説明

エチレン系重合体からなる延伸フィルム

【課題】フィルムの剛性が高く、包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)に優れ、フィルムの強度が強く、且つ、被包装物の包装時や包装後の包装フィルムの破れが発生しない延伸フィルムを得ることを目的とする。
【解決手段】下記[1]〜[4]の物性を有するエチレン−α−オレフィン共重合体(E)を含む層を1層以上含む延伸フィルム;[1]密度(dE)が928〜955kg/m3の範囲にある、[2]135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Eが1.2〜3.
0dl/gの範囲にある、[3]190℃で測定したメルトテンションが3.5〜18gの範囲にある、[4]GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.5〜18の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム剛性が高く、フィルム強度に優れる延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン系共重合体からなる延伸フィルムは従来から熱収縮性フィルムなどに使用され、食品、家庭用品や書籍などを熱収縮包装するためのフィルムなどとして使用されている。
【0003】
このようなフィルムを提供する技術として、特定のエチレン系樹脂組成物を用いた延伸フィルム(特許文献1〜3)、直鎖状低密度ポリエチレンと変性ポリオレフィンからなる延伸フィルム(特許文献4)、特定のエチレン系樹脂組成物を用い、電子線等により架橋処理を行った後、延伸を行ったフィルム(特許文献5〜7)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、かかる方法で得られた延伸フィルムは、延伸加工時の延伸バブルの安定性が連続生産可能なレベルにあり、且つ熱収縮性フィルムとして使用可能であるが、フィルムの剛性が低いため、内容物を包装する際のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)が不十分である。このため、延伸加工安定性があり、かつ、フィルムの剛性が高く、内容物包装時や包装後の使用時にフィルムの破れが発生しない強度に優れた延伸フィルムが要望されている。
【0005】
一般的に密度の高いポリエチレンを用いることによって、フィルムの剛性が高いフィルムを得ることは可能であるが、これまでの技術では延伸加工が困難であったり、強度が弱い延伸フィルムしか得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−238543
【特許文献2】特開2001−26684
【特許文献3】特公平05−030855
【特許文献4】特公平03−018655
【特許文献5】特開2007−118576
【特許文献6】特開2003−136653
【特許文献7】特開2001−1468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フィルムの剛性が高く、包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)に優れ、フィルムの強度が強く、且つ、被包装物の包装時や包装後の包装フィルムの破れが発生しない延伸フィルムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはこの課題を解決すべく検討を行った結果、延伸フィルムに用いるエチレン−α−オレフィン共重合体として、エチレン−α−オレフィン共重合体の密度、極限粘度、メルトテンション、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比をある特定の範囲内に制御したものを用いることによって、延伸加工安定性にも優れ、得られる延伸フィルムの剛性が高く、包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)に優れ、かつ、フィルムの強度が強く、被包装物の包装時や包装後の使用時に包装フィルムの破れが発
生し難い延伸フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記の[1]〜[4]を同時に満たすことを特徴とするエチレン−α−オレフィン共重合体(E)を含む層を1層以上含む延伸フィルムに関する。
[1]密度(dE)が928〜955kg/m3の範囲にある、
[2]135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Eが1.2〜3.0dl/gの範
囲にある、
[3]190℃測定におけるメルトテンションが3.5〜18gの範囲にある、
[4]GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.5〜18の範囲にある。
【0010】
本発明は、好ましくは、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(E)が、クロス分別(CFC)における溶出温度−溶出成分量曲線において全溶出成分量を100質量%とした時に溶出積算量が5質量%となる温度と、積算量が50質量%となる温度の差が12℃以下となることを特徴としている。
【0011】
本発明は、好ましくは、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(E)が、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)70〜30質量%とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)が30〜70質量%とからなることを特徴としている。
【0012】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A);
エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなり、密度(dA)が945〜978kg/m3、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Aが0.6〜1.8dl/gを満たす。
【0013】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B);
エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなり、密度(dB)が9
05〜945kg/m3、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Bが2.0〜5.5dl/gを満たす。
【0014】
本発明の延伸フィルムは、好ましくは、MD方向(Machine Direction方向:フィルム流れ方向)の引張ヤング率(Y)とダートインパクト(D)が、下記の式(i)及び式(ii)の条件を同時に満たすことを特徴としている。
[式1]
【0015】
900≦Y≦3500 (i)(Y:MD方向の引張ヤング率[単位:MPa])
[式2]
【0016】
100≦D≦600 (ii)(D:ダートインパクト[単位:g])
【発明の効果】
【0017】
本発明の延伸フィルムは、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(E)を含む層を1層以上含むので、フィルムの剛性が高く、包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)に優れ、フィルムの強度に優れ、且つ、フィルム破れの発生が起き難いので、包装材料として好適に用い得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<エチレン−α−オレフィン共重合体(E)>
本発明の延伸フィルムを形成するエチレン−α−オレフィン共重合体(E)は、密度(d)が、928〜955kg/m3、好ましくは930〜955kg/m3、さらに好まし
くは933〜953kg/m3の範囲にある。
【0019】
本発明の延伸フィルムを形成するエチレン−α−オレフィン共重合体(E)は、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Eが1.2〜3.0dl/g、好ましくは1.
5〜2.9dl/g、さらに好ましくは1.8〜2.4dl/gの範囲にある。
【0020】
本発明の延伸フィルムを形成するエチレン−α−オレフィン共重合体(E)は、190℃で測定したメルトテンションが3.5〜18g、好ましくは4〜15g、さらに好ましくは5〜10gの範囲にある。
【0021】
本発明の延伸フィルムを形成するエチレン−α−オレフィン共重合体(E)は、Mw/Mnが2.5〜18、好ましくは3.5〜15、さらに好ましくは4.5〜10の範囲にある。
【0022】
密度(d)が928kg/m3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた場合
は、得られる延伸フィルムの剛性が低く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)が不十分であり、一方、955kg/m3を超えるエチレン−α−オレフィン共重合
体を用いた場合は、得られる延伸フィルムの剛性は高いが、フィルムの強度が低く、フィルム破れが起き易い虞がある。また、極限粘度[η]Eが1.2dl/g未満のエチレン
−α−オレフィン共重合体を用いた場合はフィルムの延伸が困難である虞があり、一方、極限粘度[η]Eが3.0dl/gを超えるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた
場合は、押出成形が困難となる虞がある。また、メルトテンションが3.5g未満のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた場合は、フィルムの延伸が困難となる虞があり、一方、18gを超えるよエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた場合は、延伸原反の作製が困難となる虞がある。また、Mw/Mnが2.5未満のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた場合は、フィルムの延伸が困難となる虞があり、18を超えるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた場合は、表面が平滑な延伸フィルムを得ることが困難となる虞がある。
【0023】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)の各物性値は、以下の操作を行うことにより、調製することができる。
【0024】
エチレン−α−オレフィン共重合体(E)の密度(dE)は、例えば重合器へのコモノ
マー量を増加させることによって、減少させることができ、極限粘度[η]Eは、例えば
重合器への水素の供給量を増加させることによって減少させることができ、メルトテンションは、例えば重合器の水素の供給量を増加させることによって、減少させることができ、Mw/Mnは、例えば2つの重合器にて連続的に重合を行い第1重合器への水素の供給量を増加させかつ第2重合器への水素の供給量を減少させることによって、増加させることができる。
【0025】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)は、好ましくは、クロス分別(CFC)における溶出温度−溶出成分量曲線において全溶出成分量を100質量%とした時に溶出積算量が5質量%となる温度と、積算量が50質量%となる温度の差が12℃以下、さらに好ましくは10℃以下、より好ましくは9℃以下である。この温度の差が12℃より大きい場合は、α−オレフィンの含有量が多く、かつ、分子量の大きい成分が少ないため、延伸フィルム強度が劣る虞がある。
【0026】
この温度の差は、例えばエチレン−α−オレフィン共重合体(E)を重合する触媒、重合温度、重合圧力、重合器に供給するα−オレフィンの量や水素量によって変化させることができ、例えば、メタロセン触媒などの活性点が均一である重合触媒を用いれば、上述
の温度の差を小さくすることができる。
【0027】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)は、好ましくは、後述するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)70〜30質量%とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)30〜70質量%を含む組成物〔エチレン−α−オレフィン共重合体(A)+エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計量を100質量%とする。〕から構成されると、より延伸加工性が良好で、フィルムの強度が優れる延伸フィルムが得られる。
【0028】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)は、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)60〜40質量%とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)40〜60質量%との組成物から構成されるとさらに好ましく、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)50〜40質量%とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)50〜60質量%との組成物から構成されるとより好ましい。
【0029】
<エチレン−α−オレフィン共重合体(A)>
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、密度(dA)が945〜978kg/m3、好ましくは950〜978kg/m3、さらに好ましくは955〜978kg/m3の範囲である。
【0030】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Aが0.6〜
1.8dl/g、好ましくは0.7〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.8〜1.2dl/gの範囲にある。
【0031】
密度(dA)が945kg/m3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体を含む組成物を用いた場合は得られる延伸フィルムの剛性が低く、包装適正が不十分であり、一方、通常、978kg/m3を超えるエチレン−α−オレフィン共重合体は、製造が困難である
。また、極限粘度[η]Aが0.6dl/g未満のエチレン−α−オレフィン共重合体を
含む組成物を用いた場合は低分子量成分のフィルム表面へのブリードアウトにより、得られる延伸フィルム表面に粉状の付着物が発生し好ましくなく、一方、1.8dl/gを超えるエチレン−α−オレフィン共重合体を含む組成物を用いた場合は押出性が低下する虞がある。
【0032】
<エチレン−α−オレフィン共重合体(B)>
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、密度(dB)が905〜945kg/m3、好ましくは910〜940kg/m3、さらに好ましくは913〜935kg/m3の範囲にある。
【0033】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Bが2.0〜
5.5dl/g、好ましくは2.5〜5.0dl/g、さらに好ましくは2.8〜4.0dl/gの範囲にある。
【0034】
密度(dB)が905kg/m3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体を含む組成物を用いた場合は得られる延伸フィルムの剛性が低く、延伸フィルムの包装適正が不十分である虞があり、一方、945kg/m3を超えるエチレン−α−オレフィン共重合体を含
む組成物を用いた場合はα−オレフィンの含有量が多い成分が少なく、得られる延伸フィルムの強度が劣る。また、極限粘度[η]Bが2.0dl/g未満のエチレン−α−オレ
フィン共重合体を含む組成物を用いた場合は分子量の高い成分が少なく、得られる延伸フィルムの強度が劣り、一方、5.5dl/gを超えるエチレン−α−オレフィン共重合体
を含む組成物を用いた場合は押出性が低下する虞がある。
【0035】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(A)及びエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の各物性値は、以下の操作を行うことにより、調製することができる。密度(dA)または密度(dB)は、例えば重合器へのα−オレフィンの量を変化させることによって、極限粘度[η]Aまたは極限粘度[η]Bは、例えば重合器への水素の供給量を変化させることによって、それぞれを変化させることができる。
【0036】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、加工性改良剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて配合されていてもよい。
【0037】
前記酸化防止剤としては、具体的には、例えば、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐p‐クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名:IRGANOX1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、n‐オクタデシル‐3‐(4’‐ヒドロキシ‐3,5’ ‐ジ‐t‐ブチルフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ホスファイト、2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチル‐6‐[3‐(3‐メチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐t‐ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(商品名:スミライザーGP、住友化学工業社製)等のホファイト系酸化防止剤等が挙げられる。
【0038】
前記滑剤としては、具体的には、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、帯電防止剤としては、具体的には、例えば、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられ、加工性改良剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂等が挙げられる。ブロッキング防止剤としては、無機系ブロッキング防止剤、有機系ブロッキング防止剤が挙げられ、無機系ブロッキング防止剤としては、具体的には、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては、具体的には、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリ(メタクリル酸メチル−スチレン)共重合体、架橋シリコーン、架橋ポリスチレンの粉末等が挙げられる。
【0039】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)には、本発明の目的が損われない範囲で、他のエチレン・α−オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体を添加してもよい。他のエチレン系重合体の添加量は、エチレン−α−オレフィン共重合体(E)と他のエチレン系重合体の合計量100質量%に対して、通常、80質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、最も好ましくは20質量%以下である。他のエチレン系重合体の添加量が多すぎると、延伸加工性が損われる虞がある。
【0040】
上記、必要に応じて添加される添加剤やその他重合体をエチレン−α−オレフィン共重合体(E)に混合する方法としては、例えば、本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)とともに添加剤やその他の重合体を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いて溶融混練した後フィルム加工に供する方法、本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)と添加剤やその他の重合体をヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いてドライブレンドした後
フィルム加工に供する方法、または、添加剤やその他の重合体を少なくとも一種のマスターバッチにした後、これをヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いて、本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)とドライブレンドした後フィルム加工に供する方法等が挙げられる。
【0041】
<エチレン−α−オレフィン共重合体(E)の製造方法>
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)は、例えば、(A)シクロペンタジエニル基とフルオレニル基が第14族原子を含む共有結合架橋によって結合されている遷移金属化合物と、
(B)(B−1)有機金属化合物、
(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B−3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と、担体(C)から形成されるオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとを共重合させることによって得ることができる。
【0042】
〔(A)遷移金属化合物〕
遷移金属化合物(A)〔以下、単に「成分(A)」という場合がある。〕は、以下に記載する一般式(1)および(2)で表される化合物である。
【0043】
【化1】

【0044】
【化2】

〔上記一般式(1)、一般式(2)中、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14
、R15、R16、R17、R18、R19およびR20は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R7〜R18までの隣接した置換
基は互いに結合して環を形成してもよく、Aは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、Yとともに環構造を形成しており、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、Yは炭素またはケイ素であり、Mは周期律表第4族から選ばれた金属であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。〕
本発明においては、上記遷移金属化合物の中でも、R7〜R10は水素原子であり、Yは
炭素原子であり、MはZrであり、jは2である化合物が好ましく用いられる。
【0045】
〔(B−1)有機金属化合物〕
本発明で必要に応じて用いられる(B−1)有機金属化合物として、具体的には下記一般式(4)のような有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0046】
【化4】

(一般式(4)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)。後述する実施例において用いたアルミニウム化合物はトリイソブチルアルミニウム、またはトリエチルアルミニウムである。
【0047】
〔(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物〕
本発明で必要に応じて用いられる(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。後述する実施例において使用した有機アルミニウムオキシ化合物は市販されている日本アルキルアルミ株式会社製のMAO(=メチルアルモキサン)/トルエン溶液である。
【0048】
〔(B−3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物〕
前記遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、US−5321106号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。このような化合物としては、例えばトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートやN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが列挙できる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。このようなイオン化イオン性化合物(B−3)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0049】
〔(C)微粒子状担体〕
本発明で必要に応じて用いられる(C)微粒子状担体は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が1〜300μm、好ましくは3〜200μmであって、比表面積が50〜1000m2/g、好ましくは100〜800m2/gの範囲にあり、細孔容積が
0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じ
て80〜1000℃、好ましくは100〜800℃で焼成して使用される。なお、後述する実施例において用いた担体は、特にことわらない限り平均粒径が12μm、比表面積が800m2/gであり、細孔容積が1.0cm3/gである旭硝子株式会社製のSiO2
用いた。
【0050】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、遷移金属化合物(A)、(B−1)有機金属化合物、(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B−3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)、必要に応じて微粒子状担体(C)と共に、必要に応じて後述するような特定の有機化合物成分(D)を含むこともできる。
【0051】
〔(D)有機化合物成分〕
本発明において、(D)有機化合物成分は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0052】
<重合方法>
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)は、上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、既述のようにエチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる。
【0053】
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法、(P1)〜(P10)が例示される。
【0054】
(P1)成分(A)と、(B−1)有機金属化合物、(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物および(B−3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の成分(B)(以下単に「成分(B)」という。)とを、任意の順序で重合器に添加する方法。
【0055】
(P2)成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒を重合器に添加する方法。
【0056】
(P3)成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0057】
(P4)成分(A)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0058】
(P5)成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒を、重合器に添加する方法。
【0059】
(P6)成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0060】
(P7)成分(B)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0061】
(P8)成分(B)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、成分(A)、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも
異なっていてもよい。
【0062】
(P9)成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒を、成分(B)と予め接触させた触媒成分を、重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0063】
(P10)成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒を、成分(B)と予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0064】
上記の(P1)〜(P10)の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
【0065】
上記の微粒子状担体(C)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分はオレフィンが予備重合されていてもよい。この予備重合された固体触媒成分は、通常固体触媒成分1g当たり、ポリオレフィンが0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500g、特に好ましくは1〜200gの割合で予備重合されて構成されている。
【0066】
また、重合を円滑に進行させる目的で、帯電防止剤やアンチファウリング剤などの添加剤をオレフィン重合用触媒に担持したり、重合槽へ直接供給したりしても良い。該添加剤に特に制限はないが、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド、2種以上のポリアルキレンオキサイドが結合したポリアルキレンオキサイドブロックコポリマー、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、アルキルジエタノールアミン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)アルキルアミンなどを挙げることができる。これらの化合物の分子末端はアルキル化されていても良い。
【0067】
重合方法は溶液重合、懸濁重合、および気相重合法のいずれの方法を用いても良い。
【0068】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、又オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0069】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、(共)重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-3モルになるような量で用いられる。
【0070】
必要に応じて用いられる成分(B−1)は、成分(B−1)と、成分(A)中の周期律表第4族から選ばれた金属(M)とのモル比〔(B−1)/M〕が、通常0.01〜100,000、好ましくは0.05〜50,000となるような量で用いられる。
【0071】
必要に応じて用いられる成分(B−2)は、成分(B−2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中の周期律表第4族から選ばれた金属(M)とのモル比〔(B−2)/M〕が、通常10〜500,000、好ましくは20〜100,000となるような量で用いられる。
【0072】
必要に応じて用いられる成分(B−3)は、成分(B−3)と、成分(A)中の周期律表第4族から選ばれた金属(M)とのモル比〔(B−3)/M〕が、通常1〜10、好ま
しくは1〜5となるような量で用いられる。
【0073】
成分(B−1)〜成分(B−3)が複数種に渡り用いられる場合、成分(B−1)〜成分(B−3)の総和(成分(B))と成分(A)のモル比は、通常0.01〜500,000、好ましくは0.05〜100,000となるような量で用いられる。
【0074】
必要に応じて用いられる成分(D)は、成分(B)が成分(B−1)の場合には、モル比〔(D)/(B−1)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(B)が成分(B−2)の場合には、モル比〔(D)/(B−2)〕が通常0.001〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で、成分(B)が成分(B−3)の場合には、モル比〔(D)/(B−3)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で用いられる。
【0075】
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いた重合温度は、通常−50〜+250℃、好ましくは0〜200℃、さらに好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2の条件下であり、重合反応は、回分式(バッチ式)、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
【0076】
重合は、通常気相または重合粒子が溶媒中に析出しているスラリー相で行う。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行う。スラリー重合または気相重合の場合、重合温度は好ましくは60〜90℃、より好ましくは65〜85℃である。この温度範囲で重合することで、より組成分布が狭いエチレン−α−オレフィン共重合体が得られる。得られた重合体は数十〜数千μmφ程度の粒子状である。
【0077】
このようなオレフィン重合用触媒はエチレンと共重合させるα‐オレフィン(例えば1‐ヘキセン)に対しても極めて高い重合性能を有するため、所定の重合が終了した後で、高すぎるα‐オレフィン含量の共重合体が生成しないような工夫が必要である。例えば、重合槽内容物を重合槽から抜き出すと同時あるいは可及的速やかに、[1]溶媒分離装置で重合体と溶媒、未反応のα‐オレフィンとを分離する方法、[2]該内容物に窒素などの不活性ガスを加えて溶媒、未反応のα‐オレフィンを強制的に系外へ排出する方法、[3]該内容物にかかる圧力を制御して溶媒、未反応のα‐オレフィンを強制的に系外へ排出する方法、[4]該内容物に多量の溶媒を添加して実質的に重合が起こらないと考えられる濃度まで未反応のα‐オレフィンを希釈する方法、[5]メタノールなどの重合用触媒を失活させる物質を添加する方法、[6]実質的に重合が起こらないと考えられる温度まで該内容物を冷却する方法などを挙げることができる。これらの方法は単独で実施してもよいし、いくつかを組み合わせて実施してもよい。
【0078】
得られるエチレン−α−オレフィン共重合体(E)の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)の違いにより調節することもできる。
【0079】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体(E)を、例えば2段階で製造する場合は、前段階でエチレン−α−オレフィン共重合体(A)を製造し、後段階で極限粘度が高いエチレン−α−オレフィン共重合体(B)を製造する方法を例示できる。この順番は逆でもよい。前段階と後段階におけるコモノマー種や量、重合温度、水素濃度などの重合条件は相互に異なってもよい。
【0080】
重合反応により得られた重合体粒子は、以下の方法によりペレット化してもよい。
(1)エチレン−α−オレフィン共重合体(E)粒子および所望により添加される他の成
分を、押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(E)および所望により添加される他の成分を適当な良溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去、しかる後に押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
【0081】
<延伸フィルム>
本発明の延伸フィルムは、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E)からなる層を1層以上含む延伸フィルムである。
【0082】
本発明の延伸フィルムは、好ましくは、以下の2つの物性を満たす場合には、より、延伸フィルムの自立性(包装時のフィルム張り)が良く、包装時のフィルムのしおれが発生し難い。また、延伸フィルムの強度に優れ、包装時、包装後の使用時のフィルム破れが発生し難い。
(1)フィルム成形の流れ方向(MD)の引張ヤング率(Y)が900〜3500MPa、より好ましくは1200〜3500MPa、さらに好ましくは1500〜3500MPaの範囲にある。
(2)ダートインパクト(D)が100〜600g、より好ましくは120〜600g、さらに好ましくは150〜600g、さらには250〜600g、最も好ましくは350〜600gの範囲にある。
【0083】
フィルム成形の流れ方向(MD)の引張ヤング率(Y)が900MPa未満の延伸フィルムは、剛性が低く包装適正が不十分であり、一方、3500MPaを超える延伸フィルムは、製造が困難である。また、ダートインパクト(D)が100g未満の延伸フィルムは、強度が低くフィルム破れが起き易く、一方、600gを超える延伸フィルムは、製造が困難である。
【0084】
本発明の延伸フィルムは前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E)からなる層以外にその他のエチレン系樹脂組成物またはプロピレン系樹脂組成物などの樹脂組成物からなる層が積層されていても良い。他の層が積層された場合は、エチレン−α−オレフィン共重合体(E)からなる層が、全体のフィルム厚みに対して1/3以上の厚みを有することが好ましく、1/2以上の厚みを有することがさらに好ましく、2/3以上の厚みを有するのが最も好ましい。
【0085】
本発明の延伸フィルムの厚みは、種々用途により、適宜決め得るが、通常、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E)からなる層の厚みは、5〜40μm、好ましくは8〜30μmの範囲にある。
【0086】
本発明の延伸フィルムは前記のエチレン系樹脂(樹脂組成物)からなる層以外にその他のエチレン系樹脂組成物またはプロピレン系樹脂組成物などの樹脂組成物からなる層を含んでも良く、エチレン−α−オレフィン共重合体(E)を含むエチレン系樹脂(樹脂組成物)からなる層は全体のフィルム厚みに対して1/3以上の厚みを有することが好ましく、1/2以上の厚みを有することがさらに好ましく、2/3以上の厚みを有するのが最も好ましい。
【0087】
本発明の延伸フィルムは、用途に応じて、他の基材、例えば熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のもの、紙、アルミニウム箔等からなる基材と積層してもよい。かかる基材として熱可塑性樹脂を用いる場合は公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン〔高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE:エチレン・α−
オレフィンランダム共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン;プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(プロピレンランダム共重合体)などのポリプロピレン;ポリ4−メチル−ペンテン;ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。
【0088】
また、かかる熱可塑性樹脂フィルムからなるフィルム基材は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであっても良いし、1種または2種以上の共押し出し成形、押出しラミネート、ドライラミネート、サーマルラミネート等で得られる積層体であっても良い。中でも、二軸延伸熱可塑性フィルム、とくにポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドからなる二軸延伸熱可塑性フィルムが好ましい。
【0089】
<延伸フィルム成形方法>
本発明の延伸フィルムは、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E)を用い、公知の溶融押出成形方法により延伸用原反フィルムを製膜し、次いで当該原反フィルムを縦方向または縦横2方向に延伸することで得ることができる。この溶融押出機製膜方法としては、Tダイキャスト成形法またはインフレーション法が採用され、厚みが100〜700μm、好ましくは200〜600μmの範囲の延伸用原反フィルムを製膜する。溶融樹脂の冷却方法は空冷、水冷のどちらであっても良い。
【0090】
延伸用フィルム原反を延伸する方法としては、テンター法により縦横に同時又は逐次2軸延伸する方法、チューブラー法により縦横方法に同時2軸延伸する方法、または2つ以上のロールの回転速度比の違いによりフィルムの流れ方向に1軸延伸する方法などを例示できる。
【0091】
また、他の層との積層フィルムの場合は、多層ダイを用いて共押出し成形して多層の延伸用フィルム原反を用いればよい。
【実施例】
【0092】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
以下の実施例において、密度(d)、極限粘度[η]、メルトテンション、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、クロス分別(CFC)、ヤング率及び引張破断点強度、ダートインパクト強度、ヘイズは、下記のように測定した。
【0094】
なお、本発明の効果〔延伸フィルムの剛性が高く、包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)に優れ、フィルムの強度に優れ、且つ、フィルム破れの発生が起き難い〕の良否については、実施例にて測定した引張ヤング率、引張破断点強度、ダートインパクトの値から容易に想定することができる。
【0095】
すなわち、延伸フィルムの剛性は、フィルムの硬さであり、引張ヤング率(引張弾性率)で表される。包装時の延伸フィルムの自立性は、引張ヤング率の値が大きいほど優れる。延伸フィルムの強度は、フィルムの面に垂直方向に物を落とした際の強度として、ダートインパクトで表され、延伸フィルムの縦/横方向に引張った際の強度として、引張破断
点強度で表される。延伸フィルムの破れの発生は、引張破断点強度及びダートインパクトの値が大きいと起き難い。
【0096】
(1)密度(d)
エチレン−α−オレフィン共重合体(E)の密度(dE)については造粒ペレット、エ
チレン−α−オレフィン共重合体(A)の密度(dA)については第1重合槽から抜き出
した内容物を該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去乾燥し得られたパウダーを190℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で0.5mm厚のシートを成形し(スペーサー形状;240×240×
0.5mm厚の板に45×45×0.5mm、9個取り)、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で圧縮することで冷却し
て測定用試料を作成した。熱板は5mm厚のSUS板を用いた。このプレスシートを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで徐冷したのち、密度勾配管で測定した。
【0097】
(2)極限粘度[η]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。すなわち、エチレン−α−オレフィン共重合体(E)の[η]Eについては造粒ペレット約20mg、エチレン−α−オ
レフィン共重合体(A)の[η]Aは第1重合槽から抜き出した内容物を該内容物中のヘ
キサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し得られたパウダー約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求める(下記式(iii)参照)。
[式3]
【0098】
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) (iii)
(3)メルトテンション
メルトテンションは、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Cにより測定した。測定条件は、次の通りである。
【0099】
<測定条件>使用ノズル:L=8.000mm、D=2.095mm、バレル径:9.55mm、測定温度:190℃、樹脂押出速度:15mm/分、樹脂引取速度:10m/分。
【0100】
(4)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量曲線
ウォーターズ社製GPC−150Cを用い以下のようにして測定した。
【0101】
分離カラムは、TSKgel GMH6−HTおよびTSKgel GMH6−HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を用い、1.0ml/minで移動させ、試料濃度は0.1質量%とし、試料注入量は500μlとし、検出器として示差屈折計を用いた。
【0102】
標準ポリスチレンは、分子量がMw<1,000およびMw>4×106については東
ソー社製を用い、1,000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を
用いた。分子量計算は、ユニバーサル校正して、ポリエチレンに換算して求めた値である。
【0103】
(5)クロス分別(CFC)
三菱油化社製CFC T‐150A型を用い以下のようにして測定した。分離カラムはShodex AT‐806MSが3本であり、溶離液はo‐ジクロロベンゼンであり、試料濃度は0.1〜0.3wt/vol%であり、注入量は0.5mlであり、流速は1.0ml/minである。
【0104】
試料は145℃、2時間加熱後、0℃まで10℃/hrで降温、更に0℃で60分間保持して試料をコーティングさせた。昇温溶出カラム容量は0.86ml、配管容量は0.06mlである。
【0105】
検出器はFOXBORO社製赤外分光器MIRAN 1A CVF型(CaF2セル)
を用い、応答時間10秒の吸光度モードの設定で、3.42μm(2924cm-1)の赤外光を検知した。
【0106】
溶出温度は0℃〜145℃までを35〜55フラクションに分け、特に溶出ピーク付近では1℃きざみのフラクションに分けた。温度表示は全て整数であり、例えば90℃の溶出画分とは、89℃〜90℃で溶出した成分のことを示す。0℃でもコーティングされなかった成分および各温度で溶出したフラクションの分子量を測定し、汎用較正曲線を使用して、PE換算分子量を求めた。
【0107】
SEC温度は145℃であり、内標注入量は0.5mlであり、注入位置は3.0mlであり、データサンプリング時間は0.50秒である。
【0108】
なお、狭い温度範囲で溶出する成分が多すぎて、圧力異常が生じる場合には、試料濃度を0.1wt/vol%未満とする場合もある。
【0109】
データ処理は、装置付属の解析プログラム「CFCデータ処理(バージョン1.50)」で実施した。なお、クロス分別(CFC)それ自身は、測定条件を厳密に同一にすれば高い分析精度でもって結果を再現する分析法であると言われているが、測定を複数回行いその平均をとることがより好ましい。
【0110】
(6)フィルム物性の測定条件
[1]ダートインパクト強度の測定
ASTM D1709に従って、下記条件にて測定した。
【0111】
<測定条件>試験片をエアークランプ方式で締め付け、半球径のダートを一定の高さの位置から落下させ、試験片が50%破壊する荷重をグラフから読み取る。一水準の落下回数は10回とし、A法を用いる。
【0112】
[2]ヘイズの測定(透明性、単位:%)
ASTM D1003に従って、全ヘイズを測定した。
【0113】
[3]ヤング率及び引張破断点強度の測定
延伸フィルムから長さ方向がフィルムの流れ方向(MD)、幅方向(TD)となるように15mm幅、200mm長さの短冊状試験片を切りだし、折塩テック社製テンシロンRT1225型を使用してJIS K 7127に準拠してヤング率と引張破断点強度の測定を行った。
【0114】
〔合成例1〕
[固体触媒成分(γ)の調製]
200℃で3時間乾燥したシリカ8.5kgを33リットルのトルエンで懸濁状にした後、メチルアルミノキサン溶液(Al=1.42mol/リットル)82.7リットルを30分かけて滴下した。次いで1.5時間かけて115℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーション法によって除去した。得られた固体触媒成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンで再懸濁化して固体触媒成分(α)を得た(全容積150リットル)。
【0115】
充分に窒素置換した反応器中に、トルエンに懸濁させた前記固体触媒成分(α)をアルミニウム換算で19.60molを入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20〜25℃)、下記一般式(3)で表される、ジ(p‐トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド31.06mmol/リットル溶液を2リットル(61.12mmol)加えた後、60分間攪拌した。攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n‐ヘキサン40リットルを用いて洗浄を2回行い、得られた担持触媒をn‐ヘキサンにリスラリーし25リットルの触媒懸濁液として、固体触媒成分(γ)を得た。
【0116】
【化3】

なお、上記一般式(3)で表わされる遷移金属化合物は、270MHz1H−NMR(
日本電子GSH−270)およびFD−質量分析(日本電子SX−102A)を用いて構造決定した。
【0117】
[固体触媒成分(γ)の予備重合による固体触媒成分(δ)の調製]
攪拌機つき反応器に窒素雰囲気下、精製n‐ヘキサン15.8リットル、および上記固体触媒成分(γ)を投入した後、トリイソブチルアルミニウム5molを加え、攪拌しながら、固体成分1g当たり4時間で3gのエチレン重合体を生成相当量のエチレンで予備重合を行った。重合温度は20〜25℃に保った。重合終了後、攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n‐ヘキサン35リットルを用いて洗浄を4回行い、得られた担持触媒をn‐ヘキサン20リットルにて触媒懸濁液として、固体触媒成分(δ)を得た。
【0118】
〔実施例1〕
[重合]
200リットルの第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例1で得た固体触媒成分(δ)をZr換算原子に換算して0.075mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを12mmol/hr、エチレンを8.1kg/hr、水素を50N−リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75.5℃、反応圧4.5kg/cm2G、平均滞留時
間2.6時間という条件で重合を行った。
【0119】
60リットルの第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.3kg/cm2
G、65℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
【0120】
その後、該内容物は、ヘキサン43リットル/hr、エチレン9.9kg/hr、水素15N−リットル/hr、1‐ヘキセン595g/hrとともに200リットルの第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度75℃、反応圧4.5kg/cm2G、平均滞留時間
1.0時間という条件で引き続き重合を行った。
【0121】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出し、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。意図しない重合を防止するために、重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0122】
この重合粒子100重量部に対して、酸化防止剤として6‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチル)プロポキシ]‐2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチルベンズ[d,f][1,3,2]‐ジオキサホスフェピンを0.2重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合する。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mmφ、L/D=28)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して延伸フィルム作製用の原料〔エチレン−α−オレフィン共重合体(E−1)〕とした。
【0123】
[延伸フィルムの作製]
内層及び外層の原料としてポリプロピレン〔(株)プライムポリマー製 商品名 プライムポリプロF233DR:ランダムPP、MFR(230℃、荷重2160g):2.3g/10分〕を使用し、中間層に前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E−1)を使用し、下記に従って延伸フィルムを作製した。
【0124】
延伸フィルム成形機:(株)山口製作所製 チューブラー同時2軸延伸フィルム成形機
型式:BOY−700ML−455
押出機 内層:40mmφ 中間層:50mmφ 外層:40mmφ
を使用し、合計の押出量が28kg/hr及び内層/中間層/外層=1/5/1となるようダイスから押出し水冷により、厚み500μm、フィルム折幅110mmの延伸用チューブ原反を得た。
【0125】
この延伸用原反を延伸工程:予熱1:135℃、予熱2:155℃、第1遠赤外ヒーター:350℃、第2遠赤外ヒーター:340℃、第3遠赤外ヒーター:300℃、第4遠赤外ヒーター:150℃に設定し、縦方向5倍及び横方向5倍の同時2軸延伸を行い、厚み20μmの延伸フィルムを作製した。
【0126】
評価結果を表1に示す。
【0127】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の密度(dA)及び極限粘度[η]Aは第1重合槽から抜き出した内容物を該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し得られた重合体を用いて測定を行った。
【0128】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度(dB)及び極限粘度[η]Bは下記式(iv)及び下記式(v)を使用して計算値にて求めた。BRAは第1重合槽と第2重合
槽のエチレン重合量を合わせた値を100とした場合の第1重合槽のエチレン重合量の質
量%であり、下記式(iv)及び下記式(v)は密度及び極限粘度の一般的な加算則として用いることができるものである。
[式4]
【0129】
(dB)=(100−BRA)/(100/(dE)− BRA/(dA)) (iv)
[式5]
【0130】
[η]B =(100×[η]E−BRA×[η]A)/(100−BRA) (v)
得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が高く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)を十分満足し、フィルムの強度が高くフィルム破れの起き難い延伸フィルムあった。
【0131】
〔実施例2〕
[重合]
200リットルの第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例1で得た固体触媒成分(δ)をZr換算原子に換算して0.075mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを24mmol/hr、エチレンを8.1kg/hr、水素を50N−リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75.5℃、反応圧4.5kg/cm2G、平均滞留時
間2.6時間という条件で重合を行った。
【0132】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.3kg/cm2G、65℃に保
たれた60リットルのフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
【0133】
その後、該内容物は、ヘキサン43リットル/hr、エチレン9.9kg/hr、水素12N−リットル/hr、1‐ヘキセン320g/hrとともに200リットルの第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度75℃、反応圧4.5kg/cm2G、平均滞留時間
1.0時間という条件で引き続き重合を行った。
【0134】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出し、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。意図しない重合を防止するために、重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
この重合粒子100重量部に対して、酸化防止剤として6‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチル)プロポキシ]‐2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチルベンズ[d,f][1,3,2]‐ジオキサホスフェピンを0.2重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合する。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mmφ、L/D=28)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して延伸フィルム作製用の原料〔エチレン−α−オレフィン共重合体(E−2)〕とした。
【0135】
[延伸フィルムの作製]
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E−2)を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0136】
評価結果を表1に示す。
【0137】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の密度(dA)及び極限粘度[η]A、エチレ
ン−α−オレフィン共重合体(B)の密度(dB)及び極限粘度[η]Bは実施例1と同様にして求めた。
【0138】
得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が高く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)を十分満足し、フィルムの強度が高くフィルム破れの起き難い延伸フィルムあった。
【0139】
〔実施例3〕
[重合]
200リットルの第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例1で得た固体触媒成分(δ)をZr換算原子に換算して0.20mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを6.3kg/hr、1‐ヘキセン91g/hr、水素を40N−リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75℃、反応圧7.5kg/cm2G、平均滞留時間2.5時間という条件で重合を行った。
【0140】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.3kg/cm2G、65℃に保
たれた60リットルのフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
【0141】
その後、該内容物は、ヘキサン43リットル/hr、エチレン9.4kg/hr、水素4N−リットル/hr、1‐ヘキセン495g/hrとともに200リットルの第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度72℃、反応圧7kg/cm2G、平均滞留時間1.5
時間という条件で引き続き重合を行った。
【0142】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出し、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。意図しない重合を防止するために、重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
この重合粒子100重量部に対して、酸化防止剤として6‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチル)プロポキシ]‐2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチルベンズ[d,f][1,3,2]‐ジオキサホスフェピンを0.2重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合する。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mmφ、L/D=28)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して延伸フィルム作製用の原料〔エチレン−α−オレフィン共重合体(E−3)〕とした。
【0143】
[延伸フィルムの作製]
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E−3)を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0144】
結果について表1に示す。
【0145】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の密度(dA)及び極限粘度[η]A、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度(dB)及び極限粘度[η]Bは実施例1と同様にして求めた。
【0146】
得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が高く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)を十分満足し、フィルムの強度が高くフィルム破れの起き難い延伸フィルム
あった。
【0147】
〔実施例4〕
[重合]
200リットルの第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例1で得た固体触媒成分(δ)をZr換算原子に換算して0.080mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを8.1kg/hr、1‐ヘキセン155g/hr、水素を70N−リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75.5℃、反応圧7.5kg/cm2G、平均滞留時間2.5時間という条件で重合を行った。
【0148】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.3kg/cm2G、65℃に保
たれた60リットルのフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
【0149】
その後、該内容物は、ヘキサン43リットル/hr、エチレン10.2kg/hr、水素20N−リットル/hr、1‐ヘキセン1295g/hrとともに200リットルの第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度72℃、反応圧7kg/cm2G、平均滞留時間
1.5時間という条件で引き続き重合を行った。
【0150】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出し、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。意図しない重合を防止するために、重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
この重合粒子100重量部に対して、酸化防止剤として6‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチル)プロポキシ]‐2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチルベンズ[d,f][1,3,2]‐ジオキサホスフェピンを0.2重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合する。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mmφ、L/D=28)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して延伸フィルム作製用の原料〔エチレン−α−オレフィン共重合体(E−4)〕とした。
【0151】
[延伸フィルムの作製]
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E−4)を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0152】
評価結果を表1に示す。
【0153】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の密度(dA)及び極限粘度[η]A、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度(dB)及び極限粘度[η]Bは実施例1と同様にして求めた。
【0154】
得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が高く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)を十分満足し、フィルムの強度が高くフィルム破れの起き難い延伸フィルムあった。
【0155】
【表1】

〔実施例5〕
[重合]
200リットルの第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例1で得た固体触媒成分(δ)をZr換算原子に換算して0.080mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを8.1kg/hr、1‐ヘキセン155g/hr、水素を70N−リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75.5℃、反応圧7.5kg/cm2G、平均滞留時間2.5時間という条件で重合を行った。
【0156】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.3kg/cm2G、65℃に保
たれた60リットルのフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
【0157】
その後、該内容物は、ヘキサン43リットル/hr、エチレン10.2kg/hr、水素4N−リットル/hr、1‐ヘキセン1275g/hrとともに200リットルの第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度72℃、反応圧7kg/cm2G、平均滞留時間1
.5時間という条件で引き続き重合を行った。
【0158】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出し、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。意図しない重合を防止するために、重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0159】
この重合粒子100重量部に対して、酸化防止剤として6‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチル)プロポキシ]‐2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチルベンズ[d,f][1,3,2]‐ジオキサホスフェピンを0.2重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合する。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mmφ、L/D=28)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して延伸フィルム作製用の原料〔エチレン−α−オレフィン共重合体(E−5)〕とした。
【0160】
[延伸フィルムの作製]
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E−5)を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0161】
評価結果を表2に示す。
【0162】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の密度(dA)及び極限粘度[η]A、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度(dB)及び極限粘度[η]Bは実施例1と同様にして求めた。
【0163】
得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が高く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)を十分満足し、フィルムの強度が高くフィルム破れの起き難い延伸フィルムあった。
【0164】
〔実施例6〕
[重合]
200リットルの第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例1で得た固体触媒成分(δ)をZr換算原子に換算して0.075mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを8.1kg/hr、水素を50N−リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75.5℃、反応圧7.5kg/cm2G、平均滞留時間2
.5時間という条件で重合を行った。
【0165】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.3kg/cm2G、65℃に保
たれた60リットルのフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
【0166】
その後、該内容物は、ヘキサン43リットル/hr、エチレン10.2kg/hr、水素35N−リットル/hr、1‐ヘキセン1378g/hrとともに200リットルの第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度72℃、反応圧7kg/cm2G、平均滞留時間
1.5時間という条件で引き続き重合を行った。
【0167】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出し、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。意図しない重合を防止するために、重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0168】
この重合粒子100重量部に対して、酸化防止剤として6‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチル)プロポキシ]‐2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチルベンズ[d,f][1,3,2]‐ジオキサホスフェピンを0.2重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合する。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mmφ、L/D=28)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して延伸フィルム作製用の原料〔エチレン−α−オレフィン共重合体(E−6)〕とした。
【0169】
[延伸フィルムの作製]
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E−6)を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0170】
評価結果を表2に示す。
【0171】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の密度(dA)及び極限粘度[η]A、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度(dB)及び極限粘度[η]Bは実施例1と同様にして求めた。
【0172】
得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が高く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)を十分満足し、フィルムの強度が高くフィルム破れの起き難い延伸フィルムあった。
【0173】
〔実施例7〕
[延伸フィルムの作製]
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に実施例1で使用したエチレン−α−オレフィン共重合体(E−1)80質量%と密度:904kg/m3、極限粘度[η]:1.9dl/g及びメルトテンション2g:線状低密度ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)〔(株)プライムポリマー製 商品名 エボリュー SP0510〕を20質量%ドライブレンドして使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0174】
評価結果を表2に示す。
【0175】
得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が高く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)を十分満足し、フィルムの強度が高くフィルム破れの起き難い延伸フィルムあった。
【0176】
〔実施例8〕
[延伸フィルムの作製]
延伸フィルム用原反の製造;
3層インフレーション成形機(アルピネ社製:50mmφ押出機、3台)を用いて、各層に実施例1で使用したエチレン−α−オレフィン共重合体(E−1)を用いて、ブロー比2、押出量約100kg/hrで空冷により厚み200μmのインフレーションフィルム原反を製造した。また、押出の樹脂温度は230℃とした。
【0177】
フィルムの延伸;
上記得られたフィルム原反を、表面温度(延伸温度)が110℃に加熱されたロールと、8倍の延伸倍率となるように異なる速度で回転させている他のロールとの間に通して延伸フィルムを得た。
【0178】
評価結果を表2に示す。
【0179】
得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が高く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)を十分満足し、フィルムの強度が高くフィルム破れの起き難い延伸フィルムあった。
【0180】
【表2】

〔実施例9〕
内層及び外層の原料として下記に記載の方法にて製造したプロピレン系共重合体を使用し、中間層は実施例1で使用したエチレン−α−オレフィン共重合体(E−1)を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0181】
[プロピレン系共重合体の製造方法]
(1)固体触媒担体の製造
1リットル枝付フラスコにSiO2(洞海化学社製)300gをサンプリングし、トル
エン800mLを入れスラリー化した。次に5リットル四つ口フラスコへ移液し、トルエン260mLを加えた。メチルアルミノキサン(以下、MAO)トルエン溶液(アルベマ
ール社製10wt%溶液)を2830mL導入し、室温下で30分間攪拌した。1時間かけて110℃まで昇温し、同温度で4時間撹拌処理を行った。撹拌終了後、室温まで冷却した。冷却後、上澄みトルエンを抜き出し、フレッシュなトルエンで置換し、置換率が95%になるまで置換を行った。
【0182】
(2)固体触媒成分の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5リットル四つ口フラスコにジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを2.0g秤取った。
【0183】
フラスコを外へ出し、トルエン0.46リットルと上記(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー1.4リットルを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。
得られたジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2トルエンスラリーはn−ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4
.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0184】
(3)前重合
前記(2)で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、n−ヘプタン100リットルを内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを2020g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびn−ヘプタンによる洗浄を2回行った[投入した溶媒(n−ヘプタン)量および回収された溶媒量から計算される触媒洗浄率は99%であった]。
【0185】
得られた前重合体を精製n−ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/リットルとなるよう、n−ヘプタンにより調整を行った。一部、サンプリングを行い、前重合体の分析を行った。この前重合体は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
【0186】
(4)予重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを57kg/hr、水素を4Nリットル/hr、前記(3)で調製した前重合体の触媒スラリーを固体触媒成分として7.1g/hr、トリエチルアルミニウム4.0mL/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa.Gであった。
【0187】
(5)本重合
前記(4)予重合で得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを50kg/hr、エチレンを1.7kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.16mol%になるように供給した。重合温度60℃、圧力2.5MPa.Gで重合を行った。
【0188】
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを11kg/hr、エチレンを1.2kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.16mol%になるように供給した。重合温度59℃、圧力2.4MPa.Gで重合を行った。
【0189】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系共重合体を得た。得られたプロピレン系共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。
【0190】
(6)ペレット化
プロピレン系共重合体100重量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.1重量部、2,4−ビス(1,1−ジメチル)−フォスフェイトフェノールを0.1重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.1重量部、合成シリカを0.15重量部、エルカ酸アミドを0.1重量部配合し、KTX−30二軸押出機を用いて、樹脂温度250℃で溶融混練してプロピレン系共重合体のペレット化を行った。
【0191】
評価結果を表3に示す。
【0192】
得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が高く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)を十分満足し、フィルムの強度が高くフィルム破れの起き難い延伸フィルムあった。
【0193】
〔比較例1〕
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に、密度:922kg/m3、極限粘度[η]:2.0dl/g、
メルトテンション:8gの線状低密度ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)〔(株)プライムポリマー製 商品名 エボリューSP2510〕を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0194】
評価結果を表3に示す。
【0195】
延伸加工は行うことができたが、得られた延伸フィルムはフィルム剛性が低く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)が不十分なものであった。
【0196】
〔比較例2〕
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に、密度:926kg/m3、極限粘度[η]:1.7dl/g、
メルトテンション:1.5g及びMw/Mn:3.2の線状低密度ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)〔(株)プライムポリマー製 エボリューGD1588〕を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0197】
評価結果を表3に示す。
【0198】
エボリューGD1588は密度が比較的高くかつメルトテンションが低いため、安定的に延伸加工を行うことができなかった。
【0199】
【表3】

〔比較例3〕
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に、密度:950kg/m3、極限粘度[η]:2.2dl/g、
メルトテンション:3.0g及びMw/Mn:4.5の高密度ポリエチレン〔(株)プライムポリマー製 商品名 ハイゼックスHZ3300F〕を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0200】
評価結果を表4に示す。
【0201】
ハイゼックスHZ3300Fは密度が比較的高くかつメルトテンションが低いため、安定的に延伸加工を行うことができなかった。
【0202】
〔比較例4〕
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に、密度:965kg/m3、極限粘度[η]:1.4dl/g、
メルトテンション:0.5g及びMw/Mn:7.5の高密度ポリエチレン〔(株)プライムポリマー製 商品名 ハイゼックスHZ2200Jを使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0203】
評価結果を表4に示す。
【0204】
ハイゼックスHZ2200Jは密度が比較的高くかつメルトテンションが低いため、安定的に延伸加工を行うことができなかった。
【0205】
〔比較例5〕
内層及び外層の原料として前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に、密度:918kg/m3、極限粘度[η]:1.8dl/g、
メルトテンション:3.0g及びMw/Mn:3.9の線状低密度ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)〔ダウ ケミカル製 商品名 Dowlex2045G〕を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0206】
評価結果を表4に示す。
【0207】
延伸加工は行うことができたが、得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が低く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)が不十分なものであった。
【0208】
【表4】

〔比較例6〕
内層及び外層の原料として、前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に、密度:916kg/m3、極限粘度[η]:1.8dl/g
、メルトテンション:3.0g及びMw/Mn:3.0の線状低密度ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)〔(株)プライムポリマー製 商品名 モアテック0138N〕を使用し、実施例1と同様に延伸フィルムを作製した。
【0209】
評価結果を表5に示す。
【0210】
延伸加工は行うことができたが、得られた延伸フィルムはフィルムの剛性が低く包装時のフィルムの自立性(包装時のフィルム張り)が不十分なものであった。
【0211】
〔比較例7〕
内層及び外層の原料として、前記(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に、密度:951kg/m3、極限粘度[η]:3.2dl/g、
メルトテンション:23g及びMw/Mn:52の高密度ポリエチレン〔(株)プライムポリマー製 商品名 ハイゼックスHZ8000F〕を使用し、実施例1と同様にフィルム成形を行った。
【0212】
評価結果を表5に示す。
【0213】
中間層の押出機における樹脂圧力が高いため、実施例1と同様の押出量を得ることが出来なかった。これは中間層に用いたハイゼックスHZ8000F極限粘度[η]が大きいために生じるものである。また、実施例1の70%の押出量にて成形を行ったが、延伸原反のチューブが脈動し、厚みムラのある延伸原反となったため、延伸フィルムを得ることが出来なかった。これはメルトテンションが大きいために生じるものである。
【0214】
〔比較例8〕
[重合]
200リットルの第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例1で得た固体触媒成分(δ)をZr換算原子に換算して0.075mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを12mmol/hr、エチレンを7.0kg/hr、水素を80N−リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧4.5kg/cm2G、平均滞留時間2
.6時間という条件で重合を行った。
【0215】
60リットルの第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.3kg/cm2
G、65℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
【0216】
その後、該内容物は、ヘキサン43リットル/hr、エチレン8.5kg/hr、水素2N−リットル/hr、1‐ヘキセン200g/hrとともに200リットルの第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度72℃、反応圧4.5kg/cm2G、平均滞留時間1
.0時間という条件で引き続き重合を行った。
【0217】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出し、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。意図しない重合を防止するために、重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0218】
この重合粒子100重量部に対して、酸化防止剤として6‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチル)プロポキシ]‐2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチルベンズ[d,f][1,3,2]‐ジオキサホスフェピンを0.2重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合する。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mmφ、L/D=28)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して延伸フィルム作製用の原料〔エチレン−α−オレフィン共重合体(F))とした。
【0219】
[延伸フィルムの作製]
内層及び外層の原料として(株)プライムポリマー製 プライムポリプロF233DRを使用し、中間層に前記エチレン−α−オレフィン共重合体(F)を使用し、実施例1と同様にフィルム成形を行った。
【0220】
評価結果を表5に示す。
【0221】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体(F)に含まれるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)に相当する成分の密度(dA)及び極限粘度[η]A、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)に相当する成分の密度(dB)及び極限粘度[η]Bは実施例1と同様にして求めた。
【0222】
得られた延伸フィルムは表面に無数の凹凸ができ、見栄えの良くない外観不良なフィルムとなった。これはエチレン−α−オレフィン共重合体(F)のMw/Mnが大きく、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)に相当する成分の極限粘度[η]Aとエチレン−
α−オレフィン共重合体(B)に相当する極限粘度[η]Bの差が大きいために生じたも
のである。
【0223】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明の延伸フィルムは、フィルムの剛性及びフィルムの強度に優れ、透明性などの光学特性にも優れており、食品、家庭用品、書籍や集積物などを熱収縮包装するためのフィ
ルムに適している。また、熱収縮を利用しないフィルムとしても、フィルムの剛性、フィルムの強度、光学特性に優れているため、食品、産業材、重量物のなどの包装材料にも適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の[1]〜[4]を同時に満たすことを特徴とするエチレン−α−オレフィン共重合体(E)を含む層を1層以上含む延伸フィルム;
[1]密度(dE)が928〜955kg/m3の範囲にある、
[2]135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Eが1.2〜3.0dl/gの範
囲にある、
[3]190℃で測定したメルトテンションが3.5〜18gの範囲にある、
[4]GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.5〜18の範囲にある。
【請求項2】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E)が、クロス分別(CFC)における溶出温度−溶出成分量曲線において全溶出成分量を100質量%とした時に溶出積算量が5質量%となる温度と、積算量が50質量%となる温度の差が12℃以下となることを特徴とする、請求項1に記載の延伸フィルム。
【請求項3】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体(E)が、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)70〜30質量%とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)が30〜70質量%とからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の延伸フィルム。
エチレン−α−オレフィン共重合体(A);
エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなり、密度(dA)が945〜978kg/m3、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Aが0.6〜1.8dl/g
エチレン−α−オレフィン共重合体(B);
エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなり、密度(dB)が9
05〜945kg/m3、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]Bが2.0〜5.5dl/g。
【請求項4】
MD方向の引張ヤング率(Y)とダートインパクト(D)が、下記の式(i)及び式(ii)の条件を同時に満たすこと特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の延伸フィルム;
[式1]
900≦Y≦3500 (i)(Y:MD方向の引張ヤング率[単位:MPa])
[式2]
100≦D≦600 (ii) (D:ダートインパクト[単位:g])

【公開番号】特開2010−189473(P2010−189473A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32661(P2009−32661)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】