説明

エストロゲン受容体モジュレーター

本発明は、化合物及びこの誘導体、これらの合成並びにエストロゲン受容体モジュレーターとしてのこれらの使用に関する。本発明の化合物は、エストロゲン受容体のためのリガンドであり、これで、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ぺージェット病、歯周疾患、軟骨変性、子宮内膜症、子宮平滑筋腫疾患、火照り、LDLコレステロールの増加したレベル、心臓血管疾患、認識機能の悪化、大脳変性異常症、再発狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧症、網膜変性並びに特に乳房、子宮及び前立腺の癌を含む、エストロゲン機能に関連する種々の状態の、治療又は予防のために有用であろう。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
天然に生じるエストロゲン及び合成エストロゲンは、閉経期症候群の軽減、ニキビの治療、月経困難症及び不正子宮出血の治療、骨粗鬆症の治療、多毛症の治療、前立腺癌の治療、火照りの治療並びに心臓血管疾患の予防を含む、広い治療有用性を有する。エストロゲンは非常に治療的に価値があるので、エストロゲン応答性組織に於いてエストロゲン様挙動を模倣する化合物を発見することに、大きな関心が持たれてきた。
【0002】
エストロゲン受容体は、二つの型、即ち、ERα及びERβを有することが見出された。リガンドは、これらの二つの型に異なって結合し、それぞれの型は、結合リガンドに対して、異なった組織特異性を有する。従って、ERα又はERβについて選択的である化合物を有し、従って特定のリガンドに対する組織特異性の程度を比較することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
当分野に於いて必要とされるものは、負の副作用無しに、エストロゲン置換療法と同じ正の応答をもたらす化合物である。また、身体の異なった組織で、選択的効果を発揮するエストロゲン様化合物も必要とされる。
【0004】
本発明の化合物は、エストロゲン受容体のためのリガンドであり、これで、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ぺージェット病、歯周疾患、軟骨変性、子宮内膜症、子宮平滑筋腫疾患、火照り、LDLコレステロールの増加したレベル、心臓血管疾患、認識機能の悪化、大脳変性異常症、再発狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、エストロゲン欠乏から生じる鬱病、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧症、網膜変性並びに特に乳房、子宮及び前立腺の癌を含む、エストロゲン機能に関連する種々の状態の、治療又は予防のために有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エストロゲン機能に関連する種々の状態を治療又は予防するために有用である、化合物及び医薬組成物に関する。本発明の一つの実施態様を、下記の式の化合物並びにこの医薬的に許容される塩及び立体異性体で、エストロゲン関連異常症を治療又は予防することによって例示する。
【0006】
【化3】

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、エストロゲン機能に関連する種々の状態を治療又は予防するために有用である、化合物及び医薬組成物に関する。本発明の一つの実施態様を、下記の式の化合物並びにこの医薬的に許容される塩及び立体異性体によって例示する。
【0008】
【化4】

(式中、B及びDが二重結合であるとき、Rは、水素、ハロ、CHOH、C(1−3)アルキル、C(2−5)アルケニル若しくはC(2−5)アルキニルであり又はA及びCが二重結合であるとき、RはCHであり、
17は、水素、C(1−5)アルキル、C(2−5)アルケニル、C(2−5)アルキニルであり、
19は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、C(1−3)アシル又はシアノであり、
20は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、C(1−3)アシル又はシアノであり、
21は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、C(1−3)アシル又はシアノである)
本発明の一つの実施態様を、式I又はIIの化合物並びにこの医薬的に許容される塩及び立体異性体によって例示する。
【0009】
【化5】

本発明の一クラスに於いて、R19は水素である。
【0010】
本発明の一クラスに於いて、R20は水素である。
【0011】
本発明の一クラスに於いて、R21は水素、ハロ又はメチルである。
【0012】
本発明の一クラスに於いて、Rは、水素、ハロ、CHOH又はメチルである。本発明の一サブクラスに於いて、Rは、水素、クロロ、フルオロ、CHOH又はメチルである。
【0013】
本発明の一クラスに於いて、R17は、水素、メチル、エチル、ビニル又はエチニルである。
【0014】
本発明の非限定例には、これらに限定されないが、
3−メチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン、
3−エチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン、
3−メチリデン−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター4−エン、
3−ヒドロキシメチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン
及びこれらの医薬的に許容される塩が含まれる。
【0015】
本発明の範囲内には、また、前記のような式I又はIIの化合物及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物が含まれる。本発明は、また、医薬的に許容される担体及び本件特許出願に於いて特別に開示された化合物の何れかを含む医薬組成物を包含することを意図する。本発明は、また、本発明の医薬組成物を製造するための方法に関する。本発明は、また、本発明の化合物及び医薬組成物を製造するために有用である方法及び中間体に関する。本発明のこれら及びこの他の側面は、本明細書中に含まれる教示から明らかになるであろう。
【0016】
有用性
本発明の化合物は、エストロゲン受容体の選択的モジュレーターであり、従って、哺乳動物、好ましくはヒトに於ける、エストロゲン受容体機能に関連する種々の疾患及び状態を治療又は予防するために有用である。
【0017】
エストロゲン受容体機能に関連する種々の疾患及び状態には、これらに限定されないが、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ぺージェット病、歯周疾患、軟骨変性、子宮内膜症、子宮平滑筋腫疾患、火照り、LDLコレステロールの増加したレベル、心臓血管疾患、認識機能の悪化、大脳変性異常症、再発狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、エストロゲン欠乏から生じる鬱病、閉経期前後鬱病、分娩後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安、痴呆、強迫性行動、注意欠落異常症、睡眠異常症、過敏性、衝動性、怒り管理、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧症、網膜変性並びに特に乳房、子宮及び前立腺の癌が含まれる。本件特許出願の特許請求の範囲に記載した化合物によってこのような状態を治療する際に、必要な治療量は、特定の疾患に従って変化するであろうし、当業者によって容易に確認することができる。治療及び予防の両方が本発明の範囲によって意図されるが、これらの状態の治療が好ましい用途である。
【0018】
本発明は、また、本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、これが必要である哺乳動物に於いて、エストロゲン受容体モジュレート効果を引き出すための方法に関する。
【0019】
本発明は、また、本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、これが必要である哺乳動物に於いて、エストロゲン受容体拮抗効果を引き出すための方法に関する。エストロゲン受容体拮抗効果は、ERα拮抗効果、ERβ拮抗効果又は混合したERα及びERβ拮抗効果であってよい。
【0020】
本発明は、また、本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、これが必要である哺乳動物に於いて、エストロゲン受容体作動効果を引き出すための方法に関する。エストロゲン受容体作動効果は、ERα作動効果、ERβ作動効果又は混合したERα及びERβ作動効果であってよい。本発明の好ましい方法は、ERβ作動効果を引き出すことである。
【0021】
本発明は、また、本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、これが必要である哺乳動物に於いて、エストロゲン機能に関連する異常症、即ち、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ぺージェット病、歯周疾患、軟骨変性、子宮内膜症、子宮平滑筋腫疾患、火照り、LDLコレステロールの増加したレベル、心臓血管疾患、認識機能の悪化、大脳変性異常症、再発狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、エストロゲン欠乏から生じる鬱病、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧症、網膜変性並びに特に乳房、子宮及び前立腺の癌を治療又は予防するための方法に関する。本発明を例示すると、鬱病の治療又は予防方法である。本発明を例示すると、不安の治療又は予防方法である。本発明を例示すると、火照りの治療又は予防方法である。本発明を例示すると、癌の治療又は予防方法である。本発明を例示すると、心臓血管疾患の治療又は予防方法である。
【0022】
本発明の実施態様は、本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、これが必要である哺乳動物に於いて、特に乳房、子宮又は前立腺の癌を治療又は予防するための方法である。乳癌、子宮癌又は前立腺癌の治療のためのSERMの有用性は、文献に於いて公知である。T.J.Powles、「乳癌予防(Breast cancer prevention)」、Oncologist、2002年、第7(1)巻:第60−4頁;Park,W.C.及びJordan,V.C.、「選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMS)及び乳癌予防に於けるこれらの役割(Selective estrogen receptor modulators(SERMS)and their roles in breast cancer prevention)」、Trends Mol Med.、2002年2月;第8(2)巻:第82−8頁;Wolff,A.C.ら、「早期乳癌の補助治療のためのSERMの使用(Use of SERMs for the adjuvant therapy of early−stage breast cancer)」、Ann N Y Acad Sci.2001年12月;第949号:第80−8頁;Steiner,M.S.ら、「前立腺癌の化学的予防のための選択的エストロゲン受容体モジュレーター(Selective estrogen receptor modulators for the chemoprevention of prostate cancer)」、Urology、2001年4月;第57巻(4補遺1):第68−72頁参照。
【0023】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける転移性骨疾患の治療又は予防方法である。転移性骨疾患の治療に於けるSERMの有用性は、文献に於いて公知である。Campisi,C.ら、「β−インターフェロン及びタモキシフェンの使用による乳癌骨転移の完全な消散(Complete resoultion of breast cancer bone metastasis through the use of beta−interferon and tamoxifen)」、Eur J Gynaecol Oncol、1993年;第14(6)巻:第479−83頁参照。
【0024】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける女性化乳房の治療又は予防方法である。女性化乳房の治療に於けるSERMの有用性は、文献に於いて公知である。Ribeiro,G.及びSwindell R.、「男性乳癌のための佐剤タモキシフェン(Adjuvant tamoxifen for male breast cancer)」、Br J Cancer、1992年;第65巻:第252−254頁;Donegan,W.、「男性乳房の癌(Cancer of the Male Breast)」、JGSM、第3巻、刊行4、2000年参照。
【0025】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける閉経後骨粗鬆症、グルココルチコイド骨粗鬆症、悪性の高カルシウム血症、骨損失及び骨折の治療又は予防方法である。骨粗鬆症、悪性の高カルシウム血症、骨損失又は骨折を治療又は予防するためのSERMの有用性は、文献に於いて公知である。Jordan,V.C.ら、「選択的エストロゲン受容体モジュレーション並びに乳癌、骨粗鬆症及び冠状動脈性心疾患の危険性に於ける減少(Selective estrogen receptor modulation and reduction in risk of breast cancer,osteoporosis and coronary heart disease)」、Natl Cancer Inst、2001年10月;第93(19)巻:第1449−57頁;Bjarnason,NHら、「骨交替に於ける6月及び12月変化は、閉経後骨粗鬆症に於けるラロキシフェン治療の3年間で脊椎骨骨折危険性に於ける減少に関係する(Six and twelve month changes in bone turnover are realted to reduction in vertebral fracture risk during 3 years of raloxifene treatment in postemenopausal osteoporosis)」、Osteoporosis Int、2001年;第12(11)巻:第922−3頁;Fentiman I.S.、「タモキシフェンは、ステロイド誘発骨損失に対して保護する(Tamoxifen protects against steroid−induced bone loss)」、Eur J Cancer、第28巻:第684−685頁(l992年);Rodan,G.A.ら、「骨疾患への治療的アプローチ(Therapeutic Approaches to Bone Diseases)」、Science、第289巻,2000年9月1日参照。
【0026】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける歯周疾患又は歯損失の治療又は予防方法である。哺乳動物に於ける歯周疾患又は歯損失を治療するためのSERMの使用は、文献に於いて公知である。Rodan,G.A.ら、「骨疾患への治療的アプローチ」、Science、第289巻,2000年9月1日、第1508−14頁参照。
【0027】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於けるぺージェット病の治療又は予防方法である。哺乳動物に於けるぺージェット病を治療するためのSERMの使用は、文献に於いて公知である。Rodan,G.A.ら、「骨疾患への治療的アプローチ」、Science、第289巻,2000年9月1日、第1508−14頁参照。
【0028】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける子宮平滑筋腫疾患の治療又は予防方法である。子宮平滑筋腫を治療するためのSERMの使用は、文献に於いて公知である。Palomba,S.ら、「閉経後女性の子宮平滑筋腫へのラロキシフェン治療の効果(Effects of raloxifene treatment on uterine leiomyomas in postmenopausal women)」、Fertil Steril、2001年7月;第76(1)巻:第38−43頁参照。
【0029】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける肥満の治療又は予防方法である。肥満を治療するためのSERMの使用は、文献に於いて公知である。Picard,F.ら、「卵巣摘出したラットに於けるエネルギーバランス及び脂質代謝への、エストロゲン拮抗薬EM−652.HClの効果(Effects of the estrogen antagonist BM−652.HCl on energy balance and lipid metabolism in ovariectomized rats)」、Int J Obes Relat Metab Disord、2000年7月;第24(7)巻:第830−40頁参照。
【0030】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける軟骨変性、慢性関節リウマチ又は骨関節症の治療又は予防方法である。軟骨変性、慢性関節リウマチ又は骨関節症を治療するためのSERMの使用は、文献に於いて公知である。Badger,A.M.ら、「イドキシフェン、新規な選択的エストロゲン受容体モジュレーターは、佐剤誘導関節炎のラットモデルに於いて有効である(Idoxifene, a novel selective estrogen receptor modulator, is effective in a rat model of adjuvant−induced arthritis)」、J Pharmacol Exp Ther、1999年12月;第291(3)巻:第1380−6頁参照。
【0031】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける子宮内膜症の治療又は予防方法である。子宮内膜症を治療するためのSERMの使用は、当分野に於いて公知である。Steven R.Goldstein、「子宮内膜へのSERMの効果(The Effect of SERMs on the Endometrium)」、Annals of the New York Academy of Sciences、第949巻:第237−242頁(200l年)参照。
【0032】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける尿失禁の治療又は予防方法である。尿失禁を治療するためのSERMの使用は、当分野に於いて公知である。Goldstein,S.R.、「骨盤底弛緩のための手術の頻度へのラロキシフェン効果(Raloxifene effect on frequency of surgery for pelvic floor relaxation)」、Obstet Gynecol、2001年7月;第98(1)巻:第91−6頁参照。
【0033】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける心臓血管疾患、再発狭窄症を治療又は予防する、LDLコレステロールのレベルを下げる及び血管平滑筋細胞増殖を阻害する方法である。エストロゲンは、コレステロールの生合成及び心臓血管健康への効果を有すると思われる。統計的に、心臓血管疾患の発生する比率は、閉経後の女性と男性とに於いてほぼ等しい。しかしながら、閉経前の女性は、男性よりも遙かに低い、心臓血管疾患の発生率を有する。閉経後の女性はエストロゲン不足であるので、エストロゲンが、心臓血管疾患を予防する上で有利な役割を果たすと信じられる。このメカニズムはよく理解されていないが、証拠は、エストロゲンが、肝臓に於いて低密度脂質(LDL)コレステロール受容体を上方調節して、過剰のコレステロールを除去することができることを示している。心臓血管疾患、再発狭窄症を治療又は予防する、LDLコレステロールのレベルを下げる及び血管平滑筋細胞増殖を阻害する際のSERMの有用性は、当分野に於いて公知である。Nuttall,MEら、「イドキシフェン:新規な選択的エストロゲン受容体モジュレーターは、骨損失を予防し、及び卵巣摘出したラットに於いてコレステロールレベルを下げ、及び健全なラットに於いて子宮重量を低下させる(Idoxifene: a novel selective estrogen receptor modulator prevents bone loss and lowers cholesterol levels in ovariectomized rats and decreases uterine weight in intact rats)」、Endocrinology、1998年12月;第139(12)巻:第5224−34頁;Jordan,V.C.ら、「選択的エストロゲン受容体モジュレーション並びに乳癌、骨粗鬆症及び冠状動脈性心疾患の危険性に於ける減少」、Natl Cancer Inst、2001年10月;第93(19)巻:第1449−57頁;Guzzo JA.、「選択的エストロゲン受容体モジュレーター−−心臓血管疾患に於けるエストロゲンの新世代?(Selective estrogen receptor modulators−−a new age of estrogens in cardiovascular disease?)」、Clin Cardiol、2000年1月;第23(1)巻:第15−7頁;Simoncini T、Genazzani AR.、「エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーターの直接血管効果(Direct vascular effects of estrogens and selective estrogen receptor modulators)」、Curr Opin Obstet Gynecol、2000年6月;第12(3)巻:第181−7頁参照。
【0034】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける認識機能の悪化又は大脳変性異常症の治療又は予防方法である。モデルに於いて、エストロゲンは、認識機能への有利な効果、例えば、不安及び鬱病を軽減すること並びにアルツハイマー病を治療又は予防することを有することが示された。エストロゲンは、コリン作用機能、ニューロトロフィン及びニューロトロフィン受容体発現を増加させることによって、中枢神経系に影響を与える。エストロゲンは、また、グルタミン作動性(glutamergic)シナプス伝達を増加させ、アミロイド前駆体タンパク質プロセッシングを変え、神経保護を与える。従って、本発明のエストロゲン受容体モジュレーターは、認識機能を改良するため又は穏和な認識悪化、注意欠落異常症、睡眠異常症、過敏性、衝動性、怒り管理、多発性硬化症及びパーキンソン病を治療するために有利であろう。Sawada,H及びShimohama,S、「エストロゲン及びパーキンソン病:神経保護のための新規なアプローチ(Estrogens and Parkinson disease:novel approach for neuroprotection)」、Endocrine、2003年6月;第21(1)巻:第77−9頁;McCullough LD及びHurn,PD、「エストロゲン及び虚血性神経保護:統合概説(Estrogen and ischemic neuroprotection: an integrated view)」、Trends Endocrinol Metab、2003年7月;第14(5)巻:第228−35頁(これらは、全体が参照によりここに組み込まれる)参照。認識機能の悪化を防止するためのSERMの有用性は、当分野に於いて公知である。Yaffe,K.、K.Krueger、S.Sarkarら、2001年、「ラロキシフェンによって治療された閉経後の女性に於ける認識機能(Cognitive function in postmenopausal women treated with raloxifene)」、N.Eng.J.Med.、第344巻:第1207−1213頁参照。
【0035】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける鬱病の治療又は予防方法である。鬱病を予防するためのエストロゲンの有用性は、当分野に於いて報告されている。Carranza−Liram S.、Valentino−Figueroa ML、「閉経後の女性に於ける鬱病のためのエストロゲン治療(Estrogen therapy for depression in postmenopausal women)」、Int J Gynnaecol 0bstet、l999年4月;第65(1)巻:第35−8頁参照。特に、エストロゲン受容体β(ERβ)選択的作用薬は、鬱病、閉経期前後鬱病、分娩後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安、痴呆、強迫性行動を含む不安又は鬱病の治療に於いて、単独剤として又は他の薬剤との組合せで有用であろう。臨床的研究は、鬱病の種々の形態の治療のために、天然のエストロゲン、17β−エストラジオールの効能を示した。Schmidt PJ、Nieman L、Danaceau MA、Tobin MB、Roca CA、Murphy JH、Rubinow DR、「閉経期前後関連鬱病に於けるエストロゲン置換:予備報告(Estrogen replacement in perimenopause−related depression:a preliminary report)」、Am J Obstet Gynecol、第183巻:第414−20頁、2000年;及びSoares CN、Almeida OP、Joffe H、Cohen LS、「閉経期前後の女性に於ける鬱病性異常症の治療のためのエストラジオールの効能:ダブルブラインド、ランダム化、プラシーボ−対照試行(Efficacy of estradiol for the treatment of depressive disorders in perimenopausal women:a double−blind,randomized,placebo−controlled trial)」、Arch Gen Psychiatry、第58巻:第537−8頁、2001年(これらは、参照によりここに組み込まれる)参照。Betheaら(Lu NZ、Shlaes TA、Gundlah C、Dziennis SE、Lyle RE、Bethea CL、「モルモットの中脳中の卵巣ステロイド受容体の局在化に比較した、トリプトファンヒドロキシラーゼタンパク質及びセロトニンへの卵巣ステロイド作用(Ovarian steroid action on tryptophan hydroxylase protein and serotonin compared to localization of ovarian steroid receptors in midbrain of guinea pigs)」、Endocrine、第11巻:第257−67頁、1999年(これは、参照によりここに組み込まれる))は、エストロゲンの抗鬱活性が、背縫線核中に濃縮されたセロトニン含有細胞内でのセロトニン合成の調節により仲介され得ることを示唆した。
【0036】
本発明の他の実施態様は、治療的に有効量の、前記の化合物又は医薬組成物の何れかを哺乳動物に投与することによる、これが必要である哺乳動物に於ける不安の治療又は予防方法である。不安のような、情緒過程のモジュレーションに於けるエストロゲン受容体の寄与は、当分野に於いて報告されている。Krezel,W.ら、「エストロゲン受容体β欠落マウスに於ける増加した不安及びシナプス形成性(Increased anxiety and synaptic plasticity in estrogen receptor beta−deficient mice)」、Proc Natl Acad Sci USA、2001年10月9日;第98(21)巻:第12278−82頁参照。
【0037】
本発明の他の実施態様は、炎症又は炎症性腸疾患の治療又は予防方法である。クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患は、腸が感染され、しばしば再発性腹部痙攣及び下痢を起こすようになる、慢性異常症である。炎症及び炎症性腸疾患を治療するためのエストロゲン受容体モジュレーターの使用は、当分野に於いて報告されている。Harris,H.A.ら、「ヒト疾患の動物モデルに於けるエストロゲン受容体−β作用薬の評価(Evaluation of an Estrogen Receptor−β Agonist in Animal Models of Human Disease)」、Endocrinology、第144巻、第10号、第4241−4249頁参照。
【0038】
本発明の他の実施態様は、高血圧症の治療又は予防方法である。エストロゲン受容体βは、血管機能及び血圧の調節に於いて役割を果たすと報告された。Zhuら、「エストロゲン受容体βが欠落しているマウスに於ける、異常血管機能及び高血圧(Abnormal Vacular Function and Hypeltension in Mice Deficient in Estrgoen Receptor β)」、Science、第295巻、発行第5554号、第505−508頁、2002年1月18日参照。
【0039】
本発明の他の実施態様は、男性及び女性の性機能障害の治療又は予防方法である。性機能障害を治療するためのエストロゲン受容体モジュレーターの使用は、当分野に於いて報告されている。Baulieu,E.ら、「デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、DHEA硫酸及び熟成:スコシオバイオメディカル問題へのDHEAge研究の寄与(Dehydroepiandrosterone(DHEA),DHEA sulfate,and aging:Contribution of the DHEAge Study to a scociobiomedical issue)」、PNAS、2000年4月11日、第97巻、第8号、第4279−4282頁;Spark,Richard F.、「デヒドロエピアンドロステロン:女性のためのスプリングボードホルモン(Dehydroepiandrosterone:a springboard hormone for female sexuality)」、Fertility and Sterility、第77巻、第4号、補遺第4号、2002年4月、第S19−25頁参照。
【0040】
本発明の他の実施態様は、網膜変性の治療又は予防方法である。エストロゲンは、年齢関連黄斑症の進行した型の危険を減少する有利な効果を有することが示された。Snow,K.K.ら、「閉経後女性に於ける、生殖及びホルモン因子と年齢関連黄斑症との間の相関(Association between reproductive and hormonal factors and age−related maculopathy in postmenopausal women)」、Americal Journal of Ophthalmology、第134巻、発行第6号、2002年12月6日、第842−48頁参照。
【0041】
本発明を例示すると、これが必要である哺乳動物に於ける、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ぺージェット病、歯周疾患、軟骨変性、子宮内膜症、子宮平滑筋腫疾患、火照り、心臓血管疾患、認識機能の悪化、大脳変性異常症、再発狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、鬱病、閉経期前後鬱病、分娩後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安、痴呆、強迫性行動、注意欠落異常症、睡眠異常症、過敏性、衝動性、怒り管理、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧症、網膜変性又はエストロゲン依存性癌の治療又は予防のための薬物の製造に於ける、前記の化合物の何れかの使用がある。
【0042】
本発明の化合物は、哺乳動物、好ましくはヒトに、標準的薬学的慣行に従って、単独で又は好ましくは、医薬組成物中で、場合により、公知の佐剤、例えば、ミョウバンと共に、医薬的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせて投与することができる。この化合物は、経口的に又は投与の静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸及び局所経路を含む非経口的に投与することができる。
【0043】
経口使用のための錠剤の場合に、一般的に使用される担体には、ラクトース及びトウモロコシデンプン並びに滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムが含まれ、一般的に添加される。カプセル形での経口投与のために、有用な希釈剤には、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。本発明に従った治療化合物の経口使用のために、選択された化合物は、例えば、錠剤若しくはカプセルの形で又は水溶液若しくは懸濁液として、投与することができる。錠剤又はカプセルの形での経口投与のために、活性薬物成分は、経口で、非毒性で、医薬的に許容される不活性担体、例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどと組み合わせることができ、液体形での経口投与のために、経口薬物成分は、全ての経口で、非毒性で、医薬的に許容される不活性担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。更に、所望する又は必要であるとき、適切なバインダー、滑剤、崩壊剤及び着色剤を、また、この混合物の中に含有させることができる。適切なバインダーには、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコース又はβ−ラクトース、トウモロコシ甘味剤、天然及び合成ゴム、例えば、アラビアゴム、トラガカント又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形中に使用される滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、限定されることなく、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれる。経口使用のために水性懸濁液が必要なとき、活性成分を、乳化剤及び懸濁剤と組み合わせる。所望により、ある種の甘味剤又は矯味・矯臭剤を添加することができる。筋肉内、腹膜内、皮下及び静脈内使用のために、活性成分の滅菌溶液が通常製剤され、この溶液のpHを適切に調節し、緩衝させるべきである。静脈内使用のために、製剤を等張性にするために、溶質の全濃度を制御すべきである。
【0044】
本発明の化合物は、また、小さいユニラメラ小胞体(unilamellar vesicles)、大きいユニラメラ小胞体及びマルチラメラ小胞体のようなリポソーム付与システムの剤形で投与することができる。リポソームは、種々のリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンから形成することができる。
【0045】
本発明の化合物は、また、化合物分子が結合されている個々の担体としてのモノクローナル抗体の使用によって付与することができる。本発明の化合物は、また、目標設定可能な薬物担体として可溶性ポリマーと結合させることができる。このようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルトアミド−フェノール又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジンが含まれてよい。更に、本発明の化合物は、薬物の制御された放出を達成する際に有用である生物分解性ポリマーの種類、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸とのコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリラート及びヒドロゲルの架橋した又は両親媒性ブロックコポリマーに結合させることができる。
【0046】
本発明の化合物は、また、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ぺージェット病、歯周疾患、軟骨変性、子宮内膜症、子宮平滑筋腫疾患、火照り、LDLコレステロールの増加したレベル、心臓血管疾患、認識機能の悪化、大脳変性異常症、再発狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、エストロゲン欠乏から生じる鬱病、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧症、網膜変性並びに特に乳房、子宮及び前立腺の癌を治療又は予防するために有用である公知の薬剤と組み合わせて有用である。本発明で開示された化合物と、本明細書中に開示された疾患を治療又は予防する際に有用である他の薬剤との組合せ物は、本発明の範囲内である。当業者は、含まれる薬物及び疾患の特定の特徴に基づいて、どの薬物の組合せ物が有用であるかを判別することができるであろう。このような薬物には、下記のもの、即ち、有機ビスホスホナート;カテプシンK阻害薬;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害薬;HMG−CoAレダクターゼの阻害薬;インテグリン受容体拮抗薬;PTHのような骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD又は合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI);アロマターゼ阻害薬並びにこれらの医薬的に許容される塩及び混合物が含まれる。好ましい組合せ物は、本発明の化合物及び有機ビスホスホナートである。他の好ましい組合せ物は、本発明の化合物及びカテプシンK阻害薬である。他の好ましい組合せ物は、本発明の化合物及びエストロゲンである。他の好ましい組合せ物は、本発明の化合物及びアンドロゲン受容体モジュレーターである。他の好ましい組合せ物は、本発明の化合物及び骨芽細胞同化剤である。
【0047】
「有機ビスホスホナート」には、これらに限定されないが、化学式:
【0048】
【化6】

(式中、nは0から7の整数であり、A及びXは、独立して、H、OH、ハロゲン、NH2、SH、フェニル、C1−30アルキル、C3−30枝分かれした若しくはシクロアルキル、2個若しくは3個のNを含有する二環式環構造、C1−30置換アルキル、C1−10アルキル置換NH2、C3−10枝分かれした若しくはシクロアルキル置換NH2、C1−10ジアルキル置換NH2、C1−10アルコキシ、C1−10アルキル置換チオ、チオフェニル、ハロフェニルチオ、C1−10アルキル置換フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル及びベンジルからなる群より選択され、但し、nが0であるとき、A及びXの両方はH若しくはOHから選択されず、又はA及びXは、これらが結合している炭素原子若しくは原子群と一緒になって、C3−10環を形成する)
の化合物が含まれる。
【0049】
上記の化学式に於いて、アルキル基は、この化学式のために十分な原子が選択される限り、直鎖、分枝鎖又は環式であってよい。C1−30置換アルキルには、広範囲の種々の置換基が含まれてよく、この限定されない例には、フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾニル、NH2、C1−10アルキル又はジアルキル置換NH2、OH、SH及びC1−10アルコキシからなる群より選択されたものが含まれる。
【0050】
上記の化学式は、また、A又はX置換基についての複雑な炭素環式、芳香族及びヘテロ原子構造を包含することを意図しており、この限定されない例には、ナフチル、キノリル、イソキノリル、アダマンチル及びクロロフェニルチオが含まれる。
【0051】
ビスホスホナートの医薬的に許容される塩及び誘導体も、本発明に於いて有用である。塩の限定されない例には、アルカリ金属、アルカリ性金属、アンモニウム及びモノ−、ジ−、トリ−又はテトラ−C1−30アルキル置換アンモニウムからなる群より選択されたものが含まれる。好ましい塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアンモニウム塩からなる群より選択されたものである。ナトリウム塩が更に好ましい。誘導体の限定されない例には、エステル、水和物及びアミドからなる群より選択されたものが含まれる。
【0052】
本発明の治療剤を参照により本明細書で使用されるとき、用語「ビスホスホナート」及び「ビスホスホナート群」は、ジホスホナート、ビホスホン酸及びジホスホン酸並びにこれらの物質の塩及び誘導体も包含することを意味することに注目すべきである。ビスホスホナート又はビスホスホナート群を参照する際の特別の命名法の使用は、特に示されていない限り、本発明の範囲を制限するように意味されない。
【0053】
ビスホスホナートの限定されない例には、アレンドロナート(alendronate)、シマドロナート(cimadronate)、クロドロナート(clodronate)、エチドロナート(etidronate)、イバンドロナート(ibandronate)、インカドロナート(incadronate)、ミノドロナート(minodronate)、ネリドロナート(neridronate)、オルパドロナート(olpadronate)、パミドロナート(pamidronate)、ピリドロナート(piridronate)、リセドロナート(risedronate)、チルドロナート(tiludronate)及びゾレンドロナート(zolendronate)並びにこれらの医薬的に許容される塩及びエステルが含まれる。特に好ましいビスホスホナートは、アレンドロナート、特に、アレンドロン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム又はアンモニウム塩である。好ましいビスホスホナートを例示すると、アレンドロン酸のナトリウム塩、特に水和したアレンドロン酸のナトリウム塩がある。この塩は、自然数のモル数の水又は非自然数のモル数の水で水和されていてよい。好ましいビスホスホナートを更に例示すると、水和したアレンドロン酸のナトリウム塩、特に水和塩がアレンドロン酸モノナトリウム三水和物であるときである。
【0054】
有機ビスホスホナートの正確な用量は、投与スケジュール、選択された特別のビスホスホナート、哺乳動物又はヒトの年齢、サイズ、性及び状態、治療すべき異常症の特性及び酷度並びにこの他の関連する医学的及び肉体的要因と共に変化するであろう。ヒトについて、ビスホスホナートの有効な経口用量は、典型的に約1.5から約6000μg/kg体重であり、好ましくは約10から約2000μg/kg体重である。代替の用量処方に於いて、ビスホスホナートは、毎日以外の間隔で、例えば、1週1回投与、1週2回投与、2週毎に投与及び1月に2回投与で投与することができる。1週1回投与処方に於いて、アレンドロン酸モノナトリウム三水和物は、35mg/週又は70mg/週の用量で投与されるであろう。ビスホスホナートは、毎月、6月毎、毎年又はもっと少ない頻度で投与することもできる。国際特許出願公開第WO01/97788号明細書(2001年12月27日公開)及び国際特許出願公開第WO01/89494号明細書(2001年11月29日公開)参照。
【0055】
「エストロゲン」には、これらに限定されないが、天然に生じるエストロゲン[7−エストラジオール(E)、エストロン(E)及びエストリオール(E)]、合成共役エストロゲン、経口避妊薬及び硫酸化エストロゲンが含まれる。Gruber CJ、Tschugguel W、Schneeberger C、Huber JC、「エストロゲンの製造及び作用(Production and actions of estrogens)」、N Engl J Med、2002年1月31日;第346(5)巻:第340−52頁参照。
【0056】
「エストロゲン受容体モジュレーター」は、機構に関係なく、受容体へのエストロゲンの結合を妨害又は阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレーターの例には、これらに限定されないが、エストロゲン、プロゲストゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン(droloxifene)、ラロキシフェン(raloxifene)、ラソフォキシフェン(lasofoxifene)、TSE−424、タモキシフェン、イドキシフェン(idoxifene)、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント(fluvestrant)、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]フェニル−2,2−ジメチルプロパノアート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン及びSF646が含まれる。
【0057】
「カテプシンK阻害薬」は、システインプロテアーゼカテプシンKの活性を妨害する化合物を指す。カテプシンK阻害薬の限定されない例は、アクシス・ファーマシューティカルス社(Axys Pharmaceuticals)のPCT公開第WO00/55126号明細書及びメルク・フロスト・カナダ社(Merck Frosst Canada & Co.)及びアクシス・ファーマシューティカルス社のPCT公開第WO01/49288号明細書に記載されている。
【0058】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」は、機構に関係なく、受容体へのアンドロゲンの結合を妨害又は阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレーターの例には、フィナステリド及び他の5α−レダクターゼ阻害薬、ニルタミド(nilutamide)、フルタミド、ビカルタミド(bicalutamide)、リアロゾール(liarozole)及び酢酸アビラテロン(abiraterone acetate)が含まれる。
【0059】
「破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害薬」は、破骨細胞の先端膜上に見出され、骨吸収過程に於いて重要な役割を演じると報告されている、プロトンATPアーゼの阻害薬を指す。このプロトンポンプは、骨粗鬆症及び関連する代謝疾患の治療及び予防のために潜在的に有用である、骨吸収の阻害薬の設計のための誘引標的を表す。C.Farinaら、「新規な骨抗吸収性薬としての破骨細胞空胞性プロトンATPアーゼの選択的阻害薬(Selective inhibitors of the osteoclast vacuolar proton ATPase as novel bone antiresorptive agents)」、DDT、第4巻、第163−172頁(1999年)(これは、全体を参照によりここに組み込まれる)参照。
【0060】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害薬」は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害薬を指す。HMG−CoAレダクターゼのための阻害活性を有する化合物は、当分野で公知のアッセイを使用することによって容易に同定することができる。例えば、米国特許第4,231,938号明細書第6欄及び国際特許出願公開第WO84/02131号明細書第30−33頁に記載又は引用されたアッセイ参照。用語「HMG−CoAレダクターゼ阻害薬」及び「HMG−CoAレダクターゼの阻害薬」は、本明細書で使用するとき同じ意味を有する。
【0061】
使用することができるHMG−CoAレダクターゼ阻害薬の例には、これらに限定されないが、ロバスタチン(メバコール(MEVACOR)(登録商標);米国特許第4,231,938号明細書、同第4,294,926号明細書及び同第4,319,039号明細書参照)、シムバスタチン(simvastatin)(ゾコール(ZOCOR)(登録商標);米国特許第4,444,784号明細書、同第4,820,850号明細書、同第4,916,239号明細書参照)、プラバスタチン(pravastatin)(プラバコル(PRAVACHOL)(登録商標);米国特許第4,346,227号明細書、同第4,537,859号明細書、同第4,410,629号明細書、同第5,030,447号明細書及び5,180,589号明細書参照)、フルバスタチン(fluvastatin)(レスコール(LESCOL)(登録商標);米国特許第5,354,772号明細書、同第4,911,165号明細書、同第4,929,437号明細書、同第5,189,164号明細書、同第5,118,853号明細書、同第5,290,946号明細書及び同第5,356,896号明細書参照)、アトルバスタチン(atorvastatin)(リピトール(LIPITOR)(登録商標);米国特許第5,273,995号明細書、同第4,681,893号明細書、同第5,489,691号明細書及び同第5,342,952号明細書参照)及びセリバスタチン(cerivastatin)(リバスタチン(rivastatin)及びバイコール(BAYCHOL)(登録商標)としても知られている;米国特許第5,177,080号明細書参照)が含まれる。本発明の方法で使用することができるこれら及び追加のHMG−CoAレダクターゼ阻害薬の構造式は、M.Yalpani、「コレステロール低下薬物(Cholesterol Lowering Drugs)」、Chemistry & Industry、第85−89頁(1996年2月5日)の87頁並びに米国特許第4,782,084号明細書及び同第4,885,314号明細書に記載されている。本明細書で使用されるとき、用語「HMG−CoAレダクターゼ阻害薬」には、HMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の、全ての医薬的に許容されるラクトン及び開環酸形(即ち、ラクトン環が開環して遊離酸を形成している)並びに塩及びエステル形が含まれ、従って、このような塩、エステル、開環酸及びラクトン形の使用は本発明の範囲内に含まれる。ラクトン部分とこれの対応する開環酸形の図を構造式I及びIIとして以下に示す。
【0062】
【化7】

開環酸形が存在し得るHMG−CoAレダクターゼ阻害薬に於いて、塩及びエステル形は、好ましくは、開環酸から形成することができ、全てのこのような形は、本明細書で使用されるとき、用語「HMG−CoAレダクターゼ阻害薬」の意味に含まれる。好ましくは、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬は、ロバスタチン及びシムバスタチンから、最も好ましくはシムバスタチンから選択される。本明細書において、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬に関しての用語「医薬的に許容される塩」は、一般的に遊離酸を適切な有機又は無機塩基と反応させることによって製造される、本発明に於いて使用される化合物の非毒性塩、特に、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛及びテトラメチルアンモニウムのようなカチオンから形成されるもの並びにアンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−p−クロロベンジル−2−ピロリジン−1’−イル−メチルベンズイミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジン及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのようなアミンから形成される塩を意味するものとする。HMG−CoAレダクターゼ阻害薬の塩形の別の例には、これらに限定されないが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム塩、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストラート、エシラート、フマル酸塩、グルセプタート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクラート(teoclate)、トシラート、トリエチオジド(triethiodide)及び吉草酸塩が含まれてよい。
【0063】
上記のHMG−CoAレダクターゼ阻害薬化合物のエステル誘導体は、温血動物の血流中に吸収されるとき、薬剤形を放出してこの薬剤が改善された治療上の効能を与えることができるような方式で開裂するとこができるプロドラッグとして作用することができる。
【0064】
前記のように使用するとき、「インテグリン受容体拮抗薬」は、αβインテグリンに対する生理学的リガンドの結合を、選択的に拮抗、阻害又は妨害する化合物;αβインテグリンに対する生理学的リガンドの結合を、選択的に拮抗、阻害又は妨害する化合物;αβインテグリンとαβインテグリンの両方に対する生理学的リガンドの結合を拮抗、阻害又は妨害する化合物及び毛細管内皮細胞上で発現される特定のインテグリン(群)の活性を拮抗、阻害又は妨害する化合物を指す。この用語はまた、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びα6β4インテグリンの拮抗薬も指す。この用語はまた、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの何れかの組合せの拮抗薬も指す。H.N.Lode及び共同研究者は、PNAS USA、第96巻、第1591−1596頁(1999年)に於いて、自発腫瘍転移部の根絶に於ける、抗脈管形成性αvインテグリン拮抗薬と腫瘍−特異抗体−サイトカイン(インターロイキン−2)融合タンパク質との間の相乗効果を観察した。これらの結果は、この組合せ物が、癌及び転移性腫瘍成長の治療のための潜在能力を有することを示唆した。αβインテグリン受容体拮抗薬は、全ての現在利用可能な薬物のものとは区別される新規な機構によって骨吸収を阻害する。インテグリンは、細胞−細胞及び細胞−マトリックス相互作用を仲介するヘテロ二量体トランスメンブラン接着受容体である。α及びβインテグリンサブユニットは、非共役的に相互作用して、二価カチオン依存性方式で細胞外マトリックスリガンドを結合する。破骨細胞上の最も豊富なインテグリンは、αβであり(>10/破骨細胞)、これは、細胞移動及び分極のために重要な細胞骨格組織化に於いて速度制限役割を果たしていると思われる。αβ拮抗効果は、骨吸収の阻害、再発狭窄症の阻害、黄斑変性の阻害、関節炎の阻害並びに癌及び転移成長の阻害から選択される。
【0065】
「骨芽細胞同化薬」は、PTHのような骨を構築する薬物を指す。上皮小体ホルモン(PTH)又はこのアミノ末端フラグメント及びアナログの間欠的投与によって、動物及びヒトに於いて、骨損失が予防され、阻止され、部分的に逆転され、及び骨形成が刺激されることが示された。検討のために、D.W.Dempsterら、「骨への上皮小体ホルモンの同化作用(Anabolic actions of parathyroid hormone on bone)」、Endocr Rev、第14巻、第690−709頁(1993年)参照。研究によって、骨形成を刺激し、これによって骨質量及び強度を増加させる際の上皮小体ホルモンの臨床的利点が示された。結果は、RM.Neerらによって、New Eng J Med、第344巻、第1434−1441頁(2001年)に報告された。
【0066】
更に、PTHrP−(1−36)のような、上皮小体ホルモン関連タンパク質フラグメント又はアナログは、強力な抗カルシウム尿症効果を示し[M.A.Syedら、「上皮小体ホルモン関連タンパク質−(1−36)は、正常なヒトボランティアに於いて、腎臓管カルシウム再吸収を刺激する:悪性の体液抗カルシウム血症の病因論のための暗示」、JCEM、第86巻、第1525−1531頁(2001年)参照]、骨粗鬆症の治療のための同化薬としての可能性を有するであろう。
【0067】
カルシトニンは、主として、カルシウム及びリン代謝に関与することが知られている甲状腺によって作られる32アミノ酸ペプチドである。カルシトニンは、破骨細胞の活性を阻害することによって、骨の吸収を抑制する。従って、カルシトニンは、骨芽細胞を一層効率的に作動させ得、及び骨を形成する。
【0068】
「ビタミンD」には、これらに限定されないが、ビタミンDのヒドロキシル化した生物学的に活性の代謝物、1α−ヒドロキシビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD及び1α,25−ヒドロキシビタミンDの、天然に生じる生物学的に不活性の前駆体であるビタミンD(コレカルシフェロール)及びビタミンD(エルゴカルシフェロール)が含まれる。ビタミンD及びビタミンDは、ヒトに於いて同じ生物学的効能を有する。ビタミンD又はDが循環に入るとき、これは、シトクロムP450−ビタミンD−25−ヒドロキシラーゼによってヒドロキシル化されて、25−ヒドロキシビタミンDを与える。25−ヒドロキシビタミンD代謝物は、生物学的に不活性であり、腎臓内で、シトクロムP450−モノオキシゲナーゼ,25(OH)D−1α−ヒドロキシラーゼによって更にヒドロキシル化されて、1,25−ジヒドロキシビタミンDを与える。血清カルシウムが減少するとき、上皮小体ホルモン(PTH)(これは、カルシウム恒常性を調節し、及び25−ヒドロキシビタミンDの1,25−ジヒドロキシビタミンDへの転化を増加させることによって、血漿カルシウムレベルを増加させる)の産生に於ける増加が存在する。
【0069】
1,25−ジヒドロキシビタミンDは、カルシウム及び骨代謝へのビタミンDの影響に応答性であると考えられる。1,25−ジヒドロキシ代謝物は、カルシウム吸収及び骨格原形を維持するために必要である活性ホルモンである。カルシウム恒常性は、破骨細胞の中に分化させるために単球幹細胞を誘導することにより及びカルシウムを正常な範囲内に維持することにより(これは、骨表面上へのカルシウムヒドロキシアパタイトの堆積により、骨ミネラル化になる)、1,25−ジヒドロキシビタミンDにより維持される。DeGroot L、Besser H、Burger HGら編、「内分泌学(Endocrinology)」第3版、第990−1013頁(1995年)中の、Holick,MF、「ビタミンD光生物学、代謝及び臨床応用(Vitamin D photobiology, metabolism, and clinical applications)」参照。しかしながら、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの上昇したレベルは、血液中のカルシウム濃度の増加及び骨代謝によるカルシウム濃度の異常な制御になり、高カルシウム血症になり得る。1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、また、間接的に、骨代謝に於ける破骨細胞活性を調節し、上昇したレベルは、骨粗鬆症に於ける過剰の骨吸収を増加させると予想され得る。
【0070】
「合成ビタミンDアナログ」には、ビタミンDと同様に作用する、天然に生じない化合物が含まれる。
【0071】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、脳内のセロトニンの量を増加させることによって作用する。SSRIは、米国に於いて鬱病を治療するために10年間成功裏に使用されてきた。SSRIの限定されない例には、フルオキセチン、パロキセチン(paroxetine)、セルトラリン、シタロプラム(citalopram)及びフルボキサミン(fluvoxamine)が含まれる。SSRIは、また、エストロゲン機能に関連する異常症、例えば、月経前症候群及び月経前異型性異常症を治療するために使用されている。Sundstrom−Poromaa I、Bixo M、Bjorn I、Nordh O、「月経前症候群の治療のための抗鬱薬物治療に対するコンプライアンス(Compliance to antidepressant drug therapy for treatment of premenstrual syndrome)」、J Psychosom Obstet Gynaecol、2000年12月;第21(4)巻:第205−11頁参照。
【0072】
本明細書で使用されるとき、用語「アロマターゼ阻害薬」には、アロマターゼを阻害することができる化合物、例えば、市販の阻害薬、例えば、アミノグルテミド(aminoglutemide)(シタンドレン(CYTANDREN)(登録商標))、アナストラゾール(Anastrazole)(アリミデックス(ARIMIDEX)(登録商標))、レトロゾール(Letrozole)(フェマラ(FEMARA)(登録商標))、フォルメスタン(Formestane)(レナトロン(LENATRON)(登録商標))、エキセメスタン(Exemestane)(アロマシン(AROMASIN)(登録商標))、アタメスタン(Atamestane)(1−メチルアンドロスタ−1,4−ジエン−3,17−ジオン)、ファドロゾール(Fadrozole)(4−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)−ベンゾニトリル一塩酸塩)、フィンロゾール(Finrozole)(4−(3−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロピル)−ベンゾニトリル)、ボロゾール(Vorozole)(6−[(4−クロロフェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル]−1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール)、YM−511(4−[N−(4−ブロモベンジル)−N−(4−シアノフェニル)アミノ]−4H−1,2,4−トリアゾール)などが含まれる。
【0073】
固定用量として配合する場合、このような組合せ製品は、本発明の化合物を下記の用量範囲内で使用し、他の薬物的に活性の薬物(群)をこの承認された用量範囲内で使用する。本発明の化合物は、組合せ配合物が不適切であるとき、この代わりに、既知の医薬的に許容される薬物(群)と共に逐次的に使用することができる。
【0074】
本発明の化合物を参照により、用語「投与」及びこの変形(例えば、化合物を「投与すること」)は、化合物又は化合物のプロドラッグを、治療が必要な動物の体内に導入することを意味する。本発明の化合物又はこのプロドラッグが、1種又は2種以上の他の活性薬物(例えば、ビスホスホナートなど)との組合せで提供されるとき、「投与」及びこの変形は、それぞれ、この化合物又はこのプロドラッグと他の薬物との同時及び逐次導入を含むように理解される。本発明には、この範囲内に、本発明の化合物のプロドラッグが含まれる。一般的に、このようなプロドラッグは、インビボで必要な化合物に容易に転化可能である、本発明の化合物の官能性誘導体であろう。従って、本発明の治療方法に於いて、用語「投与すること」は、特別に開示された化合物又は特別に開示されてはいないが、患者に投与された後にインビボで特定される化合物に転化する化合物による、前記の種々の状態の治療を包含するものとする。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための一般的な手順は、例えば、「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」、H.Bundgaard編、Elsevier、1985年(これは、全体を参照によりここに組み込まれる)に記載されている。これらの化合物の代謝物には、生物学的環境の中に本発明の化合物を導入した際に作られる活性種が含まれる。
【0075】
本発明は、また、本明細書に記載した疾患の治療に於いて有用である医薬組成物であって、医薬的に許容される担体又は希釈剤と共に又はこれら無しに、治療的に有効量の本発明の化合物の投与を含む組成物を包含する。本発明の適切な組成物には、本発明の化合物及び薬理学的に許容される担体、例えば、あるpHレベル、例えば7.4の食塩水を含有する水溶液が含まれる。この溶液は、局所大型丸剤注入によって患者の血流の中に導入することができる。
【0076】
本発明に従った化合物がヒト被検者の中に投与されるとき、毎日用量は、通常、個々の患者の年齢、体重及び応答並びに患者の症状の酷度に従って一般的に変化する用量で、処方する医師によって決定されるであろう。
【0077】
一つの代表的適用に於いて、適切な量の化合物が、治療を受けている哺乳動物に投与される。本発明の経口用量は、示された効果のために使用されるとき、約0.01mg/体重kg/日(mg/kg/日)から約100mg/kg/日、好ましくは0.01から10mg/kg/日、最も好ましくは0.1から5.0mg/kg/日の範囲であろう。経口投与のために、組成物は、好ましくは、治療すべき患者に対する用量の症状に合った調節のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100及び500ミリグラムの活性成分を含有する錠剤の形で提供される。医薬には、典型的に、約0.01mgから約500mgの活性成分、好ましくは約1mgから約100mgの活性成分が含有される。静脈内で、最も好ましい用量は、一定速度注入の間に約0.1から約10mg/kg/分の範囲であろう。有利には、本発明の化合物は、1日1回用量で投与することができ又は全1日用量を、1日当たり2回、3回若しくは4回の分割用量で投与することができる。更に、本発明のための好ましい化合物は、当業者に周知の、適切な鼻腔内ビヒクルの局所使用による鼻腔内剤形で又は経皮皮膚パッチの剤形を使用する経皮経路により投与することができる。経皮付与システムの剤形で投与するために、用量投与は、勿論、用量処方を通して間欠的ではなくて連続的であろう。
【0078】
本発明の化合物は、エストロゲン仲介状態を治療するために有用な他の薬物と組み合わせて使用することができる。このような組合せ物の個々の成分は、治療の過程の間に異なった時点で別々に又は分割した若しくは単一の組合せ剤形で同時に投与することができる。従って、本発明は、同時又は交互治療の全てのこのような処方を受け入れるとして理解されるべきであり、用語「投与すること」はこのように解釈されるべきである。本発明の化合物と、カテプシン仲介状態を治療するために有用な他の薬物との組合せ物の範囲には、基本的に、エストロゲン機能に関連する異常症を治療するために有用な全ての医薬組成物との全ての組合せが含まれることが理解されるであろう。
【0079】
従って、本発明の範囲は、有機ビスホスホナート;カテプシンK阻害薬;エストロゲン;エストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害薬;HMG−CoAレダクターゼの阻害薬;インテグリン受容体拮抗薬;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取り込み阻害薬;アロマターゼ阻害薬並びにこれらの医薬的に許容される塩及び混合物から選択された第二薬物と組み合わせた、本件の特許請求の範囲に記載した化合物の使用を包含する。
【0080】
本発明のこれらの及びこの他の態様は、本明細書に含まれる教示から明らかであろう。
【0081】
定義
本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、特定の量で特定の成分を含有する製品並びに特定の量で特定の成分の組合せ物から、直接的に又は間接的に得られる全ての製品を包含することを意図する。
【0082】
本明細書で使用されるとき、用語「治療的に有効量」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって求められている、組織、システム、動物又はヒト内で、生物学的又は医学的応答を引き出す、活性化合物又は医薬の量を意味する。
【0083】
本明細書で使用されるとき、用語、疾患を「治療すること」又は疾患の「治療」には、疾患を予防すること、即ち、疾患に露出されるか若しくは罹りやすくされるが、まだ疾患の症状を経験しない若しくは示さない哺乳動物に於いて、疾患の臨床的症状を発生させないようにすること、疾患を阻害すること、即ち、疾患若しくはこの臨床的症状の発達を抑制するか若しくは減少すること又は疾患を緩和すること、即ち、疾患若しくはこの臨床的症状の軽減を起こすことが含まれる。
【0084】
本明細書で使用されるとき、用語「骨吸収」は、破骨細胞が骨を分解する過程を指す。
【0085】
用語「アルキル」は、直鎖又は分枝鎖非環式飽和炭化水素から1個の水素原子の概念的除去によって誘導される置換性一価基を意味するものとする(即ち、−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH、−C(CHなど)。
【0086】
用語「アルケニル」は、直鎖又は分枝鎖非環式不飽和炭化水素から1個の水素原子の概念的除去によって誘導される置換性一価基を意味するものとする(即ち、−CH=CH、−CH=CHCH、−C=C(CH、−CHCH=CHなど)。
【0087】
用語「アルキニル」は、炭素−炭素三重結合を含有する直鎖又は分枝鎖非環式不飽和炭化水素から1個の水素原子の概念的除去によって誘導される置換性一価基を意味するものとする(即ち、−C≡CH、−C≡CCH、−C≡CCH(CH、−CHC≡CHなど)。
【0088】
用語「アシル」は、上記のような「アルキル」基の結合炭素上の2個の水素を、カルボニル基で置換することによって誘導される置換性一価基を意味するものとする(即ち、−COH、−COCH、−COCHCH、−COCHCHCH、−COCH(CH、−COCHCHCHCH、−COCHCH(CH、−COC(CHなど)。
【0089】
用語「ハロ」は、ヨード、ブロモ、クロロ及びフルオロを含むものとする。
【0090】
用語「置換された」は、記載した置換基による複数度の置換を含むように考えるものとする。複数の置換基部分が開示又は特許請求の範囲に記載されている場合、置換された化合物は、1種又は2種以上の開示又は特許請求の範囲に記載された置換基部分によって、一回又は複数回、独立して置換されていてよい。「独立して置換された」によって、(2個又は3個以上の)置換基が同じであっても異なっていてもよいことが意味される。
【0091】
本発明には、また、式I又はIIの化合物の保護された誘導体が含まれる。例えば、式I又はIIの化合物に、ヒドロキシル又はカルボニルのような基が含有されているとき、これらの基を、適切な保護基によって保護することができる。適切な保護基の包括的リストは、T.W.Greene著、「有機合成に於ける保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)、1981年(この開示は、全体を参照によりここに組み込まれる)に記載されている。式I又はIIの化合物の保護された誘導体は、当分野で公知の方法によって製造することができる。
【0092】
本発明の化合物は、(E.L.Eliel及びS.H.Wilen著「炭素化合物の立体化学(Stereochemistry of Carbon Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社、ニューヨーク、1994年、第1119−1190頁に記載されているような)非対称中心、キラル軸及びキラル面を有していてよく、光学異性体を含み、本発明に含まれる、全ての可能な異性体及びこれらの混合物で、ラセミ化合物、ラセミ混合物及び個々のジアステレオマーとして生じ得る。更に、本明細書に開示された化合物は、互変異性体として存在してよく、一方のみの互変異性構造が示された場合でも、両方の互変異性形が本発明の範囲によって包含されるべきであることが意図される。例えば、下記の化合物Aのための全ての特許請求の範囲は、互変異性構造Bを含み、逆も同じであり、これらの混合物も同様であると理解される。
【0093】
【化8】

全ての変数(例えば、R、R17、R19など)が、何れかの構成中で2回以上出現するとき、それぞれの出現でのこの定義は、全ての他の出現で独立である。また、置換基及び変数の組合せは、このような組合せが安定な化合物になる場合のみ許される。置換基から環系の中に入る線は、示された結合が置換可能な環炭素原子の何れかに結合できることを示している。環系が多環式である場合、結合は、近接する環のみの適切な炭素原子の何れかに結合していることが意図される。
【0094】
本発明の化合物の置換基及び置換パターンは、当業者によって、化学的に安定で及び容易に入手可能な出発物質から当分野で公知の技術により及び下記の方法により容易に合成することができる化合物を提供するように選択することができることが理解される。置換基自体が2個以上の基によって置換されている場合、これらの複数の基は、安定な構造になる限り、同じ炭素又は異なった炭素上に存在していてよいことが理解される。句「1個又は2個以上の置換基によって場合により置換された」は、句「少なくとも1個の置換基によって場合により置換された」と等価であるものとし、このような場合に好ましい実施態様は、0から3個の置換基を有するであろう。
【0095】
本発明の化合物を選択する際に、当業者は、種々の置換基、即ち、R、R17、R19、R20及びR21は、化学構造連結性の周知の原理に従って選択すべきであることが認められるであろう。
【0096】
本発明の代表的化合物は、典型的に、α及び/又はβエストロゲン受容体のためのサブミクロモルアフィニティーを示し、好ましくはβエストロゲン受容体を作用化する。従って、本発明の化合物は、エストロゲン機能に関連する異常症に罹っている哺乳動物を治療する際に有用である。
【0097】
本発明の化合物は、ラセミ形で又は個々のエナンチオマーとして利用可能である。便宜上、幾つかの構造を、単一エナンチオマーとして図で表すが、他の方法で示されていない限り、両方のラセミ形及びエナンチオマー的に純粋な形を含むように意味される。本発明の化合物について、シス及びトランス立体化学が示されている場合、他の方法で示されていない限り、立体化学は相対物として解釈すべきであることが注目されるべきである。例えば、(+)又は(−)指定は、示されるような絶対立体化学を有する、示された化合物を表すと解釈すべきである。
【0098】
ラセミ混合物は、多数の一般的な方法の何れかによって、これらの個々のエナンチオマーに分離することができる。これらには、これらに限定されないが、キラルクロマトグラフィー、キラル補助物質による誘導化及びこれに続くクロマトグラフィー又は結晶化による分離並びにジアステレオマー塩の分別結晶化が含まれる。脱ラセミ化方法、例えば、プロキラル中間体アニオンのエナンチオマー的プロトン化などを使用することもできる。
【0099】
本発明の化合物は、エストロゲン仲介状態を治療するために有用な他の薬物と組み合わせて使用することができる。このような組合せ物の個々の成分は、治療の過程の間に異なった時点で別々に又は分割した若しくは単一の組合せ剤形で同時に投与することができる。従って、本発明は、同時又は交互治療の全てのこのような処方を受け入れるとして理解されるべきであり、用語「投与すること」はこのように解釈されるべきである。本発明の化合物と、エストロゲン仲介状態を治療するために有用な他の薬物との組合せ物の範囲には、基本的に、エストロゲン機能に関連する異常症を治療するために有用な全ての医薬組成物との全ての組合せが含まれることが理解されるであろう。
【0100】
本発明の化合物を使用する投与計画は、患者の種類、種、年齢、体重、性及び医学的状態、治療する状態の酷度、投与の経路、患者の腎機能及び肝機能並びに使用する特定の化合物又はこの塩を含む種々の要因に従って選択される。通常の熟練した医師、獣医又は臨床医は、状態の進行を防ぎ、阻止し又は抑制するために必要な薬物の有効量を容易に決定又は指定することができる。
【0101】
本発明の方法に於いて、本明細書で詳細に記載した化合物は活性成分を形成することができ、典型的に、投与の意図する形態、即ち、経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などに関して適切に選択され、一般的な薬物的慣行と一致している、適切な薬物希釈剤、賦形剤又は坦体(ひとまとめにして本明細書では「坦体」物質として参照する)との混合物で投与される。
【0102】
本発明の化合物の医薬的に許容される塩には、無機酸又は有機酸によって形成されるような、本発明の化合物の一般的な非毒性塩が含まれる。例えば、一般的な非毒性塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などから誘導されるもの並びに有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などから製造される塩が含まれる。上記の医薬的に許容される塩及び他の典型的な医薬的に許容される塩の製造は、Bergら、「薬物的塩(Pharmaceutical Salts)」、J.Pharm.Sci.、1977年、第66巻、第1−19頁(参照によりここに組み込まれる)に更に完全に記載されている。本発明の化合物の医薬的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含有する本発明の化合物から、一般的な化学的方法によって合成することができる。一般的に、塩基性化合物の塩は、イオン交換クロマトグラフィーによって又は遊離塩基を、化学量論的量若しくは過剰の所望の塩形成性無機若しくは有機酸と、適切な溶媒中若しくは種々の溶媒の組合せ物中で反応させることによって製造される。同様に、酸性化合物の塩は、適切な無機又は有機塩基と反応させることによって作製される。
【0103】
本発明の化合物は、適切な材料を使用する下記の一般的な反応図式に従って製造することができ、下記の特別の実施例により更に例示される。しかしながら、実施例に示した化合物は、本発明として考えられる種類のみを形成するとして解釈されるべきではない。当業者は、下記の製造手順の条件及び工程の公知の変形を、これらの化合物を調製するために使用できることを容易に理解するであろう。全ての温度は、他の方法で記載されない限り、セルシウス度である。
【0104】
本発明の化合物は全合成によって製造できるが、市販のステロイドを修正することが、一般的に一層実際的である。デヒドロエピアンドロステロン及びアンドロステンジオールが、特に便利な出発材料であるけれども、他の市販のステロイドを使用することもできる。
【0105】
C−19での官能化は、当業者に公知である多数の方法によって達成することができる。下記の反応図式に示される一つの便利な方法では、C−19での酸化を可能にするための手がかりとして、アンドロステンジオールの5,6−オレフィンが使用される。アンドロステンジオールのC−3及びC−17ヒドロキシル基が、最初に、当業者に周知の標準的手順を使用して、アセタート、シリルエーテル、THPエーテル又は他の適切な保護基として保護される。幾つかの場合には、更なる誘導化のために、一方又は他方が選択的にマスクできないように、これらのヒドロキシル基を異なっているように保護することが必要である。これは、二保護された中間体を選択的に脱保護することにより又は未保護のジオールを選択的に単保護することにより達成できる。5,6−オレフィンの官能化は、保護されたジオール中間体を、水性酸、例えば、過塩素酸などの存在下で、臭素源、例えば、N−ブロモアセトアミド、N−ブロモスクシンイミドなどで処理することによって達成される。この反応の生成物は、C−19メチル基の酸化のための手がかりとして機能する、ステロイド核のC−6にアキシアルヒドロキシル基を有する。これを達成することができる一つの方法は、アルコール、ヨードベンゼンジアセタート及びヨウ素の混合物を、シクロヘキサンのような炭化水素溶媒中で光分解することによるものである。得られた環式エーテルを活性化亜鉛ダストで還元することにより、5,6−二重結合が再生し、19−ヒドロキシステロイドが得られる。19−ヒドロキシステロイドは、当業者に周知の多数の酸化方法によって、重要なアルデヒド中間体Aにまで酸化することができる。この転換を達成するための一つの有用な方法には、ジクロロメタン又はクロロホルムなどのような溶媒中で、モレキュラーシーブスの存在下での、このアルコールと、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP)及びN−メチルモルホリンN−オキシド(NMO)との反応が含まれる。このアルデヒドは、これによって重要な中間体Bを与える、多くのオレフィン化反応、例えば、当業者に周知のウィッティッヒ反応、ペターソン(Peterson)反応又はテッベ(Tebbe)反応のための基体として機能し得る。重要な中間体Bは、下記の反応図式に示されるように、最終生成物に転換させることができる。Bの選択的脱保護によって、中間体Cが得られ、これは、C−3での置換基の導入のために有用である。
【0106】
【化9】

【0107】
C−19での炭素置換基(R19)は、下記の反応図式に示されるように、アルデヒド中間体Aの、炭素求核剤、例えば、グリニャール試薬又はアルキルリチウム試薬との反応によって導入することができる。当業者に周知の多数の利用可能な酸化試薬の1種を使用する、得られる第二級アルコールの次の酸化によって、ケトン中間体Dが得られる。前記のようにするケトンDのオレフィン化によって、C−19置換中間体Eが得られる。
【0108】
【化10】

【0109】
C−3での炭素置換基(R)は、下記の反応図式に示されるようにして導入することができる。当業者に周知の多数の利用可能な酸化試薬の1種を使用する、重要な中間体E(R19=Hであるとき、中間体Cに等しい)の3−ヒドロキシル基の酸化によって、ケトン中間体Fが得られる。この転換のために、オッペナウアー酸化が特に有用である。テトラヒドロフラン(THF)、エーテルなどのような適切な溶媒中で、−78℃から室温の範囲内の温度での、中間体Fの、炭素求核剤(RM)、例えば、グリニャール試薬、アルキルリチウム試薬又は他の有機金属試薬との次の反応によって、C−3に炭素置換基が導入される。最初に形成された付加物Gは、或る場合には、自発的に脱水して、3,5−ジエン中間体Hを形成するであろう。他の場合に、中間体Hへの転化を完結するために、付加物Gを、エタノール、テトラヒドロフランなどのような適切な溶媒中で、室温から還流までの範囲内の温度で、酸、例えば、塩酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などで処理することが必要である。或る例に於いて、脱水がステロイド環にまで外に進行して3−アルキリデン−4−エンを得ることができることが観察され、これらの場合に、酸による処理によって、外部二重結合が一層安定な3,5−ジエン系にまで異性化される。所望により、3−メチリデン−4−エンアナログを、多くのオレフィン化反応、例えば、当業者に周知のウィッティッヒ反応、ペターソン反応又はテッベ反応の一つを使用するケトン中間体Fのオレフィン化によって調製できることに注目されたい。このような3−メチリデン−4−エンアナログは、注意深く脱保護することによって、最終生成物に転化させることができる。保護基Pを除去するための適切な条件を使用する、中間体Hの脱保護によって、下記の反応図式に概略示されるように最終生成物が得られる。
【0110】
【化11】

【0111】
C−17での炭素置換基(R17)は、前記反応図式の生成物(I)の更なる反応によって、下記の反応図式に示されるようにして導入することができる。当業者に周知の多数の利用可能な酸化試薬の1種を使用する、C−17ヒドロキシル基の酸化によって、ケトン中間体Jが得られる。C−17ケトンの、適切な炭素求核剤(R17M)、例えば、グリニャール試薬又はアルキルリチウム試薬との反応によって、C−17置換されたアナログKが得られる。
【0112】
【化12】

【0113】
(実施例)
【実施例1】
【0114】
3β,17β−アンドロスター5−エンジオールジアセタート
【0115】
【化13】

工程1.3β,17β−アンドロスター5−エンジオール
ホウ水素化ナトリウム(3.28g、0.0867モル)を、4回の等部分にして(約2分間離して)、メタノール(870mL)中のデヒドロエピアンドロステロン(25.0g、0.0867モル)の冷(0℃)溶液に添加した。冷浴を取り去り、及び濁った白色混合物を、室温で90分間攪拌した。この反応混合物を氷浴中で冷却し、2N HCl(173mL、0.346モル)を、滴下により添加した。得られた混合物を真空下で濃縮して、湿った白色固体にした。水(500mL)を添加し、及びこの混合物を超音波処理し、濾過した。集めた固体を水(100mL)で洗浄し、及び真空デシケーター内で一晩乾燥して、表題化合物を白色固体として得た。
【0116】
工程2.3β,17β−アンドロスター5−エンジオールジアセタート
無水酢酸(19.5mL、0.2モル)を、ピリジン(200mL)中の3β,17β−アンドロスター5−エンジオール(15.0g、0.05165モル)の溶液に添加し(注:この添加は穏やかに発熱性であった)、次いで4−ジメチルアミノ−ピリジン(0.63g、0.00516モル)を添加した。得られた黄色溶液を、室温で5.5時間攪拌し、次いで溶媒の大部分を真空下で除去した。残留する黄色−白色スラッジを、酢酸エチル(450mL)と1N HCl(450mL)との間に分配させた。有機層を、5%重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、灰白色固体にした。この粗製生成物を、ヘキサン(500mL)から再結晶させて、表題化合物を白色結晶性固体として得た。再結晶からの母液の濃縮によって、灰白色固体を得、この固体を再結晶させて、生成物の第二収穫物を得ることができた。
【実施例2】
【0117】
19−オキソ−3β,17β−アンドロスター5−エンジオールジアセタート
【0118】
【化14】

工程1.5α−ブロモ−6β−ヒドロキシ−3β,17β−アンドロスタータンジオールジアセタート
水(6.8mL)中の70%過塩素酸(0.79mL)の溶液を、ジオキサン(56mL)及び水(3.4mL)中の3β,17β−アンドロスター5−エンジオールジアセタート(4.17g、0.011モル)の溶液に、5℃で添加した。N−ブロモアセトアミド(2.25g、0.016モル)を、少しずつ20分間かけて添加した。得られた混合物を、5℃で30分間攪拌し、次いで室温で30分間攪拌し、次いで、0.5mLの1%チオ硫酸ナトリウム溶液を含有する水の中に注いだ。この懸濁液を、重炭酸ナトリウム飽和水溶液の添加によってpH8に調節し、次いで酢酸エチルで抽出した。有機層を、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、白色フォームを得た。残渣を、より早いバッチからの粗製生成物0.296gと一緒にし、及びアセトン/ヘキサンからの再結晶によって精製して、表題化合物を、約20%の異性体5β,6α副生物を含有する白色固体として得た。
【0119】
工程2.5α−ブロモ−6β,19−エポキシ−3β,17β−アンドロスタータンジオールジアセタート
ヨードベンゼンジアセタート(1.23g、0.0057モル)を、シクロヘキサン(250mL)中の工程1の生成物(1.8g、0.0038モル)の懸濁液に添加し、次いでヨウ素(0.97g、0.0038モル)を添加した。得られた混合物を、200W太陽灯で45分間照射した(注:混合物の温度は、この時間の間に約80℃まで上昇した)。この反応混合物を室温にまで冷却し、及び氷/水の中に注いだ。得られた混合物をエーテルで抽出した。有機層を、2%チオ硫酸ナトリウム水溶液及び水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮した。残渣をヘキサンからの再結晶して、灰白色固体を得た。
【0120】
工程3.3β,17β,19−アンドロスター5−エントリオール 3,17−ジアセタート
テトラヒドロフラン(75mL)及び水(7.5mL)中の、活性化亜鉛ダスト(11.1g、0.17モル;使用前に、HCl水溶液で簡単に処理し、続いて水及びアセトンで逐次的に洗浄し、及び真空下で乾燥することによって活性化した)及び工程2の生成物(1.50g、0.0032モル)の混合物を、65℃で1時間攪拌した。この反応混合物を室温にまで冷却し、及び濾過した。集めた固体をエーテルで洗浄し、次いで一緒にした濾液を、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、薄黄色フォームを得た。残渣を、アセトン/ヘキサンから再結晶して、表題化合物を薄黄色固体として得た。母液の濃縮及び再結晶により、より低い純度の生成物の第二収穫物を、薄黄色固体として得た。
【0121】
工程4.19−オキソ−3β,17β−アンドロスター5−エンジオール ジアセタート
活性化した4Aモレキュラーシーブス(4.2g)を、ジクロロメタン(10mL)中の工程3の生成物(0.500g、0.00128モル)及びN−メチルモルホリンN−オキシド(NMO、2.43g、0.0207モル)の冷(0℃)溶液に添加した。得られた混合物を、0℃で15分間攪拌し、次いで過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(0.030g、0.0000854モル)を添加した。得られた混合物を0℃で90分間攪拌し、次いでエーテルで希釈し、及び濾過した。集めた固体をエーテルで洗浄した。一緒にした濾液を、亜硫酸ナトリウム水溶液及び硫酸銅水溶液で逐次的に洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、白色固体を得た。残渣を、95:5ジクロロメタン:酢酸エチルで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を薄黄色固体として得た。
【実施例3】
【0122】
3,17−ビス−O−t−ブチルジメチルシリル−19−オキソ−3β,17β−アンドロスター5−エンジオール
【0123】
【化15】

工程1.19−オキソ−3β,17β−アンドロスター5−エンジオール
200mLの、メタノール中の10%(w/v)水酸化カリウム中の、19−オキソ−3β,17β−アンドロスター5−エンジオールジアセタート(5.0g、0.0129モル)の溶液を、室温で3時間攪拌した。次いで、溶媒の大部分を真空下で除去し、及び残渣を、酢酸エチルと塩化ナトリウム飽和水溶液との間に分配させた。水性層を酢酸エチル(3×)で抽出し、及び一緒にした有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、表題化合物を白色固体として得た。
【0124】
工程2.3,17−ビス−O−t−ブチルジメチルシリル−19−オキソ−3β,17β−アンドロスター5−エンジオール
無水DMF(135mL)中の、工程1の生成物(4.19g、0.0138モル)、イミダゾール(5.58g、0.082モル)及びt−ブチルジメチルシリルクロリド(10.23g、0.068モル)の溶液を、室温で一晩攪拌し、次いで、氷水と酢酸エチルとの間に分配させた。有機抽出液を、水(3×)、重炭酸ナトリウム水溶液及び塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、白色固体を得、これをヘキサンから再結晶させて、表題化合物を白色固体として得た。
【実施例4】
【0125】
3−オキソ−17−O−t−ブチルジメチルシリル−19−ノル−10β−ビニル−17β−アンドロスター4−エン
【0126】
【化16】

工程1.3,17−ビス−O−t−ブチルジメチルシリル−19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスター5−エンジオール
テッベ試薬の溶液(5.3mLの、トルエン中の0.5M溶液、0.0265モル)を、無水THF(87mL)中の3,17−ビス−O−t−ブチルジメチルシリル−19−オキソ−3β,17β−アンドロスター5−エンジオール(6.93g、0.013モル)の溶液に添加した。この反応混合物を室温で30分間攪拌し、次いでエーテル(200mL)で希釈し、及び氷浴中で冷却し、メタノールを添加して、過剰の試薬を分解させた。硫酸マグネシウムを添加し、及び固体を濾別した。集めた固体を酢酸エチルで洗浄し、及び一緒にした濾液を真空下で濃縮して、赤いゴムにした。この粗製生成物を、100:0.5ヘキサン:酢酸エチルで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た。
【0127】
工程2.17−O−t−ブチルジメチルシリル−19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスター5−エンジオール
テトラブチルアンモニウムフルオリドの溶液(29mLの、THF中の1M溶液、0.029モル)を、無水THF(110mL)中の工程1の生成物(6.74g、0.0127モル)の溶液に添加した。この反応混合物を室温で4時間攪拌し、次いで、氷水と酢酸エチルとの間に分配させた。有機層を、水(4×)及び塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、黄褐色固体にした。この粗製生成物を、4:1ヘキサン:酢酸エチルから1:1ヘキサン:酢酸エチルまでの範囲の勾配溶離でのシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た。
【0128】
工程3.3−オキソ−17−O−t−ブチルジメチルシリル−19−ノル−10β−ビニル−17β−アンドロスター4−エンジオール
トルエン(460mL)中の工程2の生成物(3.73g、0.009モル)及び1−メチル−4−ピペリドン(17mL、0.138モル)の溶液を、還流で、ディーン−シュタルク(Dean−Stark)トラップ下で、70mLの留出物がトラップ内に集められるまで加熱した。留出物を廃棄し、及び反応混合物を室温にまで冷却した。次いで、アルミニウムイソプロポキシド(3.39g、0.0166モル)を添加し、及び反応混合物を再び還流でディーン−シュタルクトラップ下で加熱した。3時間還流した後、反応混合物を室温にまで冷却し、氷/0.3N HCl溶液の中に注ぎ、及び酢酸エチルで抽出した。有機層を、水(3×)及び重炭酸ナトリウム希水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、黄色固体にした。この粗製生成物を、9:1ヘキサン:酢酸エチルで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た。
【実施例5】
【0129】
3−メチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン
【0130】
【化17】

工程1.3−メチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−アンドロスター3,5−ジエン
ヨウ化メチルマグネシウム(0.10mLの3Mエーテル溶液、0.0003モル)を、テトラヒドロフラン(0.2mL)中の3−オキソ−17−O−t−ブチルジメチルシリル−19−ノル−10β−ビニル−17β−アンドロスター4−エンジオール(0.015g、0.000036モル)の冷(0℃)溶液に添加した。得られた混合物を0℃で4時間攪拌し、次いで、塩化アンモニウム飽和水溶液の添加によって、この反応をクエンチした。得られた混合物を酢酸エチル(3×)で抽出し、及び一緒にした抽出液を、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、黄色固体を得た。この粗製生成物を、9:1ヘキサン:酢酸エチルで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た。
【0131】
工程2.3−メチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン
テトラブチルアンモニウムフルオリドの溶液(0.1mLの、THF中の1M溶液、0.0001モル)を、無水THF(0.1mL)中の工程1の生成物(0.010g、0.0000232モル)の溶液に添加した。この反応混合物を室温で一晩攪拌し、次いで、水で希釈し、及び酢酸エチルで抽出した。有機抽出液を、水(4×)及び塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、黄褐色固体にした。この粗製生成物を、4:1ヘキサン:酢酸エチルで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た。
【0132】
選択されたH NMRデータ(600mHz,CDCl,δ):5.75(dd,J=17,10Hz,1H,H19),5.73(brs,1H,H4),5.49(t,J=3Hz,1H,H6),5.18(dd,J=10,2Hz,1H,H20),4.84(dd,J=17,2Hz,1H,H20),3.63(t,J=9Hz,1H,H17),1.67(s,3H,H21),0.69(s,3H,H18)。
LC−MS:m/e281(M−OH)。
【実施例6】
【0133】
3−エチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン
【0134】
【化18】

工程1.3−エチリデン−19−ノル−10β−ビニル−17β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−アンドロスター4−エン
臭化エチルマグネシウム(1.0mLの1M THF溶液、0.001モル)を、テトラヒドロフラン(5mL)中の3−オキソ−17−O−t−ブチルジメチルシリル−19−ノル−10β−ビニル−17β−アンドロスター4−エンジオール(0.050g、0.00012モル)の冷(0℃)溶液に添加した。得られた混合物を0℃で4時間攪拌し、次いで、塩化アンモニウム飽和水溶液の添加によって、この反応をクエンチした。得られた混合物を酢酸エチル(3×)で抽出し、及び一緒にした抽出液を、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、透明なフィルムを得た。NMR分析によって、最初に作製されたアルコールからの水の自発的除去は、この場合に発生しなかったことが示された。この粗製生成物を、THF(10mL)中に溶解させ、及び塩化アンモニウム飽和水溶液で一晩処理した。この反応を、前記のようにして再び起こさせて、黄褐色フィルムを得た。NMR分析によって、最初に作製されたアルコールからの水の自発的除去は、まだ発生しなかったことが示された。この粗製生成物を、THF(5mL)中に再溶解させ、次いでピリジニウムトシラート(0.100g、0.0004モル)を添加した。得られた混合物を室温で一晩攪拌し、次いで7時間還流させ、及び前記のようにして作動させて、黄褐色フィルムを得た。この粗製生成物を、ヘキサンで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た(NMR分析は、オレフィン異性体の混合物を示した)。
【0135】
工程2.3−エチリデン−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター4−エン
テトラブチルアンモニウムフルオリドの溶液(0.6mLの、THF中の1M溶液、0.0006モル)を、無水THF(0.5mL)中の工程1の生成物(0.048g、0.00011モル)の溶液に添加し、この反応混合物を室温で5日間攪拌した。分析TLCは、反応を示さなかった。次いで、ピリジン−フッ化水素脱保護試薬(25gのフッ化水素−ピリジン錯体を12.5mLのピリジン及び27.5mLのTHFと混合することによって製造した試薬混合物1mL)を添加した。この反応混合物を、室温で一晩攪拌し(分析TLCは、完全な反応を示した)、次いで、酢酸エチルで希釈し、及び水(2×)、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び塩化ナトリウム飽和水溶液で逐次的に洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、透明なフィルムにした。この粗製生成物を、4:1ヘキサン:酢酸エチルで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、及びヘキサンからの再結晶して、表題化合物を白色固体として得た(NMR分析は、オレフィン異性体の混合物を示した)。
【0136】
工程3.3−エチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン
工程2の生成物(0.028g、0.00009モル)、エタノール(8mL)及び濃塩酸(0.23mL)の溶液を、還流で2.5時間加熱し、次いで室温にまで冷却し、及び真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル、水で希釈し、及び水(2×)、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び塩化ナトリウム飽和水溶液で逐次的に洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、黄褐色フィルムにした。この粗製生成物を、9:1ヘキサン:アセトンで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を薄黄色ワックス状固体として得た。
【0137】
選択されたH NMRデータ(500mHz,CDCl,δ):5.74(dd,J=17,10Hz,1H,H19),5.73(brs,1H,H4),5.52(t,J=4Hz,1H,H6),5.17(dd,J=10,2Hz,1H,H20),4.84(dd,J=17,2Hz,1H,H20),3.64(t,J=9Hz,1H,H17),0.98(t,J=7Hz,3H,H22),0.70(s,3H,H18)。
LC−MS:m/e295(M−OH)。
【実施例7】
【0138】
3−メチリデン−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター4−エン
【0139】
【化19】

工程1.3−メチリデン−19−ノル−10β−ビニル−17β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−アンドロスター4−エン
ピリジン−フッ化水素脱保護試薬(25gのフッ化水素−ピリジン錯体を12.5mLのピリジン及び27.5mLのTHFと混合することによって調製した試薬混合物1mL)を、テトラヒドロフラン(1mL)中の3−オキソ−17−O−t−ブチルジメチルシリル−19−ノル−10β−ビニル−17β−アンドロスター4−エンジオール(0.163g、0.00039モル)の冷(0℃)溶液に添加した。得られた混合物を、室温で一晩攪拌し、次いで、酢酸エチルで希釈し、及び水(2×)、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び塩化ナトリウム飽和水溶液で逐次的に洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、白色固体にした。この粗製生成物を、4:1ヘキサン:アセトンで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固体として得た。
【0140】
工程2.3−メチリデン−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター4−エン
n−ブチルリチウムの溶液(0.6mLの、ヘキサン中の1.7M溶液、0.001モル)を、無水THF中のメチルトリフェニルホスホニウムブロミド(0.367g、0.001モル)の冷(0℃)懸濁液に添加し、得られた混合物を0℃で45分間攪拌した。工程1の生成物(0.050g、0.167モル)を固体として添加し、得られた混合物を室温で一晩攪拌した。pH7リン酸塩緩衝液を添加することによって、反応をクエンチし、及び得られた混合物を酢酸エチル(3×)で抽出した。一緒にした抽出液を、塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、及び真空下で濃縮して、琥珀色ゴムにした。この粗製生成物を、9:1ヘキサン:アセトンで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサンからの再結晶して、表題化合物を白色固体として得た。
【0141】
選択されたH NMRデータ(600mHz,CDCl,δ):6.02(brs,1H,H4),5.92(dd,J=17,11Hz,1H,H19),5.22(dd,J=11,2Hz,1H,H20),4.93(dd,J=17,2Hz,1H,H20),4.71(brs,1H,H21),4.64(brs,1H,H21),3.63(t,J=9Hz,1H,H17),0.75(s,3H,H18)。
LC−MS:m/e281(M−OH)。
【0142】
エストロゲン受容体結合アッセイ
エストロゲン受容体リガンド結合アッセイは、トリチウム化したエストラジオール及び組換え体発現エストロゲン受容体を使用する、シンチレーション近接アッセイとして設計される。全長組換え体ヒトER−α及びER−βタンパク質が、バキュロウイルス発現システム内で産生される。ER−α及びER−β抽出物を、6mMのα−モノチオールグリセロールを含有するリン酸塩緩衝食塩水中で1:400で希釈する。希釈した受容体調合剤の200μLアリコートを、96ウエル・フラッシュプレート(Flashplate)のそれぞれのウエルに添加する。プレートをサランラップ(Saran Wrap)で覆い、及び4℃で一晩インキュベーションする。
【0143】
翌朝、10%のウシ血清アルブミンを含有するリン酸塩緩衝食塩水の20μLアリコートを96ウエル・プレートのそれぞれのウエルに添加し、4℃で2時間インキュベーションする。次いで、プレートを、20mMのトリス(pH7.2)、1mMのEDTA、10%のグリセロール、50mMのKCl及び6mMのα−モノチオールグリセロールを含有する緩衝液200μLで洗浄する。これらの受容体被覆プレート内でアッセイを行うために、96ウエル・プレートのそれぞれのウエルに、同じ緩衝液178μLを添加する。次いで、このプレートのそれぞれのウエルに、H−エストラジオールの10nM溶液20μLを添加する。
【0144】
試験化合物を、0.01nMから1000nMまでの濃度の範囲に亘って評価した。試験化合物貯蔵溶液は、アッセイに於ける試験のために所望される最終濃度の100倍で、100%DMSO中で作らなくてはならない。96ウエル・プレートの試験ウエル内のDMSOの量は、1%を超えてはならない。アッセイ・プレートへの最終添加は、100%DMSO中で作った試験化合物の2μLアリコートである。プレートを密封し、及びこれらを室温で3時間平衡化させる。96ウエル・プレートをカウントするために取り付けられたシンチレーションカウンター内で、プレートをカウントする。
【0145】
実施例1から3の化合物は、IC50=75から>10000nmの範囲内のエストロゲン受容体α−サブタイプに対する結合アフィニティー及びIC50=5から250nmの範囲内のエストロゲン受容体β−サブタイプに対する結合アフィニティーを示す。
【0146】
医薬組成物
本発明の特別の実施態様として、25mgの実施例1の化合物を、サイズ0、硬質ゼラチンカプセルを充填するために、580から590mgの全量を与えるために十分な微細に分割したラクトースと共に配合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、B及びDが二重結合であるとき、Rは、水素、ハロ、CHOH、C(1−3)アルキル、C(2−5)アルケニル若しくはC(2−5)アルキニルであり又はA及びCが二重結合であるとき、RはCHであり、
17は、水素、C(1−5)アルキル、C(2−5)アルケニル、C(2−5)アルキニルであり、
19は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、C(1−3)アシル又はシアノであり、
20は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、C(1−3)アシル又はシアノであり、
21は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、C(1−3)アシル又はシアノである)
の化合物又はこの医薬的に許容される塩若しくは立体異性体。
【請求項2】
式I又はII:
【化2】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、水素、ハロ、CHOH又はメチルであり、
17が、水素、メチル、ビニル又はエチニルであり、
19が、水素であり、
20が、水素であり、及び
21が、水素、ハロ又はメチルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
3−メチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン、
3−エチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン、
3−メチリデン−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター4−エン、
3−ヒドロキシメチル−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスター3,5−ジエン
又はこれらの医薬的に許容される塩若しくは立体異性体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ぺージェット病、歯周疾患、軟骨変性、子宮内膜症、子宮平滑筋腫疾患、火照り、心臓血管疾患、認識機能の悪化、大脳変性異常症、再発狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、鬱病、閉経期前後鬱病、分娩後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安、痴呆、強迫性行動、注意欠落異常症、睡眠異常症、過敏性、衝動性、怒り管理、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧症、網膜変性又はエストロゲン依存性癌の治療のために有用である薬物の製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項6】
疾患が火照りである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有機ビスホスホナート;カテプシンK阻害薬;エストロゲン;エストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害薬;HMG−CoAレダクターゼの阻害薬;インテグリン受容体拮抗薬;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取り込み阻害薬;アロマターゼ阻害薬又はこれらの医薬的に許容される塩若しくは混合物から選択された他の薬物を更に含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
薬物が有機ビスホスホナートである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
有機ビスホスホナートがアレンドロナートである、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物及び有機ビスホスホナート;カテプシンK阻害薬;エストロゲン;エストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPアーゼの阻害薬;HMG−CoAレダクターゼの阻害薬;インテグリン受容体拮抗薬;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取り込み阻害薬;アロマターゼ阻害薬又はこれらの医薬的に許容される塩若しくは混合物から選択された他の薬物を含有する医薬組成物。

【公表番号】特表2008−502725(P2008−502725A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527629(P2007−527629)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/019870
【国際公開番号】WO2005/123757
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】