説明

エポチロンをヒドロキシル化するための方法および組成物

エポチロンBヒドロキシラーゼおよびその突然変異体および変異体ならびにエポチロンBヒドロキシラーゼ遺伝子の下流に位置するフェレドキシンの単離された核酸配列およびそれによりコードされるポリペプチドを提供する。ベクターおよび該ベクターを含む細胞も提供する。さらに、組換え微生物の製造方法、該組換え微生物を用いるヒドロキシアルキルを有するエポチロンの製造方法、およびエポチロンBヒドロキシラーゼの突然変異体により生成されるエポチロン類似体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポチロンBヒドロキシラーゼおよびその突然変異体ならびに変異体、およびエポチロンBヒドロキシラーゼ遺伝子の下流に位置するフェレドキシンの単離された核酸配列およびそれによりコードされるポリペプチドに関する。本発明は、末端ヒドロキシアルキル基を有する化合物を製造するための末端アルキル基を有するエポチロンのような低分子有機化合物をヒドロキシル化することができるエポチロンBヒドロキシラーゼまたはその突然変異体もしくは変異体および/またはフェレドキシンを発現する組換え微生物にも関する。また、そのような微生物を組換えにより製造する方法、および末端ヒドロキシルアルキル基を有する化合物の合成においてこれら組換え微生物を用いる方法も提供する。本発明の組成物および方法は医薬の分野において種々の有用性があるエポチロンの製造に有用である。本発明のエポチロンBヒドロキシラーゼの突然変異体を用いて製造した新規エポチロン類似体も記載する。
【背景技術】
【0002】
エポチロンは医薬の分野において有用性があるマクロライド化合物である。例えば、構造:

エポチロン A R=H
エポチロン B R=Me
を有するエポチロンAおよびBがパクリタキセル(TAXOL(登録商標))と同様の微小管安定化効果、したがって急速に増殖する細胞、例えば、癌細胞または他の過剰増殖細胞疾患に関連する細胞に対する毒性作用を示すことがわかっている。Bollag et al.、Cancer Res.、Vol. 55、No. 11、2325-2333(1995)参照。
【0003】
エポチロンAおよびBは、Hofle et al.、DE 4138042; WO 93/10121;Angew. Chem. Int. Ed. Engl. Vol. 35、No13/14、1567-1569(1996); および J. Antibiot.、Vol. 49、No. 6、560-563(1996)により最初に単離され、特徴付けられたSorangium cellulosumが産生する天然の抗癌剤である。次いで、エポチロンAおよびBの完全な合成法がBalog et al.、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、Vol.35、No.23/24、2801-2803、1996; Meng et al.、J. Am. Chem. Soc.、Vol. 119、No. 42、10073-10092(1997); Nicolaou et al.、J.Am. Chem.Soc.、Vol. 119、No.34、7974-7991(1997); Schinzer et al.、Angew. Chem. Int. Ed.Eng.、Vol. 36、No. 5、523-524(1997);およびYang et al.、Angew. Chem. Int. Ed.Engl.、Vol. 36、No. 1/2、166-168、1997により公表された。WO 98/25929は、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンの類似体、およびエポチロン類似体ライブラリーの化学合成方法を開示した。エポチロンC、D、E、およびFの構造およびSorangium cellulosum DSM 6773からの製造はWO 98/22461に開示された。図1は、WO 00/39276に記載の、その後Amycolatopsis orientalisと同定されたActinomycetes種SC15847株(ATCC PT-1043)におけるエポチロンBのエポチロンFへの生体内変換の図解を示す。
【0004】
チトクロームP450酵素は原核生物および真核細胞にみられ、一酸化炭素と複合すると450nmの吸収ピークにより区別することができる共通のヘム結合ドメインを有する。チトクロームP450酵素は、芳香族およびベンジル環、およびアルカンを含む主として疎水性基質に対する広範囲の酸化反応をもたらす。原核生物では、該酵素は解毒系ならびにトルエン、ベンゼン、およびカンファーのような基質の代謝における最初の酵素的工程としてみいだされる。チトクロームP450遺伝子は、二次代謝物、例えばStreptomyces tendaeにおけるニッコマイシン(Bruntner、C. et al、1999、Mol. Gen.Genet. 262: 102-114)、ドキソルビシン(Dickens、M. L、Strohl、W. R.、1996、J. Bacteriol、178: 3389-3395)の生合成経路、およびSorangium cellulosumのエポチロン生合成クラスター(Julien、B. et al.、2000、Gene、249: 153-160)にもみいだされている。少数の例外があるが、原核生物のチトクロームP450系は、フェレドキシンNADHまたはNADPH依存性還元酵素、鉄-イオウフェレドキシン、およびチトクロームP450の3タンパク質からなる(Lewis、D. F.、Hlavica、P.、2000、Biochim. Biophys. Acta.、1460: 353-374)。電子は、フェレドキシン還元酵素からフェレドキシン、最終的にチトクロームP450酵素に伝達され、酸素分子を分裂させる。
(発明の要約)
【0005】
本発明の目的は、エポチロンBヒドロキシラーゼおよびその変異体または突然変異体をコードする単離された核酸配列ならびにフェレドキシンまたはその変異体または突然変異体をコードする単離された核酸配列を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、エポチロンBヒドロキシラーゼおよびその変異体または突然変異体のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドならびにフェレドキシンおよびその変異体または突然変異体のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供することである。
本発明の別の目的は、エポチロンBヒドロキシラーゼのホモロジーモデルの構造座標を提供することである。該構造座標は別表1に記載されている。本発明のこのモデルは、エポチロンBヒドロキシラーゼおよび特異性が変化したエポチロンBヒドロキシラーゼのさらなる突然変異体の生物学的機能のモジュレーターを設計する手段を提供する。
【0007】
本発明の別の目的は、エポチロンBヒドロキシラーゼまたはその変異体もしくは突然変異体および/またはフェレドキシンまたはその変異体もしくは突然変異体をコードする核酸配列を含むベクターを提供することである。好ましい態様において、これらベクターはさらにフェレドキシンをコードする核酸配列を含む。
【0008】
本発明の別の目的は、エポチロンBヒドロキシラーゼまたはその変異体もしくは突然変異体および/またはフェレドキシンまたはその変異体もしくは突然変異体をコードする核酸配列を含むベクターを含む宿主細胞を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、末端アルキル基を有する化合物、特にエポチロンをヒドロキシル化し、末端ヒドロキシアルキル基を有する化合物を生成することができる組換え微生物の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、末端アルキル基を有する化合物、特にエポチロンをヒドロキシル化し、末端ヒドロキシアルキル基を有する化合物を生成することができる組換えにより製造された微生物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、これら組換え微生物を用いて化合物をヒドロキシル化する方法を提供することである。詳細には、本発明は、抗腫瘍剤ならびに他のエポチロン類似体の製造における出発物質としての有用性があるヒドロキシアルキルを有するエポチロンの製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、式A:

で示される化合物(本明細書では24-OH エポチロンBまたは24-OH EpoBという)ならびに式Aの化合物を含む組成物の製造方法を提供することである。
(図面の簡単な説明)
【0013】
図1は、WO 00/39276、米国出願No.09/468,854(1999年12月21日出願)に記載の、Amycolatopsis orientalis SC15847株(PTA1043)によるエポチロンBのエポチロンFへの生体内変換の概略図を示す。
【0014】
図2は、エポチロンBヒドロキシラーゼをコードする核酸配列をクローニングするためのPCRプライマーを設計するのに用いる配列番号5〜配列番号22の核酸配列アラインメントを示す。
【0015】
図3は、エポチロンBヒドロキシラーゼ(配列番号2)およびEryF(PDBコード1JIN 鎖A; 配列番号76)間の配列アラインメントを示す。アスタリスクは配列同一性を示し、コロン(:)は同様の残基である。
【0016】
図4は、図3に示すEryFとの配列アラインメントに基づくエポチロンBヒドロキシラーゼのホモロジーモデルを示す。
【0017】
図5は、EryF(PDBコード1JIN;実線で示す)に対するエポチロンBヒドロキシラーゼモデル(点線で示す)のエネルギープロットを示す。
【0018】
51残基の平均ウインドウサイズを用いた。すなわち、ある残基の位置のエネルギーを該残基が中心位置にある配列の51残基のエネルギーの平均として計算する。
(本発明の詳細な説明)
【0019】
本発明は、単離された核酸配列およびポリペプチドならびに末端炭素位置に所望の置換基を有する化合物を得る方法に関する。詳細には、本発明は、抗腫瘍剤および他のエポチロン類似体の製造における出発物質としての有用性があるヒドロキシアルキルを有するエポチロンの組成物およびその製造方法を提供する。
【0020】
本明細書で用いている用語「エポチロン」は、本明細書に記載のエポチロンコアおよび側鎖基を含む化合物を示す。本明細書で用いている用語「エポチロンコア」は、コア構造(本明細書で用いる環系の位置の番号付けを示す):

を含む部分を示す
[式中、置換基は以下の通りである:
Qは

からなる群から選ばれる;
WはOまたはNR6である;
XはO、H、およびOR7からなる群から選ばれる;
MはO、S、NR8、CR9R10である;
B1およびB2はOR11、OCOR12からなる群から選ばれる;
R1-R5およびR12-R17は、H、アルキル、置換アルキル、アリール、およびヘテロシクロからなる群から選ばれる;
ここで、R1およびR2がアルキルである場合は、それらが結合してシクロアルキルを形成することができる;
R6は、H、アルキル、および置換アルキルからなる群から選ばれる;
R7およびR11は、H、アルキル、置換アルキル、トリアルキルシリル、アルキルジアリールシリル、およびジアルキルアリールシリルからなる群から選ばれる;
R8はH、アルキル、置換アルキル、R13C=O、R14OC=O、およびR15SO2からなる群から選ばれる;
R9およびR10は、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロシクロ、ヒドロキシ、R16C=O、およびR17OC=Oからなる群から選ばれる。]。
【0021】
用語「側鎖基」は、下記のエポチロンAまたはBまたはG1およびG2について先に定義した置換基Gを表す。
G1は、下記式V:
HO-CH2-(A1)n-(Q)m-(A2)o (V)である;
G2は、下記式VI:
CH3-(A1)n-(Q)m-(A2)o (VI)である;
ここで、A1およびA2は独立して所望により置換されたC1-C3アルキルおよびアルケニルの群から選ばれる;
Qは、1〜3環、および少なくとも1の環中に少なくとも1の炭素-炭素二重結合を含む所望により置換された環系である;
n、m、およびoは、独立して0および1からなる群から選ばれる整数である;
ここで、m、n、またはoの少なくともが1である。
【0022】
用語「末端炭素」または「末端アルキル基」は、エポチロンコアの15位に直接結合した部分の末端炭素または末端メチル基、または15位に結合した側鎖基の末端炭素または末端アルキル基を表す。用語「アルキル基」は本明細書に記載のアルキルおよび置換アルキルを含むと理解される。
【0023】
用語「アルキル」は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜7の所望により置換された直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基を表す。
【0024】
用語「低級アルキル」は、炭素数1〜4の所望により置換されたアルキル基を表す。
【0025】
用語「置換アルキル」は、例えば1〜4個の置換基、例えばハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、オキソ、アルカノイル、アリールオキシ、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、2個のアミノ置換基がアルキル、アリール、またはアラルキルから選ばれる2置換アミン、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ(aralkanoylamino)、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アラルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、スルホンアミド(例えばSO2NH2)、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル(例えばCONH2)、置換カルバミル(例えばCONHアルキル、CONH アリール、CONH アラルキル、またはアルキル、アリール、またはアラルキルから選ばれる窒素上に2個の置換基がある場合)、アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジノ、およびヘテロシクロ、例えばインドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジルなどにより置換されたアルキル基を表す。上記で該置換基がさらに置換されている場合、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、またはアラルキルで置換されよう。
【0026】
本発明のある局面によれば、末端アルキル基を有するエポチロンをヒドロキシル化して末端ヒドロキシアルキル基を有するエポチロンを生成することができる酵素であるエポチロンBヒドロキシラーゼをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0027】
本発明の別の局面は、エポチロンBヒドロキシラーゼ遺伝子の下流に位置する遺伝子であるフェレドキシンをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供することである。フェレドキシンは、チトクロームP450系のタンパク質である。
【0028】
本明細書で用いている「ポリヌクレオチド」は、それぞれよく知られた化学的技術により合成的に生成されるかまたはクローンすることにより得られる、これら酵素またはその活性断片をコードするあらゆる形のDNAまたはRNA、例えばcDNAまたはゲノムDNAもしくはmRNAを含むことを意味する。DNAは二本鎖または一本鎖であってよい。一本鎖DNAはコーディングまたはセンス鎖または非コーディングもしくはアンチセンス鎖を含むことができよう。すなわち、用語ポリペプチドは、本明細書に記載の配列と少なくとも60%またはそれ以上、好ましくは少なくとも80%の相同性を示し、上記ポリヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドも含む。本明細書に記載の用語「ストリンジェント条件」は、2xSSC緩衝液で60℃のハイブリダイゼーション条件を意味する。より好ましくは、1、30、32、34、36、37、38、39、40、41、42、60、62、64、66、68、70、72もしくは74、または配列番号3に記載の核酸配列、または配列番号1、30、32、34、36、37、38、39、40、41、42、60、62、64、66、68、70、72,もしくは74、または配列番号3に記載の核酸配列の相補配列と、3X SSC、65℃、16時間のハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、配列番号1、30、32、34、36、37、38、39、40、41、42、60、62、64、66、68、70、72もしくは74または配列番号3に記載の核酸配列、または配列番号1、30、32、34、36、37、38、39、40、41、または42、60、62、64、66、68、70、72もしくは74、または配列番号3に記載の核酸配列の相補配列と0.5X SSC、55℃、30分間の洗浄条件下でハイブリダイズしたままであることができる単離された核酸分子である。
【0029】
ある態様において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に記載のゲノムDNAまたはホモローガスな配列またはこのエポチロンBヒドロキシラーゼと同様の活性を有するポリペプチドをコードするその断片を含む。あるいはまた、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号3に記載のゲノムDNAまたはホモローガスな配列またはこのフェレドキシンと同様の活性を有するポリペプチドをコードするその断片を含む。該遺伝子コードの縮重により本発明のポリヌクレオチドは、この酵素およびその誘導体、変異体または活性断片をコードする他の核酸配列も含むことができよう。
【0030】
本発明は、天然の、すなわち微生物、例えばAmycolatopsis orientalisおよびAnaycolata autotrophica中に存在するか、または土壌中もしくは核酸を単離することができる他の供給源中に存在することがあるこれらポリヌクレオチドの変異体、またはよく知られた突然変異体誘発技術により製造された突然変異体にも関する。本発明の典型的変異体ポリヌクレオチドを配列番号36-42に示す。
【0031】
本明細書で用いている「突然変異体」は、配列番号1または3と比べて核酸の1またはそれ以上の点突然変異、または欠失もしくは付加を有するが、配列番号1または3によりコードされるポリペプチドと同様の活性を有するポリペプチドまたは断片をコードする核酸配列を含むことを意味する。好ましい態様において、酵素の基質特異性および/または収量を変化させる突然変異を行う。エポチロンBヒドロキシラーゼ遺伝子に関して突然変異の好ましい領域は、該酵素の活性部位を含む約113アミノ酸残基をコードする核酸配列の領域である。配列番号1のアミノ酸位 GLU31、ARG67、ARG88、ILE92、ALA93、VAL106、ILE130、ALA140、MET176、PHE190、GLU 231、SER294、PHE237、またはILE365に少なくとも1のアミノ酸置換を有するポリペプチドをコードする突然変異体も好ましい。本発明の典型的ポリヌクレオチド突然変異体は配列番号30、32、34、60、62、64、66、68、70、72、および74で示される。
【0032】
エポチロンBヒドロキシラーゼをコードする配列番号1の核酸配列のクローニングは、細菌由来の6個のチトクロームP450遺伝子の核酸配列をアライニング(位置合わせ)することにより設計したPCRプライマーを用いて行った。以下のチトクロームP450遺伝子をアライニングした。
配列1: Locus: STMSUACB; 受託番号: M32238; 参考文献:Omer、C. A.、J. Bacteriol. 172: 3335-3345(1990)
配列2: Locus: STMSUBCB; 受託番号: M32239; 参考文献:Omer、C. A.、J. Bacteriol. 172: 3335-3345(1990)
配列3: Locus:AB018074(以前はSTMORFA); 受託番号:AB018074 ; 参考文献:Ueda、K.、J. Antibiot. 48: 638-646(1995)
配列4: Locus: SSU65940; 受託番号: U65940; 参考文献:Motamedi、H.、J. Bacteriol. 178: 5243-5248(1996)
配列5: Locus: STMOLEP; 受託番号: L37200; 参考文献:Rodriguez、A. M.、FEMS Microbiol. Lett. 127: 117-120(1995)
配列6: Locus: SERCP450A; 受託番号:M83110; 参考文献:Andersen、J. F. and Hutchinson、C. R.、J. Bacteriol. 174: 725-735(1992)。
【0033】
アラインメントは、Myers、E. W. and W. Miller. 1988. CABIOS 4: 1、11-17のアルゴリズム、Scientific and Educational Softwareのアラインプログラム(Durham、North Carolina、USA)の実施により行った。3つの高度に保存された領域が、酸素結合ドメインを含むI-らせん、B-突出部に及ぶK-らせん、および保存されたヘム結合ドメインを含むL-らせんに同定された。アラインメントにおいて同定された3つの保存領域に対してプライマーを設計した。プライマーP450-1+(配列番号23)およびP450-la+(配列番号24)はI-らせんから設計し、プライマーP450-2+(配列番号25)はB-突出部およびL-らせん領域から設計し、またプライマーP450-3-(配列番号27)はヘム結合タンパク質に対する逆相補物として設計した。
【0034】
次に、ゲノム断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。PCR増幅後、反応生成物をゲル電気泳動で分離し、予想したサイズの断片を切り取った。DNAをQiaquickゲル抽出法(Qiagen、Santa Clarita、California、USA)を用いてアガロースゲルスライスから抽出した。次に、断片をPCRscriptベクター(Stratagene、La Jolla、California、USA)にPCRscript Ampクローニングキット(Stratagene)を用いてクローンした。挿入物を含むコロニーを100μg/mlアンピシリンを含む1-2mlのLBブロスにとった(30-37℃、16-24時間、230-300rpm)。プラスミドの単離をMo Bio miniplasmid prepキット(Mo Bio、Solano Beach、California、USA)を用いて行った。このプラスミドDNAをPCRおよびシーケンシングテンプレートとしてならびに制限消化分析に用いた。
【0035】
クローン化PCR産物をBig-Dyeシーケンシングキット(Applied Biosystems、Foster City、California、USA)を用いてシーケンスし、ABI310シーケンサー(Applied Biosystems、Foster City、California、USA)を用いて分析した。挿入物の配列を用い、Altschul、S. F et al.、Mol. Biol. 215: 403-410(1990)のプロトコールを用いる非冗長タンパク質データベースのTblastX検索を行った。既知のチトクロームP450タンパク質と有意な類似性を有するユニークな配列が維持された。このアプローチを用いて合計9個の異なるP450配列をSC15847から同定し、ゲノムDNA鋳型から7個、cDNAから2個が同定された。2個のP450配列が該DNAとcDNA鋳型で共通であることがわかった。分析した50個のcDNAクローンのうち2個の配列が優性であり、各20クローンであった。次に、これら2個の遺伝子をゲノムDNAからクローンした。
【0036】
ゲノムDNAの核酸配列をBig-Dyeシーケンシングシステム(Applied Biosystems)を用いて決定し、ABI310シーケンサーを用いて分析した。この配列を配列番号1で表す。404アミノ酸および推定分子量44.7kDaのタンパク質をコードするオープンリーディングフレームがクローン化BglII断片内にみいだされた。このポリペプチドの推定アミノ酸配列を配列番号2で表す。このポリペプチドのアミノ酸配列はStreptonzyces tendaeのNikFタンパク質(Bruntner、C. et al、1999、Mol. Gen. Genet. 262: 102-114)と51%の同一性およびS. carbophilus(Watanabe、I. Et al、1995、Gene 163: 81-85)のSca-2タンパク質と48%の同一性を共有することがわかった。これら酵素は共にチトクロームP450ファミリー105に属する。すべてのチトクロームP450酵素のヘム結合ドメインにみられた不変システインが残基356にみられる。エポチロンBヒドロキシラーゼのこの遺伝子はebhと名付けられている。64アミノ酸の推定フェレドキシン遺伝子のATG出発コドンがebhの終止コドンの9塩基対下流であることがわかる。この酵素は、S. griseoulus(O'Keefe、D. P. et al、1991、Biochemistry 30: 447-455) および S.noursei (Brautaset、T. et al、2000、Chem. Biol. 7: 395-403) のフェレドキシン遺伝子と50%の同一性を有することがわかった。このフェレドキシンをコードする核酸配列を配列番号3に示し、このフェレドキシンポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0037】
ebh遺伝子配列を用いて他の微生物由来の変異体チトクロームP450遺伝子も単離した。本発明の典型的変異体ポリヌクレオチドebh43491、ebhl4930、ebh53630、ebh53550、ebh39444、ebh43333、およびebh35165およびそれらが単離された種を下記表1に示す。これら変異体の核酸配列をそれぞれ配列番号36-42に示す。
表1: 変異体ポリヌクレオチド
【0038】
【表1】

【0039】
典型的変異体ebh43491、ebhl4930、ebh53630、ebh53550、ebh39444、ebh43333、およびebh35165によりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号43-49に示す。表2はこれら典型的変異体のアミノ酸置換の要約を示す。
表2:アミノ酸置換
【0040】
【表2】

【0041】
突然変異をebh遺伝子のコーディング領域に導入し、改善された収量(収率)および/または生物変換率および/または基質特異性の変化を有する突然変異体を同定した。本発明の典型的変異体核酸配列を配列番号30、32、34、60、62、64、66、68、70、72、および74に示す。
【0042】
配列番号30の核酸配列は、変化した基質特異性を有する突然変異体ebh25-1をコードする。この突然変異体遺伝子を含むプラスミドpANT849ebh25-1をブダペスト条約の規定のもと国際寄託機関に寄託し、受託された。寄託は2002年11月21日にAmerican Type Culture Collection(10801 University Boulevard、Manassas、Virginia 20110-2209)になされた。ATCC受託番号はPTA-4809である。このプラスミドに対するすべての一般アクセス上の制限は本特許出願に対する特許付与により取り消し不能に除去される。寄託物は寄託の日後30年間または試料の最終要求後5年間、または特許の存続期間のいずれか長い方の期間公共の寄託機関に維持される。上記プラスミドは寄託の時に生存能力があった。寄託物は生存能力のある試料を寄託機関が供給することができない場合は交換される。
【0043】
突然変異25(プライマーNPB29-mut25f(配列番号58)およびNPB29-mut25r(配列番号59)のスクリーニングにおいて同定されたこのS.lividans形質転換体はエポチロンBまたはエポチロンFとHPLC溶出時間の異なる生成物を生じることがわかった。この未知の試料はLC-MSにより分析され、分子量523(M.W.)を有し、一ヒドロキシル化エポチロンBのと一致した。プラスミドDNAをS.lividans培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型として用いた(実施例17参照)。予期した断片を得、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh25-1突然変異体は、タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる2つの突然変異(アスパラギン195がセリンに変化し、セリン294がプロリンに変化している)を有することがわかった。コドン238の突然変異標的位置は、該タンパク質のアミノ酸配列の変化を生じない2つのヌクレオチド変化を有することがわかった。配列番号30によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号31に示す。
【0044】
配列番号32の核酸配列は突然変異体 ebhlO-53をコードし、改良された生物変換収量を示す。突然変異10(プライマーNPB29-mut10f(配列番号54)およびNPB29-mut10r(配列番号55))のスクリーニングにおいて同定されたこのS.lividans形質転換体は、より高収量のエポチロンFを生じた。プラスミドDNAをS.lividans培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型に用いた(実施例16参照)。予想断片を得、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh10-53突然変異体は該タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる2つの突然変異(グルタミン酸231がアルギニンに変化し、フェニルアラニン190がチロシンに変化している)を有することがわかった。231位が突然変異誘発の標的であった(残基190の変化は偶発的な変化であり突然変異誘発法のアーチファクトである)。配列番号32によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号33に示す。
【0045】
配列番号34の核酸配列は、改良された生物変換収量をも示す突然変異体ebh24-16をコードする。突然変異24(プライマーNPB29-mut24f(配列番号56)およびNPB29-mut24r(配列番号57)のスクリーニングにおいて同定されたこのS.lividans形質転換体もより高収量のエポチロンFを生じた。プラスミドDNAをS.lividans培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型に用いた。予想断片を得、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh24-16 突然変異体は該タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる2つの突然変異(フェニルアラニン237がアラニンに変化し、イソロイシン92がバリンに変化している)を有することがわかった。237位は突然変異誘発の標的であった(残基92の変化は偶発的な変化であり突然変異誘発法のアーチファクトである)。配列番号34によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号35に示す。
【0046】
配列番号60の核酸配列は、改良された生物変換収量をも示す突然変異体ebh24-16d8をコードする。突然変異59(プライマーNPB29-mut59(配列番号70)のスクリーニングにおいて同定されたこのS.rimosus形質転換体ebh24-16d8もより高収量のエポチロンFを生じた。プラスミドDNAをS.rimosus培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型に用いた。予想断片を得、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh24-16d8 突然変異体は該タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる1突然変異(アルギニン67がグルタミンに変化している)を有することがわかった。この変化は突然変異誘発法のアーチファクトである。配列番号60によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号61である。
【0047】
配列番号62の核酸配列は、改良された生物変換収量を示す突然変異体ebh24-16c11をコードする。突然変異59(プライマーNPB29-mut59(配列番号70)のスクリーニングにおいて同定されたこのS.rimosus形質転換体ebh24-16c11もより高収量のエポチロンFを生じた。プラスミドDNAをS.rimosus培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型に用いた。予想断片を得、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh24-16c11突然変異体は該タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる2つのさらなる突然変異(アラニン93がグリシンに変化し、イソロイシン365がトレオニンに変化している)を有することがわかった。93位は突然変異誘発の標的であった(残基365の変化は突然変異誘発法のアーチファクトである)。配列番号62によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号63に示す。
【0048】
配列番号64の核酸配列は、改良された生物変換収量を示す突然変異体ebh24-16-16をコードする。ebh24-16のランダム突然変異体のスクリーニングにおいて同定されたこのS.rimosus形質転換体ebh24-16-16もより高収量のエポチロンFを生じた。プラスミドDNAをS.rimosus培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型に用いた。予想断片を単離し、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh24-16-16突然変異体は該タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる1のさらなる突然変異(バリン106がアラニンに変化している)を有することがわかった。配列番号64によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号65である。
【0049】
配列番号66の核酸配列は、改良された生物変換収量をも示す突然変異体ebh24-16-74をコードする。ebh24-16のランダム突然変異体のスクリーニングにおいて同定されたこのS.rimosus形質転換体ebh24-16-74もより高収量のエポチロンFを生じた。プラスミドDNAをS.rimosus培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型に用いた。予想断片を得、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh24-16-74突然変異体は該タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる1のさらなる突然変異(アルギニン88がヒスチジンに変化している)を有することがわかった。配列番号66によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号67である。
【0050】
配列番号68の核酸配列は、改良された生物変換収量を示す突然変異体ebh24-M18をコードする。ebhのランダム突然変異体のスクリーニングにおいて同定されたこのS.rimosus形質転換体ebhM-18もより高収量のエポチロンFを生じた。プラスミドDNAをS.rimosus培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型に用いた。予想断片を得、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh24M-18突然変異体は該タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる2つの突然変異(グルタミン酸31がリジンに変化し、メチオニン176がバリンに変化している)を有することがわかった。配列番号68によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号69に示す。
【0051】
配列番号72の核酸配列は、改良された生物変換収量を示す突然変異体ebh24-16g8をコードする。突然変異50(プライマーNPB29-mut50(配列番号71)のスクリーニングにおいて同定されたこのS.rimosus形質転換体ebh24-16g8もより高収量のエポチロンFを生じた。プラスミドDNAをS.rimosus培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型に用いた。予想断片を得、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh24-16g8突然変異体は該タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる2つのさらなる突然変異(メチオニン176がアラニンに変化し、イソロイシン130がトレオニンに変化している)を有することがわかった。176位は突然変異誘発の標的であった(残基130の変化は突然変異誘発法のアーチファクトである)。配列番号72によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号73に示す。
【0052】
配列番号74の核酸配列は、改良された生物変換収量を示す突然変異体ebh24-16b9をコードする。突然変異50(プライマーNPB29-mut50(配列番号71)のスクリーニングにおいて同定されたこのS.rimosus形質転換体ebh24-16b9もより高収量のエポチロンFを生じた。プラスミドDNAをS.rimosus培養から単離し、プライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCR増幅の鋳型に用いた。予想断片を単離し、Big-Dyeシーケンシングシステムを用いてシーケンシングした。ebh24-16b9突然変異体は該タンパク質のアミノ酸配列に変化を生じる2つのさらなる突然変異(メチオニン176がセリンに変化し、アラニン140がトレオニンに変化している)を有することがわかった。176位は突然変異誘発の標的であった(残基140の変化は突然変異誘発法のアーチファクトである)。配列番号74によりコードされる突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号75に示す。
【0053】
これら9の突然変異体遺伝子についてのプラスミドpANT849ebh-24-16、pANT849ebh-10-53、pANT849ebh-24-16d8、pANT849ebh-24-16c11、pANT849ebh-24-16-16、pant849ebh-24-16-74、pANT849ebh-24-16b9、pANT849ebh-M18、およびpANT849ebh-24-16g8からなる混合物は、ブダペスト条約の規定のもと国際寄託機関に寄託し、受託された。寄託は2002年11月21日にAmerican Type Culture Collection(10801 University Boulevard、Manassas、Virginia 20110-2209)になされた。ATCC受託番号はPTA-4808である。このプラスミドに対する一般アクセス上の制限は本特許出願に対する特許付与により取り消し不能に除去される。寄託物は寄託の日後30年間または試料の最終要求後5年間、または特許の存続期間のいずれか長い方の期間公共の寄託機関に維持される。上記プラスミド混合物は寄託の時に生存能力があった。寄託物は生存能力のある試料を寄託機関が供給することができない場合は交換される。
【0054】
すなわち、本発明の別の局面は、エポチロンBヒドロキシラーゼおよびその変異体および突然変異体の単離されたポリペプチドおよびフェレドキシンまたはその変異体の単離されたポリペプチドを提供することである。本発明のある態様において、「ポリペプチド」は、配列番号2のアミノ酸配列ならびにこのエポチロンBヒドロキシラーゼと本質的に同じ生物活性および/または機能を保持する断片または変異体を含むことを意味する。本発明の別の態様において、「ポリペプチド」は、配列番号4のアミノ酸配列ならびにこのフェレドキシンと本質的に同じ生物活性および/または機能を保持する断片または変異体を含むことを意味する。
【0055】
本明細書で用いている「変異体」は、配列番号2または4と同様の生物活性および/または機能を有することが示されている配列番号2または4と比べて保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むことを意味する。「保存的アミノ酸置換」は、脂肪族アミノ酸、例えばAla、Val、LeuおよびIle、ヒドロキシル残基SerおよびThr、酸性残基AspおよびGlu、ならびにアミド残基AsnおよびGlnの1つを別の物に置換することを含むことを意味する。本発明の典型的変異体アミノ酸配列を配列番号43-49に示し、これら典型的変異体のアミノ酸置換を上記表2に示す。
【0056】
本明細書で用いている「突然変異体」は、配列番号1または3と比べて1またはそれ以上の核酸の点突然変異または欠失若しくは付加を有するが、依然として配列番号1または3によりコードされるポリペプチドと同様の活性を有する核酸配列によりコードされるポリペプチドを含むことを意味する。好ましい態様において、突然変異はそれによりコードされるポリペプチドの基質特異性および/または収量を変化させる核酸に対して実施する。エポチロンBヒドロキシラーゼ遺伝子に関して好ましい突然変異の領域は、該酵素の活性物を含む約113アミノ酸残基をコードする核酸配列の領域である。配列番号1のアミノ酸位GLU31、ARG67、ARG88、ILE92、ALA93、VAL106、ILE130、ALA140、MET176、PHE190、GLU 231、SER294、PHE237、またはILE365に少なくとも1のアミノ酸置換を有する突然変異体も好ましい。典型的突然変異体ebh25-1、ebh10-53、ebh24-16、ebh24-16d8、ebh24-16c11、ebh24-16-16、ebh24-16-74、ebh24-16g8、ebh24-16b9、および本発明の該突然変異体をコードする核酸配列をそれぞれ配列番号31、33、35、61、63、65、67、69、71、73および75、ならびに配列番号30、32、34、60、62、64、66、68、70、72および74に示す。
【0057】
エポチロンBヒドロキシラーゼの3次元モデルは、ホモローガスなタンパク質 EryF(PDB Code 1KIN A鎖)の既知の構造に基づいてGreer et al.(Comparative modeling of homologous Proteins. Methods In Enzymology202239-52、1991)、Lesk et al.(Homology Modeling: Inferences from Tables of Aligned Sequences. Curr. Op. Struc. Biol.(2)242-247、1992)、およびCardozo et al.(Homology modeling by the ICM method. Proteins 23、403-14、1995)の一般的開示にしたがっても構築されている。これら配列間の相同性は34%である。エポチロンBヒドロキシラーゼ(配列番号2)およびEryF(PDB Code 1KIN A鎖; 配列番号76)の配列のアラインメントを図3に示す。EryFとの配列アラインメントに基づくエポチロンBヒドロキシラーゼのホモロジーモデルを図4に示す。
【0058】
EryF(PDBコード1JIN)に対するエポチロンBヒドロキシラーゼモデルのエネルギープロットも作製し、図5に示す。51残基の平均ウインドウサイズを特定残基位置で用い、該特定残基が中心位置にある配列の51残基の平均エネルギーを計算した。図5に示すように、該配列に沿ったすべてのエネルギーはゼロ以下であり、図4および別表1に示す該モデル構造が妥当であることを示唆する。
【0059】
図4のエポチロンBヒドロキシラーゼのホモロジーモデルに示す三次元構造は別表1に示す構造座標のセットにより定義される。用語「構造座標」は、ホモロジーモデルの構築により生じたデカルト(直交)座標を表す。しかしながら、当業者が理解するであろうように、タンパク質の構造座標のセットは三次元の形を定義する点の相対的セットである。すなわち、完全に異なる座標のセットが同様または同一の形を定義することもあり得る。さらに、異なるアラインメント鋳型を用い、および/またはホモロジーモデルを生じる異なる方法を用いて同様のホモロジーモデルを作製することから生じる個々の座標のわずかな変動の全体の形に対する影響はわずかであろう。座標の変動は構造座標の数学的操作によっても生じることがある。例えば別表1に示す構造座標のセットは構造座標の分割(fractionalization)、構造座標のセットに対する整数の加減、構造座標の変換、または上記のあらゆる組み合わせにより操作することができよう。
【0060】
したがって、分子またはその部分が同じと考えることについて上記エポチロンBヒドロキシラーゼのすべてまたは部分と十分類似するか否かを検討するには種々のコンピューター分析が必要である。そのような分析は最近のソフトウエアアプリケーション、例えばSYBYLバージョン6.7またはINSIGHTII(Molecular Simulations Inc.、San Diego、CA)バージョン2000を添付のユーザーガイドに記載のごとく用いて実施することができよう。
【0061】
例えば、プログラムSYBYLの重ね合わせツールにより異なる構造と同じ構造の異なるコンフォメーションを比較することができる。構造を比較するのにSYBYLにおいて用いた方法は以下の4工程に分けられる:
1)比較する構造をロードする;
2)これら構造の原子当量を限定する;
3)適合操作を行う;
4)結果を分析する。各構造は名前により同定する。ある構造は標的(すなわち固定構造)として同定され、二次構造(すなわち可動構造)はソース構造として同定される。
SYBYL内の原子当量はユーザー入力により定義されるので、本発明のこの局面のために当量原子は比較する2つの構造間のすべての保存残基についてタンパク質基本骨格原子(N、Cα、CおよびO)として定義される。さらに、リジットフィッティング操作のみが考慮される。リジットフィッティング法を用いると、正常に機能する構造が翻訳され、標的構造との最適適合が得られるように回転する。フィッティング操作は、当量原子の特定ペアに対するフィットの二乗平均平方根偏差が絶対最小値になるように可動構造に適用する最適翻訳および回転を計算する。この数(Å)はSYBYLにより報告される。
【0062】
本発明の目的において、別表1に記載の構造座標で示される対応基本骨格原子上に重ね合わせると約4.0Å以下の保存残基の基本骨格原子(N、Cα、C、O)の二乗平均平方根偏差を有するエポチロンBヒドロキシラーゼのあらゆるホモロジーモデルは同じと考えられる。より好ましくは、該二乗平均平方根偏差は約3.0Å以下である。より好ましくは、該二乗平均平方根偏差は約2.0Å以下である。
【0063】
本発明の目的において、別表1に記載の構造座標で示される対応基本骨格原子上に重ね合わせると約2.0Å以下の保存残基の基本骨格原子(N、Cα、C、O)の二乗平均平方根偏差を有するエポチロンBヒドロキシラーゼのあらゆるホモロジーモデルは同じと考えられる。より好ましくは、該二乗平均平方根偏差は約1.0Å以下である。
本発明の別の態様において、基本骨格原子が対応基本骨格原子に重ね合わせると低二乗平均平方根偏差を有する他の要素で置換されている構造モデルが同じと考えられる。例えば、最初の基本骨格炭素および/または窒素および/または酸素原子が別表1に記載の構造座標で示される対応基本骨格原子上に重ね合わせると約4.0Å、より好ましくは約3.0Å、より好ましくは約2.0Å以下の二乗平均平方根偏差を有する他の要素で置換するホモロジーモデルは同じと考えられる。
【0064】
用語「二乗平均平方根偏差(root mean square deviation)」は、平均からの偏差の平方の相加平均の平方根を意味する。傾向または対象からの偏差または変動を表現する方法である。本発明の目的において、「二乗平均平方根偏差」は本明細書に記載の構造座標により定義された複合体のエポチロンBヒドロキシラーゼ部分の基本骨格(backbone)の関連部分からのタンパク質の基本骨格の変動を定義する。
【0065】
ホモロジーモデルにより具体化される本発明はエポチロンBヒドロキシラーゼのさらなる突然変異体の構造ベースの設計を可能にする。例えば、現在、本発明のホモロジーモデルを用いてエポチロンBヒドロキシラーゼの結合部位の10Å内にある残基が定義されている。これら残基には以下のものが含まれる:別表1記載のLEU39、GLN43、ALA45、MET57、LEU58、HIS62、PHE63、SER64、SER65、ASP66、ARG67、GLN68、SER69、LEU74、MET75、VAL76、ALA77、ARG78、GLN79、ILE80、ASP84、LYS85、PRO86、PHE87、ARG88、PR089、SER90、LEU91、ILE92、ALA93、MET94、ASP95、HIS99、ARG103、PHE110、ILE155、PHE169、GLN170、CYS172、SER173、SER174、ARG175、MET176、LEU177、SER178、ARG179、ARG186、PHE190、LEU193、VAL233、GLY234、LEU235、ALA236、PHE237、LEU238、LEU239、LEU240、ILE241、ALA242、GLY243、HIS244、GLU245、THR246、THR247、ALA248、ASN249、MET250、LEU283、THR287、ILE288、ALA289、GLU290、THR291、ALA292、THR293、SER294、ARG295、PHE296、ALA297、THR298、GLU312、GLY313、VAL314、VAL315、GLY316、VAL344、ALA345、PHE346、GLY347、PHE348、VAL350、HIS351、GLN352、CYS353、LEU354、GLY355、GLN356、LEU358、ALA359、GLU362、LYS389、ASP391、SER392、THR393、ILE394、およびTYR395。これらの位置の1またはそれ以上に突然変異を有する突然変異体は変化した生物学的機能および/または特異性を有する、すなわち本発明の好ましい突然変異体の別の態様を含むと予想される。好ましい突然変異体の別の態様は、約4.0Åまでの該エポチロンBヒドロキシラーゼの基本骨格原子からの二乗平均平方根偏差を有する分子である。
【0066】
エポチロンBヒドロキシラーゼホモロジーモデルまたはその部分の構造座標は機械的に読み取り可能な保存媒体に保存される。そのようなデータは薬剤の発見のような種々の目的に用いることができよう。
したがって、本発明の別の局面は別表1記載の構造座標によりコードされたデータ保存物質を含む機械的に読み取り可能なデータ保存媒質に関する。
【0067】
エポチロンBヒドロキシラーゼの三次元モデル構造を用いて該酵素の生物学的機能のモジュレーターおよび潜在的基質を同定することもできる。種々の方法またはその組み合わせを用いてそのようなモジュレーターを同定することができる。
【0068】
例えば、別表1に従ってエポチロンBヒドロキシラーゼ中の結合部位に空間的に適合する被検化合物を設計することができる。
アミノ酸 LEU39、GLN43、ALA45、MET57、LEU58、HIS62、PHE63、SER64、SER65、ASP66、ARG67、GLN68、SER69、LEU74、MET75、VAL76、ALA77、ARG78、GLN79、ILE80、ASP84、LYS85、PR086、PHE87、ARG88、PRO89、SER90、LEU91、ILE92、ALA93、MET94、ASP95、HIS99、ARG103、PHE110、ILE155、PHE169、GLN170、CYS172、SER173、SER174、ARG175、MET176、LEU177、SER178、ARG179、ARG186、PHE190、LEU193、VAL233、GLY234、LEU235、ALA236、PHE237、LEU238、LEU239、LEU240、ILE241、ALA242、GLY243、HIS244、GLU245、THR246、THR247、ALA248、ASN249、MET250、LEU283、THR287、ILE288、ALA289、GLU290、THR291、ALA292、THR293、SER294、ARG295、PHE296、ALA297、THR298、GLU312、GLY313、VAL314、VAL315、GLY316、VAL344、ALA345、PHE346、GLY347、PHE348、VAL350、HIS351、GLN352、CYS353、LEU354、GLY355、GLN356、LEU358、ALA359、GLU362、LYS389、ASP391、SER392、THR393、ILE394、およびTYR395により定義されるエポチロンBヒドロキシラーゼの結合領域の10Å内のアミノ酸の構造座標、および配位ヘム基、HEM1を用いて該モジュレーターの所望の構造的および化学的特徴を同定することもできる。次に、同定した構造的または化学的特徴を用いて潜在的エポチロンBヒドロキシラーゼリガンドとして化合物を設計または選択することができる。構造的および化学的特徴は、限定されるものではないが共有結合、ファンデルワールス相互作用、水素結合相互作用、荷電相互作用、疎水結合相互作用、および双極子相互作用を含むことを意味する。次に、潜在的エポチロンBヒドロキシラーゼリガンドとして同定された化合物を合成し、被検化合物のエポチロンBヒドロキシラーゼに対する結合により特徴付けられるアッセイを用いるかまたは低分子存在下でプロテアーゼ標的を調節するエポチロンBヒドロキシラーゼの能力の特徴づけを用いてスクリーニングする。
【0069】
当業者がこの開示により理解するであろうように、他の構造ベースの設計方法も用いることができる。種々のコンピューター構造ベースの設計方法が当該分野で開示されている。例えば、エポチロンBヒドロキシラーゼの配列およびエポチロンBヒドロキシラーゼ構造(すなわち、別表1記載のエポチロンBヒドロキシラーゼの原子座標および/または上記結合領域の10Å内の原子座標)を入力できる多くのコンピューターモデリングシステムが利用可能である。次に、このコンピューターシステムは潜在的エポチロンBヒドロキシラーゼモジュレーターが結合する1またはそれ以上のこれら領域の構造的詳細をもたらし、潜在的モジュレーターの相補的構造の詳細を決定することができる。これらモデリング系における設計は、一般にエポチロンBヒドロキシラーゼと物理的および構造的に結合することができる化合物に基づく。さらに、該化合物は、エポチロンBヒドロキシラーゼとの結合を可能にするコンフォメーションをとらなければならない。あるモデリング系は、実際に合成し試験する前にエポチロンBヒドロキシラーゼ基質またはモジュレーターの潜在的阻害または結合作用を推定する。
【0070】
特定タンパク質標的と結合する能力に関する化学的実体または断片のスクリーニング方法もよく知られている。しばしばこれら方法はコンピュータースクリーン上の結合部位の視覚的検査により開始する。次に選択した断片または化学的実体をエポチロンBヒドロキシラーゼの結合領域に位置合わせする。結合はソフトウエア、例えばINSIGHTII、QUANTA、およびSYBYL、次いでMMFF、CHARMM、およびAMBERのような標準的分子機械力場を用いるエネルギー最小化ならびに分子力学を用いて達成される。本発明において有用な化学的断片または化学的実体の選択を支援するコンピュータープログラムの例には、限定されるものではないがGRID(Goodford、1985)、AUTODOCK(Goodsell、1990)、およびDOCK(Kuntz et al. 1982)が含まれる。
【0071】
好ましい化学的実体または断片の選択において、それらの互いのおよびエポチロンBヒドロキシラーゼとの関係を可視化し、次いで単一の潜在的モジュレーターに組み立てる。個々の化学的実体を組み立てるのに有用なプログラムには、限定されるものではないがCAVEAT(Bartlett et al. 1989)および3D Databaseシステム(Martin 1992)が含まれる。
【0072】
あるいはまた、空(empty)活性部位を用いるかまたは所望により既知のインヒビターのいくつかの部位を含む化合物をde novoで設計することができよう。このタイプの設計方法には、限定されるものではないがLUDI(Bohm 1992)およびLeapFrog(Tripos Inc.、St. Louis MO)が含まれる。
【0073】
プログラム、例えばDOCK(Kuntz et al. 1982)をホモロジーモデルからの原子座標と共に用い、活性結合領域と潜在的に結合し、合成および試験の適切な候補である潜在的リガンドをデータベースまたは視覚的データベースから同定することができる。
【0074】
本発明は、エポチロンBヒドロキシラーゼおよび本酵素の変異体もしくは突然変異体および/またはフェレドキシンまたはその活性断片を製造するための本発明のポリヌクレオチドを含むベクターおよび本発明のベクターで遺伝子操作される宿主細胞も提供する。一般的に、このためには該宿主細胞中でこれらポリペプチドを製造するためにポリヌクレオチドを維持し、増殖させ、または発現するのに適したあらゆるベクターを発現に用いることができよう。本発明のこの局面によればベクターは、例えばプラスミドベクター、一本鎖または二本鎖ファージベクター、または一本鎖または二本鎖RNAまたはDNAウイルスベクターであってよい。ベクターは染色体外であるか、または宿主染色体内に統合されるように設計することができよう。そのようなベクターには限定されるものではないが染色体、エピソーム、およびウイルス由来ベクター、例えば細菌プラスミド由来のベクター、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体要素、およびウイルス、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、SV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、およびレトロウイルス、ならびにその組み合わせ由来のベクター、例えばプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝子要素、コスミドおよびファージミッド由来のものが含まれる。
【0075】
原核性宿主の有用な発現ベクターには、限定されるものではないが細菌プラスミド、例えばpBluescript、pGEX-2T、pUCベクター、pETベクター、ColE1、pCR1、pBR322、pMB9、pCW、pBMS200、pBMS2020、PIJ101、PU702、pANT849、pOJ260、pOJ446、pSET152、pKC1139、pKC1218、pFD666、およびその誘導体を含むE. coli、BacillusまたはStreptomyces由来のもの、より広い宿主範囲のプラスミド、例えばRP4、ファージDNA、例えばファージλの多くの誘導体、例えば、NM989、λGT10、およびλGT11、および他のファージ、例えばM13および糸状一本鎖ファージDNAが含まれる。
【0076】
酵母に用いる本発明のベクターは典型的には酵母に用いるのに適した複製起点および酵母中で機能的な選択可能なマーカーを含むであろう。本発明において有用な酵母ベクターの例には、限定されるものではないが酵母統合プラスミド(例えば、YIp5)および酵母複製プラスミド(YRpおよびYEpシリーズプラスミド)、酵母動原体プラスミド(YCpシリーズプラスミド)、YLp,pGPD-2,2μプラスミドと呼ばれる酵母線状プラスミドに基づく酵母人工染色体(YAC)およびその誘導体、ならびに改良シャトルベクター、例えば Gietz et al.、Gene、74:527-34(1988)(YIplac、YEplacおよびYCplac)に記載のものが含まれる。
【0077】
組換え発現に有用な哺乳類ベクターは、ウイルス起源、例えばSV40起源(大T-抗原を発現する細胞株、例えばCOS1およびCOS7細胞における複製用)、パピローマウイルス起源、またはEBV起源(長期エピソーム複製用(例えば、EBV EBNA-1遺伝子産物およびアデノウイルスE1Aを構成的に発現する293-EBNA細胞において使用するための))を含むことができよう。哺乳類細胞における発現は、限定されるものではないがpSV2、pBC12BI、およびp91023、pCDNベクター、および溶解性ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、およびバキュロウイルス)、エピソームウイルスベクター(例えば、ウシパピローマウイルス)、およびレトロウイルスベクター(例えばネズミレトロウイルス)を含む種々のプラスミドを用いて達成することができる。昆虫細胞用の有用なベクターにはバキュロウイルスベクターおよびpVL941が含まれる。
【0078】
mRNA転写を導く適切なプロモーターの選択および発現ベクターの構築はよく知られている。しかしながら、一般的に、発現構築物は転写開始および終止のための部位、および転写される領域中に翻訳のためのリボソーム結合部位を含むであろう。構築物により発現した成熟転写物のコーディング部分は翻訳するポリペプチドの開始部に翻訳開始コドンおよび終止部に適切に位置する終止コドンを含むであろう。
【0079】
原核生物の有用なプロモーターの例には、限定されるものではないがファージプロモーター、例えばファージλpLプロモーター、trcプロモーター、trpおよびlacプロモーター由来のハイブリッド、バクテリオファージT7プロモーター、TACまたはTRC系、ファージλの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、snpAプロモーター、melCプロモーター、ermE*プロモーター、またはaraBADオペロンが含まれる。酵母の有用なプロモーターの例には、限定されるものではないがCYC1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH1プロモーター、酵母α接合系のプロモーター、およびGPDプロモーターが含まれる。哺乳類発現ベクターに常套的に使用されるプロモーターの例には、限定されるものではないがCMV前初期(immediate early)プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、レトロウイルスLTRのプロモーター、例えばラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター、およびメタロチオネインプロモーター、例えばマウスメタロチオネイン-Iプロモーターが含まれる。
【0080】
ポリヌクレオチドを含むベクターは、感染、形質導入、トランスフェクション、トランスベクション、および形質転換を含む多くのよく知られた技術を用いて宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドを単独または例えば選択可能なマーカーまたはフェレドキシン還元酵素をコードするさらなるポリヌクレオチドと共に宿主に導入することができよう。本発明の好ましい態様において、エポチロンBヒドロキシラーゼおよびフェレドキシンのポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する。種々の発現構築物のための宿主細胞はよく知られており、当業者は本発明のこの局面に従ってエポチロンBヒドロキシラーゼおよび/またはフェレドキシンを発現するための宿主細胞を常套的に選択することができる。本発明において有用な哺乳類発現系の例には、限定されるものではないがC127、3T3、CHO、HeLa、ヒト腎293およびBHK細胞株、およびサル腎繊維芽細胞のCOS-7株が含まれる。
【0081】
あるいはまた、本明細書に例示するようにエポチロンBヒドロキシラーゼおよびフェレドキシンは微生物中で組換え的に発現させることができる。
【0082】
したがって、本発明の別の局面は、エポチロンBヒドロキシラーゼを単独またはフェレドキシンと組み合わせて発現し、末端アルキル基を有する化合物、特にエポチロンをヒドロキシル化して末端ヒドロキシル基を有するものを生成することができる組換え生成微生物に関する。組換え生成微生物は、エポチロンBヒドロキシラーゼをコードする核酸配列を含むプラスミドで細菌細胞のような細胞を形質転換することにより生成される。好ましい態様において、該細胞をエポチロンBヒドロキシラーゼまたはその突然変異体または変異体をコードする核酸、ならびにエポチロンBヒドロキシラーゼ遺伝子の下流に位置するフェレドキシンをコードする核酸配列を含むプラスミドで形質転換する。本発明の組換え微生物を製造するためにこれらプラスミドで形質転換することができる微生物の例には、限定されるものではないがEscherichia coli、Bacillus megateriurn、Amycolatopsis orientalis、Soraragium cellulosum、Rhodococcus erythropolis、およびStreptomyces種、例えばStreptomyces lividans、Streptomyces virginiae、Streptomyces venezuelae、Streptomyces albus、Streptomyces coelicolor、Streptomyces rimosus、およびStreptomyces griseusが含まれる。
【0083】
本発明の組換え的に製造される微生物は、末端ヒドロキシアルキル基を含む化合物、特にエポチロンを製造するための細菌処理または方法に有用である。一般的に、ヒドロキシアルキル保有生成物は、液内好気条件下、同化炭素および窒素の供給源を含む水性窒素媒質中の適切な基質の存在下で末端炭素またはアルキルを選択的にヒドロキシル化することができる組換え的に製造した微生物を培養するかまたはそれから誘導される酵素により製造することができる。
【0084】
本発明の方法に基質として用いる適切なエポチロンは、本発明の酵素的ヒドロキシル化を受けることができる末端炭素または末端アルキル基を有するあらゆるそのような化合物であってよい。出発物質、すなわち基質は、天然の供給源、例えばSorangium cellulosumから単離することができるか、または合成的に形成されたエポチロンでありうる。酵素的ヒドロキシル化を受けることができる末端炭素または末端アルキル基を有する他の基質を本発明の方法に用いることができる。例えば、ヒドロキシル化すると化合物プラバスチンを形成するコンパクチンを基質として用いることができる。Actinomadura株によるコンパクチンのプラバスチンへのヒドロキシル化方法は米国特許5,942,423および米国特許6,274,360に記載されている。
【0085】
例えば、本発明の組換え微生物を用いて少なくとも1のエポチロンをWO 00/39276、米国特許出願No.09/468,854(1999年12月21日出願)の記載に従って製造することができる(この内容は本明細書の一部を構成する)。下記式Iのエポチロンを製造することができる。
HO-CH2-(A1)n-(Q)m-(A2)o-E (I)
[式中、A1およびA2は独立して所望により置換されたC1-C3アルキルおよびアルケニルの群から選ばれる;
Qは1〜3個の環を含み、少なくとも1個の環に少なくとも1の炭素-炭素二重結合を含む所望により置換された環系である;
n、m、およびoはOおよび1からなる群から選ばれる整数であり、mまたはnまたはoの少なくとも1つが1である;
Eはエポチロンコアである。]
本方法は、下記式II:
CH3-(A1)n-(Q)m-(A2)o-E (II)
[式中、A1、Q、A2、E、n、m、およびoは上記と同意義である。]
の少なくとも1のエポチロンを、式IIのヒドロキシル化を選択的に触媒し、該ヒドロキシル化を行うことができる組換え的に製造された微生物またはそれ由来の酵素と接触させる工程を含む。
【0086】
好ましい態様において、出発物質はエポチロンBである。エポチロンBはDE4138042およびWO93/10121に記載のごとくSorangiuna cellulosum So ce90の発酵から得ることができる。該株はDeutsche Sammlung von Mikroorganismen(German Collection of Microorganisms)(DSM)にNo.6773で寄託されている。発酵方法もHofle、G. et al.、Angew. Chem.Int. Ed. Engl.、Vol35、No.13/14、1567-1569 (1996) に記載されている。エポチロンBはMeng、D. et al.、J. Am. Chem. Soc.、Vol.119、No.42、10073-10092(1996); Nicolaou、K. et al.、J. Am. Chem.Soc.、Vol.119、No.34、7974-7991(1997);およびSchinzer、D. et al.、Chem. Eur. J.、Vol.5、No.9、2483-2491(1999)に記載したような化学的方法により得ることもできる。
【0087】
該方法に使用するために選ばれた組換え生成微生物の増殖は当業者が適切な栄養培地を用いて達成することができよう。組換え生成微生物の増殖に適した培地には細菌細胞の増殖に必要な栄養を提供するものが含まれる。例えば、T. Nagodawithana and J. M. Wasileski、Chapter 2:「Media Design for Industrial Fermentations」、Nutritional Requirements of Commercially Important Microorganism、T. W. Nagodawithana and G. Reed編、Esteekay Associates、Inc. 、Milwaukee、WI、18-45 (1998); T. L. Miller and B. W. Churchill、Chapter 10:「Substrates for Large-Scale Fermentations」、Manual of Industrial Microbiology and Biotechnology、A. L. Demain and N. A. Solomon編、American Society for Microbiology、Washington、D. C.、122-136 (1986)参照。典型的な増殖用培地は必須炭素源、窒素源、および微量元素を含む。誘導物質を培地に加えてもよい。本明細書で用いている用語誘導物質には組換え生成細菌細胞内で所望の酵素活性の形成を増強するあらゆる化合物が含まれる。本明細書で用いている典型的誘導物質は基質を溶解するのに用いる溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、エタノール、およびアセトンを含んでよい。さらにある基質、例えばエポチロンBも誘導物質と考えてよい。
【0088】
炭素源には、糖、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、グリセロール デンプンなど;有機酸、例えば酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど;およびアルコール、例えばエタノール、プロパノールなどを含むことができよう。好ましい炭素源には限定されるものではないがグルコース、フルクトース、ショ糖、グリセロール、およびデンプンが含まれる。
【0089】
窒素源には、N-ZアミンA、コーンスティープリカー、ダイズミール、牛肉エキス、酵母エキス、トリプトン、ペプトン、綿実ミール、ピーナッツミール、アミノ酸、例えばグルタミン酸ナトリウムなど、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどを含むことができよう。
【0090】
微量元素には、マグネシウム、マンガン、カルシウム、コバルト、ニッケル、鉄、ナトリウム、およびカリウム塩が含まれよう。ホスフェートも微量または好ましくは微量以上で含むことができよう。
【0091】
発酵に用いる培地には1またはそれ以上の炭素もしくは窒素源、または他の栄養を含むことができよう。
【0092】
本発明の方法に従った組換え生成微生物の増殖および/またはヒドロキシル化のための培地のpHは好ましくは約5〜約8であり、温度は約14℃〜約37℃であり、好ましくは温度は28℃である。反応の持続時間は1〜100時間、好ましくは8〜72時間である。
【0093】
培地を、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)でモニターし、生体内変換が完結するのに必定な時間インキュベーションする。典型的には、該変換が完結するのに必要な時間は基質添加後12〜100時間、好ましくは約72時間である。培地をロータリー攪拌機(New Brunswick Scientific Innova 5000)に置き、150〜300rpm、好ましくは約250rpm (2インチ行程)で操作する。
【0094】
ヒドロキシアルキル保有生成物は、他の既知の生物活性物質の回収に通常用いられる常套的手段により発酵ブロスから回収することができる。そのような回収手段の例には、限定されるものではないが酢酸エタノールなどのような常套的溶媒を用いる抽出、pH調整、常套的樹脂による処理、例えば陰イオンまたは陽イオン交換樹脂または非イオン吸着樹脂による処理、常套的吸着剤による処理、例えば蒸留、結晶化、または再結晶化などによる単離および精製が含まれる。
【0095】
生体内変換反応混合物から上記で得た抽出物はさらにカラムクロマトグラフィおよび分析的薄層クロマトグラフィにより単離および精製することができる。
【0096】
末端アルキル基を有するエポチロンを末端ヒドロキシアルキル基を有するエポチロンに生体内変換する本発明の組換え生成微生物の能力が証明された。これら実験において、実施例11により詳細に記載のebh遺伝子を有するプラスミドを含むStreptomyces lividansを含む培養を撹拌しながら30°で3日間エポチロンB懸濁液とインキュベーションした。インキュベーション試料を等量の25%メタノール:75%n-ブタノールで抽出し、渦撹拌し、次いで5分間静置した。200μlの有機相をHPLCバイアルに移し、HPLC/MS(実施例12)により分析した。エポチロンFの生成物ピークは保持時間15.9分間で溶出され、プロトン化分子量は524であった。エポチロンB基質は19.0分間で溶出され、プロトン化分子量は508であった。ピーク保持時間および分子量は既知の標準を用いて確認した。
【0097】
ebh発現細胞によるエポチロンBの生体内変換率をebh突然変異体による生体内変換率とも比較した。ebh発現細胞はS.lividans(pANT849-ebh)の凍結スポア調製物を含んだ。突然変異体を発現する細胞は、S.lividans(pANT849-ebh10-53)およびS.lividans(pANT849-ebh24-16)の凍結スポア調製物を含んだ。S.lividans TK24の凍結スポア調製物をコントロールとして用いた。細胞を30℃で数日間プレインキュベーションした。このプレインキュベーション後、100%EtOH中のエポチロンBを最終濃度0.05%重量/容量となるように各培養に加えた。次に、エポチロンBが48時間でエポチロンFに完全に変換されたS.lividans(pANT849-ebh24-16)培養を除き試料を0、24、48、および72時間で得た。試料をHPLCバイアルで分析した。結果を0時間のエポチロンBのパーセンテージとして計算した。
【0098】
エポチロンB:

【0099】
エポチロンF:

【0100】
コンパクチンをプラバスタチンに生体内変換するebh発現細胞の能力も試験した。これら実験において、S.lividans(pANT849)またはS.lividans(pANT849-ebh)の凍結スポア調製物を30℃で数日間増殖させた。プレインキュベーション後、各細胞培養のアリコートをポリプロピレン培養チューブに移し、コンパクチンを各培養チューブに加え、次いで該チューブを30℃、250rpmで24時間インキュベーションした。次に、培養ブロスのアリコートを抽出し、コントロールS.lividans(pANT849)培養と比べたコンパクチンおよびプラバスタチン値をHPLCにより測定した。
【0101】
出発コンパクチン濃度のパーセンテージで表したコンパクチンおよびプラバスタチン

【0102】
上記のように、突然変異体ebh25-1(配列番号30)は変化した基質特異性を示し、この突然変異体によるエポチロンBの生体内変換は、エポチロンBまたはエポチロンFとHPLC溶出時間が異なる生成物を生じた。この未知の試料はLC-MSにより分析され、一ヒドロキシル化エポチロンBと一致する分子量523(M.W.)を有することがわかった。生物内変換生成物の構造はMSおよびNMRデータに基づき24-ヒドロキシル-エポチロンBと決定された(エポチロンBのデータと比較)。
【0103】

24-ヒドロキシル-エポチロンB
式A
分子式:C27H41NO7S
分子量:523
マススペクトル:ES+(m/z):524([M+H]+),506
LC/MS/MS: +ESI(m/z):524、506、476、436、320
HRMS: [M+H]+ 理論値:524.2682;実測値:524.2701
HPLC(Rt)7.3分間(分析的HPLC系使用)
LC/NMR 化学シフトが観察された
Varian AS-600(プロトン:599.624MHz)、
溶媒D2O/CD3CN(δ 1.94):〜4/6
プロトン:δ7.30(s、1H)、6.43(s、1H)、5.30(m、1H)、4.35(m、1H)、3.81(m、1H)、3.74(m、1H)、3.68(m、1H)、3.43(m、1H)、2.87 (m、1H)、2.66(s、3H)、2.40(m、2H)、1.58(b、1H)、1.48(b、1H)、1.35(m、3H)、1.18(s、3H)、1.13(s、3H)、0.87(m、6H)
* 1.8-2.1ppm間のピークは溶媒抑制により観察されたかった。
【0104】
プロトン化学シフトは以下のごとく割り当てられた。
位置 プロトン パターン
1 --
2 2.40 m
3 4.35 m
4 --
5 --
6 3.43 m
7 3.68 m
8 1.58 m
9 1.35 b
10 1.48 b
10 1.35 b
11 SSP
12 --
13 2.87 m
14 SSP
15 5.30 m
16 --
17 6.43 s
18 --
19 7.30 s
20 --
21 2.66 s
22 1.18 s
23 0.87 m
24 3.81 m
24 3.74 m
25 0.87 m
26 1.13 s
27 SSP
* SSP:溶媒抑制により観察されず。
【0105】
したがって、本発明の組成物および方法は、微小管安定化剤である既知化合物、ならびに微小管安定化剤として有用であると予想される24-ヒドロキシル-エポチロンB(式A)のようなエポチロン類似体およびその医薬的に許容される塩を含む新規化合物を製造するのに有用である。これら組成物および方法を用いて製造した微小管安定化剤は限定されるものではないが以下のものを含む種々の癌および他の増殖性疾患の治療に有用である:
膀胱癌、乳癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、(子宮)頸癌、甲状腺癌、および皮膚癌(扁平上皮癌を含む)を含む癌;
白血病、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞白血病、およびバーキットリンパ腫を含むリンパ系の造血器腫瘍;
急性および慢性骨髄性白血病、および前骨髄性白血病を含む骨髄系造血器腫瘍;
繊維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;
メラノーマ、精上皮腫、奇形種、神経芽細胞腫、および神経膠腫を含む他の腫瘍;
星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、および神経鞘腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;
繊維肉腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;
メラノーマ、色素性乾皮膚症、ケラトアクタントーマ(keratoactanthoma)、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、および奇形種を含む他の腫瘍。
【0106】
本発明の組成物および方法を用いて製造される微小管安定化剤は血管新生も阻害し、腫瘍の成長に作用し、腫瘍および腫瘍関連疾患の治療をもたらすであろう。これら化合物のそのような抗血管新生特性は、限定されるものではないが網膜血管新生に関連するある形の失明、関節炎、特に炎症性関節炎、多発性硬化症、再狭窄(restinosis)、および乾癬を含む抗血管新生剤に反応する他の病状の治療にも有用であろう。
【0107】
本発明の組成物および方法を用いて製造される微小管安定化剤は、正常な成長および恒常性に重要な生理的細胞死の過程であるアポトーシスを誘導または阻害するであろう。アポトーシス経路の変化は種々のヒトの疾患の病因に寄与する。本発明の化合物、例えば式IおよびIIおよび式Aで示されるものは、アポトーシスのモジュレーターとして、限定されるものではないが癌および前癌病変、免疫応答関連疾患、ウイルス感染、筋基本骨格系の変性疾患、および腎疾患を含むアポトーシスの異常を伴う種々のヒトの疾患の治療に有用であろう。
【0108】
いかなる機序または形態学にも拘束されることを望まないが、本発明の組成物および方法を用いて製造される微小管安定化剤は、癌または他の増殖性疾患以外の病状の治療に用いることもできよう。そのような病状には、限定されるものではないがウイルス感染、例えばヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタインバーウイルス、シンドビスウイルス、およびアデノウイルス;自己免疫疾患、例えば全身エリテマトーデス、免疫関連糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、および自己免疫性糖尿病;神経変性性疾患、例えばアルツハイマー病、AIDS関連痴呆、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症、網膜色素変性症、脊髄性筋委縮症、および小脳変性症;AIDS;骨髄異形成症候群;再生不良性貧血;虚血性傷害関連心筋梗塞;脳梗塞および再還流傷害;再狭窄;不整脈;アテローム性動脈硬化症;毒素性またはアルコール性肝疾患;血液病、例えば慢性貧血および再生不良性貧血、筋骨格系の変性性疾患、例えば骨粗鬆症および関節炎;アスピリン感受性鼻副鼻腔炎;嚢胞性線維症;多発性硬化症;腎臓疾患;および癌痛が含まれる。
【0109】
以下の非限定的実施例により本発明をさらに例示する。
【実施例】
【0110】
実施例1:試薬
R2培地は以下のごとく作製した。
ショ糖(103g)、K2SO4(0.25g)、MgCl2・6H2O(10.12g)、グルコース(10g)、Difcoカザミノ酸(0.1g)、および蒸留水(800ml)を含む溶液を作製した。次に、80mlのこの溶液を2.2gのDifco Bacto寒天を含む200mlスクリューキャップボトルに注ぎ入れた。該ボトルに栓をし、オートクレーブした。使用時に培地を再融解し、以下のオートクレーブした溶液を記載した順に加えた。
1ml KH2PO4(0.5%)
8ml CaCl2-2H2O(3.68%)
1.5ml L-プロリン(20%)
10ml TES緩衝液(5.73%、pH7.2に調整)
0.2ml微量元素溶液(ZnCl2(40mg)、FeCl3・6H2O(200mg)、CuCl2・2H2O(10mg)、MnCl2・4H2O(10mg)、Na2B4O7・10H2O(10mg)、および(NH4)6Mo7O24・H2O含有)
0.5ml NaOH(lN)(滅菌不要)
0.5ml 栄養要求体のための必要な成長因子(ヒスチジン(50μg/ml);システイン(37μg/ml);アデニン、グアニン、チミジン、およびウラシル(7.5g/ml);およびビタミン(0.5g/ml)。
【0111】
R2YE培地はR2培地と同様に作製した。しかし、5mlのDifco酵母エキス(10%)を使用時に各100mlフラスコに加えた。
【0112】
P(プロトプラスト)緩衝液を以下のごとく作製した。
以下の構成の基礎溶液を作製した。
ショ糖(103g)
K2SO4(0.25g)
MgCl2・6H2O(2.02g)
R2培地で記載した微量元素溶液(2ml)
蒸留水で800mlとする。
【0113】
次に、基礎溶液の80mlアリコートを分注し、オートクレーブした。使用前に以下のものを記載した順に各フラスコに加えた。
1ml KH2PO4(0.5%)
10ml CaCl2・2H2O(3.68%)
TES緩衝液(5.75%、pH7.2に調整)
T(形質転換)緩衝液を以下の無菌溶液を混合して作製した。
25mlショ糖(10.3%)
75ml蒸留水
1ml R2培地で記載の微量元素溶液
1ml K2SO4(2.5%)
【0114】
次に以下を9.3mlのこの溶液に加える。
0.2ml CaCl2(5M)
0.5ml Trisマレイン酸緩衝液(マレイン酸を加えてpH8.0に調整したTrisの1M溶液から調製した)
使用するには、上記溶液の3部(容量)を予めオートクレーブで滅菌したPEG1000の1部(重量)に加える。
L(溶解)緩衝液を以下の滅菌溶液を混合して作製した。
100mlショ糖(10.3%)
10ml TES緩衝液(5.73%、pH7.2に調整)
1ml K2SO4(2.5%)
1ml R2培地で記載の微量元素溶液
1ml KH2PO4(0.5%)
0.1ml MgCl2・6H2O(2.5M)
1ml CaCl2(0.25M)
CRM培地
【0115】
以下の成分を含む溶液を1LのdH2Oで作製した:グルコース(10g)、ショ糖(103g)、MgCl2・6H2O(10.12g)、BBL(登録商標)トリプチケースソイブロス(15g)(Becton Dickinson Microbiology Systems、Sparks、Maryland、USA)、およびBBL(登録商標)酵母エキス(5g)(Becton Dickinson Microbiology Systems)。溶液を30分間オートクレーブした。チオストレプトンをプラスミドを増殖させた培地に10μg/mlの濃度で加えた。
エレクトロポーレーション緩衝液
【0116】
30%(wt/vol)PEG1000、10%グリセロール、および6.5%ショ糖を含む溶液をdH2Oで作製した。該溶液を0.22μmのセルロースアセテートフィルターを通して減圧ろ過滅菌した。
実施例2:SC15847株からの染色体DNAの抽出
【0117】
ゲノムDNAは、グアニジン-界面活性剤溶解法、DNAzol試薬(Invitrogen、Carlsbad、California、USA)を用いAmycolatopsis orientalisの土壌分離株、記号表示SC15847(ATCC PT-1043)から単離した。SC15847培養を、F7培地(グルコース2.2%、酵母エキス1.0%、麦芽エキス1.0%、ペプトン0.1%、pH7.0)中、28℃で24時間増殖させた。20mlの培養を遠心して回収し、20mlのDNAzolに再浮遊させ、ピペッティングして混合し、Beckman TJ6遠心器で10分間遠心した。10mlの100%エタノールを加え、数回反転し、次いで室温で3分間保存した。DNAを100%エタノールで洗浄したガラスピペットに巻きつけ、10分間空気乾燥した。ペレットを500μlの8mM NaOHに再懸濁し、溶解したら30μlの1M HEPES pH7.2で中和した。
実施例3: PCR反応
【0118】
200-500ngのゲノムDNAまたは1.0μlのcDNA、ホワードおよびリバースプライマー、およびP450-1+(配列番号23)またはP450-1a+(配列番号24)またはP450-2+(配列番号25)であるホワードプライマー、およびリバースプライマーP450-3-(配列番号27)またはP450-2-(配列番号26)を含むPCR反応液を容量50μlで調製した。すべてのプライマーを最終濃度1.4-2.0μMで加えた。PCR反応液を1μlのTaq酵素(2.5他に)(Stratagene)、5μlのTaq緩衝液、および4μlの2.5mM dNTPで調製し、dH2Oで50μlとした。繰り返し反応をGeneamp(登録商標)PCRシステムを用い以下のプロトコールで行った:95℃5分間、5サイクル[95℃30秒間、37℃15秒間(30%ramp)、72℃30秒間]、35サイクル(94℃30秒間、65℃15秒間、72℃30秒間)、72℃7分間。反応の予想サイズは、P450-1+(配列番号23)またはP450-1a+(配列番号24)およびP450-3-(配列番号27)プライマー対で340bp、P450-1+(配列番号23)およびP450-2-(配列番号26)プライマー対で240bp、およびP450-2+(配列番号25)およびP450-3-(配列番号27)プライマー対で130bpである。
実施例4: エポチロンBヒドロキシラーゼおよびフェレドキシン遺伝子のクローニング
【0119】
20μgのSC15847 ゲノムDNAを37℃で6時間BglII制限酵素で消化した。30k nanosep(ナノセプ)カラム(Gelman Sciences、Ann Arbor、Michigan、USA)を用いてDNAを濃縮し、酵素および緩衝液を除去した。反応液を40μlに濃縮し、200μlのTEで洗浄した。次に、消化生成物を0.7%アガロースゲルで分離し、12〜15kbの範囲のゲノムDNAを該ゲルから切り出し、Qiagenゲル抽出法を用いて精製した。次に、ゲノムDNAをBamHIで消化し、SAP I酵素(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、Indiana、catalog#1 758 250)で脱リン酸化したプラスミドpWB19N(米国特許5,516,679)と結合した。連結(ライゲーション)反応はT4 DNAリガーゼ(Invitrogen) 1Uを用い、容量15μlにて室温で1時間行った。1μlのライゲーションを100μlの化学的にコンピテントなDH10B細胞(Invitrogen)に写し、100μlを30μg/mlのネオマイシンを含むLB寒天プレート5枚に37℃で一夜培養した。
【0120】
5つのナイロン膜円(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、Indiana)に番号をつけ、方向がわかるよう目印をつけた。膜をプレート上に2分間置き、次いで5分間乾燥させた。次に、膜を、10% SDSで5分間、1.5M NaClを含む0.5N NaOHで5分間、1.0M Tris pH8.0を含む1.5M NaClで5分間、および2X SSCで15分間飽和したWhatmanフィルターディスク上に置いた。フィルターをSouthernハイブリダイゼーションについて先に記載したようにハイブリダイズした。ハイブリダイズするコロニーを30μg/mlネオマイシン含有TB 2mlにとり、37℃で一夜増殖させた。プラスミドDNAをminiprepカラム法(Mo Bio)を用いて単離した。このプラスミドをNPB29-1と名付けた。
実施例5: DNAシーケンシングおよび分析
【0121】
クローン化PCR生成物を蛍光色素標識ターミネーターサイクルシーケンシング、Big-Dyeシーケンシングキット(Applied Biosystems、Foster city、California、USA)を用いてシーケンシングし、レーザー誘発蛍光キャピラリー電気泳動、ABI Prism310シーケンサー(Applied Biosystems)を用いて分析した。
実施例6: 全RNAの抽出
【0122】
全RNAをフェノールおよびグアニジンイソチオシアネート、Trizol試薬(Invitrogen)の単相溶液を用いるChomczynskiおよびSacchi法の変法を用いてSC15847培養から単離した。5mlのSC15847凍結保存培養を解凍し、これを用いて500ml三角フラスコ中の100mlのF7培地に接種した。培養を振盪インキュベーターを用い230rpmで30℃20時間、光学密度が600nm(OD600)で9.0になるまで増殖させた。培養を16℃振盪インキュベーター中、230rpmで20分間置いた。55mgのエポチロンBを1mlの100%エタノールに溶解し、培養に加えた。0.5mlのエタノールを用いて残存エポチロンBをチューブからリンスし、培養に加えた。培養を16℃、230rpmで30時間インキュベーションした。30mlの培養を50mlチューブに写し、150mgのリゾチームを培養に加え、次いで培養を室温で5分間インキュベーションした。10mlの培養を50ml Falconチューブに入れ、TJ6遠心器中、4℃で5分間遠心した。2mlのクロロホルムを加え、チューブを15秒間勢いよく混合した。チューブを室温で2分間インキュベーションし、次いでTJ6遠心器中、最高速度で10分間遠心した。水性層を未使用チューブに移し、2.5mlのイソプロパノールを加えてRNAを沈殿させた。チューブを室温で10分間インキュベーションし、次いで4℃で10分間遠心した。上清を除去し、ペレットを70%エタノールでリンスし、減圧下で短時間乾燥した。ペレットを150μlのRNアーゼ不含dH2Oに再懸濁した。50μlの7.5M LiClをRNAに加え、-20℃で30分間インキュベーションした。RNAを微量遠心器中、4℃で10分間遠心してペレットにした。ペレットを200μlの70%エタノールでリンスし、減圧下で短時間乾燥し、次いで150μlのRNアーゼ不含dH2Oに再懸濁した。
【0123】
RNAをDNアーゼI(Ambion、Austin、Texas、USA)で処理した。25μlの全RNA(5.3μg/μl)に2.5μlのDNアーゼI緩衝液、1.0μlのDNアーゼIを加え、37℃で25分間インキュベーションした。5μlのDNアーゼI不活化緩衝液を加え2分間インキュベーションし、1分間遠心し、次いで上清を未使用チューブに移した。
実施例7: cDNA合成
【0124】
cDNAをSuperscriptII酵素(Invitrogen)を用いて全RNAから合成した。反応液を1μlの全RNA(5.3μg/μl)、9μlのdH2O、1μlのdNTP混合物(10mM)、および1μlのランダムヘキサマーを用いて調製した。反応液を65℃で5分間インキュベーションし、次いで氷上に置いた。次に、以下の成分を加えた:4μlの第1鎖緩衝液、1μlのRNアーゼ阻害剤、2.0μlの0.1M DTT、および1μlのSuperscriptII酵素。反応液を室温で10分間、42℃で50分間、および70℃で15分間インキュベーションした。1μlのRNアーゼHを加え、37℃で20分間、70℃で15分間インキュベーションし、次いで4℃に保存した。
実施例8: DNA標識
【0125】
ゲノムDNAおよびcDNA由来のP450特異的生成物を増幅するのに用いるPCR条件を用いてプラスミドpCRscript-29の挿入物を増幅した。プラスミドpCRscript-29は、プライマーP450 1+(配列番号23)およびP450 3-(配列番号27)を用いてSC15847ゲノムDNAから増幅した340bp PCR断片を含む。2μlのプラスミドprepを鋳型に用いて合計25サイクル行った。増幅生成物をQiaquickゲル抽出システム(Qiagen)を用いてゲル精製した。抽出DNAをエタノール沈殿し、5μlのTEに再浮遊させ、収量を500ngと推定した。この断片をchem結合標識試薬(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、Indiana catalog#1836463)を用いてジゴキシゲニンで標識した。5μlのPCR生成物を0.5μlのDig-chem結合と混合し、次いでdH20を加えて20μlとした。反応液を85℃で30分間インキュベーションし、5μlの停止溶液を加えた。プローブ濃度は20ng/μlと推定された。
実施例9: Southern(サザン)DNAハイブリダイゼーション
【0126】
10μlのゲノムDNA(0.5μg/μl)をBamHI、BglII、EcoRI、HindIII、またはNotIで消化し、12ボルトで16時間分離した。ゲルを0.25N HCl中で10分間脱プリン化し、次いで減圧ブロッター(Bio-Rad Laboratories、Inc. Hercules、California、USA catalog#165-5000)を用い5"Hgに減圧して90分間、0.4N NaOH中ナイロン膜(Roche Molecular Biochemicals)に移した。膜を1M酢酸アンモニウムでリンスし、次いでStratalinker UV Crosslinker(Stratagene)を用いてUV架橋した。膜を2X SSCでリンスし、室温に保存した。
【0127】
膜を20mlのDig Easy Hyb緩衝液(Roche Molecular Biochemicals)中で42℃で1時間プレハイブリダイズした。プローブを65℃で10分間変性させ、次いで氷上に置いた。濃度約20ng/mlのDig-Easy Hyb中プローブ5mlを膜と42℃で一夜インキュベーションした。膜を室温の0.1% SDS含有2X SCCで2回、次いで65℃の0.1% SDS含有0.5X SSCで2回洗浄した。膜をGenius緩衝液1(10mMマレイン酸、15mM NaCl; pH7.5; 0.3%v/v Tween20)(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、Indiana)で2分間平衡化し、次いで2%ブロッキング溶液(Genius緩衝液1中の2%ブロッキング試薬)(Roche Molecular Biochemicals Indianapolis、Indiana)で室温で1時間インキュベーションした。膜を50mlのブロッキング溶液中の1:20,000希釈の抗dig抗体で30分間インキュベーションした。膜を50mlのGenius緩衝液1で各15分間2回洗浄した。膜をGenius緩衝液3(10mM Tris-HCl、10mM NaCl; pH9.5)で2分間平衡化した。Genius緩衝液3中の1:100希釈のCSPD(2ナトリウム3-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2'-(5'-クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)フェニルホスフェート)(Roche Molecular Biochemicals)1mlを膜に加え、室温で5分間インキュベーションし、次いで37℃に15分間置いた。膜をBiomax MLフィルム(Kodak、Rochester、New York、USA)に1時間曝露した。
実施例10:E.coliの形質転換
【0128】
コンピテント細胞をInvitrogenから購入した。E.coli DH10B株をゲノムクローニングの宿主に用いた。化学的コンピテント細胞を氷上で解凍し、氷上の17x100-mmポリプロピレンチューブに100μlをアリコートした。1μのライゲーション混合物を細胞に加え、氷上で30分間インキュベーションした。細胞を42℃で45秒間インキュベーションし、次いで氷上に1-2分間置いた。0.9mlのSOC.培地(Invitrogen)を加え、細胞を30-37℃、200-240rpmで1時間インキュベーションした。細胞を選択培地(それぞれ濃度30μg/mlまたは100μg/mlのネオマイシンまたはアンピシリンを含むLuria寒天)で培養した。
実施例11:Streptomyces lividans TK24の形質転換
【0129】
プラスミドpWB19N849を、プラスミドpWB19NをHindIIIで消化しSAPIで処理し、次いでプラスミド pANT849(Keiser et al.、2000、Practical Streptomyces Genetics、John Innes)をHindIIIで消化して構築した。2本の線状化断片を室温で1時間1UのT4 DNAリガーゼで連結した。1μlのライゲーション反応液を用いてXL-1 Blueエレクトロコンピテント細胞(Stratagene)を形質転換した。回収した細胞をLB ネオマイシン(30μg/ml)で37℃で一夜培養した。コロニーを30μg/mlネオマイシン含有LB 2mlにとり、30℃で一夜インキュベーションした。MoBio プラスミドminiprepをすべての培養に実施した。pWB19NおよびpANT849のライゲーションから構築したプラスミドを0.7%アガロース電気泳動の移動度により決定した。プラスミドpWB19N849をHindIIIおよびBglIIで消化し、BglIIおよびHindIIIで消化したプラスミド pANT849と同等の5.3kb断片を切り出した。この5.3kb断片をアガロースゲルで精製し、Qiaquickゲル抽出系を用いて抽出した。
【0130】
エポチロンBヒドロキシラーゼ遺伝子および下流フェレドキシン遺伝子を含む1.469kb DNA断片をPCRを用いて増幅した。50μlのPCR反応液は、5μlのTaq緩衝液、2.5μlグリセロール、1μlの20ng/μl NPB29-1プラスミド、0.4μlの25mM dNTP、各1.0μlのプライマーNPB29-6F(配列番号28)およびNPB29-7R(配列番号29)(5pmol/μl)、38.1μlのdH2O、および0.5μlのTaq酵素(Stratagene)からなった。反応はPerkin Elmer 9700を用い、95℃5分間、次いで30サイクル(96℃30秒間、60℃30秒間、72℃2分間)、および72℃7分間行った。PCR生成物をQiagen minielute(ミニ溶出)カラムを用い、PCRクリーンアップ法を用いて精製した。精製生成物をBglIIおよびHindIIIで消化し、0.7%アガロースゲルで精製した。1.469kbのバンドをゲルから切り出し、Qiagen minieluteカラムを用いて溶出した。5μlのこのPCR生成物を10μlのライゲーション反応液中の2μlのBglII、HindIII消化pANT849ベクターと連結した。反応液を室温で24時間インキュベーションし、次いでS.lividans TK24プロトプラストに形質転換した。
【0131】
20mlのYEME培地にS.lividans TK24の凍結スポア浮遊液を接種し、125ml ビインデント(2くぼみ付)フラスコ中で48時間増殖させた。プロトプラストをPractical Streptomyces Geneticsに記載のごとく作製した。ライゲーション反応液をプロトプラスと混合し、次いで500μlの形質転換緩衝液、その直後に5mlのP緩衝液を加えた。形質転換反応液を2750rpmで7分間遠沈し、100μlのP緩衝液に再懸濁し、1枚のR2YEプレートに接種した。プレートを28℃で20時間インキュベーションし、次いで250μg/mlチオストレプトン含有LB0.7%寒天5mlを重層した。7日後コロニーを50μg/mlチオストレプトン含有R2YEグリッドプレートにとった。コロニーを28℃でさらに5日間増殖させ、次いで4℃で保存した。
【0132】
この組換え微生物をATCCに寄託し、TPA-4022と指定された。
実施例12:Streptomyces rimosusの形質転換
【0133】
Pigac and Schrempf Appl. Environ Microb.、Vol.61、No.1、352-356(1995)の方法を用いてS.rimosusを形質転換した。S.rimosus R6593株をロータリー攪拌機(250rpm)を用い30℃で20mlのCRM培地中で培養した。細胞を24時間で4℃で5000rpm、5分間遠心して回収し、4℃の20mlの10%ショ糖に再浮遊させ、4℃で5000rpm、5分間遠心した。ペレットを4℃の15%グリセロール10mlに再浮遊し、4℃で5000rpm、5分間遠心した。ペレットを4℃の100μg/mlリソゾーム含有15%グリセロール2mlに再浮遊させ、37℃で30分間インキュベーションし、4℃で5000rpm、5分間遠心し、次いで4℃の15%グリセロール2mlに再浮遊させた。15%グリセロール洗浄を一度繰り返し、ペレットを1-2mlのエレクトロポーレーション緩衝液に再浮遊させた。細胞を50-200μlアリコートで-80℃で保存した。
【0134】
ライゲーションをS.lividansの形質転換について記載のごとく調製した。ライゲーション反応液のインキュベーション後、容量をdH2Oで100μlとし、NaClを0.3Mに加え、反応液を等量の24:1:1 フェノール:クロロホルム イソアミルアルコールで抽出した。20μgのグリコーゲンを加え、ライゲートしたDNAを-20℃の2容量の100%エタノールで30分間沈殿させた。DNAを微量遠心器で10分間ペレットとし、70%エタノールで1回洗浄し、speed-vac濃縮装置で5分間乾燥させ、5μlのdH2Oに再懸濁した。
【0135】
細胞の1凍結アリコートを室温で解凍し、エレクトロポーレーション用に各DNA試料につき50μl/チューブに分配した。細胞を使用するまで氷上に保存した。1-2μlのdH2O中のDNAを加え、混合した。細胞およびDNA混合物を、予め氷冷した2mmエレクトロキュベット(Bio-Rad Laboratories、Richmond California USA)に移した。細胞をGene Pulser(登録商標)(Bio-Rad Laboratories)を用い2kV(10kV/cm)、25μF、400Ωのセッティングでエレクトロポーレーションした。細胞を0.75〜1.0mlのCRM(0-4℃)で希釈し、15ml培養チューブに移し、30℃で3時間撹拌しながらインキュベーションした。細胞を10-30μg/mlチオストレプトン含有トリプチケースソイブロス寒天プレートに接種した。
実施例13:高速液体クロマトグラフィ
【0136】
液体クロマトグラフィ分離をWaters 2690 Separation Moduleシステム(Waters Corp.、Milford、MA、USA)およびSymmetryShield RP8、粒子サイズ3.5μm充填カラム4.6x150mm(Waters Corp.、Milford、MA、USA)を用いて実施した。勾配移動相プログラミングを用いて流速を1.0ml/分とした。溶離剤Aは水/アセトニトリル(20:1)+ 10mM酢酸アンモニウムであった。溶離剤Bはアセトニトリル/水(20:1)であった。移動相は12%B〜28%B、6分間の直線勾配であり、4分間28%Bの定組成に保った。これに次いで28%B〜100%B、20分間の直線勾配次いで2分間かけて12%Bまでの直線勾配とし、12%Bに3分間保った。
実施例14: 質量分析
【0137】
カラム溶出液を直接、ZMD質量分析器(Micromass、Manchester、UK)のエレクトロスプレーイオン源とした。装置をTest Juice標準品(Waters Corp、Milford、MA、USA)で較正し、シリンジポンプ(Harvard Apparatus、Holliston、MA、USA)から流速10μl/分で供給した。質量分析器は13.2の低質量解像度および11.2の高解像度で操作した。スペクトルをスキャン範囲m/z100〜600、取得速度10スペクトル/秒を用いて得た。用いたイオン化技術は陽イオン(positive)エレクトロスプレー(ES)であった。該スプレー電圧を2900Vに保ち、イオン源のコーン電圧を17Vに保った。
実施例15:ebh遺伝子配列(配列番号1)を用いる他の微生物からチトクロームP450遺伝子の単離
【0138】
ゲノムDNAをDNAzol試薬を用い培養物のセット(ATCC43491、ATCC14930、ATCC53630、ATCC53550、ATCC39444、ATCC43333、ATCC35165)から単離した。該DNAをebh遺伝子の配列用に設計したプライマーを用いるPCR反応の鋳型に用いた。3セットのプライマーを増幅に用いた:NPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)、NPB29-16f(配列番号50)およびNPB29-17r(配列番号51)、ならびにNPB29-19f(配列番号52)およびNPB29-20r(配列番号53)。
【0139】
PCR反応液を200-500ngのゲノムDNAならびにホワードおよびリバースプライマーを含む容量20μlに調製した。すべてのプライマーを最終濃度1.4-2.0μMで加えた。PCR反応液は、0.2μlのAdvantage(登録商標)2 Taq酵素(BD Biosciences Clontech、Palo Alto、California、USA)、2μlのAdvantage(登録商標) 2 Taq緩衝液、および0.2μlの2.5mM dNTPにdH2Oを加えて20μlに調製した。サイクリング反応はGeneamp(登録商標)9700 PCRシステムまたはMastercycler(登録商標)勾配(Eppendorf、Westbury、New York、USA)を用い以下のプロトコールに従って行った:95℃5分間、35サイクル(96℃20秒間、54-69℃30秒間、72℃2分間)、72℃7分間。PCR生成物の予想サイズは、NPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)プライマー対で約1469bp、NPB29-16f(配列番号50)およびNPB29-17r(SEQ ID NO :51)プライマー対で1034bp、およびNPB29-19f(配列番号52)およびNPB29-20r(配列番号53)プライマー対で1318bpである。PCR反応を0.7%アガロースゲルを用いて分析した。予想サイズのPCR生成物をゲルから切り出し、Qiagenゲル抽出法を用いて精製した。精製した生成物をBig-Dyeシーケンシングキットを用いてシーケンスし、ABI310シーケンサーを用いて分析した。
実施例16:プラスミドpPCRscript-ebhの構築
【0140】
エポチロンBヒドロキシラーゼ遺伝子および下流フェレドキシン遺伝子を含む1.469kb DNA断片をPCRを用いて増幅した。50μl PCR反応液は、5μlのTaq緩衝液、2.5μlグリセロール、1μlの20ng/μl NPB29-1プラスミド、0.4μlの25mM dNTPs、各1.0μlのプライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)(5pmol/μl)、38.1μlのdH2O、および0.5μlのTaq酵素(Stratagene)からなった。反応はGeneamp(登録商標) 9700PCRシステムを用い以下の条件で行った:95℃5分間、次いで30サイクル(96℃30秒間、60℃30秒間、72℃2分間)、および72℃7分間。PCR生成物をQiagen Qiaquickカラムを用い、PCRクリーンアップ法に従って精製した。精製した生成物をBglIIおよびHindIIIで消化し、0.7%アガロースゲルで精製した。1.469kbのバンドをゲルから切り出し、Qiagen Qiaquickゲル抽出法を用いて溶出した。次に、断片をPCRscript Ampクローニングキットを用いpPCRscript Ampベクターにクローンした。挿入物を含むコロニーを100μg/mlアンピシリン含有LB(Luria Broth)1-2mlにとった(30-37℃、16-24時間、230-300rpm)。プラスミドの単離はMo Biominiplasmid prepキットを用いて行った。挿入物の配列をBig-Dyeシーケンシングキットを用いサイクルシーケンシングにより行った。このプラスミドをpPCRscript-ebhと名付けた。
実施例17:収量改善または特異性変化のためのebh遺伝子の突然変異誘発
【0141】
Quikchange(登録商標)XL 部位指向性突然変異誘発キットおよびQuikchange(登録商標)多部位指向性突然変異誘発キット(共にStratagene)を用いてebh遺伝子のコーディング領域に突然変異を導入した。これら方法は共に所望の突然変異を含む長さ35-45塩基のDNAプライマー(配列番号54-59および71)、メチル化環状プラスミド鋳型およびPfuTurbo(登録商標)DNAポリメラーゼ(米国特許No.5,545,552および5,866,395および5,948,663)を用い、変異原性プライマー上に保持された突然変異を組み込むプラスミド鋳型のコピーを生成する。次いで、反応液の制限エンドヌクレアーゼ酵素DpnIによる消化は、メチル化プラスミド鋳型を選択的に消化するが非メチル化突然変異プラスミドを完全のままで残す。DpnI消化工程でインキュベーション時間を1時間から3時間に増加した以外、方法はすべて製造業者の指示書に従った。pPCRscript-ebhベクターを突然変異誘発の鋳型に用いた。
【0142】
1〜2μlの反応液をXL1-Blue(登録商標)エレクトロコンピテントまたはXL10-Gold(登録商標)ウルトラコンピテント細胞(Stratagene)に形質転換した。細胞をLA(Luria Agar)100μg/mlアンピシリンプレートに1プレートあたり100コロニー以上の密度で接種し、30-37℃で24-48時間インキュベーションした。全プレートを100μg/mlアンピシリン含有LB 5mlに再浮遊させた。細胞を遠心して再浮遊した細胞からプラスミドを直接単離し、次いでMo Bio miniprep法を用いてプラスミドを精製した。次に、このプラスミドをプライマーNPB29-6f(配列番号28)およびNPB29-7r(配列番号29)を用いるPCRの鋳型に用い突栓変異発現カセットを増幅した。1.469kb PCR生成物を制限酵素BglIIおよびHindIIIで消化し、BglIIおよびHindIIIで消化したベクターpANT849へのライゲーション用にこの断片を作製した。あるいはまた、再浮遊細胞を用いて100μg/mlアンピシリン含有LB 20-50mlに接種し、30-37℃で18-24時間増殖させた。Qiagen midi-prepsを培養について実施し、所望の突然変異を含むプラスミドDNAを単離した。制限酵素BglIIおよびHindII消化を用いBglIIおよびHindIII消化プラスミドpANT849にライゲーションするための突然変異発現カセットを切り取った。突然変異体のスクリーニングは記載のごとくS.lividansまたはS.rimosusを用いて行った。
【0143】
あるいはまた、Leungら、Technique-A Journal of Methods in Cell and Molecular Biology、Vol.1、No.1、11-15(1989)の方法を用いてebh遺伝子のランダム突然変異ライブラリーを生成した。マンガンおよび/または還元dATP濃度を用いてTaqポリメラーゼの突然変異誘発頻度を調節する。プラスミドpCRscript-ebhをNotIで消化し、プラスミドを線状化する。ポリメラーゼ緩衝液を0.166M (NH4)2SO4、0.67M Tris-HCl pH8.8、61mM MgCl2、67μM EDTA pH8.0、1.7mg/mlウシ血清アルブミンを用いて調製した。PCR反応液は10μlのNotI消化pCRscript-ebh(0.1ng/μl)、10μlのポリメラーゼ緩衝液、1.0μlの1M β-メルカプトエタノール、10.0μlのDMSO、1.0μlのNPB29-6f(配列番号28)プライマー(100pmol/μl)、1.0μlのNPB29-7r(配列番号29)プライマー(100pmol/μl)、10μlの5mM MnCl2、10.0μl 10mM dGTP、10.0μl 2mM dATP、10mM dTTP、10.0μl 10mM dCTP、および2.0μl Taqポリメラーゼで調製した。dH2Oを加えて100μlに加えた。反応液をMnCl2を含まない以外は上記のとごく調製した。サイクリング反応はGeneAmp(登録商標)PCRシステムを用い以下のプロトコールに従って行った:95℃1分間、25-30サイクル(94℃1分間、55℃30秒間、72℃4分間)、72℃7分間。PCR反応液をQiagenスピンカラムを用いアガロースゲル上で分離した。次に、断片をBglIIおよびHindIIIで消化し、次いでQiagenスピンカラムを用いて精製した。次に、精製した断片をBglIIおよびHindIII消化pANT849プラスミドとライゲーションした。突然変異体のスクリーニングはS.lividatzsおよびS.rimosusを用いて行った。
【0144】
特徴付けられた突然変異体の表

実施例18:ebh発現細胞およびその突然変異体におけるエポチロンB形質転換の比較
【0145】
これらの実験は、125ml bi-indentedフラスコ中の20mlのYEME培地にS.lividans TK24、S.lividans(pANT849-ebh)、S.lividans(pANT849-ebh10-53)、またはS.lividans(pANT849-ebh24-16)の凍結スポア調製物200μlを接種し、230rpm、30℃で48時間インキュベーションした。チオストレプトン、10μg/mlをS.lividans(pANT849-ebh)、S.lividans(pANT849-ebh10-53)およびS.lividans(pANT849-ebh24-16)を接種した培地に加えた。4mlの培養を125ml三角フラスコ中の20mlのR5培地に移し、230rpm、30℃で18時間インキュベーションした。100% EtOH中のエポチロンBを各培養に最終濃度0.05%重量/容量で加えた。エポチロンBが48時間で完全にエポチロンFに変換されたS.lividans(pANT849-ebh24-16)培養を除き、試料を0、24、48、および72時間で採取した。試料をHPLCで分析した。結果を0時におけるエポチロンBのパーセンテージとして計算した。
【0146】
エポチロンB:

【0147】
エポチロンF:

【0148】
あるいはまた、エポチロンBのエポチロンFへの生物変換は、ebh遺伝子を含む発現プラスミドで形質転換したS.rimosus宿主細胞およびその変異体または突然変異体を用いて行った。100μlの凍結S.rimosus形質転換体培養を10μg/mlチオストレプトン含有CRM培地20mlに接種し、230-300rpm、30℃で16-24時間培養した。100%エタノール中のエポチロンBを各培養に最終濃度0.05%重量/容量で加えた。反応液を典型的には230-300rpm、30℃で20-40時間インキュベーションした。エポチロンBおよびFの濃度をHPLC分析により測定した。
【0149】
S.rimosusの突然変異体の評価

実施例19:コンパクチンのプラバスタチンへの生体内変換
【0150】
125mlフラスコ中に10μg/mlチオストレプトン含有R2YE培地20mlにS.lividans(pANT849)、S.lividans(pANT849-ebh)の凍結スポア調製物200μlを接種し、230rpm、28℃で72時間インキュベーションした。4mlの培養を20mlのR2YE培地に接種し、230rpm、28℃で24時間インキュベーションした。1mlの培養を15mlポリプロピレン培養チューブに移し、10μlのコンパクチン(40mg/ml)を各培養に加え、250rpm、28℃で24時間インキュベーションした。500μlの培養ブロスを未使用の15mlポリプロピレン培養チューブに移した。500μlの50mM水酸化ナトリウムを加え、渦撹拌した(vortexed)。3mlのエタノールを加えて渦撹拌し、チューブをTJ-6卓上遠心器で3000rpmで10分間遠心した。有機層をHPLCバイアルで分析した。コンパクチンおよびプラバスチン値をコントロールS.lividans(pANT849)培養と比較して評価した。
【0151】
コンパクチンおよびプラバスチン(出発コンパクチン濃度のパーセンテージ)

実施例20:コンパクチンおよびプラバスチン検出のための高速液体クロマトグラフィ法
【0152】
液体クロマトグラフィによる分離は、Hewlett Packard1090 Series Separationシステム(Agilent Technologies、Palo Alto、California、USA)およびSpherisorb ODS2、粒子サイズ5μm充填50x46mmカラム(Keystone Scientific、Inc、Bellefonte、Pennsylvania、USA)を用いて行った。勾配移動相プログラミングを流速2.0ml/分を用いて行った。溶離剤Aは水、10mM酢酸アンモニウムおよび0.05%リン酸であった。溶離剤Bはアセトニトリルであった。移動相は20% B〜90% B(4分間)の直線勾配であった。
実施例21:突然変異体ebh25-1の生体内変換生成物の構造決定
【0153】
分析的HPLCは、YMC充填ODS-AQ カラム、4.6mm i.d.x15cm lを用いるHewlett Packard 1100 Series Liquid Chromatographを用いて行った。水(溶媒A)およびアセトニトリル(溶媒B)の勾配系を用いた:20%〜90%直線勾配、10分間、90%〜20%直線勾配、2分間。流速は1ml/分、UV検出は254nmであった。
【0154】
プレパラティブHPLCは、以下の装置および条件を用いて実施した:
ポンプ:Varian ProStar Solvent Delivery Module(Varian Inc. 、Palo Alto、California、USA). Detector: Gynkotek UVD340S.
カラム:YMC ODS-Aカラム(30mmID X 100mm長、5μ粒子サイズ)。
溶出流速:30ml/分間
溶出勾配(溶媒A:水、溶媒B:アセトニトリル)、20% B、2分間;20%〜60% B直線勾配、18分間;60% B、2分間;60%〜90% B直線勾配、1分間;90% B、3分間;90%〜20% B直線勾配、2分間。
検出:UV、210nm。
【0155】
LC/NMRは以下のごとく行った:40μlの試料をYMC充填ODS-AQカラム(4.6mm i.d. x 15cm 1)に注入した。カラムをD2O(溶媒A)およびアセトニトリル-d3(溶媒B)の溶媒系:30% B、1分間;30%〜80% B直線勾配、11分間の勾配系を用い流速1ml/分間で溶出した。溶出液をUV検出セル(254nmでモニター)に通し、次いでVarian AS-600 NMR分光計中のF19/H1 NMR無ローブ(60μl活動容量)を通した。生体内変換生成物を約7.5分間で溶出し、流れを手動で止め、NMRデータを得るため溶出液をNMRプローブ中にとどまらせた。
【0156】
単離および分析は以下のごとく行った。ブタノール/メタノール抽出物(約10ml)を窒素流下で蒸発、乾燥させた。1mlのメタノールを残渣(38mg)に加え、不溶性物質を遠心して(13000rpm、3分間)除去した。0.1mlの上清をLC/NMR試験に用い、残りの0.9mlをプレパラティブHPLC(0.2-0.4ml/注入)にかけた。2つの主要ピークが観察され回収された。ピークAは14〜15分間に溶出され、ピークBは16.5〜17.5分間に溶出された。分析的HPLC分析は、ピークBが親化合物、エポチロンB(Rt8.5分間)であり、ピークAが生体内変換生成物(Rt7.3分間)であることを示唆した。ピークA分画をプールし、MS分析データをプール分画を用いて得た。プール分画を蒸発させて小容量とし、次いで凍結乾燥して3mgの白色固体を得た。白色固体(メタノールに溶解)のNMRおよびHPLC分析により、生体内変換生成物が乾燥過程で一部分解したことがわかった。
別 表 1
【0157】
【表3】

【0158】
【表4】

【0159】
【表5】

【0160】
【表6】

【0161】
【表7】

【0162】
【表8】

【0163】
【表9】

【0164】
【表10】

【0165】
【表11】

【0166】
【表12】

【0167】
【表13】

【0168】
【表14】

【0169】
【表15】

【0170】
【表16】

【0171】
【表17】

【0172】
【表18】

【0173】
【表19】

【0174】
【表20】

【0175】
【表21】

【0176】
【表22】

【0177】
【表23】

【0178】
【表24】

【0179】
【表25】

【0180】
【表26】

【0181】
【表27】

【0182】
【表28】

【0183】
【表29】

【0184】
【表30】

【0185】
【表31】

【0186】
【表32】

【0187】
【表33】

【0188】
【表34】

【0189】
【表35】

【0190】
【表36】

【0191】
【表37】

【0192】
【表38】

【0193】
【表39】

【0194】
【表40】

【0195】
【表41】

【0196】
【表42】

【0197】
【表43】

【0198】
【表44】

【0199】
【表45】

【0200】
【表46】

【0201】
【表47】

【0202】
【表48】

【0203】
【表49】

【0204】
【表50】

【0205】
【表51】

【0206】
【表52】

【0207】
【表53】

【0208】
【表54】

【0209】
【表55】

【0210】
【表56】

【0211】
【表57】

【0212】
【表58】

【0213】
【表59】

【0214】
【表60】

【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】WO 00/39276、米国出願No.09/468,854(1999年12月21日出願)に記載の、Amycolatopsis orientalis SC15847株(PTA1043)によるエポチロンBのエポチロンFへの生体内変換の概略図を示す。
【図2】エポチロンBヒドロキシラーゼをコードする核酸配列をクローニングするためのPCRプライマーを設計するのに用いる配列番号5〜配列番号22の核酸配列アラインメントを示す。
【図3】エポチロンBヒドロキシラーゼ(配列番号2)およびEryF(PDBコード1JIN 鎖A; 配列番号76)間の配列アラインメントを示す。
【図4】図3に示すEryFとの配列アラインメントに基づくエポチロンBヒドロキシラーゼのホモロジーモデルを示す。
【図5】EryF(PDBコード1JIN;実線で示す)に対するエポチロンBヒドロキシラーゼモデル(点線で示す)のエネルギープロットを示す。
【配列表】






























































【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポチロンBヒドロキシラーゼまたはその突然変異体もしくは変異体をコードする単離された核酸配列。
【請求項2】
配列番号1、30、32、34、36、37、38、39、40、41、42、60、62、64、66、68、72、または74を含む請求項1記載の単離された核酸配列。
【請求項3】
配列番号1を含む請求項1記載の単離された核酸配列。
【請求項4】
エポチロンBヒドロキシラーゼ酵素の活性部位に少なくとも1のアミノ酸置換を有する突然変異体をコードする請求項1記載の単離された核酸配列。
【請求項5】
配列番号2のアミノ酸GLU31、ARG67、ARG88、ILE92、ALA93、VAL106、ILE130、ALA140、MET176、PHE190、GLU231、SER294、PHE237、またはILE365に少なくとも1のアミノ酸置換を有する突然変異体をコードする請求項1記載の単離された核酸配列。
【請求項6】
配列番号2のアミノ酸 LEU39、GLN43、ALA45、MET57、LEU58、HIS62、PHE63、SER64、SER65、ASP66、ARG67、GLN68、SER69、LEU74、MET75、VAL76、ALA77、ARG78、GLN79、ILE80、ASP84、LYS85、PR086、PHE87、ARG88、PR089、SER90、LEU91、ILE92、ALA93、MET94、ASP95、HIS99、ARG103、PHE110、ILE155、PHE169、GLN170、CYS172、SER173、SER174、ARG175、MET176、LEU177、SER178、ARG179、ARG186、PHE190、LEU193、VAL233、GLY234、LEU235、ALA236、PHE237、LEU238、LEU239、LEU240、ILE241、ALA242、GLY243、HIS244、GLU245、THR246、THR247、ALA248、ASN249、MET250、LEU283、THR287、ILE288、ALA289、GLU290、THR291、ALA292、THR293、SER294、ARG295、PHE296、ALA297、THR298、GLU312、GLY313、VAL314、VAL315、GLY316、VAL344、ALA345、PHE346、GLY347、PHE348、VAL350、HIS351、GLN352、CYS353、LEU354、GLY355、GLN356、LEU358、ALA359、GLU362、LYS389、ASP391、SER392、THR393、ILE394、またはTYR395に少なくとも1のアミノ酸置換を有する突然変異体をコードする請求項1記載の単離された核酸配列。
【請求項7】
配列番号43、44、45、46、47、48、または49を含む変異体をコードする請求項1記載の単離された核酸配列。
【請求項8】
請求項1記載の単離された核酸配列によりコードされるポリペプチド。
【請求項9】
請求項2記載の核酸配列または該核酸配列の相補配列と3X SSC、65℃、16時間のハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができ、該核酸配列または該核酸配列の相補配列と核酸配列と0.5X SSC、55℃、30分間の洗浄条件下でハイブリダイズしたままであることができる単離された核酸分子。
【請求項10】
配列番号2を含む単離されたポリペプチド。
【請求項11】
配列番号2のエポチロンBヒドロキシラーゼ酵素の活性部位に少なくとも1のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む配列番号2のエポチロンBヒドロキシラーゼの単離された突然変異体ポリペプチド。
【請求項12】
配列番号2のアミノ酸 GLU31、ARG67、ARG88、ILE92、ALA93、VAL106、ILE130、ALA140、MET176、PHE190、GLU231、SER294、PHE237、またはILE365に少なくとも1のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む配列番号2のエポチロンBヒドロキシラーゼの単離された突然変異体ポリペプチド。
【請求項13】
配列番号2のアミノ酸 LEU39、GLN43、ALA45、MET57、LEU58、HIS62、PHE63、SER64、SER65、ASP66、ARG67、GLN68、SER69、LEU74、MET75、VAL76、ALA77、ARG78、GLN79、ILE80、ASP84、LYS85、PR086、PHE87、ARG88、PR089、SER90、LEU91、ILE92、ALA93、MET94、ASP95、HIS99、ARG103、PHE110、ILE155、PHE169、GLN170、CYS172、SER173、SER174、ARG175、MET176、LEU177、SER178、ARG179、ARG186、PHE190、LEU193、VAL233、GLY234、LEU235、ALA236、PHE237、LEU238、LEU239、LEU240、ILE241、ALA242、GLY243、HIS244、GLU245、THR246、THR247、ALA248、ASN249、MET250、LEU283、THR287、ILE288、ALA289、GLU290、THR291、ALA292、THR293、SER294、ARG295、PHE296、ALA297、THR298、GLU312、GLY313、VAL314、VAL315、GLY316、VAL344、ALA345、PHE346、GLY347、PHE348、VAL350、HIS351、GLN352、CYS353、LEU354、GLY355、GLN356、LEU358、ALA359、GLU362、LYS389、ASP391、SER392、THR393、ILE394、またはTYR395に少なくとも1のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む配列番号2のエポチロンBヒドロキシラーゼの単離された突然変異体ポリペプチド。
【請求項14】
配列番号31、33、35、61、63、65、67、69、71、73、または75を含むエポチロンBヒドロキシラーゼの単離された突然変異体ポリペプチド。
【請求項15】
配列番号43、44、45、46、47、48、または49を含むエポチロンBヒドロキシラーゼの単離された変異体ポリペプチド。
【請求項16】
フェレドキシンをコードする単離された核酸配列。
【請求項17】
配列番号3を含む請求項16記載の単離された核酸配列。
【請求項18】
請求項16記載の単離された核酸配列によりコードされるポリペプチド。
【請求項19】
配列番号3記載の核酸配列または配列番号3記載の核酸配列の相補配列と3X SSC、65℃、16時間のハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができ、配列番号3記載の核酸配列または配列番号3記載の核酸配列の相補配列と0.5X SSC、55℃、30分間の洗浄条件下でハイブリダイズしたままであることができる単離された核酸分子。
【請求項20】
請求項1記載の単離された核酸配列を含むベクター。
【請求項21】
フェレドキシンをコードする単離された核酸配列をさらに含む請求項20記載のベクター。
【請求項22】
請求項20記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項23】
請求項21記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項24】
微生物を請求項20または21記載のベクターでトランスフェクトすることを含む、末端アルキル基を有するエポチロンをヒドロキシル化して末端ヒドロキシアルキル基を有するエポチロンを生成する組換え微生物の製造方法。
【請求項25】
末端アルキル基を有するエポチロンをヒドロキシル化して末端ヒドロキシアルキル基を有するエポチロンを生成する組換えにより製造された微生物。
【請求項26】
配列番号1、30、32、34、36、37、38、39、40、41、42、60、62、64、66、68、72、または74の核酸配列を発現する請求項25記載の組換えにより製造された微生物。
【請求項27】
下記式II:
CH3-(A1)n-(Q)m-(A2)o-E (II)
[式中、A1、Q、A2、E、n、m、およびoは下記と同意義である。]
で示される少なくとも1のエポチロンを、式IIのヒドロキシル化を選択的に触媒し、該ヒドロキシル化を行うことができる組換えにより作製した微生物、またはそれ由来の酵素と接触させる工程を含む、下記式I:
HO-CH2-(A1)n-(Q)m-(A2)o-E (I)
[式中、A1およびA2は独立して所望により置換されたC1-C3アルキルおよびアルケニルの群から選ばれる;
Qは1〜3環、および少なくとも1の環中に少なくとも1の炭素-炭素二重結合を含む所望により置換された環系である;
n、m、およびoは0および1からなる群から選ばれる整数であり;mまたはnまたはoの少なくとも1が1である;
Eはエポチロンコアである。]
で示される少なくとも1のエポチロンの製造方法。
【請求項28】
式A:

で示されるエポチロン類似体の製造方法であって、
配列番号31を含む突然変異体エポチロンBヒドロキシラーゼ酵素とインキュベーションすることによりエポチロンBを式Aのエポチロン類似体に生体内変換することを含む方法。
【請求項29】
式A:

で示される化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項30】
別表1に記載の構造座標で示される対応基本骨格原子に重ね合わせた時、保存残基の基本骨格原子の二乗平均平方根偏差が約4.0Å以下であるエポチロンBヒドロキシラーゼのホモロジーモデル。
【請求項31】
突然変異させる配列番号2のアミノ酸を同定し、同定したアミノ酸を突然変異させ突然変異体タンパク質を作製する工程を含む、エポチロンBヒドロキシラーゼに比べて変化した生物学的特性、機能、所望の生成物の収量、反応速度、基質特異性、または活性を有する突然変異体の製造方法。
【請求項32】
別表1に記載の構造座標で示される対応基本骨格原子と重ね合わせた時、保存残基の基本骨格原子の二乗平均平方根偏差が約4.0Å以下であるエポチロンBヒドロキシラーゼのホモロジーモデルを突然変異させる配列番号2のアミノ酸の同定に用いる請求項31記載の方法。
【請求項33】
同定されたアミノ酸が、配列番号2のLEU39、GLN43、ALA45、MET57、LEU58、HIS62、PHE63、SER64、SER65、ASP66、ARG67、GLN68、SER69、LEU74、MET75、VAL76、ALA77、ARG78、GLN79、ILE80、ASP84、LYS85、PR086、PHE87、ARG88、PR089、SER90、LEU91、ILE92、ALA93、MET94、ASP95、HIS99、ARG103、PHE110、ILE155、PHE169、GLN170、CYS172、SER173、SER174、ARG175、MET176、LEU177、SER178、ARG179、ARG186、PHE190、LEU193、VAL233、GLY234、LEU235、ALA236、PHE237、LEU238、LEU239、LEU240、ILE241、ALA242、GLY243、HIS244、GLU245、THR246、THR247、ALA248、ASN249、MET250、LEU283、THR287、ILE288、ALA289、GLU290、THR291、ALA292、THR293、SER294、ARG295、PHE296、ALA297、THR298、GLU312、GLY313、VAL314、VAL315、GLY316、VAL344、ALA345、PHE346、GLY347、PHE348、VAL350、HIS351、GLN352、CYS353、LEU354、GLY355、GLN356、LEU358、ALA359、GLU362、LYS389、ASP391、SER392、THR393、ILE394、またはTYR395である請求項31記載の方法。
【請求項34】
同定されたアミノ酸が配列番号2のGLU31、ARG67、ARG88、ILE92、ALA93、VAL106、ILE130、ALA140、MET176、PHE190、GLU231、SER294、PHE237、またはILE365である請求項31記載の方法。
【請求項35】
突然変異体タンパク質がエポチロンBヒドロキシラーゼを用いて得られる所望の生成物の収量に比べて所望の生成物の収量を改善する請求項31記載の方法。
【請求項36】
所望の生成物がエポチロンFである請求項35記載の方法。
【請求項37】
突然変異体がエポチロンBヒドロキシラーゼを用いる反応速度に比べて反応速度を改善する請求項31記載の方法。
【請求項38】
突線変異体がエポチロンBヒドロキシラーゼの基質特異性に比べて変化した基質特異性を有する請求項31記載の方法。
【請求項39】
アミノ酸SER294が突然変異している請求項38記載の方法。
【請求項40】
該突然変異体がエポチロンBヒドロキシラーゼと実質的に同様の生物活性または機能を有する請求項31記載の方法。
【請求項41】
別表1に記載の構造座標でコードされたデータ保存物質を含む機械的に読み取り可能なデータ保存媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−510386(P2006−510386A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564824(P2004−564824)
【出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/034082
【国際公開番号】WO2004/061116
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】