説明

エネルギー散逸複合材料

ずり粘稠化流体を含浸させた多孔質母材の層に結合された弾道材料の層を備える、移動物体の運動エネルギーを散逸させることができる複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動体の運動エネルギーを散逸可能な複合材料、各物品及びその利用法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾道又は刺傷の脅威による負傷を防ぐための様々な保護材料が、今や市場で入手可能である。これらの保護材料は、例えば、ボディアーマ、防弾ベスト及びフレキシブル外傷パッドを含む。衝撃後の防弾ベストの過度の変形は、人体への深刻な負傷(背面形跡(backface signature)又は鈍的外傷損害)をもたらす可能性がある。そのような負傷は、該負傷の位置によって、時には命にかかわることがある。加えて、負傷した人は、ショック状態に陥るかも知れず、脅威に素早く反応できないであろう。これに対する解決法は、通常、高分子量ポリエチレン、金属又はセラミックプレートを、防弾ベストの裏側へ挿入することである。
【0003】
例えば高強度アラミド繊維や高分子量ポリエチレンフィルム等の物質の使用は、弾道材料(ballistic materials)で次第に一般的になる。高強度アラミド繊維や高分子量ポリエチレンフィルムは、高速発射体の貫通を阻止するのに十分な強度を有しているが、それでもなお、これらの柔らかい材料は、衝撃時に高速発射体により大きな変形を被る。これは結果的に、繊維や保護フィルムの後ろの人体に対する深刻な衝撃となり、それ故、ソフトボディアーマとしての利用で、これらの材料の有効性を低下させる。更に、このようなプレートは硬いので、可動性が要求されない場所(例えば、胸部)にのみ配置することができる。
【0004】
ユーザの可動性を増すため、弾道繊維で作られたフレキシブル外傷パッドも市場で入手可能である。しかしながら、それらが示す保護は、硬板(hard plate)とは比べ物にならない。現在利用可能な衝撃吸収材料のこれらの制限は、切望されている効果的なフルボディアーマの開発を妨げる。
【0005】
ずり粘稠化流体(shear thickening fluid)の弾道アプリケーションへの使用の関心の高まりがある。ずり粘稠化流体は、ずり速度(shear rate)又は印加される応力が増加すると、粘度の増加を示す流体を指す。せん断中や応力が加えられている間だけ粘度が上昇する流動性液体になるという、ずり粘稠化流体の特有の性質に起因して、弾道材料に取り入れられた場合に、柔らかく順応な保護材料の提供の可能性を示す。
【0006】
米国特許出願公開第2009/0004413号明細書には、不連続な(discrete, non continuous)ファイバー/充填剤のずり粘稠化流体への添加により、ずり粘稠化流体の衝撃散逸能力を増強する方法が開示される。しかしながら、このような充填剤の添加は、その流体の全域に渡ってではなく、その流体の局所におけるずり粘稠化を増加させるだけである可能性がある。それ故、衝撃エネルギーの局部散逸は、負傷からユーザを保護するのに十分ではない可能性がある。
【0007】
米国特許公報第6319862号には、アラミド繊維等の高強度の第1の複数の貫通耐性材料に続いて、複数のアラミド繊維層の裏側に、第1の複数のバッキング層ポリエチレンがくる構成の弾道ベストにおいて使用されるシステムが開示される。しかしながら、何層にも材料が互いに接着されることが要求されるので、システムの柔軟性が低下される可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、可動性を犠牲にすることなく、高い衝撃エネルギーを効果的に散逸させるフレキシブル複合材料の開発の必要性は依然として存在する。
【0009】
一態様では、多孔質母材の層に結合された弾道材料の層、を含み又はから成り、移動物体の運動エネルギーを散逸可能な複合材料が提供される。
【0010】
他の態様では、複合材料を生成するための方法が提供される。この方法は、弾道材料の層を多孔質母材の層へ結合することを含む。
【0011】
他の態様では、移動物体の運動エネルギーを散逸するための複合材料の利用法が提供される。
【0012】
他の態様では、移動物体の運動エネルギーを散逸するための、複合材料を含む物品が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば複合材料は、例えば高い柔軟性、高い順応性及び高い衝撃エネルギー散逸等の利点を備え、更に、容易に製造可能である。本明細書で述べる複合材料は、例えばフレキシブル鈍的外傷パッドや弾道ベスト等の弾道アプリケーションにおいて非常に有用である。材料の順応性は、可動性が不可欠である人体の領域(例えば膝、肘、腹部)に重ねて着ることができることを意味する。それ故、本発明の複合材料は、今日市場で入手可能な既知の他の弾道保護材料よりも、鈍的衝撃保護の向上を提供できる。
【0014】
本発明は、移動物体の運動エネルギーを散逸することができる複合材料を提供する。該複合材料は、多孔質母材の層に結合(又は接着若しくは接合)された弾道材料の層、を含む又はから成る。
【0015】
本明細書における「多孔質母材」は、材料内に複数の細孔や穴を有する如何なる材料をも指す。多孔質母材は、複数の細孔を介して流体を収容する、及び/又は、流体が該複数の細孔を通り抜けることができる。多孔質母材は、例えば、織物、不織物又はファイバー混入シート/網(web)であってよい。多孔質母材は、互いに連結又は結合可能な、或いは、結合不可能な複数のファイバーを含んでよい。
【0016】
多孔質母材及び弾道材料の一方に関連して、本明細書における「織物」は、織ることにより形成された如何なる材料をも指す。これに関連して、織物は、例えば、ストランドデニール(strand denier)又は縦糸/横糸ピック総数(warp/weft pick count)が規定された、特定の又は差別的な織り方により特徴付けられることができる。例えば、規則的な、ストランドの一対一のインターレースにより特徴付けられる平織りにおいて、複数のストランドが織られる場合、各ストランドは、例えば横糸方向である第2方向に整列された隣接するストランドの上方及び下方の一方に移動し、例えば縦糸方向である第1方向に整列可能である。これに関連して、「縦糸」は、この技術分野における習慣的な意味で用いられ、「横糸」を介して編まれる、ひとそろいの縦方向の糸を指す。それ故、「横糸」は、織物を製造するために、平行な複数の縦糸の下方及び上方に引き込まれた糸を指す。織物は、例えばバスケット編み、レップ若しくはリブ織り、あや織り、繻子織り又は二重織り等の任意の既知の織り方であってもよい。
【0017】
多孔質母材及び弾道材料の一方に関連して、本明細書における「不織」は、不規則分布で、典型的にはクモの巣形状で、且つ、例えば編地等の特定可能な繰り返し様式でなく、インターレイ(interlaid)された複数の個々のファイバーを指す。不織布、例えばフェルト、は、当業者の知識の範囲内の熱的又は化学的手段のいずれを用いても製造可能である。不織布の製造方法には、例えばメルトブロー法、スパンボンド法、スパンレース法及び梳繊接合(bonded carded web)法があるが、これに限定されるものではない。典型的な不織布は、例えばスパン結合布(spunbond fabric)を含んでよい。本明細書では、スパン結合布は、押し出され、引き延ばされ、クモの巣状に形成するために移動ベルトの上に乗せられる単繊維(filament)又はファイバーを含むとして理解してよい。スパン結合布は、その後、例えば化学的な、熱的な、機械的な、超音波の又はそれらの組み合わせ等による多数の結合方法を介して、結合される。他の典型的な不織布は、例えば米国特許公報第2705687号に記載された“MASSLINN”不織布、例えば米国特許公報第2862251号及び第3033721号に記載された“KEYBAK”バンドル(bundled)不織布、及び例えば米国特許公報第2676363号に記載された“isotropic”不織布を含んでよい。
【0018】
本明細書における「ファイバー」は、その長さに対して直角をなす断面領域を横切る幅に対する長さの比が高い、相対的に柔らかく、巨視的に均一な物体として定義される材料の種類を指す。ファイバーは、如何なる適切な長さ、例えば約1cmから10cm、であってもよい。ファイバー断面は、どのような形状であってもよいが、典型的には円である。これに関連して、不織布は、例えば、当業者の知識の範囲内の適切な種類のファイバー又はそれらの混合物を含む繊維質材料であってよい。このようなファイバーの例は、ポリプロピレン、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、例えばポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、又はそれらの複合材等の高分子化合物であってよい。ファイバーの他の例は、Acrilan (Chemstrand)及びOrlon (DuPont)等のアクリルファイバーであってよい。ある実施形態では、多孔質母材は、ポリエステルを備えていてよい。ポリエステル母材の例は、市販のものでよく、例えば、米国のリッチモンド・エアクラフト・プロダクツ社(Richmond Aircraft Products, Inc,)により販売されているブリーザー防火材(Breather Fire Retardant) RC3000-10AFR又はRC3000-10A、或いは、中国の江蘇ブロードパイオニア繊維株式会社(Jigngsu Broad Pioneer Textile Associated Co., Ltd,)から入手される、孔のサイズ0.01〜0.2mmのポリエステルスパンボンド連続フィラメント不織ジオテキスタイル(polyester spunbond contine filament non-woven geotextile)から得られる。ポリエステル母材の他の例は、米国特許公報第3720562号に記載されているように、Dacron (DuPont)、Diolen (Swicofil)、Frotrel (Wellman)及びKodel (Eastman)等がある。
【0019】
多孔質母材に利用可能な他のファイバーには、流体が挿入される又は通り抜けられる複数の穴を含む材料である限りにおいて、例えば毛、綿、大麻、木質繊維又はそれらの複合材等である天然ファイバーがある。要求があれば、多孔質母材として、任意の天然ファイバーと上述した任意の適切なファイバーとを組み合わせてよい。このような多孔質母材の例は、ポリエステル毛、ポリエステル綿、大麻ポリエステル混紡、木質繊維ポリプロピレン混紡、綿ポリプロピレン混紡又はそれらの混合材等であるが、これに限定されるものではない。
【0020】
本明細書における「弾道(ファイバー)材料」は、例えば発射体等の移動物体の衝撃、を吸収する又はに耐える(absorbing or resisting)、ことが可能な、繊維性の又は非繊維性の材料を含む如何なる適切な材料をも指す。本発明に記載された弾道材料は、異なる条件下における発射体の種類の全てを、完全に止めなくてもよいが、発射体の前進を止める又は少なくとも大幅に遅らせることを目的とする。
【0021】
弾道ファイバー材料は、例えば高弾性率高分子ファイバーを含んでよい。このような高弾性率高分子ファイバーの例は、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(パラフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(PBO) ZYLON(登録商標)、又はそれらの複合材等であってよいが、これに限定されるものではない。弾道ファイバー材料は、ポリアクリロニトリル繊維(PAN)、ピッチ樹脂又はレーヨンから得られる炭素繊維、カーボンナノチューブ強化ポリマー、例えばシリカ(SiO2)、又はSiO2, Al2O3, B2O3, CaO若しくはMgOの組み合わせ等であるガラス強化ポリマー、例えば炭化ホウ素セラミック繊維等であるセラミックホイスカー、微結晶性セルロース、或いはそれらの複合材等であってもよい。
【0022】
これに関連して、弾道ファイバー材料に利用可能なポリアミドは、アラミド、ナイロン又はこれらの組み合わせを含んでよい。アラミドの例は、KEVLAR(登録商標)、TWARON(登録商標)、TECHNORA(登録商標)、NOMEX(登録商標)、TEIJINCONEX(登録商標)、又はそれらの複合材等であるが、これに限定されるものではない。KEVLAR(登録商標)は、イー・アイ・デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー(E. I. du Pont de Nemours and Company)から入手可能であり、ポリパラフェニレンテレフタレートから成る長い分子鎖から構成されている。KEVLAR(登録商標)は、全てのアミド群がパラフェニレン群により分離されているポリアミドである。つまり、アミド群は、フェニル環の炭素位置1及び4に、互いに正反対に結合している。KEVLAR(登録商標)の例では、KEVLAR(登録商標)29、KEVLAR(登録商標)49、又はそれらの複合材等であってよい。弾道ファイバー材料に適切に利用可能なアラミドの他の例は、TWARON(登録商標)である。TWARON(登録商標)は、高坑張力の軽量ファイバーであり、帝人から入手可能であるアラミドポリマーから作られる。TECHNORA(登録商標)(帝人)は、弾道ファイバー材料の形成にも適切な、パラフェニレンテレフタルアミドと3,4´−オキシジフェニレンテレフタルアミドとの共重合体(co-poly-(paraphenylene/3,4’-oxydiphenylene terephthalamide))である。NOMEX(登録商標)及びTEIJINCONEX(登録商標)は、メタラミドであり、イー・アイ・デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー及び帝人から夫々入手可能である。他の適切なアラミド複合材は、単一方向性のアラミド繊維強化の熱可塑性シートであるGold Flex(登録商標)(Honeywell)の使用に適する。弾道ファイバー材料として適切なナイロンの例は、例えばCORDURA(登録商標)(DuPont)であってよい。
【0023】
代わりに、及び/又は加えて、移動物体の衝撃、を吸収する又はに耐える、ことが可能な適切なポリオレフィンは、弾道材料を形成することに利用可能である。このようなポリオレフィンは、例えば、この技術分野において高弾性率ポリエチレンとしても知られる、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、或いは、高密度ポリエチレン(HDPE)、或いは、例えばInner S(登録商標)(Innegrity)等である高弾性率ポリプロピレン、或いは、それらの複合材であってよい。UHMWPEは、極長鎖ポリエチレンを有し、その高坑張力及び弾性率の特性により、弾道ファイバー材料としての使用に適している。UHMWPEの例は、SPECTRA(登録商標)(Honeywell)及びDyneema(登録商標)(DSM)である。SPECTRA(登録商標)は、例えば柔軟な弾道ファイバー材料又は耐衝撃性の複合材アプリケーション等の使用に適する、超軽量高強度ポリエチレン材料である。SPECTRA(登録商標)は、高ダメージ耐性、非伝導性、柔軟性、高比弾性率を有し、更に、高い“energy-to-break”、耐水性(low moisture sensitivity)、良好な紫外線耐性を備える。入手可能なSPECTRA(登録商標)の例は、SPECTRA(登録商標)Fiber900、SPECTRA(登録商標)Fiber1000及びSPECTRA(登録商標)Fiber2000である。Dyneema(登録商標)は、最軽量と同時に、最大の強度を提供する強ポリエチレンファイバーである。これに関連して、Dyneema(登録商標)は、重量ベースで、良質鋼鉄よりも最大15倍強く、アラミドファイバーよりも最大40%強くなることが、この技術分野では知られている。Dyneema(登録商標)は、水に浮き、非常に丈夫であり、更に、水分、紫外線、化学薬品に耐性がある。上述した材料を含む弾道材料の他の例は、米国特許公報第7226878号、米国特許出願公開第2009/0004413号明細書及び米国特許公報第6319862号にも記載されている。
【0024】
望ましくは、上述した高分子ファイバーは、弾道材料を形成するために、他の高分子ファイバー又は、任意の天然ファイバーと組み合わされてよい。このような弾道材料の限定されない例は、アラミドと綿との混合物、アラミドファイバー強化UHMWPE、アラミドとポリプロピレンとの混合物、又はそれらの複合材であってよい。
【0025】
ある実施形態では、ここに記載の弾道材料は、編地、織物、不織布、単一編み構造(uniweaved structure)、一方向性シート又は多方向性シートの形をとってよい。本明細書における「編地」は、製造可能な任意の適切な編物方法による、二次元の、オープンメッシュ(open-meshed)又はループコンテイニング(loop-containing)の編物商品を指す。本明細書における「一方向性シート(sheet)」又は「一方向性織物(fabric)」は、一方向のみの方向的な強度のために設計された編目で作られたシート又は織物を指す。
【0026】
本発明に係る文脈において「結合された(bonded)」は、多孔質母材の層に結合された弾道材料の層に係る接着を指す。実例的には、そうすることによって、二つの層は、本発明に係る複合材料の積層体を形成する。望ましくは、本発明の複合材料は、複数の多孔質母材の層夫々に結合された複数の弾道材料の重層(repeated layers)が得られる、複合材料の任意数の積層体も備えてよい。本発明の複合材料は、ユーザの希望又は複合材料の厚さに応じて、例えば、多孔質母材の2、3、4、5又はそれ以上の層夫々に結合された、弾道材料の2、3、4、5又はそれ以上層を有してよい。複合材料はどのような厚さでもよく、通常は、多孔質母材の層夫々に結合された弾道材料の層の数(或いは、本発明の複合材料の積層体の数)のみに依存する。例えば、弾道材料の3つの層が、多孔質母材の3つの層夫々に結合されている、本発明の複合材料の3つの積層体は2cmの厚さである。これに関連して、驚いたことに、本発明の複合材料が、弾道衝撃を被った際に、複合材料の変形の著しい減少をもたらすことが分かった。それ故、複合材料は、柔軟性及び可動性を落とすことなく、鈍的外傷を効果的に減少する。
【0027】
弾道材料と多孔質母材とを互いに保持する接着剤である限り、当業者の知識の範囲内のどのような接着剤も使用できる。このような接着剤の例は、ポリウレタン、ポリビニルアクリレート、エポキシ樹脂、シアノアクリレート又はそれらの複合材であるが、これに限定されるものではない。ある実施形態では、弾道材料が多孔質母材に接触された場合、弾道材料を多孔質母材に接着するために、エポキシ樹脂又はシアノアクリレートが利用可能である。これに関連して、驚いたことに、弾道材料と多孔質母材とを互いに接着する際の接着剤の使用が、高弾道エネルギー影響時の、複合材料の変形を著しく減少させることが分かった(例5及び図6参照)。
【0028】
ある実施形態では、当該複合材料は、流体を含んでよい。本明細書における「流体」は、液体であり、該液体中に固体が混合又は分散されてもよい。流体は、水溶液、例えば水、又はずり粘稠化流体であってよい。この技術分野における習慣的な意味で使われる「ずり粘稠化流体」は、せん断力又は加えられる応力が増加すると、粘度の増加を示す流体を指す。ずり粘稠化流体は、例えば国際公開公報第2004/103231号に記載されている、既知のいずれのずり粘稠化流体であってよい。ずり粘稠化流体は、通常、媒体中に浮遊する複数の粒子を含んでいる。ずり粘稠化流体に用いられる粒子は、例えば有機の又は無機の粒子等、さまざまな材料で作られていてよい。ここで用いられる粒子は、溶液中で安定若しくは電荷により分散されてよく、ブラウン運動の状態でよく、吸着界面活性剤(adsorbed surfactants)、吸着若しくは承諾された高分子化合物(adsorbed or granted polymers)、高分子電解質、両性高分子電解質、オリゴマー、又はナノ粒子であってよい。粒子はどのような形状であってもよいが、典型的には、球形の粒子、楕円形、2軸、菱面体、立方体、棒状粒子、盤状、粘土粒子又は上記の混合物を含む。これらの粒子のサイズ及び形状は、単分散、2分散又は多分散であってよい。これらの粒子の例は、酸化物、コーンスターチ、炭化カルシウム、鉱物、高分子化合物又はそれらの複合材であるが、これに限定されるものではない。典型的な酸化物は、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化銀、酸化亜鉛、酸化パラジウム又はそれらの複合材であるが、これに限定されるものではない。本明細書における鉱物は、天然に存在する又は人工的に生じた材料であってよい。鉱物の例は、例えば、石英、方解石、タルク、石膏、カオリン、雲母、炭化ケイ素又はそれらの複合材であってよい。限定されない高分子化合物粒子の例は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン又はそれらの複合材であってよい。
【0029】
流体に用いられる媒体は、水性ベースの媒体、例えば水、である。水性ベース媒体は、静電的な安定性のための、例えば塩化ナトリウム、塩化セシウム若しくはそれらの混合物等である塩、又は高分子化合物安定粒子を含んでよい。媒体は、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール又はそれらの複合材である有機ベースの媒体であってもよい。媒体は、例えばシリコンオイル、フェニルトリメチコン又はそれらの複合材であってよい。流体にコーンスターチが用いられた場合、時間とともに媒体が腐敗しないことを保証するために、例えばクロロキシレノール又はクロルヘキシジン等の抗菌物質が加えられてよい。他の実施形態では、炭化水素や炭化フッ素媒体も利用してよい。
【0030】
流体に用いられる粒子のサイズは、典型的には、多孔質母材の穴のサイズよりも小さいだろう。これらの粒子は、例えば、多孔質母材の孔に挿入される、又は、多孔質母材の孔を通り抜けてよい。ある実施形態では、粒子の直径は、100ミクロン未満、例えば90ミクロン、80ミクロン、70ミクロン、60ミクロン、50ミクロン、40ミクロン、30ミクロン、20ミクロン、10ミクロン、或いは、10ミクロン未満、例えば0.1ミクロン、0.45ミクロン、2.5ミクロン、5ミクロン、8ミクロン、であってよい。流体中の粒子のサイズは、米国特許出願公開第2006/0234572号明細書にも記載されている。
【0031】
流体が、本発明の多孔質母材に挿入される場合、流体は多孔質母材中にインターカレート(intercalate)されてよい。本明細書における「インターカレート」は、流体の挿入(insertion)(又は孔隙内へ挿入若しくは浸水させること)、及び/又は多孔質母材の層間の粒子を指すことを意図している。流体は、複数の多孔質母材を介して、多孔質母材に挿入されてよい。孔の種類に応じて、ずり粘稠化流体は、多孔質母材の孔の中に挿入され、又は、孔を通り抜けてよい。ずり粘稠化流体が多孔質母材にインターカレートされる場合、流体は、素早く挿入され、多孔質母材中に均一に散在してよい。これに関連して、驚いたことに、多孔質母材の急激な動きに起因して、多孔質母材の特質が流体中において急速にずり粘稠化することがわかった。このずり粘稠化は、特定の領域内に限定されるものではなく、多孔質母材及び流体−母体界面(fluid-matrix interface)のいたるところで生じる。
【0032】
これに関連して、流体、例えばずり粘稠化流体、が、本発明で用いられ弾道材料と接触する場合、弾道ファイバー材料が、移動物体の衝撃、を吸収する又はに耐える、所望の機能を達成する限りにおいて、流体が弾道ファイバー材料内にインターカレートされるかもしれないし、されないかもしれない。しかしながら、流体が弾道材料にインターカレートされる場合、流体は、常に、流体の多孔質母材へのインターカレーション(intercalation)に比べて狭い範囲で、弾道材料にインターカレートされる。
【0033】
本明細書における「穴(openings)」又は「孔(pores)」は、多孔質母材に存在する、穴(holes)、穴(bores)、開口(apertures)、又は隙間(intervals)を指す。孔は、他の孔と相互に連結されてよく、流体にアクセス可能であってもなくてもよい。流体にアクセス可能な孔の場合、該孔は流体の通り抜けを許すだろう。孔の形状は、典型的には、どのような形状又はサイズでもよく、多孔質母材中に分散されたファイバーの程度に依存してよい。孔は、典型的には、どのようなサイズでもよく、更に、流体の粒子が多孔質母材の孔を通り抜けられるように、粒子のサイズよりも大きいサイズでよい。例えば多孔率、孔直径、孔体積である孔の特徴は、当業者の知識の範囲内で容易に決定されるだろう(例えば、Wang et al. “Journal of Applied Polymer Science” 2006, vol. 102, pages 2264-2275及びSavel’eva E. K. et al. “Fiber Chemistry” 2005, vol. 37, pages 202-204参照)。
【0034】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明の複合材料が、例えば発射体等の移動物体による衝撃を被った場合、鈍的外傷を低減させるために多孔質母材が弾道材料を強化している間は、初期の衝撃点は複合材料の弾道材料により吸収されるだろう。これに関連して、例えば本発明の複合材料が弾道衝撃を被った場合、多孔質母材と、弾道材料の層及び多孔質母材の層を互いにしっかり保持できるようにする流体−母材界面と、のいたるところで、流体のずり粘稠化が生じると考えられる。流体内のずり粘稠化と、弾道材料及び多孔質母材間のしっかりした(恒久的な)結合とは、流体がインターカレートされた多孔質母材内へ弾道材料が押し込まれることをも防止する。これに関連して、多孔質母材内の流体のずり粘稠化が、複合材料の衝撃エネルギー散逸を著しく増加することがわかった。この衝撃エネルギーは、弾道衝撃時に、弾道材料の糸の破壊(breaking)によっても散逸される。複合材料による衝撃エネルギーの著しい散逸に起因して、衝撃により引き起こされる複合材料の変形は著しく少なくなると考えられる。それ故、複合材料が弾道アプリケーションに用いられれば、複合材料の過度の変形により引き起こされる鈍的外傷を効果的に低減することができる。
【0035】
複合材料が弾道アプリケーションに用いられた際の、該複合材料の利用法は、多くの利点を備える、例えば弾道ベストや鈍的外傷パッドである。上述のごとく、鈍的外傷は効果的に減少されるので、ユーザの負傷が抑制される。更に、変形及び鈍的外傷の減少に関する複合材料の有効性に起因して、本発明の複合材料の少しの(弾道材料の3つの層が、多孔質母材の3つの層夫々に結合された)積層体のみが要求される。非限定例として、弾道材料の3つの層が多孔質母材の3つの層夫々に結合された、複合材料の3つの積層体(2cm厚)は、複合材料の変形の著しい減少をもたらす。それ故、本発明の複合材料は、かさばり(bulkiness)を抑えることができ、その結果、例えば弾道ウェアに用いられた際に、柔軟性及び可動性を向上させる。他方で、要望があれば、より厚い複合材料、例えば本発明の複合材料の4以上の積層体、も利用できる。加えて、複合材料は、低速で扱う場合は、多孔質母材にインターカレートされた流体が、母材内を流れることができるので、柔らかくしなやかなままである。これは、可動性が重要な人体の部分に、複合材料を重ねて着ることができることを意味する。それ故、本発明の複合材料は、弾道用途(ballistic purposes)で使用される場合に、非常に有用である。
【0036】
本発明は、例えば発射体である移動物体の運動エネルギーの散逸のための複合材料の利用法にも関連する。本発明の複合材料は、可動性及び柔軟性をそこなうことなく、高い衝撃力からの保護を提供できる限りにおいて、異なるアプリケーションに用いることができる。複合材料は、例えば、鋭利な物や発射体に接する可能性がある環境にいる作業者の保護のための工業用防護服として用いることができる。複合材料は、例えば、壊滅的な機器の不具合時に発射体を生成し放出する可能性のある、高速回転要素を伴う機器等の工業機器を覆うことにも用いることができる。複合材料は、エンジンの壊滅的な不具合時に航空機及び乗員を保護するために、航空機エンジンのシュラウドとしても用いることができる。複合材料は、乗り物の外面に対する鈍的な又は弾道の衝撃により生じる発射体を抑制することにより乗り物の乗員を保護するための、例えば自動車、航空機及び船等の乗り物用のスポールライナー(spall liner)としても用いることができる。
【0037】
複合材料は、任意数の弾道材料の層を有する物品に用いることができ、要求されるデザインに応じて本発明の複合材料に積み重ねる又は隣接して配置させることができる。弾道材料の重層は、通常、多孔質母材に結合された弾道材料に隣接して配置される。典型的な物品には、例えばボディアーマ、フレキシブル外傷パッド、爆弾ブランケット、戦車スカート、インフレータブル(inflatable)保護装置又は防護壁があるが、これに限定されない。防護壁は、荷物の保管及び輸送に用いられる、又は弾薬の保管及び輸送に用いられる、収容可能な乗り物の装甲、テント、シート、コックピットであってよい。物品は、例えば地雷の爆発により生じる衝撃等の衝撃(blasts)、及び、例えばパラシュートによる着地時に、又は事故で受ける急な衝撃等の急な衝撃(sudden impacts)、に対する肉体の保護を提供するために硬化可能な、例えばジャケット、手袋、オートバイ防護服、ズボン又はブーツ等の防護服であってもよい。
【0038】
本発明は、更に、複合材料を製造する方法にも関連する。この方法は、弾道材料の層を多孔質母材の層に結合する工程を含む。該結合は、例えば、接着剤を弾道ファイバー材料又は多孔質母材のいずれかに塗布し、二つの材料の層を、適切な期間互いに接触させることにより実現される。これに関連して、二つの層を、例えば保持、締め付け、積み重ね又は加圧すること等の任意の適切な方法により、弾道材料及び多孔質母材が互いに接触されてよい。
【0039】
上述したように、使用時に、弾道材料及び多孔質母材が互いにしっかりと(恒久的に)保持されている限りは、二つの材料を互いに結合するために、任意の適切な接着剤を使用してよい。これに関連して、接着剤は、液体、パテ、固体等に限らず、どのような態様であってもよい。接着剤は、例えば硬化性エポキシ樹脂ベース接着剤でよい。エポキシ樹脂を用いる場合、ビスフェノール、ヘキサヒドロビスフェノール、ノボラック、ダイマー酸、ポリエチレングリコール又はそれらの混合材、のエポキシ樹脂が、弾道材料の多孔質母材への結合に用いられてよい。或いは、“SuperGlue(登録商標)”としてもよく知られている、例えば、シアノ2−シアノアクリレート、エチル2−シアノアクリレート等のシアノアクリレートが、弾道材料の多孔質母材への結合に用いられてよい。
【0040】
本発明の方法は、弾道材料を多孔質母材に結合させるために、更に、接着剤を硬化させる工程を含む。硬化は、一般的に、エポキシ樹脂と硬化剤との混合により生じる。硬化工程は、摂氏0度から摂氏200度、摂氏5度から摂氏80度、又は摂氏5度から摂氏35度の温度範囲において、実施される。最適な硬化工程は、当業者の知識の範囲内で、実験的に決定されてよい。事例として、硬化工程は、室温、8時間で実施されてよい。
【0041】
例えばエマルション又は分散形態である他の形態でのエポキシ硬化剤は、この技術分野ではよく知られている。それらの例は、ジシアノジアミド、イミダゾール、フェノール、酸無水物、酸ヒドラジド、フッ化ホウ素化合物、アミンイミド及びアミン種の硬化剤である。これらの硬化剤は、単独で又は2以上の組み合わせで、使用されてよい。硬化工程中、例えばエポキシ樹脂の硬化中、硬化−硬化剤(curing-hardening agent)は、通常、エポキシ樹脂成分中の各エポキシ群に対する、混合された硬化−硬化成分(hardener-curing components)中に提供されるだろう活性イミノ基(−NH)に比例して加えられる。これらは、この技術分野では、化学量論的量として知られている。
【0042】
本発明の方法は、更に、流体、例えばずり粘稠化流体、を複合材料に加える工程を含んでよい。要求されるデザインに応じて、任意数の本発明の複合材料の積層体が、本用途のために製造される。ずり粘稠化流体は、例えば、複合材料の各積層体に加えられてよい。ある実施形態では、複合材料は、適切な流体、例えば本明細書に記載されたずり粘稠化流体、に浸されてよい。当該方法の最終工程は、複合材料が構造、例えば封入構造体(encapsulation)、中に包み込まれる限り、当業者に知られている任意の適切な方法により、複合材料を密封する工程を含む。封入(encapsulated)された複合材料は、例えば封入構造体の両端と一緒にラミネート加工される等の、任意の適切な手段により密封されてよい。ある実施形態では、適切な温度条件下において、又は、封入構造体の両端を一緒に密封するために封入構造体の一端に接着剤を塗布することによって、複合材料は、高分子化合物、ラテックス、セラミック又はそれらの複合材の中に封入されてよい。接着剤は、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、エポキシ樹脂、例えばメチル2−シアノアクリレート、エチル2−シアノアクリレート等のシアノアクリレート、又はそれらの複合材であってよい。これに関連して、封入された複合材料は、要求されるデザインに応じた、どのような形状及びサイズであってよい。封入された複合材料は、例えばバッグ、ケース又はシートの形状であってよい。
【0043】
本発明のこれらの態様及び利点は、後述の図面及び非限定例を考慮して、より十分に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明をより理解するため、及び実際にどのように実行されるのかを明らかにするために、添付図面を参照して、好ましい実施形態を非限定例のみにより説明する。
【図1A】(縞模様で示される)弾道材料の層が(ドットで示される)多孔質母材の層に結合された、本発明の複合材料の実施形態の略図である。
【図1B】本発明の複合材料の他の実施形態の略図である。この図では、(弾道材料の2つの層が、多孔質母材の2つの層夫々に結合されることにより示される)複合材料の2つの積層体が、ラテックス内に封入されている。複合材料は、多孔質母材の中に挿入された(影付き部分で示される)ずり粘稠化流体も含んでいる。
【図2】本発明の弾道配置(ballistic setup)を示す略図である。
【図3】図3は、図2の弾道配置を用いて、異なる鈍的外傷低減材料を発射体で狙撃した場合の、異なる鈍的外傷低減材料の背後の粘土の圧痕である。図3Aは、弾道材料として用いられた20層(piles)のTwaron(登録商標)の背後の粘土の圧痕の結果である。図3Bは、2cmのゴムパッドで補強された20層のTwaron(登録商標)の背後の粘土の圧痕の結果である。図3Cは、他の20層のTwaron(登録商標)で補強された20層のTwaron(登録商標)の背後の粘土の圧痕の結果である。図3Dは、弾道材料(Twaron(登録商標))の3つの層が多孔質母材(不織布ポリエステル)の3つの層夫々に結合され、ラテックス封入構造体中のコーンスターチの浮流(suspension)(ずり粘稠化流体)に浸された、本発明の複合材料の3つの積層体で補強された、20層のTwaron(登録商標)の背後の粘土の圧痕の結果である。
【図4】Twaron(登録商標)を(灰色の線で示される)弾道材料として用いた複合材料において様々な流体を用いた場合の、弾道衝撃時の異なる複合材料の貫通深さ(mm)への影響である。システムAは、1層のTwaron(登録商標)を意味する。システムBは、(暗灰色の箱で示される)水(20mm厚の水)と、1層のTwaron(登録商標)とを含む複合材料を意味する。システムCは、(明灰色の箱で示される)ずり粘稠化流体(20mm厚のSTF)として用いられるコーンスターチの浮流と、1層のTwaron(登録商標)とを含む複合材料を意味する。
【図5】他の複合材料(比較のシステム1及び2参照)と比べた、弾道衝撃時の本発明の複合材料(システム3参照)の貫通深さ(mm)への影響である。システム1は、ずり粘稠化材料としての(明灰色の箱で示される)コーンスターチ(20mm厚のSTF)と、(灰色線で示される)1層の弾道材料(Twaron(登録商標))とを含む複合材料を意味する。システム2は、ずり粘稠化流体に浸った(灰色線で示される)2層の弾道材料(Twaron(登録商標))と、(灰色線で示される)他の1層の弾道材料(Twaron(登録商標))とを含む複合材料を意味する。システム3は、(黒線で示される)2層の弾道材料(エポキシ樹脂処理されたTwaron(登録商標))が(ドット線で示される)2層の多孔質母材(不織布ポリエステル)夫々に結合され、ずり粘稠化流体に浸った本発明の複合材料の2つの積層体を意味する。(灰色線で示される)付加的な1層の弾道材料(Twaron(登録商標))がシステム3に含まれる。
【図6】弾道衝撃時における、他の複合材料(システム1及び4参照)と比べた、本発明の二つの異なる複合材料(システム2及び3参照)の貫通深さ(mm)への影響である。システム1は、(明灰色箱STFで示される)ずり粘稠化流体としてのコーンスターチ浮流と、(灰色線で示される)2層の弾道材料(Twaron(登録商標))とを含む複合材料を意味する。システム2は、(黒線で示される)2層の弾道材料(エポキシ樹脂処理されたTwaron(登録商標))が(ドット線で示される)2層の多孔質母材(不織布ポリエステル)夫々に結合された、ずり粘稠化流体に浸った複合材料の2つの積層体を意味する。(灰色線で示される)付加的な2層の弾道材料がシステム2に含まれる。システム3は、流体として用いられる(暗灰色箱で示される)水を除いて、システム2と同様である。システム4は、複合材料中の(灰色線で示される)弾道材料(Twaron(登録商標))が、エポキシ樹脂で処理されているのではなく、(ドット線で示される)多孔質母材(不織布ポリエステル)に積層されている以外は、システム2と同様である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<第1実施例>
この実施例は、本発明の複合材料の準備に用いられる材料及び夫々の工程を説明する。
【0046】
ずり粘稠化流体は、例えば、EE Bischoff White et al, Rheol Acta, 2010, vol. 49, pp.119-129に記載されているように、55質量百分率(wt. %)の濃度での水中のコーンスターチの浮遊物、又は、米国特許出願公開第2009/0004413号明細書の実施例セクションに記載されているように、52%体積分率(%(v/v))でのポリエチレングリコール(PGE)中の450nmのシリカ粒子の分散であってよい。以下の実施例では、55質量百分率の濃度での水中のコーンスターチの浮遊物が、ずり粘稠化流体として用いられる。本発明の複合材料を準備するために、Twaron(登録商標)布(TEIJIN ARAMIDから入手される)が弾道材料として用いられ、不織ファイバーポリエステル(RC3000-10AFR、米国のリッチモンド・エアクラフト・プロダクツ社から入手される)が多孔質母材として用いられる。Twaron(登録商標)布は、15cm×15cmの正方形3枚に切断される。対応する不織ファイバーポリエステル(RE3000-10AFR、米国のリッチモンド・エアクラフト・プロダクツ社から入手される)の片(pieces)は、Twaron(登録商標)布と同じ大きさ同じ形に切断される。エポキシ樹脂接着剤(Araldite(登録商標)2011、米国のハンツマン・アドバンス・マテリアルズ社(Huntsman Advanced Materials)から入手される)が、Twaron(登録商標)布の一方に塗布される。不織ファイバーポリエステルは、Twaron(登録商標)布と不織ファイバーポリエステルとが互いに接着されるように、Twaron(登録商標)布に接触される。その後、室温で8時間、接着剤が硬化される。一旦接着剤が硬化すると、接着されたTwaron(登録商標)布及び不織ファイバーポリエステルの3つの積層体は、ラテックス封入構造体の中に入れられる。ずり粘稠化流体は、Twaron(登録商標)布及び不織ファイバーポリエステルの各積層体の挿入と一緒に、封入構造体の中に注がれる。恒久的に結合されたTwaron(登録商標)布及び不織ファイバーポリエステルの3つの積層体が一旦ずり粘稠化流体に浸されると、封入構造体は、エチル2−シアノアクリレート(Holdtite(登録商標)CA25、英国のホールドタイト・アドヘッシブズ社(Holdtite Adhesives)から入手される)がラテックスの一端に塗布され、ラテックスの両端が互いに接触されることにより密封され、その後、室温でシアノアクリレートが硬化されることによって、ラテックス封入構造体が恒久的に密封される。
【0047】
<第2実施例>
この実施例は、高衝撃エネルギーの散逸時における複合材料の使用効果、及び高エネルギー弾道衝撃による鈍的外傷を低減能力を説明する。この実施例では、3層のTwaron(登録商標)が3層の繊維性の多孔質母材夫々に結合され、ラテックス内に封入されている、第1実施例から得られる複合材料の3つの積層体が用いられる(2cm厚)。
【0048】
弾道試験設定の略図は、図2に描かれている。弾道試験は、ガス銃を用いて実施される。球形の鋼鉄の発射体が、4つの異なる鈍的外傷低減材料に対して発砲された。鈍的外傷低減材料は、(i)弾道材料として用いられた20層のTwaron(登録商標)、(ii)2cmのゴムパッドで補強された20層のTwaron(登録商標)、(iii)他の20層のTwaron(登録商標)で補強された20層のTwaron(登録商標)、及び(iv)第1実施例から得られる複合材料の3つの積層体で補強された20層のTwaron(登録商標)、である。塑像用粘土の箱は、衝撃により生じる圧痕を低減する各鈍的外傷低減材料の背後に配置される。発射体の速度は、一対のセンサを用いて計測された。球形の鋼鉄の発射体の重さは12グラムであり、衝撃速度は秒速350メートルである。735J(ジュール)の衝撃エネルギーは、NIJ (National Institute of Justice)標準IIIA(ハンドガンから発砲された9mm弾のエネルギーに相当)の衝撃エネルギーに相当する。
【0049】
4つの異なる鈍的外傷低減材料の背後に配置された粘土における圧痕は、図3に描かれている。発射体は、20層のTwaron(登録商標)を貫通してはいないけれども、粘土証拠物(clay witness)は、布が粘土に押し込まれたということで深い圧痕マークを記録する(図3A参照)。残りの3つの鈍的外傷低減材料の粘土における圧痕は、図3B乃至3Dに夫々描かれている。4つの異なる鈍的外傷低減材料を用いた、粘土証拠物の圧痕の深さ(mm)は計測され、表1に記録される。
【0050】
【表1】

表1:異なる鈍的外傷低減材料が用いられた場合の粘土証拠物の圧痕の深さの比較。
【0051】
本明細書に記載された本発明の複合材料(図3D参照)を用いた衝撃エネルギー散逸は、例えばTwaron(登録商標)(図3A及び3C参照)又はゴム(図3B参照)等の他の鈍的外傷低減材料に比べて優れていることは明らかである。
【0052】
<第3実施例>
この実施例は、高弾道エネルギー衝突時の複合材料中に様々な流体を用いることの効果を説明する(図4参照)。
【0053】
直径14.5mmの球形の鋼鉄の発射体は、三つの異なるシステムに対して発砲された。これらのシステムは、(i)弾道材料として用いられた1層のTwaron(登録商標)(図4システムA参照)、(ii)1層のTwaron(登録商標)及びラテックスに封入された水を含む複合材料(20mm厚)(図4システムB参照)、並びに(iii)1層のTwaron(登録商標)、及びラテックスに封入された、ずり粘稠化流体(55wt.%)としてのコーンスターチの浮流を含む複合材料(20mm厚)(図4システムC参照)、である。発射体の重量は12グラムであり、衝撃速度は秒速75メートルである。各複合システムの貫通深さ(mm)は、図4に描かれている。ずり粘稠化流体が用いられた場合、貫通深さが最も少ないことは明らかである。図4において、複合材料中の流体として水が用いられた場合、貫通深さが減少することにも注意する。
【0054】
<第4実施例>
本発明は、高弾道エネルギー衝突時に、複合材料に不織ファイバーポリエステル(多孔質母材)が用いられた場合の本発明の複合材料の有効性を説明する(図5参照)。
【0055】
直径14.5mmの球形の鋼鉄の発射体は、三つの異なるシステムに対して発砲された。これらのシステムは、(i)弾道材料としての1層のTwaron(登録商標)と、ラテックスに封入された、ずり粘稠化流体(55wt.%)として用いられるコーンスターチの浮流を含む複合材料(20mm厚)(図5システム1参照)、(ii)1層のTwaron(登録商標)と、ずり粘稠化流体(55wt.%)としてのコーンスターチの浮流に浸り、ラテックスに封入された2層のTwaron(登録商標)を含む複合材料(20mm厚)(図5システム2参照)、並びに(iii)1層のTwaron(登録商標)、及び2層のTwaron(登録商標)が2層の不織ファイバーポリエステル夫々に、エポキシ樹脂(Araldite(登録商標)2011)で接着されており、ラテックスに封入され、ずり粘稠化流体(55wt.%)として用いられたコーンスターチの浮流に浸った複合材料の2つの積層体(図5システム3参照)、である。発射体の重量は12グラムであり、衝撃速度は秒速75メートルである。各複合システムの貫通深さ(mm)は、図5に描かれている。図5からわかるように、封入された複合材料における不織ファイバーポリエステルがTwaronの各層に接続された場合に、貫通深さの著しい減少がある(図5システム3参照)。
【0056】
<第5実施例>
本発明は、例えばエポキシ樹脂等の接着剤が不織ファイバーポリエステル(多孔質母材)とTwaron(登録商標)布(弾道材料)との結合に用いられた場合、高エネルギー弾道衝突時の本発明の複合材料の有効性を説明する(図6参照)。図6は、複合材料中の流体として水が用いられた場合の本発明の複合材料の効果も説明する。
【0057】
直径14.5mmの球形の鋼鉄の発射体が四つの異なる複合システムに対して発砲された。これらのシステムは、(i)2層のTwaron(登録商標)と、ラテックスに封入されたずり粘稠化流体(55wt.%)として用いられるコーンスターチの浮流を含む複合材料(図6システム1参照)、(ii)2層のTwaron(登録商標)、及び2層のTwaron(登録商標)が2層の不織ファイバーポリエステル夫々に、エポキシ樹脂(Araldite(登録商標)2011)で接着されており、ラテックスに封入され、ずり粘稠化流体(55wt.%)として用いられるコーンスターチの浮流に浸った本発明の複合材料の2つの積層体(図5システム2参照)、(iii)2層のTwaron(登録商標)、及び2層のTwaronが2層の不織ファイバーポリエステル夫々に、エポキシ樹脂(Araldite(登録商標)2011)で結合されており、水に浸った本発明の複合材料の2つの積層体(図5システム3参照)、並びに(iv)2層のTwaron(登録商標)、及び積層されることにより2層のTwaron(登録商標)が2層の繊維性のポリエステル夫々に接触されており、ずり粘稠化流体(55wt.%)として用いられるコーンスターチの浮流に浸った、複合材料の2つの積層体、である。
【0058】
発射体の重量は12グラムであり、衝撃速度は秒速145メートルである。各複合システムの貫通深さ(mm)は図6に明示される。図6におけるシステム2とシステム4との貫通深さを比較すると、封入された複合材料において、エポキシ樹脂(Araldite(登録商標))を用いてTwaron(登録商標)が繊維性のポリエステルに結合されている場合、本発明の複合材料の貫通深さが著しく減少することは明らかである(システム2参照)。加えて、封入された複合材料において流体として水が用いられた場合、本発明の複合材料の貫通深さが減少されることにも注意する(システム3参照)。
【0059】
本明細書において、列挙され又は議論されたすでに公開された書類は、書類が最先端技術の一部又は共通一般知識であることの自任として、必ずしも見なされなくてよい。列挙された全ての書類は、その内容全体を本明細書に援用する。
【0060】
本明細書では、本発明は広く一般的に記載されている。一般的開示(generic disclosure)に含まれる限られた種(species)及び亜種の分類夫々も、本発明の一部をなす。つまり、摘出された要素が本明細書で具体的に列挙されているか否かにかかわらず、ただし書や、属(genus)から任意の要旨を削除する否定的限定を伴う本発明の一般的な記述を含む。
【0061】
他の実施形態は、以下のクレームの範囲内にある。加えて、本発明の特徴又は態様は、マーカッシュグループの表現で記載されているので、当業者は、個々の要素又はマーカッシュグループの要素のサブグループのいずれの表現で記載された本発明も、わかるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体の運動エネルギーを散逸可能な複合材料であって、
多孔質母材の層に結合された弾道材料の層を備える
ことを特徴とする複合材料。
【請求項2】
流体を更に備え、
前記流体は、前記多孔質母材中にインターカレートされている
ことを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
当該複合材料は、前記流体に浸されていることを特徴とする請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記流体は、水溶液であることを特徴とする請求項2又は3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記流体は、ずり粘稠化流体であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記多孔質母材は、繊維性物質であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記多孔質母材は、不織布材料であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記多孔質母材は、高分子化合物を含んでいることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記高分子化合物は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリエステル及びそれらの複合材から成るグループから選択されることを特徴とする請求項9に記載の複合材料。
【請求項10】
前記高分子化合物は、ポリエステルであることを特徴とする請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
前記弾道材料の層は、接着剤により、前記各多孔質母材に結合されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項12】
前記接着剤は、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、エポキシ樹脂及びシアノアクリレートから成るグループから選択されることを特徴とする請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
前記接着剤は、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
前記弾道材料の層は、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリ(パラフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、炭素繊維、セラミックホイスカー、炭素ナノチューブ強化高分子、ガラス強化高分子、微結晶性セルロース及びそれらの複合材から成るグループから選択されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項15】
前記ポリアミドは、アラミド、ナイロン又はそれらの複合材であることを特徴とする請求項14に記載の複合材料。
【請求項16】
前記アラミドは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、又はパラフェニレンテレフタルアミドと3,4´−オキシジフェニレンテレフタルアミドとの共重合体(co-poly-(paraphenylene/3,4’-oxydiphenylene terephthalamide))であることを特徴とする請求項15に記載の複合材料。
【請求項17】
前記ポリオレフィンは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高弾性ポリプロピレン(Innegra S(登録商標))及びそれらの複合材から成るグループから選択されることを特徴とする請求項14乃至16のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項18】
前記弾道材料の層は、編地、織物、不織布、単一編み構造、一方向性シート、多方向性シート又は単繊維の形をとっていることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項19】
前記ずり粘稠化流体は、媒体中に浮遊する複数の粒子を含むことを特徴とする請求項5乃至18のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項20】
前記複数の粒子は、複数の有機又は無機の粒子であることを特徴とする請求項19に記載の複合材料。
【請求項21】
前記複数の粒子は、酸化物、コーンスターチ、炭酸カルシウム、鉱物、高分子化合物及びそれらの複合材から成るグループから選択されることを特徴とする請求項19又は20に記載の複合材料。
【請求項22】
前記酸化物は、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化銀、酸化亜鉛、酸化パラジウム及びそれらの複合材から成るグループから選択されることを特徴とする請求項21に記載の複合材料。
【請求項23】
前記鉱物は、天然に存在する又は人工的に生じた材料であることを特徴とする請求項21に記載の複合材料。
【請求項24】
前記鉱物は、石英、方解石、タルク、石膏、カオリン、雲母、炭化ケイ素及びそれらの複合材から成るグループから選択されることを特徴とする請求項23に記載の複合材料。
【請求項25】
前記高分子化合物は、ポリメチルメタクリレート又はポリスチレンであることを特徴とする請求項21に記載の複合材料。
【請求項26】
前記複数の粒子の平均直径は100ミクロン未満であることを特徴とする請求項19乃至25のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項27】
前記媒体は、有機ベース媒体、水性ベース媒体又はシリコンベース媒体であることを特徴とする請求項19乃至26のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項28】
前記有機ベース媒体は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール及びそれらの複合材から成るグループから選択されることを特徴とする請求項27に記載の複合材料。
【請求項29】
前記水性ベース媒体は、塩を含むことを特徴とする請求項27に記載の複合材料。
【請求項30】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化セシウム又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項29に記載の複合材料。
【請求項31】
抗菌物質を更に備えることを特徴とする請求項2乃至30のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項32】
前記シリコンベース媒体は、シリコンオイル、フェニルトリメチコン又はそれらの複合材であることを特徴とする請求項27に記載の複合材料。
【請求項33】
前記多孔質母材の5つの層夫々に結合された前記弾道材料の5つの層を備えることを特徴とする請求項1乃至32のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項34】
当該複合材料はラテックス内に封入されていることを特徴とする請求項1乃至33のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項35】
ファイバー弾道材料の層を、多孔質母材の層に結合する工程を含むことを特徴とする、請求項1乃至34のいずれか一項に記載の複合材料を製造する方法。
【請求項36】
ずり粘稠化流体を前記複合材料に加える工程を更に含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記複合材料を密封する工程を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記結合する工程は、
接着剤が、前記弾道材料及び前記多孔質母材の一方に塗布され、
前記複数の材料が互いに接触され、
前記ファイバー弾道材料を前記多孔質母材に結合させるために前記接着剤を硬化させる
ことにより実行されることを特徴とする請求項35乃至37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記接着剤は、硬化性エポキシ樹脂ベースの接着剤であることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1乃至34のいずれか一項に記載の複合材料を含むことを特徴とする、移動物体の運動エネルギーを散逸する物品。
【請求項41】
当該物品は、ボディアーマ、爆弾ブランケット、防護衣、戦車スカート及び防護壁のグループから選択されることを特徴とする請求項40に記載の物品。
【請求項42】
移動物体の運動エネルギーを散逸させるための、請求項1乃至34のいずれか一項に記載の複合材料の利用法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−519859(P2013−519859A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552840(P2012−552840)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/SG2010/000054
【国際公開番号】WO2011/099936
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【出願人】(506009947)ナショナル ユニヴァーシティ オブ シンガポール (3)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL UNIVERSITY OF SINGAPORE
【住所又は居所原語表記】10 Kent Ridge Crescent, Singapore 119260
【Fターム(参考)】