説明

エッチング公差判定用パターン付プリント基板及びプリント基板のエッチング公差判定方法

【課題】エッチングの良否が簡易に判定できるエッチング公差判定用パターン付プリント基板及びプリント基板のエッチング公差判定方法を提供する。
【解決手段】エッチングにより導体2からなる回路パターンが形成される層にエッチング公差判定用パターン1が形成され、該エッチング公差判定用パターン1は、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体2が切れエッチング公差の下限値α以下に弱くエッチングされた場合に導体2が繋がる下限判定部分3と、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体2が繋がりエッチング公差の上限値βより強くエッチングされた場合に導体2が切れる上限判定部分4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングの良否が簡易に判定できるエッチング公差判定用パターン付プリント基板及びプリント基板のエッチング公差判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の電子機器やコネクタにおいてプリント基板が盛んに使用されている。プリント基板は、ウェット方式によるエッチングにより回路パターンが形成されている。電子機器やコネクタの高性能化に伴い、使用する信号の周波数がギガヘルツ以下からギガヘルツ帯へと移行してきている。使用する信号の周波数が高くなるにつれ、エッチングの強さのばらつきによる回路パターンの寸法ずれが原因となって伝送回路のインピーダンスが設計値から大きく変動するようになる。
【0003】
従来、エッチングにより形成された回路パターンの検査方法として、回路パターンの線幅が所定の寸法公差内に収まっているかどうかを、拡大顕微鏡を使った目視計測(視認検査)又は画像センサによる計測によって確認する方法が行われている(例えば、特許文献1,2)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−13921号公報
【特許文献2】特開2003−17830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路パターンの線幅が所定の寸法公差内に収まっているかどうかを目視計測で確認する場合、プリント基板1枚あたりの確認に多大な時間がかかる。この方法をプリント基板1枚あたりの価格が数十円程度のプリント基板に適用することは、コストの面から見て、商業的実用性が極めて低い。
【0006】
また、画像センサによる計測によって確認する方法は、判定作業を無人化して検査単価を抑えることができるが、画像センサの導入コスト(設備コスト)が高価になる。設備コストの回収を考慮して設備コストをプリント基板1枚ずつに分配して検査コストに加えるとすると、数千万枚単位の大量検査でなければ検査コストの上昇を招くことになる。よって、画像センサは容易に導入できない。
【0007】
さらに、検査対象となる被エッチング対象物が2面以上の複数面に存在する場合、全ての面においてそれぞれ検査する必要が生じる。このとき、目視計測では、1つの対象となるプリント基板を1回の検査で判定することが不可能であるため、複数面に存在する被エッチング対象物をそれぞれの面ごとに目視計測することになる。しかし、この方法は、製造途中の半製品で検査をすることができるという利便性はあるものの、検査にかかわる工数が面の数だけ増える。この方法をプリント基板の製品単価が前述のように安価なプリント基板に適用することは、コスト面で困難である。逆に、ほとんど検査コストがかからない水準まで検査コストを下げたいという要求がある。
【0008】
さらに、回路面が3面を超える複層プリント基板においては、表面から隠される内層面の目視計測を完成品の複層プリント基板に対して行うことは不可能である。
【0009】
また、プリント基板に部品などを実装した後の完成品や半製品に対して、反射減衰量、クロストーク、Sパラメータ、周波数応答などを測定してプリント基板の選別をすることも可能である。しかし、プリント基板のエッチング寸法公差が守れないためにプリント基板の歩留まりが低い場合、製品(プリント基板に部品などを実装した後の完成品)としての損失が大きくなり、資源及び時間が無駄になる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、エッチングの良否が簡易に判定できるエッチング公差判定用パターン付プリント基板及びプリント基板のエッチング公差判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明のエッチング公差判定用パターン付プリント基板は、エッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層にエッチング公差判定用パターンが形成され、該エッチング公差判定用パターンは、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体が切れエッチング公差の下限値α以下に弱くエッチングされた場合に導体が繋がる下限判定部分と、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体が繋がりエッチング公差の上限値βより強くエッチングされた場合に導体が切れる上限判定部分とを有するものである。
【0012】
上記エッチング公差判定用パターンは、それぞれ導体からなる第1パターン、第2パターン、第3パターンを有し、これら第1パターン、第2パターン、第3パターンが、第1パターンと第2パターンとの間に上記下限判定部分が形成され第2パターンと第3パターンとの間に上記上限判定部分が形成されるよう配置されてもよい。
【0013】
上記エッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層を複数層備え、該層ごとに上記エッチング公差判定用パターンが形成され、各層のエッチング公差判定用パターンの導体同士を電気的に接続する接続部が形成されてもよい。
【0014】
また、本発明のプリント基板のエッチング公差判定方法は、プリント基板をエッチングする際に、導体からなる回路パターンが形成される層に、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体が切れエッチング公差の下限値α以下に弱くエッチングされた場合に導体が繋がる下限判定部分とエッチング公差内にエッチングされた場合に導体が繋がりエッチング公差の上限値βより強くエッチングされた場合に導体が切れる上限判定部分とを有するエッチング公差判定用パターンを形成し、該エッチング公差判定用パターンの導通状態を調べ、上記下限判定部分に導通が有ればエッチングがエッチング公差の下限値α以下に弱いと判定し、上記上限判定部分に導通が無ければエッチングがエッチング公差の上限値βより強いと判定するものである。
【0015】
上記エッチング公差判定用パターンを、それぞれ導体からなる第1パターン、第2パターン、第3パターンが、第1パターンと第2パターンとの間に上記下限判定部分が形成され第2パターンと第3パターンとの間に上記上限判定部分が形成されるように配置し、第1パターンと第2パターンとの導通状態からエッチング公差の下限を判定し、第2パターンと第3パターンとの導通状態からエッチング公差の上限を判定してもよい。
【0016】
上記プリント基板に上記エッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層を複数層設け、該層ごとに上記エッチング公差判定用パターンを形成し、各層のエッチング公差判定用パターンの導体同士を電気的に接続する接続部を形成し、該接続部を介して複数層のエッチング公差判定用パターンの導通状態を調べてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0018】
(1)エッチングの良否が簡易に判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
本発明に係るエッチング公差判定用パターン付プリント基板は、エッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層に上記導体を同時にエッチングしてなるエッチング公差判定用パターンが形成されたものである。
【0021】
図1に示されるように、エッチング公差判定用パターン1は、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体2が切れエッチング公差の下限値α以下に弱くエッチングされた場合に導体2が繋がる下限判定部分3と、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体2が繋がりエッチング公差の上限値βより強くエッチングされた場合に導体2が切れる上限判定部分4とを有する。
【0022】
なお、エッチング公差の下限値αは、具体的には、エッチングが目論見よりも弱かったために導体境界が設計値よりも広く進出したとき、その進出量を長さの単位で表したエッチング寸法公差+αのことである。エッチング後の導体境界が設計値の導体境界から外に測ってエッチング寸法公差+αより内にあれば、エッチングはエッチング公差の下限値αより強く(つまり許容できる範囲内に)行われたことを示す。エッチング後の導体境界が設計値の導体境界から外に測ってエッチング寸法公差+α以上であれば、エッチングはエッチング公差の下限値α以下に弱く行われたことを示す。
【0023】
エッチング公差の上限値βは、具体的には、エッチングが目論見よりも強かったために導体境界が設計値よりも狭く後退したとき、その後退量を長さの単位で表したエッチング寸法公差−βのことである。エッチング後の導体境界が設計値の導体境界から内に測ってエッチング寸法公差−β以内にあれば、エッチングはエッチング公差の上限値β以下に弱く(つまり許容できる範囲内に)行われたことを示し、エッチング後の導体境界が設計値の導体境界から内に測ってエッチング寸法公差−βを超えていれば、エッチングはエッチング公差の上限値βよりも強く行われたことを示す。
【0024】
図1に示したエッチング公差判定用パターン1は、設計値で描かれている。このエッチング公差判定用パターン1は、導体2によって形成される同じ大きさの正方形状の個別パターン5を3つ有する。各個別パターン5を並び順に第1パターン5a、第2パターン5b、第3パターン5cと称する。これら第1パターン5a、第2パターン5b、第3パターン5cは、それぞれの対角線が同一直線上にくるよう、第1〜第3パターン5a〜5cの底辺の方向(以下、横方向という)及び側辺の方向(以下、縦方向という)に対して斜め45°の方向(以下、対角線方向という)に並べて配置される。この対角線方向における第1〜第3パターン5a〜5cの相互配置関係によって下限判定部分3及び上限判定部分4を形成することができる。
【0025】
第1パターン5aと第2パターン5bとの間には下限判定部分3が形成される。すなわち、第1パターン5aと第2パターン5bは互いに離れており、横方向にも縦方向にも間隔が開いている。この隙間に生じる正方形部分が下限判定部分3である。具体的には、エッチング公差の下限値をα(μm)としたとき、下限判定部分3は一辺が2αの正方形である。第1パターン5aと第2パターン5bは、対角線方向に2√2α離れている。
【0026】
第2パターン5bと第3パターン5cとの間には、上限判定部分4が形成される。すなわち、第2パターン5bと第3パターン5cは互いに部分的に重なり合っており、横方向にも縦方向にも重なりがある。この重なりに生じる正方形部分が上限判定部分4である。具体的には、エッチング公差の上限値をβ(μm)としたとき、上限判定部分4は一辺が2βの正方形である。第2パターン5bと第3パターン5cは、対角線方向に2√2β重なっている。
【0027】
エッチング公差判定用パターン1は、図示しない回路パターンと同様に銅膜などの導電性材料により形成され、回路パターンと同時にエッチングにより形成される。
【0028】
エッチング公差判定用パターン1の意味について図1〜図3を用いて説明する。
【0029】
設計値通りにエッチングが行われたときは、図1に示した通りにエッチング公差判定用パターン1が形成されるので、下限判定部分3は導体2が切れ、上限判定部分4は導体2が繋がる。つまり、図示の通り第1パターン5aと第2パターン5bは対角線方向に2√2α離れ、第2パターン5bと第3パターン5cは対角線方向に2√2β重なる。
【0030】
エッチング公差の下限値αから上限値βまでの公差範囲内でエッチングが行われたとき、エッチング公差判定用パターン1は導体境界の進出・後退がエッチング寸法公差+α、−βの範囲内となる。この場合、下限判定部分3は、エッチングがエッチング公差内で行われたことから、導体2が切れる。上限判定部分4は、エッチングがエッチング公差内で行われたことから、導体2が繋がる。つまり、第1パターン5aと第2パターン5bは対角線方向に離れ、第2パターン5bと第3パターン5cは対角線方向に重なる。
【0031】
このように、設計値通りにエッチングが行われたときはもちろん、エッチング公差の下限値αから上限値βまでの公差範囲内でエッチングが行われたとき、第1パターン5aと第2パターン5bは対角線方向に離れるため、第1パターン5aと第2パターン5bは電気的に非導通(開放、オープン、非接続)の状態となり、第2パターン5bと第3パターン5cは対角線方向に重なるため、第2パターン5bと第3パターン5cは電気的に導通(短絡、ショート、接続)の状態となる。
【0032】
次に、エッチング公差の下限値α以下に弱くエッチングが行われたときは、図2のようにエッチング公差判定用パターン1aが形成される。すなわち、第1〜第3パターン5a〜5cは破線で示した設計値よりも大きく(太く)形成され、導体境界が設計値よりもα以上進出する。第1パターン5aの右辺が右にα以上進出し、第2パターン5bの左辺が左にα以上進出することから、下限判定部分3は導体2が繋がる。つまり、第1パターン5aと第2パターン5bが電気的に導通の状態となる。第2パターン5bと第3パターン5cが電気的に導通の状態となるのは説明するまでもない。
【0033】
次に、エッチング公差の上限値βより強くエッチングが行われたときは、図3のようにエッチング公差判定用パターン1bが形成される。すなわち、第1〜第3パターン5a〜5cは設計値よりも小さく(細く)形成され、導体境界が設計値よりもβを超えて後退する。第2パターン5bの右辺が左にβを超えて後退し、第3パターン5cの左辺が右にβを超えて後退することから、上限判定部分4は導体2が切れる。つまり、第2パターン5bと第3パターン5cが電気的に非導通の状態となる。第1パターン5aと第2パターン5bが電気的に非導通の状態となるのは説明するまでもない。
【0034】
以上のように、エッチングの強弱により、エッチング公差判定用パターン1,1a,1bの導通状態が異なる。そこで、本発明に係るプリント基板のエッチング公差判定方法では、エッチング公差判定用パターン1の導通状態を調べ、第1パターン5aと第2パターン5b間である下限判定部分3に導通が有ればエッチングがエッチング公差の下限値α以下に弱いと判定し、第2パターン5bと第3パターン5c間である上限判定部分4に導通が無ければエッチングがエッチング公差の上限値βより強いと判定する。下限判定部分3に導通が無く、かつ、上限判定部分4に導通が有れば、エッチングがエッチング公差範囲内(下限値αより強く上限値β以下)で行われたと判定する。
【0035】
なお、上記実施形態では、エッチング公差判定用パターン1は、3つの個別パターン5を同寸法の正方形状の第1〜第3パターン5a〜5cで構成したが、これに限らない。
【0036】
例えば、各個別パターンをn角形状(nは3以上の自然数)に形成してもよい。この場合、エッチング寸法公差を+α,−βとしたとき、任意の隣接し合う2つのn角形状個別パターンを対向する頂点を共に等分するような直線が存在するように配置し、それぞれの頂点の間に(2×α)/√(1−cos2(360/n))の長さの対角線を有する長方形状の下限判定部分を形成し、かつ、残りの個別パターンを含む任意の隣接し合う2つのn角形状個別パターンを同様に配置し、互いの頂点の間に(2×β)/√(1−cos2(360/n))の長さの対角線を有する長方形状の上限判定部分を形成する。
【0037】
エッチング公差判定用パターン1の3つの個別パターン5は、正方形状やn角形状に限らない。エッチング公差判定用パターン1は、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体2が切れエッチング公差の下限値α以下に弱くエッチングされた場合に導体2が繋がる下限判定部分3と、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体2が繋がりエッチング公差の上限値βより強くエッチングされた場合に導体2が切れる上限判定部分4とを有するものであればよく、個別パターン5の個数や形状にこだわらない。また、エッチング公差判定用パターン1の大きさ、個別パターン5の大きさ(太さ)は特に限定されない。また、下限値α2、α3など複数の下限判定部分と上限値β2、β3など複数の上限判定部分を同時に形成してもよい。これにより、複数の公差範囲でエッチング公差の判定を行うことができる。
【0038】
次に、エッチング公差判定用パターン1の導通状態を調べる方法を具体的に説明する。
【0039】
ここでは、対象となるエッチング公差判定用パターン付プリント基板が、エッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層を複数層設けたプリント基板(いわゆる両面基板あるいは多層基板)であるものとする。図4と図6のエッチング公差判定用パターン付プリント基板41,61はエッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層を2層設けたプリント基板であり、図5のエッチング公差判定用パターン付プリント基板51はエッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層を3層設けたプリント基板である。いずれの場合も、層ごとにエッチング公差判定用パターンが形成され、各層のエッチング公差判定用パターンの導体同士を電気的に接続する接続部が形成される。以下、実施形態別に説明する。
【0040】
図4に示されるように、本発明に係るエッチング公差判定用パターン付プリント基板41は、表面と裏面の両面に回路パターン(図示せず)が形成されるものであり、これに伴い、表面と裏面の両面にエッチング公差判定用パターンが形成される。実線で示した表面のエッチング公差判定用パターン42aと破線で示した裏面のエッチング公差判定用パターン42bは、互いの第1〜第3パターンが同一形状同一配置に形成され、基板表面上部から見て過不足無く重なり合う。
【0041】
第1〜第3パターンは、図1で説明した第1〜第3パターン5a〜5cと同一である。すなわち、エッチング公差判定用パターン付プリント基板41の表面には第1パターン43aa、第2パターン43ba、第3パターン43caが図1と同様に形成され、裏面には第1パターン43ab、第2パターン43bb、第3パターン43cbが図1と同様に形成される。
【0042】
表面の第1パターン43aaと裏面の第1パターン43abとが接続部44であるバイアホール44aにより電気的に接続される。また、表面の第3パターン43caと裏面の第3パターン43cbとが接続部44であるバイアホール44bにより電気的に接続される。
【0043】
エッチング公差判定用パターン42a,42bの導通状態を調べるときは、直流電圧電源45より表面の第1パターン43aaと第2パターン43baとの間に任意の電位差を印加する。一方、電位差計46により裏面の第1パターン43abと第2パターン43bbとの間の電位差を測定する。
【0044】
表面と裏面の両面において、下限判定部分3に導通が無く、かつ、上限判定部分4に導通が有るという条件が成立すると、直流電圧電源45より印加した電位差がそのまま電位差計46で測定される。よって、直流電圧電源45より印加した電位差がそのまま電位差計46で測定されれば、表面と裏面のエッチングがエッチング公差内に収まっていることになる。
【0045】
これに対し、表面と裏面のいずれか又は両面において、下限判定部分3に導通が有るか又は上限判定部分5に導通が無ければ、電位差計46では0電位が測定される。よって、電位差計46で0電位が測定されれば、表面と裏面いずれか又は両面のエッチングがエッチング公差内に収まっていないことになる。
【0046】
すなわち、図4の回路は、表裏の第1パターン43aa,43abとバイアホール44aからなる第1導体群と、直流電圧電源45と、表裏の第2,3パターン43ba,43ca,43bb,43bcとバイアホール44bからなる第2導体群と、電位差計46とが直列接続された閉回路である。しかし、いずれかの面でエッチングがエッチング公差の上限値βより強すぎると、第2導体群内で上限判定部分4の導体が切れるため、閉回路が遮断される。また、いずれかの面でエッチングがエッチング公差の下限値α以下に弱いと、下限判定部分3が導通して直流電圧電源45又は電位差計46がバイパスされてしまう。このように、エッチングが公差より強すぎても弱すぎても電位差計46では0電位が測定される。
【0047】
このように、本発明のエッチング公差判定方法は、下限判定部分3と上限判定部分4を有するように複数の個別パターン5を配置したエッチング公差判定用パターン1(42a,42b)を形成し、下限判定部分3及び上限判定部分4における個別パターン5間の導通状態からエッチング公差の下限及び上限を判定するようにしたので、エッチングの良否が簡易に判定できる。
【0048】
また、本発明のエッチング公差判定方法は、視覚に頼る官能検査ではなく、下限判定部分3及び上限判定部分4における個別パターン5間の導通状態を導体2の導通・非導通による電気的な検査で判定するので、客観的な判定ができ、かつ短時間で判定ができ、無人化も容易となる。
【0049】
また、本発明のエッチング公差判定方法は、層ごとにエッチング公差判定用パターン42a,42bを形成し、各層のエッチング公差判定用パターン42a,42bの導体同士を電気的に接続する接続部44を形成し、このような接続部44を介して複数層のエッチング公差判定用パターン42a,42bの導通状態を調べるようにしたので、一度に全ての面(回路パターンが形成される層)のエッチングがエッチング公差内に収まっているかどうかを判定することができる。
【0050】
図5に示されるように、本発明に係るエッチング公差判定用パターン付プリント基板51は、上から順に第1層、第2層、第3層からなる3層のそれぞれに回路パターン(図示せず)が形成されるものであり、これに伴い、3層のそれぞれにエッチング公差判定用パターンが形成される。全ての層のエッチング公差判定用パターンは、互いの第1〜第3パターンが同一形状同一配置に形成され、基板表面上部から見て過不足無く重なり合う。
【0051】
各層のエッチング公差判定用パターンにおける第1〜第3パターンは図1で説明した第1〜第3パターン5a〜5cと同一である。すなわち、第1層には第1パターン53aa、第2パターン53ba、第3パターン53caが図1と同様に形成され、第2層には第1パターン53ab、第2パターン53bb、第3パターン53cbが図1と同様に形成され、第3層には第1パターン53ac、第2パターン53bc、第3パターン53ccが形成される。
【0052】
第1層の第1パターン53aaと第2層の第1パターン53abとが接続部であるバイアホール54aにより電気的に接続され、第2層の第1パターン53abと第3層の第1パターン53acとが接続部であるバイアホール54bにより電気的に接続される。また、第1層の第3パターン53caと第2層の第3パターン53cbとが接続部であるバイアホール54cにより電気的に接続され、第2層の第2パターン53bbと第3層の第2パターン53bcとが接続部であるバイアホール54dにより電気的に接続される。
【0053】
これら3層のエッチング公差判定用パターンの導通状態を調べるときは、直流電圧電源55より第1層の第1パターン53aaと第2パターン53baとの間に任意の電位差を印加する。一方、電位差計56により第3層の第1パターン53acと第3パターン53ccとの間の電位差を測定する。
【0054】
いずれかの層でエッチングがエッチング公差の上限値βより強すぎると、その層の上限判定部分4の導体が切れるため、閉回路が遮断される。また、いずれかの層でエッチングがエッチング公差の下限値α以下に弱いと、その層の下限判定部分3が導通して直流電圧電源55又は電位差計56がバイパスされてしまう。このように、エッチングが公差より強すぎても弱すぎても電位差計56で0電位が測定されるので、一度に全ての層のエッチングがエッチング公差内に収まっているかどうかを判定することができる。
【0055】
層の数が3層より多い場合でも、同様の判定が可能である。すなわち、層の数が3層より多いエッチング公差判定用パターン付プリント基板において、図5のエッチング公差判定用パターン付プリント基板51と同様にバイアホールにより各層のエッチング公差判定用パターンの導体同士を電気的に接続する接続部を形成し、全ての個別パターンと直流電圧電源と電位差計が直列接続された閉回路を形成する。直流電圧電源で印加した電位が電位差計に現れるかゼロ電位になるかを読み取ることで、層の数が何層であっても、一度に全ての層のエッチングがエッチング公差内に収まっているかどうかを判定することができる。
【0056】
図6に示したエッチング公差判定用パターン付プリント基板61は、図4のエッチング公差判定用パターン付プリント基板41を変形したものである。すなわち、エッチング公差判定用パターン付プリント基板61の表面には第1パターン63aa、第2パターン63ba、第3パターン63ca、裏面には第1パターン63ab、第2パターン63bb、第3パターン63cbが図4と同様に形成される。
【0057】
表面の第1パターン63aaと裏面の第1パターン63abとがバイアホール64aにより電気的に接続され、表面の第3パターン63caと裏面の第3パターン63cbとバイアホール64cにより電気的に接続される点も図4と同様である。
【0058】
この実施形態では、エッチング公差判定用パターンの導通状態を調べるためにパッドパターンが設けられる。表面のパッドパターン67aは、エッチングの強さによらずどの個別パターンとも導体が繋がらないように、十分離して配置される。裏面のパッドパターン67bは、エッチングの強さによらず第2パターン63bbと導体が切れないようにブリッジ68で繋いで配置される。表面のパッドパターン67aと裏面のパッドパターン67bは、接続部であるバイアホール64dにより電気的に接続される。
【0059】
直流電圧電源65より表面の第1パターン63aaと第2パターン63baとの間に任意の電位差を印加する。一方、電位差計66により表面の第1パターン63aaとパッドパターン67aとの間の電位差を測定する。パッドパターン67aは、バイアホール64d、裏面のパッドパターン67b、ブリッジ68を介して裏面の第2パターン63bbに必ず導通しているので、電位差計66で測定する電位差は、図4の電位差計46で測定する裏面の第1パターン43abと第2パターン43bbとの間の電位差と等価である。
【0060】
この場合でも、図4の場合と同じ原理で、直流電圧電源65より印加した電位差がそのまま電位差計66で測定されれば、表面と裏面のエッチングがエッチング公差内に収まっていることになり、電位差計66で0電位が測定されれば、表面と裏面いずれか又は両面のエッチングがエッチング公差内に収まっていないことになる。
【0061】
この実施形態によれば、電位差計66が直流電圧電源65と共にエッチング公差判定用パターン付プリント基板61に対して表面からアクセスすることになるので、図4の実施形態に比べて検査の作業がいっそう簡単になる。
【0062】
本発明は、LAN用のRJ45モジュラジャックコネクタの近端漏話減衰量、遠端漏話減衰量のキャンセルを目的とする回路、あるいは反射減衰量を調整してインピーダンスマッチングを目的とするインピーダンスコントロール回路などをプリント基板上に形成する際に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態を示す設計値のエッチング公差判定用パターンの平面図である。
【図2】エッチング公差の下限値α以下に弱くエッチングが行われたときのエッチング公差判定用パターンの平面図である。
【図3】エッチング公差の上限値βより強くエッチングが行われたときのエッチング公差判定用パターンの平面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるエッチング公差判定用パターン付プリント基板の斜視図であり、エッチング公差判定用パターンの導通状態を調べるための実体回路図を兼ねる。
【図5】本発明の一実施形態によるエッチング公差判定用パターン付プリント基板の斜視図であり、エッチング公差判定用パターンの導通状態を調べるための実体回路図を兼ねる。
【図6】本発明の一実施形態によるエッチング公差判定用パターン付プリント基板の斜視図であり、エッチング公差判定用パターンの導通状態を調べるための実体回路図を兼ねる。
【符号の説明】
【0064】
1 エッチング公差判定用パターン
2 導体
3 下限判定部分
4 上限判定部分
5 個別パターン
5a 第1パターン
5b 第2パターン
5c 第3パターン
41、51、61 エッチング公差判定用パターン付プリント基板
44 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層にエッチング公差判定用パターンが形成され、該エッチング公差判定用パターンは、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体が切れエッチング公差の下限値α以下に弱くエッチングされた場合に導体が繋がる下限判定部分と、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体が繋がりエッチング公差の上限値βより強くエッチングされた場合に導体が切れる上限判定部分とを有することを特徴とするエッチング公差判定用パターン付プリント基板。
【請求項2】
上記エッチング公差判定用パターンは、それぞれ導体からなる第1パターン、第2パターン、第3パターンを有し、これら第1パターン、第2パターン、第3パターンが、第1パターンと第2パターンとの間に上記下限判定部分が形成され第2パターンと第3パターンとの間に上記上限判定部分が形成されるよう配置されたことを特徴とする請求項1記載のエッチング公差判定用パターン付プリント基板。
【請求項3】
上記エッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層を複数層備え、該層ごとに上記エッチング公差判定用パターンが形成され、各層のエッチング公差判定用パターンの導体同士を電気的に接続する接続部が形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載のエッチング公差判定用パターン付プリント基板。
【請求項4】
プリント基板をエッチングする際に、導体からなる回路パターンが形成される層に、エッチング公差内にエッチングされた場合に導体が切れエッチング公差の下限値α以下に弱くエッチングされた場合に導体が繋がる下限判定部分とエッチング公差内にエッチングされた場合に導体が繋がりエッチング公差の上限値βより強くエッチングされた場合に導体が切れる上限判定部分とを有するエッチング公差判定用パターンを形成し、該エッチング公差判定用パターンの導通状態を調べ、上記下限判定部分に導通が有ればエッチングがエッチング公差の下限値α以下に弱いと判定し、上記上限判定部分に導通が無ければエッチングがエッチング公差の上限値βより強いと判定することを特徴とするプリント基板のエッチング公差判定方法。
【請求項5】
上記エッチング公差判定用パターンを、それぞれ導体からなる第1パターン、第2パターン、第3パターンが、第1パターンと第2パターンとの間に上記下限判定部分が形成され第2パターンと第3パターンとの間に上記上限判定部分が形成されるように配置し、第1パターンと第2パターンとの導通状態からエッチング公差の下限を判定し、第2パターンと第3パターンとの導通状態からエッチング公差の上限を判定することを特徴とする請求項4記載のプリント基板のエッチング公差判定方法。
【請求項6】
上記プリント基板に上記エッチングにより導体からなる回路パターンが形成される層を複数層設け、該層ごとに上記エッチング公差判定用パターンを形成し、各層のエッチング公差判定用パターンの導体同士を電気的に接続する接続部を形成し、該接続部を介して複数層のエッチング公差判定用パターンの導通状態を調べることを特徴とする請求項4又は5記載のプリント基板のエッチング公差判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−182242(P2009−182242A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21484(P2008−21484)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】