説明

エッチング方法

【課題】 従来、窒化ケイ素のエッチング工程には高純度リン酸が主に使用されている。高純度リン酸は、原料の黄燐の供給量が限られているため、高価であり、多量に使用するには問題がある。本発明は、酸化ケイ素にダメージを与えることなく、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のみ選択的にエッチングすることが可能な、高純度リン酸を使用しないエッチング方法を提供するものである。
【解決手段】 エッチング槽内のエッチング液に被処理部材を浸漬し、被処理部材上の窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素をエッチングする方法であって、(1)上記エッチング液が硫酸、フッ化水素酸及び水を含有し、(2)上記エッチング槽に、フッ化水素酸、ケイ素化合物及び水を連続的又は断続的に供給し、かつ(3)上記エッチング槽内のエッチング液の一部を連続的又は断続的に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチング方法に関する。更には、半導体デバイスやフラットパネルディスプレー等の絶縁膜に使用される、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素を選択的にエッチングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化ケイ素(SiO)や、窒化ケイ素(Si)、窒化酸化ケイ素(SiO)は、セラミックス材料、半導体用材料として非常に重要な化合物である。ここで、窒化酸化ケイ素は酸化ケイ素と窒化ケイ素の中間の性質を持つことが知られている。
【0003】
半導体用材料としての酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素は、基板上に形成される絶縁膜やバリア膜等として利用される。
【0004】
一方、従来のエッチング方法としては、薬液中に被処理物を浸漬して化学反応により被処理物を溶解させるウエットエッチングと、薬液に代えて反応性の気体やイオン等を用いて乾燥状態でエッチングを行うドライエッチングが知られている。ウエットエッチングは、ディスプレイ用板状部材のエッチングに限らず、プリント配線板、シリコンウエハ等のエッチングにも用いられている。ウエットエッチングでは、一般に、エッチング液を貯留したエッチング槽内で被処理物とエッチング液を接触させてエッチングが行われている。
【0005】
半導体の製造工程には、酸化ケイ素にダメージを与えることなく、窒化ケイ素や窒化酸化ケイ素を選択的にエッチングすることが必要な工程がある。例えば、シリコン基板上に酸化膜及び窒化膜を成長させた後、素子間分離層(フィールド酸化膜)となる領域にレジストパターンを形成し、それをマスクにしてイオン注入を行い、P型の拡散層を形成する工程がこれに該当する。現在、この工程には高純度リン酸が主に使用されている。しかしながら、高純度リン酸は、原料の黄燐の供給量が限られているため、高価であり、多量に使用するには問題があった。
【0006】
リン酸の使用量が少ないエッチング液としては、100℃以下の温度で、リン酸、フッ化水素酸、硝酸からなるエッチング液にフルオロケイ酸又はフルオロケイ酸塩を添加する方法が開示されている。(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では他の半導体材料である酸化ケイ素のダメージが大きく、半導体プロセスに用いるには問題があった。
【0007】
リン酸を全く使用しないエッチング方法として、硫酸にフッ化水素、フッ化アンモニウム等のフッ素化合物を添加したエッチング液を用いる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法は酸化ケイ素へのダメージが大きく、また、エッチングに伴いエッチング液の成分や組成が変化し、エッチング速度が変化するため、工業的に好ましい方法とはいえない。
【0008】
スルファミン酸、スルフォサリチル酸等のスルフォン酸とフッ化物を組み合わせた例も開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、スルファミン酸、スルフォサリチル酸等のスルフォン酸は高価であり、工業的に多量に使用するには問題がある。
【0009】
このように、高価なリン酸を使用することなく、しかも酸化ケイ素にダメージを与えることなく、工業的に窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素をエッチングできるエッチング方法の開発が切望されている。
【0010】
【特許文献1】特開平08−064574号公報
【特許文献2】特開2002−246378号公報
【特許文献3】特表2000−507304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、高純度リン酸を使用せず、しかも酸化ケイ素にダメージを与えることのない窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチング方法について鋭意検討した結果、硫酸、フッ化水素酸及び水を含有するエッチング液に、フッ化水素酸、ケイ素化合物及び水を含有する供給し、さらにエッチングに供され、組成が変化したエッチング液を除去すると、酸化ケイ素にダメージを与えることなく、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素をエッチングできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち本発明は、以下に示すとおりのエッチング方法である。
【0014】
[1]エッチング槽内のエッチング液に被処理部材を浸漬し、被処理部材上の窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素をエッチングする方法であって、
(1)上記エッチング液が硫酸、フッ化水素酸及び水を含有すること、
(2)上記エッチング槽に、フッ化水素酸、ケイ素化合物及び水を連続的又は断続的に供給すること、並びに
(3)上記エッチング槽内のエッチング液の一部を連続的又は断続的に除去すること
を特徴とする窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチング方法。
【0015】
[2]エッチング液が、硫酸、フッ化水素酸、ケイ素化合物、及び水を含有することを特徴とする上記[1]に記載の窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチング方法。
【0016】
[3]ケイ素化合物が、ケイ酸、ケイ酸塩、フッ化ケイ素、塩化ケイ素、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、及びメチルトリメトキシシランからなる群から選ばれる一種又は二種以上の化合物であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の窒化ケイ素のエッチング方法。
【0017】
[4]エッチング液中のフッ化水素酸の濃度が、1重量ppm〜0.1重量%の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のエッチング方法。
【0018】
[5]エッチング液中の水の濃度が、1〜70重量%の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のエッチング方法。
【0019】
[6]エッチング液中のケイ素化合物の濃度が、1〜500重量ppmの範囲になるように、エッチング液にケイ素化合物を供給することを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のエッチング方法。
【0020】
[7]120℃〜180℃でエッチングすることを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のエッチング方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のエッチング方法は、高価なリン酸を使用することなく、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素を選択的にエッチングできるため、工業的価値が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の方法では、エッチング槽内のエッチング液に被処理部材を浸漬し、被処理部材上の窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素をエッチングする。具体的には、例えば、特定のエッチング液を貯留したエッチング槽内で、被処理部材(例えば、半導体基板)とエッチング液を接触させて、被処理部材上の窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチングを行う。
【0023】
本発明の方法において、エッチングされる窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素としては、半導体、フラットパネルディスプレーに一般的に使用される、Si窒化膜(シリコン窒化膜)やSiON膜(シリコン酸窒化膜)等が例示される。
【0024】
本発明のエッチング方法は、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチングのうち、半導体デバイス、フラットパネルディスプレー等の絶縁膜として使用される窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチングに利用において、特に優れた性能を発揮する。半導体デバイスにおいては、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素は、半導体基板上にCVD法(化学気相成長)等により成膜されるが、素子、回路を形成するためには、エッチングで不要な部分を取り除く必要がある。本発明の方法を使用すれば、このような半導体基板上の窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素を選択的に、かつ長期安定的にエッチングすることができる。
【0025】
本発明の方法で使用されるエッチング液は、硫酸、フッ化水素酸及び水を含有する。エッチング液に使用される硫酸、フッ化水素酸、水については、特に制限は無く、一般に流通しているものを使用することができる。電子材料用として、金属分の少ない硫酸、フッ化水素酸及び水がそれぞれ流通しているので、これらを使用することが特に好ましい。
【0026】
本発明の方法で使用されるエッチング液は、硫酸と、エッチング液全体に対し1重量ppm〜0.1重量%のフッ化水素酸と、エッチング液全体に対し1〜70重量%の水を含有する組成が好ましく、硫酸と、エッチング液全体に対し5〜500重量ppmのフッ化水素酸と、エッチング液全体に対し1〜50重量%の水を含有する組成がさらに好ましい。エッチング液全体に対し1重量ppm未満のフッ化水素酸と、エッチング液全体に対し1重量%未満の水を含有する組成では、エッチング速度が工業的でないほど遅くなるおそれがある。また、エッチング液全体に対し1000重量ppmを超えるフッ化水素酸を添加すると、酸化ケイ素へのダメージが無視できないほど大きくなるおそれがある。さらに、エッチング液全体に対し70重量%を超える水を含有する場合、エッチング液の温度が下がりすぎるため、この場合もエッチング速度が工業的でないほど遅くなるおそれがある。
【0027】
本発明の方法において、使用されるエッチング液には、ケイ素化合物を添加することが好ましい。ケイ素化合物を添加すると、酸化ケイ素(シリコン酸化膜)へのダメージを低減することができる。ケイ素化合物としては、例えば、ケイ酸、ケイ酸塩、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸塩、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類が挙げられるが、本発明の趣旨に反しない限り、それ以外のケイ素化合物を使用しても一向に差し支えない。
【0028】
本発明の方法において、ケイ酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩としては、アンモニウム塩が好ましい。ケイ酸、ケイ酸塩は、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物等を硫酸に添加し、加熱して溶解させたものを使用しても良い。ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸塩は、工業的に流通しているものを使用しても良いし、ケイ酸にフッ化水素酸を反応させ、さらにこれを塩にしても良い。
【0029】
エッチング槽内に貯留されるエッチング液は、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチングに伴い、その成分や組成が変化する。具体的には、エッチング液中のフッ化水素酸、水が減少し、ケイ素、窒素含有化合物が増加する。この結果、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチングが遅くなったり、酸化ケイ素へのダメージが少なくなる等、エッチング速度が変化する。
【0030】
そこで、本発明の方法においては、組成の変化したエッチング槽内のエッチング液をエッチング槽から抜き出し、新たにフッ化水素酸、ケイ素化合物、及び水をエッチング槽に供給しながら、エッチングを行う。エッチング槽内のエッチング液にさらに硫酸を供給しても良い。これらはそれぞれ単独で供給しても良いし、予め混合して供給しても良い。
【0031】
本発明の方法において、エッチング槽内のエッチングの抜き出しと、新たなフッ化水素酸、ケイ素化合物、及び水の供給は、連続で実施しても良いし、断続的に実施しても良い。また、エッチング槽の下部からエッチング液を抜き出しても良いし、オーバーフローを利用して上部からエッチング液を抜き出しても良い。均一な液組成になりやすくするため、新たな液の供給はエッチング槽の下部から実施する方が好ましいが、液の循環が十分な場合は、中部、上部から供給しても差し支えない。
【0032】
本発明の方法では、抜き出したエッチング液は、廃棄しても良いし、成分を調整して再度エッチング液に供給しても良い。
【0033】
本発明の方法においてフッ化水素酸は、エッチング槽内のエッチング液の組成が一定になるように供給する必要がある。そのため、エッチング液と同一組成の液として供給しても良いし、供給する液の量を低減するため、高濃度のフッ化水素酸を供給しても良い。ただし、高濃度のフッ化水素酸を微量供給するのは工業的には難しいため、フッ化水素酸を硫酸及び/又は水に希釈して供給することが好ましい。その際のフッ化水素酸の濃度は、1重量ppm〜50重量%の範囲が好ましい。1重量ppm未満の濃度ではエッチング液中のフッ化水素酸濃度が低下するおそれがあり、50重量%を超える濃度では取り扱いが難しく工業的ではない。
【0034】
本発明の方法では、上記したとおり、エッチング槽内のエッチング液にケイ素化合物を供給する。この際、ケイ素化合物は、エッチング槽内のエッチング液中のケイ素化合物濃度が1〜500重量ppmとなるように供給する。好ましくは、エッチング液中のケイ素化合物濃度が1〜200重量ppmとなるように供給する。さらに好ましくは、エッチング液中のケイ素化合物濃度が5〜100重量ppmとなるように供給する。1重量ppm未満では、酸化ケイ素へのダメージを十分に減らすことができず、500ppmを超えるケイ素化合物を供給すると、酸化ケイ素上や、窒化ケイ素上、窒化酸化ケイ素上、エッチング液中、エッチング槽にケイ素化合物が析出するため好ましくない。このようにケイ素化合物の濃度をコントロールすると酸化ケイ素のダメージを制御することが可能となり、これは工業的な実施において非常に重要である。
【0035】
本発明の方法において、ケイ素化合物としては、例えば、ケイ酸、ケイ酸塩、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸塩、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類が挙げられるが、本発明の趣旨に反しない限り、それ以外のケイ素化合物を使用しても一向に差し支えない。
【0036】
本発明の方法において、ケイ酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩としては、アンモニウム塩が好ましい。ケイ酸、ケイ酸塩は、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物等を硫酸に添加し、加熱して溶解させたものを使用しても良い。ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸塩は、工業的に流通しているものを使用しても良いし、ケイ酸にフッ化水素酸を反応させ、さらにこれを塩にしても良い。
【0037】
本発明の方法では、エッチング液中の含水率、エッチング液の温度を一定とするため、上記したとおり、エッチング槽内のエッチング液に水を供給する。水は単独で供給しても良いし、硫酸、フッ化水素酸、ケイ素化合物等と混合して供給しても良い。
【0038】
本発明の方法において、エッチング液の含水率が低く、エッチング液の温度が高い場合には、水の供給量を増加し、エッチング液の含水率が高く、エッチング液の温度が低い場合は、水の供給量を低減することが好ましい。このように水の供給量でエッチング液の温度、組成を一定の値に制御することができる。
【0039】
本発明のエッチング用組成物を使用する時の温度は、通常120〜180℃の範囲、好ましくは130〜170℃の範囲である。180℃を超える温度では、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素以外の半導体材料に対してダメージが発生し易く、120℃未満の温度では、工業的に満足できる速度で窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素をエッチングすることが難しい。
【0040】
本発明の方法において、フッ化水素酸濃度の安定化、エッチング液中に増加したケイ素化合物の除去のため、フッ化ホウ素等のホウ素化合物をさらに添加することができる。
【0041】
本発明の方法において、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素をエッチングする際、被処理部材や、エッチング液に超音波振動を与え、エッチングを促進させても良い。
【実施例】
【0042】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。また、上記したとおり、窒化酸化ケイ素は酸化ケイ素と窒化ケイ素の中間の性質を持ち、窒化ケイ素をエッチングできれば、窒化酸化ケイ素についてもエッチング可能なため、以下の実施例では、窒化ケイ素のエッチングについて検討を行った。
【0043】
なお、標記を簡潔にするため、以下の略記号を使用する。
【0044】
SiN:窒化ケイ素
SiO:酸化ケイ素
HF:フッ化水素酸
SiF:ヘキサフルオロケイ酸。
【0045】
実施例1.
66.25重量%の硫酸、100重量ppmのHF、40重量ppmのSiFからなるエッチング液(残部は水)200gをテフロン(登録商標)製の容器に入れ、エッチング液の温度が160℃になるまで加熱した。さらにこのエッチング液と同組成の液をポンプで200g/時の速度で連続的にテフロン(登録商標)製容器の下部から供給した。一方、エッチング液の液面の高さが一定となるよう、容器の上部からエッチング液を吸引除去した。
【0046】
エッチング液の入ったテフロン(登録商標)製容器に、SiNをCVD法により300nmの厚みに成膜したシリコンウエハ(15mm角の正方形)及び熱酸化膜(SiO膜)を1000nmの厚みに成膜したシリコンウエハ(15mm角の正方形)を10分間浸漬した。
【0047】
ウエハを取り出し、水洗、乾燥の後、光干渉式膜厚計でSiN、及び熱酸化膜の膜厚を測定した。それらの膜厚の変化から、SiN,SiOのエッチング速度を算出した。その結果、SiNエッチング速度 4.1nm/分、SiOエッチング速度 0.024nm/分だった。
【0048】
6.5時間後、同様にSiN,SiOのエッチング速度を測定したところ、SiNエッチング速度 4.2nm/分、SiOエッチング速度 0.025nm/分だった。
【0049】
実施例2〜実施例7.
SiFの濃度を表1記載の濃度にした以外は実施例1と同じ方法でエッチングを実施した。6.5時間後のエッチング結果を実施例1と同様に測定し、表1に併せて記した。
【0050】
【表1】

比較例1.
66.25重量%の硫酸、100重量ppmのHF、40重量ppmのSiFからなるエッチング液(残部は水)200gをテフロン(登録商標)製の容器に入れ、エッチング液の温度が160℃になるまで加熱した。30分ごとに水を加え、エッチング温度が160℃になるよう調整した。160℃に昇温してから5時間後のSiN,SiOのエッチング速度を実施例と同様に測定したところ、SiNエッチング速度 0.74nm/分、SiOエッチング速度 0.020nm/分だった。
【0051】
比較例1の結果より、水のみをエッチング液に供給しても、フッ化水素酸及びケイ素化合物を供給しないと、SiNエッチングの速度が低下することがわかる。
【0052】
比較例2.
66.25重量%の硫酸、100重量ppmのHFからなるエッチング液(残部は水)200gをテフロン(登録商標)製の容器に入れ、エッチング液の温度が160℃になるまで加熱した。さらにこのエッチング液と同組成の液をポンプで200g/時の速度で連続的にテフロン(登録商標)製容器の下部から供給した。一方、エッチング液の液面の高さが一定となるよう、容器の上部からエッチング液を吸引除去した。
【0053】
エッチング液の入ったテフロン(登録商標)製容器に、SiNをCVD法により300nmの厚みに成膜したシリコンウエハ(15mm角の正方形)及び熱酸化膜を1000nmの厚みに成膜したシリコンウエハ(15mm角の正方形)を10分間浸漬した。ウエハを取り出し、水洗、乾燥の後、光干渉式膜厚計でSiN、及び熱酸化膜の膜厚を測定した。それらの膜厚の変化から、SiN,SiOのエッチング速度を算出した。その結果、SiNエッチング速度 4.2nm/分、SiOエッチング速度 0.20nm/分だった。
【0054】
6.5時間後、同様にSiN,SiOのエッチング速度を測定したところ、SiNエッチング速度 4.1nm/分、SiOエッチング速度 0.19nm/分だった。
【0055】
比較例2の結果より、硫酸、フッ化水素酸及び水をエッチング液に供給しても、ケイ素化合物を供給しないと、SiOへのダメージが大きいことがわかる。
【0056】
実施例8.
66.25重量%の硫酸、50重量ppmのHF、10重量ppmのSiFからなるエッチング液(残部は水)100gをテフロン(登録商標)製の容器に入れ、エッチング液の温度が170℃になるまで加熱した。30分毎に0.5重量%のHF、0.1重量%のSiFを含む硫酸1gを添加した。エッチング液の温度が170℃となるように水を随時添加し、水、HF、ケイ素化合物を揮発させ、さらにエッチング液を30分ごとに1g除去しながら、実施例1と同様の方法でSiN,SiOのエッチング速度を測定したところ、開始4時間後は、SiNエッチング速度 5.7nm/分、SiOエッチング速度 0.10nm/分だった。開始6時間後は、SiNエッチング速度 5.5nm/分、 SiOエッチング速度 0.11nm/分だった。
【0057】
実施例9.
61.67重量%の硫酸、100重量ppmのHFからなる液(残部は水)1kgをテフロン(登録商標)製の容器に入れ、液の温度が140℃になるまで加熱した。次いで、窒化ケイ素をこの液に入れ、1時間加熱した。
【0058】
この液を冷却した後、140℃に加熱した200gの61.67重量%の硫酸、100重量ppmのHFからなるエッチング液(残部は水)200gに、ポンプで供給した(50g/時の供給速度)。実施例1と同様の方法でSiN,SiOのエッチング速度を測定したところ、開始1時間後は、SiNエッチング速度 3.7nm/分、SiOエッチング速度 0.083nm/分だった。開始6時間後は、SiNエッチング速度 3.5nm/分、 SiOエッチング速度 0.077nm/分だった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング槽内のエッチング液に被処理部材を浸漬し、被処理部材上の窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素をエッチングする方法であって、
(1)上記エッチング液が硫酸、フッ化水素酸及び水を含有すること、
(2)上記エッチング槽に、フッ化水素酸、ケイ素化合物及び水を連続的又は断続的に供給すること、並びに
(3)上記エッチング槽内のエッチング液の一部を連続的又は断続的に除去すること
を特徴とする窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチング方法。
【請求項2】
エッチング液が、硫酸、フッ化水素酸、ケイ素化合物、及び水を含有することを特徴とする請求項1に記載の窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素のエッチング方法。
【請求項3】
ケイ素化合物が、ケイ酸、ケイ酸塩、フッ化ケイ素、塩化ケイ素、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、及びメチルトリメトキシシランからなる群から選ばれる一種又は二種以上の化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒化ケイ素のエッチング方法。
【請求項4】
エッチング液中のフッ化水素酸の濃度が、1重量ppm〜0.1重量%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項5】
エッチング液中の水の濃度が、1〜70重量%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項6】
エッチング液中のケイ素化合物の濃度が、1〜500重量ppmの範囲になるように、エッチング液にケイ素化合物を供給することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項7】
120℃〜180℃でエッチングすることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のエッチング方法。

【公開番号】特開2010−109064(P2010−109064A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278253(P2008−278253)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】