説明

エステル化デンプン組成物

【課題】熱および圧力により、良好な寸法安定性および物理特性を有する物品を成形することができる分解性ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】好ましくはデンプンの含量に対して少なくとも約50重量%のアミロース含量を有し、少なくとも約1.5の置換度に置換されているエステル化デンプンを含む溶融体から得られる組成物。デンプンエステルは、混合酸無水物とデンプンとの反応によって得られる。デンプンエステルはC1〜C22のエステルであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱および圧力により、良好な寸法安定性および物理特性を有する物品に成形することができる分解性ポリマー組成物に関する。このような組成物は、少なくとも約1.5の置換度を有し、好ましくは少なくとも約50%のアミロース含量を有することが好ましいエステル化デンプンを含む。
【背景技術】
【0002】
デンプンを加圧下に加熱して、造形品の製造に適した溶融体を形成しうることは公知である。このようなデンプンを基材とする造形品は、高い相対湿度条件下での比較的劣る物理特性および比較的低い湿度条件下での比較的高い脆化傾向という欠点を示すことがある。
【0003】
上述のデンプンに代えて、デンプン工業に一般に見られるような置換度の低いとうもろこし(maize)デンプンエステルを用いることによってこのような問題を解消する試みは一般に不成功であり、物理特性のバランスに劣る弱くて脆い親水性の材料が得られることがしばしばであった。本発明の目的は、上述した欠点を少なくとも部分的に解消することにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によると、少なくとも約1.5の置換度を有するエステル化デンプンを含む溶融体から得られる組成物が提供される。
【0005】
エステル化デンプンは、デンプンのC2〜C22エステルからなる群、好ましくはデンプンの酢酸エステル、デンプンのプロピオン酸エステル、デンプンの酪酸エステル、デンプンのペンタン酸エステルおよびデンプンのヘキサン酸エステルならびにそれらの混合物からなる群のデンプンエステルより選択することができる。
【0006】
デンプンエステルは、混合エステル、すなわち、例えば、デンプンと、混合酸無水物または種々の酸無水物の混合物との反応によって得られるような、異なる種類のエステル基が同じ分子に結合しているものであってもよい。そのような混合酸無水物は、例えば、酢酸とプロピオン酸から製造される酸無水物であってもよく、異なる酸無水物の混合物は、例えば、無水酢酸と無水プロピオン酸との混合物であってもよい。
【0007】
本発明に使用されるエステル化デンプンは、それぞれ既知のアミロース含量をもつ、じゃがいも、米、タピオカ、とうもろこし(corn)、えんどう豆、ライ麦、オート麦および小麦から得られるようなデンプンから製造することができる。しかし、デンプンのアミロース含量は、デンプンの含量に対して少なくとも約50重量%であることが好ましい。
【0008】
組成物は、増量剤;充填剤;樹木由来材料;マグネシウム、アルミニウム、ケイ素およびチタンの酸化物;潤滑剤;離型剤;可塑剤;安定剤;着色剤;難燃剤;ホウ素含有化合物;アルカリおよびアルカリ土類金属の塩;熱安定剤;溶融体流動促進剤ならびにそれらの混合物からなる群より選択される1種以上の要素をさらに含むことができる。
【0009】
本発明はさらに、射出成形、圧縮成形、フィルミング、吹込み成形、真空成形、熱成形、押出し、押出し成形、同時押出し、発泡、異型押出しおよびそれらを組み合わせたものを含む処理方法により、物品、例えば、びん、より糸(strand)、シート、フィルム、包装材、管、カップ、棒、積層フィルム、大袋、袋、薬品カプセル、発泡体、粒状物および粉末に成形された、本発明による組成物を提供する。
【0010】
本発明はさらに、溶融体の形態にある本発明の組成物を提供する。
【0011】
本発明はさらに、該溶融体を形成する方法であって、少なくとも約1.5の置換度を有するエステル化デンプンを、任意には可塑剤の存在において高温に加熱し、均質な溶融体が得られるまでそのように加熱した組成物を可塑化することを含む方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、少なくとも約1.5の置換度を有し、好ましくはデンプンの含量に対して少なくとも約50重量%のアミロース含量を有するエステル化のデンプンの、熱可塑性溶融体の成分としての用途を提供する。
【0013】
以下の説明を、付随する実施例および添付の特許請求の範囲と合わせて検討することにより、本発明がさらに理解されよう。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも1.5の置換度を有するエステル化デンプンを含む溶融体から得られる組成物を提供する。
【0015】
エステル化デンプンは、デンプンのC2〜C22エステルからなる群より選択され、好ましくはデンプンのC2〜C8エステルである。
【0016】
エステル化デンプンは、デンプンの酢酸エステル、デンプンのプロピオン酸エステル、デンプンの酪酸エステル、デンプンのペンタン酸エステル、デンプンのヘキサン酸エステルおよび/またはそれらの混合物であることが特に好ましい。
【0017】
もっとも特に好ましいものは、アルキルカルボニル残基中に2個より多い炭素原子を有するエステルである。
【0018】
デンプンエステルは、少なくとも2種の異なるタイプの(すなわち異なる長さの)アルキルカルボニル基を同じ分子中に含む混合エステルであってもよく、そのようなものとして、デンプンと、混合酸無水物または異なる酸無水物の混合物との反応によって得られるような種であってもよい。
【0019】
このような混合デンプンエステルは、同じ分子に結合した酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、ペンタン酸エステル、ヘキサン酸エステル、ヘプタン酸エステルおよびオクタン酸エステルの残基からなる群より選択される少なくとも2種の要素を含むことがもっとも好ましい。
【0020】
特に好ましいデンプンジエステルは、同じ分子に結合した、酢酸エステル基とプロピオン酸エステル基または酢酸エステル基と酪酸エステル基またはプロピオン酸エステル基と酪酸エステル基またはペンタン酸エステル基と酪酸エステル基を含む。
【0021】
デンプンジエステルの場合、デンプンエステルに含まれるエステル基のタイプの比率は大きく変えることができるが、約1:1〜約1:20の範囲にあることが好ましい。
【0022】
エステル化デンプンの総置換度は、置換のタイプに依存せずに、約1.5〜約2.9であり、約1.8〜約2.9であることがより好ましい。最も好ましい置換度は、約1.8〜約2.5である。
【0023】
デンプンエステルの例を表1に示す。
【表1】


*Hylon VIIは、National Starch and Chemical社(米国)が販売する、アミロース含量約70%の高アミロースコーンスターチである。
【0024】
混合デンプンエステルの例を表2に示す。
【表2】

【0025】
発明の範囲内では、エステル化デンプンを製造するのに、市販されているいかなるタイプのデンプン、例えばじゃがいも、米、タピオカ、とうもろこし(corn)、えんどう豆、ライ麦、オート麦、とうもろこし(maize)、大麦および小麦から選択される天然のデンプンを用いてもよい。しかし、デンプンのアミロース含量が少なくとも約50重量%であることが好ましく、これよりも高く、通常はデンプンの含量に対して約70重量%の範囲にあることが好ましい。
【0026】
きわめて適したデンプンは、遺伝的に改質された高アミロースコーンスターチである、National Starch and Chemical社(Finderne Avenue, Bridgewater, New Jersey NJ 08807, USA)から入手しうる、約75%のアミロース含量を有するHylon VIIである。続いて、このようなデンプンを、少なくとも1.5、好ましくは1.8の置換度にエステル化、例えばアセチル化またはプロピオニル化する。
【0027】
特に適したエステル化された高アミロースデンプンは、2.3の置換度にアセチル化またはプロピオニル化、好ましくはプロピオニル化されたHylon VIIである。
【0028】
本発明の組成物中に存在する置換された高アミロースデンプンは、可塑剤が添加されていない場合であっても、それ自体が熱可塑性であるが、組成物は、エステル化デンプンの融解温度を下げ、その加工性を改善しうる可塑剤をさらに含むことが有利である。
【0029】
可塑剤は、2,000未満の分子量を有することができ、分子量は、約100〜約1,000であることが好ましい。
【0030】
いくつかの好ましい可塑剤は、式:
A(COOR)m (OOCR1n (I)
(式中、Aは、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式の残基であり;nは0〜8の整数であり;mは0〜6の整数であり;m+nの和は1〜6の整数であり、RとR1は、互いに独立して、炭素原子1〜20個を有する飽和または不飽和の脂肪族または脂環式の残基である)
によって要約することができる。
【0031】
化合物(I)のある実施態様においては、Aは、炭素原子2〜8個を有する飽和脂肪族残基であり;mは0〜4の整数であり;nは0、1、2または3であり;m+nの和は2〜4であり;RとR1は、互いに独立して、炭素原子1〜6個を有するアルキル残基である。
【0032】
化合物(I)のさらに好ましい実施態様においては、Aは、炭素原子2、3または4個を有する飽和脂肪族残基であり;mは0〜4の整数であり;nは0、1または2であり;m+nの和は2〜4であり;RとR1は、互いに独立して、炭素原子1、2、3または4個を有するアルキル残基である。
【0033】
化合物(I)は、以下の要素の少なくとも1種のエステル誘導体であることができる:
i)HO−CH2−(C(COOH)H)q−CH2OH
ii)HOOC−CH2−(C(COOH)H)r−CH2−COOH
iii)HOOC−CH2−(C(COOH)OOCR2)−CH2−COOH
iv)HOOC−CH2−CH((COOH)(COOH)H)
v)C(CH2COOH)4
vi)(HOCH23C−O−C(CH2OH)3
vii)HO−CH2−(CHOH)q−CH2OH
(式中、qとrは、互いに独立して、1、2、3または4であり、R2はメチルまたはプロピルである)
【0034】
化合物(I)は、
ii)HOOC−CH2−(C(COOH)H)r−CH2−COOH
iii)HOOC−CH2−(C(COOH)(OOCR2))−CH2−COOH
iv)HOOC−CH2−CH((COOH)(COOH)H)
(式中、R2はメチルまたはプロピルである)
からなる群より選択される要素のメチル、エチル、プロピルまたはブチルカルボキシレートであることができる。
【0035】
化合物(I)のある実施態様においては、カルボキシレートは、
HOOC−CH2−(C(COOH)OOCR2)−CH2−COOH
(式中、R2はメチルまたはプロピルである)
のトリエチルまたはトリブチルカルボキシレートであることが好ましく、化合物(I)は、
52−OOC−CH2−(C(COOC25)OOCCH3)−CH2−COOC25
および
94−OOC−CH2−(C(COOC49)OOCCH3)−CH2−COOC49
からなる群より選択されることがもっとも好ましい。
【0036】
そのようなもっとも好ましい化合物は公知であり、例えば、Pfizer社(Fluelastrasse 7, Postfach 2, 8048 Zuerich, Switzerland)により、Citroflex A-2 可塑剤という商品名で販売されている。
【0037】
化合物(I)のもう一つの実施態様は、
HO−CH2−CHOH−CH2−OH
のモノ、ジまたはトリエステル、すなわちグリセロールのモノ、ジまたはトリアセテートの形態を呈する。
【0038】
化合物(I)は、グリセロールのトリアセテート、すなわち
CH3COOCH2−(CH(OOCCH3))−CH2OOCCH3
であることがもっとも特に好ましい。
【0039】
化合物(I)はまた、グリセロールのジアセテートモノプロピオネートもしくはジプロピオネートモノアセテートまたはHO−CH2−C(COOH)H−CH2OHのジアセテートもしくはジプロピオネートであってもよいし、
HOOC−CH2−CH(COOH)COOH
のトリメチルエステルおよびトリプロピルエステルから選択されるものでもよい。
【0040】
さらなる好ましい可塑剤は、一般式:
A(OH)(COOR)(OOCR1 (II)
(式中、Aは、炭素原子2〜8個を有する飽和脂肪族残基であり;xは1または2であり;yは0〜4の整数であり;zは0〜4の整数であり;y+zの和は2〜4であり;RとR1は、互いに独立して、炭素原子1〜6個を有するアルキル残基である)
で示される。
【0041】
化合物(II)のさらに好ましい実施態様においては、Aは、炭素原子2、3または4個を有する飽和脂肪族残基であり;xは1または2であり;yは0〜4の整数であり;zは0〜4の整数であり;y+zの和は2〜4であり;RとR1は、互いに独立して、炭素原子1、2、3または4個を有するアルキル残基である。
【0042】
化合物(II)は、以下の要素の少なくとも1種のエステル誘導体であることができる:
i)HO−CH2−(CHOH)q−CH2OH
ii)HOOC−CH2−(CHOH)r−CH2−COOH
iii)HOOC−CH2−(C(COOH)OH)−CH2−COOH
iv)HOOC−CH2−CH(COOH)OH
v)C(CH2OH)4
vi)(HOCH23C−O−C(CH2OH)3
(式中、qとrは、互いに独立して、1、2、3または4である)
【0043】
化合物(II)は、
ii)HOOC−CH2−(CHOH)r−CH2−COOH
iii)HOOC−CH2−(C(COOH)OH)−CH2−COOH
iv)HOOC−CH2−CH(COOH)OH
からなる群より選択される要素のメチル、エチル、プロピルまたはブチルカルボキシレートであることが好ましい。
【0044】
カルボキシレートは、エチルまたはブチルエステルであることがより好ましく、化合物は、
HOOC−CH2−(C(COOH)OH)−CH2−COOH
のトリエチルまたはトリブチルカルボキシレートであることがもっとも好ましい。
【0045】
したがって、もっとも好ましい式(II)の化合物は、式:
52−OOC−CH2−(C(COOC25)OH)−CH2−COOC25
または
94−OOC−CH2−(C(COOC49)OH)−CH2−COOC49
で示される。
【0046】
そのようなもっとも好ましい化合物は公知であり、例えば、Pfizer社(Fluelastrasse 7, Postfach 2, 8048 Zuerich, Switzerland)により、Citroflex 可塑剤という商品名で販売されている。
【0047】
本発明にしたがって使用するための化合物(II)の他の形態は、
HO−CH2−CHOH−CH2OH
のジアセテートおよびジプロピオネートならびに
HOOC−CH2−CH(COOH)OH
のモノアセテートジメチルエステルおよびモノアセテートジプロピルエステルもしくはモノプロピオネートジプロピルエステルを包含する。
【0048】
可塑剤は、式(I)または(II)のいずれであろうと、組成物の重量に基づいて約3重量%〜約60重量%の量で組成物中に存在する。そのような可塑剤の濃度は、組成物の重量に基づいて約5重量%〜約30重量%であることがより好ましく、約8重量%〜約18重量%であることがもっとも好ましい。
【0049】
他の好適な可塑剤には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソノニル(di-isonyl)フタレート、ジイソデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジメチルシクロヘキシルフタレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクロロエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリアセチルシトレート、トリエチルアセチルシトレート、トリエチレングリコールジ(2−エチルブチレート)、ジアセチン、ブチル=フタリルブチル=グリコレート、アセチル化モノグリセリド、トリエチルシトレート、ジエチルスクシネート、ジメチルセバケート、トリブチルホスフェート、ジ−n−ヘキシルアゼレート、ジ−イソオクチルアゼレート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジカプリルジアジペート、n−エチル−o,p−トルエンスルホンアミド、ジエチレングリコールジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアートおよびそれらの混合物がある。
【0050】
特に好適な可塑剤は、グリセロールトリアセテート、ジメチルセバケート、ジエチルスクシネート、アセチル=トリエチル=シトレートまたはそれらの混合物であり、これらは、デンプンエステルの量に対して約5〜約45重量%の量で組成物中に存在することができる。
【0051】
組成物は、増量剤;充填剤;樹木由来材料;マグネシウム、アルミニウム、ケイ素およびチタンの酸化物;潤滑剤;離型剤;可塑剤;安定剤;着色剤;難燃剤;ホウ素含有化合物;アルカリおよびアルカリ土類金属の塩;熱安定剤;溶融体流動促進剤ならびにそれらの混合物をさらに含むことができる。
【0052】
好ましい熱安定剤および離型剤は、それぞれ、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびステアリルステアロアミドであり、これらは、組成物のデンプンエステル成分に対してそれぞれ約0.01〜約5重量%および約0.01〜約2重量%の量で組成物中に存在することができる。
【0053】
本発明のある実施態様においては、組成物はさらに、じゃがいも、米、タピオカ、とうもろこし(corn)、えんどう豆、ライ麦、オート麦および小麦から選択される天然のデンプンまたは化学的に改質した(エステル化されていない)デンプンを含む。
【0054】
本発明の組成物を得る元の溶融体を製造する方法は、少なくとも約1.5の置換度を有し、好ましくはデンプンの含量に対して少なくとも約50重量%のアミロース含量を有するエステル化デンプンを、任意には可塑剤の存在において加熱することを含む。
【実施例】
【0055】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。
実施例1
置換度2.0のHylon VIIデンプンの酢酸エステル1,000gと、グリセロールトリアセテート300gと、ブチル化ヒドロキシトルエン5gと、ステアリルステアロアミド3gとの配合物を調製した。
【0056】
この混合物を当業者に公知であるようなヘンシェル型の強力ミキサに入れて徹底的にブレンドした。ブレンドしたのち、混合物を少なくとも24時間静置した。
【0057】
次に、このようにしてブレンドした混合物を、素材温度を160℃(320F)に維持しているBerstorff二軸スクリュー押出し機で押出しした。そして、押出し物を冷却し、ペレット化した。
【0058】
次に、このようにして冷却したペレットを、170 CMD Arburg射出成形機のホッパーに入れた。各温度領域は次のように設定した。
領域1:127℃(260F)
領域2:154℃(310F)
領域3:154℃(310F)
そして、約550バールの射出成形圧で引張り試験片を製造した。このようにして製造した試験片は半透明であり、優れた可撓性および靭性を示した。
【0059】
実施例2
配合物が、デンプンエステルの重量に基づいて0.05〜2.0重量%の濃度で熱安定剤(ブチル化ヒドロキシトルエン)を含有するものであったことを除き、上記実施例を繰り返した。同じく改善された特性を有する同様な引張り試験片を製造した。
【0060】
実施例3
可塑剤(グリセロールトリアセテート)の量を組成物中のデンプンエステルの量に対して5重量%から45重量%の範囲で変化させたことを除き、実施例2を繰り返した。同じく改善された特性を有する同様な引張り試験片を製造した。
【0061】
実施例4
離型剤(ステアリルステアロアミド)の濃度を組成物全体の濃度に対して1重量%に増したことを除き、実施例2を繰り返した。
【0062】
実施例5
デンプンの酢酸エステルの置換度を1.5から2.9の範囲で変えたことを除き、実施例1〜4を繰り返した。同じく改善された特性を有する同様な引張り試験片を製造した。
【0063】
上記の実施例は、射出成形、圧縮成形、フィルミング、吹込み成形、真空成形、熱成形、押出し、押出し成形、同時押出し、発泡、異型押出しおよびそれらを組み合わせたものを含む処理方法により、びん、より糸、シート、フィルム、包装材、管、カップ、棒、積層フィルム、大袋、袋、薬品カプセル、発泡体、粒状物および粉末のような物品に成形することができる本発明の組成物の押出し成形能および射出成形能を例示する。
【0064】
本発明を上記の実施例にのみ限定する意図はなく、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を逸脱することなく、それに対する変更およびその変形態様が数多く可能であることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約1.5の置換度を有するエステル化デンプンを含む溶融体から得られる組成物。
【請求項2】
エステル化デンプンが、デンプンのC2〜C22エステルからなる群より選択される特許請求の範囲第1項記載の組成物。
【請求項3】
エステル化デンプンが、デンプンのC2〜C8エステルからなる群より選択される特許請求の範囲第1項または第2項記載の組成物。
【請求項4】
エステル化デンプンが、デンプンの酢酸エステル、デンプンのプロピオン酸エステル、デンプンの酪酸エステル、デンプンのペンタン酸エステルおよびデンプンのヘキサン酸エステルならびにそれらの混合物からなる群より選択される特許請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
デンプンエステルが、そのアルキル炭素残基中に炭素原子を2個より多く有する特許請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
デンプンエステルが、デンプンと、混合酸無水物または種々の酸無水物の混合物との反応によって得られたものである特許請求の範囲第1項〜第5項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
デンプンエステルが、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、ペンタン酸エステル、ヘキサン酸エステル、ヘプタン酸エステルおよびオクタン酸エステルからなる群より選択される少なくとも2種の要素を含む特許請求の範囲第6項記載の組成物。
【請求項8】
デンプンエステルが、ある共通のデンプン分子に結合した酢酸エステル基とプロピオン酸エステル基を含む特許請求の範囲第7項記載の組成物。
【請求項9】
デンプンが、ある共通のデンプン分子に結合した酢酸エステル基と酪酸エステル基を含む特許請求の範囲第7項記載の組成物。
【請求項10】
デンプンが、ある共通のデンプン分子に結合したプロピオン酸エステル基と酪酸エステル基を含む特許請求の範囲第7項記載の組成物。
【請求項11】
デンプンが、ある共通のデンプン分子に結合したペンタン酸エステル基と酪酸エステル基を含む特許請求の範囲第7項記載の組成物。
【請求項12】
一方の要素と他方の要素の比が約1:1である特許請求の範囲第7項〜第11項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
一方の要素と他方の要素の比が約1:2である特許請求の範囲第7項〜第11項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
一方の要素と他方の要素の比が約1:3である特許請求の範囲第7項〜第11項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
一方の要素と他方の要素の比が約1:20である特許請求の範囲第7項〜第11項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
置換度が約1.5〜約2.9である特許請求の範囲第1項〜第15項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
置換度が約1.8〜約2.9である特許請求の範囲第1項〜第16項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
置換度が約1.8〜約2.5である特許請求の範囲第1項〜第17項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
デンプンのアミロース含量がデンプンの含量に対して少なくとも約50重量%である特許請求の範囲第1項〜第18項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項20】
デンプンのアミロース含量がデンプンの含量に対して少なくとも約70重量%である特許請求の範囲第1項〜第19項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項21】
デンプンのアミロース含量がデンプンの含量に対して少なくとも約80重量%である特許請求の範囲第1項〜第20項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
デンプンのアミロース含量がデンプンの含量に対して少なくとも約90重量%である特許請求の範囲第1項〜第21項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項23】
エステル化デンプンが、同様なデンプンでエステル化されていないものの分子量の3倍以内の分子量を有する特許請求の範囲第1項〜第22項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項24】
増量剤;充填剤;樹木由来材料;マグネシウム、アルミニウム、ケイ素およびチタンの酸化物;潤滑剤;離型剤;可塑剤;安定剤;着色剤;難燃剤;ホウ素含有化合物;アルカリおよびアルカリ土類金属の塩;熱安定剤;溶融体流動促進剤ならびにそれらの混合物からなる群より選択される要素をさらに含む特許請求の範囲第1項〜第23項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項25】
可塑剤が、デンプンエステルの量に対して5〜60重量%の量で存在する特許請求の範囲第1項〜第24項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項26】
可塑剤が、式:
A(COOR)m(OOCR1n
(式中、Aは、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式の残基であり;nは0〜8の整数であり;mは0〜6の整数であり;m+nの和は1〜6の整数であり、RとR1は、互いに独立して、炭素原子1〜20個を有する飽和または不飽和の脂肪族または脂環式の残基である)
で示されるものである特許請求の範囲第25項記載の組成物。
【請求項27】
Aが、炭素原子2〜8個を有する飽和脂肪族残基であり;mが0〜4の整数であり;nが0、1、2または3であり;m+nの和が2〜4であり;RとR1が、互いに独立して、炭素原子1〜6個を有するアルキル残基である特許請求の範囲第26項記載の組成物。
【請求項28】
Aが、炭素原子2、3または4個を有する飽和脂肪族残基であり;mが0〜4の整数であり;nが0、1または2であり;m+nの和が2〜4であり;RとR1が、互いに独立して、炭素原子1、2、3または4個を有するアルキル残基である特許請求の範囲第26項記載の組成物。
【請求項29】
可塑剤が、以下の要素:
i)HO−CH2−(C(COOH)H)q−CH2OH
ii)HOOC−CH2−(C(COOH)H)r−CH2−COOH
iii)HOOC−CH2−(C(COOH)OOCR2)−CH2−COOH
iv)HOOC−CH2−CH((COOH)(COOH)H)
v)C(CH2COOH)4
vi)(HOCH23C−O−C(CH2OH)3
vii)HO−CH2−(CHOH)q−CH2OH
(式中、qとrは、互いに独立して、1、2、3または4であり、R2はメチルまたはプロピルである)
の少なくとも1種のエステル誘導体である特許請求の範囲第26項記載の組成物。
【請求項30】
可塑剤が、
i)HOOC−CH2−(C(COOH)H)r−CH2−COOH
ii)HOOC−CH2−(C(COOH)OOCR2)−CH2−COOH
iii)HOOC−CH2−CH((COOH)(COOH)H)
(式中、R2はメチルまたはプロピルである)
からなる群より選択される要素のメチル、エチル、プロピルまたはブチルカルボキシレートである特許請求の範囲第29項記載の組成物。
【請求項31】
可塑剤が、
HOOC−CH2−(C(COOH)OOCR2)−CH2−COOH
(式中、R2はメチルまたはプロピルである)
のトリエチルまたはトリブチルカルボキシレートである特許請求の範囲第30項記載の組成物。
【請求項32】
可塑剤が、
52−OOC−CH2−(C(COOC25)OOCCH3)−CH2−COOC25
および
94−OOC−CH2−(C(COOC49)OOCCH3)−CH2−COOC49
からなる群より選択される特許請求の範囲第31項記載の組成物。
【請求項33】
可塑剤が、
HO−CH2−CHOH−CH2−OH
のモノ、ジまたはトリエステルである特許請求の範囲第26項記載の組成物。
【請求項34】
可塑剤が、グリセロールのトリアセテート、すなわち
CH3COOCH2−(CH(OOCCH3))−CH2OOCCH3
である特許請求の範囲第33項記載の組成物。
【請求項35】
可塑剤が、グリセロールのジアセテートモノプロピオネートもしくはジプロピオネートモノアセテートまたはHO−CH2−C(COOH)H−CH2OHのジアセテートもしくはジプロピオネート、または
HOOC−CH2−CH(COOH)COOH
のトリメチルエステルおよびトリプロピルエステルである特許請求の範囲第26項記載の組成物。
【請求項36】
可塑剤が、式:
A(OH)(COOR)(OOCR1
(式中、Aは、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式の残基であり;xは1または2であり;yは0〜4の整数であり;zは0〜4の整数であり、y+zの和は2〜4であり、RとR1は、互いに独立して、炭素原子1〜6個を有する飽和または不飽和の脂肪族または脂環式の残基である)
で示されるものである特許請求の範囲第25項記載の組成物。
【請求項37】
Aが、炭素原子2、3または4個を有する飽和脂肪族残基であり;xが1または2であり;yが0〜4の整数であり;zが0〜4の整数であり;y+zの和が2〜4であり;RとR1が、互いに独立して、炭素原子1、2、3または4個を有するアルキル残基である特許請求の範囲第36項記載の組成物。
【請求項38】
可塑剤が、以下の要素:
i)HO−CH2−(CHOH)q−CH2OH
ii)HOOC−CH2−(CHOH)r−CH2−COOH
iii)HOOC−CH2−(C(COOH)OH)−CH2−COOH
iv)HOOC−CH2−CH(COOH)OH
v)C(CH2OH)4
vi)(HOCH23C−O−C(CH2OH)3
(式中、qとrは、互いに独立して、1、2、3または4である)
の少なくとも1種のエステル誘導体である特許請求の範囲第36項記載の組成物。
【請求項39】
可塑剤が、
i)HOOC−CH2−(CHOH)r−CH2−COOH
ii)HOOC−CH2−(C(COOH)OH)−CH2−COOH
iii)HOOC−CH2−CH(COOH)OH
からなる群より選択される要素のメチル、エチル、プロピルまたはブチルカルボキシレートである特許請求の範囲第38項記載の組成物。
【請求項40】
可塑剤が、
HOOC−CH2−(C(COOH)OH)−CH2−COOH
のトリエチルまたはトリブチルカルボキシレートである特許請求の範囲第39項記載の組成物。
【請求項41】
可塑剤が、式:
52−OOC−CH2−(C(COOC25)OH)−CH2−COOC25
で示されるものである特許請求の範囲第40項記載の組成物。
【請求項42】
可塑剤が、式:
94−OOC−CH2−(C(COOC49)OH)−CH2−COOC49
で示されるものである特許請求の範囲第31項記載の組成物。
【請求項43】
可塑剤が、
HO−CH2−CHOH−CH2OH
のジアセテートもしくはジプロピオネートまたは
HOOC−CH2−CH(COOH)OH
のモノアセテートジメチルエステルもしくはモノアセテートジプロピルエステルまたはモノプロピオネートジプロピルエステルである特許請求の範囲第36項記載の組成物。
【請求項44】
可塑剤が、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジメチルシクロヘキシルフタレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクロロエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリアセチルシトレート、トリエチルアセチルシトレート、トリエチレングリコールジ(2−エチルブチレート)、ジアセチン、ブチル=フタリルブチル=グリコレート、アセチル化モノグリセリド、トリエチルシトレート、ジエチルスクシネート、ジメチルセバケート、トリブチルホスフェート、ジ−n−ヘキシルアゼレート、ジ−イソオクチルアゼレート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジカプリルジアジペート、n−エチル−o,p−トルエンスルホンアミド、ジエチレングリコールジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアートおよびそれらの混合物からなる群より選択される特許請求の範囲第25項記載の組成物。
【請求項45】
可塑剤が、ジメチルセバケート、ジエチルスクシネート、アセチルトリエチルシトレートまたはそれらの混合物である特許請求の範囲第44項記載の組成物。
【請求項46】
熱安定剤および離型剤が、組成物のデンプンエステル成分に対してそれぞれ約0.01〜約5重量%および約0.01〜約2重量%の量で組成物中に存在する特許請求の範囲第43項、第44項または第45項記載の組成物。
【請求項47】
じゃがいも、米、タピオカ、とうもろこし(corn)、えんどう豆、ライ麦、オート麦および小麦から選択される天然のデンプンまたは化学的に改質した(エステル化されていない)デンプンをさらに含む特許請求の範囲第1項〜第46項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項48】
物品に成形された特許請求の範囲第1項〜第47項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項49】
びん、より糸、シート、フィルム、包装材、管、カップ、棒、積層フィルム、大袋、袋、薬品カプセル、発泡体、粒状物および粉末からなる群より選択される特許請求の範囲第48項記載の物品。
【請求項50】
射出成形、圧縮成形、フィルミング、吹込み成形、真空成形、熱成形、押出し、押出し成形、同時押出し、発泡、異型押出しおよびそれらを組み合わせたものからなる群より選択される、特許請求の範囲第49項記載の物品の製造方法。
【請求項51】
特許請求の範囲第1項〜第50項のいずれか1項記載の組成物を得る元の溶融体。
【請求項52】
少なくとも約1.5の置換度を有するエステル化デンプンを含む溶融体。
【請求項53】
特許請求の範囲第51項または第52項記載の溶融体を形成する方法であって、少なくとも約1.5の置換度を有するエステル化デンプンを、任意には可塑剤の存在において高温に加熱し、均質な溶融体が得られるまでそのように加熱した組成物を可塑化することを含む方法。
【請求項54】
少なくとも1.5の置換度を有するエステル化デンプンの、熱可塑性溶融体の成分としての用途。
【請求項55】
デンプンが、デンプンの含量に対して少なくとも約50重量%のアミロース含量を有する特許請求の範囲第54項記載の用途。
【請求項56】
デンプンエステルが、デンプンと、混合酸無水物または酸無水物の混合物との反応によって得られたものである特許請求の範囲第54項または第55項記載の用途。

【公開番号】特開2006−299271(P2006−299271A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129200(P2006−129200)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【分割の表示】特願平5−517565の分割
【原出願日】平成5年3月26日(1993.3.26)
【出願人】(502425525)ノボン・インターナショナル・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】