説明

エチレン系重合体、およびその製造方法

【課題】長鎖分岐構造を有し、かつ分子量分布の狭く、諸特性のバランスの取れたエチレン系重合体の提供を可能にする。
【解決手段】(1)重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数1の側鎖の数が0.001〜14であること、(2)重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計が0.001〜20であること、(3)重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数4の側鎖の数の合計が、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計より多いこと、および(4)重合体の炭素原子数1000当りの、ビニリデン基の数が0.05以下であることを満たすことを特徴とするエチレン系重合体、並びにその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン単独重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体であるエチレン系重合体、およびそのエチレン系重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン単独重合体およびエチレン−α−オレフィン共重合体等のエチレン系重合体は、その構造の違いにより多様な物理的性質を発現することから、多様な成型加工品に用いられている。一般に、エチレン系重合体中の長鎖分岐構造がその成型加工性に良好な影響を与え、密度の高い重合体の成型加工品が剛性および耐熱性に優れていることが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、極性モノマーおよびオレフィンを共重合させて得られる極性モノマー−オレフィン共重合体であって、その共重合体中のオレフィン由来のモノマー単位の含有量が25〜50モル%(ただし、共重合体中の全モノマー単位を100モル%とする。)であり、かつ、共重合体中のオレフィン由来のモノマー単位が2以上の連鎖(例えば、エチレン−エチレン連鎖)を構成する構造を含有する極性モノマー−オレフィン共重合体が記載されており、そしてラジカル重合方法を用いる該共重合体の製造方法、および、周期律表第8族の遷移金属原子を含む化合物を用いる該共重合体の製造方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、メチレン基1000個当たり約80〜約150個の分岐鎖を含有し、かつメチルである分岐鎖100個につき、約30〜約90個のエチル分岐鎖、約4〜約20個のプロピル分岐鎖、約15〜約50個のブチル分岐鎖、約3〜約15個のアミル分岐鎖、および約30〜約140個のヘキシル分岐鎖またはそれより長い分岐鎖を含有することを特徴とするポリオレフィン等が記載されており、また、周期律表第10族の遷移金属原子を含む化合物を用いて製造した、ヘキシル分岐鎖以上の長い分岐鎖を有する重合体が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−282739号公報
【特許文献2】特表平10−513489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている極性モノマー−オレフィン共重合体の製造方法は、重合圧力を常圧〜40MPaとするものであり、エチレン含有量が50モル%を超える共重合体を製造することが極めて困難な方法であった。
【0007】
また、特許文献2に記載されている重合体は、エチレン含有量が50モル%を超える重合体ではあるものの、重合体中の総分岐鎖数が50個以上にもおよぶ多分岐構造を有しているため、剛性および耐熱性が良好でないという問題があった。
このため、長鎖分岐構造を有し、成型加工性が良好で、エチレン含有量が高く、高密度で、剛性および耐熱性が良好な成型加工品を得ることができるエチレン系重合体が求められていた。
【0008】
本発明の目的は、かかる状況下においてこれまでの問題点を解決し、長鎖分岐構造を有し成型加工性が良好で、かつ分子量分布が狭く、高密度で、耐熱性が良好な成型加工品を得ることができるエチレン系重合体、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の側面は、エチレンを重合させて得られるエチレン単独重合体、またはエチレンおよび炭素原子数3〜8のα−オレフィンを重合させて得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であるエチレン系重合体であって、
(1)重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数1の側鎖の数が0.001〜14であること、
(2)重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計が0.001〜20であること、
(3)重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数4の側鎖の数の合計が、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計より多いこと、および
(4)重合体の炭素原子数1000当りの、ビニリデン基の数が0.05以下であること
を満たすことを特徴とする、エチレン系重合体を提供することにあります。
【0010】
本発明の第二の側面は、エチレンを重合させて得られるエチレン単独重合体、またはエチレンおよび炭素原子数3〜8のα−オレフィンを重合させて得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であるエチレン系重合体の製造方法であって、遷移金属化合物の群から選択される少なくとも一種を含む重合開始剤を用いて、
(1)重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数1の側鎖の数が0.001〜14であること、
(2)重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計が0.001〜20であること、
(3)重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数4の側鎖の数の合計が、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計より多いこと、および
(4)重合体の炭素原子数1000当りの、ビニリデン基の数が0.05以下であること
を満たすエチレン系重合体を製造することを特徴とする、エチレン系重合体の製造方法を提供することにあります。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長鎖分岐構造を有して成型加工性が良好で、かつ分子量分布が狭く、高密度で、耐熱性が良好な成型加工品を得ることができるエチレン単独重合体、またはエチレンおよび炭素原子数3〜8のα−オレフィンを重合させて得られるエチレン−α−オレフィン共重合体、およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の第一の側面は、エチレン系重合体、即ち、エチレンを重合させて得られるエチレン単独重合体、並びにエチレンおよび炭素原子数3〜8のα−オレフィンを重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体に関するものである。その側面において、 (1)重合体の炭素原子数1000当りの炭素原子数1の側鎖の数を0.001〜14とし、(2)重合体の炭素原子数1000当りの炭素原子数6以上の側鎖の数の合計を0.001〜20とし、(3)重合体の炭素原子数1000当りの炭素原子数4の側鎖の数の合計を炭素原子数6以上の側鎖の数の合計より多くし、そして(4)重合体の炭素原子数1000当りのビニリデン基の数を0.05以下とすることによって、長鎖分岐構造を有して、かつ分子量分布の狭い、諸特性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られる。
【0013】
本発明の第一の側面の好ましい1つの態様として、重合体の炭素原子数1000当りの炭素原子数8以上の側鎖の数の合計が0.001〜20であることを満たす、エチレン系重合体が提供され得る。このように、炭素原子数1000当りの炭素原子数8以上の側鎖の数の合計を0.001〜20、より好ましくは0.001〜11.0、特に好ましくは0.001〜9.0とすることによって、長鎖分岐構造を有して、かつ分子量分布の狭い、諸特性のバランスにより優れたエチレン系重合体となり得る。
【0014】
本発明の第一の側面の好ましいもう1つの態様として、端部にハロゲン原子を有する、エチレン系重合体が提供され得る。かかる態様において、より好ましいものとして、その端部においてそのハロゲン原子によりさらに重合反応が進行し得るものである、エチレン系重合体が提供され得る。そのようなエチレン系重合体において、重合体の生長末端にハロゲン原子が結合していて、そのハロゲン原子の個数としては、ポリマーの主鎖当りで、好ましくは0.001〜100個、特に好ましくは0.01〜10個である、さらに好ましくは0.1〜3個である。尚、ハロゲン原子としては、塩素、臭素およびヨウ素が好ましく、ヨウ素が特に好ましい。かかる態様によって、特に種々の化学反応に対する後反応性に優れたエチレン系重合体が提供され得る。
【0015】
本発明の第一の側面の好ましいもう1つの態様として、重合体の炭素原子数1000当りのビニリデン基の数が0.02以下である、エチレン系重合体が挙げられる。かかるビニリデン基の数としては、更に好ましくは0.01以下であり、特に好ましくは0.005以下である。かかる態様によって、特に酸化剤等に対する化学的耐久性に優れたエチレン系重合体が提供され得る。
【0016】
本発明の第一の側面の好ましいもう1つの態様として、遷移金属化合物の群から選択される少なくとも一種を含む重合開始剤を用いて製造された、エチレン系重合体が挙げられる。かかる態様によって、特に不安定なラジカル開始剤を用いることなく重合を実施する点において製造安全性に優れたエチレン系重合体が提供され得る。
【0017】
また、本発明の第二の側面は、エチレン系重合体、即ち、エチレンを重合させて得られるエチレン単独重合体、並びにエチレンおよび炭素原子数3〜8のα−オレフィンを重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法に関するものである。その側面では、遷移金属化合物の群から選択される少なくとも一種を含む重合開始剤を用いることによって、上記の第一の側面におけるような優れた特性を有したエチレン系重合体が有利に製造され得る。
【0018】
本発明の第二の側面の好ましい1つの態様として、重合開始剤が、遷移金属化合物の群から選択される少なくとも一種とハロゲン化合物の群から選択される少なくとも一種からなるリビングラジカル重合開始剤である、エチレン系重合体の製造方法が挙げられる。かかる態様のより好ましいものとして、遷移金属化合物が鉄原子を含む化合物であり、ハロゲン化合物が有機ヨウ素化合物である、リビングラジカル重合開始剤を使用する、エチレン系重合体の製造方法が挙げられる。このような態様によって、特に貴金属化合物を用いることなく重合を実施する点において経済性に優れたエチレン系重合体が製造され得る。
【0019】
本発明の第二の側面の好ましいもう1つの態様として、上記のようにして製造されたエチレン系重合体をさらに脱灰することを含む、エチレン系重合体の製造方法が挙げられる。この態様によって、特に触媒残渣等の不純物の含有が抑制され汎用性に優れたエチレン系重合体が製造され得る。
【0020】
本発明でいうα−オレフィンとは、炭素−炭素二重結合部位を有する、炭素原子数3〜8のα−オレフィンである。上記オレフィンは、π電子を有する他の官能基と共役せず、なおかつビニルエーテルのように酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子と直接結合した炭素−炭素二重結合を有さない。この条件を満たす限りにおいて、環状および鎖状に関わらず、炭化水素化合物に限らず、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、水酸基、およびハロゲノ基などの置換基やエーテル結合などを1つ以上含む化合物であってもよい。上記α−オレフィンは、単独で用いても、または複数を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記のα−オレフィンのうちで、炭化水素系のα−オレフィンとして、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル、−1−ペンテン、2−メチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、メチリデンシクロヘキサン、エチリデンシクロヘキサン、シクロヘキセン、ノルボルネン等が挙げられる。カルボニル基を含有するα−オレフィンとしては、例えば、酢酸アリル、β−ビニル−γ−ラクトン、メチルアリルケトン、アリルアルデヒド、アリルアミド、N−アセチルアリルアミド、N−アリルアセトアミド等が挙げられる。シアノ基を含有するα−オレフィンとしては、例えば、3−プロペン−1−ニトリル等が挙げられる。アミノ基を含有するα−オレフィンとしては、例えば、アリルアミン等が挙げられる。水酸基を含有するα−オレフィンとしては、例えば、アリルアルコール、ホモアリルアルコール等が挙げられる。ハロゲノ基を含有するα−オレフィンとしては、例えば、アリルクロライド等が挙げられる。エーテル結合を有するα−オレフィンとしては、例えば、メチルアリルエーテル、グリシジルクロライド、グリシジルアルコール、メチルグリシジルエーテル、リモネンオキサイド等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも好ましいα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、アリルアルコールなどが挙げられる。上記α−オレフィンは単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレン由来の繰り返し単位の含有量は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されないが、好ましくは50〜100モル%であり、より好ましくは80〜100モル%であり、特に好ましくは95〜100モル%である。このように、エチレン由来の繰り返し単位の含有量が50モル%以上であることによって、耐熱性に優れた共重合体が得られる。
【0024】
本発明におけるエチレン系重合体の炭素原子数は、13C核磁気共鳴分光法によって求められるものである。そのような炭素原子数を基準に、本発明のエチレン系重合体では、主鎖および側鎖のいずれの炭素も含んだ炭素原子数1000当りで、炭素原子数1の側鎖の数が0.001〜14であり、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計が0.001〜20であり、炭素原子数4の側鎖の数の合計が、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計よりも多い。
【0025】
その炭素原子数1の側鎖の数は、好ましくは0.01〜14であり、特に好ましくは0.01〜8である。炭素原子数6以上の側鎖の数の合計は、好ましくは0.01〜19であり、特に好ましくは0.01〜18.5である。また、炭素原子数4の側鎖の数は、好ましくは、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計よりも0.01〜50多く、特に好ましくは0.01〜31多い。
【0026】
本発明のエチレン系重合体において、13C核磁気共鳴分光法によって求められる炭素原子数6以上の側鎖の数の合計の中に含まれる、炭素原子数8以上の側鎖の数の合計が、好ましくは0.001〜16の範囲であり、より好ましくは0.01〜12の範囲であり、特に好ましくは0.1〜10の範囲である。
【0027】
本発明のエチレン系重合体において、示差走査熱量分析(DSC)による融点が、好ましくは110〜135℃の範囲であり、より好ましくは115〜130℃の範囲であり、特に好ましくは117〜125℃の範囲である。
【0028】
本発明のエチレン系重合体において、密度が、好ましくは925〜940kg/m3の範囲であり、特に好ましくは928〜938kg/m3の範囲である。
【0029】
本発明におけるエチレン系重合体の分子量は特に限定されないが、加工性の観点から、数平均分子量(Mn)で、好ましくは5,000〜10,000,000であり、特に好ましくは10,000〜1,000,000である。
【0030】
本発明のエチレン系重合体において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、好ましくは1.0〜7.0であり、特に好ましくは1.3〜6.0である。
【0031】
本発明のエチレン系重合体において、スウェル比(SR)は特に限定されないが、成型加工性の観点から、好ましくは1.0〜5.0の範囲であり、特に好ましくは1.2〜3.0の範囲である。
【0032】
本発明のエチレン系重合体の製造方法としては、遷移金属化合物を用いた重合方法であれば特に限定されないが、例えば、配位重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、ラジカルリビング重合法などが挙げられる。
【0033】
上記製造方法で用いる遷移金属化合物としては、例えば、元素周期律表(IUPAC1985年)の第8〜12族の金属原子を含む金属化合物のうち少なくともいずれか一つの金属錯体(以下、成分(A)と称する。)を用いることができる。なお、成分(A)の金属錯体は単独で用いてもよいが、複数の錯体を同時に使用してもよい。その場合にも、それぞれ単独で使用した場合と同様の効果が期待できる。
【0034】
かかるエチレン系重合体の製造方法において用いることのできる、成分(A)の元素の周期表(IUPAC1985年)第8族の遷移金属原子を中心金属とする単核金属錯体としては、好ましくは、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロ−p−シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロ(2−N,N−ジメチルアミノインデニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、エチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウム(ペンタフルオロフェニル)ボレート、エチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートのようなルテニウムを中心金属に有する単核金属錯体を挙げることができる。
【0035】
更には、フェロセン、アセチルフェロセン、1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジ−イソプロピルフォスフィノ)フェロセン、ビス(エチルシクロペンタジエニル)アイロン、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)アイロン、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)アイロン、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)アイロン、n−ブチルフェロセン、tert−ブチルフェロセン、シクロヘキサジエンアイロントリカルボニル、シクロオクタテトラエンアイロントリカルボニル、α−(N,N−ジメチルアミノ)エチルフェロセン、N,N−ジメチルアミノメチルフェロセン、1,1’−ジメチルフェロセン、エチルフェロセン、α−ヒドロキシエチルフェロセン、ヒドロキシメチルフェロセン、アイロン(II)アセテート、アイロン(III)アセチルアセトナート、アイロン(II)ブロマイド、アイロン(II)クロライド、アイロン(II)ヨード、アイロン(III)ブロマイド、アイロン(III)クロライド、アイロン(II)フタロシアニン、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)アイロン、ブロモジカルボニルシクロペンタジエニルアイロン、ブロモジカルボニル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)アイロン、ジカルボニルシクロペンタジエニルヨードアイロン、ジカルボニル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ヨードアイロン、1,1’−ジアセチルフェロセンのような鉄を中心金属に有する単核金属錯体なども挙げることができる。
【0036】
また、成分(A)の元素の周期表(IUPAC1985年)第8族の遷移金属原子を中心金属とする複核金属錯体としては、例えば、下記式(1)で表される遷移金属化合物を挙げることができる。
(CpR1m)M1(CO)42(CpR2n) (1)
(ただし、上記式(1)において、Cpはシクロペンタジエニル環を表し、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、少なくとも1つのR1および少なくとも1つのR2はいずれも炭素原子数5〜20の炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。M1およびM2はそれぞれ独立に元素の周期表第8族の遷移金属原子を表す。(CO)はM1とM2を架橋して配位するか、またはM1、M2のそれぞれに配位するカルボニル基を表す。)
【0037】
上記式(1)の遷移金属化合物のM1およびM2は、それぞれ独立に元素の周期表(IUPAC1985年)第8族の遷移金属原子である。第8族の遷移金属原子としては、例えば、鉄原子、ルテニウム原子、オスミウム原子が挙げられる。第8族の遷移金属原子M1およびM2の組み合わせは特に限定されないが、例えば、鉄原子と鉄原子、鉄原子とルテニウム原子、鉄原子とオスミウム原子、ルテニウム原子とルテニウム原子、ルテニウム原子とオスミウム原子、オスミウム原子とオスミウム原子等の組み合わせが挙げられる。なかでも経済性の観点から、M1およびM2がいずれも鉄原子である組み合わせが好ましい。
【0038】
上記式(1)の遷移金属化合物の(CO)は、M1とM2を架橋して配位するか、またはM1、M2のそれぞれに配位するカルボニル基である。
【0039】
上記式(1)の遷移金属化合物の遷移金属原子M1およびM2と、カルボニル基(CO)との結合状態としては、例えば、
[1]互いに結合された遷移金属原子M1とM2のそれぞれに、1個のカルボニル基(CO)が配位し、さらに2個の(CO)がM1とM2を架橋して配位する結合状態、
[2]互いに結合を有しない遷移金属原子M1とM2のそれぞれに、1個のカルボニル基(CO)が配位し、さらに2個の(CO)がM1とM2を架橋して配位する結合状態、
[3]互いに結合された遷移金属原子M1とM2のそれぞれに、2個のカルボニル基(CO)が配位する結合状態、
等の結合状態を取りうる。
【0040】
上記式(1)の遷移金属化合物のCpはシクロペンタジエニル環であり、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の炭化水素基である。(CpR1m)は、遷移金属原子M1に配位する置換シクロペンタジエニル環であり、(CpR2n)は、遷移金属原子M2に配位する置換シクロペンタジエニル環であり、mおよびnはそれぞれ独立に1〜5の整数である。M1に配位する置換シクロペンタジエニル環(CpR1m)は、下記式(2)で表されるシクロペンタジエニル環であり、M2に配位する置換シクロペンタジエニル環(CpR2n)も、下記式(2)のすべてのR1をR2に置き換えた式で表される。
【化1】

【0041】
上記式(1)の遷移金属化合物のR1およびR2における炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、例えば、直鎖型飽和炭化水素基、分岐構造を有する飽和炭化水素基、環状構造を有する飽和炭化水素、直鎖型不飽和炭化水素基、分岐構造を有する不飽和炭化水素基、環状構造を有する不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0042】
上記式(1)の遷移金属化合物のR1およびR2において、少なくとも1つのR1および少なくとも1つのR2はいずれも炭素原子数5〜20の炭化水素基であり、炭化水素溶媒に対する溶解性に優れるとの観点から、好ましくは少なくとも1つのR1および少なくとも1つのR2がいずれも炭素原子数8〜20の飽和炭化水素基であり、特に好ましくは少なくとも1つのR1および少なくとも1つのR2がいずれも炭素原子数8〜20の直鎖型飽和炭化水素基である。
【0043】
上記式(1)の遷移金属化合物として好ましくは、安定性と原料調達の容易さの観点から、mが5であり、nが5であり、1つのR1および1つのR2がいずれも炭素原子数5〜20の炭化水素基であり、他のR1および他のR2がいずれもメチル基である遷移金属化合物である。好ましい遷移金属化合物としては、例えば、n−ペンチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ヘキシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ヘプチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−オクチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ノニル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−デシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ウンデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ドデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−トリデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−テトラデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ペンタデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ヘキサデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ヘプタデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−オクタデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ノナデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−イコシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ペンチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、ネオペンチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ヘキシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ヘプチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−オクチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ノニル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−デシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ウンデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ドデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−トリデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−テトラデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ペンタデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ヘキサデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ヘプタデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−オクタデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−ノナデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、sec−イコシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロペンチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロヘキシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロヘプチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロオクチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロノニル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロウンデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロドデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロトリデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロテトラデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロペンタデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロヘキサデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロヘプタデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロオクタデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロノナデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、シクロイコシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー等の、遷移金属原子M1およびM2の組み合わせが鉄原子と鉄原子である遷移金属化合物、遷移金属化合物の遷移金属原子M1およびM2の組み合わせを鉄原子と鉄原子から、鉄原子とルテニウム原子に置き換えた遷移金属化合物、鉄原子とオスミウム原子に置き換えた遷移金属化合物、ルテニウム原子とルテニウム原子に置き換えた遷移金属化合物、ルテニウム原子とオスミウム原子に置き換えた遷移金属化合物、オスミウム原子とオスミウム原子に置き換えた遷移金属化合物等が挙げられる。
【0044】
より好ましい上記式(1)の遷移金属化合物としては、経済性の観点から、M1およびM2がいずれも鉄原子である遷移金属化合物である。これらの遷移金属化合物は、異なる2種以上の遷移金属化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0045】
前記成分(A)のコバルトを中心金属とする金属錯体としては、例えばコバルトセンが挙げることができる。
【0046】
前記成分(A)の銅を中心金属とする金属錯体としては、例えば、銅原子に対して周期律表(IUPAC1985年)の第13〜17族の原子を含む配位子が配位した錯体が挙げることができる。
【0047】
遷移金属化合物は単独でまたは複数を併用して使用することができる。これらの中でも、シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、ペンタメチルシクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−ヘキシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−オクチル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、n−デシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー、およびn−ドデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマーが好ましい。
【0048】
本発明のエチレン系重合体の製造方法において用いることのできる、ハロゲン化合物(以下、成分(B)と称する)としては、例えば、α−ハロゲノカルボニル化合物、α−ハロゲノカルボン酸エステル、ハロゲン化炭化水素、(1−ハロゲノアルキル)ベンゼン誘導体等が挙げられる。
【0049】
α−ハロゲノカルボニル化合物としては、例えば、1−クロロ−2−プロパノン、1,1,1−トリクロロ−2−プロパノン、2−クロロアセトフェノン、2,2−ジクロロアセトフェノン、1−ブロモ−2−プロパノン、1,1,1−トリブロモ−2−プロパノン、2−ブロモアセトフェノン、2,2−ジブロモアセトフェノン、1−ヨード−2−プロパノン、1,1,1−トリヨード−2−プロパノン、2−ヨードアセトフェノン、2,2−ジヨードアセトフェノン、1−ブロモ−2−ブタノン、1−ブロモ−2−ペンタノン、3−ブロモ−2−ブタノン、3−ブロモ−2−ペンタノン、2−ブロモ−3−ペンタノン、3−ブロモ−4−ヘプタノン、1−ヨード−2−ブタノン、1−ヨード−2−ペンタノン、3−ヨード−2−ブタノン、3−ヨード−2−ペンタノン、2−ヨード−3−ペンタノン、3−ヨード−4−ヘプタノン、1−クロロ−2−ブタノン、1−クロロ−2−ペンタノン、3−クロロ−2−ブタノン、3−クロロ−2−ペンタノン、2−クロロ−3−ペンタノン、3−クロロ−4−ヘプタノン等が挙げられる。
【0050】
α−ハロゲノカルボン酸エステルとしては、例えば、2−クロロ酢酸メチル、2−ブロモ酢酸メチル、2−ヨード酢酸メチル、2−クロロ酢酸エチル、2−ブロモ酢酸エチル、2−ヨード酢酸エチル、2−クロロ酢酸プロピル、2−ブロモ酢酸プロピル、2−ヨード酢酸プロピル、2−クロロ酢酸ブチル、2−ブロモ酢酸ブチル、2−ヨード酢酸ブチル、2,2,2−トリクロロ酢酸メチル、2,2−ジクロロ酢酸メチル、2,2,2−トリブロモ酢酸メチル、2,2−ジブロモ酢酸メチル、2,2,2−トリヨード酢酸メチル、2,2−ジヨード酢酸メチル、2,2,2−トリクロロ酢酸エチル、2,2−ジクロロ酢酸エチル、2,2,2−トリブロモ酢酸エチル、2,2−ジブロモ酢酸エチル、2,2,2−トリヨード酢酸エチル、2,2−ジヨード酢酸エチル、2−クロロプロピオン酸メチル、2−ブロモプロピオン酸メチル、2−ヨードプロピオン酸メチル、2−クロロ酪酸メチル、2−ブロモ酪酸メチル、2−ヨード酪酸メチル、2−クロロプロピオン酸エチル、2−ブロモプロピオン酸エチル、2−ヨードプロピオン酸エチル、2−クロロ酪酸エチル、2−ブロモ酪酸エチル、2−ヨード酪酸エチル、2−クロロプロピオン酸プロピル、2−ブロモプロピオン酸プロピル、2−ヨードプロピオン酸プロピル、2−クロロ酪酸プロピル、2−ブロモ酪酸プロピル、2−ヨード酪酸プロピル、2−クロロプロピオン酸ブチル、2−ブロモプロピオン酸ブチル、2−ヨードプロピオン酸ブチル、2−クロロ酪酸ブチル、2−ブロモ酪酸ブチル、2−ヨード酪酸ブチルが挙げられる。
【0051】
更に、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸メチル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸エチル、2−クロロ−2−メチル酪酸メチル、2−ブロモ−2−メチル酪酸メチル、2−ヨード−2−メチル酪酸メチル、2−クロロ−2−メチル酪酸エチル、2−ブロモ−2−メチル酪酸エチル、2−ヨード−2−メチル酪酸エチル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸プロピル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸プロピル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸プロピル、2−クロロ−2−メチル酪酸プロピル、2−ブロモ−2−メチル酪酸プロピル、2−ヨード−2−メチル酪酸プロピル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸ブチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸ブチル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸ブチル、2−クロロ−2−メチル酪酸ブチル、2−ブロモ−2−メチル酪酸ブチル、2−ヨード−2−メチル酪酸ブチル、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、2−ブロモ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、2−ヨード−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、1,2−ビス(2’−ブロモ−2’−メチルプロピオニルオキシ)エタン、1,2−ビス(2’−ヨード−2’−メチルプロピオニルオキシ)エタン、1,2−ビス(2’−ブロモプロピオニルオキシ)エタン、1,2−ビス(2’−ヨードプロピオニルオキシ)エタン、2−(2’−ブロモ−2’−メチルプロピオニルオキシ)エチルアルコール、2−(2’−ヨード−2’−メチルプロピオニルオキシ)エチルアルコール等が挙げられる。
【0052】
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタン、四臭化炭素、ブロモホルム、ジブロモメタン、ブロモメタン、四ヨウ化炭素、ヨードホルム、ジヨードメタン、ヨードメタン、ヨードエタン、1−ヨードプロパン、2−ヨードプロパン、1−ヨードブタン、2−ヨードブタン、1−ヨードイソブタン、2−ヨードイソブタン、1−ヨードペンタン、2−ヨードペンタン、3−ヨードペンタン、1−ヨードイソペンタン、2−ヨードイソペンタン、3−ヨードイソペンタン、1−ヨードヘキサン、2−ヨードヘキサン、3−ヨードヘキサン、1−ヨードイソヘキサン、2−ヨードイソヘキサン、3−ヨードイソヘキサン、ヨードシクロプロパン、ヨードシクロブタン、ヨードシクロペンタン、ヨードシクロヘキサン、1,1−ジヨードエタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨードプロパン、1,4−ジヨードブタン、1,5−ジヨードペンタン、1,6−ジヨードヘキサン、1,8−ジヨードオクタン、1,10−ジヨードデカン、1,12−ジヨードドデカン、ブロモエタン、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモイソブタン、2−ブロモイソブタン、1−ブロモペンタン、2−ブロモペンタン、3−ブロモペンタン、1−ブロモイソペンタン、2−ブロモイソペンタン、3−ブロモイソペンタン、1−ブロモヘキサン、2−ブロモヘキサン、3−ブロモヘキサン、1−ブロモイソヘキサン、2−ブロモイソヘキサン、3−ブロモイソヘキサン、ブロモシクロプロパン、ブロモシクロブタン、ブロモシクロペンタン、ブロモシクロヘキサン、1,1−ジブロモエタン、1,2−ジブロモエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,4−ジブロモブタン、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモヘキサン、1,8−ジブロモオクタン、1,10−ジブロモデカン、1,12−ジブロモドデカンが挙げられる。
【0053】
更に、クロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロイソブタン、2−クロロイソブタン、1−クロロペンタン、2−クロロペンタン、3−クロロペンタン、1−クロロイソペンタン、2−クロロイソペンタン、3−クロロイソペンタン、1−クロロヘキサン、2−クロロヘキサン、3−クロロヘキサン、1−クロロイソヘキサン、2−クロロイソヘキサン、3−クロロイソヘキサン、クロロシクロプロパン、クロロシクロブタン、クロロシクロペンタン、クロロシクロヘキサン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジクロロプロパン、1,4−ジクロロブタン、1,5−ジクロロペンタン、1,6−ジクロロヘキサン、1,8−ジクロロオクタン、1,10−ジクロロデカン、1,12−ジクロロドデカン、1―クロロ―1−ヨードエタン、1−クロロ−2−ヨードエタン、1−クロロ−3−ヨードプロパン、1−クロロ−4−ヨードブタン、1−クロロ−5−ヨードペンタン、1−クロロ−6−ヨードヘキサン、1−クロロ−8−ヨードオクタン、1−クロロ−10−ヨードデカン、1−クロロ−12−ヨードドデカン、1―ブロモ―1−ヨードエタン、1−ブロモ−2−ヨードエタン、1−ブロモ−3−ヨードプロパン、1−ブロモ−4−ヨードブタン、1−ブロモ−5−ヨードペンタン、1−ブロモ−6−ヨードヘキサン、1−ブロモ−8−ヨードオクタン、1−ブロモ−10−ヨードデカン、1−ブロモ−12−ヨードドデカン、1―ブロモ―1−クロロエタン、1−ブロモ−2−クロロエタン、1−ブロモ−3−クロロプロパン、1−ブロモ−4−クロロブタン、1−ブロモ−5−クロロペンタン、1−ブロモ−6−クロロヘキサン、1−ブロモ−8−クロロオクタン、1−ブロモ−10−クロロデカン、1−ブロモ−12−クロロドデカン等が挙げられる。
【0054】
(1−ハロゲノアルキル)ベンゼン誘導体としては、例えば、1−ブロモ−1−フェニルエタン、4−(1−ブロモエチル)安息香酸、4−(1−ブロモエチル)安息香酸メチル、4−(1−ブロモエチル)安息香酸エチル、1−クロロ−1−フェニルエタン、4−(1−クロロエチル)安息香酸、4−(1−クロロエチル)安息香酸メチル、4−(1−クロロエチル)安息香酸エチル、1−ヨード−1−フェニルエタン、4−(1−ヨードエチル)安息香酸、4−(1−ヨードエチル)安息香酸メチル、4−(1−ヨードエチル)安息香酸エチル等が挙げられる。
【0055】
ハロゲン化合物として、好ましくはα−ハロゲノカルボニル化合物、α−ハロゲノカルボン酸エステル、ハロゲン化炭化水素であり、特に好ましくは2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヨードプロピオン酸エチル、2−ヨードブタンである。これらのハロゲン化合物は、異なる2種以上のハロゲン化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0056】
本発明のエチレン系重合体の製造方法において、エチレンの使用量は通常、0.01〜1000mol/Lであり、オレフィンの使用量は通常、0〜100mol/Lである。
【0057】
本発明のエチレン共重合体の製造方法において、α−オレフィンの使用量は通常、0.001〜100mol/Lであり、オレフィンの使用量は通常、0.01〜10mol/Lである。また、エチレンに対するオレフィンの使用量のモル比は、好ましくは0.001〜100であり、特に好ましくは0.1〜10である。
【0058】
本発明のエチレン系重合体の製造方法において用いることのできる、成分(A)の遷移金属化合物の濃度は、好ましくは0.0001〜500mmol/L、特に好ましくは0.001〜10mmol/Lである。
【0059】
本発明のエチレン系重合体の製造方法において用いることのできる、成分(B)のハロゲン化合物の濃度は、好ましくは0.0001〜500mmol/L、特に好ましくは0.001〜10mmol/Lである。
【0060】
本発明のエチレン系重合体の製造方法において成分(A)と成分(B)をしても良い。この場合の成分(A)の濃度に対する成分(B)の濃度の比は、好ましくは0.01〜100であり、特に好ましくは0.1〜10である。
【0061】
本発明のエチレン系重合体の製造方法においては、本発明の効果が維持される場合においてのみ、添加剤成分として、トリアリールホウ素化合物やトリアルキルアルミニウム化合物のようなルイス酸または、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミンのようなアミン化合物を、適宜濃度を調整して使用できるが、好ましくは0.001〜5000mmol/L、特に好ましくは0.01〜100mmol/Lである。
【0062】
本発明のエチレン系重合体の製造方法において重合温度は、通常70〜300℃の範囲に渡って実施することができるが、好ましくは80〜250℃の範囲であり、特に好ましくは100〜210℃である。また、重合圧力としては、通常4.0〜400MPaであり、好ましくは4.0〜350MPaであり、特に好ましくは4.0〜300MPaである。このような高い温度および圧力で重合を行うことによって、重合体鎖内のオレフィン連鎖の形成の点で有利となる。
【0063】
重合時間は、一般的に、目的とする重合体の種類、反応装置によって適宜決定されるが、例えば10秒〜40時間の範囲を採りうる。
【0064】
本発明のエチレン系重合体の製造方法において用いることのできる重合器は、連続式反応器、回分式反応器、半回分式反応器のいずれも採用し得るが、好ましくは連続式反応器である。
【0065】
本発明のエチレン系重合体の製造方法においては溶媒を用いることができ、例えば、プロパン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒を用いることができる。
【0066】
本発明のエチレン系重合体の製造方法において用いることのできる重合方法として、バルク重合、スラリー重合、溶媒重合、液相重合または気相重合のいずれかを採用することができる。
【0067】
本発明のエチレン系重合体の分子量を調節するために、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加することもできる。
【0068】
本発明においては、上記製造方法において製造されたエチレン系重合体を溶媒に溶解させた重合体溶液と、酸とアルコールの混合溶液とを接触および混合させることにより、脱灰することができる。
【0069】
その重合体溶液の溶媒としては、エチレン系重合体を溶解するという目的が達せられれば特に限定されないが、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、アニソール、エチルベンゼン、パラキシレン、メタキシレン、オルトキシレン、クロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、メタジクロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素、超臨界二酸化炭素のような溶媒を用いることができる。中でも、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンが、重合物との親和性および入手容易性の点で好ましい。
【0070】
上記の酸−アルコール混合溶液に用いる酸としては、塩酸、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、酪酸、アスコルビン酸、シュウ酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、硝酸、メルドラム酸のような酸を用いることができ、好ましくは塩酸、酢酸、シュウ酸、アスコルビン酸である。
【0071】
上記、酸−アルコール混合溶液に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールのようなアルコールを用いることができ、好ましくはメタノールおよびエタノールである。
【0072】
上記の酸−アルコール混合溶液における、アルコールに対する酸の体積百分率は好ましくは0.01〜1.0%である。また、上記の酸−アルコール混合溶液に対する上記重合体溶液の体積比率は、好ましくは0.01〜10%であり、特に好ましくは0.1〜1.0%である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例中の各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、下記の条件で測定した。また、検量線は標準ポリスチレンを用いて作成した。
測定機 ミリポアウオーターズ社製 150CV型
カラム Shodex M/S 80
測定温度 145℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、
サンプル濃度 5mg/8ml
【0074】
(2)示差走査熱量(DSC)測定
Perkin−Elmer社製DSC−VIIを用いて、以下の条件で測定した。
昇温:20℃から200℃(20℃/分) 10分保持
冷却:200℃から−100℃(20℃/分) 10分保持
測定:−100℃から300℃(20℃/分で昇温)
【0075】
(3)13C核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定
JEOL社製JNM−AL400を用いオルトジクロロベンゼン−d4溶媒中で135℃の温度で測定した。
(4)密度(d、単位:kg/m3
JIS K6760に従って測定を行った。100℃沸騰水中で1時間アニーリングした後、測定に用いた。
(5)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に従って測定した。試験荷重は21.18N(2.16kgf)、測定温度は190℃で行った。
(6)スウェル比(SR)
JIS K7210に規定されたメルトフローレート測定装置を用い、メルトフローレート測定時に押し出されたストランドの直径Dを測定し、オリフィスの直径D0とストランドの直径Dの比(D/D0)をスウェル比(SR)の値とした。測定温度は190℃で行った。
【0076】
実施例1〜6
内容積1.94リットルの槽型の撹拌翼付連続式反応器を用い、エチレン重合を行った。n−ドデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマーのヘプタン溶液(3.0重量%)と2−ヨードブタン(東京化成工業社製)のヘプタン溶液(15.0重量%)とをそれぞれ別の容器に準備し、槽内において所定の濃度となるように連続的に供給し、滞留時間2分の条件で、槽内が136〜201℃の範囲でそれぞれ表1,2に示す温度で、表1,2に示す重合圧力となるようにエチレンを加圧供給した。連続的に得られた生成物を洗浄し、H、13C−NMR測定によって構造分析を行った。なお、n−ドデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマーは、特願2006−036164(特開2007−217290号公報参照)に記載の方法により合成し、これを用いた。下記表1,2に示されるように、得られたエチレン単独重合体は、いずれも長鎖分岐構造を有して、かつ分子量分布の狭い重合体であった。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
比較例1〜2
実施例1〜6におけるn−ドデシル(テトラメチル)シクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマーと2−ヨードブタンの代わりに、ラジカル発生剤としてt−ブチルパーオキシビバレートを用い、連鎖移動剤としてヘプタンを用いて、エチレン重合を行った。しかしながら、下記表3に示されるように、得られたエチレン単独重合体は、いずれも炭素原子数1000当りの炭素原子数1の分岐の数が望ましい値よりも大きい重合体であった。
【0080】
【表3】

【0081】
実施例7
アルゴンガスで置換された、良く乾燥した0.4Lオートクレーブに、ペンタメチルシクロペンタジエニル鉄カルボニルダイマー(0.10mol/Lトルエン溶液:東京化成工業社製)50mLと2−ヨードブタン(1.0mol/Lトルエン溶液:東京化成工業社製)2.0mL、精製トルエン48mLを投入し、それからエチレンガス1.0MPaを導入してオートクレーブの加熱を開始した。重合温度180℃に達した後に全圧が4.0MPaとなるようにエチレン圧力弁を調節し、3時間かけてエチレン重合を行った。得られた重合溶液の一部を採取してガスクロマトグラフィー−質量分析装置で分析したところ、エチレン単独重合体(エチレン10〜24量体)が検出された。
【0082】
実施例8
実施例1〜3で製造した重合体を105℃でトルエンに溶解して得られたトルエン溶液を1%塩酸−エタノール溶液に投入して脱灰により精製したところ、白色のポリマーが析出した。得られたポリマーをトルエンに溶かし、精製前と後とで比較したところ、精製前のポリマー溶液は明らかに着色したものであったが、精製後のポリマー溶液は清明であった。
【0083】
実施例9
実施例1〜3で製造した重合体を130℃でキシレンに溶解して得られたキシレン溶液を1%塩酸−エタノール溶液に投入して脱灰により精製したところ、白色のポリマーが析出した。得られたポリマーをトルエンに溶かし、精製前と後とで比較したところ、精製前のポリマー溶液は明らかに着色したものであったが、精製後のポリマー溶液は清明であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンを重合させて得られるエチレン単独重合体、またはエチレンおよび炭素原子数3〜8のα−オレフィンを重合させて得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であるエチレン系重合体であって、
(1)該重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数1の側鎖の数が0.001〜14であること、
(2)該重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計が0.001〜20であること、
(3)該重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数4の側鎖の数の合計が、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計より多いこと、および
(4)該重合体の炭素原子数1000当りの、ビニリデン基の数が0.05以下であること
を満たすことを特徴とする、エチレン系重合体。
【請求項2】
重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数8以上の側鎖の数の合計が0.001〜20である、請求項1に記載のエチレン系重合体。
【請求項3】
端部にハロゲン原子を有する、請求項1または2に記載のエチレン系重合体。
【請求項4】
前記端部が、前記ハロゲン原子によりさらに重合し得るものである、請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体。
【請求項5】
前記重合体の炭素原子数1000当りのビニリデン基の数が0.02より小である、請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン系重合体。
【請求項6】
遷移金属化合物の群から選択される少なくとも一種を含む重合開始剤を用いて製造された、請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン系重合体。
【請求項7】
エチレンを重合させて得られるエチレン単独重合体、またはエチレンおよび炭素原子数3〜8のα−オレフィンを重合させて得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であるエチレン系重合体の製造方法であって、遷移金属化合物の群から選択される少なくとも一種を含む重合開始剤を用いて、
(1)該重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数1の側鎖の数が0.001〜14であること、
(2)該重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計が0.001〜20であること、
(3)該重合体の炭素原子数1000当りの、炭素原子数4の側鎖の数の合計が、炭素原子数6以上の側鎖の数の合計より多いこと、および
(4)該重合体の炭素原子数1000当りの、ビニリデン基の数が0.05以下であること
を満たすエチレン系重合体を製造することを特徴とする、エチレン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記重合開始剤が、遷移金属化合物の群から選択される少なくとも一種とハロゲン化合物の群から選択される少なくとも一種からなるリビングラジカル重合開始剤である、請求項7に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記遷移金属化合物が鉄原子を含む化合物であり、前記ハロゲン化合物が有機ヨウ素化合物である、請求項8に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記エチレン系重合体を脱灰することをさらに含む、請求項7〜9のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−215376(P2009−215376A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58391(P2008−58391)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】