説明

エネルギー線硬化性組成物硬化装置

【課題】記録安定性に優れ、安全なエネルギー線硬化性組成物硬化装置を提供する。
【解決手段】エネルギー線硬化性組成物を含む塗布液を基材Pに付与したのち、エネルギー線を照射して該エネルギー線硬化性組成物を硬化するエネルギー線硬化性組成物硬化装置において、該エネルギー線硬化性組成物硬化装置は、エネルギー線硬化性組成物付与部と、エネルギー線照射部4とを有し、かつ、該エネルギー線硬化性組成物付与部から該エネルギー線照射部4の方向に該基材Pを相対移動させる駆動部をもち、更に、該エネルギー線照射部4の最下流部に、柔軟性素材で構成した遮光部8を有することを特徴とするエネルギー線硬化性組成物硬化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定にエネルギー線硬化性組成物を硬化できるエネルギー線硬化性組成物硬化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキソ印刷、オフセット印刷等で、紫外線硬化あるいは電子線硬化性インクを用いる印刷方法が注目されている。これらの方法は、VOCの発生がなく、乾燥時間も短縮できるため、後加工への移行が早く、更に、フィルム等のインク吸収性の低い基材に対しても印刷可能である。
【0003】
しかしながら、電子線硬化のためには、照射部を不活性ガス置換する必要がある。紫外線を用いる場合も、光源について、遮光を十分する必要があり、不十分であると、印刷の場合、インクの濃度の安定性が悪くなったり、作業者の安全性が確保できなかったりした。また、遮光性を高めるために、基材とエネルギー線照射部の間隙を狭めることは有効であるが、ジャムトラブルの発生の確率が高くなったり、不要な輻射熱により、熱に弱い基材が変形するなどの課題があった。また、プラテン等、エネルギー線照射面近傍にエネルギー線吸収性化合物等を塗布あるいは含浸させたり、エネルギー線吸収性素材を用いることは有効であるが、基材にエネルギー線吸収性が低いものを連続して用いる場合、効果が低減する。
【0004】
従来技術に、印字ヘッドに関する遮光についての記載(例えば、特許文献1参照。)がある。しかし、記録部が1箇所の場合、有効であるが、複数の記録部を持つ場合、遮光性は劣化する。記録部に対する遮光についての記載(例えば、特許文献2参照。)があるが、記録部のみ遮光され、それ以外の部分に関する記載はない。
【特許文献1】特開2004−284141号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【特許文献2】特開2004−358753号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、記録安定性に優れ、安全なエネルギー線硬化性組成物硬化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0007】
1.エネルギー線硬化性組成物を含む塗布液を基材に付与したのち、エネルギー線を照射して該エネルギー線硬化性組成物を硬化するエネルギー線硬化性組成物硬化装置において、該エネルギー線硬化性組成物硬化装置は、エネルギー線硬化性組成物付与部と、エネルギー線照射部とを有し、かつ、該エネルギー線硬化性組成物付与部から該エネルギー線照射部の方向に該基材を相対移動させる駆動部をもち、更に、該エネルギー線照射部の最下流部に、柔軟性素材で構成した遮光部を有することを特徴とするエネルギー線硬化性組成物硬化装置。
【0008】
2.前記柔軟性素材が繊維状でかつブラシ状であることを特徴とする前記1に記載のエネルギー線硬化性組成物硬化装置。
【0009】
3.前記エネルギー線硬化性組成物付与部と、エネルギー線照射部がドラム状のプラテンの周囲に設けられていることを特徴とする前記1又は2に記載のエネルギー線硬化性組成物硬化装置。
【0010】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載のエネルギー線硬化性組成物硬化装置が、インクジェット印刷機、フレキソ印刷機、グラビア印刷機及び平版印刷機から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするエネルギー線硬化性組成物硬化装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、記録安定性に優れ、安全なエネルギー線硬化性組成物硬化装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を更に詳しく説明する。
【0013】
本発明にかかるエネルギー線としては、紫外線、可視光、赤外線、電子線等が用いられるが、紫外線又は可視光が、装置の簡便性、硬化性組成物の選択の幅から好ましい。特に、硬化性の観点で、紫外線が好ましい。更に好ましくは、ピーク波長が200〜300nmの紫外線が好ましい。
【0014】
本発明の遮光に用いる柔軟性素材は、ブラシ状のもの、布状のもの等が用いられる。遮光部は、硬化面に接触しても非接触でも良い。また、接触と非接触を繰り返しても良い。接触する場合、硬化されているエネルギー線硬化性組成物や基材を傷つけないような十分やわらかい素材のものが好ましい。素材としては、合成繊維、天然繊維、複合繊維、金属繊維等をブラシ状あるいは布状に用いることができる。
【0015】
遮光部に用いる素材に、エネルギー線吸収性成分を浸漬、含浸させることは、遮光性を高める上で好ましい。遮光部に用いる素材に、除電機能を持つ素材を用いると、インクジェット印刷の場合、ミストの低減に効果がある。除電機能を持つ素材としては、カーボン繊維、ステンレス繊維、サンダーロン繊維(アクリル繊維+銅)、ダイナ繊維(耐熱性PVA繊維+銅+金属処理)、SA−7繊維(アクリル+カーボン繊維)、アモルファス繊維等導電性の高い素材が用いられる。
【0016】
遮光部は、照射部の最外部の外側に用いることが好ましい。
【0017】
また、遮光部は、エネルギー線照射部のエネルギー線硬化性組成物付与部と反対側に用いるが、エネルギー線硬化性組成物付与部側以外の面に用いることは、不要な部分へのエネルギー線照射を防ぐために好ましい。
【0018】
遮光性の評価をするには、照度計、紫外線の場合は紫外線照射量に応じ色が変化するUVラベル等を用いることができる。測定場所を自由度から、UVラベルを用いることが望ましい。
【0019】
次に本発明に係るエネルギー線硬化性組成物硬化装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面のエネルギー線硬化性組成物硬化装置はあくまでも本発明で好ましく用いることができるエネルギー線硬化性組成物硬化装置の一態様であり、本発明では、ここで例示するエネルギー線硬化性組成物硬化装置の図面に限定されない。
【0020】
図1は、本発明で用いることのできるインクジェット方式のエネルギー線硬化性組成物硬化装置で、シリアルプリント方式で用いる要部の構成の一例を示す正面図である。エネルギー線硬化性組成物硬化装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射部4、プラテン部5、照射部4の外側に本発明に係る遮光部8等を備えて構成される。このエネルギー線硬化性組成物硬化装置1は、基材Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、基材Pを通過してきた余分なエネルギー線を吸収し、高精細な画像を非常に安定に再現できることから、エネルギー線を吸収する機能を有していることが好ましい。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0021】
図1において、遮光部8の素材は上述したいずれも用いることのできる。
【0022】
基材Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0023】
ヘッドキャリッジ2は基材Pの上側に設置され、基材P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態でエネルギー線硬化性組成物硬化装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0024】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0025】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給されたエネルギー線硬化性組成物(活性エネルギー線硬化型のインク:例えば、UV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から基材Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出される活性エネルギー線硬化型インクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0026】
記録ヘッド3は、基材Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に基材Pの他端まで移動するという走査の間に、基材Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対して、活性エネルギー線硬化型インクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0027】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けて活性エネルギー線硬化型インクの吐出を行なった後、搬送手段で基材Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対して活性エネルギー線硬化型インクの吐出を行なう。
【0028】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3から活性エネルギー線硬化型インクを吐出することにより、基材P上に活性エネルギー線硬化型インク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0029】
照射部4は、活性エネルギー線が紫外線の場合、紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、熱陰極管、冷陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。
【0030】
照射部4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によって活性エネルギー線硬化型インクを吐出する着弾可能領域のうち、エネルギー線硬化性組成物硬化装置(活性エネルギー線硬化型インクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0031】
照射部4はヘッドキャリッジ2の両脇に、基材Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0032】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射部4と基材Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と基材Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射部4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射部4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0033】
ここで、照射部4で照射されるエネルギー線の波長は、照射部4に備えられたランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0034】
エネルギー線硬化性組成物としては、印刷インク、ニス、インクジェットインク等がある。エネルギー線硬化性組成物には、重合性化合物及び必要に応じて重合性開始剤が含まれる。
【0035】
図2は、本発明で用いることのできるフレキソ印刷方式のエネルギー線硬化性組成物硬化装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【0036】
繰り出しロール10から送り出された基材Pは、ローラ16を通り、圧胴であるプラテン5に導かれ、第1のエネルギー線硬化性組成物(活性光線硬化型のインク:例えば、UV硬化インク)付与部でインクを付与される。インクは、版胴12にセットされている画像に応じて、インク溜15からアニックスロール13により供給されるが、余分のインクは、ドクターブレード14により掻き落とされる。版胴12に付与された画像様のインクは、基材Pに転写され、照射部4で硬化される。同様なステーションが多数圧胴であるプラテン5の周囲に設置されており、それぞれ、色違いのインクを基材Pに印刷する。図2では、図1と同様に、Y、M、C、Kの例を図示した。印刷の終了した基材Pは、巻き取りロール11に巻き取られる。
【0037】
本発明においては、照射部4の最下流部に、柔軟性素材で構成した遮光部8を有する。図3にその説明図を載せた。図3において、照射部4の内部に光源41、光制御板42及び保護板43を有する。インクが付与された基材Pは照射部4に矢印の方向に送られて来るが、照射部4で露光され、インクは硬化する。この際、下流方向に光漏れがあると、インクの濃度の安定性が悪くなったり、作業者の安全性が確保できない。本発明ではそのような問題点を解決した優れた発明である。
【0038】
図3aは従来の照射部4を示す。図3b〜eに本発明の態様を示すが、本発明はこれに限定されない。図3b〜eにおいて、照射部4の最下流部に、柔軟性素材で構成した遮光部8を設置した。柔軟性素材としては、上述した素材を挙げることができる。尚、図3dは照射部4が、下辺の中心部でなく、下辺の上流部で圧胴であるプラテン5の円に対して切線方向にセットされた場合であり、図3eは、プラテン5が図2と異なり、円でなく水平の場合を示す。
【0039】
本発明に係るエネルギー線硬化性組成物は、特に、「光硬化技術−樹脂・開始剤の選定と配合条件及び硬化度の測定・評価−(技術協会情報)」に記載されている「光硬化システム(第4章)」の「光酸・塩基発生剤を利用する硬化システム(第1節)」、「光誘導型交互共重合(第2節)」等に適合するインクである。
【0040】
本発明に係るインクは、顔料、光重合性化合物、分散剤及び光開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで光開始剤が触媒として作用することに伴う光重合性化合物の架橋、重合反応によって硬化する特性を有している。ただし、本発明に係るインクとして、上記参考文献の「光誘導型交互共重合(第2節)」に適合するインクを用いる場合には、光開始剤は除外されてもよい。
【0041】
本発明の活性光線硬化型インクでは、光重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インクと、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるが、その両系のインクが本発明に係るインクとしてそれぞれ適用可能であり、更に、本発明においては、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクを適用してもよい。
【0042】
本発明に係るインクがラジカル重合系インクである場合、ラジカル重合性化合物は、
(1)水に対する溶解度が高い、
(2)粘度が低い、
(3)光重合成がある、
(4)硬化膜の物性に優れている等の性能が要求され、ラジカル重合性のアクリルモノマー類が好適に使用できる。
【0043】
ラジカル重合性のアクリルモノマー類としては、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、CH2=C(CH3)−COO−CH2CH2N(CH32:N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、CH2=CH−COO−CH2CH2N(CH32:N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、CH2=C(CH3)−COO−CH2CH2CH2N(CH32:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、CH2=CH−COO−CH2CH2CH2N(CH32:N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、CH2=CH−CON(CH32:N,N−ジメチルアミノメタアクリルアミド、CH2=C(CH3)−CON(CH32:N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、CH2=CH−CONHC24N(CH32:N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリルアミド、CH2=C(CH3)−CONHC24N(CH32:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、CH2=CH−CONH−C36N(CH32:N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、CH2=C(CH3)−CONH−C36N(CH32:及び、これらの4級化された物質、などが色材染着性に優れており特に好ましい。また多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのエチレンオキシド付加化合物の(メタ)アクリル酸エステル、多塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応物など、それ自体公知の紫外線硬化型モノマー、オリゴマーが用いられる。これらの物質の中でインクとの相溶性、親水性の高い物質が適宜選択され、用いられる。これら水溶性モノマーの使用量は、インク全質量に対して1〜40質量%の範囲が好ましい。
【0044】
ラジカル系の光開始剤と増感剤の主なものとして、例えば、光開始剤に関しては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp′−ジクロロベンゾフェン、pp′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、が挙げられる。その使用量は、エネルギー付与により固体化する水溶性モノマーの総量に対して通常0.1〜10質量%が好ましい。
【0045】
本発明においては、硬化時の収縮が少ない又は無いカチオン重合系インクが、機能性・汎用性に優れるため好ましい。
【0046】
本発明に係るインクがカチオン重合系インクである場合、用いられる光重合性化合物としては、少なくとも1種のオキシラン基を有するエポキシ化合物を含有することが好ましい。
【0047】
エポキシ化合物には、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0048】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0049】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0050】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0051】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0052】
また、本発明においてはAMES及び感作性などの安全性の観点から、オキシラン基を有するエポキシ化合物として、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0053】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。市販されているエポキシ化された植物油としては、例えば、新日本理化株式会社製サンソサイザーE−4030、ATOFINA Chemical社製 Vf7170、Vf7190、Vf5075、Vf4050、Vf7010、Vf9010、Vf9040、Vf7040等が挙げられる。
【0054】
また、本発明に係るカチオン重合系インクにおいては、更なる硬化性及び吐出安定性の向上のために、オキセタン環を含有する化合物を含むことが好ましい。
【0055】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物としては、特開2001−220526、同2001−310937に紹介されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。また、オキセタン環を1個含有する単官能オキセタン化合物とオキセタン環を2個以上含有する多官能オキセタン化合物とを併用することが、硬化後の膜強度と記録媒体への密着性を向上させる上で好ましい。
【0056】
更に、本発明のカチオン重合系インクにおいては、あらゆる公知のビニルエーテル化合物を用いてもよい。
【0057】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0058】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0059】
本発明に係るインクにおいては、光開始剤の少なくとも1つが光酸発生剤であることが好ましい。
【0060】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0061】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0062】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。
【0063】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を、以下に示す。
【0064】
【化1】

【0065】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を、以下に例示する。
【0066】
【化2】

【0067】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
【0068】
【化3】

【0069】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0070】
【化4】

【0071】
更に、本発明に係るカチオン重合系インクにおいては、上記光重合性モノマーの添加量は、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物が30〜95質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有するエポキシ化合物が5〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物が0〜40質量%とすることが好ましい。
【0072】
本発明に係る活性光線硬化型インクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、カチオン重合系インクの保存安定性を改良する目的で、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。
【0073】
塩基性化合物を含有することで、吐出安定性が良好となるばかりでなく、低湿下においても硬化収縮による皺の発生が抑制される。塩基性化合物としては、公知のあらゆるものを用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。
【0074】
塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。
【0075】
塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様に、アルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(例えば、マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
【0076】
塩基性有機化合物としては、アミンならびにキノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物などが挙げられるが、これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0077】
塩基性化合物を存在させる際のその濃度は、光重合性モノマーの総量に対して10〜1000質量ppm、特に20〜500質量ppmの範囲であることが好ましい。なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0078】
本発明の画像形成方法で用いることのできる記録材料としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0079】
これら各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは、素材の特性により大きく異なり、記録材料によってはインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0080】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0081】
本発明に係るインクは、少なくともイエローのインクジェットインク、マゼンタのインクジェットインク、シアンのインクジェットインク、ブラックのインクジェットインクを有するインクジェットインクセットを構成することが好ましく、いわゆるカラーのインクジェットプリントに一般的に用いられている複数のインクをセットにしたインクセットのことを指す。本発明の画像形成方法においては、本発明に係るインクにより全て構成されたインクジェットインクセットであることが好ましく、このインクセットを用いてインクジェット画像を形成すると色混じりの解決された画像を形成することができる。
【0082】
さらにインクジェットで写真画像を形成するために、顔料含有量を各々変化させた、いわゆる濃淡インクを調製して用いることもできる。また、必要に応じて、赤、緑、青、白等の特色インクを用いることも色再現上好ましい。
【0083】
本発明の活性光線硬化型組成物には顔料を用いることができる。有機顔料及び/または無機顔料等の種々のものが使用できる。具体的には、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボン及び酸化アンチモン等の白色顔料、アニリンブラック、鉄黒及びカーボンブラック等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエロー(100、50、30等)、チタンイエロー、ベンジンイエロー及びパーマネントイエロー等の黄色顔料、クロームバーミロオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ及びインダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料、酸化鉄、パーマネントブラウン及びパラブラウン等の褐色顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトファーストレッド及びキナクリドン系赤色顔料等の赤色顔料、コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー及びインジゴ等の青色顔料、クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン及びポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料の他、各種螢光顔料、金属粉顔料、体質顔料等が挙げられる。
【0084】
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、42、74、81、83、87、93、95、109、120、128、138、139、151、166、180、185
C.I Pigment Orange−16、36、38
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、101、122、144、146、177、185
C.I Pigment Violet−19、23
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29
C.I Pigment Green−7、36
C.I Pigment White−6、18、21
C.I Pigment Black−7
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。分散媒体は光重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0085】
本発明において、顔料は十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、活性光線硬化型組成物中に1〜50質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0086】
本発明の組成物には、上記成分の他、用途に応じて活性光線硬化型組成物中、50質量%までの量で以下の材料を加えることができる。
【0087】
印刷インキ、缶、プラスチック、紙、木材等のコーティング塗料及び接着剤用途の場合は、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、処理剤、粘度調節剤、有機溶剤、潤滑性付与剤及び紫外線遮断剤のような不活性成分を配合することができる。無機充填材の例としては、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化マグネシウム及び酸化マンガン等の金属/非金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化第一鉄及び水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム及び硫酸カルシウム等の塩類、二酸化ケイ素等のケイ素化合物、カオリン、ベントナイト、クレー及びタルク等の天然顔料、天然ゼオライト、大谷石、天然雲母及びアイオナイト等の鉱物類、人工雲母及び合成ゼオライト等の合成無機物、並びにアルミニウム、鉄及び亜鉛等の各種金属等が挙げられる。これらの中には、前記顔料と重複するものもあるが、これらは必要に応じて前記必須成分の顔料に加え、組成物に充填材として配合させることもできる。潤滑性付与剤は、得られる塗膜の潤滑性を向上させる目的で配合されるものであり、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィンワックス、動物系ワックス、植物系ワックス等のワックス類を挙げることができる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸及びロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂並びに石油樹脂等が挙げられる。
【0088】
本発明の具体的な態様としては、紫外線硬化性のインクジェットプリンター(特にラインヘッド方式)、フレキソ印刷、孔版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の各種印刷及びニスコート等に用いることができる。特に、プラテンがドラム状のものには有効である。取り分け、多色同時印刷する場合、効果が大きい。
【実施例】
【0089】
実施例1
(エネルギー線硬化性インクの作製)
表1記載のインク組成物を混合攪拌した後、得られた液体をフィルターでろ過し、インク1〜8を得た。表1において、数値は質量部を表す。
【0090】
【表1】

【0091】
インク1〜4を用い、用いる色数を変えて以下の印刷実験を行った。
【0092】
図2のフレキソ印刷方式のエネルギー線硬化性組成物硬化装置において、照射手段は、Integration社製Vzeroを用い、80mJ/cm2て行った。照射部の最も反動に近い部分と光源の距離を1.5mmに調整し、遮光部8に黒色に色を塗ったステンレス繊維を用い幅は照射部の幅手方向全体に、長さはメディア搬送方向に10mmのブラシ状にしたものを照射部後端に取り付けた。メディアは、アート紙を用いて行った。
【0093】
濃度安定性評価
2時間連続印刷したときのべた濃度及び濃度むらを印刷開始5分後と2時間後で比較した。上記各色の測色は、測色機(グレタグマクベス社製 spectrolino
keywizard)を用い、以下の条件で行なった。
【0094】
光源:D50
視野:2°視野
濃度:ANSI T
白色基準:abs
フィルター:No−filter
○:5分後および2時間後の試料間、試料内の濃度差±0.05未満
△:5分後および2時間後の試料間、試料内の最大濃度差±0.05以上、0.15未満
×:5分後および2時間後の試料間、試料内の最大濃度差±0.15以上
結果を表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
表2から遮光部8を設けることで、濃度安定性が得られた。インク5〜8を用いて同様の実験を行うと、同様の効果が得られた。
【0097】
実施例2
光源に低圧水銀灯(ニッポ社製特注品)200W電源を用い、PET(poly−
ethylene terephthalete)を用い、インク5〜8を用いて実施例1と同様の実験を行い。実施例1と同様の評価をして表3に示す結果を得た。
【0098】
【表3】

【0099】
表3から、光源を変えても、同様の効果が得られることが判る。尚、インクを1〜4を用いた場合、十分硬化しなかった。
【0100】
実施例3
図1のインクジェット方式のエネルギー線硬化性組成物硬化装置において、ヘッド間隙h2及び照射部、プラテン間隙h1は1.5mmにし、照射部4の外側及び図示していない、手前側及び奥側に実施例1で使用した素材のブラシ状の遮光部材を取り付けた。照射手段は、Integration社製Vzeroを用い、80mJ/cm2て行った。遮光性は、日油技研工業株式会社製UVラベル(S)で評価した。設置により、100倍以上の遮光性を確認した。
【0101】
このことから、紫外線の漏れ光が大幅に低減され、作業者への不要な曝射量が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明で用いることのできるインクジェットエネルギー線硬化性組成物硬化装置で、シリアルプリント方式で用いる要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明で用いることのできるフレキソ印刷方式のエネルギー線硬化性組成物硬化装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図3】本発明に係るフレキソ印刷方式のエネルギー線硬化性組成物硬化装置の照射部を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 エネルギー線硬化性組成物硬化装置
2 ヘッドキャリッジ
3、19 記録ヘッド
4、24 照射部
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
8 遮光部
10 繰り出しロール
11 巻き取りロール
12 版胴
13 アニックスロール
14 ドクターブレード
15 インク溜
16、17 ローラ
41 光源
42 光制御板
43 保護板
P 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線硬化性組成物を含む塗布液を基材に付与したのち、エネルギー線を照射して該エネルギー線硬化性組成物を硬化するエネルギー線硬化性組成物硬化装置において、該エネルギー線硬化性組成物硬化装置は、エネルギー線硬化性組成物付与部と、エネルギー線照射部とを有し、かつ、該エネルギー線硬化性組成物付与部から該エネルギー線照射部の方向に該基材を相対移動させる駆動部をもち、更に、該エネルギー線照射部の最下流部に、柔軟性素材で構成した遮光部を有することを特徴とするエネルギー線硬化性組成物硬化装置。
【請求項2】
前記柔軟性素材が繊維状でかつブラシ状であることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー線硬化性組成物硬化装置。
【請求項3】
前記エネルギー線硬化性組成物付与部と、エネルギー線照射部がドラム状のプラテンの周囲に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー線硬化性組成物硬化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエネルギー線硬化性組成物硬化装置が、インクジェット印刷機、フレキソ印刷機、グラビア印刷機及び平版印刷機から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするエネルギー線硬化性組成物硬化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−111984(P2007−111984A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305457(P2005−305457)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】