説明

エッチング方法

【課題】安全で簡便にエッチングできるとともに、エッチング速度を向上させたエッチング方法を提供する。
【解決手段】(1a)金属、及び少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程、又は
(1b−1)少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に形成する工程、及び
(1b−2)金属を含む層を、前記少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料と接するように形成する工程
を含む固体材料のエッチング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程におけるエッチング方法としては、ドライエッチング方法とウェットエッチング方法がある。
【0003】
一般に、ドライエッチング方法に用いられるフルオロカーボン系ガス又はNFは、地球温暖化係数が高く、環境に対する負荷が非常に大きい。また、フッ素ガスを用いるドライエッチング方法も報告されている(例えば、特許文献1参照)が、フッ素ガスは反応性、毒性が非常に高く、取り扱いが困難であり、残ガスの処理についてもアルカリ水を循環するスクラバーが必要となる。
【0004】
一方、ウェットエッチング方法としては、フッ酸、フッ硝酸(HF−HNO)、バッファードフッ酸等を用いる方法が行われているが、いずれも高い腐食性と毒性を有しており、取り扱いには然るべき施設を必要とする。
【0005】
以上から、これらのエッチング方法によって行うリソグラフィー工程は、その工程数が非常に多く、煩雑でありコスト増の原因となっている。
【0006】
また、太陽電池の表面テクスチャ構造の形成についても、以下の課題が存在する。ドライエッチング方法の場合は、表面の精緻な形状の作成はできるが、装置が高価なため、大面積化に対応できない。また、ウェットエッチング方法は、(100)面を有するウェハを用いた単結晶シリコン太陽電池にしか適応できず、多結晶又はアモルファス材料を用いた太陽電池には適用できない。
【0007】
また、微小電気機械素子(MEMS、Micro Electro Mechanical Systems)、レンズ、ミラーの製造工程も上記と同様に、その工程数が非常に多く、煩雑である。
【0008】
一方、上記従来のエッチング方法とは別に、エッチングの対象となる固体材料上に、N−F結合を有する有機化合物を少なくとも1種含む薄膜を形成し、薄膜側から露光することで、地球温暖化を引き起こす環境負荷が高いガス類、又は反応性、毒性の高く危険なフッ素ガス、フッ酸を用いることなく、安全で簡便にエッチングできる(特許文献2〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−313776号公報
【特許文献2】国際公開第2009/119848号パンフレット
【特許文献3】特開2011−139048号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】表面技術、2005年、56巻、13頁
【非特許文献2】Appl.Phys. Lett.,1989年、55巻、1363頁
【非特許文献3】シャープ技報、1998年、第70号、40頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このエッチング方法を応用し、安全で簡便にエッチングできるとともに、エッチング速度を向上させたエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、金属、及びN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料上に接触させるか、N−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料に接触させた後、その上に金属を含む層を形成させることにより、安全で簡便にエッチングできるとともに、金属が存在する箇所のエッチング速度を向上させることができることを見出した。本発明は、この知見に基づき研究を重ね、完成されたものである。すなわち、本発明は以下の構成を包含する。
項1.(1a)金属、及び少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程
を含む固体材料のエッチング方法。
項2.(1b−1)少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程、及び
(1b−2)金属を含む層を、前記少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料と接するように形成する工程
を含む固体材料のエッチング方法。
項3.前記金属を含む層が、銅、亜鉛、ニッケル、銀、マンガン、パラジウム及び白金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、又は該金属を含む合金を含む層である、項1又は2に記載の固体材料のエッチング方法。
項4.さらに、
(2)前記固体材料を加熱する工程
を含む、項1〜3のいずれかに記載のエッチング方法。
項5.さらに、
(3)前記固体材料に、前記N−F結合を有する有機化合物を含む材料側から露光する工程
を含む、項1〜4のいずれかに記載のエッチング方法。
項6.N−F結合を有する有機化合物が、一般式(1)で示される構造単位を有する、項1〜5のいずれかに記載のエッチング方法。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、
【0015】
【化2】

【0016】
はブレンステッド酸の共役塩基である。)
項7.N−F結合を有する有機化合物が、一般式(A1)で示される化合物である、項1〜6のいずれかに記載のエッチング方法。
【0017】
【化3】

【0018】
[式中、
隣接するRとR、RとR、RとR又はRとRは連結して、−CR=CR−CR=CR−を形成していてもよく、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは同じか又は異なり、いずれも、水素原子;ハロゲン原子;ニトロ基;ヒドロキシ基;シアノ基;カルバモイル基;ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数1〜5のアシルオキシ基及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルケニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリール基;少なくとも1種のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアシル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキルスルホニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリールスルホニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキルスルフィニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリールスルフィニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリールオキシ基;少なくとも1種のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアシルオキシ基;少なくとも1種のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアシルチオ基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルカンスルホニルオキシ基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい基炭素数6〜15のアリールスルホニルオキシ基;炭素数1〜5のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよいカルバモイル基;炭素数1〜5のアシル基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよいアミノ基;ハロゲン原子、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のN−アルキルピリジニウム塩基;ハロゲン原子、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数11〜15のN−アリールピリジニウム塩基;又は有機ポリマー鎖であり、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは種々の組合せでヘテロ原子を介して又は介さずに環構造を形成してもよく、
また、
【0019】
【化4】

【0020】
はブレンステッド酸の共役塩基である。]
項8.固体材料が、半導体又は絶縁体である項1〜7のいずれかに記載のエッチング方法。
項9.固体材料が、シリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイト、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ素、ガリウムアルミニウムヒ素、インジウムリン、インジウムアンチモン、窒化ガリウム及び窒化アルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の半導体である項1〜8のいずれかに記載のエッチング方法。
項10.項1〜9のいずれかに記載のエッチング方法を使用する、太陽電池用固体材料の表面の光閉じ込め加工又は反射防止加工方法。
項11.(1a)金属、及び少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程
を含むエッチング処理物の製造方法。
項12.(1b−1)少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程、及び
(1b−2)金属を含む層を、前記少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料と接するように形成する工程
を含むエッチング処理物の製造方法。
項13.項11又は12に記載の製造方法により製造されたエッチング処理物。
項14.(1a)金属、及び少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程
を含む太陽電池用基板の製造方法。
項15.(1b−1)少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程、及び
(1b−2)金属を含む層を、前記少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料と接するように形成する工程
を含む太陽電池用基板の製造方法。
項16.項14又は15に記載の製造方法により製造された太陽電池用基板。
項17.項11又は12に記載の製造方法により、固体材料がエッチング加工されたエッチング処理物、又は項14又は15に記載の製造方法により、固体材料がエッチング加工された太陽電池用基板を備え、且つ、該固体材料がシリコンである、シリコン太陽電池。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、地球温暖化を引き起こす環境負荷が高いガス類、又は反応性、毒性の高く危険なフッ素ガス、フッ酸を用いることなく、安全で簡便に行うことができ、しかもエッチング速度が向上したエッチング方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1〜10及び参考例1〜7で得られた、銅の形状及び有無によるエッチング速度の変化を示すグラフである。
【図2】実施例11で得られた位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)の結果である。
【図3】実施例12で得られた位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)の結果である。
【図4】実施例13〜18、比較例1〜6及び参考例8〜13で得られた、銅薄膜の有無及び銅薄膜とN−F結合を有する有機化合物との接触の有無によるエッチング速度の変化を示すグラフである。
【図5】実施例26のシリコン板の概念図である。
【図6】実施例26のシリコン板の、エッチング処理後の3次元イメージである。
【図7】実施例27で使用したアクリル型のSEMイメージ(左図)と、実施例25のシリコン板の概念図である。
【図8】実施例27のシリコン板の、エッチング処理後の断面プロファイルである。
【図9】試験例で用いた装置の概略図である。
【図10】試験例(太陽電池向け反射率低下検討)の結果を示すグラフである。なお、Cu粒子ありは、実施例39で製造したシリコン基板の反射率、Flatは未処理シリコン基板の反射率を示す。
【図11】実施例41のシリコン基板表面のSEMイメージである。
【図12】実施例42のシリコン基板表面のSEMイメージである。
【図13】実施例43で得られたシリコン基板表面のSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の固体材料のエッチング方法は、
(1a)金属、及び少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面上に接触させる工程
を含む。
【0024】
また、本発明の第2の固体材料のエッチング方法は、
(1b−1)少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程、及び
(1b−2)金属を含む層を、前記少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料をと接するように形成する工程
を含む。
【0025】
要約すると、本発明のエッチング方法においては、少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料上に接触させ、且つ、金属を前記N−F結合を有する有機化合物と接する状態に置くことを特徴としている。
【0026】
これにより、金属が存在する箇所の固体材料のエッチング速度を向上させることができる。なお、後述の工程(3)のように、エッチング速度のさらなる向上を目的として露光する場合は、該金属が光をさえぎるが、それでもなお、金属が存在しない箇所よりもエッチング速度を向上させることができる。
【0027】
工程(1a)
工程(1a)では、上述のとおり、金属、及び少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、固体材料の表面に接触させる。
【0028】
金属としては、後述のN−F結合を有する有機化合物が液体の場合又はN−F結合を有する有機化合物を液状化させる場合は必要に応じて液状化した該N−F結合を有する有機化合物中に分散できるものであれば特に制限はない。また、有機溶媒等を使用する場合は該有機溶媒中に分散できるものであれば特に制限はない。具体的には、銅、亜鉛、ニッケル、銀、白金、マンガン、パラジウム等が挙げられる。これらの金属は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。また、前記挙げた金属の少なくとも1種を含む合金を使用してもよい。
【0029】
これらの金属のなかでも、後述の工程(2)を行わない場合(例えば28℃)では、よりエッチング速度を向上させられるため、銅、亜鉛、ニッケル、銀、白金、マンガン、パラジウム等が好ましく、銅、亜鉛、ニッケル、白金等がより好ましく、亜鉛、ニッケル等がより好ましい。また、後述の工程(2)を行う場合(例えば75〜100℃)では、よりエッチング速度を向上させられるため、銅、亜鉛、ニッケル、白金等が好ましく、銅、白金等がより好ましい。なお、これらの金属は、公知又は市販のものを使用することができる。
【0030】
金属の形状は、特に制限されない。粒子状でもよいし、粉末状或いは合金としてもよい。また、平均粒径も後述のN−F結合を有する有機化合物が液体の場合又はN−F結合を有する有機化合物を液状化させる場合は必要に応じて液状化した該N−F結合を有する有機化合物中に分散できれば特に制限はないが、固体材料の表面にN−F結合を有する有機化合物とともに均一に広がることが望ましい。例えば、10nm〜1000μm程度とすればよい。この平均粒径に関して言えば、微粒子の粒径が必ずしも揃っている必要はなく、分散した粒径に分布があっても構わない。
【0031】
N−F結合を有する有機化合物は、フッ素化剤として知られているものであり、一般式(1)で示されるものが好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、
【0034】
【化6】

【0035】
はブレンステッド酸の共役塩基である。)
一般式(1)において、
【0036】
【化7】

【0037】
を生成するブレンステッド酸としては、例えば、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ジニトロベンゼンスルホン酸、トリニトロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2−エトキシエタン)スルホン酸、パーフルオロ(4−エチルシクロヘキサン)スルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸、カンファースルホン酸、ブロモカンファースルホン酸、Δ−コレステン−3−オン−6−スルホン酸、1−ヒドロキシ−p−メンタン−2−スルホン酸、p−スチレンスルホン酸、β−スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、パーフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホン酸等のスルホン酸;硫酸、リン酸、硝酸等の鉱酸;過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸等のハロゲン酸;モノメチル硫酸、モノエチル硫酸等のモノアルキル硫酸;酢酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ジクロロ酢酸、アクリル酸等のカルボン酸;HAlF、HBF、HB、HPF、HSbF、HSbF、HSb11、HAsF、HAlCl、HAlClF、HAlFCl、HBCl、HBClF、HBBrF、HSbCl、HSbClF等のルイス酸とハロゲン化水素との化合物;HBPh(Phはフェニル基)、
【0038】
【化8】

【0039】
等のアリール置換ホウ素化合物;(FSONH、(PhSONH(Phはフェニル基)、(CFSONH、(CSONH、(CSONH、(HCFCFSONH、CFSONHSO13
【0040】
【化9】

【0041】
等の酸性アミド化合物;(FSOCH、(CFSOCH、(PhOSOCH(Phはフェニル基)、(CFSOCH、(CFSOCH、(CSOCH、(C17SOCH等の炭素酸化合物等が挙げられる。
【0042】
安定性の高いN−F結合を有する有機化合物を得るためには、
【0043】
【化10】

【0044】
として酢酸(pKa:4.56)よりも強い酸性度のブレンステッド酸の共役塩基が特に好ましい。
【0045】
前記共役塩基としては、例えば、BFPFAsFSbFAlFAlClSbClSbClF、Sb11OClOOSOF、OSOCl、OSOOH、OSOOCHOSOCHOSOCFOSOCClOSOOSOOSOCHOSONON(SOCF等が特に好ましい。なかでも、テトラフルオロボレート(BF)又はパーフルオロアルカンスルホネート(OSOCFOSO等)が好ましく、テトラフルオロボレート(BF)がより好ましい。
【0046】
一般式(1)を満たすN−F結合を有する有機化合物としては、例えば、N−フルオロピリジニウム化合物(A)、N−フルオロキヌクリジニウム塩(B)、N−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン化合物(C)等が挙げられる。
【0047】
N−フルオロピリジニウム化合物(A)として好ましい化合物は、次の一般式(A1)、(A2)又は(A3)で示されるものである。
【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
一般式(A1)〜(A3)中、
隣接するRとR、RとR、RとR又はRとRは連結して、−CR=CR−CR=CR−を形成していてもよく、
また、R’とR’、R’とR’、R’とR’又はR’とR’は連結して、−CR’=CR’−CR’=CR’−を形成していてもよく、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’及びR’は同じか又は異なり、いずれも、水素原子;ハロゲン原子;ニトロ基;ヒドロキシ基;シアノ基;カルバモイル基;ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜5のアシル基(アルカノイル基等)、炭素数1〜5のアシルオキシ基(アルカノイルオキシ基等)及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルケニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリール基;少なくとも1種のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアシル基(アルカノイル基等);ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキルスルホニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリールスルホニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキルスルフィニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリールスルフィニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリールオキシ基;少なくとも1種のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアシルオキシ基(アルカノイルオキシ基等);少なくとも1種のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアシルチオ基(アルカノイルチオ基等);ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルカンスルホニルオキシ基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい基炭素数6〜15のアリールスルホニルオキシ基;炭素数1〜5のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよいカルバモイル基;炭素数1〜5のアシル基(アルカノイル基等)及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよいアミノ基;ハロゲン原子、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のN−アルキルピリジニウム塩基;ハロゲン原子、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数11〜15のN−アリールピリジニウム塩基;又は有機ポリマー鎖であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’及びR’は種々の組合せでヘテロ原子を介して又は介さずに環構造を形成してもよく、
一般式(A2)において、R、R、R、R、R、R、R、R及びRの1つが
【0052】
【化14】

【0053】
(Rは単結合又は炭素数1〜5のアルキレン基)であり、
一般式(A3)において、R、R、R、R、R、R、R、R及びRのうちの1つとR’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’及びR’のうちの1つとは単結合で結合して結合鎖を形成している。
【0054】
また、
【0055】
【化15】

【0056】
は一般式(1)におけるものと同じ、
【0057】
【化16】

【0058】
と同じである。
【0059】
本発明に用いられるN−フルオロピリジニウム塩(A)のうち、とくに好ましい化合物としては、次の一般式(A1a):
【0060】
【化17】

【0061】
(式中、R1a、R2a、R3a、R4a及びR5aは同じか又は異なり、いずれも水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン原子、メチル基もしくはハロゲンで置換されていてもよいフェニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基(アルカノイル基等)、炭素数2〜4のアシルオキシ基(アルカノイルオキシ基等)、炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基、シアノ基又はニトロ基;
【0062】
【化18】

【0063】
がpKaが4.56以下のブレンステッド酸の共役塩基である)
で表される化合物(A1a)、及び次の一般式(A2a):
【0064】
【化19】

【0065】
[式中、R1a、R2a、R3a、R4a及びR5aのうち1つが
【0066】
【化20】

【0067】
(rは0〜5、好ましくは0〜2の整数)であり、その他が同じか又は異なり、いずれも水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基又はハロゲン原子である]
で表される化合物(A2a)よりなる群から選ばれるN−フルオロピリジニウム塩があげられる。
【0068】
また、次の一般式(A3a):
【0069】
【化21】

【0070】
(式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R1a’、R2a’、R3a’、R4a’及びR5a’は同じか又は異なり、いずれも水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン原子、メチル基もしくはハロゲンで置換されていてもよいフェニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基(アルカノイル基等)、炭素数2〜4のアシルオキシ基(アルカノイルオキシ基等)、炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基、シアノ基又はニトロ基であり、R1a、R2a、R3a、R4a、R5aのうち1つはR1a’、R2a’、R3a’、R4a’、R5a’のうちの1つと単結合で結合鎖を形成し、
【0071】
【化22】

【0072】
が、pKaが4.56以下のブレンステッド酸の共役塩基である)
で表される化合物(A3a)も挙げられる。
【0073】
上記の一般式(A1a)、(A2a)及び(A3a)で示される化合物のなかでも、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R1a’、R2a’、R3a’、R4a’及びR5a’は、電子供与性が高いほど安定性が高くなり、電子吸引性が高いほど反応性が高くなる。この観点から、要求特性に応じて適宜選択すればよい。
【0074】
N−フルオロキヌクリジニウム塩(B)として、特に好ましい化合物は、次の一般式(B):
【0075】
【化23】

【0076】
(式中、
【0077】
【化24】

【0078】
は式(1)と同じである)
で示されるものである。
【0079】
また、N−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン化合物(C)として特に好ましい化合物は、一般式(C):
【0080】
【化25】

【0081】
(式中、Rは、水酸基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基;
【0082】
【化26】

【0083】
は同じか又は異なり、いずれも式(1)と同じである)
で示されるものである。
【0084】
これらのN−F結合を有する有機化合物のなかでも、電子を受け取りやすい芳香環の骨格を有しているという点から、N−フルオロピリジニウム化合物(A)が好ましい。
【0085】
本発明において、N−F結合を有する有機化合物は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。N−F結合を有する有機化合物を2種類以上組み合わせて使用する場合は、上記のN−F結合を有する有機化合物を任意に組み合わせればよい。特に、N−フルオロピリジニウム化合物(A)を2種類以上組み合わせて使用すると、融点を低くし、室温で液体とすることができるため、例えば、塗布する場合には、そのまま塗布できるため、工程(1)を簡便に行うことができる。
【0086】
N−F結合を有する有機化合物を2種類以上組み合わせて使用する場合の組成比は、特に制限はなく、融点を低くし、室温で液体とすることができる組成比とすることが好ましい。この場合、各成分の含有量をそれぞれ1〜99質量%程度とすればよい。
【0087】
さらに、これらN−F結合を有する有機化合物と、これらと相溶性を有する第2の成分とを組み合わせて、機能を向上させることも好ましく採用される。例えば、イオン液体を加えることで、膜の粘度、均一性、塗布の容易さ、固体材料との濡れ性等の密着性等を調整することが出来る。
【0088】
具体的なイオン液体としては、アルドリッチ社のイオン液体を掲載した試薬カタログ、又は関東化学(株)の脂肪族イオン液体を掲載した試薬カタログに記載されている、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等の化合物を挙げることが出来る。
【0089】
例えば、水素終端を有するシリコン基板における密着性を向上させる目的では、対カチオン若しくは対アニオンのアルキル鎖長の長いもの、又はこれらイオンの分子量の比較的大きいものが好ましく用いられる。
【0090】
具体的な例としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムジシアナミド等が挙げられる。
【0091】
また第2の成分として、N−F結合を有する有機化合物と相溶性の高い有機溶媒、高分子、オイル等を混合して用いてもよい。
【0092】
有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、メチルエチルケトン、t−ブチルメチルケトン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。
【0093】
また高分子としては、N−F結合を有する有機化合物との相溶性が有る、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレン、イオン交換用高分子等、極性基を分子内に含んだ親水性高分子、含フッ素アルキルエーテルポリマー等が挙げられる。
【0094】
オイルとしては、スクワレン、脂肪酸エステル等の動植物油でも、ジメチルシロキサン等から構成されるシリコンオイル等の合成油でも用いることが出来る。
【0095】
固体材料としては、半導体や絶縁体等が挙げられるが、半導体としては、シリコン(単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等)、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、シリコンカーバイト(SiC)、ガリウムヒ素、ガリウムアルミニウムヒ素、インジウムリン、インジウムアンチモン、窒化ガリウム、窒化アルミニウム等を使用できる。また、絶縁体としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム等の金属酸化物及びこれらのシリケート、二酸化ケイ素、石英等のシリコン酸化物、シリコン窒化物、サファイア等を使用できる。なかでも、後述の工程(2)を採用する場合には、エッチング速度の向上効果の点から、シリコン(単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等)、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、インジウムリン等がより好ましい。
【0096】
なお、これらの固体材料の表面形状などに関しては特に制限はない。
【0097】
工程(1)で固体材料に接触させた材料中のN−F結合を有する有機化合物は、結晶、多結晶、アモルファス、液体のいずれでも用いられるが、固体材料との反応を良好に進行させるためには、アモルファス又は液体であることが好ましい。
【0098】
ここで、工程(1a)としては、具体的には、
(1a−1)N−F結合を有する有機化合物を溶媒に溶解させるとともに金属を該溶媒に分散させ、前記固体材料の表面に塗布し、必要に応じて溶媒を除去する工程
等が挙げられる。
【0099】
N−F結合を有する有機化合物が液状であるか、加熱等により液状化できるものを用いれば、固体材料の表面に容易に塗布することができる。
【0100】
工程(1a)で溶媒を使用する場合、特に制限されるわけではないが、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、メチルエチルケトン、t−ブチルメチルケトン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。なかでも、N−F結合を有する有機化合物の溶解度が高い点から、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンが好ましい。
【0101】
金属を分散させたN−F結合を有する有機化合物からなる材料を、固体材料表面に接触させる方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、キャスト法、スピンコート法、浸漬法、スプレー法、インクジェット法又はドクターブレード法による塗布法や、液化させたこれら材料中に固体材料を含浸させることで実施することができる。塗布する場合では、固体材料の全面に塗布してもよいし、部分的にのみ塗布してもよい。なお、部分的に塗布する場合は、マスクをしてスプレーする方法又はインクジェット法で塗布する方法が好ましい。
【0102】
上記N−F結合を有する有機化合物からなる材料の膜厚は、特に制限はないが、固体材料をより充分にエッチングできる点から、100nm〜50mmが、さらには200nm〜10mmが好ましい。なお、深くエッチングする場合は、厚く形成することが好ましい。
【0103】
工程(1)において溶媒を使用する場合、溶媒を除去する方法としては、特に制限されるわけではないが、例えば、0.1kPa〜0.1MPa、25〜100℃で熱処理して除去する方法、また常温(20℃程度)、常圧(0.1MPa程度)下で送風する方法などで行うことができる。
【0104】
N−F結合を有する有機化合物が、加熱により液状化できる場合、その熱処理温度は、融点、凝固点等にもよるが、0〜150℃が好ましい。また構造の異なるN−F結合を有する有機化合物や、イオン液体、有機溶媒、有機酸塩、アミン塩等のN−F結合を有する有機化合物と相溶性を有する別の材料を混合させる等により融点を下げ、液状化させることも好ましく用いられる。
【0105】
ここで具体的な例を挙げれば、N−フルオロ−3−メチルピリジニウム テトラフルオロボレート(融点59℃)とN−フルオロ−4−メチルピリジニウム テトラフルオロボレート(融点66℃)とを質量比で2:1で混合すると、融点は−17℃に低下する。このことから、液体として用いる際には、少なくとも2種類以上のN−F結合を有する有機化合物を混合することが有効な方法である。
【0106】
なお、上記N−F結合を有する有機化合物からなる材料と固体材料を接触させた際に、上記材料が液状又は液状のものを含んでいる場合は、その後乾燥してもよい。乾燥条件は、使用するN−F結合を有する有機化合物により適宜調整すればよい。
【0107】
また加熱によりN−F結合を有する有機化合物を液状化させて塗布した後、冷却により固化させても良い。この場合、加熱はN−F結合を有する有機化合物の融点以上であれば良く、冷却温度は凝固点以下であれば良い。
【0108】
工程(1b−1)
工程(1b−1)では、上述のとおり、少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる。
【0109】
この際、使用できるN−F結合を有する有機化合物及び固体材料は、工程(1a)にて説明したものを用いることができる。
【0110】
また、N−F結合を有する有機化合物からなる材料を固体材料へ接触させる方法や条件等も、金属を使用しないこと以外は工程(1a)にて説明したものと同様とすればよい。
【0111】
工程(1b−2)
工程(1b−2)では、上述のとおり、金属を含む層を、前記少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料と接するように形成する。
【0112】
金属を含む層としては、金属を含んでいれば特に制限はされず、工程(1a)にて説明したものを含んでいればよい。具体的な形状としては、金属蒸着膜、金属箔でもよいし、金属膜を加工したメッシュでもよい。
【0113】
金属を含む層の形成方法としては、上記の金属を含む層が少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料と接するように積層させればよい。
【0114】
また、該金属を含む層を安定させるため、さらにその上に透明基板を積層してもよい。
【0115】
透明基板としては、特に制限はなく、ガラス、プラスチック等から構成すればよい。
【0116】
金属を含む層の上に透明基板を積層させる場合には、例えば、金属箔、金属膜を加工したメッシュ等の上に透明基板を積層させてもよいし、蒸着等で表面に金属薄膜を形成した透明基板を用い、これを金属を含む層及び透明基板として用いてもよい。
【0117】
反応機構は必ずしも明らかではないが、固体材料がシリコンの場合について例にとると、シリコンからN−F結合を有する有機化合物への電子移動が起こり、界面でシリコンのフッ素化反応が進行する。生成するSiF4が除去されてシリコンがエッチングされるが、この電子移動ないしはフッ素化反応のどちらか、あるいは両方において銅の存在により反応速度が向上するものと考えられる。
【0118】
以上の機構を考慮して、固体材料由来のフッ化物が容易に除去できる状態に置けば、エッチング速度を向上させることが可能である。具体的には、減圧下でのエッチングにより、エッチング速度の向上が達成できる。
【0119】
工程(2)
本発明では、前記の工程(1a)の後、又は工程(1b−1)及び(1b−2)の後に、
(2)前記固体材料を加熱する工程
を施してもよい。
【0120】
これにより、前記N−F結合を有する有機化合物からなる材料が接触した箇所の固体材料の全面にわたって、エッチング速度をより向上させることができる。
【0121】
加熱温度は、常温(20℃)をこえる温度であれば特に制限はないが、25℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。なお、後述の工程(3)(露光)を行う場合は25℃以上が好ましく、行わない場合は28℃以上が好ましい。加熱温度の上限値は、特に制限はないが、使用するN−F結合を有する有機化合物の分解温度以下とすればよい。具体的には、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。具体的には、以下の太陽電池表面テクスチャ形成用途で例示するように、75℃以上で十分なエッチング速度が期待できる。
【0122】
加熱時間は特に制限はなく、必要とするエッチング深さに応じて適宜設定すればよいが、具体的には、5分〜10時間程度が好ましく、30分〜2時間程度がより好ましい。なお、後述の工程(3)(露光)を行う場合は、露光している間は加熱していることが好ましい。
【0123】
加熱方法としても特に制限はなく、従来から行われている方法を採用すればよい。例えば、ホットプレート、ペルチェ素子、水浴、オイルバス、恒温槽、恒温恒湿槽、乾燥機、インキュベーター、加熱炉、電気炉、赤外線照射等を使用すればよい。
【0124】
工程(3)
本発明では、
(3)前記固体材料に、前記N−F結合を有する有機化合物からなる材料側から露光する工程
を含んでいてもよい。
【0125】
なお、前記工程(2)(加熱)を行う場合は、露光するタイミングは、工程(2)と同時に又は別途のいずれでもよい。ただし、同時に露光するのが簡便であり、且つ、よりエッチング速度向上効果を見込むことができる。
【0126】
工程(3)で露光することにより、現像することなく、光を照射した箇所をより効果的にエッチングすることができる。これは、固体材料からN−F結合を有する有機化合物への電子移動が、光照射による電子励起を経由して非常に容易になるため、非常に高い速度でエッチングすることができるためと考えられる。
【0127】
また、光照射強度を段階的に調節することで、直線的な形状以外の構造体の加工も可能にする。具体的には、斜面、曲面構造体等の作成ができる。また、同様にエッチング操作の際に、2種類以上のヒーターを用いて基板上の温度に変化を付ければ、より複雑な形状を形成することも可能となる。
【0128】
さらには、前記N−F結合を有する有機化合物からなる材料を、固体材料から除去する工程(後述の工程(4))の前に、第2の加工操作を行うことも好ましく行われる。この連続エッチング操作によれば、複雑な形状を1工程で加工できる。ここで得られる固体材料の加工プロセスの利点は、通常のエッチング操作では達成できない。またさらには、光照射強度を段階的に調節することで、直線的な形状以外の構造体の加工も可能にする。具体的には、斜面、曲面構造体等の作製ができる。
【0129】
露光する方法としては、例えば、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子ビーム、イオンビーム、レーザービーム等を照射する方法が挙げられる。この際、固体材料の表面全面に照射してもよいが、部分的に照射する場合は、マスクする方法も使用できるが、プロジェクタ等を用いても、簡便に所望の箇所を照射することができる。これらの光のなかでも、可視光又は紫外線が好ましい。また、X線を使用した場合には、空間分解能を向上させることができる。
【0130】
なお、ここで、可視光とは波長400〜800nm程度、紫外線とは波長10〜400nm程度、赤外線とは波長800nm〜25μm程度、X線とは波長0.01〜70nm程度、電子ビームとは加速電圧が0.1kV〜200kV程度、イオンビームとは加速電圧が1kV〜200kV程度のものをいう。また、レーザービームは、光の照射範囲を正確かつ容易にコントロールできる点で優れており、パルス巾、出力、波長、発振方式及び媒体にこだわらず使用可能である。
【0131】
露光強度は、0.001〜100W/mmが、さらには0.01〜10W/mmが好ましい。また、露光時間は、1秒〜24時間が、さらには10秒〜5時間が好ましい。さらに、露光量は、0.001〜100W・h/mmが、さらには0.01〜10W・h/mmが好ましい。
【0132】
工程(4)
以上のように、固体材料をエッチングした後、
(4)前記N−F結合を有する有機化合物からなる材料を、固体材料との間の残渣とともに除去する工程
により、所望の形状にエッチングされた固体材料を得てもよい。
【0133】
この際、前記N−F結合を有する有機化合物からなる材料を除去する具体的な方法としては、特に限定されるわけではないが、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、メチルエチルケトン、t−ブチルメチルケトン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、メチルスルホラン等の有機溶媒に浸漬する方法、回転させながら前記有機溶媒を吹き付ける方法等が挙げられる。
【0134】
なお、前記N−F結合を有する有機化合物からなる材料を除去した後、再度上記有機溶媒中に浸漬し、必要に応じて攪拌、超音波照射等を施すことで、シリコン基板等の固体材料上に付着する残渣をより確実に除去することができる。
【0135】
本発明のエッチング方法は、上述のように、地球温暖化を引き起こす環境負荷が高いガス類、又は反応性、毒性の高く危険なフッ素ガス、フッ酸を用いることなく、半導体製造、太陽電池用基板のテクスチャ構造形成、微小電気機械素子(MEMS、Micro Electro Mechanical Systems)製造、レンズ製造、X線ミラー製造、ミラー製造等に適用することができ、様々な方向からエッチングすることが可能であるため、同じ装置構成でより複雑な形状のエッチング処理物を簡便にかつ安全に製造することができる。特に、金属微粒子を均一に分散させてエッチングを行うと、表面の粗面化を効率良く行うことができることから、太陽電池用基板の光閉じ込め加工又は反射防止加工において、優れた加工技術となりえる点で有用である。また、金属を使用するだけでなく、エッチング処理の際に加熱を施すことにより、表面の形状を逆ピラミッド状の凹部を形成することが可能である。このように、逆ピラミッド形状の凹部を形成すれば、特に太陽電池用固体材料の表面の光閉じ込め加工又は反射防止加工(テクスチャ構造形成)に特に有用である。
【0136】
なお、太陽電池用固体材料の表面の光閉じ込め加工又は反射防止加工(テクスチャ構造形成)において、そのテクスチャ形状により光利用効果が異なり、ピラミッド型より逆ピラミッド型の方が望ましいことが報告されている(非特許文献1〜2)。また凹凸のパタン幅も、基板(例えばシリコン基板)の厚さと同程度が望ましいことが知られている(非特許文献3)。具体的には100nm〜1μm程度が望ましい。今回の発明で形成されるエッチング表面形状に関しては、高温条件下(75℃以上)で施した方が、これに近い形状であることから、太陽電池用固体材料の表面の光閉じ込め加工又は反射防止加工については、高温条件下(75℃以上)で施した工程がより望ましいと考えられる。テクスチャ形成において、ピラミッド構造はアルカリエッチングにより形成することが可能であるが、逆ピラミッド構造はマスクの使用が必要とされている(非特許文献1)。今回のように、エッチング試薬を用いた1工程での加工方法は、製造コスト削減の面で利点を有している。
【0137】
太陽電池用テクスチャ形成においては、金属によるエッチング速度の向上効果により、75℃以上の温度に加熱すれば十分な処理速度が期待できる。この際の具体的な処理時間は30〜180分程度が好ましい。また光照射を併用すれば、より容易にテクスチャ構造の形成を行うことができる。また、実施例で明らかなように、ほぼ室温程度の温度環境でも、光閉じ込め及び反射防止に有効な形状にエッチングすることが可能である。
【実施例】
【0138】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0139】
なお、以下の実施例において、N−F結合を有する有機化合物、固体材料及び照射光源としては、以下のものを使用した。
【0140】
<N−F結合を有する有機化合物>
N−F結合を有する有機化合物(I):N−フルオロ−3−メチルピリジニウム テトラフルオロボレート(融点59℃)
【0141】
【化27】

【0142】
N−F結合を有する有機化合物(II):N−フルオロ−4−メチルピリジニウム テトラフルオロボレート(融点66℃)
【0143】
【化28】

【0144】
<固体材料>
シリコン基板(1):CZ法により作製(ドーパント:B、p型、面方位(100)、抵抗率:10〜20Ωcm、厚さ600±25μm)
シリコン基板(2):CZ法により作製(ドーパント:P、n型、面方位(100)、抵抗率:10〜30Ωcm、厚さ700±15μm)
ゲルマニウム基板:融液成長法により作製(ドーパント:In、p型、面方位(100)、抵抗率:0.05〜0.25Ωcm、厚さ525±25μm、大きさ10mm角
4H−n型シリコンカーバイト基板:バルク結晶成長法により作製−六方晶(ドーパント:N、n型、面方位(0001)、抵抗率:0.018Ωcm、厚さ372μm、大きさ10mm角)
ガリウムヒ素基板:LEC(Liquid Encapsulated Czochralski)法により作製(ドーパント:ノンドープ、面方位(100)、抵抗率:4.3〜6.3×10Ω・cm、厚さ350±10μm、大きさ10mm角)
インジウムリン基板:圧制御引上げ法(VCZ法)により作製(n型、面方位(100)、抵抗率:9.2×10−4Ωcm、厚さ:625±25μm、大きさ10mm角)
窒化ガリウム基板:(株)パウデックより購入品;厚さ800μmのサファイヤ基板(0001)上にGaNをエピタキシャル成長させたもの(ドーパント:ノンドープ、GaN層の厚み:2μm、面方位(0001)(Ga面)、シート抵抗:6000〜10000Ω/sq、大きさ15mm×20mm)
【0145】
<照射光源>
キセノンランプ:浜松ホトニクス(株)製、高安定キセノンランプL2274型(出力150W、透過波長220〜2000nm、放射強度2μw/cm・nm−1
【0146】
実施例1
<工程A:基板の前処理>
2cm角のシリコン基板(1)を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理してシリコン基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0147】
<工程B:銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物の調製と塗布>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。ここで得た混合物0.6μL中に銅微粒子(平均直径100μm)4mgを分散し、冷却後、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコン基板上に塗布した。
【0148】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物を塗布したシリコン基板を載せ、プレート温度を100℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0149】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態のシリコン基板を暗室中で、5分間放置した。
【0150】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
シリコン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0151】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0152】
実施例2
工程Dにおいて、暗室中で、10分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0153】
実施例3
工程Dにおいて、暗室中で、15分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0154】
実施例4
工程Dにおいて、暗室中で、30分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0155】
実施例5
工程Dにおいて、暗室中で、60分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0156】
実施例6
工程Dにおいて、暗室中で、120分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0157】
実施例7
工程Dにおいて、暗室中で、240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0158】
実施例8
<工程A:基板の前処理>
2cm角のシリコン基板(1)を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理してシリコン基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0159】
<工程B:N−F結合を有する有機化合物の塗布と銅蒸着ガラス板の積層>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。冷却後、ここで得た混合物0.6μLを、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコン基板上に塗布した。この上に、銅を20nm厚蒸着したガラス板を、銅の面をシリコン側に向けて重ねた。
【0160】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅蒸着ガラス板及びN−F結合を有する有機化合物からなる層を形成したシリコン基板を載せ、プレート温度を100℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0161】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態のシリコン基板を暗室中で、5分間放置した。
【0162】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
ガラス板を剥がし、シリコン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0163】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0164】
実施例9
工程Dにおいて、暗室中で、10分間放置したこと以外は実施例8と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0165】
実施例10
工程Dにおいて、暗室中で、60分間放置したこと以外は実施例8と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0166】
参考例1
<工程A:基板の前処理>
2cm角のシリコン基板(1)を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理してシリコン基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0167】
<工程B:N−F結合を有する有機化合物の調製と塗布(銅微粒子なし)>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。冷却後、ここで得た混合物0.6μLを、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコン基板上に塗布した。この上に、未処理のガラス板を重ねた。
【0168】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得たガラス板及びN−F結合を有する有機化合物からなる層を形成したシリコン基板を載せ、プレート温度を100℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0169】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態のシリコン基板を暗室中で、5分間放置した。
【0170】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
ガラス板を剥がし、シリコン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0171】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0172】
参考例2
工程Dにおいて、暗室中で、10分間放置したこと以外は参考例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0173】
参考例3
工程Dにおいて、暗室中で、15分間放置したこと以外は参考例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0174】
参考例4
工程Dにおいて、暗室中で、30分間放置したこと以外は参考例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0175】
参考例5
工程Dにおいて、暗室中で、60分間放置したこと以外は参考例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0176】
参考例6
工程Dにおいて、暗室中で、120分間放置したこと以外は参考例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0177】
参考例7
工程Dにおいて、暗室中で、240分間放置したこと以外は参考例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0178】
実施例1〜10及び参考例1〜7で得られた結果を図1に示す。銅の形状は、薄膜であっても微粒子であっても、エッチングに対する加速効果を有していることが判る。
【0179】
実施例11
<工程A:基板の前処理>
2cm角のシリコン基板(1)を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理してシリコン基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0180】
<工程B:銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物の調製と塗布>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。ここで得た混合物0.6μL中に銅微粒子(直径100μm)4mgを分散し、冷却後、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコン基板上に塗布した。
【0181】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物を塗布したシリコン基板を載せ、プレート温度を28℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0182】
<工程D:光照射の有無>
上面(銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物からなる層の側)からキセノンランプで白色光(露光波長200〜2000nm、露光強度1.5W/cm)を30分間照射した。
【0183】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
シリコン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0184】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面(エッチング深さ)を計測した。結果を図2に示す。図2に示すように、銅微粒子の中心の下が銅の無いところより平均で128nm深くエッチングされていることを確認した。
【0185】
実施例12
工程Dにおいて、露光強度を露光強度3W/cmとしたこと以外は実施例11と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。結果を図3に示す。図3に示すように、銅微粒子の中心の下が銅の無いところより平均で150nm深くエッチングされていることを確認した。
【0186】
実施例13
<工程A:基板の前処理>
2cm角のシリコン基板(1)を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理してシリコン基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0187】
<工程B:N−F結合を有する有機化合物の塗布と銅蒸着ガラス板の積層>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。冷却後、ここで得た混合物0.6μLを、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコン基板上に塗布した。この上に、銅を20nm厚蒸着したガラス板を、銅の面をシリコン側に向けて重ねた。
【0188】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅蒸着ガラス板及びN−F結合を有する有機化合物からなる層を形成したシリコン基板を載せ、プレート温度を28℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0189】
<工程D:光照射の有無>
上面(銅蒸着ガラス板の側)からキセノンランプで白色光(露光波長200〜2000nm、露光強度0.5W/cm)を30分間照射した。
【0190】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
ガラス板を剥がし、シリコン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0191】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0192】
実施例14
工程Dにおいて、露光強度を露光強度1.0W/cmとしたこと以外は実施例13と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0193】
実施例15
工程Dにおいて、露光強度を露光強度1.5W/cmとしたこと以外は実施例13と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0194】
実施例16
工程Dにおいて、露光強度を露光強度2.0W/cmとしたこと以外は実施例13と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0195】
実施例17
工程Dにおいて、露光強度を露光強度2.5W/cmとしたこと以外は実施例13と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0196】
実施例18
工程Dにおいて、露光強度を露光強度3.0W/cmとしたこと以外は実施例13と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0197】
参考例8
工程Bにおいて、銅を20nm厚蒸着したガラス板を、銅と反対側の面をシリコン側に向けて重ねた(シリコン基板と銅は接触していない)こと以外は実施例8と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0198】
参考例9
工程Bにおいて銅を20nm厚蒸着したガラス板を、銅と反対側の面をシリコン側に向けて重ね(シリコン基板と銅は接触していない)、工程Dにおいて露光強度を露光強度1.0W/cmとしたこと以外は実施例8と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0199】
参考例10
工程Bにおいて銅を20nm厚蒸着したガラス板を、銅と反対側の面をシリコン側に向けて重ね(シリコン基板と銅は接触していない)、工程Dにおいて露光強度を露光強度1.5W/cmとしたこと以外は実施例8と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0200】
参考例11
工程Bにおいて銅を20nm厚蒸着したガラス板を、銅と反対側の面をシリコン側に向けて重ね(シリコン基板と銅は接触していない)、工程Dにおいて露光強度を露光強度2.0W/cmとしたこと以外は実施例8と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0201】
参考例12
工程Bにおいて銅を20nm厚蒸着したガラス板を、銅と反対側の面をシリコン側に向けて重ね(シリコン基板と銅は接触していない)、工程Dにおいて露光強度を露光強度2.5W/cmとしたこと以外は実施例8と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0202】
参考例13
工程Bにおいて銅を20nm厚蒸着したガラス板を、銅と反対側の面をシリコン側に向けて重ね(シリコン基板と銅は接触していない)、工程Dにおいて露光強度を露光強度3.0W/cmとしたこと以外は実施例8と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0203】
参考例14
<工程A:基板の前処理>
2cm角のシリコン基板(1)を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理してシリコン基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0204】
<工程B:N−F結合を有する有機化合物の調製と塗布(銅微粒子なし)>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。冷却後、ここで得た混合物0.6μLを、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコン基板上に塗布した。この上に、未処理のガラス板を重ねた。
【0205】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得たガラス板及びN−F結合を有する有機化合物からなる層を形成したシリコン基板を載せ、プレート温度を28℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0206】
<工程D:光照射の有無>
上面(ガラス板の側)からキセノンランプで白色光(露光波長200〜2000nm、露光強度0.5W/cm)を30分間照射した。
【0207】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
ガラス板を剥がし、シリコン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0208】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0209】
参考例15
工程Dにおいて、露光強度を露光強度1.0W/cmとしたこと以外は参考例14と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0210】
参考例16
工程Dにおいて、露光強度を露光強度1.5W/cmとしたこと以外は参考例14と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0211】
参考例17
工程Dにおいて、露光強度を露光強度2.0W/cmとしたこと以外は参考例14と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0212】
参考例18
工程Dにおいて、露光強度を露光強度2.5W/cmとしたこと以外は参考例14と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0213】
参考例19
工程Dにおいて、露光強度を露光強度3.0W/cmとしたこと以外は参考例14と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0214】
実施例13〜18及び参考例8〜19のデータを図4に示す。
【0215】
銅とN−F結合を有する有機化合物とが接触している場合には、銅により光の透過が損なわれるにもかかわらず、シリコンとN−F結合を有する有機化合物間のエッチング反応の速度向上が確認できた。銅の顕著な触媒効果が発揮されているものと判断できる。なお、銅の反対面(ガラス板)がN−F結合を有する有機化合物と接触している場合は、銅により光の透過が損なわれるので、シリコンに当る光量が減少し、エッチング速度が減少する。この実験に際して、銅による光透過量は400nm〜800nmの波長において、これが無い時の20%〜50%であり、ガラス板による影響は、同じく90%である。銅蒸着膜による透過量減少よりも、エッチングの進行に対する触媒効果の方が大きく寄与していることを確認した。
【0216】
実施例19
固体材料としてシリコン基板(2)を用い、工程Dにおいて、暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約4.3μmエッチングされていることを確認した。
【0217】
実施例20
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりに白金微粒子(平均直径75μm)を用い、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約2.1μmエッチングされていることを確認した。
【0218】
参考例20
固体材料としてシリコン基板(2)を用い、金属を用いず、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約0.6μmエッチングされていることを確認した。
【0219】
実施例21
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりにニッケル微粒子(粒径200メッシュ)を用い、工程Cにおいてプレート温度を28℃とし、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約390nmエッチングされていることを確認した。
【0220】
実施例22
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりに亜鉛微粒子(直径75〜150μm)を用い、工程Cにおいてプレート温度を28℃とし、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約160nmエッチングされていることを確認した。
【0221】
実施例23
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりに銀微粒子(粒径325メッシュ)を用い、工程Cにおいてプレート温度を28℃とし、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約40nmエッチングされていることを確認した。
【0222】
実施例24
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりにマンガン微粒子(直径〜75μm)を用い、工程Cにおいてプレート温度を28℃とし、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約30nmエッチングされていることを確認した。
【0223】
実施例25
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりにパラジウム微粒子(粒径100メッシュ)を用い、工程Cにおいてプレート温度を28℃とし、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約25nmエッチングされていることを確認した。
【0224】
参考例21
固体材料としてシリコン基板(2)を用い、金属を用いず、工程Cにおいてプレート温度を28℃とし、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面のエッチングはほとんど進行していないことを確認した。
【0225】
実施例19〜25及び参考例20〜21から、N−F結合を有する有機化合物を用いたシリコンのエッチングにおいて、銅、亜鉛、ニッケル、銀、白金、マンガン及びパラジウムが触媒機能を有することが判った。
【0226】
実施例26
<工程A:基板の前処理>
2cm角のシリコン基板(1)を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理してシリコン基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0227】
<工程B:N−F結合を有する有機化合物の塗布と銅メッシュの積層>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。冷却後、ここで得た混合物0.6μLを、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコン基板上に塗布した。この上に、銅製メッシュ(メッシュ径:2.05mm;ピッチ:12.5μm;バー幅:5μm;穴幅:7.5μm)を静置し、この上からガラス板を載せて銅メッシュの位置を固定した(図5参照)。
【0228】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得たN−F結合を有する有機化合物を塗布したシリコン基板を載せ、プレート温度を28℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0229】
<工程D:光照射の有無>
上面(ガラス板の側)からキセノンランプで白色光(露光波長200〜2000nm、露光強度3.0W/cm)を30分間照射した。
【0230】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
ガラス板及び銅メッシュを剥がし、シリコン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0231】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0232】
結果を図6に示す。図6に示すように、銅メッシュとN−F化合物とが接触していた部分が、メッシュの形状を繁栄して、深くエッチングされていたことを確認した。
【0233】
実施例27
<工程A:基板の前処理>
2cm角のシリコン基板(1)を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理してシリコン基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0234】
<工程B:N−F結合を有する有機化合物の塗布と銅蒸着アクリル型の積層>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。冷却後、ここで得た混合物0.6μLを、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコン基板上に塗布した。この上に、銅(平均直径100nm)を蒸着したアクリル型(図7左図参照)を静置した(図7右図参照)。
【0235】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た、アクリル型及びN−F結合を有する有機化合物を積層したシリコン基板を載せ、プレート温度を100℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0236】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態のシリコン基板を暗室中で、2時間放置した。
【0237】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
アクリル型を剥がし、シリコン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0238】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面(エッチング深さ)を計測した。
【0239】
結果を図8に示す。アクリル型の形状をトレースしてエッチングされていることが確認できる。
【0240】
実施例28
<工程A:基板の前処理>
1cm角のゲルマニウム基板を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理して基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0241】
<工程B:銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物の調製と塗布>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。ここで得た混合物0.6μL中に銅微粒子(直径100μm)4mgを分散し、冷却後、工程Aにより前処理して乾燥させたゲルマニウム基板上に塗布した。
【0242】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物を塗布したゲルマニウム基板を載せ、プレート温度を28℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0243】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態の基板をキセノンランプ(光強度3.0W/cm)で、30分間光照射した。
【0244】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
ゲルマニウム基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0245】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたゲルマニウム基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面を計測した。その結果、ゲルマニウム表面が約691nmエッチングされていることを確認した。
【0246】
参考例22
工程Bにおいて銅微粒子を使用しないこと以外は実施例28と同様の処理を行い、得られたゲルマニウム基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、ゲルマニウム表面が約209nmエッチングされていることを確認した。
【0247】
実施例29
<工程A:基板の前処理>
1cm角のゲルマニウム基板を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理して基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0248】
<工程B:銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物の調製と塗布>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。ここで得た混合物0.6μL中に銅微粒子(直径100μm)4mgを分散し、冷却後、工程Aにより前処理して乾燥させたゲルマニウム基板上に塗布した。
【0249】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物を塗布したゲルマニウム基板を載せ、プレート温度を28℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0250】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態の基板を暗室中で、240分間放置した。
【0251】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
ゲルマニウム基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0252】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたゲルマニウム基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面を計測した。その結果、ゲルマニウム表面が約298nmエッチングされていることを確認した。
【0253】
参考例23
工程Bにおいて銅微粒子を使用しないこと以外は実施例29と同様の処理を行い、得られたゲルマニウム基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、ゲルマニウム表面が約6nmエッチングされていることを確認した。
【0254】
実施例30
<工程A:基板の前処理>
1cm角のシリコンカーバイト基板を超純水で3分間洗浄し、97%硫酸と30%過酸化水素水(硫酸:過酸化水素水=4:1(体積比))で10分間処理して基板上の有機物を除去した。これを超純水で10分間洗浄した後、50%フッ酸で10分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0255】
<工程B:銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物の調製と塗布>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。ここで得た混合物0.6μL中に銅微粒子(直径100μm)4mgを分散し、冷却後、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコンカーバイト基板上に塗布した。
【0256】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物を塗布したシリコンカーバイト基板を載せ、プレート温度を28℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0257】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態の基板を暗室中で、240分間放置した。
【0258】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
シリコンカーバイト基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0259】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコンカーバイト基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面を計測した。その結果、シリコンカーバイト表面が約485nmエッチングされていることを確認した。
【0260】
参考例24
工程Bにおいて銅微粒子を使用しないこと以外は実施例30と同様の処理を行い、得られたシリコンカーバイト基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコンカーバイト表面はほとんどエッチングされていない(検出限界外)ことを確認した。
【0261】
実施例31
<工程A:基板の前処理>
1.5×2cmのガリウムヒ素基板を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理して基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0262】
<工程B:銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物の調製と塗布>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。ここで得た混合物0.6μL中に銅微粒子(直径100μm)4mgを分散し、冷却後、工程Aにより前処理して乾燥させたガリウムヒ素基板上に塗布した。
【0263】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物を塗布したガリウムヒ素基板を載せ、プレート温度を28℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0264】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態の基板をキセノンランプ(光強度3.0W/cm)で、30分間光照射した。
【0265】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
ガリウムヒ素基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0266】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたガリウムヒ素基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面を計測した。その結果、ガリウムヒ素表面が約3983nmエッチングされていることを確認した。
【0267】
参考例25
工程Bにおいて銅微粒子を使用しないこと以外は実施例31と同様の処理を行い、得られたガリウムヒ素基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、ガリウムヒ素表面が約6nmエッチングされていることを確認した。
【0268】
実施例32
シリコンカーバイト基板の代わりに窒化ガリウム基板を用いること以外は実施例30と同様の処理を行い、得られた窒化ガリウム基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、窒化ガリウム表面が約600nmエッチングされていることを確認した。
【0269】
参考例26
シリコンカーバイト基板の代わりに窒化ガリウム基板を用い、工程Bにおいて銅微粒子を使用しないこと以外は実施例30と同様の処理を行い、得られた窒化ガリウム基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、窒化ガリウム表面はほとんどエッチングされていない(検出限界外)ことを確認した。
【0270】
実施例33
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりにニッケル微粒子(粒径200メッシュ)を用い、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約706nmエッチングされていることを確認した。
【0271】
実施例34
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりにニッケル微粒子(粒径200メッシュ)を用い、工程Cにおいてプレート温度を125℃とし、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約6460nmエッチングされていることを確認した。
【0272】
実施例35
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりに亜鉛微粒子(直径75〜150μm)を用い、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約809nmエッチングされていることを確認した。
【0273】
実施例36
固体材料としてシリコン基板(2)を、金属として銅微粒子の代わりに亜鉛微粒子(直径75〜150μm)を用い、工程Cにおいてプレート温度を125℃とし、工程Dにおいて暗室中で240分間放置したこと以外は実施例1と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約4140nmエッチングされていることを確認した。
【0274】
実施例37
実施例1と同様に銅微粒子を混ぜたN−F結合化合物を塗布したシリコン基板(2)を、暗室中クールプレート上75℃で240分間放置した。同様の後処理後、シリコン基板の位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約575nmエッチングされていることを確認した。
【0275】
実施例38
実施例1と同様に銅微粒子を混ぜたN−F結合化合物を塗布したシリコン基板(2)を、暗室中クールプレート上100℃で240分間放置した。同様の後処理後、シリコン基板の位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約4270nmエッチングされていることを確認した。
【0276】
実施例39
実施例1と同様に銅微粒子を混ぜたN−F結合化合物を塗布したシリコン基板(2)を、暗室中ホットプレート(アズワン(株)、型式CH−180)上125℃で240分間放置した。同様の後処理後、シリコン基板の位相シフト干渉顕微鏡により表面(エッチング深さ)を計測した。その結果、シリコン表面が約7500nm以上エッチングされていることを確認した。
【0277】
実施例37〜39の結果からは、銅微粒子のようにエッチングを加速する添加物を加える場合に、処理中の温度を上げると、相乗効果によりエッチングが大きく加速されることが判った。
【0278】
試験例:シリコン基板の太陽電池向け反射率低下検討
実施例39で得られたシリコン基板の反射率を測定し、太陽電池用表面処理方法としての本発明の検証を行った。
反射率測定装置:
大塚電子−マルチ瞬間測光システム分光計:MCPD−9800型
積分球形状:直径60mmφ、内面:硫酸バリウム
測定用光源:ハロゲンランプ;出力:150W;波長域:360nm〜1100nm
図9に示す測定系を用いて、処理したシリコン表面の分光反射率を測定した。結果を図10に示す。太陽光発電に重要な可視〜赤外領域の波長光において大きな反射率の低下が確認できた。以上から、エッチング反応に金属微粒子を触媒として加えることで、効率的な表面処理を行えることが判る。
【0279】
実施例40
<工程A:基板の前処理>
1cm角のインジウムリン基板を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理して基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0280】
<工程B:銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物の調製と塗布>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。ここで得た混合物0.6μL中に銅微粒子(直径100μm)4mgを分散し、冷却後、工程Aにより前処理して乾燥させたインジウムリン基板上に塗布した。
【0281】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物を塗布したインジウムリン基板を載せ、プレート温度を28℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0282】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態のインジウムリン基板を暗室中で、240分間放置した。
【0283】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
インジウムリン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0284】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたインジウムリン基板を位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO社製、NewView)により表面(エッチング深さ)を計測し、11.4nm深さまでエッチングされていることを確認した。
【0285】
実施例41
<工程A:基板の前処理>
2cm角のシリコン基板(2)を超純水で3分間洗浄し、UVオゾンで10分間処理してシリコン基板上の有機物を除去した。これを超純水で3分間洗浄した後、希フッ酸で1分間処理して表面の酸化皮膜を除去した。最後に超純水で10分間洗浄した。
【0286】
<工程B:銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物の調製と塗布>
N−F結合を有する有機化合物(I)とN−F結合を有する有機化合物(II)とを2:1(質量比)で秤量し、一旦95℃に加熱して溶融させ、均一に混合した。ここで得た混合物6μL中に銅微粒子(平均直径1μm)4mgを分散し、冷却後、工程Aにより前処理して乾燥させたシリコン基板上に塗布した。
【0287】
<工程C:基板の温度制御>
冷却機能付きのホットプレート(商品名:クールプレート;アズワン(株);型式:SCP125)上に、工程Bで得た銅微粒子を分散したN−F結合を有する有機化合物を塗布したシリコン基板を載せ、プレート温度を100℃に設定した。温度センサーを用いて表面温度を測定し、実験中の温度が設定通りである事を確認した。
【0288】
<工程D:光照射の有無>
工程Cの状態のシリコン基板を暗室中で、60分間放置した。
【0289】
<工程E:N−F結合を有する有機化合物を含む材料の除去>
シリコン基板表面のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を、アセトニトリル中に漬けて、20秒間超音波洗浄して除去した。さらに、残った残渣をアセトン中に漬けて、20秒間超音波照射して除去した。
【0290】
<工程F:エッチング評価>
工程Eにより得られたシリコン基板を、走査型電子顕微鏡(SEM)により、エッチングされた表面形状を観察した。
【0291】
実施例42
工程Dにおいて、暗室中で、120分間放置したこと以外は実施例41と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を、走査型電子顕微鏡(SEM)により、エッチングされた表面形状を観察した。
【0292】
実施例41〜42のシリコン基板の表面形状観察の結果、実施例41(放置時間60分)では、明確な逆ピラミッド形状のエッチング痕が確認された(図11)。さらに、実施例42(放置時間120分)では、エッチング痕である逆ピラミッド形状の大きさが拡大していた(図12)。
【0293】
実施例43
上面からキセノンランプで白色光(露光波長200〜2000nm、露光強度4.0W/cm)を30分間照射したこと以外は実施例13と同様の処理を行い、得られたシリコン基板を、走査型電子顕微鏡(SEM)により、エッチングされた表面形状を観察した(図13)。
【0294】
その結果、最大で1μm径程度のすり鉢状のエッチング痕が多数確認できた。以上の結果から、28℃程度であっても、触媒の存在下に光照射を行なうことで、光閉じ込め及び反射防止加工に有用なエッチングが可能であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1a)金属、及び少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程
を含む固体材料のエッチング方法。
【請求項2】
(1b−1)少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程、及び
(1b−2)金属を含む層を、前記少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料と接するように形成する工程
を含む固体材料のエッチング方法。
【請求項3】
前記金属を含む層が、銅、亜鉛、ニッケル、銀、マンガン、パラジウム及び白金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、又は該金属を含む合金を含む層である、請求項1又は2に記載の固体材料のエッチング方法。
【請求項4】
さらに、
(2)前記固体材料を加熱する工程
を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項5】
さらに、
(3)前記固体材料に、前記N−F結合を有する有機化合物を含む材料側から露光する工程
を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項6】
N−F結合を有する有機化合物が、一般式(1)で示される構造単位を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のエッチング方法。
【化1】

(式中、
【化2】

はブレンステッド酸の共役塩基である。)
【請求項7】
N−F結合を有する有機化合物が、一般式(A1)で示される化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載のエッチング方法。
【化3】

[式中、
隣接するRとR、RとR、RとR又はRとRは連結して、−CR=CR−CR=CR−を形成していてもよく、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは同じか又は異なり、いずれも、水素原子;ハロゲン原子;ニトロ基;ヒドロキシ基;シアノ基;カルバモイル基;ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数1〜5のアシルオキシ基及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルケニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリール基;少なくとも1種のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアシル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキルスルホニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリールスルホニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキルスルフィニル基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリールスルフィニル基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のアリールオキシ基;少なくとも1種のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアシルオキシ基;少なくとも1種のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアシルチオ基;ハロゲン原子及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルカンスルホニルオキシ基;ハロゲン原子及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい基炭素数6〜15のアリールスルホニルオキシ基;炭素数1〜5のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよいカルバモイル基;炭素数1〜5のアシル基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよいアミノ基;ハロゲン原子、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6〜15のN−アルキルピリジニウム塩基;ハロゲン原子、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数1〜5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数11〜15のN−アリールピリジニウム塩基;又は有機ポリマー鎖であり、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは種々の組合せでヘテロ原子を介して又は介さずに環構造を形成してもよく、
また、
【化4】

はブレンステッド酸の共役塩基である。]
【請求項8】
固体材料が、半導体又は絶縁体である請求項1〜7のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項9】
固体材料が、シリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイト、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ素、ガリウムアルミニウムヒ素、インジウムリン、インジウムアンチモン、窒化ガリウム及び窒化アルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の半導体である請求項1〜8のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のエッチング方法を使用する、太陽電池用固体材料の表面の光閉じ込め加工又は反射防止加工方法。
【請求項11】
(1a)金属、及び少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程
を含むエッチング処理物の製造方法。
【請求項12】
(1b−1)少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程、及び
(1b−2)金属を含む層を、前記少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料と接するように形成する工程
を含むエッチング処理物の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の製造方法により製造されたエッチング処理物。
【請求項14】
(1a)金属、及び少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程
を含む太陽電池用基板の製造方法。
【請求項15】
(1b−1)少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料を固体材料の表面に接触させる工程、及び
(1b−2)金属を含む層を、前記少なくとも1種のN−F結合を有する有機化合物を含む材料と接するように形成する工程
を含む太陽電池用基板の製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の製造方法により製造された太陽電池用基板。
【請求項17】
請求項11又は12に記載の製造方法により、固体材料がエッチング加工されたエッチング処理物、又は請求項14又は15に記載の製造方法により、固体材料がエッチング加工された太陽電池用基板を備え、且つ、該固体材料がシリコンである、シリコン太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−58723(P2013−58723A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−44861(P2012−44861)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】