説明

エッチング終点検出装置およびその方法

【課題】アルミニウム表面の自然酸化物を過不足なくエッチングするためのエッチング終点検出装置を提供する。
【解決手段】酸を含むエッチング液4によりアルミニウム電極パッド1の自然酸化膜をエッチングする際のエッチング終点検出装置10は、エッチング液4中に光を照射する発光素子6と、上記光の透過光を受光する受光素子11と、アンプ12と、コンパレータ13とを備えている。アルミニウム電極パッド1とエッチング液4との反応により水素ガス5が発生すると、上記透過光は低下し、振動する。受光素子11の出力はアンプ12によって増幅され、コンパレータ13によって透過光量低下後の電圧を弁別される。あるいは、コンパレータ13に代えてスペクトルアナライザによって透過光量振動時の電圧を弁別される。よって、エッチング終点検出装置10は、自然酸化膜のエッチングの終点を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸を含むエッチング液によりアルミニウム表面の自然酸化膜をエッチングする際の当該エッチングの終点を検出するエッチング終点検出装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化に伴い、半導体チップ(半導体装置)の高密度実装の方法について、例えばTCP(Tape Carrier Package)、COF(Chip On Film)、COG(Chip On Glass)、またはWL−CSP(Wafer level Chip Size Package)等、種々の提案がなされている。これらの方法では、半導体チップの電極パッド上にバンプと称される突起状電極を搭載し、フィルム基板やガラス基板に当該バンプを介すことによって半導体チップを実装している。
【0003】
バンプやこれに類する半田ボールを半導体チップ上に搭載するためには、まず半導体チップ上にUBM(Under Barrier Metal)を形成することが一般的である。UBMを形成する手法としては、無電解Niメッキ法が広く用いられている。
【0004】
無電解Niメッキ法では、アルミニウム系合金(以下、アルミニウムと記載する)層からなる電極パッド上に、まず亜鉛置換膜を形成し、その後UBMを形成するジンケート法が一般的に行われている。このジンケート法において、電極パッドに対するUBMの密着性を向上させるためには、均一で緻密な亜鉛置換膜を形成することが重要である。このためには、亜鉛置換膜形成前に、電極パッド表面に生じている自然酸化膜を除去することが必要とされる。
【0005】
例えば、特許文献1には、自然酸化膜を除去する方法として、電極パッド表面をエッチングする方法が開示されている。特許文献1に記載の方法では、電極パッドが形成された半導体チップを、予め定めた一定時間、酸に浸漬することによって、電極パッド表面をエッチングしている。
【特許文献1】特開平6−140409号公報(1994年5月20日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、エッチングは一定時間に定めて行われているため、電極パッド毎の表面状態のバラツキや、エッチング液の濃度変化等に起因して、自然酸化膜のエッチングの過不足が起こる場合がある。例えば、エッチングが少ない場合には、電極パッド上には自然酸化膜が完全に除去されずに残ってしまい、エッチングが多い場合には、電極パッドのアルミニウムが薄くなり、一部では消失してしまう。このため、どちらの場合であっても、電極パッド上に形成される亜鉛置換膜が不均一になって粗大化してしまい、UBMの密着性不足やNiメッキ成長不良などの問題が生じる。
【0007】
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、自然酸化膜のエッチングを過不足なく適切に行うために、当該エッチングの終点を検出することのできるエッチング終点検出装置およびその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエッチング終点検出装置は、酸を含むエッチング液によりアルミニウム表面の自然酸化膜をエッチングする際の当該エッチングの終点を検出するエッチング終点検出装置であって、上記問題を解決するために、上記アルミニウムと上記酸との反応により発生する水素を検知する水素検知手段と、上記水素検知手段の出力に基づいて上記エッチングの終点を検出する検出手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
酸を含むエッチング液によりアルミニウム表面の自然酸化膜をエッチングする際、自然酸化膜と酸との反応によって水素が発生することはない。一方、自然酸化膜のエッチングが完了した後、そのままエッチングが続く状態にあれば、自然酸化膜の除去された状態のアルミニウムが続いてエッチングされる。このとき、アルミニウムと酸との反応によって水素が発生する。
【0010】
上記構成によれば、水素検知手段が、アルミニウムのエッチングにより発生する水素を検知し、この水素検知手段の出力に基づいて、検出手段が自然酸化膜のエッチングの終点を検出する。したがって、本発明に係るエッチング終点検出装置は、エッチング処理中の水素ガス発生によって自然酸化膜のエッチングの終点を検出することができる。
【0011】
本発明に係るエッチング終点検出装置を自然酸化膜のエッチングの際に用いれば、当該エッチングを過不足なく適切に行うことができる。
【0012】
また、本発明に係るエッチング終点検出装置において、上記水素検知手段は、上記エッチング液において上記水素の気泡が通過する領域に光を照射する発光素子と、上記エッチング液を透過した上記光の透過光を受光する受光素子とを備えていることが好ましい。
【0013】
自然酸化膜のエッチングの際、当該エッチングが完了した後にアルミニウムがエッチングさると、水素は気泡として発生する。
【0014】
上記構成によれば、発光素子は、エッチング液において上記水素の気泡が通過する領域に光を照射する。また、受光素子は、エッチング液を透過した透過光を受光する。自然酸化膜の除去された後にアルミニウムが続いてエッチングされれば、アルミニウムと酸との反応によって発生した水素の気泡が、発光素子から受光素子までの光の光路上を通過し、当該光は気泡によって散乱する。このとき受光素子の受光する透過光量は、自然酸化膜のエッチング時に比べて低下し、振動する。したがって、水素検知手段は、受光素子の受光する透過光量の低下もしくは振動を観測することによって、水素を迅速かつ感度よく検知することができる。
【0015】
この結果、検出手段は、水素検知手段の出力に基づいてエッチングの終点を首尾よく検出することができる。
【0016】
また、本発明に係るエッチング終点検出装置において、上記検出手段は、上記透過光の光量が予め定めた基準値を下回った時をもって上記エッチングの終点を検出することが好ましい。
【0017】
上記構成において、透過光の光量の予め定めた基準値とは、自然酸化膜のエッチングが完了した後にアルミニウムがエッチングされた際、水素の発生によって低下した後の透過光量の値を適宜設定すればよい。
【0018】
上記構成によれば、検出手段は、受光素子の受光する透過光の光量が予め定めた基準値を下回った時をもって上記エッチングの終点を検出する。このため、本発明に係るエッチング終点検出装置は、上記エッチングが確実に行われた時点を終点として検出することができる。
【0019】
また、本発明に係るエッチング終点検出装置において、上記検出手段は、上記透過光の光量が、予め定めた以上に振動した時をもって上記エッチングの終点を検出してもよい。
【0020】
上記構成において、予め定めた振動とは、自然酸化膜のエッチングが完了した後にアルミニウムがエッチングされた際、水素の発生によって透過光の光量が振動した時の当該振動に基づいて適宜設定すればよい。
【0021】
上記構成によれば、検出手段は、受光素子の受光する透過光の光量が予め定めた以上に振動した時をもって上記エッチングの終点を検出する。このため、本発明に係るエッチング終点検出装置は、上記エッチングが確実に行われた時点を終点として検出することができる。
【0022】
また、本発明に係るエッチング終点検出装置において、上記検出手段は、上記受光素子の出力する電圧信号を増幅するアンプと、当該増幅された電圧信号を予め定めた電圧により弁別するコンパレータ、または当該増幅された電圧信号を予め定めた周波数成分および振幅により弁別するスペクトルアナライザとを備えていることが好ましい。
【0023】
上記構成において、受光素子は、当該受光素子の受光する透過光量に基づいた電圧信号を出力する。この電圧信号はアンプによって増幅され、コンパレータまたはスペクトルアナライザによって弁別される。
【0024】
ここで、予め定めた電圧とは、透過光の光量が予め定めた基準値を下回った時に受光素子が出力する電圧信号の電圧に基づいて適宜設定すればよい。すなわち、自然酸化膜のエッチングが完了した後にアルミニウムがエッチングされた際、水素の発生によって低下した後の透過光を受光した受光素子が出力する電圧信号に基づいて適宜設定すればよい。
【0025】
一方、予め定めた周波数成分および振幅とは、透過光の光量が予め定めた大きさ以上に振動した時の、受光素子が出力する電圧信号の周波数成分および振幅に基づいて適宜設定すればよい。すなわち、自然酸化膜のエッチングが完了した後にアルミニウムがエッチングされた際、水素の発生によって振動を開始した後の透過光量の値をスペクトルアナライザで測定して適宜設定すればよい。
【0026】
上記構成によれば、検出手段は、受光素子の出力する電圧信号が予め定めた電圧を超えて変化した時をもって、あるいは、受光素子の出力する電圧信号が予め定めた周波数成分および振幅を超えた時をもって、上記エッチングの終点を検出することができる。したがって、本発明に係るエッチング終点検出装置は、上記エッチングが確実に行われた時点を終点として簡便に検出することができる。
【0027】
また、本発明に係るエッチング終点検出装置において、上記アルミニウムは、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、またはガリウム砒素(GaAs)からなる半導体基板上に形成されたアルミニウムパターンであってもよい。
【0028】
上記構成において、自然酸化膜は半導体基板上のアルミニウムパターン表面に生成している。このため、自然酸化膜のエッチングが完了した後、続いてアルミニウムパターンがエッチングさると、水素は気泡として半導体基板上に発生する。
【0029】
したがって、本発明に係るエッチング終点検出装置は、半導体基板上に形成されたアルミニウムパターンの表面に生成した自然酸化膜のエッチングに対しても適している。
【0030】
また、本発明に係るエッチング終点検出装置において、上記受光素子の受光する上記透過光は、上記半導体基板表面で反射した反射光であってもよい。
【0031】
上記構成において、受光素子は、エッチング液を透過中に半導体基板表面で反射した透過光を受光する。自然酸化膜の除去された後にアルミニウムが続いてエッチングされるとき、水素はアルミニウム表面から発生するため、発光素子から照射される光は半導体基板表面上の気泡によって散乱して、受光素子の受光する透過光量は低下し、振動する。
【0032】
上記構成によれば、発光素子および受光素子を適宜配置することによって、水素検知手段が水素を検知することができる。
【0033】
また、本発明に係るエッチング終点検出装置において、上記酸は、リン酸または塩酸を用いることができる。
【0034】
例えば、リン酸により自然酸化膜のエッチングが行われる場合、以下の反応式(1)の反応が起こる。このとき、水素ガスは発生しない。一方、リン酸によりアルミニウムのエッチングが行われる場合、以下の反応式(2)の反応が起こり、水素ガスが発生する。
【0035】
Al+2HPO→2AlPO+3HO・・・(1)
Al+2HPO→2AlPO+3H↑・・・(2)
また、塩酸により自然酸化膜のエッチングが行われる場合、以下の反応式(3)の反応が起こる。このとき、水素ガスは発生しない。一方、塩酸によりアルミニウムのエッチングが行われる場合、以下の反応式(4)の反応が起こり、水素ガスが発生する。
【0036】
Al+6HCl→2AlCl+3HO・・・(3)
2Al+6HCl→2AlPO+3H↑・・・(4)
したがって、上記構成では、エッチング処理中の水素ガス発生によって自然酸化膜のエッチングの終点を確実に検出することができる。
【0037】
本発明に係るエッチング終点検出方法は、酸を含むエッチング液によりアルミニウム表面の自然酸化膜をエッチングする際の当該エッチングの終点を検出するエッチング終点検出方法であって、上記問題を解決するために、上記自然酸化膜のエッチング時に、上記アルミニウムと上記酸との反応により発生した水素を検知してエッチング終点を検出することを特徴としている。
【0038】
酸を含むエッチング液によりアルミニウム表面の自然酸化膜をエッチングする際、自然酸化膜と酸との反応によって水素が発生することはない。一方、自然酸化膜のエッチングが完了した後、そのままエッチングが続く状態にあれば、自然酸化膜の除去された後のアルミニウムが続いてエッチングされる。このとき、アルミニウムと酸との反応によって水素が発生する。
【0039】
上記方法によれば、アルミニウムと酸との反応により発生した水素を検知して、エッチング終点を検出するため、当該エッチングの完了を速やかに検出することができる。したがって、本発明に係るエッチング終点検出方法を用いれば、エッチングの過不足を招くことなく、自然酸化膜のエッチングを適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るエッチング終点検出装置は、酸を含むエッチング液によりアルミニウム表面の自然酸化膜をエッチングする際の当該エッチングの終点を検出するエッチング終点検出装置であって、上記アルミニウムと上記酸との反応により発生する水素を検知する水素検知手段と、上記水素検知手段の出力に基づいて上記自然酸化膜のエッチング終点を検出する検出手段ことを備えているため、エッチング処理中の水素ガス発生によって自然酸化膜のエッチングの終点を検出し、当該エッチングを過不足なく適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
〔実施形態1〕
本発明の第1の実施形態について図1を参照して説明すると以下の通りである。図1は、本実施形態におけるエッチング終点検出装置10を示す概略図である。
【0042】
まず、本実施形態におけるエッチング終点検出装置10が設けられるエッチング装置の概略構成について簡単に説明する。上記エッチング装置は、基板2上に形成されたアルミニウム電極パッド1表面に生成した自然酸化膜(Al)を除去するためにエッチングする装置であり、板搬送装置17、搬送キャリア18、および処理槽3を備えている。処理槽3の内部にはエッチング液4が満たされ、搬送キャリア18内部には基板2が収容される。基板搬送装置17は、基板2が収容された搬送キャリア18を搬送して、処理槽3内のエッチング液4に浸漬させる。搬送キャリア18はエッチング液4に浸漬されると、その内部にまでエッチング液4が充満し、基板2も共にエッチング液4に浸漬される。
【0043】
エッチング液4としては、リン酸または塩酸を含むものが好ましい。また、基板2は、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、またはガリウム砒素(GaAs)からなる半導体基板を用いることが出来る。
【0044】
なお、本発明は、上述のエッチング装置に限られず、アルミニウム表面の自然酸化膜を酸によりエッチングする装置であれば適用することができる。
【0045】
次に、本実施形態におけるエッチング終点検出装置10について説明する。エッチング終点検出装置10は、アルミニウム電極パッド1表面に生成した自然酸化膜のエッチングの終点を検出する装置であり、発光素子6、発光素子6と光ファイバー7aを介して接続された放射窓8、受光窓9、受光窓9と光ファイバー7bを介して接続された受光素子11、アンプ12、およびコンパレータ13を備えている。
【0046】
発光素子6としては、可視および近赤外領域におけるGaN(窒化ガリウム)系青色LED、GaP(ガリウムリン)系緑色LED、GaAlAs(ガリウムアルミニウム砒素)系赤色LED、GaAlAs系赤外LED、InGaN(窒化ガリウムインジウム)系青色半導体レーザー、ZnSSe(セレン化硫化亜鉛)系あるいはZnCdSe(セレン化亜鉛カドミウム)系緑色半導体レーザー、または、AlGaInP系あるいはGaInP系赤色半導体レーザー等を用いることができる。
【0047】
受光素子11としては、フォトダイオード、CdS、またはCCD等を用いることができる。
【0048】
発光素子6および受光素子11は、処理槽3の外側に設けられており、搬送キャリア18と共に処理槽3内に浸漬される放射窓8および受光窓9とは、光ファイバー7aまたは7bを介してそれぞれ接続されている。
【0049】
発光素子6の発光する光は、基板2の近傍を透過すればよい。具体的には、アルミニウム電極パッド1から発生する水素ガス5の通過する領域を透過すればよい。
【0050】
本実施形態では、放射窓8および受光窓9が搬送キャリア18の側面上部にそれぞれ対向するように配置されており、発光素子6の発光する光は、光ファイバー7aを介して放射窓8から放射され、図1中矢印に示すように、搬送キャリア18に収容された基板2の上方を透過している。基板2の近傍を透過した光はその後、受光窓9に入射され、光ファイバー7bを介して受光素子11に受光される。
【0051】
次に、エッチング終点検出装置10を用いた、エッチング終点の検出について説明する。
【0052】
まず、基板2がエッチング液4に浸漬されると、アルミニウム電極パッド1表面に形成された自然酸化膜のエッチングが開始される。このときの反応式は、エッチング液4がリン酸である場合には以下の反応式(1)となり、エッチング液4が塩酸である場合には以下の反応式(2)となる。また、基板2がエッチング液4に浸漬された後には、発光素子6が発光を開始する。
【0053】
Al+2HPO→2AlPO+3HO・・・(1)
Al+6HCl→2AlCl+3HO・・・(2)
反応式(1)または(2)に示すように、自然酸化膜のエッチングが行われている間、水素が発生することはない。このため、受光素子11の受光する透過光の光量には変化がない。
【0054】
その後、自然酸化膜のエッチングが完了すると、続いて、アルミニウム電極パッド1のアルミニウム(Al)のエッチングが開始される。このときの反応式は、エッチング液4がリン酸である場合には以下の反応式(3)となり、エッチング液4が塩酸である場合には以下の反応式(4)となる。
【0055】
Al+2HPO→2AlPO+3H↑・・・(3)
2Al+6HCl→2AlPO+3H↑・・・(4)
反応式(3)または(4)に示すように、アルミニウム電極パッド1のエッチングが開始されると、水素ガス5が発生する。水素ガス5はエッチング液4中で気泡となり、発光素子6の光が放射窓8から受光窓9に達するまでの光路を横切る。このため、放射窓8から照射される光は、水素ガス5の気泡によって散乱されて、受光窓9に入射される光の光量(透過光量)は低下や振動を生じる。
【0056】
なお、発光素子6がLEDおよびレーザーのいずれであっても、透過光量の低下や振動は明瞭に検出されうる。
【0057】
受光素子11は、その受光する透過光量に基づいた電圧信号を出力し、この電圧信号はアンプ12によって増幅される。
【0058】
自然酸化膜のエッチングの終点を透過光量の低下によって検出する場合、アンプ12によって増幅された電圧信号は、コンパレータ13によって予め定めた電圧により弁別される。ここで、予め定めた電圧とは、自然酸化膜のエッチングが完了した後にアルミニウム電極パッド1がエッチングされた際、低下した透過光を受光した受光素子11が出力する電圧に基づいて適宜設定すればよい。この弁別によって、自然酸化膜のエッチングの終点が判定される。
【0059】
また、本実施形態において、コンパレータ13は、パイロットランプ14およびタイマー15と各々接続されており、タイマー15は、パイロットランプ16および基板搬送装置17と各々接続されている。
【0060】
自然酸化膜のエッチング完了後、コンパレータ13によって弁別された電圧信号は、パイロットランプ14を点灯させる。このパイロットランプ14は、自然酸化膜のエッチング完了を示すものとして機能する。
【0061】
パイロットランプ14の点灯と同時にタイマー15を起動すれば、必要に応じてオーバーエッチングを行うことができる。例えば、タイマー15を10〜20秒程度に設定すれば、オーバーエッチングを10〜20秒程度行うことができる。タイマー15に設定した時間が経過した時点で、パイロットランプ16が点灯されれば、オーバーエッチングを含むエッチング処理の完了が示される。
【0062】
パイロットランプ16の点灯と同時に、基板搬送装置17に信号が送られると、基板2を処理槽3から引き上げてエッチングを終了することができる。引き上げた後の基板2は、エッチングの次工程にある水洗槽に投入すればよい。
【0063】
また、本実施形態おいては、自然酸化膜のエッチングの終点を、透過光量の低下ではなく、透過光量の振動によって検出してもよい。自然酸化膜のエッチングの終点を透過光量の振動によって検出する場合、コンパレータ13に代えて、スペクトルアナライザ24を用いることが好ましい。アンプ12によって増幅された電圧信号は、スペクトルアナライザ24によって、予め定めた周波数成分および振幅により弁別される。ここで、予め定めた周波数成分および振幅とは、自然酸化膜のエッチングが完了した後にアルミニウム電極パッド1がエッチングされた際、水素ガス5の発生によって振動を開始した後の透過光量の値をスペクトルアナライザで測定して、適宜設定すればよい。スペクトルアナライザ24によって弁別された電圧信号は、上述と同様に、パイロットランプ14を点灯させたり、タイマー15を起動させたりすることができる。
【0064】
また、本実施形態の変形例として、発光素子6の発光する光は、基板2の表面で反射されたものであってもよい。
【0065】
例えば図2は、本実施形態の変形例であるエッチング終点検出装置20を示す図である。図2に示すように、搬送キャリア18の側面には、放射窓8および受光窓9の代わりとして、放射受光窓23が設けられている。放射受光窓23は、発光素子6および受光素子11の各々と、光ファイバー7aまたは7bを介して接続されている。
【0066】
放射受光窓23は、放射受光窓23から照射される光が、処理槽3に収容される基板2の表面において垂直入射/垂直反射するように配置されればよい。この配置によれば、放射受光窓23は、エッチング液4を透過中に基板2で反射した透過光を受光することができる。
【0067】
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明すると以下の通りである。図3は、本実施形態におけるエッチング終点検出装置30を示す概略図である。
【0068】
上述した実施形態1に対する本実施形態の主な相違点は、光ファイバーを介さずに、発光素子6から照射された光が直線的に受光素子11に受光される点にある。したがって、以下では、上記相違点を中心に説明する。なお、実施形態1と同一の部材には同一の番号を付している。
【0069】
本実施形態では、図3に示すように、発光素子6および受光素子11が、処理槽3の外側に配置されている。また、処理槽3の側面上部には、ビューポート19aおよび19bが対面して配置されており、搬送キャリア18の側面上部には、光を透過する壁部21aおよび21bが対面して配置されている。これらビューポート19aおよび19b、壁部21aおよび21b、発光素子6、ならびに受光素子11は一直線上に配置されている。この配置において、発光素子6の発光する光は、基板2の近傍、すなわちアルミニウム電極パッド1から発生する水素ガス5の通過する領域を透過するように、処理槽3に収容される基板2の上部を透過して受光素子11に受光される。
【0070】
本実施形態のように、処理槽3の外側から光を照射する場合には、発光素子6としてレーザーを用いることが好ましい。
【0071】
なお、本実施形態におけるエッチング終点検出装置30の動作については、実施形態1を参照すればよい。
【0072】
本実施形態においても、上述の実施形態1と同様に、コンパレータ13に代えてスペクトルアナライザ24を用い、自然酸化膜のエッチングの終点を、受光素子11の受光する透過光量の振動によって検出することができる。
【0073】
また、本実施形態の変形例として、受光素子11の受光する光は、基板2またはアルミニウム電極パッド1において反射されたものであってもよい。例えば図4は、本実施形態の変形例であるエッチング終点検出装置40を示す図である。図4に示すように、エッチング終点検出装置40は、発光素子6および受光素子11の代わりとして、発光/受光一体型素子22を備えている。
【0074】
発光/受光一体型素子22の配置については、放射受光窓17から照射される光が、処理槽3に収容される基板2の表面において垂直入射/垂直反射するように配置されることが好ましい。この配置によれば、発光/受光一体型素子22は、エッチング液を透過中に基板2で反射した透過光を受光することができる。
【0075】
上述した実施形態におけるエッチング終点検出装置によれば、メッキなどの前処理として、アルミニウム上に生成した自然酸化膜を酸によりエッチングするに際して、エッチングの完了後の応答速度を速くすることができる。また、エッチング液4が少なく、水素発生量が少量であっても、自然酸化膜のエッチングの終点を感度よく検出することができる。
【0076】
なお、本発明に係るエッチング終点検出装置は上述の実施形態に限られず、例えば水素検出手段として図5に示すような従来のガスセンサーを用いたものも、本発明の範囲である。図5において、基板120は処理槽122内のエッチング液121に浸漬され、発生した水素は、真空ポンプ126によって、脱雰囲気層122、乾燥機124を経てガスセンサー125に移送される。図5に示すような従来のガスセンサーは、反応速度や検出感度などの点で上述の実施形態に及ばないものの、水素検出手段として用いられてもよい。
【0077】
また、本発明に係るエッチング終点検出装置は上述の実施形態に限られず、自然酸化膜のエッチングの終点を透過光量の振動によって検出する手段として、スペクトルアナライザ24の代わりにより安価な交流電圧計を用いてもよい。この場合、交流電圧計は電圧変化を利用して弁別を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るエッチング終点検出装置は、例えば、メッキ等の前処理として、アルミニウム表面上に生じている自然酸化膜を除去する際のエッチングにおいて、好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエッチング終点検出装置を概略的に示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の変形例に係るエッチング終点検出装置を概略的に示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るエッチング終点検出装置を概略的に示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の変形例に係るエッチング終点検出装置を概略的に示す模式図である。
【図5】従来の水素検出手段を概略的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0080】
1 アルミニウム電極パッド
2 基板
4 エッチング液
6 発光素子
11 受光素子
12 アンプ
13 コンパレータ
10、20、30、40 エッチング終点検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸を含むエッチング液によりアルミニウム表面の自然酸化膜をエッチングする際の当該エッチングの終点を検出するエッチング終点検出装置であって、
上記アルミニウムと上記酸との反応により発生する水素を検知する水素検知手段と、
上記水素検知手段の出力に基づいて上記エッチングの終点を検出する検出手段とを備えていることを特徴とするエッチング終点検出装置。
【請求項2】
上記水素検知手段は、上記エッチング液における上記水素の気泡が通過する領域に光を照射する発光素子と、上記エッチング液を透過した上記光の透過光を受光する受光素子とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のエッチング終点検出装置。
【請求項3】
上記検出手段は、上記透過光の光量が予め定めた基準値を下回った時をもって上記エッチングの終点を検出することを特徴とする請求項2に記載のエッチング終点検出装置。
【請求項4】
上記検出手段は、上記透過光の光量が、予め定めた以上に振動した時をもって上記エッチングの終点を検出することを特徴とする請求項2に記載のエッチング終点検出装置。
【請求項5】
上記検出手段は、上記受光素子の出力する電圧信号を増幅するアンプと、当該増幅された電圧信号を予め定めた電圧により弁別するコンパレータ、または当該増幅された電圧信号を予め定めた周波数成分および振幅により弁別するスペクトルアナライザとを備えていることを特徴とする請求項3または4に記載のエッチング終点検出装置。
【請求項6】
上記アルミニウムは、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウム砒素からなる半導体基板表面に形成されたアルミニウムパターンであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のエッチング終点検出装置。
【請求項7】
上記受光素子の受光する上記透過光は、上記半導体基板表面で反射した反射光であることを特徴とする請求項6に記載のエッチング終点検出装置。
【請求項8】
上記酸は、リン酸または塩酸であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のエッチング終点検出装置。
【請求項9】
酸を含むエッチング液によりアルミニウム表面の自然酸化膜をエッチングする際の当該エッチングの終点を検出するエッチング終点検出方法であって、
上記自然酸化膜のエッチング時に、上記アルミニウムと上記酸との反応により発生した水素の検出に基づいて当該エッチングの終点を検出することを特徴とするエッチング終点検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−129884(P2010−129884A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304736(P2008−304736)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】