説明

エッチング方法

【課題】反応室を構成するチャンバを大気開放せずに、チャンバ内壁に付着した堆積膜を除去できるエッチング方法を提供する。
【解決手段】まず、加工対象をエッチングするエッチャントガスを反応室内に導入するとともに、冷却流路に冷媒を流すことによって反応室を冷却し、加工対象とエッチャントガスとの反応生成物を加工対象上に生成する。ついで、冷却流路への冷媒の供給を停止し、加工対象が反応生成物の昇華温度以上となるように加熱する。そして、冷却流路への冷媒の供給を停止した状態で、反応室の内壁が反応生成物の昇華温度以上となるように加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置などの製造工程において、RIE(Reactive Ion Etching)法などのドライエッチング法を用いた加工処理が行われている。このようなドライエッチング法では、ガスを用いて加工対象のエッチングを行うが、その際、加工対象とガスとが反応した反応生成物がチャンバ内壁に堆積する。チャンバ内壁に堆積した反応生成物はエッチング時に放出されてエッチング条件に影響を与えるので、加工対象のエッチングを再現性よく行うことができない。そこで、従来では、加工対象表面とチャンバ内壁への反応生成物の堆積量を制御する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−116822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にエッチングを行うチャンバは、上記したように内壁に反応生成物などの堆積膜が付着するので、チャンバ内を大気開放し、堆積膜を除去する作業を行う必要があった。
【0005】
本発明の一つの実施形態は、反応室を構成するチャンバを大気開放せずに、チャンバ内壁に付着した堆積膜を除去できるエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によれば、まず、加工対象をエッチングするエッチャントガスを反応室内に導入するとともに、冷却流路に冷媒を流すことによって前記反応室を冷却し、前記加工対象とエッチャントガスとの反応生成物を前記加工対象上に生成する。ついで、前記冷却流路への前記冷媒の供給を停止し、前記加工対象が前記反応生成物の昇華温度以上となるように加熱する。そして、前記冷却流路への前記冷媒の供給を停止した状態で、前記反応室の内壁が前記反応生成物の昇華温度以上となるように加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施の形態によるエッチング装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、実施の形態によるエッチング装置内での処理手順を示すタイムチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるエッチング方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
図1は、実施の形態によるエッチング装置の概略構成を模式的に示す図である。このエッチング装置は、エッチング処理を行う反応室10と、反応室10を真空に保持し外気から遮断する準備室20と、を備え、反応室10と準備室20とはゲートバルブ30で仕切られている。また、エッチング装置は、ウェハなどの加工対象を保持する保持手段であるボート31を有し、図示しない搬送機構によって、準備室20と反応室10との間を移動可能に構成されている。この例では、反応室10の上方に準備室20が設けられている場合を示している。
【0010】
反応室10内には、加工対象のエッチング後の加熱処理時や、反応室10内壁に付着した反応生成物を除去するベーク処理時に、反応室10内を加熱する加熱手段であるランプヒータ11が設けられている。また、反応室10には、反応室10内にガスを供給する配管12−1〜12−6が設けられている。この例では、N2ガスを供給する第1、第3および第6の配管12−1,12−3,12−6と、NH3ガスを供給する第2および第4の配管12−2,12−4と、NF3ガスを供給する第5の配管12−5と、が設けられている。第1、第3および第6の配管12−1,12−3,12−6には図示しないN2ガス供給部が設けられ、第2および第4の配管12−2,12−4には図示しないNH3ガス供給部が設けられ、第5の配管12−5には図示しないNF3ガス供給部が設けられている。また、第1〜第6の配管12−1〜12−6にはそれぞれガスの供給のオン/オフを切り替えるガスバルブV1〜V6が設けられている。
【0011】
第1と第2の配管12−1,12−2は、反応室10付近で一体化されて反応室10に接続されるが、ガスバルブV1,V2と反応室10との間の配管にはアプリケータ13−1が設けられている。同様に、第3と第4の配管12−3,12−4も、反応室10付近で一体化されて反応室10に接続され、ガスバルブV3,V4と反応室10との間の配管にはアプリケータ13−2が設けられている。アプリケータ13−1,13−2は、たとえば石英チューブとマイクロ波印加手段とからなり、NH3ガスを反応室10内に導入する際に、石英チューブにマイクロ波を印加することで、NH3ガスを活性化させる機能を有する。また、第5と第6の配管12−5,12−6は、反応室10付近で一体化されて反応室10に接続される。
【0012】
反応室10には、冷却手段であるチラー32から供給される冷媒を循環させる冷媒流路である冷却用配管14が設けられている。冷却用配管14はたとえば反応室10の外壁に接するように設けられる。チラー32の冷媒吐出口32aと冷却用配管14の一方の端部との間を接続する配管15aにはバルブV7が設けられ、チラー32と冷媒回収口32bと冷却用配管14の他方の端部との間を接続する配管15bにはバルブV8が設けられている。チラー32で温度調節された冷媒は冷媒吐出口32aから吐出され、冷却用配管14内を冷媒が移動(循環)することによって、反応室10(壁面)が冷却され、所定の温度に保たれる。なお、冷媒として、100〜130℃の温度範囲で使用しても揮発しにくいものが望ましく、たとえばフロリナート(商品名)やガルデン(商品名)などを用いることができる。
【0013】
また、反応室10には、図示しない真空ポンプが接続されており、反応室10内が所定の真空度となるように排気されている。
【0014】
準備室20は、上記したように、反応室10を外気から遮断する機能とともに、反応室10でエッチングされた加工対象を冷却する機能も有する。準備室20には、準備室20内にガスを供給する配管21−1,21−2が設けられている。この例では、N2ガスを供給する第7および第8の配管21−1,21−2が接続され、それぞれの配管21−1,21−2にはガスの供給のオン/オフを切り替えるガスバルブV9,V10が設けられている。また、第7と第8の配管21−1,21−2には図示しないN2ガス供給部が設けられている。
【0015】
また、準備室20には、チラー32から供給される冷媒を循環させる冷媒流路である冷却用配管22が設けられている。冷却用配管22はたとえば準備室20の外壁に接するように設けられる。チラー32の冷媒吐出口32aと冷却用配管22の一方の端部との間を接続する配管23aにはバルブV11が設けられ、チラー32の冷媒回収口32bと冷却用配管22の他方の端部との間を接続する配管23bにはバルブV12が設けられている。この準備室20でも、チラー32で温度調節された冷媒が冷却用配管22内を循環することによって、準備室20が冷却され、所定の温度に保たれる。なお、準備室20の冷却用配管22は、反応室10の冷却用配管14と直列に接続されておらず、並列に接続されている。すなわち、このような接続によって、反応室10と準備室20のいずれか一方のみを冷却することも可能となる。
【0016】
さらに、準備室20には、図示しない真空ポンプが接続されており、準備室20内が所定の真空度となるように排気されている。
【0017】
また、エッチング装置には、反応室10のガスバルブV1〜V6、バルブV7,V8の開閉およびランプヒータ11のオン/オフと、準備室20のガスバルブV9,V10およびバルブV11,V12の開閉と、ゲートバルブ30の開閉と、ボート31の搬送などを、所定の手順(レシピ)にしたがって制御する図示しない制御部が設けられている。
【0018】
つぎに、このようなエッチング装置におけるエッチング方法について説明する。図2は、実施の形態によるエッチング装置内での処理手順を示すタイムチャートの一例を示す図である。このタイムチャートは、制御部によるガスバルブV1〜V6,V9,V10やバルブV7,V8,V11,V12、ゲートバルブ30、ランプヒータ11、搬送機構などの制御手順を示している。
【0019】
まず、ウェハなどの加工対象が保持されたボート31が準備室20に搬送される(ステップS11)。このとき、ゲートバルブ30は閉じられた状態にあり、たとえばガスバルブV9,V10がオープンにされ、準備室20内に窒素ガスが導入される。そして、たとえば大気圧になった状態で加工対象が保持されたボート31が準備室20の外部から準備室20の内部へと搬送される。その後、ガスバルブV9,V10がクローズにされ、真空ポンプによって準備室20内が反応室10内の真空度とほぼ一致するまで真空引きされる。また、このとき、反応室10では、真空ポンプによって真空引きされクリーニングされている状態にある(ステップS12)。準備室20の真空度が反応室10の真空度とほぼ同じになると、ゲートバルブ30を開き、図示しない搬送機構によってボート31を反応室10へと搬送した後、ゲートバルブ30を閉じる(ステップS13)。
【0020】
ついで、反応室10では、加工対象のエッチング処理が行われる(ステップS14)。ここでは、加工対象は、ウェハに形成されたシリコン酸化膜(SiO2)であるものとする。制御部によって第1〜第5のガスバルブV1〜V5がオープンにされ、反応室10内にN2ガス、NH3ガスおよびNF3ガスが供給される。それぞれのガスの供給量は、予め設定された条件にしたがって、制御部で制御される。また、制御部によってアプリケータ13−1,13−2が作動され、反応室10内に供給されるNH3ガスは活性化される。さらに、バルブV7,V8をオープンにし、反応室10が30℃程度の常温となるように冷媒を循環させる。
【0021】
このような状態の反応室10内では、エッチャントガス(NH3ガスおよびNF3ガス)によって、加工対象がエッチングされる。具体的には、NH3ガスとNF3ガスを活性化させてシリコン酸化膜と反応させ、加工対象上に(NH42SiF6が反応生成物として生成される。また、反応室10の温度を常温程度とすることで、酸化シリコンとエッチャントガス(NH3ガスおよびNF3ガス)との間の反応が促進される。
【0022】
所定の時間反応させた後、加工対象の温度が反応生成物の昇華温度以上となる温度で所定の時間、アニール処理が行われる(ステップS15)。具体的には、第2、第4および第5のガスバルブV2,V4,V5をクローズにし、第1、第3および第6のガスバルブV1,V3,V6をオープンにして、反応室10内にN2ガスを導入する。また、バルブV7,V8をクローズにして、冷媒の循環を停止するとともに、ランプヒータ11をオンにして反応室10内を加熱する。なお、反応生成物(NH42SiF6の昇華温度は、100〜130℃であるので、加熱対象が100〜130℃以上となるようにランプヒータ11を制御する。
【0023】
ランプヒータ11による加熱が始まると、加工対象と反応室10の側壁の温度が上昇する。この加熱によって、加工対象の温度は反応生成物の昇華温度以上となるので、加工対象上に生成された反応生成物(NH42SiF6は昇華される。なお、反応室10内の側壁には、冷媒が循環していないが、滞留しているため、60〜80℃程度まで加熱され、その結果、加工対象上から昇華した反応生成物は反応室10内の側壁に再吸着する。
【0024】
アニール処理を所定時間行った後、ゲートバルブ30を開き、加工対象が保持されたボート31を図示しない搬送機構によって準備室20に移送した後、ゲートバルブ30を閉じる(ステップS16)。その後、ガスバルブV9,V10をオープンにして準備室20内にN2を導入し、バルブV11,V12をオープンにして準備室20の冷却用配管22に冷媒を循環させて加工対象の冷却を行う(ステップS17)。
【0025】
ステップS17の準備室20での加工対象の冷却処理と並行して、反応室10では、反応室10内壁に付着した反応生成物を除去するベーキング処理が行われる(ステップS18)。このベーキング処理では、反応室10内の側壁の温度が反応生成物の昇華温度(100〜130℃)以上となるようにランプヒータ11の発熱量を制御する。これによって、反応室10の側壁の温度が、反応生成物の昇華温度以上に加熱され、反応生成物が側壁から昇華し、真空ポンプによって反応室10外へと排気される。
【0026】
所定の時間ベーキング処理を行った後、反応室10の冷却処理を行う(ステップS19)。具体的には、ランプヒータ11の電源をオフにし、ガスバルブV2,V4をオープンにして反応室10内にNH3ガスを導入し、バルブV7,V8をオープンにして冷媒を反応室10の冷却用配管14に循環させて、反応室10の冷却を行う。このとき、反応室10内にNH3ガスのような冷媒ガスを導入することで、反応室10内の冷却効率を上げることができる。
【0027】
また、ステップS17で準備室20に移送された加工対象が所定の温度まで下がると、図示しない搬送機構によって加工対象を保持したボート31を、準備室20から準備室20の外部に取り出す搬送処理が行われる(ステップS20)。これによって、1バッチ目の処理が終了する。その後、上記したステップS11〜S20で説明したバッチ処理が制御部での制御によって繰り返し実行される。
【0028】
つぎに、比較例として一般的なエッチング方法について説明する。同一チャンバ内で反応および加熱を行う場合には、酸化シリコンとエッチャントガスのNH3ガス、NF3ガスとの反応を加速させるため、チャンバの側壁温度を30℃程度の常温に制御する。つまり、エッチング時にチャンバの温度を30℃程度の常温に維持するために、冷媒をチャンバの側壁に循環させている。そのため、冷却しているチャンバ内の壁面に反応生成物(NH42SiF6が再吸着し、これらのプロセスの回数を重ねることで、堆積膜が形成される。そして、加熱と冷却が繰り返されることで、堆積膜に応力差が生じ、チャンバ内に堆積膜が剥がれ落ちてしまう虞がある。このような問題を防ぐために、所定の周期でチャンバを大気開放し、内壁に堆積した堆積膜を除去する処理が必要となっていた。
【0029】
一方、本実施の形態では、エッチング処理で反応室10を冷媒によって冷却しながら加工対象表面に反応生成物(NH42SiF6を形成した後、冷媒による冷却を中断して加工対象を反応生成物の昇華温度以上に加熱するアニール処理を行う、加工対象のエッチングを反応室10内で行い、加工対象を準備室20へと移送した後、反応室10の冷却処理を中断しながら反応室10の温度を反応生成物の昇華温度以上に加熱する処理を1つのバッチ処理ごとに行うようにした。これによって、エッチング中に反応室10内壁に付着した反応生成物が昇華され、反応室10内から除去される。つまり、反応生成物による堆積膜が反応室10内壁に形成されない。その結果、比較例のように時間の経過とともに反応生成物が反応室10側壁に堆積し、加工対象上に剥がれ落ちてしまうことを防ぐことができるという効果を有する。また、1回のエッチング処理ごとに反応生成物の反応室10の内壁からの除去が行われるので、反応室10内を大気開放してクリーニングする必要がない。すなわち、反応室10を大気開放することなく、反応室10の内壁をクリーニングすることができるという効果も有する。
【0030】
また、反応室10の冷却用配管14と準備室20の冷却用配管22とを、直列に接続せず、並列にチラー32に接続したので、反応室10と準備室20とを独立して冷却することが可能になるという効果も有する。さらに、冷却用配管14,22に設けられるバルブV7,V8,V11,V12を制御手段によって制御可能な構成としたので、エッチング装置における加熱冷却を予め作成されたレシピによって制御性よく行うことができるという効果も有する。
【符号の説明】
【0031】
10…反応室、11…ランプヒータ、12−1〜12−6,15a,15b,21−1〜21−2,23a,23b…配管、13…アプリケータ、14,22…冷却用配管、20…準備室、30…ゲートバルブ、31…ボート、32…チラー、32a…冷媒吐出口、32b…冷媒回収口、V1〜V6,V9,V10…ガスバルブ、V7,V8,V11,V12…バルブ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象をエッチングするエッチャントガスを反応室内に導入するとともに、冷却流路に冷媒を流すことによって前記反応室を冷却し、前記加工対象と前記エッチャントガスとの反応生成物を前記加工対象上に生成するエッチング工程と、
前記冷却流路への前記冷媒の供給を停止し、前記加工対象が前記反応生成物の昇華温度以上となるように加熱する第1加熱工程と、
前記冷却流路への前記冷媒の供給を停止した状態で、前記反応室の内壁が前記反応生成物の昇華温度以上となるように加熱する第2加熱工程と、
を含むことを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記第1加熱工程の後で前記第2加熱工程の前に、前記加工対象を前記反応室外に搬出する搬出工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記加工対象は酸化シリコンであり、
前記エッチャントガスは、NH3ガスおよびNF3ガスであることを特徴とする請求項1または2に記載のエッチング方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−4188(P2012−4188A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135495(P2010−135495)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】