エピタキシャルウェーハおよびその製造方法
【課題】エピタキシャル膜成膜後にもレーザー干渉によるアライメント検出を可能とし、レーザー干渉によるアライメント可能な信号強度を得られるアライメントマークの最適寸法を提供する。
【解決手段】断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークMの形成された表面にエピタキシャル層を成膜したウェーハであって、アライメントマークは、複数の矩形状マークが断続的に配されて前記ビーム走査方向と略直交する方向に延在する直線状マークとされ、直線状マークにおける矩形状マークが、エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状で配置されてなる。
【解決手段】断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークMの形成された表面にエピタキシャル層を成膜したウェーハであって、アライメントマークは、複数の矩形状マークが断続的に配されて前記ビーム走査方向と略直交する方向に延在する直線状マークとされ、直線状マークにおける矩形状マークが、エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状で配置されてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハおよびその製造方法に係り、特に、アライメントマーク付きのエピタキシャルウェーハまたは埋込層付きエピタキシャルウェーハに用いて好適な技術に関し、アライメントマークパターン形状に変形が生じたエピタキシャル成長後パターンに対するアライメント手法に関する。
【背景技術】
【0002】
CZ(チョクラルスキー)法により引き上げられたシリコン単結晶から得られるシリコン単結晶ウェーハ(基板)に不純物を拡散させてp型またはn型の拡散層を形成し、その上からエピタキシャル層を気相エピタキシャル成長させて、バイポーラデバイス、BiCMOSデバイス、パワーIC等のデバイス用のエピタキシャルウェーハを得る技術は良く知られている。
【0003】
例えば、フォトリソグラフィによりマスクパターンを形成したのち、イオン注入法によって不純物を拡散させて、ウェーハに部分的に拡散層を形成する。ウェーハには、フォトエッチング処理により予め形成されている位置決め用アライメントマークを基準にして、露光装置内においてパターン形成のためのマスクとの重ね合わせがおこなわれる。
拡散層を形成したのち、エピタキシャル層を積層することで上記デバイス用のシリコンエピタキシャルウェーハが得られる。この際、拡散層は埋込層となる。
【0004】
上記したような半導体デバイスを製造するために、このエピタキシャルウェーハが使用され、限られたスペースのなかにデバイスが作りこまれる。そこで、微細加工技術が必要となる。微細加工におけるキーポイントは、微細なパターン形成、寸法制御、そして基板とマスクの重ね合わせ精度である。量産性に適したフォトリソグラフィ技術に関して言えば、より微細なマスクパターンを得るために、露光波長の短波長化、レジストの高解像度化および高精度化等の適用がなされているが、それに伴い、寸法制御性および重ね合わせの高精度化の必要性が問題となってきている。高精度の重ね合わせ技術を実現するためには、位置合わせのためのアライメントマークが精度良く、かつ明瞭に形成されている必要がある。すなわち、エピタキシャル成長前に形成されたアライメントマークが、エピタキシャル層を形成したのちであっても、このアライメントマークを基準としてエピタキシャルウェーハと上部デバイス層形成用マスクとの正確な重ね合わせが実現されなければならない。
【0005】
このようなアライメントマークとしては、LSA(Laser Step Alignment)という、レーザー光の干渉を利用したセンサーに適した形状のものが用いられている。(特許文献2)
【0006】
ステッパ―によるアライメントは、ウェーハ上に形成されたアライメントマークに対してレーザースキャンすることで行なわれる。しかし、エピタキシャル成長などによる成膜が実施されたマーク上に行なわれると、マークからのスキャン信号に乱れが生じ、アライメントが実行できないもしくは誤検出の原因となる。
つまり、エピタキシャル層を厚く積層させていくにつれアライメントマークは、その輪郭がぼやけていき、やがてレーザー光の干渉シグナルが検出不可能な状態に至る。エピタキシャル層を積層させたのちにも、このアライメントマークを使用して位置合わせができるようにするには、これを最初に形成する際に、段差を大きく設計しておけばよい。しかし、段差を過剰に大きく設計することは、段差形成のためのエッチング工程におけるコストの高騰を招くため望ましくない。そこで、アライメントマークの段差・大きさの最適値を知るために、例えば段差およびマークの幅、間隔を変化させた複数の試料基板を用意し、所望の成長条件にて所定の厚さのエピタキシャル層を成長させるという予備試験が行われる。そして、それらエピタキシャル層の形成されたエピタキシャルウェーハを個別に検査し、いずれの幅、間隔および段差等が最適値であるかを求める。
しかし、試料基板を多数用意してエピタキシャル層を積層させ、どれが最適であるか1つ1つチェックする必要があるという点において、この方法は非常に煩雑である。また、エピタキシャル層の厚さを変更する必要が生じた場合、所望の厚さである試料基板を都度用意し、最適値を調べ直さなければならずウェーハ設計の所要時間が長くなってしまうという問題がある。
【0007】
シリコン単結晶基板に設けられる凹状のアライメントマークの初期段差を、該アライメントマークの初期幅と積層させるべきシリコンエピタキシャル層の厚さとに基づいて決定する手法が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−007618号公報
【特許文献2】特開2001−284233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術であると、レーザー干渉によるアライメントの検出に関しては考慮していないため、単に、アライメントマークの段差、幅のみを設定したとしても、その条件は最適でないという問題があった。
特に、20μm程度の厚膜とされるエピタキシャル膜成長によって、パターン形状に乱れが生じたアライメントマークに対するアライメントを可能としたいという要求があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.エピタキシャル膜成膜後にもレーザー干渉によるアライメント検出を可能とすること。
2.レーザー干渉によるアライメント可能な信号強度を得られるアライメントマークの最適寸法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の本発明のエピタキシャルウェーハは、断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークの形成された表面にエピタキシャル層を成膜したウェーハであって、
前記アライメントマークは、複数の矩形状マークが断続的に配されて前記ビーム走査方向と略直交する方向に延在する直線状マークとされ、
前記直線状マークにおける矩形状マークが、前記エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状で配置されてなることにより上記課題を解決した。
本発明本発明において、前記直線状マークが前記ビーム走査方向に離間して複数本設けられてなることがより好ましい。
本発明本発明は、前記矩形状マークの配置間隔が8μm〜10μm程度とされてなることが可能である。
また、また、本発明において、前記矩形状マークの寸法が4〜5μm角程度とされてなる手段を採用することもできる。
また、また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、上記いずれか記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
エピタキシャル層成膜前に前記アライメントマークが形成されてなることができる。
【0011】
本発明の本発明のエピタキシャルウェーハは、断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークの形成された表面にエピタキシャル層を成膜したウェーハであって、
前記アライメントマークは、複数の矩形状マークが断続的に配されて前記ビーム走査方向と略直交する方向に延在する直線状マークとされ、
前記直線状マークにおける矩形状マークが、前記エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状で配置されてなることにより、マークからの信号強度を飛躍的に改善することが可能となる。
【0012】
アライメントマーク形状は、通常ステッパ―メーカー推奨の形状を用いるが、これでは厚膜エピタキシャルによるパターン変形に対するアライメントマージンが少ないため、本願発明ではアライメントマーク形状を改良し、厚膜エピタキシャル膜に対するアライメントを可能とすることが可能となる。
【0013】
特に、20μm以上のエピタキシャル層を成膜した場合、ステッパ―メーカー推奨である従来形状のアライメントマークに対してアライメントを実施すると、マークからの信号は段差からの信号に対して30%程度しか強度が得られず、アライメントは実行できなかったが、本願発明では、4〜5μm角程度のマーク形状のピッチを6μmから8μm程度に広げることで、段差からの信号に対して約70%アライメントは可能となり、さらにピッチを10μm程度に広げることにより、段差からの信号に対して約450%となり、マークからの信号強度を飛躍的に改善することができる。これにより、従来のアライメントマークで発生していたようなアライメントが実行できない、あるいは、パターン異常が発生するといった不具合を解消することができる。
【0014】
アライメントマーク検出手段としては、ウェーハステージ上のウェーハに設けられた方向性を有するアライメントマークを断面形状が方向性を有するビームで走査するビーム走査部と、前記アライメントマークからの光の検出結果に基づいて前記ウェーハの基準方向とウェーハステージの基準方向とがなすウェーハずれ角度を測定するアライメント計測部と、前記ウェーハを前記ウェーハテーブル上にローディングした後前記ビーム走査部を駆動して前記アライメント計測部により前記ウェーハのローディング時のウェーハずれ角度を求め次いで前記ウェーハステージの基準方向に対する前記方向性を有するビームの方向を前記ウェーハずれ角度だけずらして再度前記ビーム走査部により前記アライメントマークを前記ビームで走査してファインアライメントを求める制御部とを有するものが使用できる。
【0015】
前記ビームはスリット状をなし、前記アライメントマークは複数個の格子状に配列された長方形ラインとその間のスペースとからなるものとされ、前記エピタキシャルウェーハに形成されたアライメントマークは、断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークであって、上述したように複数の矩形状マークが断続的に配された直線状マークとして前記ビーム走査方向に離間して複数本設けられるとともに、前記直線状マークにおける矩形状マークが、前記エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状として配置することができる。
【0016】
本発明本発明において、前記直線状マークが前記ビーム走査方向に離間して複数本設けられてなることがより好ましく、これにより、複数の直線状マークを形成することにより、アライメントマークの検出をよりいっそう正確に行うことが可能となる。
【0017】
本発明本発明は、前記矩形状マークの配置間隔が8μm〜10μm程度とされてなることが可能であり、これにより、アライメントマークの検出をよりいっそう正確に行うことが可能となる。
【0018】
また、また、本発明において、前記矩形状マークの寸法が4〜5μm角程度とされてなることにより、アライメントマークの検出をよりいっそう正確に行うことが可能となる。
【0019】
また、また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、上記いずれか記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、エピタキシャル層成膜前に前記アライメントマークが形成されてなることにより、上記のアライメントマークとすることで、たとえ20μm程度(15〜25μm)とされるエピタキシャル層を成膜した後であっても、アライメントマークの検出を正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本願発明のエピタキシャルウェーハによれば、アライメントマーク形状を上記のようにしてエピタキシャル層を形成することによって、厚膜(20μm)程度のエピタキシャル成膜後のウェーハに対するアライメントが可能となり、従来まで発生していた不具合(アライメントが実行できない、パターン異常)を解消することができるという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るエピタキシャルウェーハおよびその製造方法の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1(a)は、本実施形態におけるエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、図1(b)は、その拡大図である。
【0022】
本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造工程は、通常の製法により、引き上げたインゴットをスライス工程、面取り工程、ラッピングまたは研削等初期平坦化工程を経た後、エピタキシャル層を成膜する前においてフォトリソグラフィ技術によりアライメントマークを形成するアライメントマーク形成工程と、このアライメント形成工程の後に、エッチングおよび、膜厚18〜25μm、あるいは20μm程度、好ましくは22μm程度の膜厚でエピタキシャル層を成膜するエピタキシャル工程とを有する。
【0023】
本実施形態のエピタキシャルウェーハは、エピタキシャル工程より前における上記アライメント形成工程において、アライメントマークMが形成されている。
アライメントマークMは、ウェーハの表面に、例えば矩形状の凸部及び凹部が縦及び横方向に複数交互に形成されてなるものであり、方向性を有する。即ち、このアライメントマークMのパターンは、複数個の格子状に配列された長方形ラインとその間のスペースとからなるものである。このアライメントマークMは、図1(a)に示すように、ウェーハ表面にWX方向位置検出用として複数本の直線状マークM1が3本設けられ、それぞれの直線状マークM1は、図1(a)(b)に示すように、同一形状の矩形状マークMaが断続的に配されて形成されている。
本実施形態の前記矩形状マークMaの寸法は、4〜5μm角程度とされ、特に、図1(b)に示すように、後述するビーム進行方向S方向の長さMtが5μm、S方向と直行する方向の長さが5μmである5μm角に設定され、前記矩形状マークの配置間隔Mwが8μm〜10μm程度とされ、特に、図1(b)に示すように、8μm間隔に設定される。
【0024】
また、本実施形態のエピタキシャルウェーハは、同時に、エピタキシャル層を成膜する前においてフォトリソグラフィ技術によりアライメントマークMを形成する。このアライメントマークMは、図2(a)に示すように、ウェーハ表面に上記のWxとマーク種類が異なり、かつX方向位置検出用であるXマークとして複数本の直線状マークM2が7本設けられ、それぞれの直線状マークM2は、図2(a)(b)に示すように、同一形状の矩形状マークMaが断続的に配されて形成されている。
本実施形態の前記矩形状マークMaの寸法は、4〜5μm角程度とされ、特に、図2(b)に示すように、後述するビーム進行方向S方向の長さMtが5μm、S方向と直行する方向の長さが5μmである5μm角に設定され、前記矩形状マークの配置間隔Mwが8μm〜10μm程度とされ、特に、図2(b)に示すように、8μm間隔に設定される。
これらの矩形状マークMaは、ウェーハ厚さ方向の寸法、つまり段差が0.1μm〜0.5μmに設定されていることが好ましく、より好ましくは段差は0.3μm、あるいは、0.25μm程度に設定されている。
【0025】
図3(a)は、本実施形態においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、図1(a)に示すアライメントマークMに対応する。また、図3(b)は、同様に本実施形態においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたX方向位置検出用アライメントマークであるXマークの一部を示す映像であり、図2(a)に示すアライメントマークMに対応する。また、図4(a)は、本実施形態において膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後のWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、図4(b)は、同X方向位置検出用であるXマークの一部を示す映像である。
このように、本実施形態では、膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後でも、明確にアライメントマークMを識別することができる。
【0026】
アライメントは以下のようにおこなわれる。
【0027】
図5は、本実施形態における回折光によりアライメントマークを計測するアライメント検出手段を示す模式図である。
【0028】
アライメントマーク検出手段10は、図5に示すように、アライメントマークMの位置計測を実施するための回折光検出式とされ、ビーム走査部、アライメント計測部及び制御部を有する。
【0029】
ビーム走査部においては、波長が、例えば633nm程度の単色光レーザが光源20として設けられている。光源20から出射されるビームの断面形状は円形である。光源20からの出射光30の光軸に介在してシリンドリカルレンズ21(円筒形レンズ)が設けられている。出射光30がこのシリンドリカルレンズ21を通過すると、出射光30のビームの形状が出射方向の垂直断面において水平方向に広がりスリット状に整形される。シリンドリカルレンズ21の出射光30側にハーフミラー23が出射光30に対して傾斜して設けられており、出射光30をウェーハ11に向けて反射する。
【0030】
また、シリンドリカルレンズ21にはシリンドリカルレンズ21をその中心軸の周りに回転させてアライメントビーム31の向きをビームの形状をスリット状に保ったまま任意の角度に調整させるシリンドリカルレンズ回転駆動機構部22が設けられている。これにより、アライメントマークMのラインの長手方向とアライメントビーム31の長手方向とを平行にすることができる。
【0031】
ハーフミラー23の反射光30a側にレンズ24がその焦点位置にウェーハ11上のアライメントマークMが位置するように配置されている。
【0032】
また、アライメント検出手段10においては、ハーフミラー23の透過光30b側にレンズ24が配置されている。そして、レンズ24の透過光30b側にフィルタ25が配置されており、アライメント信号検出器26が配置されている。フィルタ25は透過光30bを遮るパターンになっており、アライメントマークMのエッジ部からの回折光32だけを通過させるようになっている。更に、制御部(図示せず)は、アライメント計測部において計測されたウェーハ11のずれ角度だけ回転駆動機構部22を制御してシリンドリカルレンズ21を回転させるものである。
【0033】
上述のような構成のアライメント検出手段10においては、光源20から出射された出射光30がシリンドリカルレンズ21によりスリット状に成形され、ハーフミラー23に入射される。反射光はレンズ24で絞られアライメントマークMで焦点を結びアライメントビーム31になる。アライメントビーム31の形状はスリット状である。この場合に、ハーフミラー23は固定されているので、アライメントビーム31の照射方向も固定される。この状態でウェーハステージ駆動部によりウェーハ11を移動させてアライメントビーム31をアライメントマークM上で走査させる。このとき、アライメントマークMの回折光32がレンズ24及びハーフミラー23を通過し、レンズ24により絞られフィルタ25を通過し、アライメント信号検出器26で回折光32の強度が測定される。このようにして、アライメント信号を得ることができる。
【0034】
なお、本実施形態のアライメント検出手段10においては、アライメントビームの照射方向を固定し、ウェーハ11を移動させているが、これに限らず、ハーフミラー23を回転駆動してアライメントビーム31をウェーハ11のアライメントマークM上で走査させても良い。このような構成にすることにより、ウェーハステージを固定し、ハーフミラーの駆動装置によりハーフミラー23を回転させてアライメントビーム31をアライメントマークM上で走査させることができる。
【0035】
図6は、アライメントをおこなう際の回折光信号強度とアライメントマークの位置を説明するための概念図である。
なお上記のアライメント検出手段10によれば、出力信号は、理想的には、図6に示すように、アライメントビーム31の走査に従って、アライメントマークM1またはアライメントマークM2の位置で極大強度を呈する。
【0036】
本実施形態のエピタキシャルウェーハは、上記の形状としてアライメントマークMを形成し、その後エピタキシャル層を成膜するので、図3,図4に示すように、膜厚20μmのエピタキシャル層成膜後にも明瞭なアライメントマークを識別することができ、アライメントを好適におこなうことができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明にかかる実施例を図面に基づいて説明する。
上述した実施形態と同様に、シリコンウェーハ表面に、4μm角、あるいは、5μm角の矩形状マークMaを、間隔Mwを8μmまたは10μmとなるように設定したアライメントマークを形成し、その後、膜厚20μmのエピタキシャル膜を成膜した。これらをアライメント検出手段によって、ビーム走査した回折光の強度を測定した。
これらの結果を図7,図8に示す。
【0038】
図7(a)〜(d)および図8(e),(f)はWX方向検出用マークで直線状マークが3本、図8(g),(h)はX方向検出用のXマークで直線状マークは7本とされる。ここで、Pitchは、マーク間隔の寸法を示すものである。
WX方向検出用マークでそれぞれの回折光強度の結果で、ウェーハ上のマーク位置におけるマーク検出時のピーク強度振幅と、マークのない平坦部分位置におけるノイズである信号強度の変化幅との比は以下のとおりである。
6.6/3
11.9/1.1
7.9/2.2
10.6/1.2
9.3/1.3
10.5/0.4
【0039】
なお、ここで、平坦部分のノイズである信号強度の変化幅とは、平坦部分での信号強度の変化における振幅の平均をとったものである。つまり、各グラフで、マーク検出のピークおよび検出強度が下がった部分をのぞいてそれ以外の部分の強度平均を変化幅とするもので、また、マーク検出時のピーク強度振幅とは、ノイズ部分の強度平均中心値(平坦部分での信号の平均強度)からピーク最大値(極大値)までの振幅を意味している。
【0040】
図7,図8に示す結果から、本発明の実施例では、上記の比の値が、2.2〜26の範囲、さらに、7.15〜10.8の範囲となっているので、アライメントマークの検出が良好におこなわれていることがわかる。
【0041】
図9(a)は、本発明の比較例におけるエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、図9(b)は、その拡大図である。
また、同様にして、比較例として、図9に示すように、3×4μm、マーク間隔6μmでアライメントマーク、これ以外にも、4×5μm、マーク間隔6μmでアライメントマークを形成し、その後、これらのウェーハにおいて20μmのエピタキシャル層を成膜した。
【0042】
図10(a)は、本実施形態においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたWY方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、図9に示すアライメントマークMに対応する。また、図10(b)は、膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後のWY方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像である。
これらのエピタキシャルウェーハにおいて、アライメント検出手段によって、ビーム走査した回折光の強度を測定した。
その結果を図11に示す。
図11(a)〜(c)はWY方向検出用マークで直線状マークが3本としたものの検出結果である。
【0043】
図11に示す結果から、マーク位置において検出された信号はピークが検出されておらず、アライメント検出がされていない。つまり、これらの比較例では、アライメントマークの検出が良好でないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1(a)は、本発明における一実施形態のエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、(b)は、その拡大図である。
【図2】図2(a)は、本発明における一実施形態のエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、(b)は、その拡大図である。
【図3】図3(a)は、本発明においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、(b)は、エピタキシャル層を成膜する前に形成されたX方向位置検出用のXマークの一部を示す映像である。
【図4】図4(a)は、本発明において膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後のWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、(b)は、同X方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像である。
【図5】図5は、本実施形態における回折光によりアライメントマークを計測するアライメント検出手段を示す模式図である。
【図6】図6は、アライメントをおこなう際の回折光信号強度とアライメントマークの位置を説明するための概念図である。
【図7】図7は、本発明の実施例を示す回折光の強度と、ウェーハ面内方向位置との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の実施例を示す回折光の強度と、ウェーハ面内方向位置との関係を示すグラフである。
【図9】図9(a)は、本発明の比較例におけるエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、図9(b)は、その拡大図である。
【図10】図10(a)は、本発明の実施形態においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、図10(b)は、膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後のWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像である。
【図11】図11(a)〜(c)はWX方向検出用マークで直線状マークが3本としたものの検出結果である。
【符号の説明】
【0045】
M…アライメントマーク
Ma…矩形状マーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハおよびその製造方法に係り、特に、アライメントマーク付きのエピタキシャルウェーハまたは埋込層付きエピタキシャルウェーハに用いて好適な技術に関し、アライメントマークパターン形状に変形が生じたエピタキシャル成長後パターンに対するアライメント手法に関する。
【背景技術】
【0002】
CZ(チョクラルスキー)法により引き上げられたシリコン単結晶から得られるシリコン単結晶ウェーハ(基板)に不純物を拡散させてp型またはn型の拡散層を形成し、その上からエピタキシャル層を気相エピタキシャル成長させて、バイポーラデバイス、BiCMOSデバイス、パワーIC等のデバイス用のエピタキシャルウェーハを得る技術は良く知られている。
【0003】
例えば、フォトリソグラフィによりマスクパターンを形成したのち、イオン注入法によって不純物を拡散させて、ウェーハに部分的に拡散層を形成する。ウェーハには、フォトエッチング処理により予め形成されている位置決め用アライメントマークを基準にして、露光装置内においてパターン形成のためのマスクとの重ね合わせがおこなわれる。
拡散層を形成したのち、エピタキシャル層を積層することで上記デバイス用のシリコンエピタキシャルウェーハが得られる。この際、拡散層は埋込層となる。
【0004】
上記したような半導体デバイスを製造するために、このエピタキシャルウェーハが使用され、限られたスペースのなかにデバイスが作りこまれる。そこで、微細加工技術が必要となる。微細加工におけるキーポイントは、微細なパターン形成、寸法制御、そして基板とマスクの重ね合わせ精度である。量産性に適したフォトリソグラフィ技術に関して言えば、より微細なマスクパターンを得るために、露光波長の短波長化、レジストの高解像度化および高精度化等の適用がなされているが、それに伴い、寸法制御性および重ね合わせの高精度化の必要性が問題となってきている。高精度の重ね合わせ技術を実現するためには、位置合わせのためのアライメントマークが精度良く、かつ明瞭に形成されている必要がある。すなわち、エピタキシャル成長前に形成されたアライメントマークが、エピタキシャル層を形成したのちであっても、このアライメントマークを基準としてエピタキシャルウェーハと上部デバイス層形成用マスクとの正確な重ね合わせが実現されなければならない。
【0005】
このようなアライメントマークとしては、LSA(Laser Step Alignment)という、レーザー光の干渉を利用したセンサーに適した形状のものが用いられている。(特許文献2)
【0006】
ステッパ―によるアライメントは、ウェーハ上に形成されたアライメントマークに対してレーザースキャンすることで行なわれる。しかし、エピタキシャル成長などによる成膜が実施されたマーク上に行なわれると、マークからのスキャン信号に乱れが生じ、アライメントが実行できないもしくは誤検出の原因となる。
つまり、エピタキシャル層を厚く積層させていくにつれアライメントマークは、その輪郭がぼやけていき、やがてレーザー光の干渉シグナルが検出不可能な状態に至る。エピタキシャル層を積層させたのちにも、このアライメントマークを使用して位置合わせができるようにするには、これを最初に形成する際に、段差を大きく設計しておけばよい。しかし、段差を過剰に大きく設計することは、段差形成のためのエッチング工程におけるコストの高騰を招くため望ましくない。そこで、アライメントマークの段差・大きさの最適値を知るために、例えば段差およびマークの幅、間隔を変化させた複数の試料基板を用意し、所望の成長条件にて所定の厚さのエピタキシャル層を成長させるという予備試験が行われる。そして、それらエピタキシャル層の形成されたエピタキシャルウェーハを個別に検査し、いずれの幅、間隔および段差等が最適値であるかを求める。
しかし、試料基板を多数用意してエピタキシャル層を積層させ、どれが最適であるか1つ1つチェックする必要があるという点において、この方法は非常に煩雑である。また、エピタキシャル層の厚さを変更する必要が生じた場合、所望の厚さである試料基板を都度用意し、最適値を調べ直さなければならずウェーハ設計の所要時間が長くなってしまうという問題がある。
【0007】
シリコン単結晶基板に設けられる凹状のアライメントマークの初期段差を、該アライメントマークの初期幅と積層させるべきシリコンエピタキシャル層の厚さとに基づいて決定する手法が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−007618号公報
【特許文献2】特開2001−284233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術であると、レーザー干渉によるアライメントの検出に関しては考慮していないため、単に、アライメントマークの段差、幅のみを設定したとしても、その条件は最適でないという問題があった。
特に、20μm程度の厚膜とされるエピタキシャル膜成長によって、パターン形状に乱れが生じたアライメントマークに対するアライメントを可能としたいという要求があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.エピタキシャル膜成膜後にもレーザー干渉によるアライメント検出を可能とすること。
2.レーザー干渉によるアライメント可能な信号強度を得られるアライメントマークの最適寸法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の本発明のエピタキシャルウェーハは、断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークの形成された表面にエピタキシャル層を成膜したウェーハであって、
前記アライメントマークは、複数の矩形状マークが断続的に配されて前記ビーム走査方向と略直交する方向に延在する直線状マークとされ、
前記直線状マークにおける矩形状マークが、前記エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状で配置されてなることにより上記課題を解決した。
本発明本発明において、前記直線状マークが前記ビーム走査方向に離間して複数本設けられてなることがより好ましい。
本発明本発明は、前記矩形状マークの配置間隔が8μm〜10μm程度とされてなることが可能である。
また、また、本発明において、前記矩形状マークの寸法が4〜5μm角程度とされてなる手段を採用することもできる。
また、また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、上記いずれか記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
エピタキシャル層成膜前に前記アライメントマークが形成されてなることができる。
【0011】
本発明の本発明のエピタキシャルウェーハは、断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークの形成された表面にエピタキシャル層を成膜したウェーハであって、
前記アライメントマークは、複数の矩形状マークが断続的に配されて前記ビーム走査方向と略直交する方向に延在する直線状マークとされ、
前記直線状マークにおける矩形状マークが、前記エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状で配置されてなることにより、マークからの信号強度を飛躍的に改善することが可能となる。
【0012】
アライメントマーク形状は、通常ステッパ―メーカー推奨の形状を用いるが、これでは厚膜エピタキシャルによるパターン変形に対するアライメントマージンが少ないため、本願発明ではアライメントマーク形状を改良し、厚膜エピタキシャル膜に対するアライメントを可能とすることが可能となる。
【0013】
特に、20μm以上のエピタキシャル層を成膜した場合、ステッパ―メーカー推奨である従来形状のアライメントマークに対してアライメントを実施すると、マークからの信号は段差からの信号に対して30%程度しか強度が得られず、アライメントは実行できなかったが、本願発明では、4〜5μm角程度のマーク形状のピッチを6μmから8μm程度に広げることで、段差からの信号に対して約70%アライメントは可能となり、さらにピッチを10μm程度に広げることにより、段差からの信号に対して約450%となり、マークからの信号強度を飛躍的に改善することができる。これにより、従来のアライメントマークで発生していたようなアライメントが実行できない、あるいは、パターン異常が発生するといった不具合を解消することができる。
【0014】
アライメントマーク検出手段としては、ウェーハステージ上のウェーハに設けられた方向性を有するアライメントマークを断面形状が方向性を有するビームで走査するビーム走査部と、前記アライメントマークからの光の検出結果に基づいて前記ウェーハの基準方向とウェーハステージの基準方向とがなすウェーハずれ角度を測定するアライメント計測部と、前記ウェーハを前記ウェーハテーブル上にローディングした後前記ビーム走査部を駆動して前記アライメント計測部により前記ウェーハのローディング時のウェーハずれ角度を求め次いで前記ウェーハステージの基準方向に対する前記方向性を有するビームの方向を前記ウェーハずれ角度だけずらして再度前記ビーム走査部により前記アライメントマークを前記ビームで走査してファインアライメントを求める制御部とを有するものが使用できる。
【0015】
前記ビームはスリット状をなし、前記アライメントマークは複数個の格子状に配列された長方形ラインとその間のスペースとからなるものとされ、前記エピタキシャルウェーハに形成されたアライメントマークは、断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークであって、上述したように複数の矩形状マークが断続的に配された直線状マークとして前記ビーム走査方向に離間して複数本設けられるとともに、前記直線状マークにおける矩形状マークが、前記エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状として配置することができる。
【0016】
本発明本発明において、前記直線状マークが前記ビーム走査方向に離間して複数本設けられてなることがより好ましく、これにより、複数の直線状マークを形成することにより、アライメントマークの検出をよりいっそう正確に行うことが可能となる。
【0017】
本発明本発明は、前記矩形状マークの配置間隔が8μm〜10μm程度とされてなることが可能であり、これにより、アライメントマークの検出をよりいっそう正確に行うことが可能となる。
【0018】
また、また、本発明において、前記矩形状マークの寸法が4〜5μm角程度とされてなることにより、アライメントマークの検出をよりいっそう正確に行うことが可能となる。
【0019】
また、また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、上記いずれか記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、エピタキシャル層成膜前に前記アライメントマークが形成されてなることにより、上記のアライメントマークとすることで、たとえ20μm程度(15〜25μm)とされるエピタキシャル層を成膜した後であっても、アライメントマークの検出を正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本願発明のエピタキシャルウェーハによれば、アライメントマーク形状を上記のようにしてエピタキシャル層を形成することによって、厚膜(20μm)程度のエピタキシャル成膜後のウェーハに対するアライメントが可能となり、従来まで発生していた不具合(アライメントが実行できない、パターン異常)を解消することができるという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るエピタキシャルウェーハおよびその製造方法の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1(a)は、本実施形態におけるエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、図1(b)は、その拡大図である。
【0022】
本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造工程は、通常の製法により、引き上げたインゴットをスライス工程、面取り工程、ラッピングまたは研削等初期平坦化工程を経た後、エピタキシャル層を成膜する前においてフォトリソグラフィ技術によりアライメントマークを形成するアライメントマーク形成工程と、このアライメント形成工程の後に、エッチングおよび、膜厚18〜25μm、あるいは20μm程度、好ましくは22μm程度の膜厚でエピタキシャル層を成膜するエピタキシャル工程とを有する。
【0023】
本実施形態のエピタキシャルウェーハは、エピタキシャル工程より前における上記アライメント形成工程において、アライメントマークMが形成されている。
アライメントマークMは、ウェーハの表面に、例えば矩形状の凸部及び凹部が縦及び横方向に複数交互に形成されてなるものであり、方向性を有する。即ち、このアライメントマークMのパターンは、複数個の格子状に配列された長方形ラインとその間のスペースとからなるものである。このアライメントマークMは、図1(a)に示すように、ウェーハ表面にWX方向位置検出用として複数本の直線状マークM1が3本設けられ、それぞれの直線状マークM1は、図1(a)(b)に示すように、同一形状の矩形状マークMaが断続的に配されて形成されている。
本実施形態の前記矩形状マークMaの寸法は、4〜5μm角程度とされ、特に、図1(b)に示すように、後述するビーム進行方向S方向の長さMtが5μm、S方向と直行する方向の長さが5μmである5μm角に設定され、前記矩形状マークの配置間隔Mwが8μm〜10μm程度とされ、特に、図1(b)に示すように、8μm間隔に設定される。
【0024】
また、本実施形態のエピタキシャルウェーハは、同時に、エピタキシャル層を成膜する前においてフォトリソグラフィ技術によりアライメントマークMを形成する。このアライメントマークMは、図2(a)に示すように、ウェーハ表面に上記のWxとマーク種類が異なり、かつX方向位置検出用であるXマークとして複数本の直線状マークM2が7本設けられ、それぞれの直線状マークM2は、図2(a)(b)に示すように、同一形状の矩形状マークMaが断続的に配されて形成されている。
本実施形態の前記矩形状マークMaの寸法は、4〜5μm角程度とされ、特に、図2(b)に示すように、後述するビーム進行方向S方向の長さMtが5μm、S方向と直行する方向の長さが5μmである5μm角に設定され、前記矩形状マークの配置間隔Mwが8μm〜10μm程度とされ、特に、図2(b)に示すように、8μm間隔に設定される。
これらの矩形状マークMaは、ウェーハ厚さ方向の寸法、つまり段差が0.1μm〜0.5μmに設定されていることが好ましく、より好ましくは段差は0.3μm、あるいは、0.25μm程度に設定されている。
【0025】
図3(a)は、本実施形態においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、図1(a)に示すアライメントマークMに対応する。また、図3(b)は、同様に本実施形態においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたX方向位置検出用アライメントマークであるXマークの一部を示す映像であり、図2(a)に示すアライメントマークMに対応する。また、図4(a)は、本実施形態において膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後のWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、図4(b)は、同X方向位置検出用であるXマークの一部を示す映像である。
このように、本実施形態では、膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後でも、明確にアライメントマークMを識別することができる。
【0026】
アライメントは以下のようにおこなわれる。
【0027】
図5は、本実施形態における回折光によりアライメントマークを計測するアライメント検出手段を示す模式図である。
【0028】
アライメントマーク検出手段10は、図5に示すように、アライメントマークMの位置計測を実施するための回折光検出式とされ、ビーム走査部、アライメント計測部及び制御部を有する。
【0029】
ビーム走査部においては、波長が、例えば633nm程度の単色光レーザが光源20として設けられている。光源20から出射されるビームの断面形状は円形である。光源20からの出射光30の光軸に介在してシリンドリカルレンズ21(円筒形レンズ)が設けられている。出射光30がこのシリンドリカルレンズ21を通過すると、出射光30のビームの形状が出射方向の垂直断面において水平方向に広がりスリット状に整形される。シリンドリカルレンズ21の出射光30側にハーフミラー23が出射光30に対して傾斜して設けられており、出射光30をウェーハ11に向けて反射する。
【0030】
また、シリンドリカルレンズ21にはシリンドリカルレンズ21をその中心軸の周りに回転させてアライメントビーム31の向きをビームの形状をスリット状に保ったまま任意の角度に調整させるシリンドリカルレンズ回転駆動機構部22が設けられている。これにより、アライメントマークMのラインの長手方向とアライメントビーム31の長手方向とを平行にすることができる。
【0031】
ハーフミラー23の反射光30a側にレンズ24がその焦点位置にウェーハ11上のアライメントマークMが位置するように配置されている。
【0032】
また、アライメント検出手段10においては、ハーフミラー23の透過光30b側にレンズ24が配置されている。そして、レンズ24の透過光30b側にフィルタ25が配置されており、アライメント信号検出器26が配置されている。フィルタ25は透過光30bを遮るパターンになっており、アライメントマークMのエッジ部からの回折光32だけを通過させるようになっている。更に、制御部(図示せず)は、アライメント計測部において計測されたウェーハ11のずれ角度だけ回転駆動機構部22を制御してシリンドリカルレンズ21を回転させるものである。
【0033】
上述のような構成のアライメント検出手段10においては、光源20から出射された出射光30がシリンドリカルレンズ21によりスリット状に成形され、ハーフミラー23に入射される。反射光はレンズ24で絞られアライメントマークMで焦点を結びアライメントビーム31になる。アライメントビーム31の形状はスリット状である。この場合に、ハーフミラー23は固定されているので、アライメントビーム31の照射方向も固定される。この状態でウェーハステージ駆動部によりウェーハ11を移動させてアライメントビーム31をアライメントマークM上で走査させる。このとき、アライメントマークMの回折光32がレンズ24及びハーフミラー23を通過し、レンズ24により絞られフィルタ25を通過し、アライメント信号検出器26で回折光32の強度が測定される。このようにして、アライメント信号を得ることができる。
【0034】
なお、本実施形態のアライメント検出手段10においては、アライメントビームの照射方向を固定し、ウェーハ11を移動させているが、これに限らず、ハーフミラー23を回転駆動してアライメントビーム31をウェーハ11のアライメントマークM上で走査させても良い。このような構成にすることにより、ウェーハステージを固定し、ハーフミラーの駆動装置によりハーフミラー23を回転させてアライメントビーム31をアライメントマークM上で走査させることができる。
【0035】
図6は、アライメントをおこなう際の回折光信号強度とアライメントマークの位置を説明するための概念図である。
なお上記のアライメント検出手段10によれば、出力信号は、理想的には、図6に示すように、アライメントビーム31の走査に従って、アライメントマークM1またはアライメントマークM2の位置で極大強度を呈する。
【0036】
本実施形態のエピタキシャルウェーハは、上記の形状としてアライメントマークMを形成し、その後エピタキシャル層を成膜するので、図3,図4に示すように、膜厚20μmのエピタキシャル層成膜後にも明瞭なアライメントマークを識別することができ、アライメントを好適におこなうことができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明にかかる実施例を図面に基づいて説明する。
上述した実施形態と同様に、シリコンウェーハ表面に、4μm角、あるいは、5μm角の矩形状マークMaを、間隔Mwを8μmまたは10μmとなるように設定したアライメントマークを形成し、その後、膜厚20μmのエピタキシャル膜を成膜した。これらをアライメント検出手段によって、ビーム走査した回折光の強度を測定した。
これらの結果を図7,図8に示す。
【0038】
図7(a)〜(d)および図8(e),(f)はWX方向検出用マークで直線状マークが3本、図8(g),(h)はX方向検出用のXマークで直線状マークは7本とされる。ここで、Pitchは、マーク間隔の寸法を示すものである。
WX方向検出用マークでそれぞれの回折光強度の結果で、ウェーハ上のマーク位置におけるマーク検出時のピーク強度振幅と、マークのない平坦部分位置におけるノイズである信号強度の変化幅との比は以下のとおりである。
6.6/3
11.9/1.1
7.9/2.2
10.6/1.2
9.3/1.3
10.5/0.4
【0039】
なお、ここで、平坦部分のノイズである信号強度の変化幅とは、平坦部分での信号強度の変化における振幅の平均をとったものである。つまり、各グラフで、マーク検出のピークおよび検出強度が下がった部分をのぞいてそれ以外の部分の強度平均を変化幅とするもので、また、マーク検出時のピーク強度振幅とは、ノイズ部分の強度平均中心値(平坦部分での信号の平均強度)からピーク最大値(極大値)までの振幅を意味している。
【0040】
図7,図8に示す結果から、本発明の実施例では、上記の比の値が、2.2〜26の範囲、さらに、7.15〜10.8の範囲となっているので、アライメントマークの検出が良好におこなわれていることがわかる。
【0041】
図9(a)は、本発明の比較例におけるエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、図9(b)は、その拡大図である。
また、同様にして、比較例として、図9に示すように、3×4μm、マーク間隔6μmでアライメントマーク、これ以外にも、4×5μm、マーク間隔6μmでアライメントマークを形成し、その後、これらのウェーハにおいて20μmのエピタキシャル層を成膜した。
【0042】
図10(a)は、本実施形態においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたWY方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、図9に示すアライメントマークMに対応する。また、図10(b)は、膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後のWY方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像である。
これらのエピタキシャルウェーハにおいて、アライメント検出手段によって、ビーム走査した回折光の強度を測定した。
その結果を図11に示す。
図11(a)〜(c)はWY方向検出用マークで直線状マークが3本としたものの検出結果である。
【0043】
図11に示す結果から、マーク位置において検出された信号はピークが検出されておらず、アライメント検出がされていない。つまり、これらの比較例では、アライメントマークの検出が良好でないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1(a)は、本発明における一実施形態のエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、(b)は、その拡大図である。
【図2】図2(a)は、本発明における一実施形態のエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、(b)は、その拡大図である。
【図3】図3(a)は、本発明においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、(b)は、エピタキシャル層を成膜する前に形成されたX方向位置検出用のXマークの一部を示す映像である。
【図4】図4(a)は、本発明において膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後のWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、(b)は、同X方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像である。
【図5】図5は、本実施形態における回折光によりアライメントマークを計測するアライメント検出手段を示す模式図である。
【図6】図6は、アライメントをおこなう際の回折光信号強度とアライメントマークの位置を説明するための概念図である。
【図7】図7は、本発明の実施例を示す回折光の強度と、ウェーハ面内方向位置との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の実施例を示す回折光の強度と、ウェーハ面内方向位置との関係を示すグラフである。
【図9】図9(a)は、本発明の比較例におけるエピタキシャルウェーハのアライメントマーク形成部分を示す平面図であり、図9(b)は、その拡大図である。
【図10】図10(a)は、本発明の実施形態においてエピタキシャル層を成膜する前に形成されたWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像であり、図10(b)は、膜厚20μmのエピタキシャル層を成膜した後のWX方向位置検出用アライメントマークの一部を示す映像である。
【図11】図11(a)〜(c)はWX方向検出用マークで直線状マークが3本としたものの検出結果である。
【符号の説明】
【0045】
M…アライメントマーク
Ma…矩形状マーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークの形成された表面にエピタキシャル層を成膜したウェーハであって、
前記アライメントマークは、複数の矩形状マークが断続的に配されて前記ビーム走査方向と略直交する方向に延在する直線状マークとされ、
前記直線状マークにおける矩形状マークが、前記エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状で配置されてなることを特徴とするエピタキシャルウェーハ。
【請求項2】
前記直線状マークが前記ビーム走査方向に離間して複数本設けられてなることを特徴とする請求項1記載のエピタキシャルウェーハ。
【請求項3】
前記矩形状マークの配置間隔が8μm〜10μm程度とされてなることを特徴とする請求項1または2記載のエピタキシャルウェーハ。
【請求項4】
前記矩形状マークの寸法が4〜5μm角程度とされてなることを特徴とする請求項3記載のエピタキシャルウェーハ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
エピタキシャル層成膜前に前記アライメントマークが形成されてなることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項1】
断面形状が方向性を有するビームで走査するアライメントマークの形成された表面にエピタキシャル層を成膜したウェーハであって、
前記アライメントマークは、複数の矩形状マークが断続的に配されて前記ビーム走査方向と略直交する方向に延在する直線状マークとされ、
前記直線状マークにおける矩形状マークが、前記エピタキシャル膜の表面からビーム走査した際に、回折光強度が識別可能な形状で配置されてなることを特徴とするエピタキシャルウェーハ。
【請求項2】
前記直線状マークが前記ビーム走査方向に離間して複数本設けられてなることを特徴とする請求項1記載のエピタキシャルウェーハ。
【請求項3】
前記矩形状マークの配置間隔が8μm〜10μm程度とされてなることを特徴とする請求項1または2記載のエピタキシャルウェーハ。
【請求項4】
前記矩形状マークの寸法が4〜5μm角程度とされてなることを特徴とする請求項3記載のエピタキシャルウェーハ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
エピタキシャル層成膜前に前記アライメントマークが形成されてなることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−188118(P2009−188118A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25490(P2008−25490)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
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