣には存在しないので、構造の細部およびポナステロンA結合部位との関係にそれらの残基の配置の正確さは重要である可能性はまったくなかった。該モデルにはまた、ヘテロ2量体の結晶化で使用される溶液からおそらく生じる3個のリン酸イオンが含まれる。
【0161】
表2の結晶学的R因子は、該構造が測定した構造解析(すなわち、3.07Å)に本質的に適当であることを示唆した。BtEcRのN末端残基P179およびBtUSP末端残基V300がないことが認められたのは、結晶内が全体的に無秩序であること、またはプロテアーゼの混在によって先に除去されたこと、またはその両方によるものである可能性があった。結晶のSDS PAGEゲルによる分析(還元条件下で泳動)では、31kDa、26kDa、23kDaおよび22kDaのバンドの存在が示され、これらはいずれも新たに精製したLBD(図4、列2)の見かけの分子量よりも小さく、完全なリガンド結合ドメインの遺伝子によって予測される分子量(35.8および30kDa)よりもまた小さかった。したがって、これらの残基がないのは、全体的に、または部分的に、部分的蛋白質分解が関与しているものと結論づけた。
【0162】
結果
構造の説明
BtEcR LBDの折り畳み構造は、標準的な核内ホルモン受容体の構造である(図1)。この構造で識別されるBtUSP/BtEcR LBDの2次構造要素は、以下のように、ヘリックスH1-残基182から198、ヘリックスH2-残基202から211、ヘリックスH3-残基220から244、ヘリックスH4-残基252から264、ヘリックスH5-残基267から275、鎖s0-残基275から277、鎖s1-残基282から285、鎖s2-残基288から291、ヘリックスH6-残基292から300、ヘリックスH7-残基304から319、ヘリックスH8-残基321から334、ヘリックスH9-残基342から364、ヘリックスH10-残基368から400およびヘリックスH12-残基405から413のBTEcR配列内に位置する。したがって、αへリックスH1からH10およびH12、ならびにヘリックスH5とH6との間に位置するβ鎖s1およびs2を含む。他の短いβ鎖(ここではs0と表記する)がヘリックスH5と鎖s1との間に存在する。
【0163】
BtEcRのヘリックスH12は、すなわち作用薬型構造に見いだされる(Renaud & Moras、2000)。BtEcRの構造をその他の核内受容体に使用できるものと比較した。構造的に最も類似しているのは、レチノイン酸受容体(RAR)であった。BtEcR構造とRAR-γ2(RCSBid:1EXA、作用薬型構造)との間の対応する骨格Cα原子(237個のうち)206個の二乗平均偏差は1.29Åである。これらの構造の間の主な違いは、ヘリックスH1とH3との間のループ構造にある。RARにおいて、このループはランダムコイル構造をしており、s1〜s2βシートループの外面にわたって存在する。EcRにおいて、該部分は、ヘリックスH3のN末端部分に逆平行に充填され、s1〜s2βシートループの反対面と相互作用する完全なヘリックスH2を含有する。
【0164】
リガンドポナステロンAは、残基F194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412によって形成された全体的に囲い込まれたポケットに存在することが認められた(図2)。該ポケットは、「J型」構造をしており、リガンドに適合した主要部分(「J」の脚部)および狭い溝を通って該主要部分の延長として存在する付属部分(「J」の湾曲した尾部)を有する。該ポケットの主要部分および付属部分に結合した溝の内壁は、R271残基の側鎖によって形成される。穴全体で利用可能な体積は約766Å3で、一方ポナステロンA自体の体積は434Å3で、両方の形状はVOIDOOを使用して計算された(Kleywegt & Jones、1994)。付属の穴は、本明細書で提示した構造においては占有されないようである。該ポケットの主要部分および付属部分を連結する溝の狭さから、蛋白質のいくつかの動力学的状態において、これらの2種類の部分は1個の形態的な単位を形成するよりもバラバラになり得ることが示唆される。
【0165】
個々の蛋白質原子とリガンドとの間の潜在的水素結合は、以下の通りで、A286NとポナステロンAのC-6の水酸基、T234 Oγ1とポナステロンAのC-14の水酸基、T231 Oγ1とポナステロンAのC-14の水酸基、R271 NH1とポナステロンAのC-2の水酸基、E199 OとポナステロンAのC-2の水酸基、E199 OとポナステロンAのC-3の水酸基、Y296 OHとポナステロンAのC-20の水酸基である(図2)。リガンドと蛋白質との残りの接触は、天然では疎水性がほとんどで、残基P201、I227、T228、I230、M268、R271、M272、R275、I283、F285、A286、M301およびW412の側鎖とリガンドとの間の接触によって形成される。Y269の側鎖とポナステロンAのC-20水酸基との間の水素結合は、親和性の高い結合にはエクジステロイドにC-20水酸基を有することが重要であることをおそらく説明している。(BtEcRの)296位のTyrは、昆虫目全体に完全に保存されており、この水素結合はEcRによる親和性の高いエクジステロイド結合の一般的特性であり得ることを示唆している。この相互作用の重要性は、EcRの初期相同性モデルでは明らかではなかった(Wurtz他、2000、Kasuya他、2003)。
【0166】
ヘリックスH12は、リガンド結合部位にぶらさがったW412の側鎖を介しておそらくリガンドを部位に固定する、すなわち作用薬型構造(Renaud & Moras、2000)に存在することが見いだされた。BtEcRの残基D413およびK261の間の塩橋はH12のC末端を安定化するようである。この構造において、共活性化因子は、H12を含み、ヘリックスH3とH4との間の疎水性の割れ目の表面を含む部位に結合することができる。この割れ目の分子の詳細は、図3に示す。該割れ目およびそのすぐ周りを形成する側鎖には、残基V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、Q256、I257、L260、K261、S264、S265およびM268が含まれる。この溝は、R253以外の表5で示したエクジソン受容体配列すべてに全体的に保存されている。この残基は、結合溝の(この構造で示したH12の位置に関して)遠位末端に存在し、この段階では、その側鎖がこれらの要素の結合時に共抑制因子または共活性化因子と相互作用するかしないかははっきりしない。
【0167】
BtUSP蛋白質の構造は、公表されたその他のUSP構造(Billas他、2001、Clayton他、2001)と非常に似ているが、以下の主な差異がある。この構造で識別されるBtUSP/BtEcR LBDの2次元構造要素は、以下の、へリックスH3-残基301から321、へリックスH4-残基328から339、へリックスH5-残基340から353、鎖s1-残基359から361、鎖s2-残基365から367、へリックスH6-残基371から376、へリクスH7-残基380から396、へリックスH8-残基399から411、へリックスH9-残基420から443、へリックスH10-残基448から466およびへリックスH12-残基481から491のようにBtUSP配列内に位置する。V300、すなわち、ヘリックスH1の前の残基には電子密度は認められず、H1をH3に連結するループの一部はまったく認められない。その他のUSP構造では、これらの構造要素によって占有される体積の一部は、今度はH10〜H12ループによって占有される。H12は、すなわち拮抗薬型構造である(Renaud & Moras、2000)。ヘリックスH11は、形成されないようである。前記の公表された2種類の構造において、リン脂質によって占有される部位に対応する部位にはリガンドは認められず、H10〜H12ループの位置を変えたり、ヘリックスH6およびこの要素のすぐ隣にある残基(残基371から384)の位置を変えたりすると、この結合部位の実際の部分は閉塞される。我々の構造のH3の前の残基がなく、完全なUSPリガンド結合ドメインのH1〜H3ループによって通常占有される領域へのこの要素の折り畳みが可能であると、H10〜H12ループの位置の変更が引き起こされるようである。H10〜H12ループの移動は部分的に、結晶と我々の構造の近隣分子との接触において、そのループが関与することによって生じる可能性がある。
【0168】
BtEcRとBtUSPリガンド結合ドメインとの間の2量体の結合は、対応するRAR-RXR複合体の結合と似ている。これらの2種類のヘテロ2量体構造は、339個の合致したCα原子について二乗平均偏差1.37Åで重ね合わせることができる。接触面は、H9、H10に含有されるEcR残基、一方のH8およびH9の間のループおよびH7、H9、H10に含有されるUSP残基および他方のH6およびH7の間のループによって形成される(図5)。接触面に関係する残基には、一方ではBtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388ならびに他方ではBtUSP残基得E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465が含まれる。該接触面は、反対鎖の任意の原子のファンデルワールス表面の1.4Å以内にある任意の原子のファンデルワールス表面で全残基を計算し、その後視覚的に精査することによって予測した。
【0169】
可能性のある鎖間塩橋には、USP E429からEcR K375、USP K391からEcR E336、USP K391からEcR E347、USP K452からEcR E351およびUSP E425からEcR K375の塩橋が含まれる。これらのうち、EcR E347とUSP K391との間の塩橋のみが全種にわたって保存されており(双翅目、ユスリカ(Chiromus tentans)のEcRはBtEcRの残基347に対応する位置にはGluの代わりにAspを有するが)、該接触面に結合し、特定の塩橋を破壊する化合物は特異的拮抗薬の基礎となり得よう。
【0170】
USP S447の側鎖とEcR E355Aの側鎖との間、USP S447の骨格カルボニルとEcR K358の側鎖との間、およびEcR R384の側鎖とUSP S462の側鎖との間に水素結合が生じる。その他の接触は、天然では疎水的である。単一のリン酸イオンが接触面に含まれ、EcR残基R384の側鎖、EcR残基E336のカルボニル酸素およびUSP残基R383、E387およびR456の側鎖によって配位される。
【0171】
PASS(Brady & Stouten、2000)は、BtEcRのA262、S265、E266、R337、R384、G387、N388およびS391を含む残基によって結合したヘテロ2量体の接触面の端にBtEcR表面上のポケットが存在することを示す。PASSはまた、BtUSPのK337、S338、N341、E342、K416、G464、L465、C467およびH470を含む残基によって結合したヘテロ2量体の接触面の端にあるBtUSP表面上のポケットが存在することを示す。
【0172】
EcRポケットにおける種特異的作用薬の設計
表3は、タバココナジラミの構造に見られるエクジステロイド結合ポケットに並ぶ残基について、様々な昆虫綱EcR LBDで明らかな目間の変動を示す。表3を分析すると、昆虫種間のEcRのリガンド結合ポケットの残基には差があることが示される。例えば、(ビサシルヒドラジン化合物に耐性のある)半翅目タバココナジラミでは、残基272はメチオニンであるが、(ビサシルヒドラジンに感受性の)鱗翅目の種ではこの位置の残基はより小さなバリンである。鱗翅目オオタバコガ(Heliothis virescens)のEcR/USPヘテロ2量体LBDの結晶構造を報告したBillas他、(2003)の論文では、ビサシルヒドラジン殺虫剤の制御範囲に関連して、この位置の残基の潜在的重要性にまた注目している。本出願の表3から、272位のメチオニンは半翅目、双翅目、直翅目および鞘翅目に存在するが、鱗翅目のこの位置の残基はバリンであることが明らかである。鱗翅目、双翅目および鞘翅目は、一般的に作用薬に対するエクジソン受容体の結合親和性に相関的な様々な程度でビサシルヒドラジンに感受性であることが示された(Dhadialla他、1998)。さらに、我々の研究所では、精製した組換えLBDを使用してin vitro結合研究を実施して、RH5992に対する双翅目(ヒツジキンバエ(Lucilia cuprina))受容体の親和性は著しく、コナジラミ(タバココナジラミ)の受容体の親和性は非常に低いことを示した(未公表の結果)。ビサシルヒドラジンの応答は、タバココナジラミの272に対応する位置の残基に単純に左右されるわけではないことは明らかである。
【0173】
タバココナジラミの272位のメチオニン残基は単一の決定基としては作用しないが、ロイシン308およびメチオニン389と相乗効果を有し、これらの側鎖を合わせた長さ、大きさおよび荷電状態は様々な作用薬/拮抗薬への結合ポケットの形状および親和性に変化をもたらす可能性があると考えられる。389位のメチオニンは、半翅目およびクモ類にのみ見いだされる。例としてこの3個の残基を使用し、結合ポケットの肉眼的形状が本質的な同一性を保持していると仮定すれば、鱗翅目のEcRの残基272、308および389の側鎖の嵩を全体的に減少させると、鱗翅目ポケットに突起が追加されて、ビサシルヒドラジン対する適応性が助長される。
【0174】
半翅目のBtEcRおよび鱗翅目のHvEcRのエクジステロイド結合ポケットを比較すると、前段落で説明した3連の残基がBtEcRにおけるポナステロンAのC22-OHに隣接した空領域の近くのポケット形状の違いに大きく関与することが示される。HvEcRでは、この空領域はエクジステロイド結合ポケットの顕著な突出部分に伸びている(図8の左上のHvEcRポケットの独特の突出部分を参照すること)。3種類の構造、BtEcR(ポナステロンAが結合)HvEcR 1R1K(ポナステロンAが結合)およびHvEcR 1R20(合成作用薬BYI06830が結合)すべてのEcRドメインの蛋白質骨格Cアルファ原子の最小二乗法によるアラインメントは、HvEcR 1R1Kエクジステロイド結合ポケットのこの大きな突出部位に隣接しているが、包囲はされていない作用薬BYI06830のAおよびB環に位置する。鱗翅目HvEcR 1R20構造において、合成作用薬に適合するために、おそらく誘導適合によって、この突出部分はさらに伸長する。半翅目のBtEcR構造では、可能性のある結合ポケット構造のこの領域に突出部位がないので、ビサシルヒドラジンの多くの初期結合および誘導適合機構による突出部位のその後の膨張が妨害されると考えられる。
【0175】
表3に詳述したような目間に生じる結合部位残基のその他の変動は、結合部位の形態を変化させ、これらの差を利用した分類群特異的なステロイドまたは小分子模倣物の設計を可能にすることは明らかである。このような設計は、前述したように当業者に利用可能な装置を使用して実施されよう。M389は、H10/11のC末端および作用薬が結合するH12が隣接したポケット開口部の近くに見いだされる。M389とポナステロンAリガンドとの接触は最小限であるが、この残基をより小さな側鎖、例えば、鱗翅目で見いだされるようにバリン、またはクモ類で見いだされるようなグリシンなどに変異させると、H11とH7との間の相互作用を弱めることができた。この弱まりによって、H10/11のC末端近くの結合部位を開放し、保存されたL308および保存性の高いL386を曝露して、ビサシルヒドラジンのいくつかに見いだされるようなt-ブチル基またはベンゼン環などの大きな置換基を有するリガンド拮抗薬/作用薬を潜在的に収容することができる疎水性のへこみを形成する。
【0176】
X線構造は、BtEcRの結合ポケットに並んだ残基の3次元空間における相対的な位置の正確な説明を提供する。エクジステロイドリガンド、ポナステロンAは、結合ポケットの主要な部分にぴったりと収まり、固いステロイドの構造を上回る受容体の自由な体積のほとんどすべてを占有する(図2)。
【0177】
しかし、伸長部のある部位は、以下のように有用である。(前記の2段落で説明したように)エクジステロイドのC20/C21領域の近くに完全には占有されていない小さなポケットと、ステロイドアルキル鎖の末端が及ばない空の大きな空間がある。アルキル鎖の末端に以下のリガンドによって占有されていないかなりの受容体ポケット空間がある。この大きな、一部満たされた領域は、図5に示したように、L408、V404、N390、C394、L408、I227、T228、T231、T393およびP405が境界線となっている。結合ポケットの付属部分と称された領域(「J」の曲線部分)はまた、このポケットの接近しやすさに応じて、リガンドによって占有されるために有用であり得る。
【0178】
BtEcR LBD X線構造は、当業者に周知の分子モデリング方法と共に使用して、受容体空間をより充填するステロイドの変更を設計できることは明らかである。
【0179】
あるいは、合成有機分子は、結合部位に並ぶ残基の特性を考慮し、特定の置換基に結合するために好ましい領域に配置するためのGRID(Goodford、1984)などの方法を使用することによって設計することができた。このような置換基は、骨格またはその他の分子構造によって一緒に結合させて、結合部位の相補的な結合基と相互作用させるために最適な3次元方向にリガンド結合基を提示することができた。これは、当業者が手動で、またはLeapFrog(Tripos Associates、Inc.、St.Louis、MO)などのプログラムを使用して自動的に実施することができる。
【0180】
他の代替法は、(受容体のX線構造の知識から得られた)蛋白質の相補的結合基の3次元方向をデータベース検索のファルマコフォアクエリとして使用できることである。これによって、受容体の推定リガンドとして正確に方向付けられた官能基を有する分子を同定する。
【0181】
他の代替法は、受容体のX線構造から得られた結合部位の形状および特性をデータベースクエリとして直接使用することである。DOCK(Ewing他、2001、Kuntz他、1982)およびFlexX(Rarey他、1996)などのプログラムは、この種の情報を使用して、現実または仮定した分子のデータベースを検索し、受容体に結合する正確な特性を有するものを発見することができる。
【0182】
この実施方法の一例では、FlexXプログラムを使用して公知および推定リガンドをEcRの結合部位に結合させる。受容体構造は前処理して、アミノ酸に全水素原子を添加し、標準規則を使用してチャージを加えた。該部位に結合したポナステロンAの6.5Å位内の領域は、FlexX計算のために使用した。該プログラムがX線データを使用してリガンドを正確に結合させることができることを評価するために、ポナステロンAリガンドをX線構造から抽出し、エネルギーを極小化して、結合部位に再結合させた。FlexXプログラムは、ポナステロンAリガンドを非常に好ましい結合価(-23.92)を有するX線構造(RMS 0.79A)の結合位置と本質的に同一の結合位置に結合させた。結合結果の特性は、図6に見ることができる。
【0183】
FlexXによる他の結合実験では、ポナステロンAリガンドの値は-28.4であった。いくつかの実験では、その他のいくつかの可能性のあるEcRステロイド性リガンドは以下の値、ムリステロンA -27.6、20-ヒドロキシエクジソン -29.0、イノコステロン -31.7であった。最も高く評価された構造は、ポナステロンAと同様の様式でEcRに結合し、ポナステロンAで計算したのと同様の結合価を示した。
【0184】
他の例として、いくつかの合成小分子は、FlexXを使用してEcR X線構造に結合させた。これらは、ビサシルヒドラジンIおよびRH5992(トレーサーとしての[3H]-ポナステロンAとのBtEcR競合結合アッセイにおいて、結合が無視できることが示された)、オキサジアゾール誘導体II(また、結合が無視できる)、オキサゾリジノン誘導体III(測定において弱い-中程度の結合)、チオテトラヒドロイミダゾール誘導体IV(測定において弱い-中程度の結合)であった。
【0185】
【化1】

【0186】
FlexX結合計算では、ビサシルヒドラジン(IおよびRH5992)およびオキサゾール誘導体(II)の内部エネルギーが比較的低くて確実に評価される結合構造はBtEcR内に発見することはできなかった。しかし、2個の弱〜中程度に結合するリガンド、IIIおよびIVは、比較的低い内部緊張および好ましい結合評価(それぞれ、-14.9および-15.8)でEcR X線構造に結合することに成功した。これらの化合物はいずれも、ポナステロンA X線構造のC/D環および該ステロイドのアルキル鎖にそれらの構造に適応させたFlexX結合構造を有していた。これらの小さな合成リガンド、オキサゾリジノン誘導体IIIの結合構造の成功例を図7に挙げる。
【0187】
BtEcR/BtUSP接触面を標的とし、これらの分子の4次結合を変化させる化合物の設計
本発明の他の態様では、ヘテロ2量体接触面のUSP成分を模倣した化合物(非ペプチド、ペプチドまたはペプチド様物質)を設計することができる。この接触面を形成する残基の詳細および目間の変動を表4に挙げる。このような化合物は、EcRモノマーに結合し、機能的EcR/USPヘテロ2量体の形成を妨げることができる。このような設計は、この適用で曝露されるEcR/USP接触面の構造細部を利用する。このような設計はまた、該構造、したがって2量体化に関与するEcRヘリックスの構造、したがって相互作用を破壊するために使用することができるリガンド誘導体化部位を同定するためにリガンド結合相互作用の詳細を利用する。同様に、ヘテロ2量体接触面のEcR成分を模倣し、USP成分に結合し、機能的EcR/USPヘテロ2量体の形成をまた妨害する化合物を設計することができる。
【0188】
このような化合物の設計は、エストロゲン受容体では実現可能であり、例えば(Yudt & Koide、2001)を参照のこと。妥当な接触面ペプチド設計は、様々なその他の蛋白質-蛋白質相互作用において示された(Singh他、2001、Berezov他、2002)。さらに、接触面に関連する2個の「ポケット」のいずれかに結合し、ヘテロ2量体化の過程の立体的な障害を生じ、したがってエクジソン受容体の機能を阻害する基盤となる化合物を設計/選択することができる。
【0189】
BtEcR共活性化剤/共阻害剤結合溝を標的とする化合物の設計
本発明の他の態様では、BtEcR構造に基づいて、共活性化剤/共阻害剤結合溝を標的とし、それによってトランス活性化を変更する薬剤としての作用を可能にする化合物を設計することができる(Tran他、2001、Westin他、1998)。この部位は、2個の逆平行ヘリックス、H3およびH4によって形成され、共活性化剤または共阻害剤が結合する溝に存在する。共活性化剤は、ロイシンによってH3/H4溝と相互作用する両親媒性ヘリックスの一部を形成するために、その他の核内受容体の研究で示された保存されたLXXLLモチーフ(「NR」ボックス)を有する。この相互作用にまた関連するのは、保存性の高いH12のグルタミンおよびH3のリジンである。これを基にして、本明細書で提示したEcR H3/H4溝の構造細部を利用して、共活性化剤NRボックスの溝への結合を模倣するペプチドまたはペプチド模倣物を設計することが当業者に可能になる。このような化合物は受容体のトランス活性化状態を変更する潜在力を有するであろう。この溝は、公知の全EcR配列に実質的に保存されている(表5)。
【0190】
当業者には、概括的に説明した本発明の精神および範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態で示した本発明に数多くの変更および/または変化を行うことができることは明らかであろう。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点で、例示するものであって、制限するものではないと考えられる。
【0191】
【表1】

【0192】
【表2】

【0193】
【表3a】

【表3b】

【0194】
【表4】

【0195】
【表5】

【0196】
【表6】

【0197】
(参考文献)









【0198】
(付録I)





















































【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】結合ポケットにおいて示されるポナステロンAを結合したBtEcR/Bt USPヘテロ2量体LBDの構造を示す概略図である。BtEcR LBDは灰色で、BtUSP LBDは黒で示す。個々のへリックスはシリンダーで示し、個々のβ鎖は矢印で示す。各分子のN末端およびC末端は表記してある。ポナステロンAは黒で示し、その酸素原子は白で示す。BtEcR LBDのへリックス3は、ポナステロンA部分の観察を可能にするために透明にしてある。結合ポケット自体の表面は、透明の灰色で示す。
【図2】ポケットの表面、結合したポナステロンAおよびポケットの壁を形成する全残基を示したエクジステロイド結合ポケットの拡大図である。該ポケットは、明確にするために2つの部分に分けてある。ポケット全体は、紙の平面の縦軸の回りに下の画像を回転し、上の画像に重ねることによって再構成することができる。ポナステロンAは、両図において黒い「太い」棒で表し、酸素原子は黒丸で示している。穴を形成する周囲の残基を表記し、全種で完全に保存されるならば「細い」灰色の棒で示し、その他は「細い」黒い棒で示してある。残基内の個々の原子は、以下のようにしてある。窒素は小さい丸、酸素は中位の丸、硫黄は大きな丸である。明瞭にするためにさらに、側鎖または他の骨格原子は、これらの原子群が穴の壁のいずれかの部分を形成しないならば、個々の残基から省いてある。個々の蛋白質残基およびポナステロンAの水素結合は、黒い点線で示してある。結合ポケットの分子表面は、透明の灰色で示す。
【図3】表記した個々の残基を有する(H12を含まない)BtEcR LBD共活性化因子/共受容体結合溝の棒/CPK図である。残基231から265までの原子はすべて、透明なCPKにして、溝の輪郭を示すためにCαのαトレースを行う。共活性化因子/共抑制因子蛋白質との相互作用を可能にすると考えられている個々の残基は、黒い棒形式にして、窒素原子は小さい灰色の丸にし、酸素原子は大きな灰色の丸にする。
【図4】新たに調製した組換えBtEcR LBD試料を12%SDS-PAGEおよびクーマジーブルー染色で分析した図である。試料は、添加する前に5%(v/v)2-メルカプトエタノールの存在下で煮沸した。M:マーカー蛋白質、キロダルトン(kDa)で分子量を示す。1列目:金属イオン固定化アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)溶出物で、組換えBtEcRおよびBtUSP LBD(主要な2重線)および多くの他のバンド(蛋白質不純物)を示している。2列目:濃縮したゲル濾過溶出物で、BtEcRおよびBtUSP LBD(主要な2重線)および比較的少ない蛋白質不純物を示している。
【図5】主要なポケットの末端を規定する残基を示した図である。この領域の結合ポケットのファンデルワールス表面は、右に滑らかな灰色の表面として示す。リガンド-受容体複合体のX線構造におけるポナステロンAの空間充填を表す。右の滑らかな灰色の表面は、エクジステロイドのアルキル鎖に近接した領域の結合ポケットのファンデルワールス表面を表す。
【図6】EcRに結合したポナステロンAのX線構造に重ね合わせたポナステロンAの高級FlexXドッキングを示した図である。濃い灰色の構造は、ポナステロンAのX線配向を表し、薄い灰色の構造はポナステロンAのFlexX構造(pose)の1つを表す。受容体にリガンドをドッキングさせるFlexXの能力は、ドッキングによるポナステロンA配向とX線モデルのポナステロンA配向の高い類似性によって評価することができる。
【図7】化合物IIIの高級FlexXドッキング構造を示した図である。ポナステロンAのC25末端が結合する領域では、受容体ポケットの親油性末端にチオフェン環が伸びている。この環状エステルは、Asn390と水素結合を形成することができ、環窒素はThr231と水素結合を形成する。該フェニル環は、ポナステロンAのC/D環と同じ位置にある。
【図8】半翅目タバココナジラミおよび鱗翅目H.virescensのエクジソン受容体LBDポナステロンA結合ポケットを重ね合わせ、さらにリガンドを重ね合わせた図である。HvEcR 1R1K(ポナステロンA含有)およびHvEcR 1R20(合成作用薬BY106830含有)のLBDは、蛋白質Cαのα骨格原子の最小二乗法によるアラインメントでBtEcR(ポナステロンA含有)LBDと位置合わせをした。リガンド作用薬は、丸および棒の形式で示しており、BtECRポナステロンAは「太い」黒い棒で表し、HvEcR 1R1KポナステロンAは「太い」灰色の棒で表し、HvEcR 1R20 BYI06830は「細い」灰色の棒で表す。炭素原子は、黒にし、酸素原子は灰色で、窒素原子は白にしてある。ポケットに結合したBtEcRポナステロンAは、透明な薄い灰色の表面として表し、ポケット表面に結合したHvEcR 1R1KポナステロンAは透明な濃い灰色で示す。(明瞭にするために、ポケットに結合したBY106830表面は、図に示さない)。ポケットに結合したHvEcRポナステロンAには、ポケットに結合したBtEcRポナステロンAにはない突出部が左上にあることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバココナジラミ(Bemisia tabaci)のエクジソン受容体のBtEcR/BtUSPヘテロ2量体リガンド結合ドメイン(LBD)またはそれらの一部を含む結晶性組成物。
【請求項2】
前記LBDまたはその一部をリガンドと一緒に結晶化させる請求項1に記載の結晶性組成物。
【請求項3】
エクジソン受容体と相互作用し、前記受容体を介する活性を変更する化合物を選択または設計する方法であって、前記化合物とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのトポグラフィー領域との間の立体化学的相補性を評価する段階を含み、前記ヘテロ2量体の特徴は、
(a)付録Iに示した原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、あるいは
(b)全体の並進および/または回転によって付録Iに示したモノマーの座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団である方法。
【請求項4】
前記構造座標は前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記構造座標は前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が0.7Å以下である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、アミノ酸F194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412によって規定されたBtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットである請求項3から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、BtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびにBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRサブユニットとBtUSPサブユニットとの間の接触面である請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcR表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝である請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項で記載されたアミノ酸残基によって規定されたトポグラフィー領域に位置する残基に合致する部分を有する化合物を選択することを含む請求項3に記載の方法。
【請求項10】
BtEcR LBDのリガンド結合ポケットのE199、I227、T231、T234、R271、A286、Y296、T304、N390およびC394から成る群から選択された少なくとも1個のアミノ酸残基と水素結合を形成し、前記受容体のリガンド結合ポケットの天然に生じるエクジステロイドリガンドではない化合物を選択することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項11】
BtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットのP201、I227、T228、I230、M268、M269、R271、M272、R275、I283、F285、A286、M301、L308、M389、L397、P405、L408およびW412から成る群から選択された少なくとも1個のアミノ酸残基の側鎖と疎水性接触を形成する化合物であって、前記受容体のリガンド結合ポケットの天然リガンドではない化合物を選択することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物を、BtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、V379、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびにBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、I408、V409、E414、E425、R428、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465の結合を阻害することによって、BtEcRサブユニットおよびBtUSPサブユニットの結合を妨害するなどの方法でタバココナジラミエクジソン受容体と相互作用するように選択または設計する請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物を前記受容体のシグナル伝達を妨害するように選択または設計する請求項3から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物を天然のリガンドをベースとして選択または設計し、前記化合物をF194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412から成る群から選択された少なくとも1個のアミノ酸と相互作用するように設計または選択する請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物を、前記化合物とタバココナジラミのエクジソン受容体との間の相互作用が天然のリガンドとタバココナジラミのエクジソン受容体との相互作用よりも好ましいように選択または設計する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物はタバココナジラミのエクジソン受容体活性の作用薬である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物はタバココナジラミのエクジソン受容体活性の拮抗薬である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
さらに、BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのトポグラフィー領域に立体的相補性を有する化合物を得る段階および前記化合物の殺虫活性を試験する段階を含む請求項3から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
演算処理装置、入力装置および出力装置を含むプログラム化されたコンピュータを使用して、エクジソン受容体と相互作用し、それによって前記受容体を介した活性を変更することができる潜在的化合物を同定するためのコンピュータ支援方法であって、
(a)付録Iに示した原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492およびポナステロンA、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、あるいは前記アミノ酸の1個または複数の亜集団、あるいは全体を並進および/または回転によって付録Iに示した座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個または複数の亜集団を含むデータを前記入力装置によってプログラム化されたコンピュータに入力する段階、
(b)コンピュータによる方法を使用して、付録Iに示した原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415および/もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、あるいは前記アミノ酸の1個または複数の亜集団、あるいは全体の並進および/または回転によって付録Iに示した座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個または複数の亜集団に立体化学的相補性を有する構造の一連の原子座標を作製する段階、
(c)前記演算処理装置を使用して、基準データ群を化学構造のコンピュータデータベースと比較する段階、
(d)コンピュータによる方法を使用して、前記データベースから前記基準データ群の一部に類似した化学構造を選択する段階、ならびに
(e)前記出力装置に、基準データ群の一部と相補的または類似した選択化学構造を出力する段階を含むコンピュータ支援方法。
【請求項20】
前記構造座標の前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記構造座標の前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が0.7Å以下である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
段階(d)および(e)で選択された化学構造を有する化合物を得る段階および前記化合物の殺虫活性を試験する段階をさらに含む請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記アミノ酸の亜集団は、BtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットを規定するアミノ酸、すなわちF194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412である請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記アミノ酸の亜集団は、BtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびにBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRサブユニットとBtUSPサブユニットとの間の接触面を規定するアミノ酸である請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記アミノ酸の亜集団は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcRの表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝を規定するアミノ酸である請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
タバココナジラミのエクジソン受容体(BtEcR/BtUSP)またはレチノイン酸X受容体RXRなどの他の機能的パートナー蛋白質と対になったBtEcR(配列番号1)を含むヘテロ2量体の活性を変更する能力を有する推定化合物のスクリーニング方法であって、請求項3から請求項19にしたがって推定化合物を同定する段階および前記化合物の活性を試験する段階を含む方法。
【請求項27】
前記化合物の試験をin vitroで実施する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記in vitro試験はハイスループットアッセイである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物の試験を、細胞をベースとしたまたは生物全体をベースとしたスクリーニングを使用してin vivoで実施する請求項26に記載の方法。
【請求項30】
分子または分子複合体の3次元表示を作成するためのコンピュータであって、
(a)機械読み取り可能データでコードされたデータ記憶材料を含む機械読み取り可能データ記憶媒体であって、前記機械読み取り可能データは付録Iに示したBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492およびポナステロンA、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415もしくはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子との二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の原子座標、あるいは前記アミノ酸の1個または複数の亜集団、あるいは全体の並進および/または回転によって付録Iに示した座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個もしくは複数の亜集団を含む記憶媒体、
(b)前記機械読み取り可能データを処理する指令を記憶するためのワーキングメモリー、
(c)前記機械読み取り可能データを3次元表示に処理するための、前記ワーキングメモリーおよび前記機械読み取り可能データ記憶媒体に接続された中央演算処理装置、および
(d)3次元表示を受信するための、前記中央演算処理装置に接続された出力ハードウェアを含むコンピュータ。
【請求項31】
前記構造座標の前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下である請求項30に記載のコンピュータ。
【請求項32】
前記構造座標の前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が0.7Å以下である請求項30に記載のコンピュータ。
【請求項33】
前記アミノ酸の亜集団は、BtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットを規定するアミノ酸、すなわちF194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412である請求項30から32のいずれか一項に記載のコンピュータ。
【請求項34】
前記アミノ酸の亜集団は、BtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびにBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRサブユニットとBtUSPサブユニットとの間の接触面を規定するアミノ酸である請求項30から32のいずれか一項に記載のコンピュータ。
【請求項35】
前記アミノ酸の亜集団は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcRの表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝を規定するアミノ酸である請求項30から32のいずれか一項に記載のコンピュータ。
【請求項36】
請求項3から29のいずれか一項に記載の方法によって得られ、エクジソン受容体を介する活性を変更することができる化合物。
【請求項37】
BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのトポグラフィー領域に立体化学的相補性を有し、前記受容体を介する活性を変更する化合物であって、前記ヘテロ2量体の特徴は、
(a)付録Iに示したような原子座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、またはBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415またはBtUSPモノマーのアミノ酸300〜415において各モノマーの骨格原子の対応するパートナーの骨格原子からの二乗平均偏差が1.5Å以下である構造座標に位置するBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415およびBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492、あるいは
(b)全体を並進および/または回転によって付録Iに示したモノマーの座標に関連付けられる前記アミノ酸の1個または複数の亜集団であり、
ただし、前記化合物はタバココナジラミエクジソン受容体の分子の天然に生じるリガンドではない化合物。
【請求項38】
前記構造座標の前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下である請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
前記構造座標の前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が0.7Å以下である請求項37に記載の化合物。
【請求項40】
前記化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、アミノ酸F194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412によって規定されたBtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットである請求項37から39のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項41】
前記化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、BtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびにBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRサブユニットおよびBtUSPサブユニットとの間の接触面である請求項37から39のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項42】
化合物またはその一部が立体化学的相補性を有するエクジソン受容体のトポグラフィー領域は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcR表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝である請求項37ら39のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
請求項36または37に記載の化合物および薬剤として許容される担体または希釈剤を含む昆虫を制御するための殺虫剤組成物。
【請求項44】
エクジソン受容体LBDと相互作用する化学的実体の能力を評価する方法であって、
(a)構造座標を使用してBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDの少なくとも1個の領域のコンピュータモデルを作成する段階であって、(i)前記モデルのBtEcR成分とBtEcRモノマーのアミノ酸179〜415の対応する構造座標、または(ii)前記モデルのBtUSP成分と付録Iで記載したBtUSPモノマーのアミノ酸300〜492の対応する構造座標の骨格原子の間の二乗平均偏差が1.5Å以下である段階、
(b)前記化学的実体とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDのモノマーの少なくとも1個の領域の前記コンピュータモデルとの間の適合操作を実行するコンピュータによる手段を使用する段階、および
(c)前記化学的実体とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDの少なくとも1個の領域との間の関連を定量するために前記適合操作の結果を分析する段階を含む方法。
【請求項45】
前記構造座標の前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が1.0Å以下である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記構造座標の前記アミノ酸の骨格原子からの二乗平均偏差が0.7Å以下である請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記領域は、アミノ酸F194、Q195、N196、Y198、E199、H200、P201、H226、I227、T228、I230、T231、L233、T234、L237、I238、F241、S242、V267、M268、M269、F270、R271、M272、R274、R275、I283、L284、F285、A286、Y296、M301、T304、L308、Y325、A326、T329、I333、M389、N390、T393、C394、L397、V404、P405、L408およびW412によって規定されるBtEcRサブユニットのリガンド結合ポケットである請求項44から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記領域は、BtEcR残基H314、M315、I331、S335、E336、R337、P338、E347、Q350、E351、I354、E355、K358、T370、T371、F373、A374、K375、L377、S378、L380、T381、E382、R384、T385およびN388、ならびにBtUSP残基E342、R383、T386、E387、K391、E414、E425、E429、Y432、A433、E436、S447、G448、F450、A451、K452、L454、L455、R456、L457、P458、A459、R461、S462およびL465によって規定されたBtEcRサブユニットとBtUSPサブユニットとの間の接触面である請求項44から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記領域は、残基I232、V235、Q236、V239、E240、K243、F248、R253、E254、Q256、I257、L260、K261、S264、S265、M268、S406、F407、L408、E410、I411およびD413によって規定されたBtEcR表面のヘリックスH3およびH4によって形成された共活性化因子/共抑制因子結合溝である請求項44から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
化合物とBtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDとの間の相互作用を評価する方法であって、BtEcR/BtUSPヘテロ2量体LBDまたはその一部またはこれらの変種を含む結晶性組成物を前記化合物に曝露し、前記結晶に対する前記化合物の結合の程度を測定することを含む方法。
【請求項51】
エクジソン受容体シグナル伝達を変更する化合物を設計または選択する方法であって、請求項3から26のいずれか一項による方法によって得られた化合物の生物学的スクリーニングを行い、エクジソン受容体シグナル伝達を変更する化合物の能力を評価することを含む方法。
【請求項52】
前記生物学的スクリーニングに配列番号1の核酸配列を使用する請求項51に記載の方法。
【請求項53】
(a)前記分子または分子複合体を結晶化する段階、
(b)前記結晶化分子または分子複合体からX線回折データ群を収集する段階、
(c)付録Iに記載された構造座標の少なくとも一部をX線回折データに適用して構造が未知の分子または分子複合体の少なくとも一部の3次元電子密度図を作成する段階
を含む構造が未知の分子または分子複合体についての構造情報を得るための分子置換を利用する方法。
【請求項54】
BtEcRの少なくともLBDをコードするヌクレオチド配列を含む単離ヌクレオチド分子であって、前記ヌクレオチド配列は、
(i)配列番号1のヌクレオチド535からヌクレオチド1248までの配列に少なくとも90%の同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、
(ii)厳密性の高い条件で配列番号1のヌクレオチド535からヌクレオチド1248までの配列にハイブリダイズする配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、および
(iii)配列番号2のアミノ酸P179からアミノ酸S416までの配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択される核酸分子。
【請求項55】
少なくともBtEcRのLBDをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列は、
(i)配列番号1と少なくとも90%の同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、
(ii)厳密性の高い条件で配列番号1のヌクレオチドにハイブリダイズする配列を含むヌクレオチド配列またはその相補的ヌクレオチド配列、および
(iii)配列番号2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択される核酸分子。
【請求項56】
前記核酸分子が配列番号1に少なくとも95%同一性を有する配列またはその相補的ヌクレオチド配列を含む請求項54または55に記載の核酸分子。
【請求項57】
前記核酸分子が配列番号1に少なくとも97%同一性を有する配列またはその相補的ヌクレオチド配列を含む請求項54から56のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項58】
前記核酸分子が配列番号1に少なくとも99%同一性を有する配列またはその相補的ヌクレオチド配列を含む請求項54から56のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項59】
前記核酸分子が配列番号1で記載した配列を含む請求項54から56のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項60】
前記核酸分子が配列番号2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む請求項54から56のいずれか一項に記載の核酸分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−501301(P2008−501301A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529452(P2006−529452)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000713
【国際公開番号】WO2004/106374
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】