説明

エバポレータ

【課題】冷却性能を向上しうるエバポレータを提供する。
【解決手段】エバポレータ1の風下側チューブ列11に第1〜第3チューブ群11A,11B,11Cを設け、風上側チューブ列12に第4および第5チューブ群12A,12Bを設ける。風下側上ヘッダ部5における第3チューブ群11Cの熱交換チューブ9が通じさせられた第3区画17と、風上側上ヘッダ部6における第4チューブ群12Aが通じさせられた第4区画23とを冷媒連通路32によって通じさせる。風下側上ヘッダ部5に、第3区画17の入口部分30の風下側に設けられ、かつ第3区画17内の風下側への冷媒の流入を阻害する邪魔板34を設ける。邪魔板34が、第3区画17内から第4区画23内への冷媒の流入を促進する促進部材35となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載される冷凍サイクルであるカーエアコンに好適に使用されるエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1〜図4および図10の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
この種のエバポレータとして、上下方向にのびるとともに通風方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなるチューブ列が、通風方向に並んで2列設けられており、風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる3以上のチューブ群が設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなりかつ風下側チューブ列のチューブ群の数よりも1つ少ないチューブ群が設けられ、風下側および風上側チューブ列の熱交換チューブの上下両端部が、それぞれ風下側および風上側上下両ヘッダ部に通じさせられており、風下側上下両ヘッダ部に、風下側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風下側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風上側上下両ヘッダ部に、風上側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風上側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風下側上下両ヘッダ部のうちのいずれか一方のヘッダ部における一端の区画に冷媒入口が設けられ、風上側上下両ヘッダ部のうちの冷媒入口が設けられた風下側ヘッダ部と同じ側のヘッダ部における冷媒入口と同一端の区画に冷媒出口が設けられ、風下側チューブ列における冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向と、風上側チューブ列における冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向とが同一方向となっており、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風下側最遠区画内に、風下側最遠区画の冷媒入口側に隣り合う区画から冷媒が流入するようになされたエバポレータが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、特許文献1記載の形式のエバポレータにおいては、冷却性能の向上を目的として、熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である風下側チューブ列および風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を均一化することが求められる。
【0005】
そこで、特許文献1記載の1つのエバポレータおいては、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画とが、熱交換コア部の横方向に突出するように設けられた連通手段により通じさせられている。しかしながら、この場合、連通手段が熱交換コア部の横方向に突出しているので、エバポレータを配置する際にデッドスペースが生じるという問題がある。
【0006】
また、上特許文献1記載の他の1つのエバポレータにおいては、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画との間に仕切壁が設けられるとともに、当該仕切壁に両最遠区画どうしを通じさせる連通穴が形成されている。しかしながら、風下側最遠区画に流入した冷媒の風上側最遠区画内への流入が速やかに行われず、風下側最遠区画内と風上側最遠区画内に流入する冷媒量が不均一になる。したがって、風下側最遠区画に接続された風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量と、風上側最遠区画に接続された風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量とが不均一になって、十分な冷却性能を得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−156532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、冷媒入口および冷媒出口から最も遠い位置にあり、かつ通風方向に並んで設けられているとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つのチューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を均一化して冷却性能を向上しうるエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)上下方向にのびるとともに通風方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなるチューブ列が、通風方向に並んで2列設けられており、風下側チューブ列および風上側チューブ列に、それぞれ複数の熱交換チューブからなる複数のチューブ群が設けられ、風下側上下両ヘッダ部に、風下側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風下側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風上側上下両ヘッダ部に、風上側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風上側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風下側上下両ヘッダ部のうちのいずれか一方のヘッダ部における一端の区画に冷媒入口が設けられ、風上側上下両ヘッダ部のうちの冷媒入口が設けられた風下側ヘッダ部と同じ側のヘッダ部における冷媒入口と同一端の区画に冷媒出口が設けられ、風下側チューブ列における冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向と、風上側チューブ列における冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向とが同一方向となっており、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風下側最遠区画内に、風下側最遠区画の冷媒入口側に隣り合う区画から冷媒が流入するようになされているエバポレータにおいて、
風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風下側最遠区画と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風上側最遠区画とが冷媒連通路によって通じさせられており、風下側最遠区画内から風上側最遠区画内への冷媒の流入を促進する促進部材を備えているエバポレータ。
【0011】
2)促進部材が、風下側最遠区画が設けられたヘッダ部に設けられている上記1)記載のエバポレータ。
【0012】
3)促進部材が、風下側最遠区画内に冷媒が流入する入口部分の風下側に設けられ、かつ風下側最遠区画内の風下側への冷媒の流入を阻害する邪魔板からなる上記2)記載のエバポレータ。
【0013】
4)邪魔板の風上側縁部に、風下側最遠区画における冷媒入口とは反対側の端部に向かって風上側最遠区画側に傾斜したガイド部材が設けられている上記3)記載のエバポレータ。
【0014】
5)風上側最遠区画内における熱交換チューブの並び方向の中間部に、風上側最遠区画内を熱交換チューブの並び方向に仕切る仕切部材が設けられている上記3)または4)記載のエバポレータ。
【0015】
6)促進部材が、風下側最遠区画内における熱交換チューブの並び方向の中間部でかつ熱交換チューブ側の部分に設けられ、かつ風下側最遠区画内の熱交換チューブ側への冷媒の流入を阻害する邪魔板からなる上記2)記載のエバポレータ。
【0016】
7)邪魔板における熱交換チューブとは反対側の縁部に、風下側最遠区画における冷媒入口とは反対側の端部に向かって風上側最遠区画側に傾斜したガイド部材が設けられている上記6)記載のエバポレータ。
【0017】
8)風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第1〜第3のチューブ群が、冷媒入口側の端部から他端部側に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第4および第5のチューブ群が、冷媒出口側とは反対側の端部から冷媒出口側の端部に向かって並んで設けられ、
風下側上下両ヘッダ部に、それぞれ第1〜第3チューブ群の熱交換チューブが通じる第1〜第3区画が設けられ、風上側上下両ヘッダ部に、それぞれ第4および第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第4および第5区画が設けられ、風下側の上下いずれかのヘッダ部の第1区画に冷媒入口が設けられるとともに、風上側の上下いずれかのうちの冷媒入口が設けられた側に位置するヘッダ部の第5区画に冷媒出口が設けられ、
風下側チューブ列の第3チューブ群が最遠チューブ群であり、風下側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒入口が設けられた側のヘッダ部の第3区画が、第3チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画であり、風上側チューブ列の第4チューブ群が最遠チューブ群であり、風上側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒出口が設けられた側のヘッダ部の第4区画が、第4チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画である上記1)〜7)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0018】
9)風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第1〜第4のチューブ群が、冷媒入口側の端部から他端部側に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第5〜第7のチューブ群が、冷媒出口側とは反対側の端部から冷媒出口側の端部に向かって並んで設けられ、
風下側上下両ヘッダ部に、それぞれ第1〜第4チューブ群の熱交換チューブが通じる第1〜第4区画が設けられ、風上側上下両ヘッダ部に、それぞれ第5〜第7チューブ群の熱交換チューブが通じる第5〜第7区画が設けられ、風下側の上下いずれかのヘッダ部の第1区画に冷媒入口が設けられるとともに、風上側の上下いずれかのうちの冷媒入口が設けられた側に位置するヘッダ部の第7区画に冷媒出口が設けられ、
風下側チューブ列の第4チューブ群が最遠チューブ群であり、風下側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒入口が設けられた側と反対側のヘッダ部の第4区画が、第4チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画であり、風上側チューブ列の第5チューブ群が最遠チューブ群であり、風上側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒出口が設けられた側と反対側のヘッダ部の第5区画が、第5チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画である上記1)〜7)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0019】
10)冷媒入口が、風下側上ヘッダ部に設けられ、冷媒出口が、風上側上ヘッダ部に設けられている上記1)〜9)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【発明の効果】
【0020】
上記1)〜10)のエバポレータによれば、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風下側最遠区画と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風上側最遠区画とが冷媒連通路によって通じさせられており、風下側最遠区画内から風上側最遠区画内への冷媒の流入を促進する促進部材を備えているので、風下側最遠区画内から風上側最遠区画内への冷媒の流入が促進されることになり、風下側最遠区画内と風上側最遠区画内に流入する冷媒量が均一化される。したがって、風下側最遠区画に接続された風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量と、風上側最遠区画に接続された風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量とが均一化される。その結果、冷媒入口および冷媒出口から最も遠い位置にあり、かつ通風方向に並んで設けられているとともに、熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つのチューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を均一化することが可能になって、エバポレータの冷却性能が優れたものになる。
【0021】
上記2)〜7)のエバポレータによれば、風下側最遠区画に流入した冷媒の風上側最遠区画内への流入を促進する促進部材を、比較的簡単に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の第1の実施形態のエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1のエバポレータの全体構成を概略的に示すとともに冷媒の流れを示す斜視図である。
【図3】図1のエバポレータの構成を概略的に示す図1のA−A線断面に相当する図である。
【図4】図1のエバポレータの構成を概略的に示す図1のB−B線断面に相当する図である。
【図5】図1のエバポレータの風下側上ヘッダ部の第3区画および風上側上ヘッダ部の第4区画を概略的に示す斜視図である。
【図6】促進部材の第1の変形例を示す図5相当の図である。
【図7】促進部材の第2の変形例を示す図5相当の図である。
【図8】促進部材の第3の変形例を示す図5相当の図である。
【図9】促進部材の第4の変形例を示す図5相当の図である。
【図10】この発明の第2の実施形態のエバポレータの全体構成を概略的に示すとともに冷媒の流れを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。以下に述べる実施形態は、この発明によるエバポレータをカーエアコンを構成する冷凍サイクルに適用したものである。
【0024】
全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
なお、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0026】
また、以下の説明において、隣接する熱交換チューブどうしの間の通風間隙を流れる空気の下流側(図1、図2および図10に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとし、図1〜図4および図10の左右を左右というものとする。
【0027】
図1はこの発明の第1の実施形態のエバポレータの全体構成を示し、図2〜図4はその構成を概略的に示す。なお、図2〜図4においては、熱交換チューブやフィンなどの具体的な図示は省略されている。また、図5は図1のエバポレータの要部の構成を示す。
【0028】
図1において、エバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置されたアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)の間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0029】
第1ヘッダタンク(2)は、風下側(前側)に位置する風下側ヘッダ部(5)と、風上側(後側)に位置しかつ風下側ヘッダ部(5)に一体化された風上側ヘッダ部(6)とを備えている。ここでは、風下側ヘッダ部(5)と風上側ヘッダ部(6)とは、第1ヘッダタンク(2)を仕切部(2a)により前後に仕切ることによって設けられている。第2ヘッダタンク(3)は、風下側(前側)に位置する風下側ヘッダ部(7)と、風上側(後側)に位置しかつ風下側ヘッダ部(7)に一体化された風上側ヘッダ部(8)とを備えている。ここでは、風下側ヘッダ部(7)と風上側ヘッダ部(8)とは、第2ヘッダタンク(3)を仕切部(3a)により前後に仕切ることによって設けられている。以下の説明において、第1ヘッダタンク(2)の風下側ヘッダ部(5)を風下側上ヘッダ部、第2ヘッダタンク(3)の風下側ヘッダ部(7)を風下側下ヘッダ部、第1ヘッダタンク(2)の風上側ヘッダ部(6)を風上側上ヘッダ部、第2ヘッダタンク(3)の風上側ヘッダ部(8)を風上側下ヘッダ部というものとする。したがって、風下側上ヘッダ部(5)と風上側上ヘッダ部(6)、および風下側下ヘッダ部(7)と風上側下ヘッダ部(8)とが、それぞれ第1ヘッダタンク(2)および第2ヘッダタンク(3)に、仕切部(2a)(3a)を介して通風方向に並んで設けられていることになる。
【0030】
熱交換コア部(4)は、幅方向を通風方向に向けるとともに左右方向(通風方向と直角をなす方向)に間隔をおいて配置され、かつ上下方向にのびる複数のアルミニウム製扁平状熱交換チューブ(9)からなるチューブ列(11)(12)が、前後方向に並んで2列設けられ、各チューブ列(11)(12)の隣接する熱交換チューブ(9)どうしの間の通風間隙および左右両端の熱交換チューブ(9)の外側に、それぞれ前後両チューブ列(11)(12)の熱交換チューブ(9)に跨るようにアルミニウム製コルゲートフィン(13)が配置されて熱交換チューブ(9)にろう付され、左右両端のコルゲートフィン(13)の外側にそれぞれアルミニウム製サイドプレート(14)が配置されてコルゲートフィン(13)にろう付されることにより構成されている。風下側チューブ列(11)の熱交換チューブ(9)の上下両端部は、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)内に突出するように挿入された状態で両ヘッダ部(5)(7)に連通状に接続され、風上側チューブ列(12)の熱交換チューブ(9)の上下両端部は、風上側上下両ヘッダ部(6)(8)内に突出するように挿入された状態で両ヘッダ部(6)(8)に連通状に接続されている。なお、風下側チューブ列(11)の熱交換チューブ(9)の数と風上側チューブ列(12)の熱交換チューブ(9)の数とは等しくなっている。すべての熱交換チューブ(9)は同一の構成であり、各熱交換チューブ(9)の冷媒通路の数、および各熱交換チューブ(9)の複数の冷媒通路の通路断面積の合計が同一になっている。
【0031】
図2〜図4に示すように、風下側チューブ列(11)には、左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブ(9)からなる3つのチューブ群(11A)(11B)(11C)が、右端から左端に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列(12)には、左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブ(9)からなる2つ(風下側チューブ列(11)のチューブ群の数よりも1つ少ない数)のチューブ群(12A)(12B)が、左端から右端に向かって並んで設けられている。
【0032】
風下側上下両ヘッダ部(5)(7)に、それぞれ風下側チューブ列(11)のチューブ群(11A)(11B)(11C)と同数でかつ各チューブ群(11A)(11B)(11C)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(15)(16)(17)および(18)(19)(21)が設けられている。風下側上ヘッダ部(5)における右端の区画(15)の右端部に冷媒入口(22)が設けられている。ここで、風下側チューブ列(11)の3つのチューブ群(11A)(11B)(11C)を冷媒入口(22)側端部(右端部)から他端部(左端部)に向かって第1〜第3チューブ群といい、第1〜第3チューブ群(11A)(11B)(11C)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(15)(16)(17)および(18)(19)(21)を冷媒入口(22)側端部(右端部)から他端部(左端部)に向かって第1〜第3区画というものとする。第3チューブ群(11C)が、風下側チューブ列(11)における冷媒入口(22)から最も遠い位置にある最遠チューブ群であり、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(17)が、第3チューブ群(11C)の熱交換チューブ(9)が通じさせられた冷媒流れ方向上流側(上側)の風下側最遠区画である。
【0033】
風上側上下両ヘッダ部(6)(8)に、それぞれ風上側チューブ列(12)のチューブ群(12A)(12B)と同数でかつ各チューブ群(12A)(12B)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(23)(24)および(25)(26)が設けられている。風上側上ヘッダ部(6)における右端の区画(24)の右端部(冷媒入口(22)と同一端部)に冷媒出口(27)が設けられている。ここで、風上側チューブ列(12)の2つのチューブ群(12A)(12B)を冷媒出口(27)とは反対側の端部(左端部)から冷媒出口側(27)の端部(右端部)に向かって第4〜第5チューブ群といい、第4〜第5チューブ群(12A)(12B)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(23)(24)および(25)(26)を冷媒出口(27)とは反対側の端部(左端部)から冷媒出口(27)側の端部(右端部)に向かって第4〜第5区画というものとする。第4チューブ群(12A)が、風上側チューブ列(12)における冷媒出口(27)から最も遠い位置にある最遠チューブ群であり、風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)が、第4チューブ群(12A)が通じさせられた冷媒流れ方向上流側(上側)の風上側最遠区画である。
【0034】
なお、風下側チューブ列(11)の第1および第2チューブ群(11A)(11B)を構成する熱交換チューブ(9)の合計数は、風上側チューブ列(12)の第5チューブ群(12B)を構成する熱交換チューブ(9)の数と等しくなっており、風下側チューブ列(11)の第3チューブ群(11C)を構成する熱交換チューブ(9)の数は、風上側チューブ列(12)の第4チューブ群(12A)を構成する熱交換チューブ(9)の数と等しくなっている。また、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)における第1区画(15)(18)と第2区画(16)(19)の左右方向の合計長さは、風上側上下両ヘッダ部(6)(8)における第5区画(24)(26)の左右方向の長さと等しく、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)における第3区画(17)(21)の左右方向の長さは、風上側上下両ヘッダ部(6)(8)における第4区画(23)(25)の左右方向の長さと等しくなっている。
【0035】
風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(15)と第2区画(16)との間には仕切壁(28)が設けられ、これにより両区画(15)(16)は非連通状態となっている。また、風下側上ヘッダ部(5)の第2区画(16)の左端部が全体に開口するとともに、第3区画(17)の右端部が全体に開口することにより両区画(16)(17)は連通状態となっており、冷媒が、第2区画(16)内から真っ直ぐ左方に流れて第3区画(17)内に流入するようになされている。ここで、第3区画(17)の右端部の開口が、第3区画(17)内に冷媒を流入させる入口部分(30)となっている。
【0036】
風下側下ヘッダ部(7)の第1区画(18)の左端部が全体に開口するとともに、第2区画(19)の右端部が全体に開口することにより両区画(18)(19)は連通状態となっており、冷媒が、第1区画(18)内から真っ直ぐ左方に流れて第2区画(19)内に流入するようになされている。また、風下側下ヘッダ部(7)の第2区画(19)と第3区画(21)との間には仕切壁(29)が設けられ、これにより両区画(19)(21)は非連通状態となっている。
【0037】
風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)と第5区画(24)との間には仕切壁(31)が設けられ、これにより両区画(23)(24)は非連通状態となっている。また、風上側下ヘッダ部(8)の第4区画(25)の右端部が全体に開口するとともに、第5区画(26)の左端部が全体に開口することにより両区画(25)(26)は連通状態となっており、冷媒が、第4区画(25)内から真っ直ぐ右方に流れて第5区画(26)内に流入するようになされている。
【0038】
風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(17)と、風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)とは、第1ヘッダタンク(2)の仕切部(2a)における入口部分(30)および仕切壁(31)よりも左側の部分に左右方向に間隔をおいて設けられた貫通穴からなる複数の連通路(32)によって通じさせられている。
【0039】
風下側下ヘッダ部(7)の第3区画(21)と、風上側下ヘッダ部(8)の第4区画(25)とは、第2ヘッダタンク(3)の仕切部(3a)における仕切壁(29)よりも左側の部分に設けられた連通部(33)によって通じさせられている。
【0040】
上述のようにして各区画(15)〜(19)(21)(23)〜(26)、冷媒入口(22)、冷媒出口(27)、入口部分(30)、連通路(32)および連通部(33)が設けられることによって、冷媒は、第1チューブ群(11A)、冷媒入口(22)から最も遠い位置にある第3チューブ群(11C)(風下側チューブ列(11)の最遠チューブ群)および冷媒出口(27)から最も遠い位置にある第4チューブ群(12A)(風上側チューブ列(12)の最遠チューブ群)の熱交換チューブ(9)内を上から下に流れることになり、これらのチューブ群(11A)(11C)(12A)が下降流チューブ群となっている。また、冷媒は、第2チューブ群(11B)および第5チューブ群(12B)の熱交換チューブ(9)内を下から上に流れることになり、これらのチューブ群(11B)(12B)が上昇流チューブ群となっている。風下側チューブ列(11)における冷媒入口(22)から最も遠い位置にある第3チューブ群(11C)、および風上側チューブ列(12)における冷媒出口(27)から最も遠い位置にある第4チューブ群(12A)の熱交換チューブ(9)における冷媒の流れ方向は同一方向である。したがって、冷媒入口(22)から流入した冷媒は、次のように2つの経路を流れて冷媒出口(27)から流出するようになされている。第1の経路は、第1区画(15)、第1チューブ群(11A)、第1区画(18)、第2区画(19)、第2チューブ群(11B)、第2区画(16)、第3区画(17)、第4区画(23)、第4チューブ群(12A)、第4区画(25)、第5区画(26)、第5チューブ群(12B)および第5区画(24)であり、第2の経路は、第1区画(15)、第1チューブ群(11A)、第1区画(18)、第2区画(19)、第2チューブ群(11B)、第2区画(16)、第3区画(17)、第3チューブ群(11C)、第3区画(21)、第4区画(25)、第5区画(26)、第5チューブ群(12B)および第5区画(24)である。上記第1の経路において、冷媒は、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(17)から連通路(32)を通って風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)内に流入する。
【0041】
図5に示すように、風下側上ヘッダ部(5)における第3区画(17)の入口部分(30)の風下側に、第3区画(17)内の風下側部分への冷媒の流入を阻害する邪魔板(34)が、第3区画(17)の全高にわたって設けられている。邪魔板(34)が、風下側最遠区画である第3区画(17)から風上側最遠区画である第4区画(23)内への冷媒の流入を促進する促進部材(35)となっている。
【0042】
上述したエバポレータ(1)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサおよび減圧器としての膨張弁とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。カーエアコンの稼働時には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した冷媒が、冷媒入口(22)を通って風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(15)内に入り、上述した2つの経路を経て風上側上ヘッダ部(6)の第5区画(24)内に入り、冷媒出口(27)を通って流出する。
【0043】
このとき、促進部材(35)である邪魔板(34)の働きによって、第3区画(17)内から第4区画(23)内への冷媒の流入が促進され、第3区画(17)内と第4区画(23)内に流入する冷媒量が均一化される。したがって、第3区画(17)に接続された第3チューブ群(11C)の熱交換チューブ(9)に流入する冷媒量と、第4区画(23)に接続された第4チューブ群(12A)の熱交換チューブ(9)に流入する冷媒量とが均一化される。その結果、冷媒入口(22)および冷媒出口(27)から最も遠い位置にあり、かつ通風方向に並んで設けられているとともに熱交換チューブ(9)内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つのチューブ群(11C)(12A)の熱交換チューブ(9)内を流れる冷媒量を均一化することが可能になる。
【0044】
そして、冷媒が風下側チューブ列(11)の熱交換チューブ(9)内、および風上側チューブ列(12)の熱交換チューブ(9)内を流れる間に、熱交換コア部(4)の通風間隙を通過する空気(図1および図2矢印X参照)と熱交換をし、空気は冷却され、冷媒は気相となって流出する。
【0045】
図6〜図9は、風下側最遠区画である第3区画(17)から風上側最遠区画である第4区画(23)内への冷媒の流入を促進する促進部材の変形例を示す。
【0046】
図6に示す促進部材(40)は、邪魔板(34)の風上側縁部に、第3区画(17)における冷媒入口(22)とは反対側の端部側に向かって第4区画(23)側に傾斜したガイド部材(41)が設けられたものである。
【0047】
図7に示す促進部材(45)は、邪魔板(34)に加えて、第4区画(23)内における左右方向(熱交換チューブ(9)の並び方向)の中間部に、第4区画(23)内を左右方向に仕切る仕切部材(46)が設けられたものである。
【0048】
図8に示す促進部材(50)は、第3区画(17)内における左右方向(熱交換チューブ(9)の並び方向)の中間部の下側部分(熱交換チューブ(9)側の部分)に設けられ、かつ第3区画(17)内の下部への冷媒の流入を阻害する邪魔板(51)からなる。
【0049】
図9に示す促進部材(55)は、図8に示す邪魔板(51)の上縁部(熱交換チューブ(9)とは反対側の縁部)の風下側部分に上方突出壁(56)が一体に設けられ、上方突出壁(56)の風上側縁部に、第3区画(17)における冷媒入口(22)とは反対側の端部側に向かって第4区画(23)側に傾斜したガイド部材(57)が設けられたものである。
【0050】
図10はこの発明の第2の実施形態のエバポレータの全体構成を概略的に示す。
【0051】
図10に示すように、エバポレータ(60)の風下側チューブ列(11)には、複数の熱交換チューブ(9)からなる4つのチューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)が、右端から左端に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列(12)には、複数の熱交換チューブ(9)からなる3つ(風下側チューブ列(11)のチューブ群の数よりも1つ少ない数)のチューブ群(12A)(12B)(12C)が、左端から右端に向かって(風上側チューブ列(12)の上記他端側から上記一端側に向かって)並んで設けられている。
【0052】
風下側上下両ヘッダ部(5)(7)に、それぞれ風下側チューブ列(11)のチューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)と同数でかつ各チューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(61)(62)(63)(64)および(65)(66)(67)(68)が設けられている。風下側上ヘッダ部(6)における右端の区画(61)の右端部に冷媒入口(22)が設けられている。風下側チューブ列(11)の4つのチューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)を冷媒入口(22)側端部から他端部に向かって第1〜第4チューブ群といい、第1〜第4チューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(61)(62)(63)(64)および(65)(66)(67)(68)を冷媒入口(22)側端部から他端部に向かって第1〜第4区画というものとする。
【0053】
風上側上下両ヘッダ部(6)(8)に、それぞれ風上側チューブ列(12)のチューブ群(12A)(12B)(12C)と同数でかつ各チューブ群(12A)(12B)(12C)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(69)(71)(72)および(73)(74)(75)が設けられている。風上側上ヘッダ部(6)における右端の区画(64)の右端部(冷媒入口(22)と同一端部)に冷媒出口(27)が設けられている。そして、風上側チューブ列(12)の3つのチューブ群(12A)(12B)(12C)を冷媒出口(27)とは反対側の端部から冷媒出口側(27)の端部に向かって第5〜第7チューブ群といい、第5〜第7チューブ群(12A)(12B)(12C)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(69)(71)(72)および(73)(74)(75)を冷媒出口(27)とは反対側の端部から冷媒出口側(27)の端部に向かって第5〜第7区画というものとする。
【0054】
なお、風下側チューブ列(11)の第1および第2チューブ群(11A)(11B)を構成する熱交換チューブ(9)の合計数は、風上側チューブ列(12)の第7チューブ群(12C)を構成する熱交換チューブ(9)の数と等しくなっており、風下側チューブ列(11)の第3チューブ群(11C)および第4チューブ群(11D)を構成する熱交換チューブ(9)の数は、それぞれ風上側チューブ列(12)の第6チューブ群(12B)および第5チューブ群(12A)を構成する熱交換チューブ(9)の数と等しくなっている。また、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)における第1区画(61)(65)と第2区画(62)(66)の左右方向の合計長さは、風上側上下両ヘッダ部(6)(8)における第7区画(72)(75)の左右方向の長さと等しく、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)における第3区画(63)(67)および第4区画(64)(68)の左右方向の長さは、風上側上下両ヘッダ部(6)(8)における第6区画(71)(74)および第5区画(69)(73)の左右方向の長さと等しくなっている。
【0055】
風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(61)と第2区画(62)との間には仕切壁(76)が設けられ、これにより両区画(61)(62)は非連通状態となっている。また、風下側上ヘッダ部(5)の第2区画(62)の左端部が全体に開口するとともに、第3区画(63)の右端部が全体に開口することにより両区画(62)(63)は連通状態となっており、冷媒が、第2区画(62)内から真っ直ぐ左方に流れて第3区画(63)内に流入するようになされている。さらに、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(63)と第4区画(64)との間には仕切壁(77)が設けられ、これにより両区画(63)(64)は非連通状態となっている。
【0056】
風下側下ヘッダ部(7)の第1区画(65)の左端部が全体に開口するとともに、第2区画(66)の右端部が全体に開口することにより両区画(65)(66)は連通状態となっており、冷媒が、第1区画(65)内から真っ直ぐ左方に流れて第2区画(66)内に流入するようになされている。また、風下側下ヘッダ部(7)の第2区画(66)と第3区画(67)との間には仕切壁(78)が設けられ、これにより両区画(66)(67)は非連通状態となっている。さらに、風下側下ヘッダ部(7)の第3区画(67)の左端部が全体に開口するとともに、第4区画(68)の右端部が全体に開口することにより両区画(67)(68)は連通状態となっており、冷媒が、第3区画(67)内から真っ直ぐ左方に流れて第4区画(68)内に流入するようになされている。ここで、第4区画(68)の右端部の開口が、第4区画(68)内に冷媒を流入させる入口部分(79)となっている。
【0057】
風上側上ヘッダ部(6)の第5区画(69)の右端部が全体に開口するとともに、第6区画(71)の左端部が全体に開口することにより両区画(69)(71)は連通状態となっており、冷媒が、第5区画(69)内から真っ直ぐ右方に流れて第6区画(71)内に流入するようになされている。また、風上側上ヘッダ部(6)の第6区画(71)と第7区画(72)との間には仕切壁(81)が設けられ、これにより両区画(71)(72)は非連通状態となっている。
【0058】
また、風上側下ヘッダ部(8)の第5区画(73)と第6区画(74)との間には仕切壁(82)が設けられ、これにより両区画(73)(74)は非連通状態となっている。また、風上側下ヘッダ部(8)の第6区画(74)の右端部が全体に開口するとともに、第7区画(75)の左端部が全体に開口することにより両区画(74)(75)は連通状態となっており、冷媒が、第6区画(74)内から真っ直ぐ右方に流れて第7区画(75)内に流入するようになされている。
【0059】
風下側上ヘッダ部(5)の第4区画(64)と、風上側上ヘッダ部(6)の第5区画(69)とは、第1ヘッダタンク(2)の仕切部(2a)における仕切壁(77)よりも左側の部分に設けられた連通部(83)によって通じさせられている。
【0060】
風下側下ヘッダ部(7)の第4区画(68)と、風上側下ヘッダ部(8)の第5区画(73)とは、第2ヘッダタンク(3)の仕切部(3a)における入口部分(79)および仕切壁(82)よりも左側の部分に左右方向に間隔をおいて設けられた貫通穴からなる複数の連通路(84)によって通じさせられている。
【0061】
る。
【0062】
上述のようにして各区画(61)〜(69)(71)〜(75)、冷媒入口(22)、冷媒出口(27)、入口部分(79)、連通部(83)および連通路(84)が設けられることによって、冷媒は、第1チューブ群(11A)、第3チューブ群(11C)および第6チューブ群(12B)の熱交換チューブ(9)内を上から下に流れることになり、これらのチューブ群(11A)(11C)(12B)が下降流チューブ群となっている。また、冷媒は、第2チューブ群(11B)、冷媒入口(22)から最も遠い位置にある第4チューブ群(11D)(風下側チューブ列(11)の最遠チューブ群)、冷媒出口(27)から最も遠い位置にある第5チューブ群(12A)(風上側チューブ列(12)の最遠チューブ群)および第7チューブ群(12C)の熱交換チューブ(9)内を下から上に流れることになり、これらのチューブ群(11D)(12A)(12C)が上昇流チューブ群となっている。風下側チューブ列(11)における冷媒入口(22)から最も遠い位置にある第4チューブ群(11D)、および風上側チューブ列(12)における冷媒出口(27)から最も遠い位置にある第5チューブ群(12A)の熱交換チューブ(9)における冷媒の流れ方向は同一方向である。したがって、冷媒入口(22)から流入した冷媒は、次のように2つの経路を流れて冷媒出口(27)から流出するようになされている。第1の経路は、第1区画(61)、第1チューブ群(11A)、第1区画(65)、第2区画(66)、第2チューブ群(11B)、第2区画(62)、第3区画(63)、第3チューブ群(11C)、第3区画(67)、第4区画(68)、第5区画(73)、第5チューブ群(12A)、第5区画(69)、第6区画(71)、第6チューブ群(12B)、第6区画(74)、第7区画(75)、第7チューブ群(12C)および第7区画(72)であり、第2の経路は、第1区画(61)、第1チューブ群(11A)、第1区画(65)、第2区画(66)、第2チューブ群(11B)、第2区画(62)、第3区画(63)、第3チューブ群(11C)、第3区画(67)、第4区画(68)、第4チューブ群(11D)、第4区画(64)、第5区画(69)、第6区画(71)、第6チューブ群(12B)、第6区画(74)、第7区画(75)、第7チューブ群(12C)およ
び第7区画(72)である。上記第1の経路において、冷媒は、風下側下ヘッダ部(7)の第4区画(68)から連通路(82)を通って風上側下ヘッダ部(8)の第5区画(73)内に流入する。
【0063】
風下側下ヘッダ部(7)における第4区画(68)の入口部分(79)の風下側に、第4区画(68)内の風下側部分への冷媒の流入を阻害する邪魔板(85)が、第4区画(68)の全高にわたって設けられている。邪魔板(85)が、風下側最遠区画である第4区画(68)から風上側最遠区画である第5区画(73)内への冷媒の流入を促進する促進部材(86)となっている。
【0064】
上述したエバポレータ(60)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサおよび減圧器としての膨張弁とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。カーエアコンの稼働時には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した冷媒が、冷媒入口(22)を通って風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(61)内に入り、上述した2つの経路を経て風上側上ヘッダ部(6)の第7区画(72)内に入り、冷媒出口(27)を通って流出する。
【0065】
このとき、促進部材(86)である邪魔板(85)の働きによって、第4区画(68)内から第5区画(73)内への冷媒の流入が促進され、第4区画(68)内と第5区画(73)内に流入する冷媒量が均一化される。したがって、第4区画(68)に接続された第4チューブ群(11D)の熱交換チューブ(9)に流入する冷媒量と、第5区画(73)に接続された第5チューブ群(12A)の熱交換チューブ(9)に流入する冷媒量とが均一化される。その結果、冷媒入口(22)および冷媒出口(27)から最も遠い位置にあり、かつ通風方向に並んで設けられているとともに熱交換チューブ(9)内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つのチューブ群(11D)(12A)の熱交換チューブ(9)内を流れる冷媒量を均一化することが可能になる。
【0066】
そして、冷媒が風下側チューブ列(11)の熱交換チューブ(9)内、および風上側チューブ列(12)の熱交換チューブ(9)内を流れる間に、熱交換コア部(4)の通風間隙を通過する空気(図10矢印X参照)と熱交換をし、空気は冷却され、冷媒は気相となって流出する。
【0067】
上記2つの実施形態を示す図面において、エバポレータの寸法や、熱交換チューブの数および熱交換チューブのピッチなどは、実際のものとは異なっている。
【0068】
上記2つの実施形態においては、第1パスの流れ方向上流側のヘッダ部と、同流れ方向下流側ヘッダ部とが、前者が上方に位置するように設けられているが、これに限定されるものではなく、これとは逆に、第1パスの流れ方向上流側のヘッダ部と、同流れ方向下流側ヘッダ部とが、前者が下方に位置するように設けられていてもよい。すなわち、上記実施形態とは上下逆向きに設けられていてもよい。
【0069】
なお、この発明によるエバポレータは、1対の皿状プレートを対向させて周縁部どうしをろう付してなる複数の扁平中空体が並列状に配置されてなり、各偏平中空体に通風方向に並んだ上下方向にのびる2つの熱交換チューブ、および両熱交換チューブの上下両端に通じるヘッダ形成部が設けられるとともに、すべての扁平中空体の上下の2つのヘッダ形成部どうしがそれぞれ通じるように扁平中空体どうしがろう付されることによって、上下方向にのびるとともに通風方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなるチューブ列が、通風方向に並んで2列設けられるとともに、すべての扁平中空体のヘッダ形成部により、風下側および風上側のチューブ列の上下両端が通じる風下側および風上側上下両ヘッダ部が設けられた形式の所謂積層型エバポレータにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明によるエバポレータは、カーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0071】
(1):エバポレータ
(5):第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部(風下側上ヘッダ部)
(6):第1ヘッダタンクの風上側ヘッダ部(風上側上ヘッダ部)
(7):第2ヘッダタンクの風下側ヘッダ部(風下側下ヘッダ部)
(8):第2ヘッダタンクの風上側ヘッダ部(風上側下ヘッダ部)
(9):熱交換チューブ
(11):風下側チューブ列
(11A)(11B)(11C):第1〜第3チューブ群
(11D):第4チューブ群
(12):風上側チューブ列
(12A)(12B):第4および第5チューブ群(第5および第6チューブ群)
(12C):第7チューブ群
(15)(16)(17):風下側上ヘッダ部の第1〜第3区画
(18)(19)(21):風下側下ヘッダ部の第1〜第3区画
(22):冷媒入口
(23)(24):風上側上ヘッダ部の第4および第5区画
(25)(26):風上側下ヘッダ部の第4および第5区画
(27):冷媒出口
(30):入口部分
(32):連通路
(33):連通部
(34):邪魔板
(35)(40)(45)(50)(55):促進部材
(41):ガイド部材
(46):仕切部材
(51):邪魔板
(57):ガイド部材
(60):エバポレータ
(61)(62)(63)(64):風下側上ヘッダ部の第1〜第4区画
(65)(66)(67)(68):風下側下ヘッダ部の第1〜第4区画
(69)(71)(72):風上側上ヘッダ部の第5〜第7区画
(73)(74)(75):風上側下ヘッダ部の第5〜第7区画
(79):入口部分
(83):連通部
(84):連通路
(85):邪魔板
(86):促進部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向にのびるとともに通風方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなるチューブ列が、通風方向に並んで2列設けられており、風下側チューブ列および風上側チューブ列に、それぞれ複数の熱交換チューブからなる複数のチューブ群が設けられ、風下側上下両ヘッダ部に、風下側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風下側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風上側上下両ヘッダ部に、風上側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風上側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風下側上下両ヘッダ部のうちのいずれか一方のヘッダ部における一端の区画に冷媒入口が設けられ、風上側上下両ヘッダ部のうちの冷媒入口が設けられた風下側ヘッダ部と同じ側のヘッダ部における冷媒入口と同一端の区画に冷媒出口が設けられ、風下側チューブ列における冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向と、風上側チューブ列における冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向とが同一方向となっており、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風下側最遠区画内に、風下側最遠区画の冷媒入口側に隣り合う区画から冷媒が流入するようになされているエバポレータにおいて、
風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風下側最遠区画と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風上側最遠区画とが冷媒連通路によって通じさせられており、風下側最遠区画内から風上側最遠区画内への冷媒の流入を促進する促進部材を備えているエバポレータ。
【請求項2】
促進部材が、風下側最遠区画が設けられたヘッダ部に設けられている請求項1記載のエバポレータ。
【請求項3】
促進部材が、風下側最遠区画内に冷媒が流入する入口部分の風下側に設けられ、かつ風下側最遠区画内の風下側への冷媒の流入を阻害する邪魔板からなる請求項2記載のエバポレータ。
【請求項4】
邪魔板の風上側縁部に、風下側最遠区画における冷媒入口とは反対側の端部に向かって風上側最遠区画側に傾斜したガイド部材が設けられている請求項3記載のエバポレータ。
【請求項5】
風上側最遠区画内における熱交換チューブの並び方向の中間部に、風上側最遠区画内を熱交換チューブの並び方向に仕切る仕切部材が設けられている請求項3または4記載のエバポレータ。
【請求項6】
促進部材が、風下側最遠区画内における熱交換チューブの並び方向の中間部でかつ熱交換チューブ側の部分に設けられ、かつ風下側最遠区画内の熱交換チューブ側への冷媒の流入を阻害する邪魔板からなる請求項2記載のエバポレータ。
【請求項7】
邪魔板における熱交換チューブとは反対側の縁部に、風下側最遠区画における冷媒入口とは反対側の端部に向かって風上側最遠区画側に傾斜したガイド部材が設けられている請求項6記載のエバポレータ。
【請求項8】
風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第1〜第3のチューブ群が、冷媒入口側の端部から他端部側に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第4および第5のチューブ群が、冷媒出口側とは反対側の端部から冷媒出口側の端部に向かって並んで設けられ、
風下側上下両ヘッダ部に、それぞれ第1〜第3チューブ群の熱交換チューブが通じる第1〜第3区画が設けられ、風上側上下両ヘッダ部に、それぞれ第4および第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第4および第5区画が設けられ、風下側の上下いずれかのヘッダ部の第1区画に冷媒入口が設けられるとともに、風上側の上下いずれかのうちの冷媒入口が設けられた側に位置するヘッダ部の第5区画に冷媒出口が設けられ、
風下側チューブ列の第3チューブ群が最遠チューブ群であり、風下側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒入口が設けられた側のヘッダ部の第3区画が、第3チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画であり、風上側チューブ列の第4チューブ群が最遠チューブ群であり、風上側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒出口が設けられた側のヘッダ部の第4区画が、第4チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画である請求項1〜7のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項9】
風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第1〜第4のチューブ群が、冷媒入口側の端部から他端部側に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第5〜第7のチューブ群が、冷媒出口側とは反対側の端部から冷媒出口側の端部に向かって並んで設けられ、
風下側上下両ヘッダ部に、それぞれ第1〜第4チューブ群の熱交換チューブが通じる第1〜第4区画が設けられ、風上側上下両ヘッダ部に、それぞれ第5〜第7チューブ群の熱交換チューブが通じる第5〜第7区画が設けられ、風下側の上下いずれかのヘッダ部の第1区画に冷媒入口が設けられるとともに、風上側の上下いずれかのうちの冷媒入口が設けられた側に位置するヘッダ部の第7区画に冷媒出口が設けられ、
風下側チューブ列の第4チューブ群が最遠チューブ群であり、風下側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒入口が設けられた側と反対側のヘッダ部の第4区画が、第4チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画であり、風上側チューブ列の第5チューブ群が最遠チューブ群であり、風上側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒出口が設けられた側と反対側のヘッダ部の第5区画が、第5チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画である請求項1〜7のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項10】
冷媒入口が、風下側上ヘッダ部に設けられ、冷媒出口が、風上側上ヘッダ部に設けられている請求項1〜9のうちのいずれかに記載のエバポレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−197974(P2012−197974A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62127(P2011−62127)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】