説明

エチレン−ビニル酢酸共重合体及び接着性樹脂製の医療用接着性エマルジョン

【課題】できる限り化学的に不活性であり、特に医薬用活性物質に対して不活性な感圧接着剤組成物を供する。
【解決手段】エチレン−ビニル=アセタート共重合体に基づいた、医療の目的のための圧力感受性の接着剤において、重合体成分(A)として:エチレン−ビニル=アセタート共重合体又は少なくとも二つのエチレン−ビニル=アセタート共重合体の組み合わせ、及び成分(B)として:作用物質又は他の補助物質無しの前記成分(A)及び(B)の和に相対的な、55重量%までの部分における接着剤樹脂又は接着剤樹脂の組み合わせを含有することを特徴とする、圧力感受性の接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療応用目的に適した、エチレン−ビニル酢酸共重合体をベースに製造される感圧粘着剤及び接着性樹脂に係り、特に、感圧接着性皮膚接着層部材に関する。本発明はさらに、感圧接着層及び活性物質含有感圧接着マトリックス層に関するとともに、上記感圧接着剤を含有する経皮治療システムに関する。加えて本発明は、上記感圧接着剤の製造方法、感圧接着層の製造方法及び、上記感圧接着剤を使った経皮治療システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)は、自己接着性皮膚接触層を製造するための医療分野に頻繁に利用され、絆創膏や経皮治療システム(TTS)などに利用されている。一般に、このような感圧接着剤は、短時間に若干の圧力を加えると、即座にかつ永続的に皮膚に接着する高粘性液体とみなすことができる。このような粘弾性ゆえ、この感圧接着層は、身体の様々な皮膚表面に非常によく適合することができる。現在最も頻繁に使用されている感圧接着剤は、一般的には、合成ゴム重合体、ポリアクリレート、又はシリコンをベースにしている。
【0003】
経皮治療システムにおいて、感圧接着剤は、頻繁にかつ同時に活性物質貯蔵庫として機能する。この場合、接着性という機能とは別に、感圧接着剤は、活性物質貯蔵庫の機能を有すると共に、同時に、活性物質の放出を制御する機能も有する(「マトリックス制御TTS」)。
【0004】
貯蔵機能に関し、使用される感圧接着剤は、用いられる活性物質に対して、柔軟性を有すべきであることを念頭におくべきである。特に、感圧接着剤は、活性物質の劣化及び分解を導くべきではなく、かつ、感圧接着剤と活性物質との化学的相互作用は、できるだけ最小限にすべきである。加えて、活性物質貯蔵庫における接着力は、大容量の活性物質が導入された場合であっても、逆行的に影響を及ぼしてはならないことが求められる。
【0005】
市販で利用可能な「マトリックス制御」TTSに関するこの種の感圧接着剤において公知の組成物を見ると、ポリアクリレートをベースにした感圧接着剤は、上記の要件を最もよく満たすものである。これらの非常に良好な自己接着性とは別に、アクリレートは、シリコンや合成ゴム重合体と比較して、高い負荷容量を有している。またその利点には、アクリレートをベースにした感圧接着層に関して、相対的に皮膚刺激性が低いということである。しかしながら、ポリアクリレート感圧接着剤において、共重合体における極性または官能基の存在は、不利な効果を有し;特に塩基性の場合、加水分解に不安定な活性物質化合物において、化学的相互作用の結果、安定性及び/又は放出に関する問題が生じる可能性がある。ポリアクリレートを感圧接着性活性物質マトリックスとして使用した場合,更なる問題は、「コールドフロー(cold flow)」(感圧粘着剤の不十分な粘着力に起因して、保存中、パンチされたTTSの横方向のマージンにおいて活性物質マトリックスから離れて、感圧接着剤が横方向に流れ、出現する現象)を阻止するために、しばしば、化学的架橋物質を加える必要があるということである。しかしながら、この架橋物質は、しばしば、含有している活性物質との化学的相互作用に関する安定性の問題を生じる;加えて、チタンを含有する架橋物質を使用した場合、皮膚に刺激を起こす可能性がある。
【0006】
その他の種類のTTSでは、エチレン及びビニル酢酸との共重合体(EVATANE(登録商標)から市販されているEVA copolymers)が活性物質貯蔵庫のベース材料として使用されており、例えば、活性物質としてニコチンを含有する「Nicoderm CQ」や、テストステロンを含有する「Testoderm 15」などのTTSがある。しかしながら、EVA共重合体は自己接着性を有しておらず、つまり、これらは感圧接着性を有しておらず、TTSが皮膚に接着する場合、追加的な感圧接着層を用いなければならない。このようなTTSでは、EVA共重合体は、さらに、活性物質の放出を制御するために、制御膜として機能するメンブレンの形で使用されている(「メンブレン制御TTS」)。この種のTTSでは、薬物送達制御は、薬物に特異的な孔径によって達成されるか(微小孔制御メンブレン)、あるいは、メンブレンの厚みにより達成されるか、あるいは、メンブレンの組成、例えばEVA制御メンブレンなど、によって達成される。しかしながら、EVA制御メンブレンもまた、EVAをベースにした活性物質貯蔵庫のように、感圧接着特性を有していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明における課題は、良好な感圧接着特性を有し、できる限り化学的に不活性であり、特に医薬用活性物質に対して不活性な感圧接着剤組成物を供することであり、公知のポリアクリレート系感圧接着剤において、上述の感圧接着特性を有する組成物を供することである。同時に、内部粘着力を増大するために要求されるのは、架橋物質を加える必要がないことである。さらに、重合体における極性部分又は官能基部分は、同時に最小限にすべきである。この感圧接着性組成物は、さらに、活性物質放出の制御を可能にしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、この課題は、請求項1に従った接着性樹脂を含有するエチレン−ビニル酢酸(EVA)共重合体をベースにした感圧接着剤により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明における再結晶化を起こしていないマトリックスに関する浸透測定結果を示しており、ノルエシステロン酢酸(略語:「NeA」)の蓄積浸透値(accumulated permeation value)の比較を示している。
【図1B】図1Aに対応した、本発明におけるマトリックスに関する浸透測定結果を示しており、ここでは、17−β−エストラジオール(略語:「Oes」)に関する蓄積浸透値を比較している。
【図2A】ノルエシステロン酢酸に関する蓄積浸透値の比較を示している。
【図2B】17−β−エストラジオール(略語:「Oes」)に関する蓄積浸透値を示している。
【図3】本発明のマトリックスに関する、参照例との浸透測定比較結果を示している。
【図4】EVA共重合体及び接着性樹脂をベースにした本発明におけるTTSに関して測定した接着力値の比較を示しており、比較には、アクリレートをベースにした参照TTS(Evorel Conti(登録商標))を用いた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、本発明における感圧接着剤は、エチレン−ビニル共重合体又は少なくとも二種のエチレン−ビニル共重合体である重合体組成物(A)、及び接着性樹脂又は接着性樹脂の組合せである組成物(B)を含有し、活性物質又はその他の補助物質を含まない組成物(A)及び(B)の総量に相対して、(つまり、純粋な感圧接着剤総量に相対して)組成物Bは、55重量%含まれている。
【0011】
本発明は、EVA共重合体が、加熱下、適切な有機溶媒を使って溶解された場合、あるいは、その後接着性樹脂が、特定の混合比率で加えられた場合に、新規の感圧性接着剤が得られるという驚くべき知見に基づいており;ここに、架橋物質又は可塑剤を加える必要はない。
【0012】
この関係において、十分な感圧接着特性を得るために、接着性樹脂添加物の60重量%以上を必要とする合成ゴム重合体(例えば、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体又はスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体)をベースにした感圧接着剤に比較して、この接着性樹脂部分は、相対的に少量であり、上記の接着樹脂における高い含有量は、皮膚に対して刺激をもたらす。
【0013】
対照的に、本発明における感圧接着剤においては、要求される感圧接着特性を達成するために、(活性物質又はその他の補助物質を含まない組成物A及びBのみの総量に相対して)接着樹脂の含量は多くて55重量%を必要とするのみであり、皮膚に対する低い刺激性を保つことが可能である。
【0014】
特に好ましいのは、接着性樹脂が45以上55重量%以下含まれていることであり;この組成の接着剤は、特に良好な感圧接着特性を有する。しかしながら、この接着樹脂部分(組成物B)は、少なくとも25重量%、さらに少なくとも30重量%含まれる必要がある。
【0015】
接着樹脂添加物には、当業者公知の水素化コロフォニックアシッド誘導体(hydrogenated colophonic acid derivatives)がある。水素化コロフォニックアシッド及びその誘導体は、ベース材料として感圧接着剤パッチにしばしば使用されている。コロフォニックアシッドは、松やにの天然物中に存在しており、針葉樹のバルサムを蒸留するか、主に亜熱帯地中海性季候帯に存在する針葉樹の切り株から抽出することにより得られる。
【0016】
酸素の影響からこれら物質を防御し、かつ化学的な不活性特性を増加するために、上記のコロフォニックアシッドは、本発明における感圧接着剤を製造するために、部分的あるいは完全に水素化されて、好ましく使用される。また、上記コロフォニックアシッドは、アルカリでの安定性を向上し化学的な不活性特性を増加させるため、これら化合物のカルボキシル基はエステル化される。これに関連して特に好ましいのは、水素化コロフォニックアシッドのメチルエステル体、グリセロールエステル体、ペンタエリスリトールエステル体、マレイン酸改変ペンタエリスリトールエステル体、又はトリエチレングリコールエステル体である。これらとは別に、皮膚への耐性を有する水素化コロフォニー(hydrogenated colophony)の誘導体を使用してもよく、それと同時に、非水素化コロフォニックアシッドのエステル体又は非水素化コロフォニーを使用してもよい。
【0017】
組成物Aに関し、好ましく考慮される上記のエチレン−ビニル酢酸共重合体は、モノマー組成に相対して、28重量%という高いビニル酢酸組成比を含有する。エチレンに比較して、非常に高い極性を有するビニル酢酸モノマーを導入することにより、ガラス転移温度を軽減させるとともに、EVA共重合体における結晶部分の軽減をもたらす。さらに、粘性が低下し、膨潤性が増大するとともに、適当な溶媒と混合した上述の接着性樹脂又はその融解物を伴った上述のEVA共重合体は、接着性を有し、容易に加工可能(つまり、液体への加工又は延伸可能)な感圧接着剤を形成することができる。
【0018】
最も良好な結果が得られるのは、組成物(A)及び(B)の総量に相対して、EVA共重合体の分量が、46から55重量%の範囲にあるときである。好ましくは、組成物(A)の分量が、少なくとも25重量%、特に、少なくとも15重量%のときである。
【0019】
本発明における感圧接着剤は、上述したように、感圧接着剤のベース組成物を構成するEVA共重合体及び接着性樹脂をベースにして製造される。感圧接着層又は活性物質含有層を製造するために、活性物質とともに、例えば、皮膚浸透促進物質などの添加物を加えることが可能である。好ましくは、活性物質含有層又は活性物質マトリックスにおける感圧接着剤の分量は、少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも75重量%である。
【0020】
一方、本発明における感圧接着剤に関し、接着性又は粘着性バランスを調節するために可塑剤又は架橋剤を添加する必要はなく;したがって、一つの好適実施例によれば、このような添加物は利用されていない。好ましくは、本発明の感圧接着剤には、ポリアクリレートなどその他の感圧接着剤は添加されていない。
【0021】
本発明の感圧接着剤は、皮膚への感圧接着性を有する、活性物質を含有しない、又は活性物質を含有する層を製造するために、多くの方法において使用可能である。これらは、特に、ヒト用医薬品又は動物用医薬品の分野において、例えば、経皮治療システムの組成物として、活性物質を放出するための活性物質を含有する感圧接着層又は接着マトリックスを製造するために適している。このこととは別に、これら感圧接着剤は、接着性を有する服飾品、固定性パッチ、又は自己接着性電極の製造にも使用され、あるいは、本質的に接着性を有しないTTSにおける感圧接着層の製造にも使用される。
【0022】
有利な特性及び十分な接着性ゆえ(図4)、本発明における感圧接着剤は、経皮治療システムにおける活性物質マトリックスの製造に特に適している。
【0023】
好ましくは、上記システムは、実質的に活性物質を透過しないバック層及び事実上活性物質を含有するマトリックス層とともに、分離可能な保護層から構成される単一層マトリックスシステムとして構成される。この方式にてデザインされたTTSマトリックスシステムは、相対的にシンプルかつ経済的に製造できる点で際立っている。さらに好ましくは、活性物質マトリックスは単一相システムである。
【0024】
好ましくは、本発明におけるTTSは、感圧接着層又は活性物質マトリックスに相対して、0.1から50重量%の範囲で活性物質を含有している。さらなる好適実施例によると、TTSにおける接着性樹脂は、感圧接着層又は活性物質マトリックスに相対して、50重量%以下、特に好ましくは39から49重量%含まれている。
【0025】
均一性を有し、単一相を有する感圧接着マトリックスを形成するために、EVA共重合体及び接着性樹脂を組み合わせることにより、一つのシステムにて、マトリックス制御及びメンブレン制御貯蔵システムの利点を組み合わせることが可能となる。このことは、本技術に関する本質的な利点を示している。というのも、メンブレン制御システムにおける制御メンブレンは、(接着力の欠除に起因して)、通常、製造工程をより複雑にする付加的な感圧接着層または感圧接着マージン(積層されたパッチ)を添加する必要があるからである。
【0026】
この関係において、特に有利なのは、EVA共重合体(組成物A)におけるビニル酢酸又はエチレンを種々選択することにより、活性物質の拡散、特に放出を制御することが可能になることである(図1A,1B,2A,2B参照)。
【0027】
本発明における感圧接着剤のこれらの特性ゆえ、公知の制御メンブレンに比較して、感圧接着性を有する制御メンブレンを製造するために、これらの接着剤を使用することが可能である。このような感圧接着EVA制御メンブレンまたは制御層は、マトリックス自体に接着性を有しない場合、メンブレン制御貯蔵システムでの制御メンブレンとして、あるいはマトリックス制御TTSでの付加的な皮膚スプレッド(皮膚接触層)として使用してもよい。
【0028】
したがって、本発明における感圧接着剤は、TTSとともに、制御メンブレン又は制御層における活性物質含有層又は活性物質を含有しない層の製造に使用可能である。したがって、本発明は、活性物質含有マトリックス又は活性物質貯蔵庫、バック層、及び剥離可能バック層で構成される本質的に公知の構造を有するTTSに関連しており、これらTTSは、本発明における感圧接着剤から製造されるか、あるいは上記の感圧接着剤を含有する、少なくとも一つの活性物質含有層又は活性物質不含層を有している。
【0029】
本発明におけるTTSの構造は、活性物質マトリックスとは別に、活性物質非透過性バック層及び同様の活性物質非透過性剥離可能防護フィルムで構成されている。バック層として適当なものは、第一に、特定の強度によって特徴づけられるすべてのポリエステルだけでなく、その他の皮膚への耐性を有するプラスティックでもよく、例えば、ポリビニルクロライド、エチレンビニル酢酸、ビニル酢酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース誘導体、及びその他のものでもよい。個々の場合、バック層には、追加層を設けてもよく、例えば、金属による蒸着物や、シリコンジオキシド、アルミニウムオキシド、又は当業者公知の同様の物質などその他の拡散防止添加物を用いてもよい。
【0030】
剥離可能防護層に関し、バック層に使用したものと同様の材料を用いてもよく、この膜は、シリコン化などの適当な表面処理により剥離可能に製造し供される。一方、その他の剥離可能防護層を使用してもよく、例えば、ポリテトラフルオスレン処理された紙、セロファン、ポリビニルクロライド、及び同様の材料などがある。
【0031】
活性物質とは別に、本発明における感圧接着マトリックスは、任意で、本質的に当業者公知の浸透促進物質を含んでもよい。本発明の感圧接着剤に適合可能な浸透エンハンサーは、好ましくは、例えば、飽和又は不飽和脂肪酸、直鎖又は分岐脂肪族アルコール及びそのエステル、多価脂環族アルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル及びこれら誘導体、又はエトキシ化により得られる脂肪族アルコールエトキシレート、又は単環モノテルペンなどがある。浸透促進物質は、好ましくは、活性物質マトリックスの感圧接着層に相対して、0.1から30重量%の濃度で添加する。
【0032】
本発明におけるEVA共重合体及び接着性樹脂をベースにした感圧接着層は、ホルモンの経皮送達に適していることが分かってきており、特に、天然及び/又は合成エストロゲン及びゲスターゲンを単独で用いるのと同様に、エストロゲン/ゲスターゲンの組合せなどの組合せ物に適していることが分かってきた。この関係において、特に有利なのは、本発明におけるこのシステムは、どのような状況においても、これらに含有する活性物質の再結晶化が起こる傾向にないことである。この活性物質マトリックスは、一種類以上のエストロゲン、又は少なくとも一種類のゲスターゲンを含有するエストロゲンを含んでもよい。この場合におけるこれらホルモンの総濃度は、活性物質マトリックスに相対して、0.1から15重量%である。エストロゲン−ゲスターゲン組合せ物の場合、エストロゲン及びゲスターゲンが、1:1から1:10の分子比率で存在する場合、特に有利である。
【0033】
本発明における上述した感圧接着剤の特性に起因して、これら接着剤は、天然の医薬活性物質に適するだけでなく(図1A,1B,2A,2B)、特に、加水分解された活性物質を含有する活性物質含有層の製造にも適している。これらの中で特に、アセチル基を有する活性物質、好ましくはアセチルサリチル酸又はディアモルフィン、医薬活性物質における酸、塩基、有機物、無機物(図3)、又は薬物学的に許容される塩などが適している。
【0034】
医薬活性物質に対して、本発明における感圧接着剤の化学的不活性特性(極性基又は機能性基を有さないことに起因)ゆえ、例えば、不可逆な酸−塩基反応などの活性物質との化学的相互作用は、ほとんど起こらない。さらに、活性物質の放出及びこれによる生物学的利用性は、アクリレート系接着剤をベースにした感圧接着マトリックスの場合とは異なり、望ましくない反応により逆行的な影響を受けることがない。
【0035】
さらに、本発明における感圧接着剤は、良好な貯蔵能を有している。というのも、活性物質のほとんど、つまり脂溶性及び親水性物質は、EVA共重合体に急速に溶解するからである。例えば、(活性物質マトリックスに相対して)可溶化剤を添加せずに、10重量%の活性物質を添加することが可能であり、例えば、非常に高い親水性を有するモルヒネ化合物モリフィニウム−N−アセチルグリシネート(例3)、又は非常に高い脂溶性である、ゲスターゲン、ノルエチステロン酢酸などである。上記の高い添加許容性は、ポリイソブチレンをベースにした感圧接着剤では達成できず、シリコン系接着剤(添加許容性は最大で5重量%)においても達成することはできず、後者は加えて、高価である。
【0036】
本発明における感圧接着剤及び感圧接着層は、有機系溶媒または溶媒の混液を使った溶液及び融解体として調製可能である。固体化状態において、融解体として調製された本発明の感圧接着剤は、典型的な感圧接着性を有しており、例えば、強固な接着性及び良好で急速な貼布性を有している。融解体として調製されたこれら本発明における感圧接着剤は、工業的な目的のために使用される高融解接着剤とは異なる。これら高融解型接着剤に関し、その接着性は、融解された接着剤が基材に適用された後、冷却工程において生じる。この工程に必要とされる高い融解温度及び急速な貼布性の欠除ゆえ、感圧接着性を有しないこの種の高融解型接着剤は、TTS又は医薬貼布剤の製造には適さない。
【0037】
本発明の感圧接着剤を調製するため、第一に、練合及び溶解により、加熱された温度下(45から150℃、好ましくは50から120℃、特に好ましくは約100℃)にて、コロフォニーのエステル体をホモジナイズする。続いて、エチレン−ビニル酢酸共重合体、及び任意で活性物質及び/又は浸透エンハンサーを加え、融解型接着剤集合体に成形する。得られた活性物質含有又は活性物質不含接着剤集合体は、(ノズルシステム及び/又は鋳造機)などの高融解コーティーングラインによって、剥離可能防護層を適用してもよい。この製造は、鋳造により行われてもよい。
【0038】
本発明の感圧接着剤を溶液型にて調製するために、エチレン−ビニル酢酸共重合体(組成物A)は、有機系溶媒混液中にて攪拌しながら、加温した(40から75℃、特に45から55℃)条件にて溶解される。好ましくは、ガソリン及び/又はプロピル酢酸含有溶媒混液が使用され、特に以下の混液が好ましい:ガソリン/プロピル酢酸(2:1)、ガソリン/ブタノン(1:1)、ガソリン/プロピル酢酸/ブタノン(1:1:1)、及びヘキサン/プロピル酢酸/アセトン(1:1:1)(なおこれらすべての値は、容量比である)。さらに、接着性樹脂(組成物B)は、攪拌しながら加えられ、上述した加温条件にて、完全に溶解するまでホモジナイズされる。付加的な組成物(例えば、活性物質、エンハンサーなど)の添加及びコーティーングは、上述のごとく行われる。得られた層は、溶媒を除去するために、加温条件下(好ましくは、約30から80℃、特に50℃)にて乾燥される。
【0039】
続いて、具体例及び図により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明における好ましい活性物質含有活性物質マトリックスシステムを使って、皮膚表皮を使ったin vitroでの皮膚モデル、又は改変フランツ拡散セルを補助として使用して、浸透性測定を実施する(図1から3)。すべての場合、アクセプター溶媒は、防腐剤として0.1%のNaNを加えた等張生理食塩水を用い、37℃にて行った。
【0040】
(例1:)
自己接着性、活性物質含有フィルム(17−β−エストラジオール及びノルエシステロン酢酸)の調製
80/110の沸点を有するガソリン2部及び1部のプロピル酢酸からなる溶媒混液80gに、ビニル酢酸を有し、メルトフローインデックスが55の、40重量%のEVATANE(登録商標)40/50を54g加え、攪拌しながら、50℃の加温下にて溶解した。攪拌約30分後、粘性を有し、無色で若干不透明な溶液が得られる。この溶液に、66gの接着性樹脂、Foral(登録商標)85Eを加え、攪拌し、同様に50℃にて加温し完全に溶解した(約15分間)。冷却した後、いまだ攪拌可能な接着性溶液として存在した、低い粘性を有し、黄色がかった、若干不透明である50%の溶液(接着性溶液I)が得られた。自己接着性を有する活性物質含有フィルムを調製するために、9.88gの接着溶液Iを用い、攪拌しながら、2.4gの17−β−エストラジオールに続いて9.6gのノルエシステロン酢酸を加えた。必要ならば、組成物の粘性を低下させるため、1000μLのメタノールを加えてもよい。この組成物を、30分間、350rpmにて攪拌しながらホモジナイズした。得られた組成物から過剰な空気を除去するため、超音波にて15分間、45℃にて脱気した。
【0041】
活性物質含有接着溶液は、シーティングアウト型ドクターナイフを使って、シリコン化されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、湿潤した層として、厚さ300μmにて塗布した。その後、空気口のついた乾燥器内にて1.5時間、50℃にて、溶媒を除去した。続いて、溶媒を含まない活性物含有接着フィルムに対して積層することにより、15μm厚のポリエステルフィルム(バック層として)を覆った。調製を終了した後の、マトリックス中に含まれる接着剤の量は、88重量%であり、このうち接着性樹脂は48.4重量%であった。
【0042】
(例2:)
自己接着性、活性物質含有フィルムの調製(17−β−エストラジオール及びノルエシステロン酢酸)
80/110の沸点を有するガソリン2部及び1部のプロピル酢酸からなる溶媒混液80gに、ビニル酢酸を有し、メルトフローインデックスが400の、40重量%のEVATANE(登録商標)33/400を69g加え、攪拌しながら、50℃の加温下にて溶解した。攪拌約30分後、粘性を有し、無色で若干不透明な溶液が得られる。この溶液に、56gの接着性樹脂、Foral(登録商標)85Eを加え、攪拌し、同様に50℃にて加温し完全に溶解した(約15分間)。冷却した後、いまだ攪拌可能な接着性溶液として存在した、低い粘性を有し、黄色がかった、若干不透明である50%の溶液(接着性溶液II)が得られた。
【0043】
自己接着性を有する活性物質含有フィルムを調製するために、7.59gの接着溶液IIを用い、攪拌しながら、2.4gの17−β−エストラジオールに続いて9.6gのノルエシステロン酢酸を加えた。接着フィルムのさらなる調製方法は、上述の例1に従って行った。
【0044】
調製を終了した後の、マトリックス中に含まれる接着剤の量は、88重量%であり、このうち接着性樹脂は39.6重量%であった。
【0045】
(例3:)
自己接着性、活性物質含有フィルムの調製(モルフィニウム−N−アセチルグリシネート)
調製法は、例1にて述べたものと同様に行った。マトリックス中の接着性樹脂は49.5重量%であり、活性物質として10重量%のモルフィニウム−N−アセチルグリシネートを含んでいる。EVA共重合体として、EVATANE(登録商標)44/55を使用した。
【0046】
(表1:)
例1から3における活性物質含有フィルム
【0047】
【表1】


(図の説明)
図1から3は、例1から3について行った浸透測定の結果を示している。
【0048】
(図1A)
例1に従い、再結晶化を起こしていない本発明におけるマトリックスに関する浸透測定結果を示しており、接着性樹脂を48.4重量%、活性物質として17−β−エストラジオール(2.4重量%、水和物として)、及びノルエシステロン酢酸(9.6重量%)を含み、エンハンサー、架橋剤、可塑剤、結晶化阻害剤、及びその他の補助物質を含まない条件で行った。
【0049】
比較例として、市販の参照組合せ物TTS(Evorel Conti(登録商標;Cilag,CH)を用いた。これには、2.5重量%の17−β−エストラジオール、8.75%重量%のノルエシステロン酢酸、2重量%のMyprogat90、86.75重量%のDuro−Tak2287を含んでいる。Myprogat90は、吸水剤であって、エンハンサーではない。
【0050】
図1Aは、ノルエシステロン酢酸(略語:「NeA」)の蓄積浸透値(accumulated permeation value)の比較を示している。
【0051】
(図1B)
例1に従った本発明におけるマトリックスに関する浸透測定結果を示しており、ここでは、17−β−エストラジオール(略語:「Oes」)に関する蓄積浸透値を比較している。
【0052】
(図2A)
例2に従った、本発明のマトリックスに関する浸透測定の結果を示しており、39.6重量%の接着性樹脂、15.972重量%のビニル酢酸(マトリックス全体に相対した割合にて表している)、並びに、活性物質として17−β−エストラジオール(2.4重量%、水和物として)及びノルエシステロン酢酸(9.6重量%)を加え、エンハンサー、架橋剤、可塑剤、結晶化阻害剤、及びその他の補助物質を含まない条件で行った。前述の例1にて示したものとおよそ同じ条件にて調製したマトリックスを使用したが、その条件は、ビニル酢酸(15.84重量%)、若干低いエチレン含量(23.76重量%)及び若干高い接着性樹脂分量(48.4重量%)としたものを比較例として用いた。
【0053】
図2Aは、ノルエシステロン酢酸に関する蓄積浸透値の比較を示している。
【0054】
(図2B:)
図2Aと同様に、例2による本発明におけるマトリックスに関する浸透測定結果を示しており、ここでは、17−β−エストラジオール(略語:「Oes」)に関する蓄積浸透値を示している。
【0055】
(図3:)
例3に従った、本発明のマトリックスに関する浸透測定結果を示しており、その条件は、49.5重量%の接着性樹脂、活性物質としてモルフィニウム−N−アセチルグリシネートを含み、エンハンサー、架橋剤、可塑剤、結晶化阻害剤、及びその他の補助物質を含んでいない。比較例(参照例)として、架橋剤を有するポリアクリレートをベースにした感圧接着マトリックスを使用するとともに、エンハンサーとして25重量%のオレイン酸を用いた。活性物質は、両者とも同じ条件にて行った(10重量%)。
【0056】
(図4:)
例1及び2に従った、EVA共重合体及び接着性樹脂をベースにした本発明におけるTTSに関して測定した接着力値の比較を示しており、比較には、アクリレートをベースにした参照TTS(Evorel Conti(登録商標))を用いた。
【0057】
本測定は、「Peel Adhesion 90゜ Test」に従った試験方法に基づいて行った(テストプレート:アルミニウム、ビールオフ速度300mm/min;DIN51221のパート1に従った伸張試験機)。
【0058】
[付記]
付記(1):ポリマー組成物(component)(A)として:エチレン−ビニル酢酸(vinyl acetate)共重合体又は少なくとも二種類のエチレン−ビニル酢酸共重合体の組合せ物を含有し、かつ組成物(B)として:前記組成物(A)及び該組成物(B)の総量に相対して、接着性樹脂(adhesive resin)又は接着性樹脂の組合せ物を55重量%含有し、かつ活性物質(active substance)又はその他の補助物質(auxiliary substance)を含有しないことを特徴とする、エチレン−ビニル酢酸共重合体をベースにした医療用感圧接着剤。
【0059】
付記(2):前記エチレン−ビニル酢酸共重合体(組成物A)は、モノマー組成(monomer composition)に相対して、少なくとも28重量%の組成比のビニル酢酸を含有していることを特徴とする付記(1)に記載の感圧接着剤。
【0060】
付記(3):前記の組成物(A)及び(B)の総量に相対して、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは45以上55重量%以下の前記組成物Bを含有していることを特徴とする付記(1)又は(2)に記載の感圧接着剤。
【0061】
付記(4):前記の組成物(A)及び(B)の総量に相対して、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは46以上55重量%以下の前記組成物(A)を含有していることを特徴とする付記(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【0062】
付記(5):前記の組成物(A)及び(B)の総量に相対して、46以上55重量%以下の前記組成物(A)を含有し、かつ45以上55重量%以下の前記組成物(B)を含有していることを特徴とする付記(1)又は(2)に記載の感圧接着剤。
【0063】
付記(6):前記接着性樹脂は、コロフォニー(colophony)のエステル体及び水素化コロフォニーからなる群より選ばれ、特に好ましくは、コロフォニーのメチルエステル体、グリセロールエステル体、ペンタエリスリトールエステル体、マレイン酸改変(modified)ペンタエリスリトールエステル体、マレイン酸改変グリセロールエステル体、及びトリエチレングリコールエステル体からなる群より選ばれることを特徴とする付記(1)乃至(5)のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【0064】
付記(7):可塑剤及び/又は架橋物質を含有していないことを特徴とする付記(1乃至6のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【0065】
付記(8):高融解(hot melt)接着剤であることを特徴とする付記(1)乃至(7)のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【0066】
付記(9):溶媒ベースの感圧接着剤であることを特徴とする付記(1)乃至(7)のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【0067】
付記(10):付記(1)乃至(9)のいずれか一つに記載の感圧接着剤を含有し、かつ、ヒト用医薬品用又は動物用医薬品用の活性物質を放出することを特徴とする、活性物質含有感圧接着層又は接着マトリックス。
【0068】
付記(11):付記(1)乃至(9)のいずれか一つに記載の感圧接着剤から調製され、あるいはこの種の感圧接着剤を含有する、活性物質を含有する又は活性物質を含有しない層を少なくとも一つ有することを特徴とする、活性物質含有マトリックス、バック層及び除去可能防護層を有する経皮治療システム。
【0069】
付記(12):前記活性物質マトリックスは、単一相マトリックス又は好ましくは単一層化されたことを特徴とする付記(11)に記載の経皮治療システム。
【0070】
付記(13):前記活性物質の放出は、前記活性物質マトリックスの前記エチレン−ビニル酢酸共重合体における前記ビニル酢酸の組成比により調節されることを特徴とする付記(11)又は(12)に記載の経皮治療システム。
【0071】
付記(14):前記感圧接着層又は前記活性物質層に相対して、0.1以上50重量%以下の前記活性物質を含有していることを特徴とする、付記(10)乃至(13)のいずれか一つに記載の感圧接着層、活性物質マトリックス、又は経皮治療システム。
【0072】
付記(15):前記感圧接着層又は活性物質マトリックスに相対して、50重量%以下、特に好ましくは39以上49重量%以下の前記接着性樹脂を含有していることを特徴とする、付記(10)乃至(14)のいずれか一つに記載の感圧接着層、活性物質マトリックス、又は経皮治療システム。
【0073】
付記(16):前記感圧接着層又は活性物質マトリックスに相対して、一種類以上の浸透促進物質を、0.1以上30重量%以下含有し、かつ、該浸透促進物質は、好ましくは、飽和又は不飽和脂肪酸、直鎖又は分岐脂肪アルコール及びそのエステル体、多価脂環族アルコール(polyhydric aliphatic alcohol)、ポリエチレングリコール類、ソルビタン脂肪酸エステル及びその誘導体、エトキシ化(ethoxylation)により得られる脂肪アルコールエトキシレート、並びに単環モノテルペン類からなる群より選択されることを特徴とする付記(10)乃至(15)のいずれか一つに記載の感圧接着層、活性物質マトリックス、又は経皮治療システム。
【0074】
付記(17):前記活性物質マトリックスは、一種類以上のステロイドホルモン、好ましくはエストロゲン、又は少なくとも一種類のゲスターゲンと組み合わされたエストロゲンを含有し、かつ前記活性物質マトリックスに相対して、該ホルモン全体の濃度が0.1以上15重量%以下であり、該組合せの場合、該エストロゲン及び該ゲスターゲンは、好ましくはモル比で1:1以上1:10以下含有することを特徴とする付記(11)乃至(16)のいずれか一つに記載の経皮治療システム。
【0075】
付記(18):前記活性物質マトリックスは、加水分解された一種類以上の活性物質を含有し、特に、アセチル基(acetyl function)を有する活性物質分子を含有し、特に好ましくは、アセチルサリチル酸又はディアモルフィン(diamorphine)を含有することを特徴とし、あるいは、前記活性物質マトリックスは、酸性又は塩基性医薬活性物質又はこれら物質の薬物学的に許容な塩体を含有することを特徴とする付記(11)乃至(16)のいずれか一つに記載の経皮治療システム。
【0076】
付記(19):前記マトリックス中の前記活性物質含量は、0.1以上50重量%以下であり;前記マトリックス中の前記接着性樹脂含量は、39以上49重量%以下であり;前記活性物質含有マトリックスは、任意で、0.1以上30重量%以下で、浸透促進物質を含有する;ことを特徴とする付記(1)乃至(18)のいずれか一つに記載の経皮治療システム。
【0077】
付記(20):活性物質含有マトリックス及び該活性物質の放出を制御する制御メンブレンを有し、該制御メンブレンは、付記(1)乃至(9)のいずれか一つに記載の感圧接着剤で製造された接着性メンブレン又は層であることを特徴とする、経皮治療システム。
【0078】
付記(21):接着性服飾品(adhesive dressing)、固定貼布剤(fixation plaster)、自己接着性電極、経皮治療システム(TTS)、メンブレン制御型TTSにおける接着性制御メンブレン、及び非接着性TTSにおける皮膚に対する感圧接着性を有する追加層を製造するための、付記(1)乃至(9)のいずれか一つに記載の感圧接着剤の使用。
【0079】
付記(22):付記(1)乃至(9)のいずれか一つに記載の感圧接着剤を利用した感圧接着層又は活性物質マトリックスの製造工程であって、該工程は:加温条件にて、均一化するまでコロフォニーエステル体の混液(mixture)を練合(keading)及び融解(melting)するステップ;前記均一化の後、前記融解物に、エチレン−ビニル酢酸共重合体と共に、任意で、活性物質及び/又は浸透エンハンサーを添加するステップ;分離可能防護層上に、高温融解コーティーングプラント(ノズルシステム及び/又は鋳造器)を使って、前記活性物質含有接着物又は前記活性物質不含接着物を塗布するステップ;及びバック層を積層するステップ;で構成されることを特徴とする、工程。
【0080】
付記(23):付記(1)乃至(9)のいずれか一つに記載の感圧接着剤を利用した感圧接着層又は活性物質マトリックスの製造工程であって、該工程は:有機系溶媒混液中、好ましくは、ガソリン及び/又はプロピル酢酸(proryl acetate)含有混液中にて、該混液は特に好ましくは、容量比率にて:ガソリン/プロピル酢酸を2:1、ガソリン/ブタノンを1:1、ガソリン/プロピル酢酸/ブタノンを1:1:1、及びヘキサン/プロピル酢酸/アセトンを1:1:1)含有する混液中にて、一種類以上のエチレン−ビニル酢酸共重合体(付記(1)の組成物A)を溶解するステップ;完全に溶解するまで、加温条件下にて、攪拌及び均一化を行うことにより、一種類以上の接着性樹脂(付記(1)の組成物B)を添加するステップ;所望する場合、活性物質及び浸透エンハンサーを添加するステップ;均一化の後、塗布器を使って、分離可能防護層上に、前記感圧接着物をコートするステップ;加温条件下、前記層を乾燥することにより前記溶媒を除去するステップ;及び前記の乾燥された感圧接着層上にバック層を積層するステップ;で構成されることを特徴とする、工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−ビニル=アセタート共重合体に基づいた、医療の目的のための圧力感受性の接着剤において、
それは、
− 重合体成分(A)として:エチレン−ビニル=アセタート共重合体又は少なくとも二つのエチレン−ビニル=アセタート共重合体の組み合わせ、及び
− 成分(B)として:作用物質又は他の補助物質無しの前記成分(A)及び(B)の和に相対的な、55重量%までの部分における接着剤樹脂又は接着剤樹脂の組み合わせ
を含有することを特徴とする、圧力感受性の接着剤。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力感受性の接着剤において、
前記エチレン−ビニル=アセタート共重合体(成分A)は、モノマー組成物に相対的な、少なくとも28重量%のビニル=アセタートの含有率を有する
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧力感受性の接着剤において、
前記成分(B)は、前記成分(A)及び(B)の和に相対的な、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%の部分で、最も好ましくは45から55重量%までの部分で、含有されたものである
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤において、
前記成分(A)は、前記成分(A)及び(B)の和に相対的な、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも25重量%の部分で、最も好ましくは46から55重量%までの部分で、含有されたものである
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の圧力感受性の接着剤において、
前記成分(A)は、46から55重量%までの部分で含有されたものであると共に、
前記成分(B)は、45から55重量%までの部分で含有されたものであると共に、
全ての値は、前記成分(A)及び(B)の和に相対的なものである
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤において、
前記接着剤樹脂は、松ヤニのエステル及び水素化された松ヤニのエステルを含む群より、特定の好みで、メチルエステル、グリセロールエステル、ペンタエリスリトールエステル、マレイン酸で変性させられたペンタエリスリトールエステル、マレイン酸で変性させられたグリセロールエステル、及びトリエチレングリコールエステルからなる群より、選択されたものである
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤において、
それは、いずれの可塑剤及び/又は架橋剤をも含有するものではない
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤において、
それは、ホットメルト接着剤である
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤において、
それは、圧力感受性の溶媒に基づいた接着剤である
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤。
【請求項10】
ヒト又は獣医学の医薬のための、作用物質を含有する圧力感受性の接着剤の層又は作用物質の放出用の接着剤マトリックスにおいて、
それは、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤を含有する
ことを特徴とする、作用物質を含有する圧力感受性の接着剤の層又は作用物質の放出用の接着剤マトリックス。
【請求項11】
作用物質を含有するマトリックス、バッキング層、及び取り除き可能な保護層を有する経皮治療システムにおいて、
それは、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤から調製されたものである又はそのような圧力感受性の接着剤を含有するものである、少なくとも一つの作用物質を含有する又は作用物質の無い層を有する
ことを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項12】
請求項11に記載の経皮治療システムにおいて、
前記作用物質のマトリックスは、単一の相のマトリックス、及び好ましくは単一の層状のものである
ことを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の経皮治療システムにおいて、
前記作用物質の放出は、前記作用物質のマトリックスの前記エチレン−ビニル=アセタート共重合体のビニル=アセタートの含有率によって制御される
ことを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤の層、作用物質のマトリックス、又は経皮治療システムにおいて、
前記圧力感受性の接着剤の層又は前記作用物質のマトリックスに相対的な、前記作用物質の部分は、0.1から50重量%までである
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤の層、作用物質のマトリックス、又は経皮治療システム。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤の層、作用物質のマトリックス、又は経皮治療システムにおいて、
前記圧力感受性の接着剤の層又は前記作用物質のマトリックスに相対的な、前記接着剤樹脂の部分は、50重量%と比べてより少ないもの、特定の好みで39から49重量%まで、である
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤の層、作用物質のマトリックス、又は経皮治療システム。
【請求項16】
請求項10乃至15のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤、作用物質のマトリックス、又は経皮治療システムにおいて、
それは、前記圧力感受性の接着剤の層又は作用物質のマトリックスに相対的な、0.1から30重量%までの部分で一つの又はより多くの浸透を向上させる物質を含有すると共に、
前記浸透を向上させる物質は、好ましくは、飽和の又は不飽和の脂肪酸、直鎖又は分岐した脂肪族のアルコール、それらのエステルのみならず、多価の脂肪族のアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、それらの誘導体のみならず、エトキシル化によって得ることが可能な脂肪族アルコールエトキシラート、及び単環式のモノテルペンを含有する群より選択されたものである
ことを特徴とする、圧力感受性の接着剤、作用物質のマトリックス、又は経皮治療システム。
【請求項17】
請求項11乃至16のいずれか一項に記載の経皮治療システムにおいて、
前記作用物質のマトリックスは、一つの又はより多くのステロイドホルモン、好ましくは、エストロゲン又は少なくとも一つのゲスタゲンとの組み合わせにおけるエストロゲン、を含有すると共に、
これらのホルモンの全体的な濃度は、前記作用物質のマトリックスに相対的な、0.1から15重量%までであると共に、
− エストロゲン−ゲスタゲンの組み合わせの場合には、 − エストロゲン及びゲスタゲンは、好ましくは、1:1から1:10までのモルの比で存在するものである
ことを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項18】
請求項11乃至16のいずれか一項に記載の経皮治療システムにおいて、
前記作用物質のマトリックスは、加水分解にかけられるものである一つの又はより多くの作用物質、特にアセチル官能性を備えた作用物質の分子、特定の好みでアセチルサリチル酸又はジアモルヒネ、を含有すること、又は、
それは、酸性の若しくは塩基性の薬用の作用物質若しくはそれらの薬学的に許容可能な塩を含有する
ことを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項19】
請求項10乃至18のいずれか一項に記載の経皮治療システムにおいて、
− 前記マトリックスにおける前記作用物質の含有率は、0.1から50重量%までである;と共に
− 前記マトリックスにおける前記接着剤樹脂の部分は、39−49重量%以下である;と共に、
− 前記作用物質を含有するマトリックスは、自由選択で、0.1から30重量%までの濃度で浸透を向上させる物質を含有する;
ことを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項20】
作用物質を含有するマトリックス及び前記作用物質の放出を制御する制御膜を有する経皮治療システムにおいて、
前記制御膜は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤で作られたものである接着性の膜又は層である
ことを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項21】
接着性のドレッシング、定着膏剤、自己接着性の電極、経皮治療システム(TTS)、膜で制御されたTTSにおける接着性の制御膜、又は、非接着性のTTSの場合には、皮膚において圧力感受性の接着剤であるところの追加的な層の生産のための請求項1乃至9のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤の使用。
【請求項22】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤を利用する、圧力感受性の接着剤の層又は作用物質のマトリックスの生産のための工程であって、
前記工程は、後に続くステップ:
− 均質化まで上昇させられた温度で松ヤニのエステルの混合物の混練及び溶融;
− 均質化の後に続けられた、溶融させられた接着剤の塊へ、エチレン−ビニル=アセタート共重合体のみならず、自由選択で作用物質及び/又は浸透エンハンサー、を加えること及び組み込むこと;

− ホットメルトコーティングプラント(ノズル塗布システム及び/又は押出機)の手段による取り外し可能な保護層への前記作用物質を含有する又は作用物質の無い接着剤の塊のコーティング、及びそれにバッキング層を積層すること
を含む、工程。
【請求項23】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の圧力感受性の接着剤を使用する、圧力感受性の接着剤の層又は作用物質のマトリックスの生産のための工程であって、
前記工程は、後に続くステップ:
− 有機溶媒の混合物において、好ましくはガソリン及び/又はプロピル=アセタートを含有する混合物において、上昇させられた温度で一つの又はより多くのエチレン−ビニル=アセタート共重合体(請求項1における成分A)を溶解させることと共に、後に続く混合物は、特に好適なものであること:ガソリン/プロピル=アセタート(2:1)、ガソリン/ブタノン(1:1)、ガソリン/プロピル=アセタート/ブタノン(1:1:1)、ヘキサン/プロピル=アセタート/アセトン(1:1:1)、示唆された混合の比は、体積含有率に関係すること、
− 上昇させられた温度で、完全な溶解が起こるまでかき混ぜること及び均質化することによって一つの又はより多くの接着剤の樹脂(請求項1における成分B)を組み込むこと;
− 提供されたとすれば、作用物質及び浸透エンハンサーを加えること及び組み込むこと
− 均質化の後に、アプリケーターユニットの手段によって取り外し可能な保護層へ前記圧力感受性の接着剤の塊をコートすること;
− 上昇させられた温度で前記層を乾燥させることによって前記溶媒を取り除くこと;
− 前記乾燥させられた圧力感受性の接着剤の層へバッキング層を積層すること
を含む、工程。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−173940(P2009−173940A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67050(P2009−67050)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【分割の表示】特願2002−580911(P2002−580911)の分割
【原出願日】平成14年3月30日(2002.3.30)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】