説明

エチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法、新規なカルボニル化配位子およびこのような配位子を組み込んだ触媒系

一般式(I)の新規な二座配位子が、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法とともに記載される。基Xが、18℃の希釈水溶液中で4〜14のpKbを有する、少なくとも1個の窒素原子を含む最大で30個の原子を有する一価のヒドロカルビル基として定義されてもよく、ここで、前記少なくとも1個の窒素原子が、1〜3個の炭素原子だけQ原子から離れている。基Xが、X、XまたはXとして定義されるかあるいは少なくとも1個の第一級、第二級または芳香環炭素原子を有する最大で30個の原子を有する一価の基を表し、ここで、各前記一価の基が、それぞれ前記少なくとも1個の第一級、第二級または芳香環炭素原子を介して、それぞれの原子Qに結合される。QおよびQがそれぞれ、独立して、リン、ヒ素またはアンチモンを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和化合物のアルコキシおよびヒドロキシ−カルボニル化を得るための、共反応剤、特にアルコールまたは水を用いたエチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法、新規な二座配位子およびこのような配位子を組み込んだ新規な触媒系に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールまたは水の存在下で一酸化炭素を用いたエチレン性不飽和化合物のカルボニル化ならびに第6族、第8族、第9族または第10族金属、例えば、パラジウム、およびホスフィン配位子、例えば、アルキルホスフィン、シクロアルキルホスフィン、アリールホスフィン、ピリジルホスフィンまたは二座ホスフィンを含む触媒系は、多くの欧州特許および特許出願、例えば、特許文献1〜13に記載されている。特に、特許文献11〜13には、二座ホスフィン配位子が、高い反応速度を実現することを可能にする触媒系を提供することが開示されている。リン原子間のC3アルキル架橋が、リンにおける第三級ブチル置換基とともに、特許文献13に例示されている。
【0003】
続いて、特許文献14には、第三級炭素基を有するがアリール架橋を有する二座ホスフィン化合物の特定の基が、補充をほとんどまたは全く必要としない非常に安定した触媒を提供し得ること;このような二座触媒の使用が、特許文献13に既に開示されるものより著しく高い反応速度をもたらすこと;高い転化率で不純物がほとんどまたは全く生成されないこと;および生成物が、酸またはエステル生成物に対する高い選択性を有し、ポリマーを生成しないことが開示されている。
【0004】
特許文献15には、特許文献14と同じプロセスおよび第三級炭素で置換された配位子について、外部から添加された非プロトン性溶媒の存在下で高級アルケンに対して使用される場合の速度が開示されている。
【0005】
特許文献16には、特許文献13において使用される二座ホスフィンの修飾が開示されており、その第三級炭素基は、場合により置換される2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基、または炭素原子のうちの1個以上がヘテロ原子で置換されるその誘導体(「2−PA」基)に組み込まれている1個または両方のリン原子に用いられる。非対称配位子は、想定されているが例示されていない。その例としては、各リンを組み込んだ対称PA基を使用し、リンに結合された炭素が三級になるようにPA基の各隣接炭素を置換する、エテン、プロペンおよびいくつかの高級末端および内部オレフィンのいくつかのアルコキシカルボニル化が挙げられている。リンに結合された第二級または第一級炭素の使用の例はない。1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパンと比較して、内部不飽和オレフィンのカルボニル化についての速度の改善および収率の改善が見られる。
【0006】
特許文献17は、特許文献16に教示されている特定の第三級炭素リン置換基配位子から、特許文献14に開示されているタイプの1,2置換アリール架橋を有する二座ホスフィンまで及んでいる。
【0007】
特許文献18には、上記のタイプの配位子架橋が両方とも、ブタジエンカルボニル化に有用であることが記載されており、特許文献19には、特許文献18の選択が記載されており、ここで、第三級炭素置換基は、それぞれのリン原子上で異なっており、これにより
反応速度が改善される。
【0008】
二座リン配位子上に第一級、第二級および芳香族炭素置換基を使用することで、特定のエチレン性不飽和化合物のカルボニル化の際にポリマー生成物が全く生成されないかまたは生成されることが知られている。ポリケトンポリマーの一般的な製造方法は、長年の間知られてきた。特許文献20〜22には、パラジウムなどの第VIII族金属および6未満のpKaを有する酸とともに二座ホスフィン配位子を使用することを含む方法が記載されている。特許文献23には、ポリケトンポリマーを製造するための好ましい触媒組成物が、パラジウム、好適な酸および1,3−ビス(ジフェニルホスフィン)プロパンまたは1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンを使用することが開示されている。
【0009】
例えば、特許文献24には、1,2−ビス−(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどの芳香族基置換配位子および−CH基を介してリンに結合されるアルキル置換二座配位子が、一酸化炭素を用いたエチレンのカルボニル化の際に良好な収率である範囲の分子量のポリケトンポリマー生成物を生成することが教示されている。
【0010】
特許文献25から、第二級炭素を介してリンに結合され、アルキレン架橋を有する、ホバン(phobane)、例えば、9−ホスファビシクロノナンとして知られている環式基を有する配位子が、優れた選択性を示し、このようなカルボニル化反応において非ポリマー生成物を生成し得ることが知られている。特許文献19には、1個のリン上に第三級炭素および他のリン上にホバン第二級炭素を有する非対称二座ホスフィン配位子が開示されている。当然ながら、反応はなお、エステル生成物に優れた選択性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0055875号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第04489472号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0106379号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0235864号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0274795号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0499329号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0386833号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0441447号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0489472号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0282142号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0227160号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第0495547号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第0495548号明細書
【特許文献14】国際公開第96/19434号
【特許文献15】国際公開第01/68583号
【特許文献16】国際公開第98/42717号
【特許文献17】国際公開第03/070370号
【特許文献18】国際公開第04/103948号
【特許文献19】国際公開第05/082830号
【特許文献20】欧州特許第121,965号明細書
【特許文献21】欧州特許第181,014号明細書
【特許文献22】欧州特許第213,671号明細書
【特許文献23】米国特許第4,950,703号明細書
【特許文献24】米国特許第5,369,074号明細書
【特許文献25】国際公開第01/87899号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、意外なことに、芳香族で架橋された非対称二座配位子の特定の基が、第三級炭素置換基と組み合わされるときに上記のタイプのアルキルおよび芳香族基で置換された二座配位子を用いてポリマー生成物を生成しないことおよびこれらの配位子が、特に弱酸の存在下でのカルボニル化反応の際に、以前に有利であったよりも改善された安定性および活性も示すことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、特許請求の範囲に記載の新規な二座配位子が提供される。
場合により、本発明の配位子のヒドロカルビルXまたはX基には最大で3個の窒素原子が存在してもよく、最も近い窒素原子は、1〜3個、好ましくは、1または2個、より好ましくは、1個の炭素原子だけQ原子から離れている。窒素原子は、水素、アリール、アルキルまたはフルオロアルキルで置換され得る。窒素原子は、飽和、不飽和または部分不飽和であり得る複素環基に組み込まれてもよい。不飽和複素環は、芳香族または非芳香族であり得る。複素環は、3〜14個の環原子、好ましくは5または10個の間の環原子、最も好ましくは、5または6個を有し得る。複素環基は、環中に1〜3個の窒素原子、好ましくは1または2個、最も好ましくは、1個を有し得る。ヒドロカルビル基は、直鎖状、分枝状であってもよく、または環構造を形成してもよく、ここで、窒素原子は、環に組み込まれてもまたは組み込まれなくてもよい。これらの環構造は、単環式または多環式、飽和、不飽和または部分不飽和であってもよく、不飽和である場合、芳香族または非芳香族であってもよい。環式環構造は、好ましくは、1〜3つの環、より好ましくは1または2つの環、最も好ましくは1つの環を有し、環構造中に少なくとも1個の窒素を有する複素環または環構造の外に前記窒素を有する非複素環であり得る。
【0014】
あるいは、基Xが、式Ib
(C101102(C101102110(NR101102 (Ib)
(式中、Cが、QならびにCおよびNから選択される少なくとも1個のさらなる原子に直接結合され、y=1であり;
、Cおよび/またはNが1または2つの遊離置換基部位を有する場合、R101およびR102が、任意選択の置換基水素、アリール、アルキルまたはフルオロアルキルを表し;
上記のまたは各C原子が、N原子に直接かまたは別のC原子を介してN原子に間接的に結合され、xが、0〜6、好ましくは、1〜4、より好ましくは、3または4であり;
上記のまたは各Nが、独立して、CまたはCに結合され、aが、1、2または3、好ましくは1であり;
110が、水素、アリール、アルキルまたはフルオロアルキルであり;
xが1以上である場合、Cが3個以上の原子の環状構造を形成してもよく、この環状構造は、xが1である場合、NおよびCを組み込み、xが2である場合、Nおよび/またはCを組み込み、xが3である場合、Nおよび/またはCを場合により組み込む)によって表される最大で30個の原子を有する一価の基として定義され得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましくは、本発明において、18℃の希釈水溶液中で測定される少なくとも1個の窒素原子のpKbは、6〜12、より好ましくは、7〜10、最も好ましくは、7.5〜9
.5である。典型的に、2個以上の窒素原子がある場合、各窒素原子は、上記および特許請求の範囲において記載されるpKbを有し得る。しかしながら、さらなる窒素のいずれか2個目が4〜14のpKbを有することは必須ではない。
【0016】
好ましくは、X基中のQ原子に直接結合される炭素は、非第三級炭素原子である。典型的に、前記炭素は、環状、第一級または第二級炭素原子、より典型的に、芳香族または第一級炭素原子、特に芳香族炭素原子である。
【0017】
好ましくは、基Xが、独立して、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、ピロリドン、ピロール、ピリジン、ピペリジン、アゼパン、アゼピン、アゾカン、アゾシン イミダゾリジン、ピラゾリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、インダゾール、ピラゾリン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピペラジン、ヘキサヒドロ−ピリミジン、ヘキサヒドロ−ピリダジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、ベンゾピラジン、アクリジンまたはベンゾキノリン基から選択される。
【0018】
より好ましくは、基Xが、独立して、アジリジン、アジリン、アゼト、ピロリドン、ピロール、ピリジン、アゼパン、アゼピン、アゾカン、アゾシン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ベンズイミダゾール、イミダゾリン、インダゾール、ピラゾリン、ヘキサヒドロ−ピリミジン、ヘキサヒドロ−ピリダジン、イソインドール、キナゾリン、ベンゾピラジン、アクリジンおよびベンゾキノリン基からなる群から選択される。
【0019】
有利なことに、基Xおよび場合によりXをQ原子に導入することによって、カルボニル化反応にこのような配位子を用いる触媒系が、QおよびQの両方に結合される第三級炭素原子を用いた同等の系より意外にも改善された安定性を有することが分かった。典型的に、触媒回転数(TON)(金属のモル数/生成物のモル数)および/またはカルボニル化反応、特に、ヒドロキシ−またはアルコキシ−カルボニル化の速度が改善される。
【0020】
本発明におけるXは、CH(R)(R)を場合により除外してもよく、式中、R2およびR3がHetを表し、Hetが、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリル、インドリル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリダジニル、モルホリニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピペリジニル、ピラゾリルおよびピペラジニルを表す。
【0021】
好ましくは、本発明の配位子は、連続カルボニル化反応に用いられるが、バッチ反応、特に反復バッチ反応も有益であろう。
したがって、本発明の第2の態様によれば、特許請求の範囲に記載のエチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法が提供される。
【0022】
好ましくは、本発明の方法において、触媒系は酸も含み、前記配位子は、少なくとも1:1のモル比、より好ましくは、前記金属または前記金属化合物中の前記金属と比較して少なくとも2:1モル過剰で存在し、前記酸は、少なくとも1:1のモル比、より好ましくは、前記配位子と比較して2:1を超えるモル過剰で存在する。
【0023】
本発明の第3の態様によれば、請求項15に記載の触媒系が提供される。
好ましくは、第3の態様において、前記配位子は、少なくとも1:1のモル比、より好ましくは、前記金属または前記金属化合物中の前記金属と比較して少なくとも2:1モル過剰で存在し、前記酸は、少なくとも1:1のモル比、より好ましくは、前記配位子と比
較して2:1を超えるモル過剰で存在する。
【0024】
好適には、本発明の触媒系の、存在する場合にはa)〜c)の成分の全てが、カルボニル化が行われるべき反応容器にその場で添加され得る。あるいは、成分a)〜c)は、任意の順序で連続して添加されて、触媒系が形成され、あるいはある規定の順序で、容器に直接かまたは容器の外部に添加されてから容器に添加され得る。例えば、酸成分c)は、まず、二座配位子成分b)に添加されて、プロトン化した配位子が形成され得、次にプロトン化した配位子が金属またはその化合物(成分a))に添加されて、触媒系が形成され得る。あるいは、配位子成分b)および金属またはその化合物(成分a))が混合されて、キレートされた金属化合物が形成され得、次に、酸(成分c))が添加される。あるいは、いずれか2つの成分を一緒に反応させて、中間体部分を形成することができ、次にこれを反応容器および添加される第3の成分に添加するか、またはまず第3の成分と反応させてから反応容器に添加する。
【0025】
したがって、本発明は、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化の際に、触媒系を本明細書において定義される配位子と併用したときに意外かつ予想外の利点をもたらし、従来技術の系の欠点の少なくともいくらかを軽減または少なくとも低減する方法および触媒系に関する。特に、本発明の触媒系を使用すると、潜在的により安定した系、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化反応の際の高められた反応速度、改善された触媒回転数、潜在的に改善された選択性、改善された転化率および重合の回避をもたらす。
【0026】
本明細書に記載される式(I)の化合物が、第8族、第9族または第10族金属あるいはその化合物とともに配位して、本発明に使用するための触媒化合物を形成する配位子として機能し得ることが当業者によって理解されよう。典型的に、第8族、第9族または第10族金属あるいはその化合物は、式Iの化合物の1個以上のリン、ヒ素および/またはアンチモン原子に対して配位する。
【0027】
共反応剤
反応におけるエチレン性不飽和化合物と共反応剤との比率(mol/mol)は、広範に変化してもよく、好適には10:1〜1:500、好ましくは、2:1〜1:2の範囲内にある。しかしながら、エチレン性不飽和化合物が反応温度で気体である場合、それは、共反応剤に対して、1:20,000〜1:10、より好ましくは、1:10,000〜1:50、最も好ましくは、1:5000〜1:500などの比率で、液相反応媒体中でより低い濃度で存在し得る。本発明の共反応剤は、可動の水素原子を有し、かつ触媒条件下で求核試薬としてエチレン性不飽和化合物と反応することが可能な水を含む任意の化合物であり得る。共反応剤の化学的性質により、形成される生成物のタイプが決定される。考えられる共反応剤は、カルボン酸、水、アルコール、アンモニアまたはアミン、チオール、あるいはそれらの組合せである。
【0028】
共反応剤がカルボン酸である場合、生成物は無水物である。アルコール共反応剤の場合、カルボニル化の生成物はエステルである。同様に、アンモニア(NH)あるいは第一級アミンR81NHまたは第二級アミンR8283NHの使用によりアミドが生成され、チオールR81SHの使用によりチオエステルが生成される。
【0029】
上で定義される共反応剤、R8182および/またはR83は、非置換であっても、あるいはハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30、C(S)NR2728、アリールまたはHetから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、アルキル、アルケニルまたはアリール基を表し、ここで、R19〜R30は本明細書において定義され、および/または1個以上の酸素または硫黄原子によっ
て、またはシラノもしくはジアルキルケイ素基によって介在される。
【0030】
アンモニアまたはアミンが用いられる場合、共反応剤のごく一部が反応中に存在する酸と反応して、アミドおよび水が形成される。したがって、アンモニアまたはアミン−共反応剤の場合、水がその場で生成され得る。
【0031】
好ましいアミン共反応剤は、1分子当たり1〜22個、より好ましくは、1〜8個の炭素原子を有し、ジアミン共反応剤は、好ましくは、1分子当たり2〜22個、より好ましくは2〜10個の炭素原子を有する。アミンは、環状、部分環状、非環状、飽和または不飽和(芳香族を含む)、非置換であるか、あるいはハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30、C(S)NR2728、アリール、アルキル、Hetから選択される1つ以上の置換基で置換されてもよく、ここで、R19〜R30は本明細書において定義されるとおりであり、および/または1個以上(好ましくは合計で4個未満)の酸素、窒素、硫黄、ケイ素原子によって、またはシラノもしくはジアルキルケイ素基またはそれらの混合物によって介在される。
【0032】
チオール共反応剤は、環状、部分環状、非環状、飽和または不飽和(芳香族を含む)、非置換であるか、あるいはハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30、C(S)NR2728、アリール、アルキル、Hetから選択される1つ以上の置換基で置換されてもよく、ここで、R19〜R30は本明細書において定義されるとおりであり、および/または1個以上(好ましくは合計で4個未満)の酸素、窒素、硫黄、ケイ素原子またはシラノもしくはジアルキルケイ素基またはそれらの混合物によって介在される。好ましいチオール共反応剤は、1分子当たり1〜22個、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有する脂肪族チオール、および1分子当たり2〜22個、より好ましくは2〜8個の炭素原子を有する脂肪族ジ−チオールである。
【0033】
共反応剤が、アニオンの供給源として働く酸と反応するべきである場合、共反応剤に対する酸の量は、好適な量の遊離酸が反応中にまだ存在するように選択されるべきである。酸が共反応剤より大幅に多いと、反応速度の上昇が過剰な酸によって促進されるため有利であり得る。
【0034】
上述したように、本発明は、エチレン性不飽和化合物を一酸化炭素および共反応剤と接触させる工程を含む、エチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法を提供する。共反応剤は、より好ましくは、アルカノールまたは水などのヒドロキシル官能基を有する有機分子である。
【0035】
好適には、上述したように、共反応剤は、ヒドロキシル官能基を有する有機分子を含む。好ましくは、ヒドロキシル官能基を有する有機分子は、分枝状または直鎖状、環状、非環状、部分環状または脂肪族であり得、典型的にアルカノール、特に、アリールアルコールを含むC〜C30アルカノールであり、これは、本明細書において定義されるように、アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)NR2728、SR29またはC(O)SR30から選択される1つ以上の置換基で場合により置換され得る。非常に好ましいアルカノールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、イソ−ブタノール、t−ブチルアルコール、フェノール、n−ブタノールおよびクロロカプリルアルコールなどのC〜Cアルカノールである。モノアルカノールが最も好ましいが、ポリ−アルカノール、好ましくはジオール、トリオール、テトラ−オールおよび糖類などのジ−オクタオールから選択されるポリ−アル
カノールを用いることもできる。典型的に、このようなポリアルカノールは、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、1,2,4ブタントリオール、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6トリヒドロキシヘキサン、ペンタエリトリトール、1,1,1トリ(ヒドロキシメチル)エタン、ナンノース(nannose)、ソルベース(sorbase)、ガラクトースおよび他の糖類から選択される。好ましい糖類としては、スクロース、フルクトースおよびグルコースが挙げられる。特に好ましいアルカノールは、メタノールおよびエタノールである。最も好ましいアルカノールはメタノールである。アルコールの量は重要でない。一般に、カルボニル化される基材の量を超える量が使用される。したがって、アルコールは、反応溶媒としても働くが、必要に応じて、別の溶媒も使用することができる。
【0036】
反応の最終生成物が、使用されるアルカノールの供給源によって少なくともある程度は決定されることが理解されよう。例えば、メタノールの使用により、対応するメチルエステルが生成される。共反応剤が水である場合、生成物は対応する酸である。したがって、本発明は、エチレン性不飽和結合を介して基−C(O)OC〜C30アルキルまたはアリールを付加する好都合な方法を提供する。
【0037】
溶媒
好ましくは、本発明の反応は、好適な溶媒の存在下で行われる。好適な溶媒は後述される。好ましくは、第8族、第9族または第10族金属/金属化合物および配位子は溶媒に添加され、好ましくはその中に溶解される。
【0038】
本発明に使用するのに適した溶媒としては、例えばメチルブチルケトンなどのケトン;例えばアニソール(メチルフェニルエーテル)、2,5,8−トリオキサノナン(ジグリム)、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびジ−エチレン−グリコールのジメチルエーテルなどのエーテル;例えばジオキサンなどのオキサン;例えば、酢酸メチル、アジピン酸ジメチル 安息香酸メチル、フタル酸ジメチルおよびブチロラクトンなどのエステル;例えば、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびジメチルホルムアミドなどのアミド;例えば、ジメチルスルホキシド、ジ−イソプロピルスルホン、スルホラン(テトラヒドロチオフェン−2,2−ジオキシド)、2−メチルスルホラン、ジエチルスルホン、テトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシドおよび2−メチル−4−エチルスルホランなどのスルホキシドおよびスルホン;このような化合物のハロ変形形態を含む芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン
o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン:このような化合物のハロ変形形態を含むアルカン、例えばヘキサン、ヘプタン、2,2,3−トリメチルペンタン、塩化メチレンおよび四塩化炭素;ニトリル、例えばベンゾニトリルおよびアセトニトリルが挙げられる。
【0039】
非常に好適なのは、298または293Kおよび1×10Nm−2において、50未満の値、より好ましくは1〜30、最も好ましくは、1〜10、特に2〜8の範囲の誘電率を有する非プロトン性溶媒である。本明細書の文脈において、所与の共溶媒についての誘電率は、誘電体としてのその物質についてのコンデンサの容量と、誘電体の真空での同じコンデンサの容量との比率を表すその通常の意味で使用される。一般的な有機液体の誘電率の値は、Handbook of Chemistry and Physics、第76版(David R.Lide et al編、1995年にCRC pressにより出版)などの一般的な参考文献に見られ、通常、約20℃または25℃、すなわち約293.15kまたは298.15Kの温度、および大気圧、すなわち約1×10Nm−2について見積もられ、見積もられる換算係数を用いて、298.15Kおよび大気圧に容易に換算され得る。特定の化合物についての文献データが入手できない場合、誘電
率は、確立された物理化学的方法を用いて容易に測定され得る。
【0040】
液体の誘電率の測定は、Brookhaven Instruments Corporation(Holtsville,N.Y.)から入手可能なもの(例えば、モデルBI−870)およびScientifica Company(Princeton,N.J.)から入手可能なもの(例えばモデル850および870)などの様々な計測器に取り付けられる水浸プローブ、フロースループローブ(flow−through probe)、およびカップ型プローブなどの様々なセンサーによって容易に行うことができる。比較の一致性のために、特定のフィルタシステムについて好ましくは全ての測定が、例えば、水浴を使用することによって、実質的に同じ試料温度で行われる。一般に、物質の測定される誘電率は、温度が低くなるほど増加し、温度が高くなるほど減少する。本明細書のいずれかの範囲内にある誘電率は、ASTM D924に準拠して決定され得る。
【0041】
しかしながら、誘電率を決定するのにどの技術を使用するかについて迷った場合、1−200ε範囲に設定したScientifica Model 870 Dielectric Constant Meterが使用されるべきである。
【0042】
例えば、メチル−tert−ブチルエーテルの誘電率は4.34(293Kにおいて)であり、ジオキサンの誘電率は2.21(298Kにおいて)であり、トルエンの誘電率は2.38(298Kにおいて)であり、テトラヒドロフランの誘電率は7.5(295.2Kにおいて)であり、アセトニトリルの誘電率は37.5(298Kにおいて)である。誘電体の値は、化学および物理学のハンドブックから求められ、測定の温度が与えられる。
【0043】
あるいは、反応は、反応自体によって生成されない非プロトン性溶媒がなくても進行し得る。言い換えると、非プロトン性溶媒のみが反応生成物である。この非プロトン性溶媒は、反応自体によって単独で生成され得るか、またはより好ましくは、最初に溶媒として添加されてから、反応自体によっても生成される。
【0044】
あるいは、プロトン性溶媒またはその供給源が使用されてもよい。プロトン性溶媒としては、カルボン酸(上に定義されるような)またはアルコールが挙げられる。好適なプロトン性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどの低級アルコール、ならびに第一級および第二級アミンなどの、当業者に公知の従来のプロトン性溶媒が挙げられる。非プロトン性共溶媒とプロトン性共溶媒との混合物も、最初におよび反応自体によって生成されるときに用いられてもよい。
【0045】
プロトン性溶媒とは、ヒドロキシル基などにおいて酸素に、またはアミン基などにおいて窒素に結合されるものなどの供与可能な水素イオンを有する任意の溶媒を意味する。非プロトン性溶媒とは、プロトンを供与も受容もしないタイプの溶媒を意味する。
【0046】
金属
不明確さを避けるために記載すると、本明細書における第8族、第9族または第10族金属への言及は、現在の周期表の命名法における第8族、第9族および第10族を含むものと解釈されるべきである。用語「第8族、第9族または第10族」とは、Ru、Rh、Os、Ir、PtおよびPdなどの金属を選択することが好ましい。好ましくは、金属は、Ru、PtおよびPdから選択され、より好ましくは、金属はPdである。
【0047】
アニオン
このような第8族、第9族または第10族金属の好適な化合物としては、このような金
属と、硝酸;硫酸;酢酸およびプロピオン酸などの低級アルカン(最大でC12)酸;メタンスルホン酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸、t−ブチルスルホン酸、および2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などのスルホン酸;スルホン化イオン交換樹脂(低い酸濃度のスルホン樹脂を含む) 過塩素酸などの過ハロゲン酸(perhalic acid);トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸;オルトリン酸;ベンゼンホスホン酸などのホスホン酸;およびルイス酸とブレンステッド酸との間の相互作用から得られる酸との塩、またはこれらの酸に由来する弱配位性アニオンを含む化合物が挙げられる。好適なアニオンを提供し得る他の供給源としては、場合によりハロゲン化されたテトラフェニルホウ酸塩誘導体、例えばパーフルオロテトラフェニルホウ酸塩が挙げられる。さらに、ゼロ価のパラジウム錯体、特に不安定な配位子を有するもの、例えばトリフェニルホスフィンまたはジベンジリデンアセトンもしくはスチレンなどのアルケンまたはトリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが使用され得る。
【0048】
上記のアニオンは、金属の化合物として直接導入されてもよいが、また、金属または金属化合物とは別個に触媒系に導入されてもよい。好ましくは、アニオンは酸として導入される。好ましくは、酸は、18℃の希釈水溶液中で測定される6未満のpKaを有するように選択される。18℃の希釈水溶液中で測定されるpKaは、好ましくは、約5未満である。特に好ましい酸は、18℃の希釈水溶液中で測定されるpKaが2未満であるが、ジエンなどのいくつかの基材の場合、18℃の希釈水溶液中で測定される2〜6のpKaが好ましい。好適な酸および塩は、上に挙げられる酸および塩から選択され得る。
【0049】
したがって、好ましくは、本発明の触媒系は、18℃の水溶液中で6未満、より好ましくは、5未満、最も好ましくは、2未満のpKaを有する1つ以上の酸から好ましくは得られるアニオンの供給源を含む。
【0050】
このような酸を触媒系に添加することは好ましく、酸性の反応条件を提供する。
不明確さを避けるために記載すると、本明細書におけるpKaへの言及は、特に示されない限り、18℃の希釈水溶液中で測定されるpKaへの言及である。本明細書における本発明の趣旨では、pKaは、当業者に公知の好適な技術によって決定され得る。
【0051】
カルボニル化反応の際、存在するアニオンの量は、触媒系の触媒挙動にとって重要でない。第8族、第9族または第10族金属または化合物に対するアニオンのモル比は、1:1〜10000:1、好ましくは10:1〜2000:1、特に100:1〜1000:1であり得る。しかしながら、18℃の希釈水溶液中のpKaが0を超える弱酸については、モル比はより高くてもよく、1:1〜100,000:1、好ましくは、500:1〜500,000:1、より好ましくは、1000:1〜10,000:1であり得る。アニオンが酸および塩によって提供される場合、酸と塩の相対的比率は重要でない。したがって、共反応剤がアニオンの供給源として働く酸と反応すべきである場合、共反応剤に対する酸の量は、好適な量の遊離酸が存在するように選択されるべきである。
【0052】
有利なことに、本発明の配位子は、18℃の希釈水溶液中のpKaが0より大きくかつ6未満である比較的弱い酸によって意外にも良好な活性を示す。例えば、本発明の配位子は、トリフルオロ酢酸によって良好な活性を示し、プロピオン酸によって活性を示す。工業的プロセスにおいて、比較的弱い酸の存在下での活性の可能性は、プラント部品の腐食がより少なくなるため有利であろう。
【0053】
作用剤のカルボニル化およびプロセス条件
本発明の方法において、一酸化炭素が、純粋な形態でまたは窒素、二酸化炭素またはア
ルゴンなどの希ガスなどの不活性ガスで希釈されて使用され得る。
【0054】
反応速度を改善するために、水素がカルボニル化反応に場合により添加され得る。用いられるときの好適な濃度の水素は、一酸化炭素の0.1〜10%vol/vol、より好ましくは、一酸化炭素の1〜10%vol/vol、より好ましくは、一酸化炭素の2〜5%vol/vol、最も好ましくは、一酸化炭素の3〜5%vol/volの比率であり得る。
【0055】
溶媒の量に対する、反応に使用されるエチレン性不飽和化合物の量のモル比は重要でなく、広範に変化してもよく、例えば1:1〜1000:1mol/molである。好ましくは、溶媒の量に対する、反応に使用されるエチレン性不飽和化合物の量のモル比は、1:2〜1:500、より好ましくは、1:2〜1:100である。不明確さを避けるために記載すると、このような溶媒は、反応生成物および共反応剤を含む。
【0056】
カルボニル化反応に使用される本発明の触媒の量は重要でない。好ましくは、第8族、第9族または第10族金属の量が、エチレン性不飽和化合物1モル当たり1×10−7〜10−1モル、より好ましくは、エチレン性不飽和化合物1モル当たり、1×10−6〜10−1モル、最も好ましくは、1×10−6〜10−2モルの範囲であるとき、良好な結果が得られる。
【0057】
好ましくは、エチレン性不飽和化合物に対する式Iの配位子の量は、エチレン性不飽和化合物1モル当たり、1×10−6〜10−1、より好ましくは、1×10−6〜10−1、最も好ましくは、1×10−5〜10−2モルの範囲である。好ましくは、触媒の量は、商業的に許容される速度で生成物を生成するのに十分な量である。
【0058】
好ましくは、カルボニル化は、−30〜170℃、より好ましくは−10℃〜160℃、最も好ましくは20℃〜150℃の温度で行われる。特に好ましい温度は、40℃〜150℃で選択される温度である。あるいは、カルボニル化は、中温で行うことができ、状況によっては室温またはほぼ室温(20℃)で反応を行うことができることが特に有利である。
【0059】
好ましくは、低温でカルボニル化を行うとき、カルボニル化は、−30℃〜49℃、より好ましくは、−10℃〜45℃、さらにより好ましくは0℃〜45℃、最も好ましくは10℃〜45℃で行われる。特に好ましいのは、10〜35℃の範囲である。
【0060】
好ましくは、カルボニル化は、反応器中、0.01×10N.m−2−2×10N.m−2、より好ましくは0.02×10N.m−2−1×10N.m−2、最も好ましくは0.05〜0.5×10N.m−2のCO分圧で行われる。特に好ましいのは、0.1〜0.3×10N.m−2のCO分圧である。
【0061】
本発明の連続カルボニル化反応において、好ましくは、第8族、第9族または第10族金属に対する二座配位子の同等物の比率は、少なくとも1:1mol/molである。配位子は、金属のmol/molを超えていてもよいが、特に1:1〜2:1mol/molである。
【0062】
好ましくは、一般に、二座配位子についての、第8族、第9族または第10族金属に対する配位子のモル比は、1:1〜100:1、より好ましくは、1:1〜50:1、最も好ましくは、1:1〜20:1である。単座、三座などの配位子については、モル比は適宜変化する。
【0063】
好ましくは、二座配位子およびモノプロトン酸についての、反応器中の酸に対する配位子のモル比は、少なくとも1:2であり、最大で1:25000であり得る。しかしながら、典型的に、ほとんどの用途について、1:4〜1:5000、より典型的に、1:10〜1:2000の範囲が十分である。単座、三座などの配位子および/または二塩基酸、または三塩基酸などについては、モル比は適宜変化する。
【0064】
好ましくは、酸は、触媒系、またはその前駆体中に、前記金属に対する前記酸のモル比が、少なくとも4:1、より好ましくは4:1〜100000:1、さらにより好ましくは10:1〜75000:1、さらにより好ましくは20:1〜50000:1、さらに一層より好ましくは25:1〜50000:1、さらに一層より好ましくは30:1〜50000:1、なおさらにより好ましくは40:1〜40000:1、さらにより好ましくは100:1〜25000:1、さらに一層より好ましくは200:1〜25000:1、最も好ましくは550:1〜20000:1、または2000:1超〜20000:1であるような量で存在する。あるいは、前記比率は、125:1〜485:1、より好ましくは150:1〜450:1、さらにより好ましくは175:1〜425:1、なおさらにより好ましくは200:1〜400:1、最も好ましくは225:1〜375:1の範囲であり得る。
【0065】
二塩基酸、三塩基酸などについては、モル比は適宜変化する。不明確さを避けるために記載すると、上記の比率条件は、バッチ反応の開始時または連続反応中に適用される。
記載されるように、本発明の触媒系は、均一系にまたは不均一系に使用され得る。好ましくは、触媒系は、均一系に使用される。
【0066】
好適には、本発明の触媒は、カルボニル化反応において触媒をその場で使用する前に別個の工程で調製される。
好都合には、本発明の方法は、本明細書において定義される第8族、第9族または第10族金属あるいはその化合物を、上述したアルカノールまたは非プロトン性溶媒あるいはそれらの混合物のうちの1つなどの好適な溶媒中に溶解させることによって行われ得る。特に好ましい溶媒は、特定のカルボニル化反応の生成物であり得、他の溶媒または共反応剤と混合されてもよい。次に、混合された金属および溶媒は、本明細書において定義される式Iの化合物と混合されてもよい。
【0067】
一酸化炭素は、反応中に不活性である他の気体の存在下で使用され得る。このような気体の例としては、水素、窒素、二酸化炭素およびアルゴンなどの希ガスが挙げられる。
反応の生成物は、任意の好適な手段によって他の成分と分離され得る。しかしながら、一般に著しく高い選択性によって明らかなように、著しく少ない副生成物が形成され、それによって、生成物の最初の分離後にさらに精製する必要性が低減されることが本発明の方法の利点である。さらなる利点は、触媒系を含む他の成分をさらなる反応に循環および/または再利用して、新しい触媒の補充を最小限に抑えることができることである。
【0068】
商業的に許容される時間スケール内のカルボニル化が明らかに好ましい場合を除き、カルボニル化の持続時間に特に制限はない。バッチ反応のカルボニル化は、最大で48時間、より典型的に、最大で24時間、最も典型的に最大で12時間で行われ得る。典型的に、カルボニル化は、少なくとも5分間、より典型的に、少なくとも30分間、最も典型的に、少なくとも1時間である。連続反応において、このような時間スケールは明らかに無関係であり、連続反応は、TONが商業的に許容される限り、触媒が補充を必要とするまで継続し得る。重大なことに、本発明において、補充までのこの時間スケールは増加され得る。
【0069】
本発明の触媒系は、反応剤の1つ以上によって、または本明細書において定義される1
つ以上の溶媒の使用によって形成され得る液相において構成されるのが好ましい。
エチレン性不飽和化合物
好適には、本発明の方法を用いて、一酸化炭素および可動の水素原子を有する共反応剤、および場合によりアニオンの供給源の存在下でのエチレン性不飽和化合物のカルボニル化を触媒することができる。本発明の配位子により、カルボニル化、特に、モノカルボニル化反応の際に意外にも高いTONが得られる。したがって、本発明の方法を用いることによって、カルボニル化プロセスの商業化が増大されるであろう。
【0070】
有利なことに、エチレン性不飽和化合物などのカルボニル化に本発明の触媒系を使用すると、特にアルコキシカルボニル化の場合に良好な速度も得られる。
モノカルボニル化とは、エチレン性不飽和部分と1つの一酸化炭素分子を組み合わせて、第2のまたはさらなるエチレン性不飽和化合物をさらに組み込まずに新たに組み込まれたカルボニル化最終生成物を生成することを意味する。したがって、モノカルボニル化反応の最終生成物は、複数の一酸化炭素およびエチレン性不飽和化合物を組み込んでより大きい分子にすることから得られるポリマーまたはオリゴマーではあり得ない。しかしながら、エチレン性不飽和化合物中に2つ以上の二重結合がある場合、各二重結合は、1つの一酸化炭素分子と組み合わされて、新しい化学種を形成し得るが、第2のまたはさらなるエチレン性不飽和化合物のさらなる組み込みは起こらず、したがって、モノカルボニル化が理解されるはずである。
【0071】
本明細書におけるエチレン性不飽和化合物への言及は、アルケン、アルキン、共役および非共役ジエン、官能性アルケンなどに見られるものなどの化合物中の任意の1つ以上の不飽和C−C結合を含むものと解釈されるべきである。
【0072】
本発明に適したエチレン性不飽和化合物は、1分子当たり2〜50個の炭素原子を有するエチレン性不飽和化合物、またはそれらの混合物である。好適なエチレン性不飽和化合物は、1分子当たり1つ以上の単離または共役不飽和結合を有し得る。好ましいのは、2〜20個の炭素原子を有する化合物、またはそれらの混合物であり、さらにより好ましいのは、最大で18個の炭素原子、さらにより好ましくは最大で16個の炭素原子を有する化合物であり、同様により好ましい化合物は、最大で10個の炭素原子を有する。エチレン性不飽和化合物は、官能基、または窒素、硫黄などのヘテロ原子または酸化物をさらに含み得る。例としては、官能基としてのカルボン酸、エステルまたはニトリルが挙げられる。プロセスの好ましい基において、エチレン性不飽和化合物は、オレフィンまたはオレフィンの混合物である。好適なエチレン性不飽和化合物としては、アセチレン、メチルアセチレン、プロピルアセチレン、1,3−ブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ペンテンニトリル、メチル3−ペンテノエートなどのペンテン酸アルキル、ペンテン酸(2−および3−ペンテン酸など)、ヘプテン、酢酸ビニルなどのビニルエステル、オクテン、ドデセンが挙げられる。
【0073】
特に好ましいエチレン性不飽和化合物は、エチレン、酢酸ビニル、1,3−ブタジエン、ペンテン酸アルキル、ペンテンニトリル、ペンテン酸(3ペンテン酸など)、アセチレン、ヘプテン、ブチレン、オクテン、ドデセンおよびプロピレンである。
【0074】
特に好ましいエチレン性不飽和化合物は、エチレン、プロピレン、ヘプテン、オクテン、ドデセン、酢酸ビニル、1,3−ブタジエンおよびペンテンニトリルであり、最も特に好ましいのはエチレンである。
【0075】
またさらに、飽和炭化水素とともに内部二重結合および/または分枝状アルケンを含有するアルケンの混合物をカルボニル化することが可能である。例は、ラフィネート1、ラフィネート2および分解装置から得られる他の混合流、またはアルケンの二量化(ブテン
の二量化が1つの具体例である)およびフィッシャー・トロプシュ反応から得られる混合流である。
【0076】
本明細書におけるビニルエステルへの言及は、式V:
66−C(O)OCR63=CR6465
の置換または非置換のビニルエステルへの言及を含み、式中、R66が、水素、アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)R2728、SR29、C(O)SR30から選択されてもよく、ここで、R19〜R30が、本明細書において定義されるとおりである。
【0077】
好ましくは、R66が、水素、アルキル、フェニルまたはアルキルフェニル、より好ましくは、水素、フェニル、C〜Cアルキルフェニルまたはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルなどのC〜Cアルキル、さらにより好ましくは、C〜Cアルキル、特にメチルから選択される。
【0078】
好ましくは、R63〜R65がそれぞれ、独立して、本明細書において定義されるように水素、アルキル、アリールまたはHetを表す。最も好ましくは、R63〜R65が、独立して、水素を表す。
【0079】
エチレン性不飽和化合物が共役ジエンである場合、1分子当たり少なくとも2つの共役二重結合を含む。共役とは、7c−軌道の位置が、分子中の他の軌道と重なり得るような状態であることを意味する。したがって、少なくとも2つの共役二重結合を有する化合物の作用は、共役結合を有さない化合物の作用とはいくつかの点で異なることが多い。
【0080】
共役ジエンは、好ましくは1分子当たり4〜22個、より好ましくは4〜10個の炭素原子を有する共役ジエンである。共役ジエンは、アリール、アルキル、ヘテロ(好ましくは酸素)、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−SR29、−C(O)SR30、−C(S)N(R27)R28または−CF(ここで、R19〜R28が本明細書において定義されるとおりである)から選択される1つ以上のさらなる置換基で置換されるか、または非置換であり得る。最も好ましくは、共役ジエンは、共役ペンタジエン、共役ヘキサジエン、シクロペンタジエンおよびシクロヘキサジエンから選択され、そのうちの全てが、上に記載されるように置換されるかまたは非置換であり得る。特に好ましいのは、1,3−ブタジエンおよび2−メチル−1,3−ブタジエンであり、最も特に好ましいのは、非置換の1,3−ブタジエンである。
【0081】
架橋基R
好ましくは、定義されるように、少なくとも1つの芳香環の利用可能な隣接する原子上でAおよびBに結合される基Rも、芳香族構造の1個以上のさらなる芳香族環状原子上の1つ以上の置換基Yで置換される。好ましくは、芳香族構造上の置換基Yは、X=1−nΣtY≧4となるように合計でX=1−nΣtY個の、水素以外の原子を有し、式中、nが、置換基Yの合計数であり、tYが、特定の置換基Y上の水素以外の原子の合計数を表す。
【0082】
典型的に、2つ以上の置換基Y(以後、単にYとも呼ばれる)がある場合、いずれか2つが、芳香族構造の同じかまたは異なる芳香族環状原子上に位置し得る。好ましくは、芳香族構造上に、10以下のY基があり、すなわち、nが1〜10であり、より好ましくは1〜6つのY基があり、最も好ましくは1〜4つのY基があり、特に、1、2または3つの置換基Y基が、芳香族構造上にある。置換される環状芳香族原子は、炭素またはヘテ
ロであり得るが、好ましくは炭素である。
【0083】
好ましくは、X=1−nΣtYは、4〜100、より好ましくは、4〜60、最も好ましくは、4〜20、特に4〜12である。
好ましくは、1つの置換基Yがある場合、Yは、フェニルと少なくとも同程度の立体障害のある基を表し、2つ以上の置換基Yがある場合、それらはそれぞれ、フェニルと同程度の立体障害を有し、および/または組み合わされて、フェニルより高程度の立体障害を有する基を形成する。
【0084】
本明細書における立体障害とは、後述される基R〜R12または置換基Yのどちらの文脈であるかにかかわらず、当業者によって容易に理解されるような用語を意味するが、不明確さを避けるために記載すると、フェニルより高程度の立体障害という用語は、以下の条件にしたがってPHY(基Yを表す)がNi(0)(CO)と8倍過剰に反応される場合、PHPhより低い置換度(DS)を有することを意味すると解釈することができる。同様に、t−ブチルより高程度の立体障害への言及は、PHt−Buなどと比較したDS値への言及として解釈することができる。2つのY基が比較され、PHYが基準ほど高程度の立体障害を有さない場合、PHYは、その基準と比較されるべきである。同様に、3つのY基が比較され、PHYまたはPHYが、標準より高程度の立体障害を有することがまだ決定されていない場合、PYが比較されるべきである。4つ以上のY基がある場合、それらは、t−ブチルより高程度の立体障害を有するものと解釈されるべきである。
【0085】
本明細書における本発明の文脈の立体障害は、Chapman and Hallによって1981年に出版された、C.Mastersによる“Homogenous Transition Metal Catalysis−A Gentle Art”の14頁(以下参照)に説明される。
【0086】
Tolman(“Phosphorus Ligand Exchange Equilibria on Zerovalent Nickel.A Dominant Role for Steric Effects”,Journal of American Chemical Society,92,1970,2956−2965)は、Ni(O)錯体の安定性を主に決定する配位子の特性が、それらの電子的性質よりそれらの大きさであると結論付けている。
【0087】
基Yの相対的立体障害を決定するために、DSを決定するためのTolmanの方法が、上述のように決定される基のリン類似体に使用され得る。
Ni(CO)のトルエン溶液を8倍過剰のリン配位子で処理した後;赤外スペクトルのカルボニル伸縮振動を用いて、配位子でCOを置換した。溶液を、100°で64時間、密閉管中で加熱することによって平衡化した。100°でさらに74時間、さらに加熱したところ、スペクトルに大きな変化はなかった。次に、平衡化溶液のスペクトルのカルボニル伸縮バンドの周波数および強度を決定する。置換度は、相対的強度から、およびバンドの減衰係数が全て同程度の大きさであるという仮定から半定量的に推定することができる。例えば、P(C11の場合、Ni(CO)LのAバンドおよびNi(CO)のBバンドはほぼ同じ強度であるため、置換度は1.5と推定される。この実験でそれぞれの配位子を区別できない場合、ジフェニルリンPPhHまたはジ−t−ブチルリンを、場合によってはPYH同等物と比較すべきである。またさらに、この実験でやはり配位子を区別できない場合、PPhまたはP(Bu)配位子を、場合によってはPYと比較すべきである。Ni(CO)錯体を完全に置換する小さい配位子では、このようなさらなる実験が必要となり得る。
【0088】
また、基Yは、その円錐角への言及によって定義することができ、この円錐角は、本発明の文脈において、芳香環の中間点を中心とする円錐の頂角と定義することができる。中間点とは、環式環原子から等距離の環の面における点を意味する。
【0089】
好ましくは、少なくとも1つの基Yの円錐角または2つ以上のY基の円錐角の合計は、少なくとも10°、より好ましくは、少なくとも20°、最も好ましくは、少なくとも30°である。円錐角は、ここで円錐の頂角が芳香環の中間点を中心とすることを除いて、Tolmanの方法{C.A.Tolman Chem.Rev.77,(1977),313−348}にしたがって測定されるべきである。このTolman円錐角の改変された使用は、シクロペンタジエニルジルコニウムエテン重合触媒におけるものなどの立体作用を測定するために他の系において使用されている(Journal of Molecular Catalysis:Chemical 188,(2002),105−113)。
【0090】
置換基Yは、Q原子とQ原子との間の活性部位に対して立体障害を与えるのに適した大きさのものになるように選択される。しかしながら、置換基が金属離脱を防止し、その挿入経路を案内し、一般により安定した触媒確認(catalytic confirmation)を提供し、または他の働きをするかどうかは知られていない。
【0091】
特に好ましい配位子は、Yが−SR404142を表す場合に見られ、ここで、Sが、Si、C、N、S、Oまたはアリールを表し、R404142が本明細書において以下に定義されるとおりである。好ましくは、各Yおよび/または2つ以上のY基の組合せは、t−ブチルと少なくとも同程度の立体障害を有する。
【0092】
より好ましくは、1つのみの置換基Yが存在する場合、Yはt−ブチルと少なくとも同程度の立体障害を有するが、2つ以上の置換基Yが存在する場合、Yはそれぞれ、1つの基とみなされる場合、フェニルと少なくとも同程度の立体障害を有し、t−ブチルと少なくとも同程度の立体障害を有する。
【0093】
好ましくは、Sがアリールである場合、R40、R41およびR42は、独立して、水素、アルキル、−BQ−X(X)(ここで、B、XおよびXは本明細書において定義されるとおりであり、Qは、上記のQまたはQとして定義される)、リン、アリール、アリーレン、アルカリール、アリーレンアルキル、アルケニル、アルキニル、het、ヘテロ、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−SR29、−C(O)SR30、−C(S)N(R27)R28、−CF、−SiR717273またはアルキルリンである。
【0094】
本明細書において言及されるR19〜R30は、独立して、水素、非置換または置換アリールまたは非置換または置換アルキルから一般に選択され得、さらに、R21は、ニトロ、ハロ、アミノまたはチオであってよい。
【0095】
好ましくは、Sが、Si、C、N、SまたはOである場合、R40、R41およびR42は、独立して、水素、アルキル、リン、アリール、アリーレン、アルカリール、アラルキル、アリーレンアルキル、アルケニル、アルキニル、het、ヘテロ、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−SR29、−C(O)SR30、−C(S)N(R27)R28、−CF、−SiR717273、またはアルキルリンであり、ここで、R40〜R42のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R19〜R30は本明細書において定義されるとおりであり;R71〜R73は、R40〜R
として定義されるが、好ましくはC〜Cアルキルまたはフェニルである。
【0096】
好ましくは、Sは、Si、Cまたはアリールである。しかしながら、組み合わせられたY基の1つ以上としてまたは複数のY基の場合、N、SまたはOが好ましいこともある。不明確さを避けるために記載すると、酸素または硫黄が二価であり得るとき、R40〜R42はまた、孤立電子対であり得る。
【0097】
好ましくは、基Yの代わりにまたは基Yに加えて、芳香族構造は、非置換であってよく、または、可能な場合、Y(非芳香族環状原子上)、アルキル、アリール、アリーレン、アルカリール、アラルキル、アリーレンアルキル、アルケニル、アルキニル、het、ヘテロ、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−SR29、−C(O)SR30、−C(S)N(R27)R28、−CF、−SiR717273、またはアルキルリンから選択される基でさらに置換されてもよく、ここで、R19〜R30は、本明細書において定義されるとおりであり、Yの場合または第1の態様のYの定義を満たす基の場合、結合は、芳香族構造の非環状芳香族原子との結合であり;R71〜R73は、R40〜R42として定義されるが、好ましくはC〜Cアルキルまたはフェニルである。さらに、少なくとも1つの芳香環が、メタロセン錯体の一部であり得、例えば、Rが、シクロペンタジエニルまたはインデニルアニオンである場合、それは、フェロセニル、ルテノシル(ruthenocyl)、モリブデノセニル(molybdenocenyl)またはインデニル同等物などの金属錯体の一部を形成してもよい。
【0098】
このような錯体は、本発明の文脈の範囲内で芳香族構造とみなされるべきであるため、それらが2つ以上の芳香環を含む場合、置換基Yは、QおよびQ原子が連結されるのと同じ芳香環またはその構造のさらなる芳香環上にあってもよい。例えば、メタロセンの場合、置換基Yは、メタロセン構造の任意の1つ以上の環上にあってもよく、これは、QおよびQが連結されるのと同じ環であってもまたは異なる環であってもよい。
【0099】
本明細書において定義される基Yで置換され得る好適なメタロセン型の配位子は、当業者に公知であり、国際公開第04/024322号パンフレットにおいて広範に定義されている。このような芳香族アニオンに特に好ましいY置換基は、SがSiである場合のものである。
【0100】
一般に、しかしながら、Sがアリールである場合、アリールは、非置換であってもよく、またはR40、R41、R42に加えて、上記の芳香族構造について定義されるさらなる置換基のいずれかでさらに置換されていてもよい。
【0101】
本発明のより好ましいY置換基は、−t−ブチルまたは2−フェニルプロパ−2−イルなどのt−アルキルまたはt−アルキル,アリール、−SiMe、−フェニル、アルキルフェニル−、フェニルアルキル−またはホスフィノメチルなどのホスフィノアルキル−から選択され得る。
【0102】
好ましくは、SがSiまたはCであり、R40〜R42のうちの1つ以上が水素である場合、R40〜R42のうちの少なくとも1つは、必要な立体傷害を与えるのに十分に嵩高くすべきであり、このような基は、好ましくはリン、ホスフィノアルキル−、−t−ブチルなどの第三級炭素を有する基、−アリール、−アルカリール、−アラルキルまたは第三級シリルである。
【0103】
好ましくは、Yが存在するか否かにかかわらず、ヒドロカルビル芳香族構造は、メタロセン錯体でない場合、置換基を含めて、5個から最大で70個の環状原子、より好ましく
は、5〜40個の環状原子、最も好ましくは、5〜22個の環状原子、特に5または6個の環状原子を有する。
【0104】
好ましくは、ヒドロカルビル芳香族構造は、単環式であってもまたは多環式であってもよい。環状芳香族原子は、炭素またはヘテロであってよく、本明細書におけるヘテロへの言及は、硫黄、酸素および/または窒素への言及である。しかしながら、QおよびQ原子が、少なくとも1つの芳香環の利用可能な隣接する環状炭素原子に連結されることが好ましい。典型的に、環状ヒドロカルビル構造が多環式である場合、それは好ましくは二環式または三環式である。芳香族構造におけるさらなる環は、それ自体芳香族であってもまたは芳香族でなくてもよく、芳香族構造は、これにしたがって理解されるべきである。本明細書において定義される非芳香族環式環は、不飽和結合を含み得る。環状原子とは、環状骨格の一部を形成する原子を意味する。
【0105】
好ましくは、架橋基−Rは、さらに置換されていてもまたはそうでなくても、好ましくは、200個未満の原子、より好ましくは、150個未満の原子、より好ましくは、100個未満の原子を含む。
【0106】
芳香族構造の1個のさらなる芳香族環状原子という用語は、芳香族構造における任意のさらなる芳香族環状原子を意味し、この芳香族環状原子は、QまたはQ原子が連結基を介して連結される少なくとも1つの芳香環の利用可能な隣接する環状原子ではない。
【0107】
好ましくは、前記利用可能な隣接する環状原子の両側に直接隣接する環状原子は、好ましくは置換されていない。例として、環の1位を介してQ原子に結合され、環の2位を介してQ原子に結合された芳香族フェニル環は、好ましくは、環の4位および/または5位で置換された1個以上の前記さらなる芳香族環状原子と、3位および6位で置換されていない前記利用可能な隣接する環状原子に対して直接隣接する2個の環状原子とを有する。しかしながら、これは、単に好ましい置換基配列に過ぎず、例えば環の3位および6位における置換が可能である。
【0108】
芳香環という用語は、QおよびQ原子がそれぞれBおよびAを介して連結される少なくとも1つの環が芳香族であることを意味し、芳香族は、好ましくは、フェニル、シクロペンタジエニルアニオン、ピロリル、ピリジニルのタイプの構造だけでなく、前記環において自由に移動できる非局在化π電子を有する任意の環に見られるものなどの芳香性を有する他の環も含むように広く解釈されるべきである。
【0109】
好ましい芳香環は、環中に5または6個の原子を有するが、[14]アンヌレン、[18]アンヌレンなどの4n+2個のπ電子を有する環も可能である。
ヒドロカルビル芳香族構造Rは、ベンゼン−1,2ジイル、フェロセン−1,2−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、4または5メチルベンゼン−1,2−ジイル、1’−メチルフェロセン−1,2−ジイル、4および/または5t−アルキルベンゼン−1,2−ジイル、4,5−ジフェニル−ベンゼン−1,2−ジイル、4および/または5−フェニル−ベンゼン−1,2−ジイル、4,5−ジ−t−ブチル−ベンゼン−1,2−ジイル、4または5−t−ブチルベンゼン−1,2−ジイル、2,3,4および/または5t−アルキル−ナフタレン−8,9−ジイル、1H−インデン−5,6−ジイル、1,2および/または3メチル−1H−インデン−5,6−ジイル、4,7メタノ−1H−インデン−1,2−ジイル、1,2および/または3−ジメチル−1H−インデン5,6−ジイル、1,3−ビス(トリメチルシリル)−イソベンゾフラン−5,6−ジイル、4−(トリメチルシリル)ベンゼン−1,2ジイル、4−ホスフィノメチルベンゼン−1,2ジイル、4−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)ベンゼン−1,2ジイル、4−ジメチルシリルベンゼン−1,2ジイル、4−ジ−t−ブチル,メチルシリルベンゼン−1,2ジイ
ル、4−(t−ブチルジメチルシリル)−ベンゼン−1,2ジイル、4−t−ブチルシリル−ベンゼン−1,2ジイル、4−(トリ−t−ブチルシリル)−ベンゼン−1,2ジイル、4−(2’−tert−ブチルプロパ−2’−イル)ベンゼン−1,2ジイル、4−(2’,2’,3’,4’,4’ペンタメチル−ペンタ−3’−イル)−ベンゼン−1,2ジイル、4−(2’,2’,4’,4’−テトラメチル,3’−t−ブチル−ペンタ−3’−イル)−ベンゼン−1,2ジイル、4−(または1’)t−アルキルフェロセン−1,2−ジイル、4,5−ジフェニル−フェロセン−1,2−ジイル、4−(または1’)フェニル−フェロセン−1,2−ジイル、4,5−ジ−t−ブチル−フェロセン−1,2−ジイル、4−(または1’)t−ブチルフェロセン−1,2−ジイル、4−(または1’)(トリメチルシリル)フェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)ホスフィノメチルフェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)(2’−フェニルプロパ−2’−イル)フェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)ジメチルシリルフェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)ジ−t−ブチル,メチルシリルフェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)(t−ブチルジメチルシリル)−フェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)t−ブチルシリル−フェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)(トリ−t−ブチルシリル)−フェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)(2’−tert−ブチルプロパ−2’−イル)フェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)(2’,2’,3’,4’,4’ペンタメチル−ペンタ−3’−イル)−フェロセン−1,2ジイル、4−(または1’)(2’,2’,4’,4’−テトラメチル,3’−t−ブチル−ペンタ−3’−イル)−フェロセン−1,2ジイルから選択され得る。
【0110】
本明細書における構造において、可能な立体異性体が2つ以上ある場合、全てのこのような立体異性体が意図される。
上述したように、ある実施形態において、芳香族構造のさらなる芳香族環状原子上の前記Yおよび/またはYでない置換基の2つ以上が存在してもよい。場合により、前記2つ以上の置換基は、特にそれ自体が隣接する環状芳香族原子上にある場合、組み合わさって、脂環式環構造などのさらなる環構造を形成し得る。
【0111】
このような脂環式環構造は、飽和または不飽和、架橋または非架橋であってもよく、アルキル、本明細書に定義されるY基、アリール、アリーレン、アルカリール、アラルキル、アリーレンアルキル、アルケニル、アルキニル、het、ヘテロ、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−SR29、−C(O)SR30、−C(S)N(R27)R28、−CF、−SiR717273、またはホスフィノアルキルで置換されてもよく、ここで、存在する場合、R40〜R42のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R19〜R30は、本明細書において定義されるとおりであり;R71〜R73は、R40〜R42として定義されるが、好ましくはC〜Cアルキルまたはフェニルであり、および/または1個以上(好ましくは合計で4個未満)の酸素、窒素、硫黄、ケイ素原子によって、またはシラノもしくはジアルキルケイ素基またはそれらの混合物によって介在される。
【0112】
このような構造の例としては、ピペリジン、ピリジン、モルホリン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、フラン、ジオキサン、アルキル置換DIOP、2−アルキル置換1,3ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、1,4ジチアン、ピペリジン、ピロリジン、チオモルホリン、シクロへキセノン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、アダマンタン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、テトラヒドロ−フラン−2−オン、デルタバレロラクトン、ガンマ−ブチロラクトン、グルタル酸無水物、ジヒドロイミダゾール、トリアザシクロノナン、トリアザシクロデカン、チアゾリジン、ヘキサヒドロ−1H−インデン(5,6ジイル)
、オクタヒドロ−4,7メタノ−インデン(1,2ジイル)およびテトラヒドロ−1H−インデン(5,6ジイル)が挙げられ、そのうちの全てが、本明細書においてアリールについて定義されるように非置換であってもまたは置換されていてもよい。
【0113】
しかしながら、組み合わせられた基を形成してもまたは形成しなくても、QおよびQが前記連結基を介して連結される前記利用可能な隣接する環状原子の両側の直接隣接する芳香族環状原子が非置換であることが好ましく、好ましい置換が、少なくとも1つの芳香環上のどこか、または芳香族構造が2つ以上の芳香環を含む場合には芳香族構造のどこかにあり、組み合わせられたY置換基の好ましい位置は、これにしたがって理解されるべきである。
【0114】
本発明の範囲内の非置換および置換芳香族架橋二座配位子の非限定的な具体例は、特許請求の範囲に記載されている。
配位子の前記一覧において、「ホスフィノメチル−アダマンチル」という用語は、以下の基、2−ホスフィノメチル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシル、2−ホスフィノメチル−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシル2−ホスフィノメチル−1,3,5,7−テトラ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシル、2−ホスフィノメチル−パーフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ{3.3.1.1[3.7]}−デシルまたは2−ホスフィノメチル−1,3,5−トリ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシルのいずれか1つを意味する。
【0115】
配位子の前記一覧において、「ホスファ−アダマンチル」という用語は、以下の基、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシル、2−ホスファ−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシル、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシル、パーフルオロ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ{3.3.1.1[3.7]}−デシルまたは2−ホスファ−1,3,5−トリ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシルのいずれか1つを意味する。
【0116】
不明確さを避けるために記載すると、2−ホスフィノメチル−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシルなどの構造は、以下のとおりである:
【0117】
【化1】

同様に、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−{3.3.1.1[3.7]}デシルの構造は、以下のとおりである:
【0118】
【化2】

いずれの場合も、リンが、ホスファ−アダマンチル骨格における2個の第三級炭素原子に結合されることが理解されよう。
【0119】
本発明の配位子の選択された構造には以下のものが含まれる:
【0120】
【化3】

1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン
【0121】
【化4】

1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)フェロセン,
【0122】
【化5】

1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジフェニルベンゼン;
【0123】
【化6】

(式中、Py−2−イルが、ピリジン−2−イルを表す)
1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジフェニルベンゼン;
【0124】
【化7】

1−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−4−(トリメチルシリル)ベンゼン
【0125】
【化8】

1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジフェニルフェロセン。
【0126】
配位子の上記の例の構造において、X〜Xの第三級炭素を有する基、Qおよび/またはQ基のリンに結合されたt−ブチルのうちの1つ以上が、好適な代替基で置換され得る。好ましい代替基は、アダマンチル、1,3ジメチルアダマンチル、コングレシル(congressyl)、ノルボルニルまたは1−ノルボンジエニル(norbondienyl)であり、またはXおよびXはともに、リンと一緒になって、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサアダマンチル(trioxadamantyl)または2−ホスファ−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキサアダマンチルなどの2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}デシル基を形成する。ほとんどの実施形態において、一価のX/X基およびX/X基は同じであることが好ましいが、本発明において一般に、これらの選択された配位子の活性部位の周りに非対称性をさらに生成するのに、異なる基を使用することも有利であり得る。
【0127】
同様に、連結基AまたはBの一方は、存在しなくてもよく、したがって、AまたはBのみがメチレンであり、メチレン基に結合されていないリン原子は、リン原子間に3つの炭素架橋をもたらす環炭素に直接結合される。
【0128】
置換基X2〜4
特許請求の範囲に定義される制限およびXがXと同じである場合の好ましい状況を前提として、置換基X2〜4、特にXおよびXは様々な基を表すことができる。例えば、基Xは、CH(R)(R)を表すことができ、Xは、CR(R)(R)を表すことができ、Xは、CR10(R11)(R12)を表すことができ、R〜Rは、水素、アルキル、アリールまたはhetを表し、R〜R12は、アルキル、アリールまたはhetを表す。あるいは、XはArを表す。好ましくは、XがArを表す場合、基は、C〜Cアルキル基、O−C〜Cアルキル基、−CN、−F、−Si(アルキル)、−COOアルキル、−C(O)−、または−CFで置換される。好ましくは、Ar基は、Qに結合された環炭素に隣接する炭素において、すなわちフェニル環のオルト位において置換される。
【0129】
特に好ましいのは、有機基R〜Rおよび/またはR10〜R12、あるいは、R〜R12が、それらのそれぞれの第三級炭素原子と結合される場合、t−ブチルと少なくとも同程度の立体障害を有する複合基を形成する場合である。
【0130】
立体基は、環状、部分環状または非環状であり得る。環状または部分環状である場合、基は、置換されていてもまたは非置換であってもよく、あるいは飽和または不飽和であってもよい。環状または部分環状基は、好ましくは、環状構造中に、第三級炭素原子を含めて、C〜C34、より好ましくはC〜C24、最も好ましくはC10〜C20の炭素原子を含有し得る。環状構造は、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30、C(S)NR2728、アリールまたはHetから選択される1つ以上の置換基で置換されてもよく、ここで、R19〜R30はそれぞれ、独立して、水素、アリールまたはアルキルを表し、および/または1つ以上の酸素または硫黄原子によって、またはシラノもしくはジアルキルケイ素基によって介在される。
【0131】
特に、環状である場合、Xおよび/またはXは、コングレシル、ノルボルニル、l−ノルボルナジエニルまたはアダマンチルを表すことができる。
およびXは、それらが結合されるQと一緒になって、場合により置換される2−Q1−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはそれらの誘導体を形成することができ、またはXおよびXは、それらが結合されるQと一緒になって、式1bの環系を形成することができる。
【0132】
【化9】

あるいは、基Xおよび/またはXのうちの1つ以上は、配位子が結合される固相を表すことができる。
【0133】
特に好ましいのは、XおよびXが同じであり、XおよびXが同じである場合である。
好ましい実施形態において、R〜Rはそれぞれ、独立して、水素、アルキル、アリール、またはHetを表し、R〜R12はそれぞれ、独立して、アルキル、アリール、またはHetを表し;
19〜R30はそれぞれ、独立して、水素、アルキル、アリールまたはHetを表し;
49およびR54は、存在する場合、それぞれ独立して、水素、アルキルまたはアリールを表し;
50〜R53は、存在する場合、それぞれ独立して、アルキル、アリールまたはHetを表し;
YYは、存在する場合、独立して、酸素、硫黄またはN−R55を表し、ここで、R55は、水素、アルキルまたはアリールを表す。
【0134】
好ましくは、R〜RおよびR〜R12は、水素でない場合、それぞれ独立して、アルキルまたはアリールを表す。より好ましくは、R〜RおよびR〜R12はそれぞれ、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cアルキルフェニル(ここで、フェニル基は、本明細書において定義されるようにアリールとして場合により置換される)またはフェニル(ここで、フェニル基は、本明細書において定義されるようにアリールとして場合により置換される)を表す。さらにより好ましくは、R〜RおよびR〜R12はそれぞれ、独立して、C〜Cアルキルを表し、これは、本明細書において定義されるようにアルキルとして場合により置換される。最も好ましくは、R〜RおよびR〜R12はそれぞれ、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシル、特にメチルなどの非置換のC〜Cアルキルを表す。
【0135】
本発明の特に好ましい実施形態において、RおよびR10はそれぞれ、本明細書において定義される同じアルキル、アリールまたはHet部分を表し、RおよびR11はそれぞれ、本明細書において定義される同じアルキル、アリールまたはHet部分を表し、RおよびR12はそれぞれ、本明細書において定義される同じアルキル、アリールまたはHet部分を表す。より好ましくはRおよびR10はそれぞれ、同じC〜Cアルキル、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはシクロヘキシルなどの非置換のC〜Cアルキルを表し;RおよびR11はそれぞれ、独立して、上で定義される同じC〜Cアルキルを表し;RおよびR12はそれぞれ、独立して、上で定義される同じC〜Cアルキルを表す。例えば:RおよびR10はそれぞれメチルを表し;RおよびR11はそれぞれエチルを表し;RおよびR12はそれぞれn−ブチルまたはn−ペンチルを表す。
【0136】
本発明の特に好ましい実施形態において、各R〜R12基は、本明細書において定義される同じアルキル、アリール、またはHet部分を表す。好ましくは、アルキル基である場合、各R〜R12は、同じC〜Cアルキル基、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルなどの非置換のC〜Cアルキルを表す。より好ましくは、各R〜R12は、メチルまたはtert−ブチル、最も好ましくは、メチルを表す。アダマンチル、コングレシル、ノルボルニルまたは1−ノルボルンジエニル(norborndienyl)基は、水素原子に加えて、アルキル、−OR19、−OC(O)R20、ハロ、ニトロ、−C(O)R21、−C(O)OR22、シアノ、アリール、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)N(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CF、−P(R56)R57、−PO(R58)(R59)、−PO、−PO(OR60)(OR61)、または−SO62から選択される1つ以上の置換基を場合により含んでいてもよく、ここで、R19〜R30、アルキル、ハロ、シアノおよびアリールは、本明細書において定義されるとおりであり、R56〜R62はそれぞれ、独立して、水素、アルキル、アリールまたはHetを表す。
【0137】
好適には、アダマンチル、コングレシル、ノルボルニルまたは1−ノルボルンジエニル基が、上で定義される1つ以上の置換基で置換される場合、非常に好ましい置換基としては、非置換のC〜Cアルキル、−OR19、−OC(O)R20、フェニル、−C(O)OR22、フルオロ、−SOH、−N(R23)R24、−P(R56)R57、−C(O)N(R25)R26および−PO(R58)(R59)、−CFが挙げられ、ここで、R19は、水素、非置換のC〜Cアルキルまたはフェニルを表し、R20、R22、R23、R24、R25、R26はそれぞれ、独立して、水素または非置換のC〜Cアルキルを表し、R56〜R59はそれぞれ、独立して、非置換のC〜Cアルキルまたはフェニルを表す。特に好ましい実施形態において、置換基は、C〜C
アルキル、より好ましくは、1,3ジメチルアダマンチルに見られるようなメチルである。
【0138】
好適には、アダマンチル、コングレシル、ノルボルニルまたは1−ノルボルンジエニル基は、水素原子に加えて、最大で10の上で定義される置換基、好ましくは最大で5つの上で定義される置換基、より好ましくは最大で3つの上で定義される置換基を含み得る。好適には、アダマンチル、コングレシル、ノルボルニルまたは1−ノルボルンジエニル基が、水素原子に加えて、本明細書において定義される1つ以上の置換基を含む場合、好ましくは、各置換基は同一である。好ましい置換基は、非置換のC〜Cアルキルおよびトリフルオロメチル、特に、メチルなどの非置換のC〜Cアルキルである。非常に好ましいアダマンチル、コングレシル、ノルボルニルまたは1−ノルボルンジエニル基は、水素原子のみを含み、すなわち、アダマンチル コングレシル、ノルボルニルまたは1−ノルボルンジエニル基は置換されていない。
【0139】
好ましくは、2つ以上のアダマンチル、コングレシル、ノルボルニルまたは1−ノルボルンジエニル基が、式Iの化合物中に存在する場合、このような各基は同一である。
2−Q−トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシル基(以後、便宜上、2−メタ−アダマンチルが、ヒ素、アンチモンまたはリン原子であるQへの言及である2−メタ−アダマンチル基、すなわち2−arsa−アダマンチルおよび/または2−stiba−アダマンチルおよび/または2−ホスファ−アダマンチル、好ましくは、2−ホスファ−アダマンチルと呼ばれる)は、水素原子に加えて、1つ以上の置換基を場合により含み得る。好適な置換基としては、アダマンチル基に関して本明細書において定義される置換基が挙げられる。非常に好ましい置換基としては、アルキル、特に、非置換のC〜Cアルキル、特にメチル、トリフルオロメチル、−OR19(ここで、R19は本明細書において定義されるとおりである)が挙げられ、特に、非置換のC〜Cアルキルまたはアリール、および4−ドデシルフェニルである。2−メタ−アダマンチル基が2つ以上の置換基を含む場合、好ましくは、各置換基は同一である。
【0140】
好ましくは、2−メタ−アダマンチル基は、1位、3位、5位または7位のうちの1つ以上において本明細書において定義される置換基で置換される。より好ましくは、2−メタ−アダマンチル基は、1位、3位および5位のそれぞれにおいて置換される。好適には、このような配列は、2−メタ−アダマンチル基のQ原子が、水素原子を有さないアダマンチル骨格の炭素原子に結合されることを意味する。最も好ましくは、2−メタ−アダマンチル基は、1位、3位、5位および7位のそれぞれにおいて置換される。2−メタ−アダマンチル基が2つ以上の置換基を含む場合、好ましくは、各置換基は同一である。特に好ましい置換基は、非置換のC〜Cアルキルおよびハロアキルス(haloakyls)、特に、メチルなどの非置換のC〜Cアルキルおよびトリフルオロメチルなどのフッ素化C〜Cアルキルである。
【0141】
好ましくは、2−メタ−アダマンチルは、非置換の2−メタ−アダマンチルまたは1つ以上の非置換のC〜Cアルキル置換基で置換される2−メタ−アダマンチル、あるいはそれらの組合せを表す。
【0142】
好ましくは、2−メタ−アダマンチル基は、2−メタ−アダマンチル骨格において2−Q原子以外の追加のヘテロ原子を含む。好適な追加のヘテロ原子としては、酸素および硫黄原子、特に酸素原子が挙げられる。より好ましくは、2−メタ−アダマンチル基は、6位、9位および10位において1個以上の追加のヘテロ原子を含む。さらにより好ましくは、2−メタ−アダマンチル基は、6位、9位および10位のそれぞれにおいて追加のヘテロ原子を含む。最も好ましくは、2−メタ−アダマンチル基が、2−メタ−アダマンチル骨格において2個以上の追加のヘテロ原子を含む場合、追加のヘテロ原子のそれぞれは
同一である。好ましくは、2−メタ−アダマンチルは、2−メタ−アダマンチル骨格において1個以上の酸素原子を含む。本明細書において定義される1つ以上の置換基で場合により置換されてもよい特に好ましい2−メタ−アダマンチル基は、2−メタ−アダマンチル骨格の6位、9位および10位のそれぞれにおいて酸素原子を含む。
【0143】
本明細書において定義される非常に好ましい2−メタ−アダマンチル基としては、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサアダマンチル、2−ホスファ−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキサアダマンチル、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキサアダマンチル基、および2−ホスファ−1,3,5−トリ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキサアダマンチル基が挙げられる。最も好ましくは、2−ホスファ−アダマンチルは、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサアダマンチル基または2−ホスファ−1,3,5,−トリメチル−6,9,10−トリオキサアダマンチル基から選択される。
【0144】
2−メタ−アダマンチル基は、当業者に周知の方法によって調製され得る。好適には、特定の2−ホスファ−アダマンチル化合物は、Cytec Canada Inc(Canada)から入手可能である。同様に、式Iの対応する2−メタ−アダマンチル化合物などが、同じ供給元から入手することができ、または類似の方法によって調製することができる。
【0145】
特許請求の範囲の制限を前提として、本発明の好ましい実施形態には:
がCR(R)(R)を表し、XがCR10(R11)(R12)を表し、XがC(R101102)NR101102を表し、XがC(R101102)NR101102を表し;
がCR(R)(R)を表し、XがCR10(R11)(R12)を表し、XおよびXが、
【0146】
【化10】

を表し;
がCR(R)(R)を表し、Xがアダマンチルを表し、XおよびXが、
【0147】
【化11】

を表し;
がCR(R)(R)を表し、Xがアダマンチルを表し、XがC(R101102)NR101102を表し、XがC(R101102)NR101102を表し;
がCR(R)(R)を表し、Xがコングレシルを表し、XがC(R101102)NR101102を表し、XがC(R101102)NR101102を表し;
がCR(R)(R)を表し、Xがコングレシルを表し、XおよびXが、
【0148】
【化12】

を表し;
およびXが、独立して、アダマンチルを表し、XおよびXが、
【0149】
【化13】

を表し;
およびXが、独立して、アダマンチルを表し、XがC(R101102)NR101102を表し、XがC(R101102)NR101102を表し;
およびXが、それらが結合されるQと一緒になって、式1b
【0150】
【化14】

の環系を形成することができ、XがC(R101102)NR101102を表し、XがC(R101102)NR101102を表し;
およびXが、独立して、コングレシルを表し、XおよびXが、
【0151】
【化15】

を表し;
およびXが、それらが結合されるQと一緒になって、式1b
【0152】
【化16】

の環系を形成することができ、XおよびXが、
【0153】
【化17】

を表し;
およびXが、独立して、コングレシルを表し、XがC(R101102)NR101102を表し、XがC(R101102)NR101102を表し;
およびXが、それらが結合されるQと一緒になって、2−ホスファ−アダマンチル基を形成し、XがC(R101102)NR101102を表し、XがC(R101102)NR101102を表し;
およびXが、それらが結合されるQと一緒になって、2−ホスファ−アダマンチル基を形成し、XおよびXが、
【0154】
【化18】

を表すものが含まれる。
【0155】
本発明の非常に好ましい実施形態には:
がCR(R)(R)を表し、XがCR10(R11)(R12)を表し、XがC(R101102)NR101102を表し、XがC(R101102)NR101102を表し;ここで、特に、R〜R12がメチルであり、R101およびR102が、水素、メチルまたはエチルのいずれかであり;
がCR(R)(R)を表し、XがCR10(R11)(R12)を表し、XおよびXが、
【0156】
【化19】

を表すものが含まれる。
【0157】
好ましくは、式Iの化合物において、XはXと同一であり、および/またはXはXと同一である。
本発明において特に好ましい組合せには:
(1)XがCR(R)(R)を表し、XがCR10(R11)(R12)を表し、XおよびXが、
【0158】
【化20】

を表し;
AおよびBが同じであり、−CH−を表し;
およびQが両方とも、環の1位および2位においてR基に連結されたリンを表し、
(2)XがCR(R)(R)を表し、XがCR10(R11)(R12)を表し、XがC(R101102)NR101102を表し、XがC(R101102)NR101102を表し;
AおよびBが同じであり、−CH−を表し;
およびQが両方とも、環の1位および2位においてR基に連結されたリンを表し、
(3)XおよびXが、それらが結合されるQと一緒になって、2−ホスファ−アダマンチル基を形成し、XおよびXが、
【0159】
【化21】

を表し;
AおよびBが同じであり、−CH−を表し;
およびQが両方とも、環の1位および2位においてR基に連結されたリンを表し、
(4)XおよびXが、アダマンチルを表し、XおよびXが、
【0160】
【化22】

を表し;
AおよびBが同じであり、−CH−を表し;
およびQが両方とも、環の1位および2位においてR基に連結されたリンを表すものが含まれる。
【0161】
好ましくは、上記の実施形態において、R101およびR102は、水素、メチルまたはエチルである。
好ましくは、式Iの化合物において、AおよびBはそれぞれ、独立して、本明細書において定義されるように、例えばアルキル基で場合により置換されるC〜Cアルキレンを表す。好ましくは、AおよびBが表す低級アルキレン基は非置換である。AおよびBが独立して表すことができる特に好ましいアルキレンは、−CH−または−C−である。最も好ましくは、AおよびBのそれぞれは、本明細書において定義される同じアルキレン、特に−CH−を表す。あるいは、AまたはBの一方は省略され、すなわち、QまたはQは、基Rに直接結合され、他方のQ基は、基Rに直接結合されず、C〜Cアルキレン、好ましくは−CH−または−C−、最も好ましくは、−CH−である。
【0162】
式Iのまたさらに好ましい化合物には:
〜R12がアルキルであり、同じであり、好ましくは、それぞれが、C〜Cアルキル、特にメチルを表すものが含まれる。
【0163】
式Iの特に好ましい特定の化合物には:
各R〜R12が同じであり、メチルを表し;
AおよびBが同じであり、−CH−を表し;
Rがベンゼン−1,2−ジイルを表すものが含まれる。
【0164】
本発明は、式(I)の新規な二座配位子だけでなく、このような配位子と、第8族、第9族または第10族金属あるいはその化合物との新規な錯体にも及ぶ。
定義
式Iの化合物においてAおよびBが表す「低級アルキレン」という用語は、本明細書において使用される際、C〜C10またはC〜C10基、好ましくは、C、CまたはC、より好ましくは、C、最も好ましくは、メチレンを含み、C〜C10の場合、基上の2つの位置において結合され、それによって基QまたはQをR基に結合することができ、後者の場合、そうでなければ以下の「アルキル」と同様に定義される。それにもかかわらず、後者の場合、メチレンが最も好ましい。前者の場合、Cとは、基QまたはQがR基に直接結合され、C〜C10の低級アルキレン基が存在しないことを意味し、この場合、AおよびBの一方のみがC〜C10の低級アルキレンである。いずれの場合も、基AまたはBの一方がCである場合、他方の基は、Cであり得ず、本明細書において定義されるC〜C10基であるはずであり、したがって、AおよびBの少なくとも一方は、C〜C10の「低級アルキレン」基である。
【0165】
本明細書において使用される際の「アルキル」という用語は、C〜C10アルキル、好ましくは、C〜Cアルキル、より好ましくは、C〜Cアルキルを意味し、メチル、エチル、エテニル、プロピル、プロペニル ブチル、ブテニル、ペンチル、ペンテニル、ヘキシル、ヘキセニルおよびヘプチル基を含む。特に規定されない限り、アルキル基は、十分な数の炭素原子が存在する場合、直鎖状または分枝状(特に好ましい分枝状基としては、t−ブチルおよびイソプロピルが挙げられる)、飽和または不飽和、環状、非環状または部分環状/非環状、非置換であってもよく、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30、C(S)NR2728、非置換または置換アリール、または非置換または置換Hetから選択される1つ以上の置換基で置換または終端されていてもよく、および/または1個以上(好ましくは4個未満)の酸素、硫黄、ケイ素原子によって、またはシラノもしくはジアルキルケイ素基、またはそれらの混合物によって介在されていてもよい。
【0166】
「フルオロアルキル」という用語は、水素基のうちのいずれか1つ以上がフッ素で置換され得ることを除いて、アルキルと同じように定義される。
が非第三級炭素を介してQ原子に結合されない限り、R、R、R〜R12およびR13〜R18はそれぞれ、独立して、アルキル、アリール、またはHetを表し、その場合、それらは水素も表し得る。
【0167】
本明細書におけるR19〜R30はそれぞれ、独立して、水素、ハロ、非置換または置換アリールまたは非置換または置換アルキルを表し、または、R21の場合、さらに、ハロ、ニトロ、シアノ、チオおよびアミノを表す。好ましくは、R19〜R30は、水素、非置換のC〜Cアルキルまたはフェニル、より好ましくは、水素または非置換のC〜Cアルキルを表す。
【0168】
49およびR54はそれぞれ、独立して、水素、アルキルまたはアリールを表す。R50〜R53はそれぞれ、独立して、アルキル、アリールまたはHetを表す。YYおよびYYはそれぞれ、独立して、酸素、硫黄またはN−R55を表し、ここで、R55は、水素、アルキルまたはアリールを表す。
【0169】
101およびR102は、任意選択の置換基水素、アリール、アルキルまたはフルオロアルキルを表す。
本明細書において使用される際の「Ar」または「アリール」という用語は、フェニル、シクロペンタジエニルおよびインデニルアニオンならびにナフチルなどの、5〜10員の、好ましくは5〜8員の、炭素環式芳香族または擬芳香族基を含み、この基は、非置換であっても、あるいは1つの選択肢として、非置換または置換アリール、アルキル(この基は、本明細書において定義されるように、それ自体非置換であっても、あるいは置換または終端されていてもよい)、Het(この基は、本明細書において定義されるように、それ自体非置換であっても、あるいは置換または終端されていてもよい)、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30またはC(S)NR2728から選択される1つ以上の置換基で置換されてもよく、ここで、R19〜R30は、本明細書において定義されるとおりである。
【0170】
本明細書において使用される際の「アルケニル」という用語は、C〜C10アルケニル、好ましくは、C〜Cアルケニル、より好ましくは、C〜Cアルケニルを意味し、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニル基を含む。特に規定されない限り、アルケニル基は、十分な数の炭素原子が存在する場合、直鎖状または分
枝状、飽和または不飽和、環状、非環状または部分環状/非環状、非置換であってもよく、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30、C(S)NR2728、非置換または置換アリール、または非置換または置換Hetから選択される1つ以上の置換基で置換または終端されていてもよく、ここで、R19〜R30は本明細書において定義され、および/または1個以上(好ましくは4個未満)の酸素、硫黄、ケイ素原子によって、またはシラノもしくはジアルキルケイ素基、またはそれらの混合物によって介在される。
【0171】
本明細書において使用される際の「アルキニル」という用語は、C〜C10アルキニル、好ましくは、C〜Cアルキニル、より好ましくは、C〜Cアルキニルを意味し、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニル基を含む。特に規定されない限り、アルキニル基は、十分な数の炭素原子が存在する場合、直鎖状または分枝状、飽和または不飽和、環状、非環状または部分環状/非環状、非置換であってもよく、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30、C(S)NR2728、非置換または置換アリール、または非置換または置換Hetから選択される1つ以上の置換基で置換または終端されていてもよく、ここで、R19〜R30は本明細書において定義され、および/または1個以上(好ましくは4個未満)の酸素、硫黄、ケイ素原子によって、またはシラノもしくはジアルキルケイ素基、またはそれらの混合物によって介在される。
【0172】
「アラルキル」、「アルカリール」、「アリーレンアルキル」などの用語は、矛盾する情報がない場合、基のアルキルまたはalk部分に関する限り、「アルキル」の上記の定義にしたがうものと解釈されるべきである。
【0173】
上記のArまたはアリール基は、1つ以上の共有結合によって結合され得るが、本明細書における「アリーレン」または「アリーレンアルキル」などへの言及は、2つの共有結合と理解されるべきであり、そうでなければ基のアリーレン部分に関する限り、上記のArまたはアリールとして定義されるべきである。「アルカリール」、「アラルキル」などへの言及は、基のArまたはアリール部分に関する限り、上記のArまたはアリールへの言及として解釈されるべきである。
【0174】
上述した基が置換または終端され得るハロ基としては、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが挙げられる。
本明細書において使用される際の「Het」という用語は、4〜12員の、好ましくは4〜10員の環系を含み、その環は、窒素、酸素、硫黄およびそれらの混合物から選択される1個以上のヘテロ原子を含有し、その環は、二重結合を全く含有しないか、1つ以上の二重結合を含有し、または性質が非芳香族、部分的に芳香族または完全に芳香族であり得る。環系は、単環式、二環式であってもまたは縮合されていてもよい。本明細書において同定される各「Het」基は、非置換であっても、またはハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アルキル(このアルキル基は、本明細書において定義されるように、それ自体非置換であっても、あるいは置換または終端されていてもよい)、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−SR29、−C(O)SR30または−C(S)N(R27)R28から選択される1つ以上の置換基で置換されてもよく、ここで、R19〜R30は、本明細書において定義されるとおりである。したがって、「Het」という用語は、場合により置換されるアゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリル、インドリル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリダジニル、モルホリニル、ピリミ
ジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピペリジニル、ピラゾリルおよびピペラジニルなどの基を含む。Hetにおける置換は、Het環の炭素原子において、または、必要に応じて、ヘテロ原子の1個以上において行われ得る。
【0175】
「Het」基はまた、Nオキシドの形態であってもよい。
本明細書において記載される際のヘテロという用語は、窒素、酸素、硫黄またはそれらの混合物を意味する。
【0176】
本発明の触媒化合物は、「不均一」触媒または「均一」触媒、好ましくは、均一触媒として働き得る。
「均一」触媒という用語は、好ましくは本明細書に記載される好適な溶媒中で、担持されるのではなく、カルボニル化反応の反応剤と単に混合されるかまたはカルボニル化反応の反応剤によってその場で形成される触媒、すなわち本発明の化合物を意味する。
【0177】
「不均一」触媒という用語は、担体上に担持される触媒、すなわち本発明の化合物を意味する。
本明細書の式(例えば式I)の化合物が、定義されるようなアルケニル基またはシクロアルキル部分を含有する場合、シス(E)およびトランス(Z)異性も生じ得る。本発明は、本明細書において定義される式のいずれかの化合物の個々の立体異性体および、必要に応じて、その個々の互変異性体を、それらの混合物とともに含む。ジアステレオマーまたはシスおよびトランス異性体の分離は、従来の技術、例えば式の1つの化合物あるいはその好適な塩または誘導体の立体異性体混合物の分別結晶、クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィー(H.P.L.C.)によって行うことができる。式の1つの化合物の個々のエナンチオマーはまた、対応する光学的に純粋な中間体から調製されてもよく、あるいは好適なキラル担体を用いた対応するラセミ体のH.P.L.C.または必要に応じて、対応するラセミ体と、好適な光学的に活性な酸または塩基との反応によって形成されるジアステレオマーの塩の分別結晶などによる分割によって調製されてもよい。担体および分散剤
他の態様によれば、本発明は、本明細書において定義されるエチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法を提供し、本方法は、担体、好ましくは不溶性担体を含む触媒を用いて行われる。
【0178】
好ましくは、担体は、ポリオレフィン、ポリスチレンなどのポリマー、またはジビニルベンゼンコポリマーなどのポリスチレンコポリマーあるいは当業者に公知の他の好適なポリマーまたはコポリマー;官能化シリカ、シリコーンまたはシリコーンゴムなどのケイ素誘導体;または例えば無機酸化物および無機塩化物などの他の多孔質粒子材料を含む。
【0179】
好ましくは、担体材料は、10〜700m/gの範囲の表面積、0.1〜4.0cc/gの範囲の全細孔容積および10〜500μmの範囲の平均粒径を有する多孔質シリカである。より好ましくは、表面積は、50〜500m/gの範囲であり、細孔容積は、0.5〜2.5cc/gの範囲であり、平均粒径は、20〜200μmの範囲である。最も望ましくは、表面積は、100〜400m/gの範囲であり、細孔容積は、0.8〜3.0cc/gの範囲であり、平均粒径は、30〜100μmの範囲である。典型的な多孔質担体材料の平均孔径は、10〜1000Åの範囲である。好ましくは、50〜500Å、最も望ましくは75〜350Åの平均孔径を有する担体材料が使用される。3〜24時間の範囲で100℃〜800℃の温度でシリカを脱水するのが特に望ましいことがある。
【0180】
好適には、担体は、可撓性担体であってもまたは剛性担体であってもよく、不溶性担体は、当業者に周知の技術によって、本発明の方法の化合物で被覆および/または含浸され
る。
【0181】
あるいは、本発明の方法の化合物は、場合により共有結合を介して、不溶性担体の表面に固定され、その配列は、不溶性担体から化合物の間隔を空けるための二官能性スペーサ分子を場合により含む。
【0182】
本発明の化合物は、担体上に存在するかまたは担体に予め挿入された賞賛される(complimentary)反応基を用いて、式Iの化合物中に存在する官能基の反応を促進することによって、不溶性担体の表面に固定され得る。担体の反応基と、本発明の化合物の賞賛される(complimentary)置換基との組合せにより、本発明の化合物と担体とが、エーテル、エステル、アミド、アミン、尿素、ケト基などの連結を介して連結された不均一触媒が提供される。
【0183】
本発明の方法の化合物を担体に連結する反応条件の選択は、担体の基に応じて決まる。例えば、カルボジイミド、1,1’−カルボニルジイミダゾールなどの試薬、および混合無水物の使用、還元アミノ化などの方法が用いられ得る。
【0184】
他の態様によれば、本発明は、触媒が担体に結合される本発明のいずれかの態様の方法または触媒の使用を提供する。
さらに、二座配位子は、架橋置換基(環状原子を含む)、架橋基X、連結基Aまたは連結基B、例えば1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼンの少なくとも1つを介して好適なポリマー基材に結合されてもよく、好ましくは、ベンゼン基の3、4、5または6個の環状炭素を介してポリスチレンに結合されて、固定された不均一触媒が得られる。
【0185】
また、触媒系とともに安定化化合物を使用すると、触媒系から喪失した金属の回収を改善するのに有益であり得る。触媒系が液体反応媒体中で用いられる場合、このような安定化化合物は、第8族、第9族または第10族金属の回収を補助し得る。
【0186】
したがって、好ましくは、触媒系は、液体反応媒体中に、液体担体に溶解されたポリマー分散剤を含み、前記ポリマー分散剤は、液体担体内の触媒系の第8族、第9族または第10族金属あるいは金属化合物の粒子のコロイド懸濁液を安定化することができる。
【0187】
液体反応媒体は、反応のための溶媒であってもよく、または反応剤または反応生成物自体のうちの1つ以上を含んでいてもよい。液体形態の反応剤および反応生成物は、溶媒または液体希釈剤と混和してもよく、またはそれに溶解されてもよい。
【0188】
ポリマー分散剤は、液体反応媒体に溶けるが、反応速度または伝熱に悪影響を与え得る形で反応媒体の粘度を著しく高めるべきではない。温度および圧力の反応条件下での液体媒体への分散剤の溶解度は、金属粒子への分散剤分子の吸着を著しく抑制するほど高くすべきではない。
【0189】
ポリマー分散剤は、液体反応媒体中の前記第8族、第9族または第10族金属あるいは金属化合物の粒子のコロイド懸濁液を安定化することができ、したがって、触媒劣化の結果として形成される金属粒子が、液体反応媒体の懸濁液中に保持され、再生のためおよび場合によりさらなる量の触媒の作製への再利用のために液体とともに反応器から排出される。金属粒子は、通常、コロイドの寸法、例えば5〜100nmの範囲の平均粒径を有するが、場合によってはより大きい粒子を形成し得る。ポリマー分散剤の一部が、金属粒子の表面上に吸着されるが、分散剤分子の残りは、液体反応媒体によって少なくとも部分的に溶媒和されたままであり、このように分散された第8族、第9族または第10族金属粒
子は、反応器の壁または反応器のデッドスペースに沈着せず、かつ粒子の衝突によって成長し、やがて凝固し得る金属粒子の凝集を形成せずに安定化される。好適な分散剤の存在下でも粒子のいくらかの凝集が生じ得るが、分散剤のタイプおよび濃度が最適化される場合、このような凝集は比較的低いレベルになるはずであり、凝集は緩く形成され得るに過ぎないため、撹拌によって凝集を破壊し、粒子を再分散することができる。
【0190】
ポリマー分散剤は、グラフトコポリマーおよびスターポリマーなどのポリマーを含むホモポリマーまたはコポリマーを含み得る。
好ましくは、ポリマー分散剤は、前記第8族、第9族または第10族金属あるいは金属化合物のコロイド懸濁液を実質的に安定化するのに十分に酸性または塩基性の官能性を有する。
【0191】
実質的に安定化するとは、溶液相からの第8族、第9族または第10族金属の沈殿が実質的に回避されることを意味する。
この目的のために特に好ましい分散剤としては、ポリアクリレートなどの、カルボン酸、スルホン酸、アミンおよびアミドを含む酸性または塩基性ポリマー、または複素環、特に窒素複素環、ポリビニルピロリドンなどの置換ポリビニルポリマーあるいは前述したもののコポリマーが挙げられる。
【0192】
このようなポリマー分散剤の例は、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンイミン、ポリグリシン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ−L−ロイシン、ポリ−L−メチオニン、ポリ−L−プロリン、ポリ−L−セリン、ポリ−L−チロシン、ポリ(ビニルベンゼンスルホン酸)およびポリ(ビニルスルホン酸)、アシル化ポリエチレンイミンから選択され得る。好適なアシル化ポリエチレンイミンは、BASFの特許公報である欧州特許出願公開第1330309 A1号明細書および米国特許第6,723,882号明細書に記載されている。
【0193】
好ましくは、ポリマー分散剤は、ペンダントであるかまたはポリマー主鎖内にある酸性または塩基性部分を組み込んでいる。好ましくは、酸性部分は、6.0未満、より好ましくは、5.0未満、最も好ましくは4.5未満の解離定数(pK)を有する。好ましくは、塩基性部分は、6.0未満、より好ましくは5.0未満、最も好ましくは4.5未満の塩基の解離定数(pK)を有し、pKおよびpKは、希釈水溶液中18℃で測定される。
【0194】
好適なポリマー分散剤は、反応条件で反応媒体に溶けることに加えて、ポリマー主鎖内のまたはペンダント基としての、少なくとも1つの酸性または塩基性部分を含む。本発明者らは、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリアクリル酸(PAA)などのポリアクリレートなどの酸部分およびアミド部分を組み込んだポリマーが特に好適であることを見出した。本発明に使用するのに適したポリマーの分子量は、反応媒体の性質および反応媒体へのポリマーの溶解度に応じて決まる。本発明者らは、通常、平均分子量が100,000未満であることを見出した。好ましくは、平均分子量は、1,000〜200,000、より好ましくは、5,000〜100,000、最も好ましくは、10,000〜40,000の範囲であり、例えば、PVPが使用される場合、Mwは、好ましくは10,000〜80,000、より好ましくは20,000〜60,000の範囲であり、PAAの場合、1,000〜10,000程度である。
【0195】
反応媒体中の分散剤の有効濃度は、使用される各反応/触媒系に合わせて決定されるべきである。
分散された第8族、第9族または第10族金属は、反応器から取り出された液体流から
、例えばろ過によって回収され、次に廃棄されるかあるいは触媒として再利用するためまたは他の用途のために処理され得る。連続法では、外部の熱交換器を通って液体流を循環させることができ、このような場合、これらの循環装置にパラジウム粒子用のフィルタを配置することが好都合であり得る。
【0196】
好ましくは、ポリマー:金属の質量比(g/g)は、1:1〜1000:1、より好ましくは、1:1〜400:1、最も好ましくは、1:1〜200:1である。好ましくは、ポリマー:金属の質量比(g/g)は、最大で1000、より好ましくは、最大で400、最も好ましくは、最大で200である。
【0197】
好ましくは、カルボニル化反応は嫌気性反応である。言い換えると、典型的に、反応は、一般に、酸素を用いずに行われる。
好都合なことに、本発明の方法は、典型的なカルボニル化反応条件下で非常に安定した化合物を用いることができ、したがって、補充をほとんどまたは全く必要としない。好都合なことに、本発明の方法は、カルボニル化反応の高い速度を有し得る。好都合なことに、本発明の方法は、高い転化率を促進することができ、それによって、不純物をほとんどまたは全く含まずに高い収率で所望の生成物を生成することができる。したがって、本発明の方法を用いることによって、カルボニル化反応の商業化が増大され得る。本発明の方法が、高いTON値を有するカルボニル化反応を提供することは特に有利である。
【0198】
本発明の第1の態様に記載される特徴のいずれも、本発明の他の態様の好ましい特徴とみなすことができ、逆もまだ同様であることが理解されよう。
これより、本発明が、以下の非限定的な実施例および比較例によって、説明され、例示される。
【実施例】
【0199】
調製実施例
1,2−ベンゼンジメタノールの環状硫酸エステル(3)の調製
実施例の誘導体のホスフィン配位子の合成に用いられる方法は、環状硫酸エステル(3)の合成から開始される。環状硫酸エステル化合物は、2段階の合成で形成される。市販のジ−アルコール1,2−ベンゼンジメタノール(1)(フタル酸の水素化アルミニウムリチウム還元によって調製することもできる)を、ジクロロメタン中の塩化チオニル(SOCl)と反応させて、環状亜硫酸エステル錯体(2)を得た。次に、環状亜硫酸エステル錯体を、過ヨウ素酸ナトリウムおよび三塩化ルテニウムを用いて酸化して、環状硫酸エステル錯体(3)を得た。
【0200】
【化23】

実験
概略
矛盾する記載がない限り、全ての操作を、標準的なシュレンク管、カニューレおよびグローブボックス技術を用いて、窒素の雰囲気下で行った。全てのNMR実験を、溶媒としてCDClを用いて行った。
【0201】
環状硫酸エステル(3)の調製
ジアルコール(1)(21.2g、153mmol)を、ジクロロメタン(250ml)に部分的に溶解させた。これに塩化チオニル(13.8ml、189mmol)をゆっくりと加えた。これにより、大量のガスが発生した。次に、得られた溶液を90分間加熱還流(50℃)した。次に、得られた溶液を室温に冷まし、一晩攪拌した。この時点で、環状亜硫酸エステル錯体(2)が形成された。次に、溶媒を減圧下で除去して、薄茶色の油を得た。次に、環状亜硫酸エステルを、ジクロロメタン(100ml)、アセトニトリル(100ml)および水(150ml)で希釈した。得られた二塩基性溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム(65.3g、306mmol)および三塩化ルテニウム水和物(300mg)を加えた。次に、得られた懸濁液を、室温で1時間撹拌し、その間に大量の白色の沈殿物が形成された。最終的な懸濁液を水(100ml)で希釈し、エーテル(100ml)を加えた。有機層を分離によって収集し、水性残渣をエーテル(2100ml)で洗浄した。次に、組み合わされた有機抽出物を水(2200ml)で洗浄してから、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。次に、有機抽出物を、セライトを含有するろ紙を通してろ過した。これにより、無色の溶液が得られた。次に、溶媒を減圧下で除去して、オフホワイト色の固体を得た。固体を−20℃で冷凍庫に貯蔵した。収量=24.6g、80%。H NMR(500MHz、CDCl、δ)、7.46(m,2H,Ph)、7.38(m,2H,Ph)、5.44(s,4H,CH)ppm。
【0202】
1−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノメチル)−2−((ジ−ピリジン−2−イル)ホスフィノメチル)ベンゼンの合成
トリス(ピリジン−2−イル)ホスフィンの調製
2−ブロモピリジン(100g、633mmol)を、1Lのフラスコ中−78℃でEtO(300ml)に溶解させたBuLi(ヘキサン中2.5M、253ml、633mmol)の撹拌溶液に、30分間にわたって滴下して加えた。この混合物を−78℃で1時間撹拌し、次にPCl(18.4ml、211mmol)を撹拌しながら30分間にわたって滴下して加えた。次に、得られた混合物を−78℃で30分間撹拌してから、室温まで温め、次に室温で1時間撹拌した。次に、得られた褐色の混合物を減圧下で乾燥させ、水(300ml、窒素ガスで30分間脱気したもの)を加えた。次に、クロロホルム(400ml)を加えた。次に、二相混合物を30分間撹拌してから、下側(有機相)をカニューレで清潔なシュレンクフラスコに移した。次に、溶媒を減圧下で除去して、粘着性の褐色/赤色の固体を得た。これにペンタン(50ml)を加え、このペンタンを混合物中に撹拌し、これにより、褐色/オレンジ色の固体が得られた。ペンタン可溶性材料をカニューレによって除去し、ペンタン洗浄を繰り返した。再度、ペンタン可溶性材料をカニューレによって除去した。次に、残渣を減圧下で乾燥させてから、エタノール(20ml)に懸濁させた。次に、エタノール懸濁液を80℃まで加熱し、これにより、濃い赤色の溶液を得た。次に、これを室温まで冷ましたところ、オレンジ色/黄色の結晶が形成され始めた。次に、溶液を−20℃で一晩冷凍庫に入れた。これにより、大量の赤色/オレンジ色の固体が得られた。次に、エタノール可溶性材料をカニューレによって除去し、固体を減圧下で乾燥させた。これにより、粘着性のオレンジ色の固体が得られた。収量=22.4g、40%。31P{H} NMR(121MHz、CDCl3)a:−0.42(s,PPy)。
【0203】
ビス(ピリジン−2−イル)ホスフィン(PyPH)の調製
トリス(ピリジン−2−イル)ホスフィン(22.4g、85mmol)をTHF(400ml)に懸濁させた。これにリチウム顆粒(5.0g、720mmol)を加えた。次に、混合物を室温で4時間撹拌した。これにより、濃い赤色の溶液が得られた。次に、溶液を清潔なシュレンクフラスコ中にろ過して、未反応のリチウム金属を除去した。次に、溶媒を減圧下で除去し、水(100ml、窒素ガスで20分間脱気したもの)を加えた。次に、エーテル(400ml)を加え、二相溶液を20分間撹拌した。次に、上側(有機)相をカニューレで清潔なシュレンクフラスコに移してから、減圧下で乾燥させた。これにより、濃いオレンジ色/赤色の油が得られた。収量=15.1g、94%。31P{H} NMR(121MHz、CDCl3)a:−33.8(s,PPy)。
【0204】
ジ−tert−ブチルホスフィンボランの調製
ジ−tert−ブチルホスフィンクロリド(34g、188.41mmol)をシュレンクフラスコに加え、その後、ジエチルエーテル(200ml)を加えた。エーテル溶液を冷水浴中で冷却し、LiAlH(ジエチルエーテル中1M、100ml、100mmol)をゆっくりと加えた。これにより、黄色の懸濁液が得られ、これを室温で一晩攪拌した。懸濁液を水(50ml、窒素で20分間脱気したもの)の添加によって急冷した。これにより、二相溶液が得られた。上側(有機層)をカニューレで清潔なシュレンクに移し、水性残渣をさらなる100mlのエーテルで洗浄した。エーテル抽出物を組み合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥させた。次に、エーテル抽出物をカニューレで清潔なシュレンクに移し、エーテルを蒸留によって除去した。これにより、無色の油が得られた。次に、無色の油をTHF(200ml)で希釈し、0℃まで冷却し、これにTHF(1Mの溶液、250ml、250mmol)に溶解させたBHを加えた。次に、得られた溶液を室温で一晩攪拌した。次に、溶媒を減圧下で除去して、白色の結晶性固体を得て、次に、これをグローブボックス中で単離した。収量=22.1g、73%の収率。31P {H} NMR(80MHz、CDCl、δ):δ49.23ppm(多重項)。
【0205】
(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イル−ホスフ
ィノメチル)ベンゼンの合成
ヘキサンに溶解させたBuLi(83mL、207.5mmol)の2.5Mの溶液をTHF(250mL)に溶解させたBuPH.BH(33.2g、207.5mmol)の溶液に0°で加えた。混合物を室温に達するまで放置し、次に30分間撹拌した。−78℃まで冷却した後、それを、THF(300mL)に溶解させた環状硫酸エステル(1,2−C(CHO)SO)(41.5g、207.5mmol)の予め冷却した(−78℃)溶液に10分間にわたって滴下して加えた。混合物を−78℃で30分間撹拌し、次に、室温で30分間撹拌した。混合物を−78℃まで冷却した後、それを、PyPLiの溶液{−78℃で、THF(250mL)に溶解させたPyPH(39g、207.5mmol)およびBuLi(ヘキサン中2.5Mの溶液83ml、207.5mmol)から調製される}で処理した。混合物を室温まで温め、次に一晩攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をEtO(500mL)に再溶解させた。次に、溶液を水(200mL)で急冷した。次に、二相混合物を室温で30分間撹拌してから、有機(上側)相をカニューレで清潔なシュレンクフラスコに移した。次に、溶媒を減圧下で除去して、褐色の粘着性の固体を得た。固体をTBME(600ml)に溶解させ、次に、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体(1245mmol、171ml)を加えた。これにより、オレンジ色の沈殿物がすぐに形成された。次に、混合物を16時間加熱還流した。次に、溶媒を減圧下で除去し、残渣を、水(300ml、窒素ガスで30分間脱気したもの)に溶解させた水酸化カリウム(80g、1426mmol)の溶液で処理した。次に、ペンタン(500ml)を加え、二相混合物を30分間迅速に撹拌した。次に、上側相(有機)をカニューレで清潔なシュレンクに移し、溶媒を減圧下で除去した。これにより、粘着性のある粘性の赤色/オレンジ色の油が得られた。収量=29.4g、32%。31P{H} NMR(121MHz、CDCl)a:−6.5(s,PPy);28.5(s,PBu)。
【0206】
ピリジルフェニルホスフィンの合成
1Lのシュレンクフラスコ中のEtO(800mL)に溶解させたClPPh(30mL、220mmol)の溶液を−78℃まで冷却し、HNEt(46mL、440mmol)の溶液を、撹拌しながら30分間にわたって滴下漏斗を通して加えた。溶液の温度を室温まで上げ、一晩置いた。得られた黄色の溶液をカニューレで清潔なシュレンクフラスコに移し、溶媒を減圧下で除去した。固体残渣にエーテル(500ml)に加え、混合物を1時間迅速に撹拌してから、一晩置いた。次に、エーテル抽出物を組み合わせて、減圧下で乾燥させた。これにより、淡色の油が得られた。次に、黄色の油をエーテル(500ml)に溶解させ、LiPyの溶液{EtO(100mL)に溶解させたBuLi(ヘキサン中2.5Mの溶液88mL)の溶液にBrPy(21mL、220mmol)を、−78℃で30分間にわたって滴下して加えることによって調製し、次に、溶液を1時間撹拌した}を、カニューレを介して30分間にわたって加えた。溶液を室温に達するまで放置し、次に一晩攪拌した。これにより、薄茶色の懸濁液が得られた。HCl(EtOに溶解させた2Mの溶液110mL)を、激しく撹拌しながら20分間にわたって加え、大量の薄茶色の沈殿物を生成した。さらなるHCl(EtOに溶解させた2Mの溶液110mL)を加えた。次に、懸濁液を静置し、黄色の溶液をカニューレで清潔なシュレンクフラスコに移した。褐色の沈殿物をやはりTHF(500mL)で洗浄し、洗浄液を組み合わせてから、THFを減圧下で除去したところ、赤色/オレンジ色の固体が残った。次に、固体をTHF(300mL)に溶解させてから、THF(100mL)に溶解させたマグネシウム粉末(9g)の氷冷溶液に、撹拌しながら30分間にわたって加えた。溶液をさらに30分間氷冷下で保ち、次に、温度を室温まで上げ、一晩攪拌した。溶液をろ過して、過剰なマグネシウムを除去し、水(100mL、窒素ガスで20分間脱気したもの)で急冷した。次に、有機層をカニューレで清潔なシュレンクフラスコに移してから、減圧下で乾燥させたところ、粘性のオレンジ色の油が得られた。収量=15.1g、36%。31P NMR(121MHz、CDCl)a:−37.79(d、JPH
=222Hz)。
【0207】
1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−ピリジン−2−イルフェニルホスフィノメチル)ベンゼンの合成
ヘキサンに溶解させたBuLi(32.1mL、80.2mmol)の2.5Mの溶液を、THF(150mL)に溶解させたBuPH.BH(12.8g、80.2mmol)の溶液に0°で加えた。混合物を室温に達するまで放置し、次に30分間撹拌した。−78℃まで冷却した後、それを、THF(200mL)に溶解させた環状硫酸エステル(1,2−C(CHO)SO)(16.0g、80.2mmol)の予め冷却した(−78℃)溶液に10分間にわたって滴下して加えた。混合物を−78℃で30分間撹拌し、次に、室温で30分間撹拌した。混合物を−78℃まで冷却した後、それを、PyPhPLiの溶液{−78℃で、THF(100mL)に溶解させたPyPhPH(15.1g、80.2mmol)およびBuLi(ヘキサン中の2.5Mの溶液32.1ml、207.5mmol)から調製される}で処理した。混合物を室温まで温め、次に一晩攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をEtO(500mL)に再溶解させた。次に、溶液を水(200mL)で急冷した。次に、二相混合物を室温で30分間撹拌してから、有機(上側)相をカニューレで清潔なシュレンクフラスコに移した。次に、溶媒を減圧下で除去して、褐色/オレンジ色の粘着性の固体を得た。固体をTBME(600ml)に溶解させ、次に、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体(481mmol、66ml)を加えた。これにより、オレンジ色の沈殿物がすぐに形成された。次に、混合物を16時間加熱還流した。次に、溶媒を減圧下で除去し、残渣を、水(300ml、窒素ガスで30分間脱気したもの)に溶解させた水酸化カリウム(40g、713mmol)の溶液で処理した。次に、ペンタン(500ml)を加え、二相混合物を30分間迅速に撹拌した。次に、上側相(有機)をカニューレで清潔なシュレンクフラスコに移し、溶媒を減圧下で除去した。これにより、粘性のオレンジ色の油が得られた。収量=7.9g、23%。31P{H} NMR(121MHz、CDCl3)a:−10.0(s,PPyPh);28.2(s,PBu)。
【0208】
カルボニル化の実施例
概略
カルボニル化を以下のとおりに行い、実施例および比較例の配位子についての結果を表に示す。
【0209】
実験
1.0 トリフルオロ酢酸(TFA)とともに、1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)および(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン(Alpha)を用いた反応
標準的なシュレンク管技術を用いて、プロピオン酸メチルおよびメタノールの70:30%w/wの溶媒組成物に溶解させた、7.7mgのPd(dba)(1.46×10−5モルのPd)ならびに、28.9mgの(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン(Alpha)(7.29×10−5モル)または31.8mgの1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)(7.29×10−5モル)のいずれかを、300mlの全溶液体積に溶解させることによって、反応溶液を調製した。パラジウムおよび配位子を錯体にしてから、トリフルオロ酢酸(TFA)を加えて触媒溶液の調製を完了した。触媒溶液を予め真空にしたオートクレーブに加え、反応剤を1000rpmで撹拌しながら100℃まで加熱した。次に、反応容器を、溶媒蒸気圧(100℃で2.3バール)より高い8バールのエテンを用いて加圧し、触媒溶液を20分間撹拌した。エテンを用いた前処理の後、反応器を、COおよびエテンの1:1モル混合物を用いて12.3バールに加圧することによって反応を開始して、エチレン:COの9:1の初期気相モル比を得た。1:1モルのCO/
エテン10Lリザーバに取り付けられたTescom調整弁の使用によって、バッチ試験の間中、全反応圧力(12.3バール)を保った。リザーバ圧力の低下を測定し、理想的なガス挙動およびプロピオン酸メチルに対する100%の選択性を想定することによって、反応TONおよび速度の両方を得ることができる。反応期間の後、オートクレーブを冷却し、空気を抜いた。
【0210】
【表1】

2.0 1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)およびメタンメタンスルホン酸(MSA)を用いた反応
標準的なシュレンク管技術を用いて、プロピオン酸メチルおよびメタノールの溶媒組成物(90:10%w/w〜50:50%w/wの間で変化させた)に溶解させた、7.7mgのPd(dba)(1.46×10−5モルのPd)ならびに、31.8mgの1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)(7.29×10−5モル)を溶解することによって、反応溶液を調製した。全溶液体積を一定(300ml)に保った。パラジウムおよび配位子を錯体にしてから、430μl(6.56×10−3モル)のメタンスルホン酸(MSA)を加えて触媒溶液の調製を完了した。触媒溶液を予め真空にしたオートクレーブに加え、反応剤を1000rpmで撹拌しながら100℃まで加熱した。次に、反応容器を、溶媒蒸気圧(100℃で2.3バール)より高い8バールのエテンを用いて加圧し、触媒溶液を20分間撹拌した。エテンを用いた前処理の後、反応器を、COおよびエテンの1:1モル混合物を用いて12.3バールに加圧することによって反応を開始して、エチレン:COの9:1の初期気相モル比を得た。1:1モルのCO/エテン10Lリザーバに取り付けられたTescom調整弁の使用によって、バッチ試験の間中、全反応圧力(12.3バール)を保った。リザーバ圧力の低下を測定し、理想的なガス挙動およびプロピオン酸メチルに対する100%の選択性を想定することによって、反応TONおよび速度の両方を得ることができる。反応期間の後、オートクレーブを冷却し、空気を抜いた。
【0211】
【表2】

3.0 プロピオン酸(PA)とともに1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)および(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン(Alpha)を用いた初期反応
標準的なシュレンク管技術を用いて、プロピオン酸メチルおよびメタノールの70:30w/wの溶媒組成物に溶解させた、77mgのPd(dba)(1.46×10−4モルのPd)ならびに、289mgの(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン(7.29×10−4モル)または318mgのTPhos(7.29×10−4モル)のいずれかを、300mlの全溶液体積に溶解させることによって、反応溶液を調製した。パラジウムおよび配位子を錯体にしてから、70ml(9.33×10−1モル)のプロピオン酸(PA)を加えた。触媒溶液を予め真空にしたオートクレーブに加え、反応剤を1000rpmで撹拌しながら100℃まで加熱した。次に、反応容器を、溶媒蒸気圧(100℃で2.3バール)より高い8バールのエテンを用いて加圧し、触媒溶液を20分間撹拌した。エテンを用いた前処理の後、反応器を、COおよびエテンの1:1モル混合物を用いて12.3バールに加圧することによって反応を開始して、エチレン:COの9:1の初期気相モル比を得た。1:1モルのCO/エテン10Lリザーバに取り付けられたTescom調整弁の使用によって、バッチ試験の間中、全反応圧力(12.3バール)を保った。リザーバ圧力の低下を測定し、理想的なガス挙動およびプロピオン酸メチルに対する100%の選択性を想定することによって、反応TONおよび速度の両方を得ることができる。反応期間の後、オートクレーブを冷却し、空気を抜いた。
【0212】
【表3】

4.0 プロピオン酸(PA)とともに1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)および(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン(Alpha)を用いたさらなる特定の反応
標準的なシュレンク管技術を用いて、プロピオン酸メチルおよびメタノールの70:3
0w/wの溶媒組成物に溶解させた、77mgのPd(dba)(1.46×10−4モルのPd)ならびに、289mgの(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン(7.29×10−4モル)または318mgのTPhos(7.29×10−4モル)のいずれかを、300mlの全溶液体積に溶解させることによって、反応溶液を調製した。パラジウムおよび配位子を錯体にしてから、プロピオン酸(PA)を加えた。触媒溶液を予め真空にしたオートクレーブに加え、反応剤を1000rpmで撹拌しながら100℃まで加熱した。次に、反応容器を、溶媒蒸気圧(100℃で2.3バール)より高い8バールのエテンを用いて加圧し、触媒溶液を20分間撹拌した。エテンを用いた前処理の後、反応器を、COおよびエテンの1:1(気体モル比)混合物を用いて12.3バールに加圧することによって反応を開始して、反応器の気相中のエチレン:COの9:1の初期気体モル比を得た。1:1気体モル比のCO/エテン10Lリザーバに取り付けられたTescom調整弁の使用によって、バッチ試験の間中、全反応圧力(12.3バール)を保った。リザーバ圧力の低下を測定し、理想的なガス挙動およびプロピオン酸メチルに対する100%の選択性を想定することによって、反応TONおよび速度の両方を得ることができる。反応期間の後、オートクレーブを冷却し、空気を抜いた。
【0213】
【表4】

結果
1.0 トリフルオロ酢酸(TFA)とともに1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)および(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン(Alpha)を用いた反応の結果
結果を表5および表6に示す。TPhosは、比較的弱い酸TFA中で、(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンの比較例より、3〜4倍の差で高い性能を示すことが分かった。
【0214】
【表5】

【0215】
【表6】

2.0 1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)およびメタンスルホン酸(MSA)を用いた反応の結果
結果を表7に示す。
【0216】
【表7】

表7のデータは、配位子1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)が、メタンスルホン酸とともに使用した際に優れた活性を有することを示す。
【0217】
3.0 初期のプロピオン酸の反応
1.46×10−4モルのPdおよび3.90×10−4mol.dm−3のパラジウム濃度を用いて行った初期試験の結果では、TPhosが、プロピオン酸(PA)に溶解させた(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンと比較して、より高い速度および著しく改善されたTONを示すことが分かった。
【0218】
4.0 プロピオン酸(PA)とともに1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン(TPhos)および(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン(Alpha)を用いたさらなる反応の結果
【0219】
【表8】

【0220】
【表9】

本出願に関連して本明細書と同時にまたは本明細書より前に出願され、本明細書とともに公開された全ての論文および文献に読者の注意が向けられ、全てのこのような論文および文献の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0221】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のいずれも含む)に開示される特徴の全て、および/またはそのように開示されるあらゆる方法またはプロセスの工程の全ては、このような特徴および/または工程の少なくとも一部が互いに矛盾する場合の組合せを除いて、任意の組合せで組み合わせられ得る。
【0222】
特に明記されない限り、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のいずれも含む)に開示される各特徴の代わりに、同一、同等または類似の目的を果たす別の特徴が用いられてもよい。したがって、特に明記されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の一例に過ぎない。
【0223】
本発明は、上記の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のいずれも含む)に開示される特徴の任意の新規なもの、または任意の新規な組合せ、あるいはそのように開示されるあらゆる方法またはプロセスの工程の任意の新規なもの、または任意の新規な組合せに及ぶ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中:
AおよびBがそれぞれ、独立して、低級アルキレン連結基を表し;
Rが、少なくとも1つの芳香環を有するヒドロカルビル芳香族構造を表し、前記少なくとも1つの芳香環には、QおよびQがそれぞれ、存在する場合には前記少なくとも1つの芳香環の利用可能な隣接する原子上で前記それぞれの連結基を介して連結され;
前記基XおよびXが、独立して、少なくとも1個の第三級炭素原子を有する最大で30個の原子を有する一価の基を表し、またはXおよびXが一緒になって、少なくとも2個の第三級炭素原子を有する最大で40個の原子を有する二価の基を形成し、ここで、各前記一価または二価の基が、それぞれ前記少なくとも1個または2個の第三級炭素原子を介して、前記それぞれの原子Qに結合され;
前記基Xが、18℃の希釈水溶液中で4〜14のpKbを有する、少なくとも1個の窒素原子を含む最大で30個の原子を有する一価のヒドロカルビル基として定義されてもよく、ここで、前記少なくとも1個の窒素原子が、1〜3個の炭素原子だけ前記Q原子から離れており;
前記基Xが、X、XまたはXとして定義されるかあるいは少なくとも1個の第一級、第二級または芳香環炭素原子を有する最大で30個の原子を有する一価の基を表し、ここで、各前記一価の基が、それぞれ前記少なくとも1個の第一級、第二級または芳香環炭素原子を介して、前記それぞれの原子Qに結合され;
およびQがそれぞれ、独立して、リン、ヒ素またはアンチモンを表す)
の新規な二座配位子。
【請求項2】
エチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法であって、ヒドロキシル基の供給源、場合により、アニオンの供給源および触媒系の供給源の存在下で、前記化合物を一酸化炭素と反応させる工程を含み、前記触媒系が:
(a)第8族、第9族もしくは第10族金属またはその化合物と;
(b)一般式(I)
【化2】

(式中:
AおよびBがそれぞれ、独立して、低級アルキレン連結基を表し;
Rが、少なくとも1つの芳香環を有するヒドロカルビル芳香族構造を表し、前記少なくとも1つの芳香環には、QおよびQがそれぞれ、存在する場合には前記少なくとも1つの芳香環の利用可能な隣接する原子上で前記それぞれの連結基を介して連結され;
前記基XおよびXが、独立して、少なくとも1個の第三級炭素原子を有する最大で30個の原子を有する一価の基を表し、またはXおよびXが一緒になって、少なくと
も2個の第三級炭素原子を有する最大で40個の原子を有する二価の基を形成し、ここで、各前記一価または二価の基が、それぞれ前記少なくとも1個または2個の第三級炭素原子を介して、前記それぞれの原子Qに結合され;
前記基Xが、18℃の希釈水溶液中で4〜14のpKbを有する、少なくとも1個の窒素原子を含む最大で30個の原子を有する一価のヒドロカルビル基として定義されてもよく、ここで、前記少なくとも1個の窒素原子が、1〜3個の炭素原子だけ前記Q原子から離れており;
前記基Xが、X、XまたはXとして定義されるかあるいは少なくとも1個の第一級、第二級または芳香環炭素原子を有する最大で30個の原子を有する一価の基を表し、ここで、各前記一価の基が、それぞれ前記少なくとも1個の第一級、第二級または芳香環炭素原子を介して、前記それぞれの原子Qに結合され;
およびQがそれぞれ、独立して、リン、ヒ素またはアンチモンを表す)
の二座配位子と
を組み合わせることによって得られる方法。
【請求項3】
前記基Xが、不飽和、飽和または部分不飽和であり得る環状構造から選択される、請求項1に記載の二座配位子。
【請求項4】
前記基Xが、不飽和である環状構造から選択される、請求項3に記載の二座配位子。
【請求項5】
前記基Xが芳香族である、請求項4に記載の二座配位子。
【請求項6】
前記基Xが、3〜14個の環原子を有する芳香族窒素複素環から選択される、請求項1または2〜5のいずれか一項に記載の二座配位子。
【請求項7】
前記基Xが、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、ピロリドン、ピロール、ピリジン、ピペリジン、アゼパン、アゼピン、アゾカン、アゾシン イミダゾリジン、ピラゾリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、インダゾール、ピラゾリン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピペラジン、ヘキサヒドロ−ピリミジン、ヘキサヒドロ−ピリダジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、ベンゾピラジン、アクリジンまたはベンゾキノリン基から選択される、請求項1に記載の二座配位子。
【請求項8】
前記基Xが、アルキルアミン、アリールアミン、ジアルキルアミンまたはトリアルキルアミン基あるいはそれらのフルオロアルキル同等物から選択される、請求項1に記載の二座配位子。
【請求項9】
前記アルキルまたはフルオロアルキルが、アルキル基が分枝状または直鎖状であり得るC1〜C4アルキルまたはフルオロアルキルから選択される、請求項8に記載の二座配位子。
【請求項10】
が、Xと同じ基である、請求項1または2〜9のいずれか一項に記載の二座配位子。
【請求項11】
1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−tert−ペンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ナフタレン、1−(ジアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリ
ジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−5−tert−ブチルアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(1−アダマンチルtert−ブチル−ホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノ)−o−キシレン、1−(2−(ホスファ−アダマンチル))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノ)−o−キシレン、1−(ジコングレシルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)フェロセン、1−(ジ−tert−ペンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)フェロセン、1−(ジアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)フェロセン、1−(ジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)フェロセン、1−(ジ−5−tert−ブチルアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)フェロセン、1−(1−アダマンチルtert−ブチル−ホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)フェロセン、1−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノ)−1,2−ジメチルフェロセン、1−(2−(ホスファ−アダマンチル))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノ)−1,2−ジメチルフェロセン、1−(ジコングレシルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)フェロセン、1−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−2,3−ビス−(ジtertブチルホスフィノメチル)フェロセン;
1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジフェニルベンゼン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−フェニルベンゼン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ビス−(トリメチルシリル)ベンゼン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(トリメチルシリル)ベンゼン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)ベンゼン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)ベンゼン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−t−ブチルベンゼン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−t−ブチルベンゼン;
1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジフェニルベンゼン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−フェニルベンゼン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ビス−(トリメチルシリル)ベンゼン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(トリメチルシリル)ベンゼン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)ベンゼン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)ベンゼン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−(ジ−t−ブチル)ベンゼン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−t−ブチルベンゼン;
1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5ジフェニルベンゼン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2
−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−フェニルベンゼン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5ビス−(トリメチルシリル)ベンゼン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(トリメチルシリル)ベンゼン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)ベンゼン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)ベンゼン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−(ジ−t−ブチル)ベンゼン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−t−ブチルベンゼン;
1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5ジフェニルメチルベンゼン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−フェニルメチルベンゼン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5ビス−(トリメチルシリル)メチルベンゼン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(トリメチルシリル)メチルベンゼン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)メチルベンゼン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)メチルベンゼン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−(ジ−t−ブチル)メチルベンゼン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−t−ブチルメチルベンゼン;
1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジフェニルベンゼン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−フェニルベンゼン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ビス−(トリメチルシリル)ベンゼン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(トリメチルシリル)ベンゼン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)ベンゼン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)ベンゼン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−(ジ−t−ブチル)ベンゼン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−t−ブチルベンゼン;
1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジフェニルフェロセン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)フェニルフェロセン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ビス−(トリメチルシリル)フェロセン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1
’)(トリメチルシリル)フェロセン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)フェロセン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)(2’−フェニルプロパ−2’−イル)フェロセン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−t−ブチルフェロセン;1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)t−ブチルフェロセン;
1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジフェニルフェロセン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)4−(または1’)フェニルフェロセン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ビス−(トリメチルシリル)フェロセン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)4−(または1’)(トリメチルシリル)フェロセン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)フェロセン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)(2’−フェニルプロパ−2’−イル)フェロセン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−(ジ−t−ブチル)フェロセン;1−(2−ホスフィノメチル−アダマンチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)t−ブチルフェロセン;
1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5ジフェニルフェロセン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)フェニルフェロセン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5ビス−(トリメチルシリル)フェロセン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)(トリメチルシリル)フェロセン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)フェロセン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)(2’−フェニルプロパ−2’−イル)フェロセン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−(ジ−t−ブチル)フェロセン;1−(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)t−ブチルフェロセン;
1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジフェニルフェロセン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)フェニルフェロセン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ビス−(トリメチルシリル)フェロセン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)(トリメチルシリル)フェロセン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)フェロセン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)(2’−フェニルプロパ−2’−イル)フェロセン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−(ジ−t−ブチル)フェロセン;1−(P,Pアダマンチル、t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジ
−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)t−ブチルフェロセン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5ジフェニル−メチルフェロセン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)フェニル−メチルフェロセン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5ビス−(トリメチルシリル)−メチルフェロセン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)(トリメチルシリル)−メチルフェロセン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−ジ−(2’−フェニルプロパ−2’−イル)−メチルフェロセン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)(2’−フェニルプロパ−2’−イル)−メチルフェロセン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4,5−(ジ−t−ブチル)−メチルフェロセン;1−(P−(2,2,6,6−テトラメチル−ホスファ−シクロヘキサン−4−オン))−2−(ジ−ピリジン−2−イルホスフィノメチル)−4−(または1’)t−ブチル−メチルフェロセンからなる群;または前述したピリジン−2−イル配位子の、ピリジン−3−イル、ピペリジン−2−イル、ピペリジン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、ピロリジン−2−イル、ピロリジン−3−イル、キノリン−2−イル、ピラジン−2−イル、ピペラジン−2−イル ピリミジン−2−イル、ヘキサヒドロ−ピリミジン−2−イル、メタンアミン、N−メチルメタンアミン、N,N−ジメチルメタンアミン、N−エチルメタンアミン、N,N−ジエチルメタンアミン、エタンアミン、N−メチルエタンアミンおよびN,N−ジメチルエタンアミン類似体からなる群から選択される、請求項1に記載の二座配位子。
【請求項12】
第8族、第9族または第10族金属あるいはその化合物に配位している、本明細書において定義される式Iの新規な二座配位子を含む新規な錯体。
【請求項13】
AおよびBがメチレンである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の二座配位子または方法。
【請求項14】
前記触媒系が、18℃の水溶液中で、−2〜6、より好ましくは、0〜5のpKaを有する、請求項2に記載のエチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法。
【請求項15】
エチレン性不飽和化合物のカルボニル化を触媒することが可能な触媒系であって:
a)第8族、第9族または第10族金属あるいはその化合物と、
b)請求項1または3〜11または13のいずれか一項に記載の式Iの二座ホスフィン、アルシン、またはスチビン配位子と、
c)場合により酸と
を組み合わせることによって得られる触媒系。
【請求項16】
18℃の希釈水溶液中で測定される前記酸のpKaが、−2〜6、より好ましくは、0〜5である、請求項15に記載の触媒系。
【請求項17】
本明細書において上述され、例に関連する新規な二座配位子。
【請求項18】
本明細書において上述され、例に言及されているエチレン性不飽和化合物のカルボニル
化方法。
【請求項19】
X1が、前記環中に1個の窒素を含む窒素含有複素環である、請求項1、3〜11、または13のいずれか一項に記載の二座配位子。
【請求項20】
前記基Xが、式Ib
(C101102(C101102110(NR101102 (Ib)
(式中、Cが、QならびにCおよびNから選択される少なくとも1個のさらなる原子に直接結合され、y=1であり;
、Cおよび/またはNが1または2つの遊離置換基部位を有する場合、R101およびR102が、任意選択の置換基水素、アリール、アルキルまたはフルオロアルキルを表し;
前記または各C原子が、N原子に直接かまたは別のC原子を介してN原子に間接的に結合され、xが、0〜6、好ましくは、1〜4、より好ましくは、3または4であり;
前記または各Nが、独立して、CまたはCに結合され、aが、1、2または3、好ましくは1であり;
110が、水素、アリール、アルキルまたはフルオロアルキルであり;
xが1以上である場合、Cが3個以上の原子の環状構造を形成してもよく、前記環状構造は、xが1である場合、NおよびCを組み込み、xが2である場合、Nおよび/またはCを組み込み、xが3である場合、Nおよび/またはCを場合により組み込む)によって表される最大で30個の原子を有する一価の基として定義され得る、請求項1または3〜11、13または19のいずれか一項に記載の二座配位子。
【請求項21】
窒素が、前記C原子に直接結合される、請求項20に記載の二座配位子。
【請求項22】
前記環中の前記窒素が、Cに直接結合される、請求項20または21に記載の二座配位子。
【請求項23】
前記または各N原子が、C鎖のいずれかの末端上または末端にある置換基に挿入されるか、あるいはx=1である場合、CとCとの間に挿入されてもまたは挿入されなくてもよい、請求項20〜22のいずれか一項に記載の二座配位子。

【公表番号】特表2013−516449(P2013−516449A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547544(P2012−547544)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052214
【国際公開番号】WO2011/083305
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(500460209)ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド (30)
【Fターム(参考)】