エッジ欠陥を低減するウェハ電気メッキ装置
【課題】装置内のコンタクト領域の汚染を抑制することを目的として、方法、装置、および、装置のさまざまな構成要素、例えば、ベースプレート、端縁シール、およびコンタクトリングアセンブリを提供する。
【解決手段】汚染が発生し得る状況として、電気メッキプロセス後に装置から半導体ウェハを取り出す時が挙げられる。特定の実施形態によると、疎水性コーティング、例えばポリアミドイミド(PAI)コーティング、および、時にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティング712が設けられるベースプレートを用いる。また、コンタクトリングアセンブリのコンタクト端部は、端縁シールのシール端縁からの距離を大きくして配置されるとしてよい。特定の実施形態によると、コンタクトリングアセンブリの一部および/または端縁シールにも同様に、疎水性コーティングを設ける。
【解決手段】汚染が発生し得る状況として、電気メッキプロセス後に装置から半導体ウェハを取り出す時が挙げられる。特定の実施形態によると、疎水性コーティング、例えばポリアミドイミド(PAI)コーティング、および、時にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティング712が設けられるベースプレートを用いる。また、コンタクトリングアセンブリのコンタクト端部は、端縁シールのシール端縁からの距離を大きくして配置されるとしてよい。特定の実施形態によると、コンタクトリングアセンブリの一部および/または端縁シールにも同様に、疎水性コーティングを設ける。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、米国特許出願第61/121,460号(発明の名称:「エッジ欠陥を低減するウェハ電気メッキ装置」、出願日:2008年12月10日)による恩恵を主張する。当該出願の内容はすべて、本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
電気メッキ、無電解メッキ、電解研磨等の、半導体デバイス製造で用いられる湿式化学堆積処理または湿式化学除去処理は、「クラムシェル」と呼ばれる装置で実行され得る。このようなクラムシェル、例えば、ノベラス・システムズ(Novellus Systems)のSabre(登録商標)ツールは、主な2つの構成要素として、アセンブリを形成している「カップ」および「コーン」を備える。このようなカップおよびコーンから形成されるアセンブリは通常、処理中に、ウェハの保持、位置決め、および、しばしば回転を行う。カップの端縁の端縁シールは、ウェハ上のシード層にメッキ電流を運ぶための埋め込みコンタクトを有するとしてよい。このようなクラムシェルは、ウェハのエッジおよび裏面を保護する。つまり、メッキプロセスにおいてウェハを浸漬させた際に、ウェハのエッジおよび裏面に電解質が接触しないようにする。ウェハを保持するべくカップとコーンとが互いに係合すると、流体に対して耐性を持つシールが形成され、当該シールによってエッジおよび裏面が保護される。
【0003】
メッキ溶液は通常、酸性または塩基性の水媒体に金属イオンを含む。例えば、電解質は、稀硫酸に溶解された硫酸銅を含むとしてよい。ウェハにメッキ電流および/または研磨電流を通電させる電気コンタクトは通常、カップ/コーン/端縁シールの物理的な結合によって乾いた状態で維持されるべきものであるが、処理中において、電解質によって汚染される可能性があり、ウェハメッキサイクルが複数回実行されると、電気コンタクトの性能が劣化してしまう。コンタクト領域に電解質が接触すると、ウェハにも損傷が発生する可能性があり、例えば、ウェハのエッジにおいて粒子汚染が発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
損傷し易いクラムシェルの構成要素をメッキ溶液が汚染しないように、新たな装置および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
疎水性コーティングを有するベースプレートを用いて、クラムシェルのコンタクト領域に対するリンセート(rinsate)および電解質によるウィッキングを最小限に抑える。当該疎水性コーティングは少なくとも、ベースプレートのうち電解質に暴露される部分を被覆するように設けられる。ウィッキングが減ることによって、ウェハ欠陥、特にエッジ効果が低減され、メインテナンスの頻度が減る。一部の実装例によると、疎水性コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)を含み、特定の実施形態によると、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む。新型の端縁シールと共に用いた場合、従来のベースプレートと比較すると、本発明に係るベースプレートでは欠陥率が80%以上低くなっており、端縁シールが経年劣化しても低いままであることが分かっている。
【0006】
特定の実施形態によると、ベースプレートは、電気メッキ中に半導体ウェハを保持すると共に電気メッキ溶液を電気コンタクトに到達させないように構成されているカップにおいて利用される。当該ベースプレートは、リング状本体と、リング状本体から内向きに延伸すると共にエラストマー端縁シールを支持するナイフ状突起とを備えるとしてよい。エラストマー端縁シールは、半導体ウェハと係合し、電気メッキ溶液が電気コンタクトに到達しないようにする。
【0007】
ベースプレートはさらに、少なくともナイフ状突起を被覆している疎水性コーティングを備えるとしてよい。当該コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および/または、これらの共重合体を含むとしてよい。特定の実施形態によると、疎水性コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)を含む。より具体的な実施形態によると、当該コーティングはさらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。当該コーティングは、スプレーコーティング法を用いて塗布されるとしてもよい。例えば、少なくともナイフ状突起に、キシランP−92を少なくとも一層スプレーするとしてよい。また、キシランP−92の層の上にキシラン1010を一層スプレーするとしてよい。当該コーティングの厚みは、約20μmから35μmの間であるとしてよい。特定の実施形態によると、当該コーティングは、90Vのスパークテストに合格し得る。当該コーティングによる電解質溶液の浸出または吸収は、検出可能な量ではないとしてよい。
【0008】
特定の実施形態によると、リング状本体およびナイフ状突起は、ステンレススチール、チタン、およびタンタルから成る群から選択される1以上の材料を含む。リング状本体は、電気メッキ装置のシールド構造に対して取り外し可能に取り付けられるとしてよい。リング状本体は、端縁シールのリッジと係合する溝を有するとしてよい。ナイフ状突起は、少なくとも約200ポンドの力を支持するとしてよい。また、ベースプレートは、NovellusのSabre(登録商標)電気メッキシステムにおいて利用されるとしてよい。
【0009】
特定の実施形態によると、カップで利用されるコンタクトリングは、カップのほかの構成要素と係合するようにサイズおよび形状が決定されている単一のリング状本体と、単一のリング状本体に取り付けられ、単一のリング状本体から内向きに延伸している複数の指状コンタクトとを備える。複数の指状コンタクトは、お互いから離間させて斜めに設けられているとしてよい。各指状コンタクトは、半導体ウェハの外側エッジから約1mm未満の箇所で、半導体ウェハに接触するように配置されているとしてよい。リング状本体および複数の指状コンタクトは、Paliney 7から形成されるとしてよい。複数の指状コンタクトは、略V字形の形状を持つとしてよく、単一のリング状本体によって画定される平面から下向きに延伸した後、半導体ウェハと接触する遠位ポイントまで上向きに延伸する。少なくとも約300個の指状コンタクトが設けられるとしてよい。複数の指状コンタクトは、電気メッキ中に半導体ウェハによって加えられる力で屈曲するとしてよい。それぞれの指状コンタクトの少なくとも一部分は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびこれらの共重合体から成る群から選択される1以上によってコーティングされているとしてよい。
【0010】
特定の実施形態によると、端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリは、カップで利用されるとしてよく、半導体ウェハと係合して、メッキ溶液を半導体ウェハの周縁領域から排除するリング状エラストマー端縁シールと、コンタクトリングとを備えるとしてよい。リング状エラストマー端縁シールの内径は、電気メッキ中に半導体ウェハの周縁領域からメッキ溶液を排除するための外周を画定する。コンタクトリングは、単一のリング状本体および複数の指状コンタクトを有する。複数の指状コンタクトは、リング状本体に取り付けられ、リング状本体から内向きに延伸し、お互いから離間して斜めに設けられる。各指状コンタクトは、端縁シールの内径から少なくとも約1mmの箇所において、半導体ウェハと係合するように配置されているとしてよい。特定の実施形態によると、複数の指状コンタクトはそれぞれ、略V字形の形状を持ち、単一のリング状本体によって画定される平面から下向きに延伸した後、リング状エラストマー端縁シールが半導体ウェハと係合する平面より高い位置の遠位ポイントまで上向きに延伸する。リング状エラストマー端縁シールは、疎水性コーティングを有するとしてよい。また、リング状エラストマー端縁シールは、分配バスを収容する溝を有するとしてよい。リング状エラストマー端縁シールのうち半導体ウェハと係合する部分は、係合が維持されている間、圧縮されるとしてよい。
【0011】
特定の実施形態によると、電気メッキ装置は、電気メッキ中に半導体ウェハを保持し、電気メッキ装置の所与の部分は、メッキ溶液が接触しないようになっている。当該装置は、半導体ウェハを支持し、ベースプレートを有するカップと、半導体ウェハに力を加えて、エラストマーシールに対して半導体ウェハを押圧するコーンと、シャフトとを備える。当該ベースプレートは、リング状本体と、リング状本体から内向きに延伸しているナイフ状突起とを有する。当該ベースプレートは、半導体ウェハと係合して、電気メッキ溶液が電気コンタクトに到達しないようにするエラストマー端縁シールを支持する。当該ベースプレートは、少なくともナイフ状突起を被覆している疎水性コーティングを有する。シャフトは、カップに対して相対的にコーンを移動させ、コーンを介して半導体ウェハに力を加え、カップのエラストマーシールで半導体ウェハをシールして、カップおよびコーンを回転させるとしてよい。
【0012】
特定の実施形態によると、上記の装置はさらに、命令を有するコントローラを備える。当該命令は、半導体ウェハをカップ上に位置決めして、コーンを半導体ウェハまで降下させて、半導体ウェハの裏面に力を加えて、カップの端縁シールと半導体ウェハの前面との間にシールを構築して、半導体ウェハの前面の少なくとも一部分を電気メッキ溶液内に浸漬させて、半導体ウェハの前面に対して電気メッキを実行して、コーンを上昇させて、半導体ウェハの裏面に力を加えるのを停止させるための命令であり、上昇は、少なくとも2秒間にわたって実行される。
【0013】
特定の実施形態によると、カップおよびコーンを備える装置で半導体ウェハに電気メッキを行う方法であって、半導体ウェハをカップ上に位置決めする段階と、コーンを半導体ウェハまで降下させて、半導体ウェハの裏面に力を加えて、カップの端縁シールと半導体ウェハの前面との間にシールを構築する段階と、半導体ウェハの前面の少なくとも一部分を電気メッキ溶液内に浸漬させて、半導体ウェハの前面に対して電気メッキを実行する段階と、コーンを上昇させて、半導体ウェハの裏面に力を加えるのを停止する段階とを備え、上昇は、少なくとも2秒間にわたって実行される。当該方法はさらに、コーンの上昇に先立って、少なくとも約3秒間にわたって、半導体ウェハを回転させる段階を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る、電気化学的に半導体ウェハを処理するためのウェハ保持アセンブリを示す斜視図である。
【0015】
【図2A】ウェハと電気接続を構築し、電解質浴に含まれているメッキ溶液からウェハをシールするべく用いられるクラムシェルの構成要素を示す断面図である。
【0016】
【図2B】特定の実施形態に係るコンタクト部材の一部分を示す斜視図である。
【0017】
【図3A】クラムシェルを閉じて、特定の実施形態に応じて、ウェハとクラムシェルとの間にシールを構築する前の、クラムシェルの一部とウェハとを示す図である。
【0018】
【図3B】クラムシェルを閉じて、特定の実施形態に応じて、ウェハとクラムシェルとの間にシールを構築した後の、クラムシェルの一部とウェハとを示す図である。
【0019】
【図4】特定の実施形態に係る電気メッキプロセスを説明するためのフローチャートである。
【0020】
【図5】クラムシェル開放処理の異なる段階における、クラムシェルの構成要素および電解質残留物の相対的な位置の例を示す図である。
【0021】
【図6】残留リンセートがコンタクト領域を汚染してしまった場合の電気メッキ処理時のクラムシェルの一部を示す図と、特定の実施形態に係る電気メッキプロセスを行った場合の、クラムシェルの異なる構成要素および位置における電圧をプロットした様子を示す図である。
【0022】
【図7A】約5000回から6000回の電気メッキサイクルを実行してカップ底部に形成されたパリレンコーティングを示す拡大写真である。
【0023】
【図7B】クラムシェルを開いて、ウェハとクラムシェルとの間のシールを分断する前の、クラムシェルの一部およびウェハを示す図であり、カップ底部は中程度の疎水性材料でコーティングされているか、またはコーティングされていない。
【図7C】クラムシェルを開いて、ウェハとクラムシェルとの間のシールを分断した後の、クラムシェルの一部およびウェハを示す図であり、カップ底部は中程度の疎水性材料でコーティングされているか、またはコーティングされていない。
【0024】
【図7D】クラムシェルを開いて、ウェハとクラムシェルとの間のシールを分断する前の、クラムシェルの一部およびウェハを示す図であり、カップ底部は非常に強力な疎水性材料でコーティングされている。
【図7E】クラムシェルを開いて、ウェハとクラムシェルとの間のシールを分断した後の、クラムシェルの一部およびウェハを示す図であり、カップ底部は非常に強力な疎水性材料でコーティングされている。
【0025】
【図8A】カップ底部に設けられる2つの異なるコーティングについて、新しい端縁シールおよび約6万回の電気メッキサイクルに利用された端縁シールの両方について、クラムシェルのコンタクト領域にウィッキングされた電気メッキ溶液の量を比較するグラフである。
【0026】
【図8B】電気メッキサイクル数の関数として示されるウェハ上の欠陥の数を比較するグラフであり、ウェハには、2つの異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されている。
【0027】
【図8C】ある材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面の欠陥分布を説明するためのウェハオーバレイを示す図である。
【図8D】異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面の欠陥分布を説明するためのウェハオーバレイを示す図である。
【0028】
【図8E】2つの異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの異なるセグメントについて、欠陥密度を比較するグラフである。
【0029】
【図9】コンタクトを有するクラムシェル装置を示す概略図であって、当該コンタクトは、クラムシェル装置の他の構成要素およびウェハに対して、複数の異なる位置に配置されている。
【0030】
【図10A】コンタクトがクラムシェル装置の他の構成要素およびウェハに対して複数の異なる位置に配置されている、クラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの全面の欠陥分布を表すウェハオーバレイを示す図である。
【図10B】コンタクトがクラムシェル装置の他の構成要素およびウェハに対して複数の異なる位置に配置されている、クラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの全面の欠陥分布を表すウェハオーバレイを示す図である。
【0031】
【図11】クラムシェル装置の閉状態および開状態を示す概略図であって、電気コンタクトは、シールを分断する前にウェハの前面から除去されている。
【0032】
【図12A】クラムシェル装置の構成を示す概略図である。
【図12B】クラムシェル装置の構成を示す概略図であり、図12Aと比較すると、シールを分断した後、電気メッキ溶液がコンタクト領域に過剰にウィッキングされないように、電気コンタクトに疎水性コーティングを設けている。
【0033】
【図13】コーン上昇機構およびクラムシェルスピン機構を備えるクラムシェルを示す概略図である。
【0034】
【図14A】スピン期間の長さを2つの異なる値に設定して、クラムシェル開放速度の関数として、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフである。
【0035】
【図14B】プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【0036】
【図15A】プロセス条件を変えてクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面における欠陥分布を表すウェハオーバレイを示す図である。
【図15B】プロセス条件を変えてクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面における欠陥分布を表すウェハオーバレイを示す図である。
【0037】
【図16】プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【0038】
【図17A】プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【図17B】プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【0039】
【図18A】処理されたウェハの数の関数として、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【図18B】処理されたウェハの数の関数として、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【0040】
【図19】端縁シールの構成を変更した場合の、ウィッキングされるリンセートの体積を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の説明では、本発明を詳細に説明するべく、詳細な内容を数多く記載する。本発明は、記載する詳細な内容のうち一部または全てを利用することなく実施されるとしてもよい。また、公知のプロセス処理については、本発明を不必要にあいまいにすることを避けるべく、詳細な説明を省略している。本発明を説明するにあたっては具体的な実施形態を挙げるが、言及される具体的な実施形態に本発明を限定することを示唆するものではないと理解されたい。
【0042】
<序論>
クラムシェルを用いて実行される電気メッキ等のプロセスは、クラムシェルのうち少なくとも底部を電気メッキ溶液に浸漬させることが多い。メッキが完了した後通常は、メッキが施されたウェハをスピンして残っている濃縮電解質の大半を除去し、純水またはその他のリンス液でリンスされる。その後さらに、クラムシェルを再度スピンして、残留しているリンセート(つまり、リンス液に含まれている電気メッキ溶液)を除去するとしてよい。しかし、多少のリンセートが、端縁シールの周辺に蓄積され残ってしまうことがある。端縁シールは、クラムシェルが閉じている場合にシールされたクラムシェルのコンタクト領域にいかなる液体も入り込まないように設けられている。クラムシェルが開かれてシールが分断されると、表面張力によって多少のリンセートがコンタクト領域に移動してしまう場合がある。ウェハの前面およびコンタクトに設けられている銅表面は比較的親水性が高く、このようなリンセートの移動が促進されてしまい、大量のリンセートがコンタクト領域にウィッキングしてしまう。この結果、リンセートは粒子を形成して、コンタクトを損傷させ、さまざまなエッジ関連のメッキ欠陥を発生させてしまうことが多い。
【0043】
「ウィッキング体積」とは、通常の電気メッキサイクル後にコンタクト領域から引き込まれたリンセートの量(例えば、体積、重量等)の測定値である。ウィッキング体積を特定するべく、複数の異なる測定方法を用いるとしてよい。1つの方法として、Kimwipe(キムワイプ)(例えば、Kimetch Science Wipes、白シングル層、4.5"×8.5"、Kimberley−Clark社製)またはその他の同様の吸収性の高い布を用いてクラムシェルの全コンタクト領域をふき取る方法が挙げられる。このような布の重量をふき取りの前後で測定して、重量の増加分を「ウィッキング量」として扱う。他の方法としては、量を制御しつつ溶媒を用いて、コンタクト領域のリンセートを希釈する方法がある。その後、こうして得られた溶液のサンプルを取って分析し(例えば、サンプルの伝導性を測定、質量分析を用いてサンプルの組成を分析、またはその他の任意の適切な分析技術を用いる)、サンプルに含まれるリンセートの量を特定して、最終的にコンタクト領域にあるリンセートの量を得る。
【0044】
ウィッキング量は、ウェハエッジに近接して位置する欠陥の数、例えば、ウェハの最外周10mmに位置している欠陥の数と相関があることが判明している。この領域は、エッジに近い位置ではダイが多く設けられているので、半導体製造において特に重要である。本発明の特定の実施形態によると、ウェハのエッジにおける欠陥の数を大幅に(10分の1の場合もある)減らすことができる。
【0045】
本文献に記載される実施形態のうち一部は、クラムシェル装置の個別の部品、例えば、カップ底部、電気コンタクト、および端縁シールに特定の実施形態である。こういった部品は、クラムシェルメッキ装置に組み込まれた部分として共に供給されるとしてもよいし、または、別々のコンポーネントとして供給されて、設置済みのシステムの故障部品あるいは磨耗部品と交換されるべく利用されるとしてもよいし、または、設置済みのシステムを改造されるべく利用されるとしてもよい。場合によっては、クラムシェル装置の部品は、日常的な保守点検で交換されるとしてもよい。
【0046】
<装置>
図1は、電気化学的に半導体ウェハを処理するためのウェハ保持位置決め装置100を示す斜視図である。装置100は、複数のウェハ係合コンポーネントを備える。ウェハ係合コンポーネントは、「クラムシェル」の構成要素と呼ぶこともあれば、まとめて「クラムシェル」アセンブリまたは「クラムシェル」と呼ぶことがある。クラムシェルアセンブリは、カップ101およびコーン103を有する。図2A以降の図で示すように、カップ101がウェハを保持して、コーン103がカップ内にウェハを確実に固定する。カップおよびコーンの構造は、本明細書において具体的に示す構造以外を用いるとしてもよい。共通している特徴としては、カップにはウェハが設置される内側領域が設けられ、コーンはウェハをカップに対して押圧して所定位置でウェハを保持する点が挙げられる。
【0047】
図示されている実施形態によると、クラムシェルアセンブリ(カップ101およびコーン103)は、支柱104によって支持されており、支柱104は、上側プレート105に接続されている。このアセンブリ(101、103、104および105)は、上側プレート105に接続されているスピンドル106を介してモータ107によって駆動される。モータ107は、実装ブラケット(不図示)に取り付けられている。スピンドル106は、クラムシェルアセンブリにトルクを(モータ107から)伝達させて、メッキ処理においてクラムシェル内に保持されているウェハ(図1では不図示)を回転させる。スピンドル106内の空気シリンダー(不図示)はさらに、カップ101とコーン103とを係合させるための垂直方向の力を与える。クラムシェルが開くと(不図示)、エンドエフェクタアームを有するロボットが、カップ101とコーン103との間にウェハを挿入することができる。ウェハの挿入後、コーン103とカップ101とを係合させて、装置100内でウェハを動かないように固定して、ウェハの前面(被処理面)のみを電解質に対して暴露させる。
【0048】
特定の実施形態によると、クラムシェルは、まき散らされる電解質からコーン103を保護するスプレースカート部109を備える。図示されている実施形態によると、スプレースカート部109は、垂直円周状スリーブと円形キャップ部分とを有する。離間部材110によって、スプレースカート部109とコーン103とは互いから分離されている。
【0049】
説明の便宜上、構成要素101から110を備えるアセンブリを、「ウェハ保持部」111と呼ぶ。しかし、「ウェハ保持部」の概念は通常、ウェハを係合させて、ウェハの移動および位置決めを可能とする複数の構成要素のさまざまなコンビネーションおよびサブコンビネーションにまで拡大されることに留意されたい。
【0050】
傾斜アセンブリ(不図示)をウェハ保持部に接続して、ウェハをメッキ溶液に浸漬させる際に角度をつける(まっすぐ水平に浸漬させる場合と対照的)ことを可能にするとしてよい。一部の実施形態では、駆動機構を用いると共に、プレートおよび旋回ジョイントを配置して、アーチ状の経路(不図示)に沿ってウェハ保持部111を移動させて、その結果ウェハ保持部111の近接端(つまり、カップおよびコーンから成るアセンブリ)を傾斜させる。
【0051】
また、ウェハ保持部111全体は、アクチュエータ(不図示)によって、垂直方向に上方または下方に移動させられて、ウェハ保持部の近接端をメッキ溶液に浸漬させる。このように、2つの構成要素から成る位置決め機構は、ウェハに対して、電解質表面に対して垂直な軌道に沿った垂直移動、および、水平配向(つまり、電解質表面に対して平行)からのずれを可能とする傾斜移動(角度をつけたウェハ浸漬が可能)を共に実現する。
【0052】
尚、ウェハ保持部111は、アノードチャンバ157およびメッキ溶液が内部に収納されているメッキチャンバ117を有するメッキセル115と共に利用される。チャンバ157は、アノード119(例えば、銅から成るアノード)を保持しており、アノード部分およびカソード部分で異なる電解質材料を維持するべく、膜を始めとするセパレータを含むとしてよい。図示されている実施形態では、拡散部153を用いて、回転しているウェハに対して上向きに、前面に均一に、電解質を方向付けている。特定の実施形態によると、流入拡散部は、高抵抗実質アノード(High Resistance Virtual Anode:HRVA)プレートであり、絶縁材料(例えば、プラスチック)の固体片から成り、多数(例えば、4000個から15000個の)一次元状の小孔(直径が0.01インチから0.05インチ)を有し、当該プレートの上に設けられているカソードチャンバに接続されている。これらの孔の総断面積は、総露出面積の約5%未満であるので、メッキセル内で大きな流入抵抗を形成し、システムのメッキ均一性の改善に貢献する。高抵抗実質アノードプレート、および、対応する半導体ウェハ電気化学処理装置は、米国特許出願第12/291,356号(出願日:2008年11月7日)でさらに説明されている。当該出願の内容はすべて、参照により本願に組み込まれる。メッキセルはさらに、異なる電解質流れパターンを制御および形成するための分離膜を有するとしてよい。別の実施形態によると、膜を用いてアノードチャンバを定義する。当該アノードチャンバは、サプレッサ、アクセラレータ等の有機メッキ添加物が実質的に存在しない電解質を含む。
【0053】
メッキセルはさらに、メッキセル内、および、メッキ対象の被処理物に対して、電解質を循環させるための管または管状コンタクトを有するとしてよい。例えば、セル115は、アノード119の中央の穴を通ってアノードチャンバ157の中央にまで垂直に延伸する電解質流入管131を有する。ほかの実施形態によると、セルは、カソードチャンバの外壁(不図示)において拡散部/HRVAプレートの下方にあるカソードチャンバに流体を導入させる電解質流入マニホルドを有する。流入管151は、膜153の両側(アノード側およびカソード側)に出力ノズルを含む場合もある。このような構成とすることによって、アノードチャンバおよびカソードチャンバの両方に電解質を分配する。ほかの実施形態によると、アノードチャンバおよびカソードチャンバは、流れ抵抗膜153によって分離されており、各チャンバでは別の電解質が別の流れを形成している。図1の実施形態に示すように、流入ノズル155によって、膜153のアノード側に電解質が供給されている。
【0054】
さらに、メッキセル115は、リンス排出ライン159およびメッキ溶液再循環ライン161を有し、それぞれのラインは、メッキチャンバ117に直接接続されている。また、リンスノズル163は、リンス用の純水を分配して、通常処理中にウェハおよび/またはカップを洗浄する。メッキ溶液は通常、チャンバ117の大半を充填している。チャンバ117は、撒き散らしおよび泡の生成を抑制するべく、メッキ溶液の再循環用の内側堰165と、リンス用水の再循環用に外側堰167とを有する。図示された実施形態によると、これらの堰は円周に沿った垂直スロットで、メッキチャンバ117の壁面内に設けられている。
【0055】
以下では、特定の実施形態で採用され得るカップアセンブリの特徴および例を説明する。図示されるカップ構成の特定の特徴によって、エッジに対するメッキの均一性が高まると共に、エッジ欠陥が減る。これは、残留電解質/リンセートのエッジ流れ特性が改善され、ウェハの入り口ウェッティングが制御され、端縁シールの気泡が除去されたためである。図2Aは、カップアセンブリ200を示す断面図である。アセンブリ200は、カップの特定の部分を電解質から保護するための端縁シール212を備える。さらに、ウェハの導電素子との間で電気接続を構築するためのコンタクト素子208を備える。カップおよび当該カップの構成要素は、形状が環状であって、ウェハの周縁と係合するようなサイズであるとしてよい(例えば、200mmウェハ、300mmウェハ、450mmウェハ)。
【0056】
カップアセンブリは、カップ底部210を備える。当該カップ底部210は、「ディスク」または「ベースプレート」とも呼ばれ、一連のネジまたはその他の取り付け手段によってシールド構造202に取り付けられるとしてよい。カップ底部210は、カップアセンブリ200のさまざまな構成要素、例えば、シール212、配電バス214(曲線状の電気母線)、電気コンタクト部材ストリップ208、および/または、カップ底部210自体を交換するべく、除去される(つまり、シールド構造202から取り外される)としてよい。コンタクトストリップ208の一部分(通常は、最も外側の部分)が、連続金属ストリップ204と接触しているとしてよい。カップ底部210は、最も内側の周縁にテーパーエッジ216を持つとしてよく、テーパーエッジ216は、エッジの周辺での電解質/リンセートの流れ特性を改善すると共に気泡排除特性を改善するような形状を持つ。カップ底部210は、堅くて耐食性を持つ材料、例えば、ステンレススチール、チタンおよびタンタルといった材料から形成されるとしてよい。閉じられる場合、カップ底部210は、ウェハを介して力が加えられると端縁シール212を支持して、ウェハ浸漬中にクラムシェルに漏れが発生しないようにする。この様子は、図3Aおよび図3Bを参照しつつより詳細に説明する。特定の実施形態によると、端縁シール212およびカップ底部210に対して加えられる力は、少なくとも約200ポンドの力である。閉じる力は、閉鎖圧とも呼ばれるが、クラムシェルの「コーン」アセンブリのウェハ裏面に接触する部分によって加えられる。
【0057】
電気コンタクト部材208は、ウェハの前面に堆積させられる電気コンタクト導電材料である。図2Aおよび図2Bに示すように、コンタクト部材208は、連続金属ストリップ218に取り付けられている多数の個別指状コンタクト220を有する。特定の実施形態によると、コンタクト部材208は、Paliney 7合金から形成される。しかし、その他の適切な材料を用いることも出来る。300mmのウェハ構成に対応する特定の実施形態によると、コンタクト部材208は、ウェハが画定する全円周にわたって等間隔で配置される、少なくとも約300個の個別指状コンタクト220を含む。指状コンタクト220は、切断(例えば、レーザ切断)、機械加工、スタンピング、高精度折り曲げ/屈曲、またはその他の任意の適切な方法を用いて形成されるとしてよい。コンタクト部材208は、連続したリングを形成するとしてよい。この場合、金属ストリップ218が当該リングの外径を定めて、指状コンタクト220の接続されていないほうの端部が内径を定める。尚、この外径および内径は、例えば図2Aに示すように、コンタクト部材208の断面形状に応じて変化することに留意されたい。さらに、指状コンタクト220は、可撓性を有し、ウェハが搭載されると(テーパーエッジ216に向かって)押下されることに留意されたい。例えば、指状コンタクト220は、ウェハがクラムシェルに載置されると自由位置から、異なる中間位置へと移動して、コーンがウェハに対して圧力を加えるとさらに別の位置へと移動する。動作中において、弾性を持つ端縁シール212の端縁212bは、指状コンタクト220の端部の近傍に配置している。例えば、指状コンタクト220は、自由位置にある場合、端縁212bよりも高い位置まで延伸しているとしてよい。特定の実施形態によると、指状コンタクト220は、ウェハがカップ200に載置された場合の中間位置にある場合でも、端縁212bよりも高い位置まで延伸している。言い換えると、ウェハは、指状コンタクト220の端部によって支持されているのであって、端縁212bによって支持されているのではない。ほかの実施形態によると、指状コンタクト220および/または端縁212bは、ウェハがカップ2000に入れられて、端部220および端縁212bが共にウェハと接触すると、屈曲または圧縮される。例えば、端縁212bは、最初は端部よりも高い位置まで延伸しているが、圧縮されて、指状コンタクト220は屈曲および圧縮されて、ウェハと接触するとしてよい。このため、あいまいな記載を避けるべく、本明細書に記載するコンタクト部材208の寸法は、ウェハと端縁シール212との間にシールが構築された場合のものとする。
【0058】
図2Aに戻って、シール212は、端縁シール捕獲リッジ212aを含むものとして図示されている。端縁シール捕獲リッジ212aは、カップ底部210内の溝と係合するように構成されているので、シール212を所望の位置に保持する。このようにリッジと溝とを組み合わせることによって、シール212の設置および交換に際して、シール212を正しい位置に位置決めすることが簡単になると共に、通常利用時および洗浄時において、シール212がずれてしまうことを防ぐ役割も果たし得る。上記以外の適切な係止(係合)部分を利用するとしてよい。
【0059】
シール212はさらに、配電母線214を収容するべくシール212の上面に形成されている溝などの特徴部分を有する。配電母線214は通常、耐食性材料(例えば、ステンレススチール、グレード316)から形成されており、溝の内部に配設されている。一部の実施形態によると、シール212は、ロバスト性を高めるべく、配電母線214に(例えば、接着剤を用いて)結合されているとしてよい。これと同一または異なる実施形態では、コンタクト部材208が、連続金属ストリップ218の周囲で、配電母線214に接続されている。一般的に、配電母線214は、連続金属ストリップ218よりも遥かに厚みが大きいので、母線が電力リード線(不図示)と接触している箇所と、電流がストリップ218および指状コンタクト220から出てウェハに入る任意の方位位置との間におけるオーミック電圧降下を最小限に抑えることによって、配電をより均一にすることができる。
【0060】
図3Aは、クラムシェルを閉じて、ウェハ304と端縁シール212との間にシールを構築する前の、クラムシェルの一部とウェハ304とを示す図である。一部の実施形態によると、ウェハ304はまず、コンタクト部材208、より具体的にはコンタクト端部220に接触するとしてよい。これに代えて、ウェハ304はまず、シール212のシールエッジ212bに接触するとしてもよい。一般的に、ウェハ304が電気メッキ中の最終位置にまで下がる前に、コンタクト端部302はウェハ304の前面(アクティブ面)306と接触する。言い換えると、クラムシェルが閉じられる際にコンタクト端部220はある程度屈曲されて、その結果、前面306と端部220との間には、両者間の電気接触を促進する力が発生する。尚、前面306が最初に端部220に接触する時、または、端縁212bに最初に接触する時に、屈曲されるとしてよい。前面306は通常、導電材料、例えば、銅、ルテニウム、またはルテニウム上に銅を設けたものを、シード層等として、含む。屈曲の程度(または、端部と前面との間に発生する力)は、前面上の材料と端部との間で適切な導電性を実現するように、調整されるとしてよい。
【0061】
図3Bは、クラムシェルを閉じて、ウェハ304とクラムシェルとの間、より具体的には、ウェハ304と端縁シール212との間においてシールを構築した後の、クラムシェルの一部とウェハ304とを示す図である。閉じる際には、カップ308を降下させて、カップ308でウェハ304の裏面を押圧する。このように圧力を加えると、アクティブ面306が、端縁シール212の端縁212bおよびシール端縁212と接触し、接触点の下方に位置する端縁シール212の領域はある程度圧縮され得る。このように圧縮されることで、特に、端縁212bおよび前面306のどちらかの表面に欠陥がある場合でも、端縁212bが全周にわたって確実に前面306と接触するようになる。端縁シール212は通常、圧縮可能材料から形成される。
【0062】
図3Bに示すクラムシェルアセンブリは、ノベラス・システムズ社(Novellus Systems,Inc.、米国カリフォルニア州サン・ホセ)製Sabre(登録商標)電気メッキシステムで利用されるとしてよい。このような新型クラムシェルアセンブリを実装することによって、シーリング(封止)が改善され、ウェハのエッジに捕獲される気泡に関連して発生する欠陥が最小限に抑えられる。さらに、手動での洗浄が簡単にできると同時に、自動洗浄リンス処理および洗浄/エッチング処理(カップ接触リンス(CCR)処理および自動接触エッチング(ACE)処理として知られている)も可能となる。近年、「固体粒子欠陥」の問題が発生することが分かった。どの特定の理論的原理または理論的メカニズムに限定されることなく、エッジにある流体がウェハ/端縁シールエッジ領域からクラムシェルのカップのコンタクト領域へ移動すると、粒子が形成され(例えば、乾燥、結晶化、クラムシェルの構成要素との反応によって)、最終的に固体粒子エッジ欠陥を引き起こすと考えられている。
【0063】
図4は、特定の実施形態に係る電気メッキプロセスを説明するためのフローチャートである。最初の時点において、クラムシェルの端縁シールおよびコンタクト領域は清潔で乾燥しているとしてよい。クラムシェルを開いて(ブロック402)、ウェハをクラムシェル内に搭載する。特定の実施形態によると、コンタクト端部はシール端縁の平面よりもわずかに高い位置に配置されており、ウェハはこの場合、図3Aに示すように、ウェハ周縁の周囲において一連のコンタクト端部によって支持されている。その後、コーン308を下向きに移動させて、クラムシェルを閉じてシールする(ブロック406)。このように閉じる際に、コンタクトは通常屈曲される。さらに、コンタクトの最下方の角部分が、弾性を持つ端縁シールの面に対して押下されて、コンタクト端部とウェハの前面との間にさらに力を発生させるとしてよい。シール端縁は、わずかに圧縮されて、周縁全体にわたってシールが確実に形成されるようにするとしてよい。一部の実施形態によると、ウェハを最初にカップに配置すると、前面と接触するのは端縁シールのみである。本例では、コンタクト端部と前面との間の電気接触は、端縁シールが圧縮されることによって構築される。
【0064】
処理406においてシールおよび電気接触が構築されると、ウェハを担持しているクラムシェルをメッキ浴に浸漬させて、ウェハをクラムシェル内に保持しつつ、メッキ浴でメッキを施す(ブロック408)。この処理で利用される銅メッキ溶液の組成は通常、濃度が約0.5−80g/L、特に約5−60g/L、さらに具体的には約18−55g/Lの範囲の銅イオンと、濃度が約0.1−400g/Lの硫酸とを含む。酸度が低い銅メッキ溶液は通常、約5−10g/Lの硫酸を含む。酸度が中程度および高度の溶液はそれぞれ、約50−90g/Lおよび150−180g/Lの硫酸を含む。塩素イオンの濃度は、約1−100mg/Lであってよい。さまざまな銅メッキ有機添加物、例えば、エンソン・コーポレーション社(Enthone Corporation、コネチカット州、ウェスト・ヘイブン)製のEnthone Viaform、Viaform NexT、Viaform Extreme、またはその他の当業者間では公知のアクセラレータ、サプレッサ、およびレベラを用いるとしてよい。メッキ処理の例は、米国特許出願第11/564,222号(出願日:2006年11月28日)により詳細に記載されている。当該出願の内容は全て、メッキ処理を説明することを目的として、本願に組み込まれる。メッキが完了して、適切な量の材料がウェハの前面に堆積させられると、ウェハをメッキ浴から出す。ウェハおよびクラムシェルをスピンして、表面張力のためにクラムシェル表面に残っている残留電解質の大半を除去する。その後、スピンを継続しつつクラムシェルをリンスして、クラムシェルおよびウェハ表面にある流体をできるだけ多く希釈および洗い流す(ブロック410)。その後、リンス液をしばらくの間、大抵は約2秒間にわたって停止させてウェハをスピンして、残留リンセートを除去する(ブロック412)。
【0065】
しかし、例えば図5の(A)に示されるように、ある程度のリンセート502はウェハの前面306およびクラムシェル(端縁シール212およびテーパーエッジ216)の表面508に残ってしまう。リンセートは表面張力のために残留するが、当該表面張力はクラムシェルをスピンさせた際に発生する力よりも大きい場合がある。クラムシェルのスピン時間を長くしたとしても、ウェハの前面306とシール端縁212(b)との間でシールが形成される角部分に、ある程度のリンセートが残ってしまう場合がある。一般的に、スピンおよび乾燥のために許容される時間は、総合プロセススループットを鑑みて制限されてしまう。
【0066】
図5の(A)、(B)および(C)は、クラムシェル開放動作404のさまざまな段階における、クラムシェルの構成要素および残留リンセート502の相対的な位置を示す図である。残留リンセート502は、クラムシェルをスピンさせた際の遠心力および表面張力によって、前面306と端縁シール212との間の界面の近傍において「ウィッキング」ビーズを形成している。この界面においてリンセートが蓄積されるのは、リンセートがコンタクト領域に入り込んでしまう可能性があるので、非常に好ましくない状況である。クラムシェルを開く際には、閉じられていたコーン308を元に戻す。この結果、ウェハ304およびシールエッジ212(b)に加えられていた下向きの力がなくなり、クラムシェルアセンブリから処理済みのウェハ304を取り出す。この力学的プロセスによって、互いに原因と結果として関連し合う事象が数多く発生する。コーン308が上向きに移動すると、わずかな圧力差が発生し(つまり、ウェハの前面306の圧力がより高くなる)、ウェハ306が効率よく端縁212(b)およびコンタクト端部220から離間する。さらに、圧縮された端縁212(b)に蓄えられているエネルギーが放出されて、端縁212(b)およびコンタクト端部220からウェハ306が上向きに跳ね上がる場合もある。コンタクト208は、屈曲されてウェハの周縁において上向きの力を与えるので、図5の(B)および(C)に示すように、ウェハ304を上向きに移動させて、シール端縁212(b)とウェハ304の前面306との間を離間させるとしてよい。ウェハ304はさらに、メッキ処理中の元々の位置から特定のウェハ取り扱い装置を用いて上昇させられるとしてもよい。当該ウェハ取り扱い装置は、例えば、ウェハをクラムシェルアセンブリから取り外すべく用いられる。どちらの場合でも、クラムシェル開放処理404のある時点において、シール端縁212(b)とウェハ304の前面306との間のシールが分断されて、両者間に間隙が形成される。
【0067】
ウェハ304の上向きの移動は、シール端縁212(b)の形状が(圧縮された状態から圧縮されていない状態へと)変化することと組み合わせられると、ポンプのような作用が発生して、図5の(B)に示すように、前面306とシール端縁212(b)との間の間隙にリンセート504を引き込むと考えられている。上述したようなシールの両側で形成される圧力差および/またはシール端縁212(b)の形状の変化に加えて、表面張力が、例えば、もともとはシールされていたウェハの前面306のうち露出する部分が大きくなることによって、流体を引き込む可能性がある。
【0068】
リンセートは、間隙内を進んでいくと、図5の(C)に示すように、コンタクト領域に到達してコンタクト端部220を濡らしてしまう可能性がある。コンタクトは通常、非常に親水性の高い材料、例えば、Paliney 7から形成されており(そして、リンセートの主要成分は水である)、そして、同様に親水性の高い銅メッキでコーティングされている場合がある。このため、上述したように発生する表面張力によって間隙を通って引き込まれるリンセートの量が増えて、小さなリンセート溜まり506がコンタクトの周囲に形成される場合がある。このリンセート溜まり506はその後、コンタクト領域で再分配されて、乾燥するとリンセートに電解質残留物が含まれるので固体粒子が形成される。開放処理414においてコンタクト領域に形成される各リンセート溜まり506は小さいものだとしても、新しいウェハが搭載される度に開放処理は繰り返し実行されるので、大量のリンセートが蓄積されることになり、コンタクト領域に粒子が形成される。
【0069】
図4に戻って、この時点においてクラムシェルは開いていて、ウェハはクラムシェルから取り外されている(ブロック416)。処理404から416は、未処理ウェハについて複数回繰り返し実行されるとしてよい。このため、コンタクト領域には、メッキサイクルが実行される度に徐々にリンセートを蓄積し続けてしまう。コンタクト領域に蓄積されたリンセートは、時間が経過すると乾燥して、溶解していた金属塩が沈殿すると共に結晶が形成される。
【0070】
コンタクト領域にリンセートが蓄積されることによって生じるほかの問題に、(図6の(A)および(B)を参照しつつ説明すると)表面からエッチングされる金属が堆積することによって、コンタクト端部が徐々に損傷してしまう点が挙げられる。図6の(A)は、電気メッキ処理中の、コンタクト領域に残留リンセートがあるクラムシェルの一部の様子を示す図である。図6の(B)は、電気メッキ処理を行った場合の、システムの異なる構成要素の電圧と、クラムシェル内の位置とを示すグラフである。電流が、コンタクト212によって供給されて、コンタクト端部220によってウェハエッジの周囲において前面306に印加されている。コンタクト内の電圧は、略一定で(ライン610)、コンタクト212の材料のわずかな抵抗によって小さく降下するのみである。電圧降下612が発生しているのは、コンタクト端部212(b)と前面306上のウェハエッジのシード層との間でコンタクト抵抗があるためである。その後、電圧は徐々に上昇して(ライン614が示すように、よりアノードに近くなり)、前面306、例えば、シード層の抵抗のために、接触点からウェハの中央へと内側に向かう。
【0071】
コンタクト領域の電圧勾配616と、イオンを含む残留リンセート506とによって、内部侵食セルが形成される。残留リンセート506は、金属(例えば、ウェハの銅シード)がシール端縁212(b)のかなり近傍において酸化されてしまう「電気化学侵食回路」を完成させてしまい、金属イオンが残留リンセート506に放出されてしまう。イオン電流が、電圧勾配616によって、残留リンセート506を、前面306からコンタクト端部220へと通過する。このイオン電流は、金属粒子620としてメッキされる金属イオンを、コンタクト212へと搬送する。上述した酸化/堆積プロセスは、電圧勾配616が大きくなり、リンセート506に暴露される前面306が大きくなっていくので、コンタクト領域に蓄積されるリンセートが多くなるにつれて、激しくなっていく可能性がある。
【0072】
コンタクト212に堆積される粒子620は通常、コンタクトに対する接着度が低く、電解質の濃度および堆積速度に応じて粉末状または樹枝状となり得る。例えば、イオン電流が大きくて、且つ、溶液が低濃度である場合は通常、堆積物の接着度は低くなり、自由粒子として剥がれ落ちる。コンタクト領域ではさまざまな動作が発生するので(例えば、コンタクト端部の屈曲、シール端縁の圧縮、流体の流れ、クラムシェルの動き、およびその他のプロセス)、自由粒子は、シールエッジ310を超えて移動でき、ウェハ上でさまざまなエッジ欠陥を発生させる。また、リンセート溜まり506によって定められる内部侵食セル内の表面の酸化で形成される銅イオンは、第一銅イオン、つまりCu+(第2銅イオン、つまりCu2+ではなく)を形成する。2つの第一銅イオンは結合することができ(または、不均化によって)、溶液内で銅金属粒子/粉末および第2銅イオンを形成する。このような第1銅イオンの銅元素への還元は急速なプロセスであり、どの種類の基板(金属/導電性基板または非導電性基板)でも発生し得るので、接着度が不良な銅の堆積物が形成されてしまう。電圧差が大きくなるほど、電気メッキ電流が大きくなり、表面層、例えばシード層が薄くなっていくので、形成される粒子の数およびサイズが大きくなっていく。プロセスのスループットを高める上では電流は大きい方が望ましい一方、シード層は回路ラインが小型化するほど薄くなっていくので、上述した理由で発生するエッジ欠陥は、より深刻な問題となる傾向がある。
【0073】
カップ底部210は、カップ底部210に対する侵食およびメッキを防ぐことを目的として、不活性材料、例えば、パリレンによってコーティングされているとしてよい。一般的には、パリレンによって得られる開始コーティングは、ピンホールが無く、カップ底部への接着性が高いので、良好である。しかし、パリレンは、短期間で磨耗して、ある程度の利用期間を経ると剥がれ始める可能性がある。図7Aは、カップ底部702に設けられているパリレンコーティングの写真であり、約5000回から6000回のサイクルを経た後の様子を示す。同図の写真では、カップ底部の内側エッジ(ウェハに最も近い部分)を示す。カップ底部702の一部にはコーティングが依然として残っている。その他の領域では、コーティングは部分的に、接着性を失って透水性を持つようになっている。例えば、領域708を参照されたい。しかしその他の領域では、コーティングは部分的または完全に無くなってしまっている。例えば、領域706では、膜704が表面から剥がれてしまっている。このようにコーティングが損傷していると、カップ底部が侵食されたり、および/または、露出した金属面がメッキされたりする可能性がある。どちらの問題が発生しても自由粒子が形成され、エッジ欠陥の危険性が高くなる。さらに、パリレンは、比較的親水性が高く、シール端縁の近傍で大きいリンセートビーズが形成されるのを防げない。特定の実施形態によると、カップ底部のコーティングは、接着性があり、強固で、耐摩耗性を有し、ピンホールが無く、疎水性が高い。適切な疎水性材料の例を挙げると、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、これらの混合物および共重合体が含まれる。
【0074】
特定の実施形態によると、カップ底部はポリアミドイミド(PAI)膜によってコーティングされている。PAIは、強固で、化学的耐性を有し、且つ熱安定性を有する熱可塑性ポリマーである。さらに、PAIは概して、他のポリマーに比べて疎水性が優れている。以下に示す表では、典型的な電気メッキ溶液についてPAIとパリレンとを比較しているが、純水でも基本浴(Virgin Make−up Solution:VMS)でも、PAIの疎水性が遥かに高い(接触角が大きい)ことが分かる。
【表1】
【0075】
特定の実施形態によると、カップ底部210は、キシランP−92から成る2つの層と、さらにキシラン1010から成る2つの層によってコーティングされる。ほかの実施形態によると、カップ底部は、キシランP−92から成る2つの層と、さらにキシラン1010から成る3つの層によってコーティングされる。これらの材料は共に、ウィットフォード・コーポレーション(Whitford Coeporation、米国ペンシルバニア州、エルバーソン)社製のものを利用する。キシランP−92は主に、PAIポリマーであるが、キシラン1010は、約70%がPAIで約30%がPTFEである。PTFEは、それ自身だけでは非常に疎水性の高いポリマーであるが、接着性および耐磨耗性が非常に低い。ある程度のPTFEを外側の層に含み、主にPAIを内側の層には含むコンポジット膜または共重合体膜によれば、疎水性、接着性、耐磨耗性が良好となる。キシランP−92を用いてコーティングされた平らで均一な膜は、以下に示す表から証拠が挙がっているように、適切な疎水性を持ち得る。
【0076】
特定の実施形態によると、カップのコーティングの厚みの目標値は、約20μmから35μmの範囲内である。堆積するには、適切なポリマーを溶剤に溶解させるとしてよいが、溶解度を高めるべく加熱するとしてもよい。例えば、PTFEおよびPAIについては、nメチルピロリドン(NMP)またはジメチルホルムアミド(DMF)を用いるとしてよい。さらに、PTFEについては、少なくとも約摂氏350度まで加熱されたペルフルオロケロセンを用いるとしてよい。溶解されたポリマーを、ブラシ、スピン、吹き付け等によって塗布して、その後高温で硬化させるとしてよい。その他の適切なコーティング技術を用いて、上述した特性を持つ膜を形成するとしてよい。
【0077】
コーティングが施されたカッププレートは、スパークテストを用いてピンホールの有無について検査されるとしてよい。このスパークテストでは、コーティング全体にわたって90Vの電圧を印加するとしてよい。さらに、各カップ底部のコーティングの厚みをそれぞれ検査して、適切に被覆されていることを確認するとしてよい。その他の試験としては、PAIコーティングを目視および顕微鏡で観察してさまざまな膜特性を確認する外観試験、接着性試験(例えば、テープテスト)、ならびに、カソードとしてPAIコーティングのクーポン、アノードとして銅ストリップ、そして0Vから75Vのランプ電圧を用いて、開路電圧を観察することによって、小さい電気化学テストセルで行われるピンホールテスト等が含まれるとしてよい。
【0078】
カップ底部のコーティングをより疎水性の高いものに交換することによって、図7Bから図7Eを見れば分かるように、シール端縁の近傍に形成されるリンセートビーズが小さくなると共に、開く際にコンタクト領域に移動するリンセートの量を減らすことができるとしてよい。特定の実施形態によると、コンタクト領域には、ほとんどリンセートが移動していない。図7Bおよび図7Cは、カップ底部にはコーティングが設けられていないか、または、疎水性の低いコーティングが設けられている場合のクラムシェルアセンブリの様子を示し、上述した図5の(A)および(C)に略対応する。図7Dに示すようにカップ底部により疎水性の高いコーティング712が設けられると、このコーティングはリンセートをはじくので、シール端縁の近傍に形成されるビーズ714が小さくなる。例えば、このビーズは、参照番号716で示されている端縁シールとテーパーエッジの界面までしか形成されないとしてよい。図7Eに示すようにクラムシェルを開くと、間隙718を通ってコンタクト領域に移動し得るリンセートの量ははるかに少なくなっている。特定の状況では、リンセートビーズは、間隙には入り込む可能性があるが、コンタクトに到達するのに十分な量はない(コンタクトが濡れると発生する表面張力によってさらに引っ張られる)。このため、コンタクト領域に入り込むリンセートの量は非常に少ないか、または略入り込まない。
【0079】
図8Aは、カップ底部に設けられる2つの異なるコーティングについて、新しい端縁シールおよび約6万回の電気メッキサイクルに利用された端縁シールの両方について、クラムシェルのコンタクト領域にウィッキングされた電気メッキ溶液の量を比較するグラフである。同図に示すグラフによると、カップ底部にPAIをコーティングした場合(棒802および806)は、カップ底部にパリレンをコーティングした場合(棒804および808)と比べると、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が少なくなっていることが分かる。PAIのコーティングは、新しい端縁シール(棒802対棒804)および経年劣化した端縁シール(棒806対棒808)のどちらと組み合わせても、高い効果を奏する。
【0080】
経年劣化の程度が異なる端縁シールと組み合わせて複数の異なるコーティングを比較すると、端縁シールが原因の偏りを取り除くことができる。クラムシェルを繰り返し利用すると、端縁シールの表面仕上げ、例えば疎水性コーティングが、変形、低減、磨耗、剥離してしまう。このため、時間が経過して端縁シールが劣化すると、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が増加し得る。図8Aでは、パリレンがカップ底部にコーティングされている新しい端縁シールを利用する場合にコンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量を100%としている。約6万回のサイクルを経た後では、同じ端縁シール(経年劣化後のもの)を用いた場合、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が75%増加した。これに代えて新しい端縁シールにPAIコーティングを設けると、初期ウィッキング量は約10%に過ぎなかった。経年劣化後の端縁シールでは、ウィッキングされるリンセートの量は90%付近になったが、それでもカップ底部にパリレンがコーティングされている真新しい端縁シールの初期性能よりも良好である。さらに、この実験によって、約6万回のサイクル後もPAIコーティングの剥離が観察されないことが分かった。これは、図7Aに示すようなパリレンでコーティングした場合の結果に比べると、顕著な改善点である。概して、PAIコーティングに変更することによって、ウィッキングされるリンセートの量についての許容限界値が小さくなり(このため、エッジ欠陥が抑制され)、および/または、予防的保守の頻度が低くなるという効果を奏することができる。例えば、概算であるが、カップ底部に設けるコーティングをPAIに変更することによって、通常のクラムシェルの予防的保守の頻度を少なくとも半減させることができる。
【0081】
別の実験によると、電解質環境におけるPAIコーティングの浸出性および吸収性を試験した。2つの試験サンプルを用いた。第1のサンプルとしては、P92のコーティングから成る2つの層と、キシラン1010コーティングから成る1つの層とを含むものを用いた。第2のサンプルとしては、キシランP92のコーティングから成る2つの層のみを含むものを用いた。どちらのサンプルも、16日間にわたって、摂氏20度で、40g/Lの銅イオンと、10重量%の硫酸と、50ppmの塩素イオンとを含む通常の銅メッキ溶液に浸した。さらに、パリレンがコーティングされた対照サンプルも用いた。サンプルはすべて、浸す前後で計量した。また、浸漬液体もすべて、抵抗の変化と、溶液中に浸出される電気活性材料の検出とを目的として電流−電圧(サイクリック・ボルタンメトリー)分析を用いて分析した。浸した後、PAIコーティングでは、検出可能な程度の浸出または吸収は全く発生しなかった。これは、パリレンコーティングと比較すると、非常に大きな改善点である。パリレンコーティングの場合は、重量がわずかに増加して、現時点では未確認であるが、小さいサイクリック・ボルタンメトリー・ピークが非常に大きい負の還元電位において観察される。
【0082】
図8Bは、カップ底部のコーティングが異なる2つのクラムシェル装置で実行される電気メッキサイクル数の関数として示されるウェハの欠陥の数を比較するグラフである。ライン810はカップ底部にパリレンがコーティングされたものに対応し、ライン812はPAIがコーティングされたものに対応する。カップ底部にパリレンがコーティングされたものを用いて処理されたウェハは、約1000サイクルが経過すると欠陥率が大きく上昇し始めた。特定の理論に制限されるものではないが、カップ底部にパリレンがコーティングされる場合、パリレンの疎水性が低いためにコンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が大きくなって、カップ底部にPAIがコーティングされる場合にくらべて、はるかに少ないサイクル数で欠陥数が急増したと考えられている。また、パリレンコーティングの場合、このようにサイクルが繰り返されると、ある程度一体性が失われてしまう場合があり、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が増えて、欠陥が発生じてしまった可能性がある。原因が何であれ、PAIのコーティングを利用することで性能が大きく改善された。カップ底部がパリレンでコーティングされたクラムシェルでは、コンタクトの洗浄または修復が必要になるまでの間に、より多くのウェハを処理することができる。
【0083】
図8Cおよび図8Dは、2つの異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面の欠陥分布を説明するための2つのウェハオーバレイを示す図である。各オーバレイの画像は、6枚のウェハの画像を用いて形成された。図8Cは、カップ底部がPAIでコーティングされたもので処理されたウェハの欠陥分布を示す図であり、図8Dはカップ底部がパリレンでコーティングされたもので処理されたウェハの欠陥分布を示す図である。点(例えば、822)はそれぞれ、オーバレイを形成するために用いられた6枚のウェハのうち1枚で生じている欠陥を示すものである。これら2つの図からは、PAIをコーティングした場合の方が、パリレンをコーティングした場合に比べて、欠陥がはるかに少ないことが明らかである。さらに、パリレンをコーティングした場合に発生している欠陥は、ウェハエッジ820の周囲に、塊826のように、集中する傾向にあるが、ウェハエッジ820ではチップ密度も高い。
【0084】
別の試験によると、カップ底部がPAIでコーティングされている場合に製造されるウェハの平均欠陥数は、2000回連続してウェハサイクルを実行した場合、1枚のウェハにつき9.5に過ぎないことが分かった。欠陥の測定は、サイズが少なくとも約0.9nmである欠陥を測定可能なケイ・エル・エー・テンコール(KLA−Tencor,Inc.、米国カリフォルニア州、サン・ホセ)社製のAIT欠陥分析器を用いて行われた。カップ底部がパリレンでコーティングされた場合には、同様に連続して試験的に実行した最初の1250サイクルでは、平均欠陥数が18.6であった。この後のサイクルの欠陥数は、急増して、1枚のウェハ当たり平均欠陥数が237になった。
【0085】
図8Eは、2つの異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの異なるセグメントについて、欠陥密度を比較するグラフである。欠陥密度は、欠陥分布とも呼ばれるが、各セグメント内の平方インチ当たりの平均欠陥数を意味する。尚、セグメントとは、内径(第1の数によって表される)および外径(第2の数によって表される)を持つリングと定められる。例えば、グラフ上に<0−20>と図示されている第1のセグメントは、直径が200mmである最も内側の円に対応する。最後のセグメント<140−150>は、内径が140mmで外径が150mmの最も外側のリング(300mmのウェハのエッジの周辺)に対応する。カップ底部がPAIでコーティングされたもので処理されたウェハに対応する欠陥は白抜きの棒で示し、カップ底部にパリレンがコーティングされたもので処理されたウェハに対応する欠陥は黒色の棒で示す。図8Cおよび図8Dに示したオーバレイと同様に、図8Eを見れば、カップ底部がパリレンでコーティングされたもので処理されたウェハの方が各セグメントでの欠陥がより多くなっていることと、中央からの距離が140mmおよび150mmで画定されるセグメントに対応する棒830が示すように、エッジ周辺で特に多くなっていることとが分かる(つまり、エッジ欠陥)。
【0086】
図5の(A)から(C)を参照しつつ前述したように、クラムシェルを開ける際には、シール端縁とウェハとの間の間隙を通ってリンセートが移動して、コンタクトに接触して、さらにリンセートをコンタクト領域に引き込む表面張力がさらに発生する。リンセートが間隙を通って進む距離は、ビーズ体積および周囲の材料の表面特性に応じて決まる。ビーズ体積を減らすこと、および/または、カップ底部のコーティングをより疎水性の高い材料へと変更することに加えて、または、代えて、コンタクト端部をシール端縁からより大きく離間させて、コンタクトが濡れないようにするとともに、コンタクト領域にリンセートがさらに広がらないようにするとしてよい。図9の(A)および(B)は、開放動作中の2つの異なるクラムシェル装置を示す概略図であって、これらのクラムシェル装置では、コンタクト端部が、シール端縁から複数の異なる距離で配置されている。具体的には、図9の(B)に示すコンタクト端部は、図9の(A)に示すコンタクト端部よりも、距離D4だけ、シール端縁からより遠くに配置されている。どちらの図でも、端縁シール212の最も外側のエッジ901は、ウェハ304のエッジから距離D1のところに配置される。D1は、ウェハのうち非メッキ領域を示し、デバイス生成には使用不可能な領域である。D1は、約1.0mmから5.0mmの範囲内であるとしてよく、より具体的には約1.0mmから2.0mmの間である。一般的に言って、コンタクト端部とウェハの前面との間の電気接触および当該領域内でのコンタクトの汚染を犠牲にすることなくこの距離は出来る限り短くすることが望ましい。図9の(A)において、接触点302は、最も外側のエッジ901から距離D2の位置に配置されている。距離D2は、約0.3mmから0.8mmの範囲内であるとしてよい。この距離は、残留リンセート502が間隙504を通って、コンタクト208を濡らし、コンタクト506の周囲に液滴が形成される事態を防ぐには十分ではない場合がある(図9の(A)を参照のこと)。尚、コンタクトを乾燥した状態のまま維持するのに必要な最小距離は、残留リンセートビーズの大きさおよび端縁シール212の材料等の、さまざまな要因に応じて変わると留意されたい。図9の(B)において、接触点902は、端縁シール212の最も外側のエッジ901から距離D3の位置で配置されている。距離D3は、約0.8mmから1.6mmの範囲内であってよい。本例によると、コンタクト208は最も外側のエッジ901から十分に離間されており、クラムシェルを開ける際に、ウィッキングされたリンセート504はコンタクトに到達せず、コンタクトを濡らすこともない。このため、コンタクト208の周囲に液滴は形成されない。
【0087】
図10Aおよび図10Bは、コンタクト端部と端縁シールとの間の距離がさまざまに変更されているクラムシェルで、電気メッキが施されたウェハの欠陥分布を表す2つのオーバレイを示す図である。一方のクラムシェルでは、コンタクト端部は、端縁シールのエッジから0.6mmの距離に配置された(図9の(A)および(B)に示す距離D2)。図10Aに示したオーバレイは、このクラムシェルで処理されたウェハに対応する。他方のクラムシェルでは、コンタクト端部は、端縁シールのエッジから1.4mmの距離に配置された。図10Bに示すオーバレイは、この他方のクラムシェルで処理されたウェハに対応する。尚、端縁シールのエッジに対するウェハの位置は(図9の(A)および(B)の距離D1)、どちらのクラムシェルでも同じとした(1.75mm)。概して、コンタクトが端縁シールにより近接して設けられたクラムシェルで処理されたウェハでは、エッジ欠陥が大幅に多く、エッジの近傍に欠陥が非常に集中している。欠陥の種類および走査型電子顕微鏡(SEM)画像を統計的に分析すると、図10Bに示すオーバレイに対応する欠陥は主に、表面の粒子であって穴ではないことが分かった。
【0088】
コンタクト領域に侵入してコンタクトに接触するリンセートがいくらかあったとしても、このリンセートの量は、コンタクトの表面の親水性を低くすることによって、抑制され得る。つまり、リンセートがコンタクトに到達して接触すると、対応する表面エネルギーがリンセートをはじく。特定の実施形態によると、コンタクトは、コンタクト領域からリンセートを除去しやすくするべく、完全に、または、部分的に、疎水性ポリマーコーティングによってコーティングされる。例を挙げると、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはTeflon(登録商標))、エチレン−テトラフルオロエチレン(Tefzel(登録商標))、ポリイミドアミド(PAI)、または、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)がある。図12Aおよび図12Bは、2つのクラムシェル装置の構成を示す同様の概略図である。図12Bでは、シールを分断した後、電気メッキ溶液がコンタクト領域に過剰にウィッキングされないように、電気コンタクトに疎水性コーティングを設けている。図12Aは、上述した図5の(C)と略同じで、参考のために図示されている。図12Aに示す構成では、コンタクトに疎水性コーティングが設けられていないので、リンセート506が比較的大量にコンタクト領域に入り込んでしまっている。図12Bでは、コンタクトのうち、ウェハの前面と接触させる必要があるコンタクト端部302以外の全面に、疎水性ポリマー1202がコーティングされている様子を示している。このようなコンタクト構造を形成する方法の例を挙げると、これに限定されるものではないが、まず最初に、例えば、溶融されたポリマー内で浸漬被覆を行うか、または、溶媒に溶解させられたポリマーをコンタクトに対して噴射して、溶媒を乾燥させることによって、コンタクト素子(例えば、指状コンタクト)全体にコーティングを施す方法が含まれる。その後、このコーティングを、物理的研磨または端部の溶媒への暴露を選択的に実行することによって、選択的にコンタクト端部領域302から除去する。図示されていない特定の実施形態によると、コンタクト全体を導電性ポリマーコーティングでコーティングするとしてもよい。
【0089】
開放処理においてシールが分断されると、リンセートがコンタクト領域に引き込まれるが、これは通常、ウェハの前面の親水性によって発生する表面張力が原因である。例えば、ウェハの前面は通常銅シード層であって、リンセートによって濡れると、リンセートが前面に広がってしまう。こうなると、図5の(B)および(C)を参照しつつ説明したように、リンセートが、開放処理中においてウェハの前面と接触している電気コンタクト端部に到達する可能性がある(コンタクト端部は通常、端縁シールよりも高い位置まで延伸しており、シールが分断された後も前面と接触し続ける場合がある)。シールが分断される前、または、少なくとも十分な量のリンセートがコンタクト領域に入り込む前に、コンタクト端部が前面から離れると、端部が濡れてしまう事態は避けられるか、または、最小限に抑えられ得る。図11の(A)および(B)は、クラムシェル装置を開ける際に、コンタクト端部が前面から退避させられる、クラムシェル装置の構造を示す概略図である。図11は、クラムシェルを開閉中に、ウェハの前面に対して、コンタクト端部の位置を動的に移動可能な方法の具体例を示す。図11の(A)は、クラムシェル装置が閉じた状態を示し、図11の(B)は同じクラムシェル装置が開いた状態を示す。開いた状態では、端縁シールと前面との間のシールが分断される前、または分断されている途中の時点において、電気コンタクトがウェハの前面から離されている。図11の(A)に示すように、閉じたクラムシェルにおいて、接触点302は、コーン308の動作、コンタクト208の屈曲部1104、および端縁シール212の支点1102によって発生する上向きの力を受けている。コーン308によってコンタクト208に対して加えられる力によって、コンタクト208は屈曲する。支点1102は、コーンの下向きの移動を屈曲部1104においてコンタクト端部220を上向きに移動させる力に変換するレバーのサポートとして機能する。図11の(B)に示すようにクラムシェルを開けると、コーン308が引き上げられて、コンタクト208に対して加えられていた圧力がなくなる。コンタクト208は真っ直ぐになって、接触点220がウェハ表面306から離れる。コンタクト端部220は、ウェハ表面306から離れるように下向きに(図11の(B)に距離L1として示す)、且つ、端縁シール212の最も外側のエッジ901から離れるように(図11の(B)に距離L2として示す)移動するとしてよい。一部の実施形態によると、コンタクト端部220はこれらの2つの方向のうち一方の方向のみに移動するとしてよい。コンタクト端部220を元々の位置から移動させると、リンセートによってコンタクト端部が濡れてしまうことはなくなり、コンタクト領域に蓄積されるリンセートが最小限に抑えられる(または、なくなる)としてよい。
【0090】
図13は、特定の実施形態に係るクラムシェル装置1300を示す概略図である。装置1300は、クラムシェル(構成要素202、204、210、212、214、306、308等)を回転させるモータ107と、クラムシェル装置内でコーン308を上昇させるための空気シリンダーを有するシャフト106とを備えるとしてよい。モータ107およびシャフト106は、図1を参照しつつ詳細に説明されている。モータ107および空気シリンダーの動作は、システムコントローラ1302によって制御されるとしてよい。特定の実施形態によると、システムコントローラ1302を用いて、銅堆積、ウェハの挿入および取出などの処理の条件を制御する。コントローラ1302は、1以上のメモリデバイスおよび1以上のプロセッサを有するとしてよく、CPUまたはコンピュータ、アナログおよび/またはデジタルの入出力接続、ステッパ・モータ・コントローラ・ボードを含むとしてよい。
【0091】
特定の実施形態によると、コントローラ1302は、堆積装置の動作をすべて制御するとしてよい。システムコントローラ1302は、タイミング、回転速度、上昇速度等の処理パラメータを制御するための命令列を含むシステム制御ソフトウェアを実行する。一部の実施形態では、コントローラと対応付けてメモリデバイスに記憶されているその他のコンピュータプログラムおよび命令を利用するとしてよい。
【0092】
通常、コントローラ1302に対応付けてユーザインターフェースが設けられている。ユーザインターフェースは、ディスプレイスクリーン、装置および/またはプロセスの条件のグラフィカルソフトウェアによる表示、および、ポインティングデバイス、キーボード、タッチスクリーン、マイクロフォン等のユーザ入力デバイスを含むとしてよい。
【0093】
電気メッキプロセスを制御するためのコンピュータプログラムコードは、従来のコンピュータ読み取り可能プログラミング言語のうちいずれの言語で記述されているとしてもよい。例えば、アセンブリ言語、C言語、C++言語、パスカル、フォートラン等がある。コンパイルされたオブジェクトコードまたはスクリプトは、プロセッサによって実行されて、プログラムで特定されるタスクを実施する。プロセスを監視するための信号は、システムコントローラが有するアナログおよび/またはデジタルの入力接続部によって与えられるとしてよい。プロセスを制御するための信号は、堆積装置のアナログおよびデジタルの出力接続部から出力される。
【0094】
システムソフトウェアの設計または設定は、さまざまに異なるとしてよい。例えば、装置のさまざまな構成要素のサブルーチンまたは制御オブジェクトが、本発明に係る電気メッキプロセスを実行するために必要な装置の構成要素の動作を制御するべく記述されるとしてよい。この目的を実現するためのプログラムまたはプログラム部分の例には、ウェハコード、スピン速度制御コード、上昇スピード制御コード、等のコードが含まれる。一実施形態によると、コントローラ1302は、部分的に製造される集積回路の導電ラインを電気メッキによって形成するための命令を含む。
【0095】
クラムシェル開放速度(つまり、コーンをカップ底部から離す速度、この動作は、カップ/コーン・クラムシェルアセンブリからウェハを取り出すために必要なシーケンスに含まれる一段階である)は、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートおよびエッジ欠陥に対して影響を与えることが分かっている。特定のモデルまたは理論に制限されることなく、開放速度が遅くなると、コンタクト領域での吸着が少なくなり、ウィッキングされる量が減ると考えられている。しかし、開放速度をさらに遅くすると、ウィッキング体積が増加してしまう。これは、カップから取り出されるべくウェハが待機状態にある場合に毛管現象が発生するためである。図14Aは、スピン期間の長さを2つの異なる値に設定して、開放速度の関数として、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの体積を正規化して示すグラフである。どちらのテストでも、2秒(ライン1402)または4秒(ライン1404)の場合でも、スピン回転速度は600rpmに固定された。下方に位置している扇形噴射ノズルから1分当たり1.5リットルの速度でウェハ面に供給される(総供給体積は約50ml)純水による2秒間のリンスの後で、スピンを行った。リンセートの大半は、スピンによってウェハから除去されて、ウェハの下方に位置しているメッキ浴の濃度を低くしないように別の収容領域に運ばれる。図5の(A)を参照しつつ説明したように、ウェハの表面およびクラムシェルのうち端縁シールの近傍のエッジ領域にはいくらか流体が残る。スピン時間を長くすると(ライン1404)、前面と端縁シールとの界面からコンタクト領域にウィッキングされる流体の量が減る。4秒間のスピン(ライン1404)は、端縁シールの周縁エッジにおいてウィッキングされ得る量が幾分少なくなる可能性があるが、開放速度とウィッキングとの相関関係が弱くなっているように見え、ハードウェアのバラツキによる影響が最小限に抑えられている。しかし、スピン時間が長くなると製品スループットが下がるので、スピン時間を短くして開放速度を最適化することが好ましいとしてよい。図14Aに示すグラフによると、開放速度の最適値は約3秒から4秒の間であることが分かる。尚、開放速度はすべて、特定の実施形態ではクラムシェルを開く際にコーンが移動する総距離に等しい、約2.25インチ(または5.7センチメートル)の距離について特定されている。このため、1.7秒と表されている開放速度は実際には、毎秒3.3センチメートルという速度に等しくなり、3.5秒と表現されている開放速度は実際には、毎秒1.6センチメートルという速度に等しくなる。その他も同様である。例えば、2.5秒から3秒に開放速度を遅くすると、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量は、約20%低減され得る。開放処理を遅くするとスループットに悪影響が出るが、この影響は、例えば、同様の効果を得るべくスピン時間を長くすることに比べると、深刻な影響ではないと考えられている。
【0096】
図14Bは、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、リンセートのウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。このグラフからは、装置およびプロセスを調整することによってウィッキングを最小限に抑えることが出来ることがわかる。例えば、開放処理を1.7秒から4秒に遅くして、スピン乾燥時間を2秒から3秒に長くすると、ウィッキングは約30%低減され得る(棒1406と棒1408とを比較)。処理パラメータを今までとは異ならせて(開放速度を遅くして、乾燥時間を長くする)、カップ底部のコーティングをPAIにすると、大幅な改善が見られた(棒1410)。ウィッキングされたリンセートの量は、さらに50%減少した。より高い効果が得られるのは、従来のコンタクトの代わりに新型コンタクトをシールからさらに距離を大きくして設ける場合であった(棒1412)。
【0097】
図15Aおよび図15Bは、異なるプロセス条件を用いて電気メッキされたウェハの欠陥分布を示すウェハオーバレイを示す図である。図15Aに示すオーバレイは、開放処理が約2.5秒で行われ、乾燥期間が600RPM且つ約2秒で行われるプロセスに対応する。図15Bに示すオーバレイは、開放動作が約3.0秒で行われ、乾燥期間が600RPM且つ約4秒で行われるプロセスに対応する。図15Bに示すオーバレイの方が、欠陥がはるかに少なく、上述したようにプロセスパラメータを今までとは異なる値に設定するとウェハ品質が改善され得ることが分かった。同図に示す結果は、図14B(棒1406および棒1408)に示した結果と対応する。
【0098】
図16は、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、リンセートのウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。第1の棒1602は、クラムシェルが開放される前に4秒間スピンされ、カップ底部がPAIでコーティングされたもので実行されたテストに対応する。このように改善要因を組み合わせると、ウィッキング量が対照サンプル(棒1608)の5%に過ぎないという最良の結果が得られた。尚、対照サンプルとは、カップ底部がパリレンでコーティングされ、スピンは2秒間しか行われなかった。また、カップ底部がPAIでコーティングされて、スピンが2秒間行われた場合の結果(棒1606)と、カップ底部にパリレンがコーティングされてスピンが4秒間行われた場合の結果とを比較すると、一部の実施形態では、カップ底部のコーティングがスピン時間よりも影響が大きいことが明らかとなっている。概して、同図に示すグラフによると、カップ底部をPAIでコーティングすることと、スピン時間を4秒間とすることとを組み合わせると(1602)、試験したサンプルの中では、ウィッキング量が最も少なくなることが分かる。
【0099】
図17Aは、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、リンセートのウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。全てのテストにおいて、同じ構成の端縁シールが用いられた。具体的には、シール端縁のエッジが、ウェハのエッジから約1.75mmの距離で配置されている(つまり、図9の(A)および(B)に示す、距離D1が1.75mmである)。つまり、「1.75mm端縁シール」となる。このような端縁シールと、2種類の異なるコンタクトを組み合わせた。一方の種類は、1.75mmコンタクト(棒1702、1704、および1706)であって、上述したような構成の端縁シールと共に用いられるように構成された(上述したように1.75mmの間隙が設けられる)。この端縁シールと共に用いて、1.75mmコンタクトの端部を、シール端縁のエッジから約0.4mmだけ離間させた(図9の(A)および(B)に示す距離D2)。別の種類のコンタクトは、1.00mmコンタクト(棒1708および1710)であって、ウェハのエッジから1.00mmのみ離間させるシール端縁の端縁シールと共に用いられるように設計された。このため、1.00mmコンタクトは、1.75mmコンタクトよりも、コンタクト端部がウェハのエッジにより近く配置されている。1.00mmコンタクトが1.75mmウェハと共に用いられると、1.00mmコンタクトの端部は、シール端縁のエッジから約1.4mmにわたって離間された(図9の(A)および(B)に示す距離D2)。この距離は、1.75mmコンタクト/1.75mm端縁シールの組み合わせよりも、約1.0mm長い。
【0100】
対照サンプル(棒1702)は、1.75mmコンタクトを備えるクラムシェルで、乾燥時間を2秒間、開放時間を1.7秒として行ったテストに対応する。その他のパラメータを同じ値にしたまま開放時間を3.5秒に延長すると、ウィッキングされるリンセートは25%減少した(棒1704)。また、乾燥時間を延長した場合もわずかに減少が見られた(棒1706)。1.00mmコンタクトを用いて、乾燥時間を3.5秒とすると、80%以上の減少が達成された(棒1708)。しかし、4秒に延長すると、ウィッキングされる量をさらに減らすことができた。まとめると、開放速度を遅くして、乾燥時間を長くして、コンタクトの端部とシール端縁との間の距離を大きくすると、最良の結果が得られた。一部のパラメータ、例えば、異なるコンタクト構造等は、他のパラメータに比べると影響力が大きいと考えられる一方、さまざまなパラメータ、例えば、乾燥時間の延長と1mmコンタクトの利用とを組み合わせると相乗効果が見られた(例えば、棒1704および176と、棒1708および1710を比較されたい)。
【0101】
図17Bは、乾燥時間およびカップ底部コーティングをさまざまに変更した場合の、リンセートのウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。対照サンプル(棒1712)は、カップ底部にパリレンがコーティングされたクラムシェルで、乾燥時間を2秒間として行われたテストに対応する。乾燥時間を4秒間に延長すると、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートが約25%低減された。しかし、カップ底部のコーティングをPAIに変更して乾燥時間を4秒間とすると、ウィッキングが約85%低減された。
【0102】
図18Aおよび図18Bは、処理されたウェハの数の関数として、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、プロセス欠陥を示すグラフであり、比較を目的としている。ライン1802は、上述したような1.75mmカップおよび端縁シールにおいて1.75mmコンタクトを用いて(つまり、D1=1.75mm、D2=0.4mm、図9の(A)および(B)を参照されたい)、スピン時間は2秒間、開放時間は1.7秒とした場合に対応する。ライン1804は、1.75mmカップおよび端縁シールにおいて1.00mmコンタクトを用いて(つまり、D1=1.75mm、D2=1.4mm)、スピン時間は4秒間、開放時間は3.5秒とした場合に対応する。後者のようなクラムシェル構成およびプロセス条件を利用すると、予防的保守管理を必要とすることなく2250回以上の電気メッキサイクルを実行することができる一方、前者のようなクラムシェル構成およびプロセス条件を利用すると、約500回のサイクルが経過すると欠陥数が急増した。
【0103】
自動接触エッチング(ACE)は、カップ/コーンが開いた状態のクラムシェルのカップ底部をツールのメッキ浴に、周期的に、且つ、トリガおよび制御された方法で、浸漬させるプロセスである。このようにして、コンタクトが電解質に暴露され、メッキされた金属を「エッチング」によって除去する。エッチング終了後、クラムシェルは、依然として開いた状態にあって、カップ底部およびアセンブリの残りの部分から電解質を除去するべくスピンされている間、リンセートがクラムシェルに対して噴射される。このように自動的に実行される手順は、カップ底部のエッジ領域を「清潔」な状態、つまり、粒子が無い状態に維持および修復する上で、効果的であることが分かっている。当該ACEプロセスは、長時間にわたり、メッキ浴に水分が追加されてしまうという望ましくない事態が発生し得るので、利用は慎重にすべきである。
【0104】
ライン1806および1808は、端縁シールのエッジとシール端縁のエッジとの間(距離D1)が1mmのみ離間させられている一方、コンタクト端部とシール端縁エッジとの間の距離(距離D2)は0.75mmであるカップを用いて、間に自動接触エッチング(ACE)を行わない場合、および、行う場合の連続的電気メッキ循環処理に対応する。このような構成のカップを用いる場合、ウェハのエッジには、コンタクトを端縁シールから所望の値だけ移動させる十分な空間はない(例えば、上述したように、1.00mmコンタクトと1.75mm端縁シールとを組み合わせた場合の約1.3mmよりも大きい値)。この場合、途中でACEが利用されなければ、500枚のウェハを処理すると、それ以降ウェハの欠陥数が急増する(ライン1806)。しかし、200回のサイクル毎にACEが実行されると、3000回以上のウェハメッキサイクルが、粒子数を大きく増加させることなく、実行された(ライン1808)。このため、自動的に且つ繰り返し実行される接触エッチングによって、コンタクト端部が端縁シール領域から移動または離間するための余地が十分にない場合でも、欠陥を低減させることができる。
【0105】
特定の実施形態によると、端縁シールは、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量を最小限に抑えるべく疎水性コーティングによってコーティングされている。疎水性コーティングは、端縁シールの全面にわたって塗布されているとしてもよいし、または、シール端縁の周囲にのみ塗布されるとしてもよい。疎水性コーティングは、乾燥後にシール端縁の近傍に蓄積されるリンセートを最小限に抑え、開放動作中にコンタクト領域に侵入するリンセートを低減するとしてよい。図19は、端縁シールの構成を変更した場合の、ウィッキングされるリンセートの体積を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。ベースライン(棒1906)は、コーティングされていない端縁シールを備えるクラムシェルに対応する。棒1902および1904は、コーティングされた端縁シールを備えるクラムシェルに対応し、ウィッキングされる堆積が少なくとも80%低減されることを示している。
【0106】
<結論>
上記では明瞭に説明するという目的のためにある程度まで詳細に本発明を記載したが、本願請求項が定義する範囲内で、上述の記載内容を変更および変形し得ることは明らかである。尚、本発明に係るプロセス、システムおよび装置を実装する方法は上記以外にも数多くあることに留意されたい。したがって、上述した実施形態は、本発明を限定するものではなく説明するためのものと解釈されるべきであり、本発明は本明細書に記載した詳細な内容に限定されない。
【0107】
本明細書において引用した参考文献の内容は全て、参照により本願に組み込まれる。
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、米国特許出願第61/121,460号(発明の名称:「エッジ欠陥を低減するウェハ電気メッキ装置」、出願日:2008年12月10日)による恩恵を主張する。当該出願の内容はすべて、本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
電気メッキ、無電解メッキ、電解研磨等の、半導体デバイス製造で用いられる湿式化学堆積処理または湿式化学除去処理は、「クラムシェル」と呼ばれる装置で実行され得る。このようなクラムシェル、例えば、ノベラス・システムズ(Novellus Systems)のSabre(登録商標)ツールは、主な2つの構成要素として、アセンブリを形成している「カップ」および「コーン」を備える。このようなカップおよびコーンから形成されるアセンブリは通常、処理中に、ウェハの保持、位置決め、および、しばしば回転を行う。カップの端縁の端縁シールは、ウェハ上のシード層にメッキ電流を運ぶための埋め込みコンタクトを有するとしてよい。このようなクラムシェルは、ウェハのエッジおよび裏面を保護する。つまり、メッキプロセスにおいてウェハを浸漬させた際に、ウェハのエッジおよび裏面に電解質が接触しないようにする。ウェハを保持するべくカップとコーンとが互いに係合すると、流体に対して耐性を持つシールが形成され、当該シールによってエッジおよび裏面が保護される。
【0003】
メッキ溶液は通常、酸性または塩基性の水媒体に金属イオンを含む。例えば、電解質は、稀硫酸に溶解された硫酸銅を含むとしてよい。ウェハにメッキ電流および/または研磨電流を通電させる電気コンタクトは通常、カップ/コーン/端縁シールの物理的な結合によって乾いた状態で維持されるべきものであるが、処理中において、電解質によって汚染される可能性があり、ウェハメッキサイクルが複数回実行されると、電気コンタクトの性能が劣化してしまう。コンタクト領域に電解質が接触すると、ウェハにも損傷が発生する可能性があり、例えば、ウェハのエッジにおいて粒子汚染が発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
損傷し易いクラムシェルの構成要素をメッキ溶液が汚染しないように、新たな装置および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
疎水性コーティングを有するベースプレートを用いて、クラムシェルのコンタクト領域に対するリンセート(rinsate)および電解質によるウィッキングを最小限に抑える。当該疎水性コーティングは少なくとも、ベースプレートのうち電解質に暴露される部分を被覆するように設けられる。ウィッキングが減ることによって、ウェハ欠陥、特にエッジ効果が低減され、メインテナンスの頻度が減る。一部の実装例によると、疎水性コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)を含み、特定の実施形態によると、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む。新型の端縁シールと共に用いた場合、従来のベースプレートと比較すると、本発明に係るベースプレートでは欠陥率が80%以上低くなっており、端縁シールが経年劣化しても低いままであることが分かっている。
【0006】
特定の実施形態によると、ベースプレートは、電気メッキ中に半導体ウェハを保持すると共に電気メッキ溶液を電気コンタクトに到達させないように構成されているカップにおいて利用される。当該ベースプレートは、リング状本体と、リング状本体から内向きに延伸すると共にエラストマー端縁シールを支持するナイフ状突起とを備えるとしてよい。エラストマー端縁シールは、半導体ウェハと係合し、電気メッキ溶液が電気コンタクトに到達しないようにする。
【0007】
ベースプレートはさらに、少なくともナイフ状突起を被覆している疎水性コーティングを備えるとしてよい。当該コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および/または、これらの共重合体を含むとしてよい。特定の実施形態によると、疎水性コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)を含む。より具体的な実施形態によると、当該コーティングはさらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。当該コーティングは、スプレーコーティング法を用いて塗布されるとしてもよい。例えば、少なくともナイフ状突起に、キシランP−92を少なくとも一層スプレーするとしてよい。また、キシランP−92の層の上にキシラン1010を一層スプレーするとしてよい。当該コーティングの厚みは、約20μmから35μmの間であるとしてよい。特定の実施形態によると、当該コーティングは、90Vのスパークテストに合格し得る。当該コーティングによる電解質溶液の浸出または吸収は、検出可能な量ではないとしてよい。
【0008】
特定の実施形態によると、リング状本体およびナイフ状突起は、ステンレススチール、チタン、およびタンタルから成る群から選択される1以上の材料を含む。リング状本体は、電気メッキ装置のシールド構造に対して取り外し可能に取り付けられるとしてよい。リング状本体は、端縁シールのリッジと係合する溝を有するとしてよい。ナイフ状突起は、少なくとも約200ポンドの力を支持するとしてよい。また、ベースプレートは、NovellusのSabre(登録商標)電気メッキシステムにおいて利用されるとしてよい。
【0009】
特定の実施形態によると、カップで利用されるコンタクトリングは、カップのほかの構成要素と係合するようにサイズおよび形状が決定されている単一のリング状本体と、単一のリング状本体に取り付けられ、単一のリング状本体から内向きに延伸している複数の指状コンタクトとを備える。複数の指状コンタクトは、お互いから離間させて斜めに設けられているとしてよい。各指状コンタクトは、半導体ウェハの外側エッジから約1mm未満の箇所で、半導体ウェハに接触するように配置されているとしてよい。リング状本体および複数の指状コンタクトは、Paliney 7から形成されるとしてよい。複数の指状コンタクトは、略V字形の形状を持つとしてよく、単一のリング状本体によって画定される平面から下向きに延伸した後、半導体ウェハと接触する遠位ポイントまで上向きに延伸する。少なくとも約300個の指状コンタクトが設けられるとしてよい。複数の指状コンタクトは、電気メッキ中に半導体ウェハによって加えられる力で屈曲するとしてよい。それぞれの指状コンタクトの少なくとも一部分は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびこれらの共重合体から成る群から選択される1以上によってコーティングされているとしてよい。
【0010】
特定の実施形態によると、端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリは、カップで利用されるとしてよく、半導体ウェハと係合して、メッキ溶液を半導体ウェハの周縁領域から排除するリング状エラストマー端縁シールと、コンタクトリングとを備えるとしてよい。リング状エラストマー端縁シールの内径は、電気メッキ中に半導体ウェハの周縁領域からメッキ溶液を排除するための外周を画定する。コンタクトリングは、単一のリング状本体および複数の指状コンタクトを有する。複数の指状コンタクトは、リング状本体に取り付けられ、リング状本体から内向きに延伸し、お互いから離間して斜めに設けられる。各指状コンタクトは、端縁シールの内径から少なくとも約1mmの箇所において、半導体ウェハと係合するように配置されているとしてよい。特定の実施形態によると、複数の指状コンタクトはそれぞれ、略V字形の形状を持ち、単一のリング状本体によって画定される平面から下向きに延伸した後、リング状エラストマー端縁シールが半導体ウェハと係合する平面より高い位置の遠位ポイントまで上向きに延伸する。リング状エラストマー端縁シールは、疎水性コーティングを有するとしてよい。また、リング状エラストマー端縁シールは、分配バスを収容する溝を有するとしてよい。リング状エラストマー端縁シールのうち半導体ウェハと係合する部分は、係合が維持されている間、圧縮されるとしてよい。
【0011】
特定の実施形態によると、電気メッキ装置は、電気メッキ中に半導体ウェハを保持し、電気メッキ装置の所与の部分は、メッキ溶液が接触しないようになっている。当該装置は、半導体ウェハを支持し、ベースプレートを有するカップと、半導体ウェハに力を加えて、エラストマーシールに対して半導体ウェハを押圧するコーンと、シャフトとを備える。当該ベースプレートは、リング状本体と、リング状本体から内向きに延伸しているナイフ状突起とを有する。当該ベースプレートは、半導体ウェハと係合して、電気メッキ溶液が電気コンタクトに到達しないようにするエラストマー端縁シールを支持する。当該ベースプレートは、少なくともナイフ状突起を被覆している疎水性コーティングを有する。シャフトは、カップに対して相対的にコーンを移動させ、コーンを介して半導体ウェハに力を加え、カップのエラストマーシールで半導体ウェハをシールして、カップおよびコーンを回転させるとしてよい。
【0012】
特定の実施形態によると、上記の装置はさらに、命令を有するコントローラを備える。当該命令は、半導体ウェハをカップ上に位置決めして、コーンを半導体ウェハまで降下させて、半導体ウェハの裏面に力を加えて、カップの端縁シールと半導体ウェハの前面との間にシールを構築して、半導体ウェハの前面の少なくとも一部分を電気メッキ溶液内に浸漬させて、半導体ウェハの前面に対して電気メッキを実行して、コーンを上昇させて、半導体ウェハの裏面に力を加えるのを停止させるための命令であり、上昇は、少なくとも2秒間にわたって実行される。
【0013】
特定の実施形態によると、カップおよびコーンを備える装置で半導体ウェハに電気メッキを行う方法であって、半導体ウェハをカップ上に位置決めする段階と、コーンを半導体ウェハまで降下させて、半導体ウェハの裏面に力を加えて、カップの端縁シールと半導体ウェハの前面との間にシールを構築する段階と、半導体ウェハの前面の少なくとも一部分を電気メッキ溶液内に浸漬させて、半導体ウェハの前面に対して電気メッキを実行する段階と、コーンを上昇させて、半導体ウェハの裏面に力を加えるのを停止する段階とを備え、上昇は、少なくとも2秒間にわたって実行される。当該方法はさらに、コーンの上昇に先立って、少なくとも約3秒間にわたって、半導体ウェハを回転させる段階を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る、電気化学的に半導体ウェハを処理するためのウェハ保持アセンブリを示す斜視図である。
【0015】
【図2A】ウェハと電気接続を構築し、電解質浴に含まれているメッキ溶液からウェハをシールするべく用いられるクラムシェルの構成要素を示す断面図である。
【0016】
【図2B】特定の実施形態に係るコンタクト部材の一部分を示す斜視図である。
【0017】
【図3A】クラムシェルを閉じて、特定の実施形態に応じて、ウェハとクラムシェルとの間にシールを構築する前の、クラムシェルの一部とウェハとを示す図である。
【0018】
【図3B】クラムシェルを閉じて、特定の実施形態に応じて、ウェハとクラムシェルとの間にシールを構築した後の、クラムシェルの一部とウェハとを示す図である。
【0019】
【図4】特定の実施形態に係る電気メッキプロセスを説明するためのフローチャートである。
【0020】
【図5】クラムシェル開放処理の異なる段階における、クラムシェルの構成要素および電解質残留物の相対的な位置の例を示す図である。
【0021】
【図6】残留リンセートがコンタクト領域を汚染してしまった場合の電気メッキ処理時のクラムシェルの一部を示す図と、特定の実施形態に係る電気メッキプロセスを行った場合の、クラムシェルの異なる構成要素および位置における電圧をプロットした様子を示す図である。
【0022】
【図7A】約5000回から6000回の電気メッキサイクルを実行してカップ底部に形成されたパリレンコーティングを示す拡大写真である。
【0023】
【図7B】クラムシェルを開いて、ウェハとクラムシェルとの間のシールを分断する前の、クラムシェルの一部およびウェハを示す図であり、カップ底部は中程度の疎水性材料でコーティングされているか、またはコーティングされていない。
【図7C】クラムシェルを開いて、ウェハとクラムシェルとの間のシールを分断した後の、クラムシェルの一部およびウェハを示す図であり、カップ底部は中程度の疎水性材料でコーティングされているか、またはコーティングされていない。
【0024】
【図7D】クラムシェルを開いて、ウェハとクラムシェルとの間のシールを分断する前の、クラムシェルの一部およびウェハを示す図であり、カップ底部は非常に強力な疎水性材料でコーティングされている。
【図7E】クラムシェルを開いて、ウェハとクラムシェルとの間のシールを分断した後の、クラムシェルの一部およびウェハを示す図であり、カップ底部は非常に強力な疎水性材料でコーティングされている。
【0025】
【図8A】カップ底部に設けられる2つの異なるコーティングについて、新しい端縁シールおよび約6万回の電気メッキサイクルに利用された端縁シールの両方について、クラムシェルのコンタクト領域にウィッキングされた電気メッキ溶液の量を比較するグラフである。
【0026】
【図8B】電気メッキサイクル数の関数として示されるウェハ上の欠陥の数を比較するグラフであり、ウェハには、2つの異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されている。
【0027】
【図8C】ある材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面の欠陥分布を説明するためのウェハオーバレイを示す図である。
【図8D】異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面の欠陥分布を説明するためのウェハオーバレイを示す図である。
【0028】
【図8E】2つの異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの異なるセグメントについて、欠陥密度を比較するグラフである。
【0029】
【図9】コンタクトを有するクラムシェル装置を示す概略図であって、当該コンタクトは、クラムシェル装置の他の構成要素およびウェハに対して、複数の異なる位置に配置されている。
【0030】
【図10A】コンタクトがクラムシェル装置の他の構成要素およびウェハに対して複数の異なる位置に配置されている、クラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの全面の欠陥分布を表すウェハオーバレイを示す図である。
【図10B】コンタクトがクラムシェル装置の他の構成要素およびウェハに対して複数の異なる位置に配置されている、クラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの全面の欠陥分布を表すウェハオーバレイを示す図である。
【0031】
【図11】クラムシェル装置の閉状態および開状態を示す概略図であって、電気コンタクトは、シールを分断する前にウェハの前面から除去されている。
【0032】
【図12A】クラムシェル装置の構成を示す概略図である。
【図12B】クラムシェル装置の構成を示す概略図であり、図12Aと比較すると、シールを分断した後、電気メッキ溶液がコンタクト領域に過剰にウィッキングされないように、電気コンタクトに疎水性コーティングを設けている。
【0033】
【図13】コーン上昇機構およびクラムシェルスピン機構を備えるクラムシェルを示す概略図である。
【0034】
【図14A】スピン期間の長さを2つの異なる値に設定して、クラムシェル開放速度の関数として、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフである。
【0035】
【図14B】プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【0036】
【図15A】プロセス条件を変えてクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面における欠陥分布を表すウェハオーバレイを示す図である。
【図15B】プロセス条件を変えてクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面における欠陥分布を表すウェハオーバレイを示す図である。
【0037】
【図16】プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【0038】
【図17A】プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【図17B】プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【0039】
【図18A】処理されたウェハの数の関数として、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【図18B】処理されたウェハの数の関数として、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、コンタクト領域への電気メッキ溶液のウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【0040】
【図19】端縁シールの構成を変更した場合の、ウィッキングされるリンセートの体積を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の説明では、本発明を詳細に説明するべく、詳細な内容を数多く記載する。本発明は、記載する詳細な内容のうち一部または全てを利用することなく実施されるとしてもよい。また、公知のプロセス処理については、本発明を不必要にあいまいにすることを避けるべく、詳細な説明を省略している。本発明を説明するにあたっては具体的な実施形態を挙げるが、言及される具体的な実施形態に本発明を限定することを示唆するものではないと理解されたい。
【0042】
<序論>
クラムシェルを用いて実行される電気メッキ等のプロセスは、クラムシェルのうち少なくとも底部を電気メッキ溶液に浸漬させることが多い。メッキが完了した後通常は、メッキが施されたウェハをスピンして残っている濃縮電解質の大半を除去し、純水またはその他のリンス液でリンスされる。その後さらに、クラムシェルを再度スピンして、残留しているリンセート(つまり、リンス液に含まれている電気メッキ溶液)を除去するとしてよい。しかし、多少のリンセートが、端縁シールの周辺に蓄積され残ってしまうことがある。端縁シールは、クラムシェルが閉じている場合にシールされたクラムシェルのコンタクト領域にいかなる液体も入り込まないように設けられている。クラムシェルが開かれてシールが分断されると、表面張力によって多少のリンセートがコンタクト領域に移動してしまう場合がある。ウェハの前面およびコンタクトに設けられている銅表面は比較的親水性が高く、このようなリンセートの移動が促進されてしまい、大量のリンセートがコンタクト領域にウィッキングしてしまう。この結果、リンセートは粒子を形成して、コンタクトを損傷させ、さまざまなエッジ関連のメッキ欠陥を発生させてしまうことが多い。
【0043】
「ウィッキング体積」とは、通常の電気メッキサイクル後にコンタクト領域から引き込まれたリンセートの量(例えば、体積、重量等)の測定値である。ウィッキング体積を特定するべく、複数の異なる測定方法を用いるとしてよい。1つの方法として、Kimwipe(キムワイプ)(例えば、Kimetch Science Wipes、白シングル層、4.5"×8.5"、Kimberley−Clark社製)またはその他の同様の吸収性の高い布を用いてクラムシェルの全コンタクト領域をふき取る方法が挙げられる。このような布の重量をふき取りの前後で測定して、重量の増加分を「ウィッキング量」として扱う。他の方法としては、量を制御しつつ溶媒を用いて、コンタクト領域のリンセートを希釈する方法がある。その後、こうして得られた溶液のサンプルを取って分析し(例えば、サンプルの伝導性を測定、質量分析を用いてサンプルの組成を分析、またはその他の任意の適切な分析技術を用いる)、サンプルに含まれるリンセートの量を特定して、最終的にコンタクト領域にあるリンセートの量を得る。
【0044】
ウィッキング量は、ウェハエッジに近接して位置する欠陥の数、例えば、ウェハの最外周10mmに位置している欠陥の数と相関があることが判明している。この領域は、エッジに近い位置ではダイが多く設けられているので、半導体製造において特に重要である。本発明の特定の実施形態によると、ウェハのエッジにおける欠陥の数を大幅に(10分の1の場合もある)減らすことができる。
【0045】
本文献に記載される実施形態のうち一部は、クラムシェル装置の個別の部品、例えば、カップ底部、電気コンタクト、および端縁シールに特定の実施形態である。こういった部品は、クラムシェルメッキ装置に組み込まれた部分として共に供給されるとしてもよいし、または、別々のコンポーネントとして供給されて、設置済みのシステムの故障部品あるいは磨耗部品と交換されるべく利用されるとしてもよいし、または、設置済みのシステムを改造されるべく利用されるとしてもよい。場合によっては、クラムシェル装置の部品は、日常的な保守点検で交換されるとしてもよい。
【0046】
<装置>
図1は、電気化学的に半導体ウェハを処理するためのウェハ保持位置決め装置100を示す斜視図である。装置100は、複数のウェハ係合コンポーネントを備える。ウェハ係合コンポーネントは、「クラムシェル」の構成要素と呼ぶこともあれば、まとめて「クラムシェル」アセンブリまたは「クラムシェル」と呼ぶことがある。クラムシェルアセンブリは、カップ101およびコーン103を有する。図2A以降の図で示すように、カップ101がウェハを保持して、コーン103がカップ内にウェハを確実に固定する。カップおよびコーンの構造は、本明細書において具体的に示す構造以外を用いるとしてもよい。共通している特徴としては、カップにはウェハが設置される内側領域が設けられ、コーンはウェハをカップに対して押圧して所定位置でウェハを保持する点が挙げられる。
【0047】
図示されている実施形態によると、クラムシェルアセンブリ(カップ101およびコーン103)は、支柱104によって支持されており、支柱104は、上側プレート105に接続されている。このアセンブリ(101、103、104および105)は、上側プレート105に接続されているスピンドル106を介してモータ107によって駆動される。モータ107は、実装ブラケット(不図示)に取り付けられている。スピンドル106は、クラムシェルアセンブリにトルクを(モータ107から)伝達させて、メッキ処理においてクラムシェル内に保持されているウェハ(図1では不図示)を回転させる。スピンドル106内の空気シリンダー(不図示)はさらに、カップ101とコーン103とを係合させるための垂直方向の力を与える。クラムシェルが開くと(不図示)、エンドエフェクタアームを有するロボットが、カップ101とコーン103との間にウェハを挿入することができる。ウェハの挿入後、コーン103とカップ101とを係合させて、装置100内でウェハを動かないように固定して、ウェハの前面(被処理面)のみを電解質に対して暴露させる。
【0048】
特定の実施形態によると、クラムシェルは、まき散らされる電解質からコーン103を保護するスプレースカート部109を備える。図示されている実施形態によると、スプレースカート部109は、垂直円周状スリーブと円形キャップ部分とを有する。離間部材110によって、スプレースカート部109とコーン103とは互いから分離されている。
【0049】
説明の便宜上、構成要素101から110を備えるアセンブリを、「ウェハ保持部」111と呼ぶ。しかし、「ウェハ保持部」の概念は通常、ウェハを係合させて、ウェハの移動および位置決めを可能とする複数の構成要素のさまざまなコンビネーションおよびサブコンビネーションにまで拡大されることに留意されたい。
【0050】
傾斜アセンブリ(不図示)をウェハ保持部に接続して、ウェハをメッキ溶液に浸漬させる際に角度をつける(まっすぐ水平に浸漬させる場合と対照的)ことを可能にするとしてよい。一部の実施形態では、駆動機構を用いると共に、プレートおよび旋回ジョイントを配置して、アーチ状の経路(不図示)に沿ってウェハ保持部111を移動させて、その結果ウェハ保持部111の近接端(つまり、カップおよびコーンから成るアセンブリ)を傾斜させる。
【0051】
また、ウェハ保持部111全体は、アクチュエータ(不図示)によって、垂直方向に上方または下方に移動させられて、ウェハ保持部の近接端をメッキ溶液に浸漬させる。このように、2つの構成要素から成る位置決め機構は、ウェハに対して、電解質表面に対して垂直な軌道に沿った垂直移動、および、水平配向(つまり、電解質表面に対して平行)からのずれを可能とする傾斜移動(角度をつけたウェハ浸漬が可能)を共に実現する。
【0052】
尚、ウェハ保持部111は、アノードチャンバ157およびメッキ溶液が内部に収納されているメッキチャンバ117を有するメッキセル115と共に利用される。チャンバ157は、アノード119(例えば、銅から成るアノード)を保持しており、アノード部分およびカソード部分で異なる電解質材料を維持するべく、膜を始めとするセパレータを含むとしてよい。図示されている実施形態では、拡散部153を用いて、回転しているウェハに対して上向きに、前面に均一に、電解質を方向付けている。特定の実施形態によると、流入拡散部は、高抵抗実質アノード(High Resistance Virtual Anode:HRVA)プレートであり、絶縁材料(例えば、プラスチック)の固体片から成り、多数(例えば、4000個から15000個の)一次元状の小孔(直径が0.01インチから0.05インチ)を有し、当該プレートの上に設けられているカソードチャンバに接続されている。これらの孔の総断面積は、総露出面積の約5%未満であるので、メッキセル内で大きな流入抵抗を形成し、システムのメッキ均一性の改善に貢献する。高抵抗実質アノードプレート、および、対応する半導体ウェハ電気化学処理装置は、米国特許出願第12/291,356号(出願日:2008年11月7日)でさらに説明されている。当該出願の内容はすべて、参照により本願に組み込まれる。メッキセルはさらに、異なる電解質流れパターンを制御および形成するための分離膜を有するとしてよい。別の実施形態によると、膜を用いてアノードチャンバを定義する。当該アノードチャンバは、サプレッサ、アクセラレータ等の有機メッキ添加物が実質的に存在しない電解質を含む。
【0053】
メッキセルはさらに、メッキセル内、および、メッキ対象の被処理物に対して、電解質を循環させるための管または管状コンタクトを有するとしてよい。例えば、セル115は、アノード119の中央の穴を通ってアノードチャンバ157の中央にまで垂直に延伸する電解質流入管131を有する。ほかの実施形態によると、セルは、カソードチャンバの外壁(不図示)において拡散部/HRVAプレートの下方にあるカソードチャンバに流体を導入させる電解質流入マニホルドを有する。流入管151は、膜153の両側(アノード側およびカソード側)に出力ノズルを含む場合もある。このような構成とすることによって、アノードチャンバおよびカソードチャンバの両方に電解質を分配する。ほかの実施形態によると、アノードチャンバおよびカソードチャンバは、流れ抵抗膜153によって分離されており、各チャンバでは別の電解質が別の流れを形成している。図1の実施形態に示すように、流入ノズル155によって、膜153のアノード側に電解質が供給されている。
【0054】
さらに、メッキセル115は、リンス排出ライン159およびメッキ溶液再循環ライン161を有し、それぞれのラインは、メッキチャンバ117に直接接続されている。また、リンスノズル163は、リンス用の純水を分配して、通常処理中にウェハおよび/またはカップを洗浄する。メッキ溶液は通常、チャンバ117の大半を充填している。チャンバ117は、撒き散らしおよび泡の生成を抑制するべく、メッキ溶液の再循環用の内側堰165と、リンス用水の再循環用に外側堰167とを有する。図示された実施形態によると、これらの堰は円周に沿った垂直スロットで、メッキチャンバ117の壁面内に設けられている。
【0055】
以下では、特定の実施形態で採用され得るカップアセンブリの特徴および例を説明する。図示されるカップ構成の特定の特徴によって、エッジに対するメッキの均一性が高まると共に、エッジ欠陥が減る。これは、残留電解質/リンセートのエッジ流れ特性が改善され、ウェハの入り口ウェッティングが制御され、端縁シールの気泡が除去されたためである。図2Aは、カップアセンブリ200を示す断面図である。アセンブリ200は、カップの特定の部分を電解質から保護するための端縁シール212を備える。さらに、ウェハの導電素子との間で電気接続を構築するためのコンタクト素子208を備える。カップおよび当該カップの構成要素は、形状が環状であって、ウェハの周縁と係合するようなサイズであるとしてよい(例えば、200mmウェハ、300mmウェハ、450mmウェハ)。
【0056】
カップアセンブリは、カップ底部210を備える。当該カップ底部210は、「ディスク」または「ベースプレート」とも呼ばれ、一連のネジまたはその他の取り付け手段によってシールド構造202に取り付けられるとしてよい。カップ底部210は、カップアセンブリ200のさまざまな構成要素、例えば、シール212、配電バス214(曲線状の電気母線)、電気コンタクト部材ストリップ208、および/または、カップ底部210自体を交換するべく、除去される(つまり、シールド構造202から取り外される)としてよい。コンタクトストリップ208の一部分(通常は、最も外側の部分)が、連続金属ストリップ204と接触しているとしてよい。カップ底部210は、最も内側の周縁にテーパーエッジ216を持つとしてよく、テーパーエッジ216は、エッジの周辺での電解質/リンセートの流れ特性を改善すると共に気泡排除特性を改善するような形状を持つ。カップ底部210は、堅くて耐食性を持つ材料、例えば、ステンレススチール、チタンおよびタンタルといった材料から形成されるとしてよい。閉じられる場合、カップ底部210は、ウェハを介して力が加えられると端縁シール212を支持して、ウェハ浸漬中にクラムシェルに漏れが発生しないようにする。この様子は、図3Aおよび図3Bを参照しつつより詳細に説明する。特定の実施形態によると、端縁シール212およびカップ底部210に対して加えられる力は、少なくとも約200ポンドの力である。閉じる力は、閉鎖圧とも呼ばれるが、クラムシェルの「コーン」アセンブリのウェハ裏面に接触する部分によって加えられる。
【0057】
電気コンタクト部材208は、ウェハの前面に堆積させられる電気コンタクト導電材料である。図2Aおよび図2Bに示すように、コンタクト部材208は、連続金属ストリップ218に取り付けられている多数の個別指状コンタクト220を有する。特定の実施形態によると、コンタクト部材208は、Paliney 7合金から形成される。しかし、その他の適切な材料を用いることも出来る。300mmのウェハ構成に対応する特定の実施形態によると、コンタクト部材208は、ウェハが画定する全円周にわたって等間隔で配置される、少なくとも約300個の個別指状コンタクト220を含む。指状コンタクト220は、切断(例えば、レーザ切断)、機械加工、スタンピング、高精度折り曲げ/屈曲、またはその他の任意の適切な方法を用いて形成されるとしてよい。コンタクト部材208は、連続したリングを形成するとしてよい。この場合、金属ストリップ218が当該リングの外径を定めて、指状コンタクト220の接続されていないほうの端部が内径を定める。尚、この外径および内径は、例えば図2Aに示すように、コンタクト部材208の断面形状に応じて変化することに留意されたい。さらに、指状コンタクト220は、可撓性を有し、ウェハが搭載されると(テーパーエッジ216に向かって)押下されることに留意されたい。例えば、指状コンタクト220は、ウェハがクラムシェルに載置されると自由位置から、異なる中間位置へと移動して、コーンがウェハに対して圧力を加えるとさらに別の位置へと移動する。動作中において、弾性を持つ端縁シール212の端縁212bは、指状コンタクト220の端部の近傍に配置している。例えば、指状コンタクト220は、自由位置にある場合、端縁212bよりも高い位置まで延伸しているとしてよい。特定の実施形態によると、指状コンタクト220は、ウェハがカップ200に載置された場合の中間位置にある場合でも、端縁212bよりも高い位置まで延伸している。言い換えると、ウェハは、指状コンタクト220の端部によって支持されているのであって、端縁212bによって支持されているのではない。ほかの実施形態によると、指状コンタクト220および/または端縁212bは、ウェハがカップ2000に入れられて、端部220および端縁212bが共にウェハと接触すると、屈曲または圧縮される。例えば、端縁212bは、最初は端部よりも高い位置まで延伸しているが、圧縮されて、指状コンタクト220は屈曲および圧縮されて、ウェハと接触するとしてよい。このため、あいまいな記載を避けるべく、本明細書に記載するコンタクト部材208の寸法は、ウェハと端縁シール212との間にシールが構築された場合のものとする。
【0058】
図2Aに戻って、シール212は、端縁シール捕獲リッジ212aを含むものとして図示されている。端縁シール捕獲リッジ212aは、カップ底部210内の溝と係合するように構成されているので、シール212を所望の位置に保持する。このようにリッジと溝とを組み合わせることによって、シール212の設置および交換に際して、シール212を正しい位置に位置決めすることが簡単になると共に、通常利用時および洗浄時において、シール212がずれてしまうことを防ぐ役割も果たし得る。上記以外の適切な係止(係合)部分を利用するとしてよい。
【0059】
シール212はさらに、配電母線214を収容するべくシール212の上面に形成されている溝などの特徴部分を有する。配電母線214は通常、耐食性材料(例えば、ステンレススチール、グレード316)から形成されており、溝の内部に配設されている。一部の実施形態によると、シール212は、ロバスト性を高めるべく、配電母線214に(例えば、接着剤を用いて)結合されているとしてよい。これと同一または異なる実施形態では、コンタクト部材208が、連続金属ストリップ218の周囲で、配電母線214に接続されている。一般的に、配電母線214は、連続金属ストリップ218よりも遥かに厚みが大きいので、母線が電力リード線(不図示)と接触している箇所と、電流がストリップ218および指状コンタクト220から出てウェハに入る任意の方位位置との間におけるオーミック電圧降下を最小限に抑えることによって、配電をより均一にすることができる。
【0060】
図3Aは、クラムシェルを閉じて、ウェハ304と端縁シール212との間にシールを構築する前の、クラムシェルの一部とウェハ304とを示す図である。一部の実施形態によると、ウェハ304はまず、コンタクト部材208、より具体的にはコンタクト端部220に接触するとしてよい。これに代えて、ウェハ304はまず、シール212のシールエッジ212bに接触するとしてもよい。一般的に、ウェハ304が電気メッキ中の最終位置にまで下がる前に、コンタクト端部302はウェハ304の前面(アクティブ面)306と接触する。言い換えると、クラムシェルが閉じられる際にコンタクト端部220はある程度屈曲されて、その結果、前面306と端部220との間には、両者間の電気接触を促進する力が発生する。尚、前面306が最初に端部220に接触する時、または、端縁212bに最初に接触する時に、屈曲されるとしてよい。前面306は通常、導電材料、例えば、銅、ルテニウム、またはルテニウム上に銅を設けたものを、シード層等として、含む。屈曲の程度(または、端部と前面との間に発生する力)は、前面上の材料と端部との間で適切な導電性を実現するように、調整されるとしてよい。
【0061】
図3Bは、クラムシェルを閉じて、ウェハ304とクラムシェルとの間、より具体的には、ウェハ304と端縁シール212との間においてシールを構築した後の、クラムシェルの一部とウェハ304とを示す図である。閉じる際には、カップ308を降下させて、カップ308でウェハ304の裏面を押圧する。このように圧力を加えると、アクティブ面306が、端縁シール212の端縁212bおよびシール端縁212と接触し、接触点の下方に位置する端縁シール212の領域はある程度圧縮され得る。このように圧縮されることで、特に、端縁212bおよび前面306のどちらかの表面に欠陥がある場合でも、端縁212bが全周にわたって確実に前面306と接触するようになる。端縁シール212は通常、圧縮可能材料から形成される。
【0062】
図3Bに示すクラムシェルアセンブリは、ノベラス・システムズ社(Novellus Systems,Inc.、米国カリフォルニア州サン・ホセ)製Sabre(登録商標)電気メッキシステムで利用されるとしてよい。このような新型クラムシェルアセンブリを実装することによって、シーリング(封止)が改善され、ウェハのエッジに捕獲される気泡に関連して発生する欠陥が最小限に抑えられる。さらに、手動での洗浄が簡単にできると同時に、自動洗浄リンス処理および洗浄/エッチング処理(カップ接触リンス(CCR)処理および自動接触エッチング(ACE)処理として知られている)も可能となる。近年、「固体粒子欠陥」の問題が発生することが分かった。どの特定の理論的原理または理論的メカニズムに限定されることなく、エッジにある流体がウェハ/端縁シールエッジ領域からクラムシェルのカップのコンタクト領域へ移動すると、粒子が形成され(例えば、乾燥、結晶化、クラムシェルの構成要素との反応によって)、最終的に固体粒子エッジ欠陥を引き起こすと考えられている。
【0063】
図4は、特定の実施形態に係る電気メッキプロセスを説明するためのフローチャートである。最初の時点において、クラムシェルの端縁シールおよびコンタクト領域は清潔で乾燥しているとしてよい。クラムシェルを開いて(ブロック402)、ウェハをクラムシェル内に搭載する。特定の実施形態によると、コンタクト端部はシール端縁の平面よりもわずかに高い位置に配置されており、ウェハはこの場合、図3Aに示すように、ウェハ周縁の周囲において一連のコンタクト端部によって支持されている。その後、コーン308を下向きに移動させて、クラムシェルを閉じてシールする(ブロック406)。このように閉じる際に、コンタクトは通常屈曲される。さらに、コンタクトの最下方の角部分が、弾性を持つ端縁シールの面に対して押下されて、コンタクト端部とウェハの前面との間にさらに力を発生させるとしてよい。シール端縁は、わずかに圧縮されて、周縁全体にわたってシールが確実に形成されるようにするとしてよい。一部の実施形態によると、ウェハを最初にカップに配置すると、前面と接触するのは端縁シールのみである。本例では、コンタクト端部と前面との間の電気接触は、端縁シールが圧縮されることによって構築される。
【0064】
処理406においてシールおよび電気接触が構築されると、ウェハを担持しているクラムシェルをメッキ浴に浸漬させて、ウェハをクラムシェル内に保持しつつ、メッキ浴でメッキを施す(ブロック408)。この処理で利用される銅メッキ溶液の組成は通常、濃度が約0.5−80g/L、特に約5−60g/L、さらに具体的には約18−55g/Lの範囲の銅イオンと、濃度が約0.1−400g/Lの硫酸とを含む。酸度が低い銅メッキ溶液は通常、約5−10g/Lの硫酸を含む。酸度が中程度および高度の溶液はそれぞれ、約50−90g/Lおよび150−180g/Lの硫酸を含む。塩素イオンの濃度は、約1−100mg/Lであってよい。さまざまな銅メッキ有機添加物、例えば、エンソン・コーポレーション社(Enthone Corporation、コネチカット州、ウェスト・ヘイブン)製のEnthone Viaform、Viaform NexT、Viaform Extreme、またはその他の当業者間では公知のアクセラレータ、サプレッサ、およびレベラを用いるとしてよい。メッキ処理の例は、米国特許出願第11/564,222号(出願日:2006年11月28日)により詳細に記載されている。当該出願の内容は全て、メッキ処理を説明することを目的として、本願に組み込まれる。メッキが完了して、適切な量の材料がウェハの前面に堆積させられると、ウェハをメッキ浴から出す。ウェハおよびクラムシェルをスピンして、表面張力のためにクラムシェル表面に残っている残留電解質の大半を除去する。その後、スピンを継続しつつクラムシェルをリンスして、クラムシェルおよびウェハ表面にある流体をできるだけ多く希釈および洗い流す(ブロック410)。その後、リンス液をしばらくの間、大抵は約2秒間にわたって停止させてウェハをスピンして、残留リンセートを除去する(ブロック412)。
【0065】
しかし、例えば図5の(A)に示されるように、ある程度のリンセート502はウェハの前面306およびクラムシェル(端縁シール212およびテーパーエッジ216)の表面508に残ってしまう。リンセートは表面張力のために残留するが、当該表面張力はクラムシェルをスピンさせた際に発生する力よりも大きい場合がある。クラムシェルのスピン時間を長くしたとしても、ウェハの前面306とシール端縁212(b)との間でシールが形成される角部分に、ある程度のリンセートが残ってしまう場合がある。一般的に、スピンおよび乾燥のために許容される時間は、総合プロセススループットを鑑みて制限されてしまう。
【0066】
図5の(A)、(B)および(C)は、クラムシェル開放動作404のさまざまな段階における、クラムシェルの構成要素および残留リンセート502の相対的な位置を示す図である。残留リンセート502は、クラムシェルをスピンさせた際の遠心力および表面張力によって、前面306と端縁シール212との間の界面の近傍において「ウィッキング」ビーズを形成している。この界面においてリンセートが蓄積されるのは、リンセートがコンタクト領域に入り込んでしまう可能性があるので、非常に好ましくない状況である。クラムシェルを開く際には、閉じられていたコーン308を元に戻す。この結果、ウェハ304およびシールエッジ212(b)に加えられていた下向きの力がなくなり、クラムシェルアセンブリから処理済みのウェハ304を取り出す。この力学的プロセスによって、互いに原因と結果として関連し合う事象が数多く発生する。コーン308が上向きに移動すると、わずかな圧力差が発生し(つまり、ウェハの前面306の圧力がより高くなる)、ウェハ306が効率よく端縁212(b)およびコンタクト端部220から離間する。さらに、圧縮された端縁212(b)に蓄えられているエネルギーが放出されて、端縁212(b)およびコンタクト端部220からウェハ306が上向きに跳ね上がる場合もある。コンタクト208は、屈曲されてウェハの周縁において上向きの力を与えるので、図5の(B)および(C)に示すように、ウェハ304を上向きに移動させて、シール端縁212(b)とウェハ304の前面306との間を離間させるとしてよい。ウェハ304はさらに、メッキ処理中の元々の位置から特定のウェハ取り扱い装置を用いて上昇させられるとしてもよい。当該ウェハ取り扱い装置は、例えば、ウェハをクラムシェルアセンブリから取り外すべく用いられる。どちらの場合でも、クラムシェル開放処理404のある時点において、シール端縁212(b)とウェハ304の前面306との間のシールが分断されて、両者間に間隙が形成される。
【0067】
ウェハ304の上向きの移動は、シール端縁212(b)の形状が(圧縮された状態から圧縮されていない状態へと)変化することと組み合わせられると、ポンプのような作用が発生して、図5の(B)に示すように、前面306とシール端縁212(b)との間の間隙にリンセート504を引き込むと考えられている。上述したようなシールの両側で形成される圧力差および/またはシール端縁212(b)の形状の変化に加えて、表面張力が、例えば、もともとはシールされていたウェハの前面306のうち露出する部分が大きくなることによって、流体を引き込む可能性がある。
【0068】
リンセートは、間隙内を進んでいくと、図5の(C)に示すように、コンタクト領域に到達してコンタクト端部220を濡らしてしまう可能性がある。コンタクトは通常、非常に親水性の高い材料、例えば、Paliney 7から形成されており(そして、リンセートの主要成分は水である)、そして、同様に親水性の高い銅メッキでコーティングされている場合がある。このため、上述したように発生する表面張力によって間隙を通って引き込まれるリンセートの量が増えて、小さなリンセート溜まり506がコンタクトの周囲に形成される場合がある。このリンセート溜まり506はその後、コンタクト領域で再分配されて、乾燥するとリンセートに電解質残留物が含まれるので固体粒子が形成される。開放処理414においてコンタクト領域に形成される各リンセート溜まり506は小さいものだとしても、新しいウェハが搭載される度に開放処理は繰り返し実行されるので、大量のリンセートが蓄積されることになり、コンタクト領域に粒子が形成される。
【0069】
図4に戻って、この時点においてクラムシェルは開いていて、ウェハはクラムシェルから取り外されている(ブロック416)。処理404から416は、未処理ウェハについて複数回繰り返し実行されるとしてよい。このため、コンタクト領域には、メッキサイクルが実行される度に徐々にリンセートを蓄積し続けてしまう。コンタクト領域に蓄積されたリンセートは、時間が経過すると乾燥して、溶解していた金属塩が沈殿すると共に結晶が形成される。
【0070】
コンタクト領域にリンセートが蓄積されることによって生じるほかの問題に、(図6の(A)および(B)を参照しつつ説明すると)表面からエッチングされる金属が堆積することによって、コンタクト端部が徐々に損傷してしまう点が挙げられる。図6の(A)は、電気メッキ処理中の、コンタクト領域に残留リンセートがあるクラムシェルの一部の様子を示す図である。図6の(B)は、電気メッキ処理を行った場合の、システムの異なる構成要素の電圧と、クラムシェル内の位置とを示すグラフである。電流が、コンタクト212によって供給されて、コンタクト端部220によってウェハエッジの周囲において前面306に印加されている。コンタクト内の電圧は、略一定で(ライン610)、コンタクト212の材料のわずかな抵抗によって小さく降下するのみである。電圧降下612が発生しているのは、コンタクト端部212(b)と前面306上のウェハエッジのシード層との間でコンタクト抵抗があるためである。その後、電圧は徐々に上昇して(ライン614が示すように、よりアノードに近くなり)、前面306、例えば、シード層の抵抗のために、接触点からウェハの中央へと内側に向かう。
【0071】
コンタクト領域の電圧勾配616と、イオンを含む残留リンセート506とによって、内部侵食セルが形成される。残留リンセート506は、金属(例えば、ウェハの銅シード)がシール端縁212(b)のかなり近傍において酸化されてしまう「電気化学侵食回路」を完成させてしまい、金属イオンが残留リンセート506に放出されてしまう。イオン電流が、電圧勾配616によって、残留リンセート506を、前面306からコンタクト端部220へと通過する。このイオン電流は、金属粒子620としてメッキされる金属イオンを、コンタクト212へと搬送する。上述した酸化/堆積プロセスは、電圧勾配616が大きくなり、リンセート506に暴露される前面306が大きくなっていくので、コンタクト領域に蓄積されるリンセートが多くなるにつれて、激しくなっていく可能性がある。
【0072】
コンタクト212に堆積される粒子620は通常、コンタクトに対する接着度が低く、電解質の濃度および堆積速度に応じて粉末状または樹枝状となり得る。例えば、イオン電流が大きくて、且つ、溶液が低濃度である場合は通常、堆積物の接着度は低くなり、自由粒子として剥がれ落ちる。コンタクト領域ではさまざまな動作が発生するので(例えば、コンタクト端部の屈曲、シール端縁の圧縮、流体の流れ、クラムシェルの動き、およびその他のプロセス)、自由粒子は、シールエッジ310を超えて移動でき、ウェハ上でさまざまなエッジ欠陥を発生させる。また、リンセート溜まり506によって定められる内部侵食セル内の表面の酸化で形成される銅イオンは、第一銅イオン、つまりCu+(第2銅イオン、つまりCu2+ではなく)を形成する。2つの第一銅イオンは結合することができ(または、不均化によって)、溶液内で銅金属粒子/粉末および第2銅イオンを形成する。このような第1銅イオンの銅元素への還元は急速なプロセスであり、どの種類の基板(金属/導電性基板または非導電性基板)でも発生し得るので、接着度が不良な銅の堆積物が形成されてしまう。電圧差が大きくなるほど、電気メッキ電流が大きくなり、表面層、例えばシード層が薄くなっていくので、形成される粒子の数およびサイズが大きくなっていく。プロセスのスループットを高める上では電流は大きい方が望ましい一方、シード層は回路ラインが小型化するほど薄くなっていくので、上述した理由で発生するエッジ欠陥は、より深刻な問題となる傾向がある。
【0073】
カップ底部210は、カップ底部210に対する侵食およびメッキを防ぐことを目的として、不活性材料、例えば、パリレンによってコーティングされているとしてよい。一般的には、パリレンによって得られる開始コーティングは、ピンホールが無く、カップ底部への接着性が高いので、良好である。しかし、パリレンは、短期間で磨耗して、ある程度の利用期間を経ると剥がれ始める可能性がある。図7Aは、カップ底部702に設けられているパリレンコーティングの写真であり、約5000回から6000回のサイクルを経た後の様子を示す。同図の写真では、カップ底部の内側エッジ(ウェハに最も近い部分)を示す。カップ底部702の一部にはコーティングが依然として残っている。その他の領域では、コーティングは部分的に、接着性を失って透水性を持つようになっている。例えば、領域708を参照されたい。しかしその他の領域では、コーティングは部分的または完全に無くなってしまっている。例えば、領域706では、膜704が表面から剥がれてしまっている。このようにコーティングが損傷していると、カップ底部が侵食されたり、および/または、露出した金属面がメッキされたりする可能性がある。どちらの問題が発生しても自由粒子が形成され、エッジ欠陥の危険性が高くなる。さらに、パリレンは、比較的親水性が高く、シール端縁の近傍で大きいリンセートビーズが形成されるのを防げない。特定の実施形態によると、カップ底部のコーティングは、接着性があり、強固で、耐摩耗性を有し、ピンホールが無く、疎水性が高い。適切な疎水性材料の例を挙げると、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、これらの混合物および共重合体が含まれる。
【0074】
特定の実施形態によると、カップ底部はポリアミドイミド(PAI)膜によってコーティングされている。PAIは、強固で、化学的耐性を有し、且つ熱安定性を有する熱可塑性ポリマーである。さらに、PAIは概して、他のポリマーに比べて疎水性が優れている。以下に示す表では、典型的な電気メッキ溶液についてPAIとパリレンとを比較しているが、純水でも基本浴(Virgin Make−up Solution:VMS)でも、PAIの疎水性が遥かに高い(接触角が大きい)ことが分かる。
【表1】
【0075】
特定の実施形態によると、カップ底部210は、キシランP−92から成る2つの層と、さらにキシラン1010から成る2つの層によってコーティングされる。ほかの実施形態によると、カップ底部は、キシランP−92から成る2つの層と、さらにキシラン1010から成る3つの層によってコーティングされる。これらの材料は共に、ウィットフォード・コーポレーション(Whitford Coeporation、米国ペンシルバニア州、エルバーソン)社製のものを利用する。キシランP−92は主に、PAIポリマーであるが、キシラン1010は、約70%がPAIで約30%がPTFEである。PTFEは、それ自身だけでは非常に疎水性の高いポリマーであるが、接着性および耐磨耗性が非常に低い。ある程度のPTFEを外側の層に含み、主にPAIを内側の層には含むコンポジット膜または共重合体膜によれば、疎水性、接着性、耐磨耗性が良好となる。キシランP−92を用いてコーティングされた平らで均一な膜は、以下に示す表から証拠が挙がっているように、適切な疎水性を持ち得る。
【0076】
特定の実施形態によると、カップのコーティングの厚みの目標値は、約20μmから35μmの範囲内である。堆積するには、適切なポリマーを溶剤に溶解させるとしてよいが、溶解度を高めるべく加熱するとしてもよい。例えば、PTFEおよびPAIについては、nメチルピロリドン(NMP)またはジメチルホルムアミド(DMF)を用いるとしてよい。さらに、PTFEについては、少なくとも約摂氏350度まで加熱されたペルフルオロケロセンを用いるとしてよい。溶解されたポリマーを、ブラシ、スピン、吹き付け等によって塗布して、その後高温で硬化させるとしてよい。その他の適切なコーティング技術を用いて、上述した特性を持つ膜を形成するとしてよい。
【0077】
コーティングが施されたカッププレートは、スパークテストを用いてピンホールの有無について検査されるとしてよい。このスパークテストでは、コーティング全体にわたって90Vの電圧を印加するとしてよい。さらに、各カップ底部のコーティングの厚みをそれぞれ検査して、適切に被覆されていることを確認するとしてよい。その他の試験としては、PAIコーティングを目視および顕微鏡で観察してさまざまな膜特性を確認する外観試験、接着性試験(例えば、テープテスト)、ならびに、カソードとしてPAIコーティングのクーポン、アノードとして銅ストリップ、そして0Vから75Vのランプ電圧を用いて、開路電圧を観察することによって、小さい電気化学テストセルで行われるピンホールテスト等が含まれるとしてよい。
【0078】
カップ底部のコーティングをより疎水性の高いものに交換することによって、図7Bから図7Eを見れば分かるように、シール端縁の近傍に形成されるリンセートビーズが小さくなると共に、開く際にコンタクト領域に移動するリンセートの量を減らすことができるとしてよい。特定の実施形態によると、コンタクト領域には、ほとんどリンセートが移動していない。図7Bおよび図7Cは、カップ底部にはコーティングが設けられていないか、または、疎水性の低いコーティングが設けられている場合のクラムシェルアセンブリの様子を示し、上述した図5の(A)および(C)に略対応する。図7Dに示すようにカップ底部により疎水性の高いコーティング712が設けられると、このコーティングはリンセートをはじくので、シール端縁の近傍に形成されるビーズ714が小さくなる。例えば、このビーズは、参照番号716で示されている端縁シールとテーパーエッジの界面までしか形成されないとしてよい。図7Eに示すようにクラムシェルを開くと、間隙718を通ってコンタクト領域に移動し得るリンセートの量ははるかに少なくなっている。特定の状況では、リンセートビーズは、間隙には入り込む可能性があるが、コンタクトに到達するのに十分な量はない(コンタクトが濡れると発生する表面張力によってさらに引っ張られる)。このため、コンタクト領域に入り込むリンセートの量は非常に少ないか、または略入り込まない。
【0079】
図8Aは、カップ底部に設けられる2つの異なるコーティングについて、新しい端縁シールおよび約6万回の電気メッキサイクルに利用された端縁シールの両方について、クラムシェルのコンタクト領域にウィッキングされた電気メッキ溶液の量を比較するグラフである。同図に示すグラフによると、カップ底部にPAIをコーティングした場合(棒802および806)は、カップ底部にパリレンをコーティングした場合(棒804および808)と比べると、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が少なくなっていることが分かる。PAIのコーティングは、新しい端縁シール(棒802対棒804)および経年劣化した端縁シール(棒806対棒808)のどちらと組み合わせても、高い効果を奏する。
【0080】
経年劣化の程度が異なる端縁シールと組み合わせて複数の異なるコーティングを比較すると、端縁シールが原因の偏りを取り除くことができる。クラムシェルを繰り返し利用すると、端縁シールの表面仕上げ、例えば疎水性コーティングが、変形、低減、磨耗、剥離してしまう。このため、時間が経過して端縁シールが劣化すると、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が増加し得る。図8Aでは、パリレンがカップ底部にコーティングされている新しい端縁シールを利用する場合にコンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量を100%としている。約6万回のサイクルを経た後では、同じ端縁シール(経年劣化後のもの)を用いた場合、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が75%増加した。これに代えて新しい端縁シールにPAIコーティングを設けると、初期ウィッキング量は約10%に過ぎなかった。経年劣化後の端縁シールでは、ウィッキングされるリンセートの量は90%付近になったが、それでもカップ底部にパリレンがコーティングされている真新しい端縁シールの初期性能よりも良好である。さらに、この実験によって、約6万回のサイクル後もPAIコーティングの剥離が観察されないことが分かった。これは、図7Aに示すようなパリレンでコーティングした場合の結果に比べると、顕著な改善点である。概して、PAIコーティングに変更することによって、ウィッキングされるリンセートの量についての許容限界値が小さくなり(このため、エッジ欠陥が抑制され)、および/または、予防的保守の頻度が低くなるという効果を奏することができる。例えば、概算であるが、カップ底部に設けるコーティングをPAIに変更することによって、通常のクラムシェルの予防的保守の頻度を少なくとも半減させることができる。
【0081】
別の実験によると、電解質環境におけるPAIコーティングの浸出性および吸収性を試験した。2つの試験サンプルを用いた。第1のサンプルとしては、P92のコーティングから成る2つの層と、キシラン1010コーティングから成る1つの層とを含むものを用いた。第2のサンプルとしては、キシランP92のコーティングから成る2つの層のみを含むものを用いた。どちらのサンプルも、16日間にわたって、摂氏20度で、40g/Lの銅イオンと、10重量%の硫酸と、50ppmの塩素イオンとを含む通常の銅メッキ溶液に浸した。さらに、パリレンがコーティングされた対照サンプルも用いた。サンプルはすべて、浸す前後で計量した。また、浸漬液体もすべて、抵抗の変化と、溶液中に浸出される電気活性材料の検出とを目的として電流−電圧(サイクリック・ボルタンメトリー)分析を用いて分析した。浸した後、PAIコーティングでは、検出可能な程度の浸出または吸収は全く発生しなかった。これは、パリレンコーティングと比較すると、非常に大きな改善点である。パリレンコーティングの場合は、重量がわずかに増加して、現時点では未確認であるが、小さいサイクリック・ボルタンメトリー・ピークが非常に大きい負の還元電位において観察される。
【0082】
図8Bは、カップ底部のコーティングが異なる2つのクラムシェル装置で実行される電気メッキサイクル数の関数として示されるウェハの欠陥の数を比較するグラフである。ライン810はカップ底部にパリレンがコーティングされたものに対応し、ライン812はPAIがコーティングされたものに対応する。カップ底部にパリレンがコーティングされたものを用いて処理されたウェハは、約1000サイクルが経過すると欠陥率が大きく上昇し始めた。特定の理論に制限されるものではないが、カップ底部にパリレンがコーティングされる場合、パリレンの疎水性が低いためにコンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が大きくなって、カップ底部にPAIがコーティングされる場合にくらべて、はるかに少ないサイクル数で欠陥数が急増したと考えられている。また、パリレンコーティングの場合、このようにサイクルが繰り返されると、ある程度一体性が失われてしまう場合があり、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量が増えて、欠陥が発生じてしまった可能性がある。原因が何であれ、PAIのコーティングを利用することで性能が大きく改善された。カップ底部がパリレンでコーティングされたクラムシェルでは、コンタクトの洗浄または修復が必要になるまでの間に、より多くのウェハを処理することができる。
【0083】
図8Cおよび図8Dは、2つの異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの前面の欠陥分布を説明するための2つのウェハオーバレイを示す図である。各オーバレイの画像は、6枚のウェハの画像を用いて形成された。図8Cは、カップ底部がPAIでコーティングされたもので処理されたウェハの欠陥分布を示す図であり、図8Dはカップ底部がパリレンでコーティングされたもので処理されたウェハの欠陥分布を示す図である。点(例えば、822)はそれぞれ、オーバレイを形成するために用いられた6枚のウェハのうち1枚で生じている欠陥を示すものである。これら2つの図からは、PAIをコーティングした場合の方が、パリレンをコーティングした場合に比べて、欠陥がはるかに少ないことが明らかである。さらに、パリレンをコーティングした場合に発生している欠陥は、ウェハエッジ820の周囲に、塊826のように、集中する傾向にあるが、ウェハエッジ820ではチップ密度も高い。
【0084】
別の試験によると、カップ底部がPAIでコーティングされている場合に製造されるウェハの平均欠陥数は、2000回連続してウェハサイクルを実行した場合、1枚のウェハにつき9.5に過ぎないことが分かった。欠陥の測定は、サイズが少なくとも約0.9nmである欠陥を測定可能なケイ・エル・エー・テンコール(KLA−Tencor,Inc.、米国カリフォルニア州、サン・ホセ)社製のAIT欠陥分析器を用いて行われた。カップ底部がパリレンでコーティングされた場合には、同様に連続して試験的に実行した最初の1250サイクルでは、平均欠陥数が18.6であった。この後のサイクルの欠陥数は、急増して、1枚のウェハ当たり平均欠陥数が237になった。
【0085】
図8Eは、2つの異なる材料でカップ底部がコーティングされたクラムシェル装置で電気メッキが施されたウェハの異なるセグメントについて、欠陥密度を比較するグラフである。欠陥密度は、欠陥分布とも呼ばれるが、各セグメント内の平方インチ当たりの平均欠陥数を意味する。尚、セグメントとは、内径(第1の数によって表される)および外径(第2の数によって表される)を持つリングと定められる。例えば、グラフ上に<0−20>と図示されている第1のセグメントは、直径が200mmである最も内側の円に対応する。最後のセグメント<140−150>は、内径が140mmで外径が150mmの最も外側のリング(300mmのウェハのエッジの周辺)に対応する。カップ底部がPAIでコーティングされたもので処理されたウェハに対応する欠陥は白抜きの棒で示し、カップ底部にパリレンがコーティングされたもので処理されたウェハに対応する欠陥は黒色の棒で示す。図8Cおよび図8Dに示したオーバレイと同様に、図8Eを見れば、カップ底部がパリレンでコーティングされたもので処理されたウェハの方が各セグメントでの欠陥がより多くなっていることと、中央からの距離が140mmおよび150mmで画定されるセグメントに対応する棒830が示すように、エッジ周辺で特に多くなっていることとが分かる(つまり、エッジ欠陥)。
【0086】
図5の(A)から(C)を参照しつつ前述したように、クラムシェルを開ける際には、シール端縁とウェハとの間の間隙を通ってリンセートが移動して、コンタクトに接触して、さらにリンセートをコンタクト領域に引き込む表面張力がさらに発生する。リンセートが間隙を通って進む距離は、ビーズ体積および周囲の材料の表面特性に応じて決まる。ビーズ体積を減らすこと、および/または、カップ底部のコーティングをより疎水性の高い材料へと変更することに加えて、または、代えて、コンタクト端部をシール端縁からより大きく離間させて、コンタクトが濡れないようにするとともに、コンタクト領域にリンセートがさらに広がらないようにするとしてよい。図9の(A)および(B)は、開放動作中の2つの異なるクラムシェル装置を示す概略図であって、これらのクラムシェル装置では、コンタクト端部が、シール端縁から複数の異なる距離で配置されている。具体的には、図9の(B)に示すコンタクト端部は、図9の(A)に示すコンタクト端部よりも、距離D4だけ、シール端縁からより遠くに配置されている。どちらの図でも、端縁シール212の最も外側のエッジ901は、ウェハ304のエッジから距離D1のところに配置される。D1は、ウェハのうち非メッキ領域を示し、デバイス生成には使用不可能な領域である。D1は、約1.0mmから5.0mmの範囲内であるとしてよく、より具体的には約1.0mmから2.0mmの間である。一般的に言って、コンタクト端部とウェハの前面との間の電気接触および当該領域内でのコンタクトの汚染を犠牲にすることなくこの距離は出来る限り短くすることが望ましい。図9の(A)において、接触点302は、最も外側のエッジ901から距離D2の位置に配置されている。距離D2は、約0.3mmから0.8mmの範囲内であるとしてよい。この距離は、残留リンセート502が間隙504を通って、コンタクト208を濡らし、コンタクト506の周囲に液滴が形成される事態を防ぐには十分ではない場合がある(図9の(A)を参照のこと)。尚、コンタクトを乾燥した状態のまま維持するのに必要な最小距離は、残留リンセートビーズの大きさおよび端縁シール212の材料等の、さまざまな要因に応じて変わると留意されたい。図9の(B)において、接触点902は、端縁シール212の最も外側のエッジ901から距離D3の位置で配置されている。距離D3は、約0.8mmから1.6mmの範囲内であってよい。本例によると、コンタクト208は最も外側のエッジ901から十分に離間されており、クラムシェルを開ける際に、ウィッキングされたリンセート504はコンタクトに到達せず、コンタクトを濡らすこともない。このため、コンタクト208の周囲に液滴は形成されない。
【0087】
図10Aおよび図10Bは、コンタクト端部と端縁シールとの間の距離がさまざまに変更されているクラムシェルで、電気メッキが施されたウェハの欠陥分布を表す2つのオーバレイを示す図である。一方のクラムシェルでは、コンタクト端部は、端縁シールのエッジから0.6mmの距離に配置された(図9の(A)および(B)に示す距離D2)。図10Aに示したオーバレイは、このクラムシェルで処理されたウェハに対応する。他方のクラムシェルでは、コンタクト端部は、端縁シールのエッジから1.4mmの距離に配置された。図10Bに示すオーバレイは、この他方のクラムシェルで処理されたウェハに対応する。尚、端縁シールのエッジに対するウェハの位置は(図9の(A)および(B)の距離D1)、どちらのクラムシェルでも同じとした(1.75mm)。概して、コンタクトが端縁シールにより近接して設けられたクラムシェルで処理されたウェハでは、エッジ欠陥が大幅に多く、エッジの近傍に欠陥が非常に集中している。欠陥の種類および走査型電子顕微鏡(SEM)画像を統計的に分析すると、図10Bに示すオーバレイに対応する欠陥は主に、表面の粒子であって穴ではないことが分かった。
【0088】
コンタクト領域に侵入してコンタクトに接触するリンセートがいくらかあったとしても、このリンセートの量は、コンタクトの表面の親水性を低くすることによって、抑制され得る。つまり、リンセートがコンタクトに到達して接触すると、対応する表面エネルギーがリンセートをはじく。特定の実施形態によると、コンタクトは、コンタクト領域からリンセートを除去しやすくするべく、完全に、または、部分的に、疎水性ポリマーコーティングによってコーティングされる。例を挙げると、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはTeflon(登録商標))、エチレン−テトラフルオロエチレン(Tefzel(登録商標))、ポリイミドアミド(PAI)、または、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)がある。図12Aおよび図12Bは、2つのクラムシェル装置の構成を示す同様の概略図である。図12Bでは、シールを分断した後、電気メッキ溶液がコンタクト領域に過剰にウィッキングされないように、電気コンタクトに疎水性コーティングを設けている。図12Aは、上述した図5の(C)と略同じで、参考のために図示されている。図12Aに示す構成では、コンタクトに疎水性コーティングが設けられていないので、リンセート506が比較的大量にコンタクト領域に入り込んでしまっている。図12Bでは、コンタクトのうち、ウェハの前面と接触させる必要があるコンタクト端部302以外の全面に、疎水性ポリマー1202がコーティングされている様子を示している。このようなコンタクト構造を形成する方法の例を挙げると、これに限定されるものではないが、まず最初に、例えば、溶融されたポリマー内で浸漬被覆を行うか、または、溶媒に溶解させられたポリマーをコンタクトに対して噴射して、溶媒を乾燥させることによって、コンタクト素子(例えば、指状コンタクト)全体にコーティングを施す方法が含まれる。その後、このコーティングを、物理的研磨または端部の溶媒への暴露を選択的に実行することによって、選択的にコンタクト端部領域302から除去する。図示されていない特定の実施形態によると、コンタクト全体を導電性ポリマーコーティングでコーティングするとしてもよい。
【0089】
開放処理においてシールが分断されると、リンセートがコンタクト領域に引き込まれるが、これは通常、ウェハの前面の親水性によって発生する表面張力が原因である。例えば、ウェハの前面は通常銅シード層であって、リンセートによって濡れると、リンセートが前面に広がってしまう。こうなると、図5の(B)および(C)を参照しつつ説明したように、リンセートが、開放処理中においてウェハの前面と接触している電気コンタクト端部に到達する可能性がある(コンタクト端部は通常、端縁シールよりも高い位置まで延伸しており、シールが分断された後も前面と接触し続ける場合がある)。シールが分断される前、または、少なくとも十分な量のリンセートがコンタクト領域に入り込む前に、コンタクト端部が前面から離れると、端部が濡れてしまう事態は避けられるか、または、最小限に抑えられ得る。図11の(A)および(B)は、クラムシェル装置を開ける際に、コンタクト端部が前面から退避させられる、クラムシェル装置の構造を示す概略図である。図11は、クラムシェルを開閉中に、ウェハの前面に対して、コンタクト端部の位置を動的に移動可能な方法の具体例を示す。図11の(A)は、クラムシェル装置が閉じた状態を示し、図11の(B)は同じクラムシェル装置が開いた状態を示す。開いた状態では、端縁シールと前面との間のシールが分断される前、または分断されている途中の時点において、電気コンタクトがウェハの前面から離されている。図11の(A)に示すように、閉じたクラムシェルにおいて、接触点302は、コーン308の動作、コンタクト208の屈曲部1104、および端縁シール212の支点1102によって発生する上向きの力を受けている。コーン308によってコンタクト208に対して加えられる力によって、コンタクト208は屈曲する。支点1102は、コーンの下向きの移動を屈曲部1104においてコンタクト端部220を上向きに移動させる力に変換するレバーのサポートとして機能する。図11の(B)に示すようにクラムシェルを開けると、コーン308が引き上げられて、コンタクト208に対して加えられていた圧力がなくなる。コンタクト208は真っ直ぐになって、接触点220がウェハ表面306から離れる。コンタクト端部220は、ウェハ表面306から離れるように下向きに(図11の(B)に距離L1として示す)、且つ、端縁シール212の最も外側のエッジ901から離れるように(図11の(B)に距離L2として示す)移動するとしてよい。一部の実施形態によると、コンタクト端部220はこれらの2つの方向のうち一方の方向のみに移動するとしてよい。コンタクト端部220を元々の位置から移動させると、リンセートによってコンタクト端部が濡れてしまうことはなくなり、コンタクト領域に蓄積されるリンセートが最小限に抑えられる(または、なくなる)としてよい。
【0090】
図13は、特定の実施形態に係るクラムシェル装置1300を示す概略図である。装置1300は、クラムシェル(構成要素202、204、210、212、214、306、308等)を回転させるモータ107と、クラムシェル装置内でコーン308を上昇させるための空気シリンダーを有するシャフト106とを備えるとしてよい。モータ107およびシャフト106は、図1を参照しつつ詳細に説明されている。モータ107および空気シリンダーの動作は、システムコントローラ1302によって制御されるとしてよい。特定の実施形態によると、システムコントローラ1302を用いて、銅堆積、ウェハの挿入および取出などの処理の条件を制御する。コントローラ1302は、1以上のメモリデバイスおよび1以上のプロセッサを有するとしてよく、CPUまたはコンピュータ、アナログおよび/またはデジタルの入出力接続、ステッパ・モータ・コントローラ・ボードを含むとしてよい。
【0091】
特定の実施形態によると、コントローラ1302は、堆積装置の動作をすべて制御するとしてよい。システムコントローラ1302は、タイミング、回転速度、上昇速度等の処理パラメータを制御するための命令列を含むシステム制御ソフトウェアを実行する。一部の実施形態では、コントローラと対応付けてメモリデバイスに記憶されているその他のコンピュータプログラムおよび命令を利用するとしてよい。
【0092】
通常、コントローラ1302に対応付けてユーザインターフェースが設けられている。ユーザインターフェースは、ディスプレイスクリーン、装置および/またはプロセスの条件のグラフィカルソフトウェアによる表示、および、ポインティングデバイス、キーボード、タッチスクリーン、マイクロフォン等のユーザ入力デバイスを含むとしてよい。
【0093】
電気メッキプロセスを制御するためのコンピュータプログラムコードは、従来のコンピュータ読み取り可能プログラミング言語のうちいずれの言語で記述されているとしてもよい。例えば、アセンブリ言語、C言語、C++言語、パスカル、フォートラン等がある。コンパイルされたオブジェクトコードまたはスクリプトは、プロセッサによって実行されて、プログラムで特定されるタスクを実施する。プロセスを監視するための信号は、システムコントローラが有するアナログおよび/またはデジタルの入力接続部によって与えられるとしてよい。プロセスを制御するための信号は、堆積装置のアナログおよびデジタルの出力接続部から出力される。
【0094】
システムソフトウェアの設計または設定は、さまざまに異なるとしてよい。例えば、装置のさまざまな構成要素のサブルーチンまたは制御オブジェクトが、本発明に係る電気メッキプロセスを実行するために必要な装置の構成要素の動作を制御するべく記述されるとしてよい。この目的を実現するためのプログラムまたはプログラム部分の例には、ウェハコード、スピン速度制御コード、上昇スピード制御コード、等のコードが含まれる。一実施形態によると、コントローラ1302は、部分的に製造される集積回路の導電ラインを電気メッキによって形成するための命令を含む。
【0095】
クラムシェル開放速度(つまり、コーンをカップ底部から離す速度、この動作は、カップ/コーン・クラムシェルアセンブリからウェハを取り出すために必要なシーケンスに含まれる一段階である)は、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートおよびエッジ欠陥に対して影響を与えることが分かっている。特定のモデルまたは理論に制限されることなく、開放速度が遅くなると、コンタクト領域での吸着が少なくなり、ウィッキングされる量が減ると考えられている。しかし、開放速度をさらに遅くすると、ウィッキング体積が増加してしまう。これは、カップから取り出されるべくウェハが待機状態にある場合に毛管現象が発生するためである。図14Aは、スピン期間の長さを2つの異なる値に設定して、開放速度の関数として、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの体積を正規化して示すグラフである。どちらのテストでも、2秒(ライン1402)または4秒(ライン1404)の場合でも、スピン回転速度は600rpmに固定された。下方に位置している扇形噴射ノズルから1分当たり1.5リットルの速度でウェハ面に供給される(総供給体積は約50ml)純水による2秒間のリンスの後で、スピンを行った。リンセートの大半は、スピンによってウェハから除去されて、ウェハの下方に位置しているメッキ浴の濃度を低くしないように別の収容領域に運ばれる。図5の(A)を参照しつつ説明したように、ウェハの表面およびクラムシェルのうち端縁シールの近傍のエッジ領域にはいくらか流体が残る。スピン時間を長くすると(ライン1404)、前面と端縁シールとの界面からコンタクト領域にウィッキングされる流体の量が減る。4秒間のスピン(ライン1404)は、端縁シールの周縁エッジにおいてウィッキングされ得る量が幾分少なくなる可能性があるが、開放速度とウィッキングとの相関関係が弱くなっているように見え、ハードウェアのバラツキによる影響が最小限に抑えられている。しかし、スピン時間が長くなると製品スループットが下がるので、スピン時間を短くして開放速度を最適化することが好ましいとしてよい。図14Aに示すグラフによると、開放速度の最適値は約3秒から4秒の間であることが分かる。尚、開放速度はすべて、特定の実施形態ではクラムシェルを開く際にコーンが移動する総距離に等しい、約2.25インチ(または5.7センチメートル)の距離について特定されている。このため、1.7秒と表されている開放速度は実際には、毎秒3.3センチメートルという速度に等しくなり、3.5秒と表現されている開放速度は実際には、毎秒1.6センチメートルという速度に等しくなる。その他も同様である。例えば、2.5秒から3秒に開放速度を遅くすると、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量は、約20%低減され得る。開放処理を遅くするとスループットに悪影響が出るが、この影響は、例えば、同様の効果を得るべくスピン時間を長くすることに比べると、深刻な影響ではないと考えられている。
【0096】
図14Bは、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、リンセートのウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。このグラフからは、装置およびプロセスを調整することによってウィッキングを最小限に抑えることが出来ることがわかる。例えば、開放処理を1.7秒から4秒に遅くして、スピン乾燥時間を2秒から3秒に長くすると、ウィッキングは約30%低減され得る(棒1406と棒1408とを比較)。処理パラメータを今までとは異ならせて(開放速度を遅くして、乾燥時間を長くする)、カップ底部のコーティングをPAIにすると、大幅な改善が見られた(棒1410)。ウィッキングされたリンセートの量は、さらに50%減少した。より高い効果が得られるのは、従来のコンタクトの代わりに新型コンタクトをシールからさらに距離を大きくして設ける場合であった(棒1412)。
【0097】
図15Aおよび図15Bは、異なるプロセス条件を用いて電気メッキされたウェハの欠陥分布を示すウェハオーバレイを示す図である。図15Aに示すオーバレイは、開放処理が約2.5秒で行われ、乾燥期間が600RPM且つ約2秒で行われるプロセスに対応する。図15Bに示すオーバレイは、開放動作が約3.0秒で行われ、乾燥期間が600RPM且つ約4秒で行われるプロセスに対応する。図15Bに示すオーバレイの方が、欠陥がはるかに少なく、上述したようにプロセスパラメータを今までとは異なる値に設定するとウェハ品質が改善され得ることが分かった。同図に示す結果は、図14B(棒1406および棒1408)に示した結果と対応する。
【0098】
図16は、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、リンセートのウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。第1の棒1602は、クラムシェルが開放される前に4秒間スピンされ、カップ底部がPAIでコーティングされたもので実行されたテストに対応する。このように改善要因を組み合わせると、ウィッキング量が対照サンプル(棒1608)の5%に過ぎないという最良の結果が得られた。尚、対照サンプルとは、カップ底部がパリレンでコーティングされ、スピンは2秒間しか行われなかった。また、カップ底部がPAIでコーティングされて、スピンが2秒間行われた場合の結果(棒1606)と、カップ底部にパリレンがコーティングされてスピンが4秒間行われた場合の結果とを比較すると、一部の実施形態では、カップ底部のコーティングがスピン時間よりも影響が大きいことが明らかとなっている。概して、同図に示すグラフによると、カップ底部をPAIでコーティングすることと、スピン時間を4秒間とすることとを組み合わせると(1602)、試験したサンプルの中では、ウィッキング量が最も少なくなることが分かる。
【0099】
図17Aは、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、リンセートのウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。全てのテストにおいて、同じ構成の端縁シールが用いられた。具体的には、シール端縁のエッジが、ウェハのエッジから約1.75mmの距離で配置されている(つまり、図9の(A)および(B)に示す、距離D1が1.75mmである)。つまり、「1.75mm端縁シール」となる。このような端縁シールと、2種類の異なるコンタクトを組み合わせた。一方の種類は、1.75mmコンタクト(棒1702、1704、および1706)であって、上述したような構成の端縁シールと共に用いられるように構成された(上述したように1.75mmの間隙が設けられる)。この端縁シールと共に用いて、1.75mmコンタクトの端部を、シール端縁のエッジから約0.4mmだけ離間させた(図9の(A)および(B)に示す距離D2)。別の種類のコンタクトは、1.00mmコンタクト(棒1708および1710)であって、ウェハのエッジから1.00mmのみ離間させるシール端縁の端縁シールと共に用いられるように設計された。このため、1.00mmコンタクトは、1.75mmコンタクトよりも、コンタクト端部がウェハのエッジにより近く配置されている。1.00mmコンタクトが1.75mmウェハと共に用いられると、1.00mmコンタクトの端部は、シール端縁のエッジから約1.4mmにわたって離間された(図9の(A)および(B)に示す距離D2)。この距離は、1.75mmコンタクト/1.75mm端縁シールの組み合わせよりも、約1.0mm長い。
【0100】
対照サンプル(棒1702)は、1.75mmコンタクトを備えるクラムシェルで、乾燥時間を2秒間、開放時間を1.7秒として行ったテストに対応する。その他のパラメータを同じ値にしたまま開放時間を3.5秒に延長すると、ウィッキングされるリンセートは25%減少した(棒1704)。また、乾燥時間を延長した場合もわずかに減少が見られた(棒1706)。1.00mmコンタクトを用いて、乾燥時間を3.5秒とすると、80%以上の減少が達成された(棒1708)。しかし、4秒に延長すると、ウィッキングされる量をさらに減らすことができた。まとめると、開放速度を遅くして、乾燥時間を長くして、コンタクトの端部とシール端縁との間の距離を大きくすると、最良の結果が得られた。一部のパラメータ、例えば、異なるコンタクト構造等は、他のパラメータに比べると影響力が大きいと考えられる一方、さまざまなパラメータ、例えば、乾燥時間の延長と1mmコンタクトの利用とを組み合わせると相乗効果が見られた(例えば、棒1704および176と、棒1708および1710を比較されたい)。
【0101】
図17Bは、乾燥時間およびカップ底部コーティングをさまざまに変更した場合の、リンセートのウィッキング量を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。対照サンプル(棒1712)は、カップ底部にパリレンがコーティングされたクラムシェルで、乾燥時間を2秒間として行われたテストに対応する。乾燥時間を4秒間に延長すると、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートが約25%低減された。しかし、カップ底部のコーティングをPAIに変更して乾燥時間を4秒間とすると、ウィッキングが約85%低減された。
【0102】
図18Aおよび図18Bは、処理されたウェハの数の関数として、プロセス条件およびクラムシェル構成をさまざまに変更した場合の、プロセス欠陥を示すグラフであり、比較を目的としている。ライン1802は、上述したような1.75mmカップおよび端縁シールにおいて1.75mmコンタクトを用いて(つまり、D1=1.75mm、D2=0.4mm、図9の(A)および(B)を参照されたい)、スピン時間は2秒間、開放時間は1.7秒とした場合に対応する。ライン1804は、1.75mmカップおよび端縁シールにおいて1.00mmコンタクトを用いて(つまり、D1=1.75mm、D2=1.4mm)、スピン時間は4秒間、開放時間は3.5秒とした場合に対応する。後者のようなクラムシェル構成およびプロセス条件を利用すると、予防的保守管理を必要とすることなく2250回以上の電気メッキサイクルを実行することができる一方、前者のようなクラムシェル構成およびプロセス条件を利用すると、約500回のサイクルが経過すると欠陥数が急増した。
【0103】
自動接触エッチング(ACE)は、カップ/コーンが開いた状態のクラムシェルのカップ底部をツールのメッキ浴に、周期的に、且つ、トリガおよび制御された方法で、浸漬させるプロセスである。このようにして、コンタクトが電解質に暴露され、メッキされた金属を「エッチング」によって除去する。エッチング終了後、クラムシェルは、依然として開いた状態にあって、カップ底部およびアセンブリの残りの部分から電解質を除去するべくスピンされている間、リンセートがクラムシェルに対して噴射される。このように自動的に実行される手順は、カップ底部のエッジ領域を「清潔」な状態、つまり、粒子が無い状態に維持および修復する上で、効果的であることが分かっている。当該ACEプロセスは、長時間にわたり、メッキ浴に水分が追加されてしまうという望ましくない事態が発生し得るので、利用は慎重にすべきである。
【0104】
ライン1806および1808は、端縁シールのエッジとシール端縁のエッジとの間(距離D1)が1mmのみ離間させられている一方、コンタクト端部とシール端縁エッジとの間の距離(距離D2)は0.75mmであるカップを用いて、間に自動接触エッチング(ACE)を行わない場合、および、行う場合の連続的電気メッキ循環処理に対応する。このような構成のカップを用いる場合、ウェハのエッジには、コンタクトを端縁シールから所望の値だけ移動させる十分な空間はない(例えば、上述したように、1.00mmコンタクトと1.75mm端縁シールとを組み合わせた場合の約1.3mmよりも大きい値)。この場合、途中でACEが利用されなければ、500枚のウェハを処理すると、それ以降ウェハの欠陥数が急増する(ライン1806)。しかし、200回のサイクル毎にACEが実行されると、3000回以上のウェハメッキサイクルが、粒子数を大きく増加させることなく、実行された(ライン1808)。このため、自動的に且つ繰り返し実行される接触エッチングによって、コンタクト端部が端縁シール領域から移動または離間するための余地が十分にない場合でも、欠陥を低減させることができる。
【0105】
特定の実施形態によると、端縁シールは、コンタクト領域にウィッキングされるリンセートの量を最小限に抑えるべく疎水性コーティングによってコーティングされている。疎水性コーティングは、端縁シールの全面にわたって塗布されているとしてもよいし、または、シール端縁の周囲にのみ塗布されるとしてもよい。疎水性コーティングは、乾燥後にシール端縁の近傍に蓄積されるリンセートを最小限に抑え、開放動作中にコンタクト領域に侵入するリンセートを低減するとしてよい。図19は、端縁シールの構成を変更した場合の、ウィッキングされるリンセートの体積を正規化して示すグラフであり、比較を目的としている。ベースライン(棒1906)は、コーティングされていない端縁シールを備えるクラムシェルに対応する。棒1902および1904は、コーティングされた端縁シールを備えるクラムシェルに対応し、ウィッキングされる堆積が少なくとも80%低減されることを示している。
【0106】
<結論>
上記では明瞭に説明するという目的のためにある程度まで詳細に本発明を記載したが、本願請求項が定義する範囲内で、上述の記載内容を変更および変形し得ることは明らかである。尚、本発明に係るプロセス、システムおよび装置を実装する方法は上記以外にも数多くあることに留意されたい。したがって、上述した実施形態は、本発明を限定するものではなく説明するためのものと解釈されるべきであり、本発明は本明細書に記載した詳細な内容に限定されない。
【0107】
本明細書において引用した参考文献の内容は全て、参照により本願に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気メッキ中に半導体ウェハを保持すると共に電気メッキ溶液を電気コンタクトに到達させないように構成されているカップにおいて利用されるベースプレートであって、
リング状本体と、
前記リング状本体から内向きに延伸し、エラストマー端縁シールを支持しているナイフ状突起と、
少なくとも前記ナイフ状突起を被覆している疎水性コーティングと
を備え、
前記エラストマー端縁シールは、前記半導体ウェハと係合し、前記電気メッキ溶液が前記電気コンタクトに到達しないようにする
ベースプレート。
【請求項2】
前記疎水性コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および、これらの共重合体から成る群から選択される1以上の材料を含む請求項1に記載のベースプレート。
【請求項3】
前記疎水性コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)を含む請求項1に記載のベースプレート。
【請求項4】
前記疎水性コーティングはさらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む請求項3に記載のベースプレート。
【請求項5】
前記疎水性コーティングは、スプレーコーティング法を用いて塗布される請求項1に記載のベースプレート。
【請求項6】
前記疎水性コーティングは、少なくとも前記ナイフ状突起に、キシランP−92を少なくとも一層スプレーすることによって、塗布される請求項5に記載のベースプレート。
【請求項7】
前記疎水性コーティングは、キシランP−92の前記層の上にキシラン1010を少なくとも一層スプレーすることによって、塗布される請求項6に記載のベースプレート。
【請求項8】
前記疎水性コーティングの厚みは、約20μmから35μmの間である請求項1に記載のベースプレート。
【請求項9】
前記疎水性コーティングは、90Vのスパークテストに合格する請求項1に記載のベースプレート。
【請求項10】
前記疎水性コーティングによる前記電解質溶液の浸出または吸収は、検出可能な量ではない請求項1に記載のベースプレート。
【請求項11】
前記リング状本体および前記ナイフ状突起は、ステンレススチール、チタン、およびタンタルから成る群から選択される1以上の材料を含む請求項1に記載のベースプレート。
【請求項12】
前記リング状本体は、電気メッキ装置のシールド構造に対して取り外し可能に取り付けられる請求項1に記載のベースプレート。
【請求項13】
前記ナイフ状突起は、少なくとも約200ポンドの力を支持する請求項1に記載のベースプレート。
【請求項14】
NovellusのSabre(登録商標)電気メッキシステムにおいて利用される請求項1に記載のベースプレート。
【請求項15】
前記リング状本体は、端縁シールのリッジと係合する溝を有する請求項1に記載のベースプレート。
【請求項16】
カップで利用されるコンタクトリングであって、前記カップは、電気メッキ中に半導体ウェハを保持すると共に前記コンタクトリングにメッキ溶液を接触させないように構成されており、前記コンタクトリングは電気メッキ中に前記半導体ウェハに電流を供給し、前記コンタクトリングは、
前記カップのほかの構成要素と係合するようにサイズおよび形状が決定されている単一のリング状本体と、
前記単一のリング状本体に取り付けられ、前記単一のリング状本体から内向きに延伸している複数の指状コンタクトと
を備え、
前記複数の指状コンタクトは、お互いから離間させて斜めに設けられており、各指状コンタクトは、前記半導体ウェハの外側エッジから約1mm未満の箇所で、前記半導体ウェハに接触するように配置されているコンタクトリング。
【請求項17】
前記リング状本体および前記複数の指状コンタクトは、Paliney 7を含む請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項18】
前記複数の指状コンタクトは、略V字形の形状を持ち、前記単一のリング状本体によって画定される平面から下向きに延伸した後、前記半導体ウェハと接触する遠位ポイントまで上向きに延伸する請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項19】
前記複数の指状コンタクトは、少なくとも約300個の指状コンタクトを有する請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項20】
前記複数の指状コンタクトは、電気メッキ中に前記半導体ウェハによって加えられる力で屈曲する請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項21】
前記複数の指状コンタクトのそれぞれの少なくとも一部分は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびこれらの共重合体から成る群から選択される1以上の疎水性ポリマーによってコーティングされている請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項22】
カップで利用される端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリであって、前記カップは、電気メッキ中に半導体ウェハを保持すると共に前記半導体ウェハの周縁領域からメッキ溶液を排除するように構成されており、前記端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリは、電気メッキ中に、前記半導体ウェハに電流を供給し、前記端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリは、
前記半導体ウェハと係合して、前記メッキ溶液を前記半導体ウェハの前記周縁領域から排除するリング状エラストマー端縁シールと、
単一のリング状本体および複数の指状コンタクトを有するコンタクトリングと
を備え、
前記リング状エラストマー端縁シールの内径は、前記メッキ溶液を排除するための外周を画定し、
前記複数の指状コンタクトは、前記リング状本体に取り付けられ、前記リング状本体から内向きに延伸し、お互いから離間して斜めに設けられ、各指状コンタクトは、前記端縁シールの内径から少なくとも約1mmの箇所において、前記半導体ウェハと係合するように配置されている
端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項23】
前記複数の指状コンタクトはそれぞれ、略V字形の形状を持ち、前記単一のリング状本体によって画定される平面から下向きに延伸した後、前記リング状エラストマー端縁シールが前記半導体ウェハと係合する平面より高い位置の遠位ポイントまで上向きに延伸する請求項22に記載の端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項24】
前記リング状エラストマー端縁シールは、疎水性コーティングを有する請求項22に記載の端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項25】
前記リング状エラストマー端縁シールは、分配バスを収容する溝を有する請求項22に記載の端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項26】
前記リング状エラストマー端縁シールのうち前記半導体ウェハと係合する部分は、前記係合が維持されている間、圧縮される請求項22に記載の端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項27】
電気メッキ中に半導体ウェハを保持する電気メッキ装置であって、前記電気メッキ装置の所与の部分は、メッキ溶液が接触しないようになっており、前記電気メッキ装置は、
前記半導体ウェハを支持し、ベースプレートを有するカップと、
前記半導体ウェハに力を加えて、エラストマーシールに対して前記半導体ウェハを押圧するコーンと、
前記カップに対して相対的に前記コーンを移動させ、前記コーンを介して前記半導体ウェハに力を加え、前記カップの前記エラストマーシールで前記半導体ウェハをシールして、前記カップおよび前記コーンを回転させるシャフトと
を備え、
前記ベースプレートは、
リング状本体と、
前記リング状本体から内向きに延伸し、前記エラストマー端縁シールを支持するナイフ状突起と、
少なくとも前記ナイフ状突起を被覆している疎水性コーティングと
を有し、
前記エラストマー端縁シールは、前記半導体ウェハと係合し、前記電気メッキ溶液が前記電気コンタクトに到達しないようにする電気メッキ装置。
【請求項28】
命令を有するコントローラ
をさらに備え、
前記命令は、
前記半導体ウェハを前記カップ上に位置決めして、
前記コーンを前記半導体ウェハまで降下させて、前記半導体ウェハの裏面に力を加えて、前記カップの端縁シールと前記半導体ウェハの前面との間にシールを構築して、
前記半導体ウェハの前記前面の少なくとも一部分を電気メッキ溶液内に浸漬させて、前記半導体ウェハの前記前面に対して電気メッキを実行して、
前記コーンを上昇させて、前記半導体ウェハの前記裏面に前記力を加えるのを停止させるための命令であり、
前記上昇は、少なくとも2秒間にわたって実行される請求項27に記載の電気メッキ装置。
【請求項29】
カップおよびコーンを備える装置で半導体ウェハに電気メッキを行う方法であって、
前記半導体ウェハを前記カップ上に位置決めする段階と、
前記コーンを前記半導体ウェハまで降下させて、前記半導体ウェハの裏面に力を加えて、前記カップの端縁シールと前記半導体ウェハの前面との間にシールを構築する段階と、
前記半導体ウェハの前記前面の少なくとも一部分を電気メッキ溶液内に浸漬させて、前記半導体ウェハの前記前面に対して電気メッキを実行する段階と、
前記コーンを上昇させて、前記半導体ウェハの前記裏面に前記力を加えるのを停止する段階と
を備え、
前記上昇は、少なくとも2秒間にわたって実行される方法。
【請求項30】
前記コーンの上昇に先立って、少なくとも約3秒間にわたって、前記半導体ウェハを回転させる段階をさらに備える、請求項29に記載の方法。
【請求項1】
電気メッキ中に半導体ウェハを保持すると共に電気メッキ溶液を電気コンタクトに到達させないように構成されているカップにおいて利用されるベースプレートであって、
リング状本体と、
前記リング状本体から内向きに延伸し、エラストマー端縁シールを支持しているナイフ状突起と、
少なくとも前記ナイフ状突起を被覆している疎水性コーティングと
を備え、
前記エラストマー端縁シールは、前記半導体ウェハと係合し、前記電気メッキ溶液が前記電気コンタクトに到達しないようにする
ベースプレート。
【請求項2】
前記疎水性コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および、これらの共重合体から成る群から選択される1以上の材料を含む請求項1に記載のベースプレート。
【請求項3】
前記疎水性コーティングは、ポリアミドイミド(PAI)を含む請求項1に記載のベースプレート。
【請求項4】
前記疎水性コーティングはさらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む請求項3に記載のベースプレート。
【請求項5】
前記疎水性コーティングは、スプレーコーティング法を用いて塗布される請求項1に記載のベースプレート。
【請求項6】
前記疎水性コーティングは、少なくとも前記ナイフ状突起に、キシランP−92を少なくとも一層スプレーすることによって、塗布される請求項5に記載のベースプレート。
【請求項7】
前記疎水性コーティングは、キシランP−92の前記層の上にキシラン1010を少なくとも一層スプレーすることによって、塗布される請求項6に記載のベースプレート。
【請求項8】
前記疎水性コーティングの厚みは、約20μmから35μmの間である請求項1に記載のベースプレート。
【請求項9】
前記疎水性コーティングは、90Vのスパークテストに合格する請求項1に記載のベースプレート。
【請求項10】
前記疎水性コーティングによる前記電解質溶液の浸出または吸収は、検出可能な量ではない請求項1に記載のベースプレート。
【請求項11】
前記リング状本体および前記ナイフ状突起は、ステンレススチール、チタン、およびタンタルから成る群から選択される1以上の材料を含む請求項1に記載のベースプレート。
【請求項12】
前記リング状本体は、電気メッキ装置のシールド構造に対して取り外し可能に取り付けられる請求項1に記載のベースプレート。
【請求項13】
前記ナイフ状突起は、少なくとも約200ポンドの力を支持する請求項1に記載のベースプレート。
【請求項14】
NovellusのSabre(登録商標)電気メッキシステムにおいて利用される請求項1に記載のベースプレート。
【請求項15】
前記リング状本体は、端縁シールのリッジと係合する溝を有する請求項1に記載のベースプレート。
【請求項16】
カップで利用されるコンタクトリングであって、前記カップは、電気メッキ中に半導体ウェハを保持すると共に前記コンタクトリングにメッキ溶液を接触させないように構成されており、前記コンタクトリングは電気メッキ中に前記半導体ウェハに電流を供給し、前記コンタクトリングは、
前記カップのほかの構成要素と係合するようにサイズおよび形状が決定されている単一のリング状本体と、
前記単一のリング状本体に取り付けられ、前記単一のリング状本体から内向きに延伸している複数の指状コンタクトと
を備え、
前記複数の指状コンタクトは、お互いから離間させて斜めに設けられており、各指状コンタクトは、前記半導体ウェハの外側エッジから約1mm未満の箇所で、前記半導体ウェハに接触するように配置されているコンタクトリング。
【請求項17】
前記リング状本体および前記複数の指状コンタクトは、Paliney 7を含む請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項18】
前記複数の指状コンタクトは、略V字形の形状を持ち、前記単一のリング状本体によって画定される平面から下向きに延伸した後、前記半導体ウェハと接触する遠位ポイントまで上向きに延伸する請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項19】
前記複数の指状コンタクトは、少なくとも約300個の指状コンタクトを有する請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項20】
前記複数の指状コンタクトは、電気メッキ中に前記半導体ウェハによって加えられる力で屈曲する請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項21】
前記複数の指状コンタクトのそれぞれの少なくとも一部分は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびこれらの共重合体から成る群から選択される1以上の疎水性ポリマーによってコーティングされている請求項16に記載のコンタクトリング。
【請求項22】
カップで利用される端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリであって、前記カップは、電気メッキ中に半導体ウェハを保持すると共に前記半導体ウェハの周縁領域からメッキ溶液を排除するように構成されており、前記端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリは、電気メッキ中に、前記半導体ウェハに電流を供給し、前記端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリは、
前記半導体ウェハと係合して、前記メッキ溶液を前記半導体ウェハの前記周縁領域から排除するリング状エラストマー端縁シールと、
単一のリング状本体および複数の指状コンタクトを有するコンタクトリングと
を備え、
前記リング状エラストマー端縁シールの内径は、前記メッキ溶液を排除するための外周を画定し、
前記複数の指状コンタクトは、前記リング状本体に取り付けられ、前記リング状本体から内向きに延伸し、お互いから離間して斜めに設けられ、各指状コンタクトは、前記端縁シールの内径から少なくとも約1mmの箇所において、前記半導体ウェハと係合するように配置されている
端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項23】
前記複数の指状コンタクトはそれぞれ、略V字形の形状を持ち、前記単一のリング状本体によって画定される平面から下向きに延伸した後、前記リング状エラストマー端縁シールが前記半導体ウェハと係合する平面より高い位置の遠位ポイントまで上向きに延伸する請求項22に記載の端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項24】
前記リング状エラストマー端縁シールは、疎水性コーティングを有する請求項22に記載の端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項25】
前記リング状エラストマー端縁シールは、分配バスを収容する溝を有する請求項22に記載の端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項26】
前記リング状エラストマー端縁シールのうち前記半導体ウェハと係合する部分は、前記係合が維持されている間、圧縮される請求項22に記載の端縁シールおよびコンタクトリングアセンブリ。
【請求項27】
電気メッキ中に半導体ウェハを保持する電気メッキ装置であって、前記電気メッキ装置の所与の部分は、メッキ溶液が接触しないようになっており、前記電気メッキ装置は、
前記半導体ウェハを支持し、ベースプレートを有するカップと、
前記半導体ウェハに力を加えて、エラストマーシールに対して前記半導体ウェハを押圧するコーンと、
前記カップに対して相対的に前記コーンを移動させ、前記コーンを介して前記半導体ウェハに力を加え、前記カップの前記エラストマーシールで前記半導体ウェハをシールして、前記カップおよび前記コーンを回転させるシャフトと
を備え、
前記ベースプレートは、
リング状本体と、
前記リング状本体から内向きに延伸し、前記エラストマー端縁シールを支持するナイフ状突起と、
少なくとも前記ナイフ状突起を被覆している疎水性コーティングと
を有し、
前記エラストマー端縁シールは、前記半導体ウェハと係合し、前記電気メッキ溶液が前記電気コンタクトに到達しないようにする電気メッキ装置。
【請求項28】
命令を有するコントローラ
をさらに備え、
前記命令は、
前記半導体ウェハを前記カップ上に位置決めして、
前記コーンを前記半導体ウェハまで降下させて、前記半導体ウェハの裏面に力を加えて、前記カップの端縁シールと前記半導体ウェハの前面との間にシールを構築して、
前記半導体ウェハの前記前面の少なくとも一部分を電気メッキ溶液内に浸漬させて、前記半導体ウェハの前記前面に対して電気メッキを実行して、
前記コーンを上昇させて、前記半導体ウェハの前記裏面に前記力を加えるのを停止させるための命令であり、
前記上昇は、少なくとも2秒間にわたって実行される請求項27に記載の電気メッキ装置。
【請求項29】
カップおよびコーンを備える装置で半導体ウェハに電気メッキを行う方法であって、
前記半導体ウェハを前記カップ上に位置決めする段階と、
前記コーンを前記半導体ウェハまで降下させて、前記半導体ウェハの裏面に力を加えて、前記カップの端縁シールと前記半導体ウェハの前面との間にシールを構築する段階と、
前記半導体ウェハの前記前面の少なくとも一部分を電気メッキ溶液内に浸漬させて、前記半導体ウェハの前記前面に対して電気メッキを実行する段階と、
前記コーンを上昇させて、前記半導体ウェハの前記裏面に前記力を加えるのを停止する段階と
を備え、
前記上昇は、少なくとも2秒間にわたって実行される方法。
【請求項30】
前記コーンの上昇に先立って、少なくとも約3秒間にわたって、前記半導体ウェハを回転させる段階をさらに備える、請求項29に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【公開番号】特開2010−150659(P2010−150659A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−278998(P2009−278998)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(501080848)ノベルス・システムズ・インコーポレーテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】NOVELLUS SYSTEMS, INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278998(P2009−278998)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(501080848)ノベルス・システムズ・インコーポレーテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】NOVELLUS SYSTEMS, INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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