説明

エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシート

【課題】焼結性を損なうことなく、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることのできるエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を提供する。また、該エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて製造されるセラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコールで表される構成単位を17〜49.4モル%、アセチル基を有する構成単位を0.1〜15モル%、下記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位を48〜80モル%、及び、エポキシ基を有する構成単位を0.5〜20モル%の割合で有し、かつ、平均重合度が300〜2500であることを特徴とするエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂。


式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結性を損なうことなく、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることのできるエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂に関する。また、本発明は、該エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて製造されるセラミックスラリー及びセラミックグリーンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂は、強靭性、造膜性、顔料等の無機又は有機粉体の分散性、塗布面への接着性等に優れていることから、例えば、積層セラミックコンデンサを構成するセラミックグリーンシート及び導電ペースト、インク、塗料、焼き付け用エナメル、ウォッシュプライマー等の用途に利用されている。
【0003】
なかでも、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、セラミックス粉末を有機溶剤中に分散した分散液に、ポリビニルブチラール樹脂等のバインダー樹脂と可塑剤とを加え、均一に混合し、脱泡してスラリー組成物を調製する。次いで、スラリー組成物を剥離性の支持体上に塗布し、これを加熱して乾燥した後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。得られたセラミックグリーンシート上に、内部電極となる導電ペーストを塗布した後、これを複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得る。更に、得られた積層体を所定の形状に切断した後、焼成して得たセラミックス焼結体の端面に外部電極を焼結することにより、積層セラミックコンデンサを得る。
【0004】
近年、電子機器の小型化に伴い、積層セラミックコンデンサにも小型大容量化が求められており、より微細なセラミックス粉末を含む薄層のセラミックグリーンシートを積み重ねることが試みられている。
薄層のセラミックグリーンシートにおいては、支持体からの剥離性、機械的強度、加熱圧着時の接着性等の性能を向上させることが非常に重要となる。しかしながら、例えば、加熱圧着時の接着性を向上させるために、アセタール化度が高く水酸基量の少ないポリビニルアセタール樹脂、又は、平均重合度の低いポリビニルアセタール樹脂を用いた場合には、セラミックグリーンシートの支持体からの剥離性が低下したり、剥離に耐えうるだけの機械的強度が得られなかったりすることがあり、結果として、セラミックグリーンシートが破れてしまったり、異常に伸びてしまったりすることがある。
【0005】
これに対し、例えば、ポリビニルアセタール樹脂を改良したり、架橋剤を添加したりすることにより、加熱処理によりポリビニルアセタール樹脂を分子間で架橋させることが検討されている。
例えば、特許文献1には、ポリビチルブチラール樹脂とイソシアネート樹脂とを混合して硬化させることが記載されている。また、特許文献2には、ポリビニルブチラール中に含まれる水酸基の水素原子がN−メチレンアクリルアミド基で置換してなる光硬化性および熱硬化性を有するポリビニルブチラール誘導体を、重合開始剤の存在下、紫外線、電子線等の光照射や熱処理により重合または架橋させることが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1又は2に記載の方法では、イソシアネート樹脂、又は、ポリビニルアセタール樹脂中のN−メチレンアクリルアミド基が焼結時に残留物として残ってしまい、積層セラミックコンデンサの性能に悪影響を及ぼすことがある。また、特許文献2に記載のN−メチレンアクリルアミド基の自己架橋は、機械的強度の面でも充分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−156493号公報
【特許文献2】特公平7−14973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、焼結性を損なうことなく、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることのできるエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を提供することを目的とする。また、本発明は、該エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて製造されるセラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記式(1)で表される水酸基を有する構成単位を17〜49.4モル%、下記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位を0.1〜15モル%、下記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位を48〜80モル%、及び、下記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位を0.5〜20モル%の割合で有し、かつ、平均重合度が300〜2500であるエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂である。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0013】
【化4】

式(4)中、Rは、主鎖の炭素原子及び酸素原子の数が1〜5である炭化水素基又はエーテル基を表す。
以下、本発明を詳述する。
【0014】
本発明者は、上記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構成単位を所定の割合で有し、かつ、平均重合度が300〜2500であるエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、エポキシ基を有し、自己架橋することができることから、該エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、機械的強度に優れ、更には、耐溶剤性にも優れたセラミックグリーンシートが得られることを見出した。本発明者は、該エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、架橋のために焼結性に悪影響を及ぼす添加剤等を必要としないことから、焼結性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、下記式(1)で表される水酸基を有する構成単位を17〜49.4モル%の割合で含有する。
【0016】
【化5】

【0017】
上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が17モル%未満であると、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下したり、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する溶液の粘度安定性が低下したりする。上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が49.4モル%を超えると、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の吸湿性が高くなって安定性が低下したり、有機溶剤に対する溶解性が低下したりする。従って、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が上記範囲を外れると、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを安定して得ることが困難となる。
上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合は、好ましい下限が20モル%、好ましい上限が36モル%である。
【0018】
本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、下記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位を0.1〜15モル%の割合で有する。
【0019】
【化6】

【0020】
上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が上記範囲を外れると、後述するような原料となるエポキシ変性ポリビニルアルコールの有機溶剤に対する溶解性が低下し、エポキシ変性ポリビニルアルコールのアセタール化反応を行うことが困難となる。
【0021】
本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、下記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位を48〜80モル%の割合で有する。
【0022】
【化7】

式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
なかでも、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて得られるセラミックグリーンシートの機械的強度と耐溶剤性とのバランスの観点から、上記式(3)中のRは、メチル基又はプロピル基であることが好ましい。
【0023】
上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合が48モル%未満であると、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の吸湿性が高くなって安定性が低下したり、有機溶剤に対する溶解性が低下したりするため、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを安定して得ることが困難となる。上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合が80モル%を超えると、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の製造自体が困難となり、仮に製造できたとしても、得られるエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下する。
上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合は、好ましい下限が60モル%、好ましい上限が78モル%である。
【0024】
本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、下記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位を0.5〜20モル%の割合で有する。
下記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位を有することにより、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、エポキシ基を有し、自己架橋することができる。そのため、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。また、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、架橋のために焼結性に悪影響を及ぼす添加剤等を必要としないことから、焼結性にも優れる。
【0025】
【化8】

式(4)中、Rは、主鎖の炭素原子及び酸素原子の数が1〜5である炭化水素基又はエーテル基を表す。
上記炭化水素基又はエーテル基において、主鎖の炭素原子及び酸素原子の数(主鎖の長さ)が1未満、即ち、上記式(4)で表される構成単位が上記Rを持たない場合には、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂におけるエポキシ基の架橋性が極端に低下してしまい、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることが困難となる。上記炭化水素基又はエーテル基において、主鎖の炭素原子及び酸素原子の数が5を超えると、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂が分子間で自己架橋したときの分子間距離が長くなるため、機械的強度に優れたセラミックグリーンシートを得ることが困難となる。
【0026】
上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位として、具体的には、例えば、下記式(5)及び(6)で表されるエポキシ基を有する構成単位が挙げられる。
なお、下記式(5)は、上記式(4)においてRが主鎖の炭素原子及び酸素原子の数が3のエーテル基である場合の構成単位であり、下記式(6)は、上記式(4)においてRが主鎖の炭素原子及び酸素原子の数が5のエーテル基である場合の構成単位である。
【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が0.5モル%未満であると、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂におけるエポキシ基の含有量が低下するため、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることが困難となる。上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が20モル%を超えると、後述するような原料となるエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいてもエポキシ基の含有量が多くなり、エポキシ変性ポリビニルアルコールのアセタール化反応を行うことが困難となったり、得られるエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の貯蔵安定性が低下したりする。
上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合は、好ましい下限が1.0モル%、好ましい上限が15モル%であり、より好ましい下限が2.0モル%、より好ましい上限が10モル%である。
【0030】
本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度の下限が300、上限が2500である。上記平均重合度が300未満であると、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて得られるセラミックグリーンシートの支持体からの剥離性が低下したり、機械的強度が低下したりする。上記平均重合度が2500を超えると、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する溶液の粘度安定性が低下するため、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを安定して得ることが困難となる。
本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度の好ましい下限は400、好ましい上限は2200であり、より好ましい下限は500、より好ましい上限は2000である。
なお、本明細書において、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールの平均重合度から求めることができる。また、本明細書において、エポキシ変性ポリビニルアルコールの平均重合度とは、混合物であるエポキシ変性ポリビニルアルコールにおけるそれぞれのエポキシ変性ポリビニルアルコールの重合度から求めた平均値を意味する。
【0031】
本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、アルデヒドにより、エポキシ変性ポリビニルアルコールをアセタール化することによって得ることができる。また、上記アセタール化反応は、従来公知の方法で行うことができる。
このような方法でエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることにより、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合を調整して、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂に目的とする性能を付与することが容易となる。また、従来公知のアセタール化反応のみによってエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができるため、不純物等が発生しにくく、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を容易に得ることができる。
【0032】
上記アルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドを単独で用いるか、又は、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドを併用することが好ましい。
【0033】
上記エポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位を60〜99.4モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位を0.1〜25モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位を0.5〜20モル%の割合で有することが好ましい。
このようなエポキシ変性ポリビニルアルコールを原料として用いることにより、上記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構成単位を上述した割合で有する、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。
【0034】
本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、エポキシ基を有し、自己架橋することができることから、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。また、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、架橋のために焼結性に悪影響を及ぼす添加剤等を必要としないことから、焼結性にも優れる。
【0035】
また、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、エポキシ基を有するため、セラミックス粉末、ガラス粉末、Ni、Ag、Cu、Pd等の金属粉末、パルミチン酸銀、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀等の有機銀化合物、顔料等の分散性に優れる。そのため、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、セラミックグリーンシート用途に限定されず、例えば、セラミック成形用バインダー、金属ペースト、熱現像性感光材料、塗料、インキ、反射シート等の通常ポリビニルアセタール樹脂が使用されている種々の用途に好適に用いられる。
【0036】
なお、上記のような用途に用いられる場合、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、単独で用いられてもよく、従来公知のポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂等の他のバインダー樹脂と混合して用いられてもよい。
【0037】
本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂、セラミックス粉末及び有機溶剤を含有するセラミックスラリーもまた、本発明の1つである。更に、このような本発明のセラミックスラリーを用いて製造されるセラミックグリーンシートもまた、本発明の1つである。
【0038】
上記セラミックス粉末は特に限定されず、例えば、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン、スピネムルライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等からなる粉末が挙げられる。これらのセラミックス粉末は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記セラミックス粉末の配合量は特に限定されないが、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する好ましい下限は100重量部、好ましい上限は10000重量部である。上記セラミックス粉末の配合量が100重量部未満であると、セラミックスラリーを用いて得られるセラミックグリーンシートにおいて、上記セラミックス粉末の密度が低くなり、機械的強度が低下することがある。上記セラミックス粉末の配合量が10000重量部を超えると、得られるセラミックスラリー及びセラミックグリーンシートにおいて、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の性能が充分に発揮されないことがある。
【0040】
上記有機溶剤は特に限定されず、一般的にセラミックスラリーに用いられる有機溶剤を使用することができる。
上記有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸2−エチルヘキシル等のエステル類、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等のテルピネオール及びその誘導体等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
上記有機溶剤の配合量は特に限定されないが、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する好ましい下限は100重量部、好ましい上限は10000重量部である。上記有機溶剤の配合量が100重量部未満であると、得られるセラミックスラリーの粘度が高くなり、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の分散能力が阻害されることがある。上記有機溶剤の配合量が10000重量部を超えると、得られるセラミックスラリーにおいて、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の性能が充分に発揮されないことがある。
【0042】
本発明のセラミックスラリーは、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤等を適宜含有してもよい。
【0043】
本発明のセラミックスラリーを製造する方法は特に限定されず、例えば、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂、上記セラミックス粉末、上記有機溶剤及び必要に応じて添加される他の成分を、ボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の混合機を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0044】
本発明のセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを製造する方法は特に限定されず、例えば、本発明のセラミックスラリーを剥離性の支持体上に塗布した後、加熱して乾燥する方法等が挙げられる。このように本発明のセラミックスラリーを加熱することにより、本発明のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂におけるエポキシ基を自己架橋させ、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。
上記剥離性の支持体上にセラミックスラリーを塗布する方法は特に限定されず、例えば、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の従来公知の方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、焼結性を損なうことなく、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることのできるエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を提供することができる。また、本発明によれば、該エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて製造されるセラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0047】
(実施例1)
(エポキシ変性ポリビニルアルコールの作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管及び滴下漏斗を備えたセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2000g、メタノール220g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6g及びアリルグリシジルエーテル10gを入れ、窒素ガスにてバブリングした後、アリルグリシジルエーテル10gを滴下させながら60℃で5時間共重合させた。次いで、重合反応液中にメタノール蒸気を吹込んで未反応モノマーを除去した後、共重合体の30℃、25%のメタノール溶液を調製した。このメタノール溶液2740gに、2.2Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液18gを添加することにより、粒子を作製した。得られた粒子をメタノールで洗浄し、乾燥することにより、白色のエポキシ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が97.5モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.5モル%であり、平均重合度が1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいて、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0048】
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコール100gを純水1000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し、溶解させた。この溶液を40℃に冷却した後、濃度35重量%の塩酸90g及びn−ブチルアルデヒド90gを添加し、液温を10℃に下げて、この温度を保持しながらアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、中和、水洗及び乾燥を行うことにより、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が32モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が65.5モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.5モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0049】
(セラミックスラリーの作製)
セラミックス粉末としてチタン酸バリウム(BT−03、平均粒径0.3μm、堺化学工業社製)70重量部、トルエン30重量部とエタノール30重量部との混合溶剤、及び、ED−216(楠本化成社製、分散剤)1重量部をボールミルで48時間混合した後、トルエン30重量部とエタノール30重量部との混合溶剤に溶解したエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂8重量部を加え、ボールミルで12時間混合することにより、セラミックスラリーを得た。
【0050】
(セラミックグリーンシートの作製)
得られたセラミックスラリーを、コーターを用いて乾燥後の厚みが2μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、70℃で5分加熱して乾燥することにより、セラミックグリーンシートを得た。
【0051】
(実施例2)
(エポキシ基含有ビニルエーテルの作製)
500mL容の四ツ口フラスコに、4−ペンテン−1−オール60g及び四塩化スズ触媒0.4gを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら、80℃まで昇温した。次いで、反応温度を80±5℃に保ちながら、反応液にエピクロルヒドリン40gを0.5時間かけて滴下し、0.5時間攪拌した。4−ペンテン−1−オールを減圧下で回収した後、20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を70g加え、40℃で0.5時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、水層を除き減圧蒸留で精製することにより、エポキシ基含有ビニルエーテルを得た。
【0052】
(エポキシ変性ポリビニルアルコールの作製)
アリルグリシジルエーテルの代わりに得られたエポキシ基含有ビニルエーテルを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が93.8モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が3.9モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が2.3モル%であり、平均重合度が1100であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいて、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(6)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は5)である。
【0053】
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が25.6モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が3.9モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が68.2モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が2.3モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ1100であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(6)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は5)である。
【0054】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0055】
(実施例3)
(エポキシ変性ポリビニルアルコールの作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管及び滴下漏斗を備えたセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2000g、メタノール220g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6g及びアリルグリシジルエーテル150gを入れ、窒素ガスにてバブリングした後、アリルグリシジルエーテル150gを滴下させながら60℃で5時間共重合させた。次いで、重合反応液中にメタノール蒸気を吹込んで未反応モノマーを除去した後、共重合体の30℃、25%のメタノール溶液を調製した。このメタノール溶液2740gに、2.2Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液18gを添加することにより、粒子を作製した。得られた粒子をメタノールで洗浄し、乾燥することにより、白色のエポキシ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が79.1モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.1モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が19.8モル%であり、平均重合度が1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいて、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0056】
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が22.2モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.1モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が56.9モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が19.8モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0057】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0058】
(実施例4)
(エポキシ変性ポリビニルアルコールの作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管及び滴下漏斗を備えたセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2000g、メタノール220g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6g及びアリルグリシジルエーテル4gを入れ、窒素ガスにてバブリングした後、アリルグリシジルエーテル4gを滴下させながら60℃で5時間共重合させた。次いで、重合反応液中にメタノール蒸気を吹込んで未反応モノマーを除去した後、共重合体の30℃、25%のメタノール溶液を調製した。このメタノール溶液2740gに、2.2Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液18gを添加することにより、粒子を作製した。得られた粒子をメタノールで洗浄し、乾燥することにより、白色のエポキシ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が98.8モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が0.7モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が0.5モル%であり、平均重合度が1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいて、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0059】
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が25.4モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が0.7モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が73.4モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が0.5モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0060】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0061】
(実施例5)
(エポキシ変性ポリビニルアルコールの作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管及び滴下漏斗を備えたセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2000g、メタノール220g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.5g及びアリルグリシジルエーテル10gを入れ、窒素ガスにてバブリングした後、アリルグリシジルエーテル10gを滴下させながら60℃で5時間共重合させた。次いで、重合反応液中にメタノール蒸気を吹込んで未反応モノマーを除去した後、共重合体の30℃、25%のメタノール溶液を調製した。このメタノール溶液2740gに、2.2Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液18gを添加することにより、粒子を作製した。得られた粒子をメタノールで洗浄し、乾燥することにより、白色のエポキシ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が97.3モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.2モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.5モル%であり、平均重合度が300であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいて、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0062】
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が28.4モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.2モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が68.9モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.5モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ300であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0063】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0064】
(実施例6)
(エポキシ変性ポリビニルアルコールの作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管及び滴下漏斗を備えたセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2000g、メタノール220g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3g及びアリルグリシジルエーテル10gを入れ、窒素ガスにてバブリングした後、アリルグリシジルエーテル10gを滴下させながら60℃で5時間共重合させた。次いで、重合反応液中にメタノール蒸気を吹込んで未反応モノマーを除去した後、共重合体の30℃、25%のメタノール溶液を調製した。このメタノール溶液2740gに、2.2Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液18gを添加することにより、粒子を作製した。得られた粒子をメタノールで洗浄し、乾燥することにより、白色のエポキシ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が96.9モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.5モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.6モル%であり、平均重合度が2500であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいて、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0065】
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が26.4モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.5モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が70.5モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.6モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ2500であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0066】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0067】
(実施例7)
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
実施例1で得られたエポキシ変性ポリビニルアルコール100gを純水1000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し、溶解させた。この溶液を40℃に冷却した後、濃度35重量%の塩酸50g及びn−ブチルアルデヒド50gを添加し、液温を10℃に下げて、この温度を保持しながらアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、2時間保持して反応を完了させ、中和、水洗及び乾燥を行うことにより、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が49.1モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が48.4モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.5モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0068】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0069】
(実施例8)
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
実施例1で得られたエポキシ変性ポリビニルアルコール100gを純水1000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し、溶解させた。この溶液を40℃に冷却した後、濃度35重量%の塩酸130g及びn−ブチルアルデヒド130gを添加し、液温を10℃に下げて、この温度を保持しながらアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、5時間保持して反応を完了させ、中和、水洗及び乾燥を行うことにより、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が17.5モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が80モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.5モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0070】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0071】
(実施例9)
(エポキシ変性ポリビニルアルコールの作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管及び滴下漏斗を備えたセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2000g、メタノール220g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6g及びアリルグリシジルエーテル10gを入れ、窒素ガスにてバブリングした後、アリルグリシジルエーテル10gを滴下させながら60℃で5時間共重合させた。次いで、重合反応液中にメタノール蒸気を吹込んで未反応モノマーを除去した後、共重合体の30℃、25%のメタノール溶液を調製した。このメタノール溶液2740gに、2.2Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液8gを添加することにより、粒子を作製した。得られた粒子をメタノールで洗浄し、乾燥することにより、白色のエポキシ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が83.7モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が14.8モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.5モル%であり、平均重合度が1100であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいて、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0072】
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が25.7モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が14.8モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が58モル%、及び、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位の割合が1.5モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ1100であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位は、上記式(5)で表されるエポキシ基を有する構成単位(式(4)におけるRの主鎖の炭素原子及び酸素原子の数は3)である。
【0073】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0074】
(比較例1)
エポキシ変性されていないポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを作製した。
用いたエポキシ変性されていないポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が23.2モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.1モル%、及び、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が75.7モル%であり、平均重合度が1000であった。
【0075】
(比較例2)
(エポキシ変性ポリビニルアルコールの作製)
アリルグリシジルエーテルの代わりに1,2−エポキシ−3−ブテンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が95.8モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.2モル%、及び、エポキシ基を有する構成単位の割合が3.0モル%であり、平均重合度が1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいて、エポキシ基を有する構成単位は、下記式(7)で表されるエポキシ基を有する構成単位である。
【0076】
【化11】

【0077】
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が25.3モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.2モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が70.5モル%、及び、エポキシ基を有する構成単位の割合が3.0モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ1000であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、エポキシ基を有する構成単位は、上記式(7)で表されるエポキシ基を有する構成単位である。
【0078】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0079】
(比較例3)
(エポキシ基含有ビニルエーテルの作製)
4−ペンテン−1−オールの代わりに5−ヘキセン−1−オールを用いたこと以外は実施例2と同様にして、エポキシ基含有ビニルエーテルを得た。
【0080】
(エポキシ変性ポリビニルアルコールの作製)
アリルグリシジルエーテルの代わりに得られたエポキシ基含有ビニルエーテルを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が94.8モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が3.1モル%、及び、エポキシ基を有する構成単位の割合が2.1モル%であり、平均重合度が1100であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールにおいて、エポキシ基を有する構成単位は、下記式(8)で表されるエポキシ基を有する構成単位である。
【0081】
【化12】

【0082】
(エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が29.3モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が3.1モル%、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が65.5モル%、及び、エポキシ基を有する構成単位の割合が2.1モル%であり、平均重合度は原料であるエポキシ変性ポリビニルアルコールと同じ1100であった。なお、得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂において、エポキシ基を有する構成単位は、上記式(8)で表されるエポキシ基を有する構成単位である。
【0083】
(セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートの作製)
得られたエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを得た。
【0084】
(比較例4)
エポキシ変性されていないポリビニルアセタール樹脂を用い、かつ、硬化剤としてイソホロンジイソシアネートを1g加えたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを作製した。
用いたエポキシ変性されていないポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が23.2モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が1.1モル%、及び、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(3)におけるRはプロピル基)の割合が75.7モル%であり、平均重合度が1000であった。
【0085】
<評価>
実施例及び比較例で得られたセラミックグリーンシート等について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0086】
(1)耐溶剤性
得られたセラミックグリーンシート上にテルピネオール又はジヒドロテルピネオールをスポイトにて一滴(約0.02g)滴下し、60℃で5分乾燥した後、セラミックグリーンシートの状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○ セラミックグリーンシートに皺及び穴のいずれも観察されなかった。
× セラミックグリーンシートに皺又は穴が観察された。
【0087】
(2)機械的強度
得られたセラミックグリーンシートをPETフィルムから剥離し、剥離したシートについてテンシロン引張試験機を用いて破断点応力を測定し、下記の基準で評価した。なお、長さ20mm×幅50mmの試験片を用い、試験速度を25mm/分とした。
○ 破断点応力が20MPa以上であった。
× 破断点応力が20MPa未満であった。
【0088】
(3)焼結性
セラミックスラリーを作製する段階で、チタン酸バリウムを除いた溶液を作製し、この溶液を用いて、厚さ20μmの樹脂シートを作製した。作製した樹脂シートから0.020gの測定サンプルを採取し、空気100mL/分の雰囲気下で、室温(20℃)から500℃まで昇温速度10℃/分で昇温させ、500℃での分解率(重量%)を測定し、以下の基準で評価した。
○ 分解率が85重量%以上であった。
× 分解率が85重量%未満であった。
【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、焼結性を損なうことなく、機械的強度及び耐溶剤性に優れたセラミックグリーンシートを得ることのできるエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を提供することができる。また、本発明によれば、該エポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて製造されるセラミックスラリー及びセラミックグリーンシートを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される水酸基を有する構成単位を17〜49.4モル%、下記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位を0.1〜15モル%、下記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位を48〜80モル%、及び、下記式(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位を0.5〜20モル%の割合で有し、かつ、平均重合度が300〜2500であることを特徴とするエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂。
【化1】

【化2】

【化3】

式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【化4】

式(4)中、Rは、主鎖の炭素原子及び酸素原子の数が1〜5である炭化水素基又はエーテル基を表す。
【請求項2】
ブチルアルデヒド及び/又はアセトアルデヒドにより、エポキシ変性ポリビニルアルコールをアセタール化することによって得られることを特徴とする請求項1記載のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエポキシ変性ポリビニルアセタール樹脂、セラミックス粉末及び有機溶剤を含有することを特徴とするセラミックスラリー。
【請求項4】
請求項3記載のセラミックスラリーを用いて製造されることを特徴とするセラミックグリーンシート。

【公開番号】特開2012−72256(P2012−72256A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217501(P2010−217501)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】