説明

エラストマー用接着剤

【課題】接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(i)少なくとも1種のフィルム形成性ポリマー、
(ii)ポリニトロソ化合物、ポリニトロソ前駆体、およびその混合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、および
(iii)少なくとも1種の酸化剤を含み、酸化剤の架橋剤に対するモル比が0.3〜2.0である接着剤組成物を提供する。
このような組成物を用いて基体を結合させる方法およびこのような方法により製造される物品も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ある有用な種類の物質は、エラストマー結合組成物(すなわち、エラストマー基体と結合できる組成物)である。
【背景技術】
【0002】
あるエラストマー結合組成物は、ポリニトロソ化合物、ポリニトロソ前駆体、またはその混合物である架橋剤を含有する。例えば、米国特許第4,308,365号は、イオノマー樹脂およびポリ−C−ニトロソ化合物またはポリ−C−ニトロソ化合物のその場での形成をもたらす成分のいずれかを含有する反応性接着剤を開示している。
【特許文献1】米国特許第4,308,365号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような架橋剤は、いくつかの望ましくない特性を提示することが知られている。例えば、このような架橋剤の多くは、エラストマー結合組成物が硬化する条件で揮発性であり、この揮発性は、例えば、発煙および/または型の汚染の問題を引き起こし得る。さらに、このような架橋剤の多くは望ましくないことに高価および/または有毒である。より少ない量の架橋剤を用いて良好な接着性能をもたらす接着剤組成物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの態様において、
(i)少なくとも1種のフィルム形成性ポリマー、
(ii)ポリニトロソ化合物、ポリニトロソ前駆体、およびその混合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、および
(iii)少なくとも1種の酸化剤を含み、酸化剤の架橋剤に対するモル比が0.3〜2.0である接着剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物を有機溶媒中に溶解または分散させる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は水性組成物である。水性組成物は、水および他の成分を含有する組成物である。水性組成物において、水以外の成分は、水中に溶解しているか、または水中に分散しているか、またはその組み合わせである。水以外の特定の成分は、水中に溶解されうるか、または水中に分散されうるか、またはその組み合わせでありうる。水以外の2以上の成分が存在する場合、溶解した成分または分散した成分またはその組み合わせの任意の組み合わせが存在してもよい。例えば、水以外の2種の成分が考えられる場合、水以外の両成分は分散していてもよく;あるいは一方の水以外の成分は溶解することができ、他方の水以外の成分は分散していてもよく;あるいは一方の水以外の成分が溶解および分散の両方であってよく、他方の水以外の成分が溶解または分散でありうるか、あるいは溶解および分散の両方であり得る。
【0006】
水中に分散している成分は、水全体にわたって分布した、別々の粒子の形態である。水中の粒子の分布は、任意の形態、例えば、分散液、懸濁液、エマルジョン、ラテックス、またはその組み合わせであってよい。別々の粒子は、固体、液体、またはその組み合わせであってよい。独立して、別々の粒子は、コロイドまたは他の分布形態を形成してもよい。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明の実施は、接着剤組成物の層をエラストマー基体と接触させることを含む。本発明の実施において用いられるエラストマー基体は、様々なエラストマー材料の任意のものであってよい。エラストマーは当分野において周知である。1つの説明は、Textbook of Polymer Science、第2版、F.W.Billmeyer Jr.著、Wiley−Interscience、1971において見出すことができる。Billmeyerにより記載されているように、エラストマーは、一般に、張力を受けて、そのもとの長さの少なくとも1.1倍の新しい長さまで伸長し、そのもとの長さの数倍にもなり得る物質であり、これらは伸長された場合に、比較的高い強度および剛性を示し、変形後、比較的迅速にそのもとの形状を回復する傾向があり、残留する恒久的変形は比較的少ない。本発明の目的に関して、これらの特性のほとんどまたは全部を示す物質は「エラストマー」と見なされる。エラストマーは、様々な物質、例えば、天然ゴムおよび合成ゴムから製造することができる。合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、ネオプレン、ブチルゴム、ポリイソプレン、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム(SBRとも呼ばれる)、エチレンプロピレンジエン系ゴム(そのいくつかはEPDMと呼ばれる)などが含まれる。エラストマーは、熱可塑性エラストマー(弾塑性材(弾性プラスチック;elastoplastics)または溶融加工可能なゴムとも呼ばれる)および架橋(加硫とも呼ばれる)エラストマーの両方を含む。本発明は、任意のエラストマーを結合させるために実施することができる。好ましいエラストマーは、架橋合成ゴムまたは天然ゴムであり、さらに好ましくは、天然ゴムを用いて製造された架橋エラストマーである。
【0008】
本発明の接着剤組成物は、任意の様々な有用な物質、例えば、他のエラストマー、エラストマーでないが、柔軟性の物質、例えば、織物またはフィルム、および硬質物質、例えば、プラスチック、エンジニアリングプラスチック、木材、および金属にエラストマーを結合させるために用いることができる。本発明のいくつかの組成物は、エラストマーを金属に結合させるのに有効である。
【0009】
本発明は、フィルム形成性ポリマーの使用を含む。フィルム形成性ポリマーは、ポリマーの層が基体に適用された場合にフィルムを形成するポリマーである。典型的には、有機溶媒中のポリマー溶液またはポリマーを含有する水性組成物のいずれかの層が基体に適用され、この層を室温(25℃)または高温(すなわち、25℃より高く、通常100℃以下)で乾燥させる。フィルム形成性ポリマーは、このような乾燥条件下でフィルムを形成することが意図される。
【0010】
以下に詳細に議論するように、様々な種類のフィルム形成性ポリマーが適している。本発明の組成物は、たった1種類からの1以上のフィルム形成性ポリマーを含有するか、または本発明の組成物は1以上の他の種類からの1以上のフィルム形成性ポリマーと混合された1種類からの1以上のフィルム形成性ポリマーを含有し得ると考えられる。
【0011】
フィルム形成性ポリマーの1つの好適な種類は、例えば、ニトロソ基と化学的に反応できる1以上の基を有するポリマーである。いくつかの好適なフィルム形成性ポリマーは、例えば、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する。
【0012】
フィルム形成性ポリマーの1つの好適な種類は、例えば、オレフィンポリマーであり、これは置換されていても、非置換であっても、またはその混合物であってもよい。オレフィンポリマーは、ポリオレフィンとも呼ばれ、1分子あたり1つの二重結合を含有する不飽和脂肪族炭化水素であるモノマー分子に基づくポリマーを含む。このようなオレフィンポリマーの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブテン、ポリブト−1−エン、ポリ−4−メチルペント−1−エン、およびその様々なコポリマーである。天然ゴムベースのポリマーおよび合成ゴムベースのポリマー、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンおよび環状共役ジエンの付加物のポリマー、ブタジエンおよびスチレンのコポリマー、エチレン、プロピレン、およびジエンのコポリマー、アクリロニトリルおよびブタジエンのコポリマー、ならびにその様々なコポリマーもオレフィンポリマーの種類に含まれる。架橋をもたらすために1種以上の複数の官能性モノマーも含む前記ポリマーもオレフィンポリマーの種類に含まれる。
【0013】
オレフィンポリマーの1つの好適な種類は、例えば、ハロゲン化オレフィンポリマーである。ハロゲン化オレフィンポリマーは、ハロゲン原子が1以上の水素原子と置換する以外は非置換ポリオレフィンと同じ構造を有する。ハロゲンは、塩素、臭素、フッ素、またはその混合物であってよい。好ましいハロゲンは、塩素、臭素、およびその混合物である。ハロゲンの量は決定的ではないようであり、ポリマーの3〜70重量%の範囲であり得る。
【0014】
独立して、いくつかの実施形態において、置換ポリジエンポリマー(すなわち、ハロゲン原子がいくつかの水素原子の代わりに置換されたポリジエンポリマーの構造を有するポリマー)であるハロゲン化オレフィンポリマーが使用される。好適なポリジエンポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびその混合物が含まれる。いくつかの好適なポリジエンポリマーは、ジエン分子の残基でないモノマー単位を有さない。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中のすべてのハロゲン化オレフィンポリマーは、ジエン分子の残基以外であるモノマー単位がない置換ポリジエンポリマーである。
【0015】
ハロゲン化オレフィンポリマーの1つの好適な種類は、臭素置換オレフィンポリマーであり、これは、少なくとも1つのハロゲンが臭素であるハロゲン化オレフィンポリマーである。臭素置換オレフィンポリマーは、臭素以外のハロゲンの原子を含有しても、しなくてもよい。
【0016】
ハロゲン化オレフィンポリマーの1つの好適な種類は、塩素置換オレフィンポリマーであり、これは少なくとも1つのハロゲンが塩素であるハロゲン化オレフィンポリマーである。塩素置換オレフィンポリマーは、塩素以外のハロゲンの原子を含有しても、しなくてもよい。塩素置換オレフィンポリマーの1つの具体的な種類は、全ての置換基が塩素であるオレフィンポリマーである塩素化ポリオレフィンである。1つの好適な塩素化ポリオレフィンは、例えば、塩素化ポリエチレン(CPE)である。
【0017】
ハロゲン化オレフィンポリマーの1つの好適な種類は、混合ハロゲン置換オレフィンポリマーであり、これは、2以上の異なる種類のハロゲン原子を有するハロゲン化オレフィンポリマーである。いくつかの実施形態において、塩素および臭素を有する混合ハロゲン置換オレフィンポリマーが使用される。1つの好適な混合ハロゲン置換オレフィンポリマーは、例えば、臭素化ポリジクロロブタジエン(「BPDCD」)である。
【0018】
いくつかの実施形態において、オレフィンポリマー上に、ニトリル、カルボキシル、カルボン酸エステル、エーテル、パーオキシエステル、またはその組み合わせから選択される置換基を有さない、少なくとも1種のハロゲン化オレフィンポリマーが使用される。いくつかの実施形態において、全てのハロゲン化オレフィンポリマーは、オレフィンポリマー上に、ニトリル、カルボキシル、カルボン酸エステル、エーテル、パーオキシエステル、またはその組み合わせから選択される置換基を有さない。いくつかの実施形態において、オレフィンポリマー上にハロゲン以外の置換基を有さない少なくとも1種のハロゲン化オレフィンポリマーが使用される。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中の全てのハロゲン化オレフィンポリマーは、オレフィンポリマー上にハロゲン以外の置換基を有さない。
【0019】
フィルム形成性ポリマーの1つの好適な種類は、ハロスルホン化オレフィンポリマーであり、これは、いくつかの水素原子がハロゲン原子により置換され、およびいくつかの他の水素原子が、化学式SOX(式中、Xはハロゲン原子である)を有するスルホニルハライド基により置換されている非置換オレフィンポリマーの構造を有するポリマーである。スルホニルハライド基中のハロゲンは、塩素、臭素、フッ素、またはその混合物であってもよい。いくつかの実施形態において、スルホニルハライド基中のハロゲンは、塩素、臭素、またはその混合物である。いくつかの実施形態において、スルホニルハライド基中のハロゲンは塩素である。いくつかの実施形態において、全てのハロスルホン化オレフィンポリマーの全てのスルホニルハライド基中のすべてのハロゲンは、塩素または臭素のいずれかである。いくつかの実施形態において、接着剤組成物における全てのハロスルホン化オレフィンポリマーの全てのスルホニルハライド基中のすべてのハロゲンは塩素である。
【0020】
独立して、いくつかの実施形態において、置換EPポリマー(すなわち、スルホニルハライド基がいくつかの水素原子の代わりに置換されているEPポリマーの構造を有するポリマー)であるハロスルホン化オレフィンポリマーが使用される。EPポリマーは、エチレンまたはプロピレンまたはその混合物から選択されるそのモノマー単位を50モル%以上有するポリマーである。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中の全てのハロスルホン化オレフィンポリマーは置換EPポリマーである。いくつかの好適なEPポリマーは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよびプロピレンのコポリマー、エチレンおよびプロピレンおよび1以上のジエンモノマーのコポリマー、およびその混合物である。いくつかの好適なハロスルホン化オレフィンポリマーは、例えば、クロロスルホン化ポリエチレン(CSPE)、クロロスルホン化ポリプロピレン、ブロモスルホン化ポリエチレン、ブロモスルホン化ポリプロピレン、およびその混合物を含む。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中の全てのハロスルホン化オレフィンポリマーは、(CSPE)、クロロスルホン化ポリプロピレン、ブロモスルホン化ポリエチレン、ブロモスルホン化ポリプロピレン、およびその混合物から選択される。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中のすべてのハロスルホン化オレフィンポリマーはCSPEである。
【0021】
いくつかの実施形態において、ニトリル、カルボキシル、カルボン酸エステル、エーテル、パーオキシエステル、またはその組み合わせから選択される、ポリオレフィン上の置換基を有さない、少なくとも1種のハロスルホン化オレフィンポリマーが使用される。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中の全てのハロスルホン化オレフィンポリマーは、ポリオレフィン上にニトリル、カルボキシル、カルボン酸エステル、エーテル、パーオキシエステル、またはその組み合わせから選択される置換基を有さない。いくつかの実施形態において、ポリオレフィン上にハロゲンおよびハロスルホニル基以外の置換基を有さない、少なくとも1種のハロスルホン化オレフィンポリマーが使用される。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中の全てのハロスルホン化オレフィンポリマーはポリオレフィン上にハロゲンおよびハロスルホニル基以外の置換基を有さない。
【0022】
本明細書において用いられる場合、成分の「有意な量」とは、組成物の性能に影響を及ぼす量である。いくつかの実施形態において、ポリマーまたは樹脂である成分は、前記成分の乾燥重量の、ポリマー(a)およびポリマー(b)の乾燥重量の合計に対する比が0.005以下であるならば、有意な量で存在すると考えられる。
【0023】
1種より多いフィルム形成性ポリマーが使用される実施形態において、各フィルム形成性ポリマーは、互いに独立して、任意の方法により製造できる。様々な方法が当分野において公知である。例えば、ハロゲン化オレフィンポリマーおよび/またはハロスルホン化オレフィンポリマーの製造に関して、ハロゲン原子および/またはスルホニルハライド基は重合前のモノマー上に存在してもよく、これらは重合後のポリマー上に付けられてもよく、あるいはどちらの方法も使用できる。
【0024】
1種より多いフィルム形成性ポリマーが使用される実施形態において、各フィルム形成性ポリマーは互いに独立して、当分野において公知の様々な方法のいずれかにより調製することができる。調製法は、本発明にとって重要ではない。例えば、水性組成物が望ましい場合、任意のフィルム形成性ポリマーは水性形態において製造できるか、そうでなければ、ある都合のよい形態に製造され、その後に水性形態に変換できるかのいずれかでありうる。いくつかの実施形態において、フィルム形成性ポリマーは1以上のエチレン性不飽和モノマーの水性乳化重合により製造され、結果として得られるポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール、1以上の非ポリマー性界面活性剤、またはその組み合わせで安定化することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、1以上のフィルム形成性ポリマーは、有機溶媒中溶液として調製される。このような実施形態において、フィルム形成性ポリマーは溶液重合により製造することができ、この溶液において、任意にさらに希釈して使用されるか、または任意の方法で製造され、単離され、次いで所望により有機溶媒中に溶解させることができる。1以上のフィルム形成性ポリマーが有機溶媒中溶液の形態である実施形態において、このような溶液は、所望により、その後水性ラテックスに変換できる。ポリマーの有機溶液をラテックスに変換する一方法は、界面活性剤および水を溶液に高剪断下で添加して、ポリマーを乳化させ、次いで溶媒を除去することである。
【0026】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のフィルム形成性ポリマーは水性乳化重合以外の方法により重合される。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中の全てのフィルム形成性ポリマーは水性乳化重合以外の方法により重合される。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明の実施は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびその混合物から選択される非オレフィンポリマーの使用を含む。いくつかの実施形態において、水中に不溶性である1以上の非オレフィンポリマーが使用される。25℃で水100グラム中に1グラム未満の化合物が溶解するならば、この化合物は水中に不溶性である。いくつかの実施形態において、25℃で、100グラムの水中、0.3グラム以下、または0.1グラム以下、または0.03グラム以下の溶解度を有する、少なくとも1種の非オレフィンポリマーが使用される。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中の全てのフェノール樹脂(もしあれば)および接着剤組成物中の全てのエポキシ樹脂(もしあれば)は水中に不溶性である。
【0028】
独立して、いくつかの実施形態において、1種以上のフィルム形成性ポリマーと「溶媒相溶性」である、少なくとも1種の非オレフィンポリマーが使用される。少なくとも1種の溶媒中で、2つの物質のそれぞれが25℃で溶媒100グラムあたり物質1グラム以上の量で可溶性である、当該少なくとも1種の溶媒が見出されるならば、これらの2つの物質は本明細書において、互いに「溶媒相溶性」と言われる。いくつかの実施形態において、組成物中の各フィルム形成性ポリマーと溶媒相溶性である少なくとも1種の非オレフィンポリマーが使用される。いくつかの実施形態において、各フィルム形成性ポリマーおよび各非オレフィンポリマーが個々に、25℃で溶媒中に、溶媒100グラムあたり物質1グラム以上の量で溶解する溶媒が使用される。
【0029】
いくつかの実施形態において、非オレフィンポリマーの乾燥重量の、すべてのフィルム形成性ポリマーの乾燥重量の合計に対する比は、0.01以上、または0.03以上、または0.1以上、または0.15以上、または0.2以上である。独立して、いくつかの実施形態において、非オレフィンポリマーの乾燥重量の、すべてのフィルム形成性ポリマーの乾燥重量の合計に対する比は、0.5以下、または0.4以下、または0.3以下である。
【0030】
いくつかの実施形態において、非オレフィンポリマーは、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、任意の有意な量(本明細書において前記定義のとおり)のフェノール樹脂を含まない。いくつかの実施形態において、組成物はフェノール樹脂を含まない。独立して、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、任意の有意な量の塩素化ポリオレフィンを含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、塩素化ポリオレフィンを含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は任意の有意な量のエポキシ樹脂を含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物はエポキシ樹脂を含まない。
【0031】
非オレフィンポリマーが使用される実施形態のうち、いくつかの実施形態において、非オレフィンポリマーは少なくとも1種のフェノール樹脂を含む。好適なフェノール樹脂は、例えば、レゾルシノールタイプのフェノール樹脂、ノボラックタイプのフェノール樹脂、およびその混合物を含む。
【0032】
非オレフィンポリマーが使用される実施形態のうち、いくつかの実施形態において、非オレフィンポリマーは少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。好適なエポキシ樹脂は、例えば、エポキシフェノール−ノボラック、エポキシクレゾール−ノボラック、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル類、トリグリシジルイソシアヌレート樹脂、N,N,N,N−テトラグリシジル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、類似の樹脂、およびその混合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、1種以上のエポキシクレゾール−ノボラック樹脂を含む。
【0033】
組成物が少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む実施形態において、エポキシ樹脂組成物の種類と独立して、エポキシ樹脂は、その分子量により有用に特徴づけることができる。いくつかの好適なエポキシ樹脂は、例えば、200以上、または500以上、または750以上、または1000以上の分子量を有する。独立して、いくつかの好適なエポキシ樹脂は、例えば5000以下、または2500以下、または2000以下、または1500以下の分子量を有する。
【0034】
組成物が少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む実施形態において、エポキシ樹脂の種類と独立して、エポキシ樹脂は、そのエポキシ価により有用に特徴づけることができる。いくつかの好適なエポキシ樹脂は、例えば、1キログラムあたりの当量で、1以上、または2以上、または3以上、または4以上のエポキシ価を有する。独立して、好適なエポキシ樹脂は、例えば、1キログラムあたりの当量で、8以下、または7以下、または6以下のエポキシ価を有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1以上の追加の成分を含有する。それぞれのこのような成分の量は、PHR(本明細書においては、成分の乾燥重量の、すべてのフィルム形成性ポリマーの乾燥重量の合計に対する比の100倍として定義される)により特徴づけられる。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1種以上のポリマー系界面活性剤を含有する。1つの好適なポリマー系界面活性剤は、例えば、ポリビニルアルコール(PVOH)である。ポリマー系界面活性剤が使用される実施形態において、ポリマー系界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、1PHR以上、または2PHR以上である。独立して、ポリマー界面活性剤が使用されるいくつかの実施形態において、ポリマー界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、10PHR以下、または8PHR以下、または6PHR以下、または5PHR以下である。
【0037】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1種以上のコロイド安定剤を含有する。いくつかの好適なコロイド安定剤は、例えば、セルロース化合物、例えば、ヒドロキシエチルセルロースである。コロイド安定剤が使用される実施形態において、コロイド安定剤の好適な量のいくつかは、例えば、0.1PHR以上、または0.2PHR以上、または0.3PHR以上である。独立して、コロイド安定剤が使用される実施形態において、コロイド安定剤の好適な量のいくつかは、例えば、1PHR以下、または0.8PHR以下、または0.6PHR以下である。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1種以上の非イオン性界面活性剤を含有する。いくつかの好適な非イオン性界面活性剤は、例えば、アルコキシレート、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー、およびその混合物である。好適なアルコキシレートには、例えば、構造、
R−O−(−CHCHO−)−H
(式中、Rは脂肪族基、芳香族基、脂肪族置換芳香族基、および芳香族置換脂肪族基、またはその混合物であり、xは5〜200である)を有するエトキシレートが含まれる。いくつかの実施形態において、Rはアルキル置換ベンゼンであり、構造R1−R2−(式中、R1は直鎖アルキル基であり、R2は芳香族環である)を有するものである。1つの好適な非イオン性界面活性剤はノニルフェノールエトキシレートである。
【0039】
非イオン性界面活性剤が使用される実施形態において、非イオン性界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、3PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上である。独立して、非イオン性界面活性剤が使用される実施形態において、非イオン性界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、30PHR以下、または20PHR以下、または15PHR以下である。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は1以上のアニオン性界面活性剤を含有する。アニオン性界面活性剤が使用される実施形態において、アニオン性界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、3PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上である。独立して、アニオン性界面活性剤が使用される実施形態において、アニオン性界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、30PHR以下、または20PHR以下、または15PHR以下である。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物中のアニオン性界面活性剤の量は、0.1PHR以下、または0.01PHR以下である。いくつかの実施形態において、アニオン性界面活性剤は存在しない。
【0042】
本発明の組成物は、ポリニトロソ化合物、ポリニトロソ前駆体またはその混合物から選択される1以上の架橋剤を含有する。ポリニトロソ化合物は、隣接しない核炭素原子と直接結合した少なくとも2つのニトロソ基を含有する芳香族炭化水素である。「核」炭素原子により、本発明者らは芳香族環の部分である炭素原子を意味する。好適な芳香族化合物は、縮合芳香核を包含する1から3個の芳香核を有し得る。好適なポリニトロソ化合物は、隣接しない核炭素原子と直接結合した2〜6のニトロソ基を有し得る。核炭素原子と結合した1以上の水素原子が、例えば、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アルアルキル、アルカリール、アリールアミン、アリールニトロソ、アミノ、およびハロゲンなどの有機または無機置換基により置換されている、置換ポリニトロソ化合物も、ポリニトロソ化合物の種類に含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、2個のニトロソ基を有する1種以上のポリニトロソ化合物を含有する。
【0043】
1以上のポリニトロソ化合物が使用されるいくつかの実施形態において、いくつかの好適なポリニトロソ化合物は、化学式R−Ar−(NO)(式中、Arはフェニレンまたはナフタレンであり、Rは1〜20個の炭素原子を有する1価有機基、アミノ基、またはハロゲンであり、mは0、1、2、3、または4である)を有する。mが1より大きいならば、R基は互いに同一であってもよく、または異なってもよい。Rは、いくつかの実施形態において、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルアルキル、アルカリール、アリールアミン、またはアルコキシ基であるか、またはRは、いくつかの実施形態において、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である。独立して、いくつかの実施形態において、mの値は0である。
【0044】
好適なポリニトロソ化合物のいくつかの例は、m−ジニトロソベンゼン、p−ジニトロソベンゼン、m−ジニトロソナフタレン、p−ジニトロソナフタレン、2,5−ジニトロソ−p−シメン、2−メチル−1,4−ジニトロソベンゼン、2−メチル−5−クロロ−1,4−ジニトロソベンゼン、2−フルオロ−1,4−ジニトロソベンゼン、2−メトキシ−1,3−ジニトロソベンゼン、2−ベンジル−1,4−ジニトロソベンゼン、2−シクロヘキシル−1,4−ジニトロソベンゼン、およびその混合物である。いくつかの実施形態において、ジニトロソベンゼン類、置換ジニトロソベンゼン類、ジニトロソナフタレン類、置換ジニトロソナフタレン類、およびその混合物から選択される1以上のポリニトロソ化合物が使用される。
【0045】
ポリニトロソ化合物の種類には、前記のような、ポリマー形態において存在する化合物、Czerwinski、米国特許第4,308,365号およびHargisら、米国特許第5,478,654号に記載されている化合物も含まれる。いくつかの実施形態において、p−ジニトロソベンゼンのポリマー形態、1,4−ジニトロソナフタレンのポリマー形態、およびその混合物から選択される1以上のポリニトロソ化合物が使用される。いくつかの実施形態において、1,4−ジニトロソベンゼンのポリマー形態が使用される。
【0046】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物中に存在するすべてのポリニトロソ化合物は、p−ジニトロソベンゼンのポリマー形態、1,4−ジニトロソナフタレンのポリマー形態、およびその混合物から選択される。いくつかの実施形態において、接着剤組成物中に存在するすべてのポリニトロソ化合物は、p−ジニトロソベンゼンのポリマー形態である。
【0047】
ポリニトロソ前駆体は、その少なくとも1つの生成物がポリニトロソ化合物である化学反応が可能な化合物である。いくつかの好適なポリニトロソ前駆体は、例えば、本明細書において前述のポリニトロソ化合物のいずれかの還元により製造できる化合物の構造を有する化合物である。いくつかの好適な前駆体は、例えば、置換p−キノンジオキシム類、p−キノンジオキシム、およびその混合物である。
【0048】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物は、有意な量の任意のポリニトロソ化合物を含有しない。いくつかの実施形態において、接着剤組成物はポリニトロソ化合物を含有しない。
【0049】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物は、有意な量の任意のポリニトロソ前駆体を含有しない。いくつかの実施形態において、接着剤組成物はポリニトロソ前駆体を含有しない。
【0050】
いくつかの実施形態において、架橋剤の量は、例えば、0.5PHR以上、または1PHR以上、または1.5PHR以上である。独立して、いくつかの実施形態において、ポリニトロソ化合物の量は、例えば、40PHR以下、または15PHR以下、または10PHR以下、または5PHR以下、または2.5PHR以下であってよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は1以上の防食顔料を含有する。いくつかの好適な防食顔料は、例えば、酸化鉛、酸化亜鉛、モリブデン酸塩で修飾された酸化亜鉛、他の防食顔料、およびその混合物である。いくつかの実施形態において、防食顔料は使用されない。防食顔料が存在するいくつかの実施形態において、防食顔料の量は、例えば、2PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上である。独立して、防食顔料が存在するいくつかの実施形態において、防食顔料の量は、例えば、20PHR以下、または15PHR以下、または12PHR以下であってよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は粘土を含有する。いくつかの実施形態において、粘土は使用されない。粘土が存在するいくつかの実施形態において、粘土の量は、例えば、2PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上である。独立して、粘土が存在する実施形態において、粘土の量は、例えば、20PHR以下、または15PHR以下、または12PHR以下であってよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、カーボンブラックを含有する。いくつかの実施形態において、カーボンブラックは使用されない。カーボンブラックが存在する実施形態において、カーボンブラックの量は、例えば、2PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上であってよい。独立して、カーボンブラックが存在する実施形態において、カーボンブラックの量は、例えば、20PHR以下、または15PHR以下、または12PHR以下であってよい。
【0054】
本発明の組成物は少なくとも1種の酸化剤(oxidizer)を含む。酸化剤は、酸素を棄てること、別の化合物から水素を除去すること、または電子を吸引して、負の電荷を獲得することの1以上を容易におこなう化合物である。酸化剤は酸化性剤(oxidiizing agent)とも呼ばれる。いくつかの好適な酸化剤としては、例えば、1.1ボルト以上、または1.2ボルト以上、または1.3ボルト以上の電位を有する化合物が含まれる。独立して、いくつかの実施形態において、接着剤組成物は少なくとも1種のポリニトロソ前駆体および少なくとも1種の酸化剤であって、互いに反応して少なくとも1種のポリニトロソ化合物を形成できるものを含有する。独立して、いくつかの実施形態において、接着剤組成物は、特定のポリニトロソ前駆体の酸化形態の構造を有する少なくとも1種のポリニトロソ化合物を含有し;接着剤組成物は、ポリニトロソ前駆体を酸化して前記ポリニトロソ化合物を形成できる、少なくとも1種の酸化剤も含有する。独立して、いくつかの実施形態において、接着剤組成物は、少なくとも1種のポリマー系ポリニトロソ化合物を含有し、ポリマー系ポリニトロソ化合物の少なくとも1種のモノマー単位は、特定のポリニトロソ前駆体の酸化形態の構造を有するポリニトロソ化合物であり、および接着剤組成物は、前記ポリニトロソ前駆体を酸化して、ポリニトロソ化合物を形成できる少なくとも1種の酸化剤も含有する。1つの好適な酸化剤は二酸化マンガンである。
【0055】
二酸化マンガンが使用されるいくつかの実施形態において、二酸化マンガンのいくつかの好適な形態としては、例えば、沈降アモルファス二酸化マンガン、別の物質(例えば、シリカ、カーボンブラック、またはその混合物)と共沈された二酸化マンガン、またはその混合物が含まれる。
【0056】
いくつかの実施形態において、酸化剤の架橋剤に対するモル比は、0.3以上、または0.75以上、または1.0以上である。独立して、いくつかの実施形態において、酸化剤の架橋剤に対するモル比は、5以下、または2以下、または1.5以下である。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1以上の分散剤を含有する。分散剤は、本明細書において用いられる場合、例えば、ポリマー系界面活性剤、ポリマー系コロイド安定剤、無機顔料の分散に通常用いられる分散剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびその混合物を含む。いくつかの実施形態において、分散剤は使用されない。1種以上の分散剤が使用されるいくつかの実施形態において、分散剤の量は、例えば、0.5PHR以上、または1.0PHR以上、または1.5PHR以上でありうる。独立して、1以上の分散剤が使用されるいくつかの実施形態において、分散剤の量は、例えば、10PHR以下、または5PHR以下、または2.5PHR以下でありうる。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1種以上のアミンを含有する。1種以上のアミンが使用されるいくつかの実施形態において、アミンの量は、例えば、0.1PHR以上、または0.2PHR以上、または0.5PHR以上でありうる。独立して、1種以上のアミンが使用されるいくつかの実施形態において、アミンの量は、例えば、4PHR以下、または3PHR以下、または2PHR以下でありうる。
【0059】
本発明の組成物が水性である実施形態において、水性組成物は、任意の方法により調製できる。いくつかの好適な方法は、例えば、有機溶媒中溶液の使用を含む。すなわち、フィルム形成性ポリマーおよび組成物において用いられる任意の他のポリマーのうちのいずれか1つ、または2以上の任意の組み合わせを含有する有機溶媒中溶液を製造できる。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、水と混和性でない。独立して、いくつかの実施形態において、100℃未満の沸点を有する溶媒が使用される。いくつかの好適な有機溶媒は、例えば、アルキル芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、またはキシレンを含む、25℃で液体である芳香族および置換芳香族化合物である。
【0060】
1以上のポリマーの有機溶媒中溶液を使用するいくつかの実施形態において、このような溶液は、乳化のプロセスによりラテックスに変換される。ラテックスは、例えば、次に例えば真空ストリッピングにより除去される有機溶媒を有しうる。水中に分散された少なくとも1種のポリマーの別々の粒子を含有する分散液は本明細書においてラテックスとして知られている。
【0061】
本発明の組成物の形成は、例えば、ラテックスを次のものの1以上と混合することを含む:1以上のポリニトロソ化合物またはポリニトロソ前駆体、1以上の防食顔料、粘土、カーボンブラック、二酸化マンガン、アミン、またはその一部または全部の混合物。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、有意な量(本明細書の定義のとおりである)のポリイソシアネートを含有しない。ポリイソシアネートは、2以上のイソシアネート基を有する化合物である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、有意な量のイソシアネート化合物を含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物はポリイソシアネートを含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物はイソシアネート化合物を含有しない。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明の接着剤組成物は、2以上の基体を一緒に結合させるために使用される。例えば、接着剤組成物の層を第一基体に適用することができる。いくつかの実施形態において、接着剤組成物の層は任意に、接着剤組成物の層を任意の追加の基体と接触させる前に乾燥してもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の基体を接着剤組成物の層と接触させる。
【0064】
いくつかの実施形態において、金属である第一基体が使用される。一つの好適な金属はスチールである。このような実施形態のいくつかにおいて、接着剤組成物の層を金属に適用し、次いで乾燥させる。このような実施形態において、プライマーを金属に適用し、および乾燥してもよいし、しなくてもよい。プライマーが使用される場合、接着剤組成物の層をプライマー層に適用し、次いで乾燥させる。接着剤層の乾燥は、任意に25℃よりも高い温度で行われてもよい。いくつかの実施形態において、未硬化ゴム配合物(グリーンゴム、架橋化学物質、および任意に、他の成分を含む)の層を次いで(任意に乾燥された)接着剤組成物の層に適用する。このように形成された物品を、いくつかの実施形態において、125℃よりも高く加熱して、ゴム配合物を硬化させる。
【0065】
本発明は任意の特定のメカニズムに限定されないが、いくつかの実施形態において、いくつかの組成物は次のように挙動をすることが意図される。いくつかの実施形態において、ポリマー系ポリニトロソ化合物が使用される。いくつかのこのような実施形態において、接着剤組成物を未硬化ゴムと接触させ、125℃以上に加熱し、ゴムはこの温度に暴露することにより硬化する。このような実施形態において、ポリマー系ポリニトロソ化合物は、接着剤組成物中の1種以上のポリマー上、ゴム分子上、または両方における二重結合と相互作用することが想定される。このような実施形態において、硬化プロセスの1つの生成物は、(接着剤またはゴムのいずれかにおける)1つのポリマー鎖上の、ある不飽和部位を、(独立して、接着剤またはゴムのいずれかにおける)少なくとも1つの他のポリマー鎖上の少なくとも1つの不飽和部位と結合させる1以上の架橋であると考えられる。このような架橋は、ポリマー系ポリニトロソ化合物由来のモノマー系ポリニトロソ化合物の残基であると考えられる。さらに、硬化プロセスの別の生成物は、ポリニトロソ前駆体の1以上の分子であると考えられる。このようなポリニトロソ前駆体は、組成物中の酸化剤と反応して、ポリニトロソ化合物を形成することができ、これは次にさらなる架橋を形成することができると考えられる。
【0066】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物の層を金属基体に適用し、乾燥させる。このような実施形態のいくつかにおいて、金属基体および乾燥された接着剤組成物をプリベーク(すなわち、特定のゴム配合物の硬化に適切な温度に加熱)する。次いで、金属基体および乾燥された接着剤組成物を前記温度に一定時間保持した後、特定の未硬化ゴム配合物の層を乾燥された接着剤配合物の層に適用し、ゴム配合物を硬化させるために十分な時間、該温度で、このように形成された物品を保持する。
【0067】
本明細書および特許請求の範囲の目的上、ここでで言及されている範囲および比の限度は組み合わせられ得ることを理解すべきである。例えば、ある特定のパラメーターに対して60から120まで、および80から110までの範囲が言及されている場合には、60から110まで、および80から120までの範囲も意図されている。さらに別の例として、ある特定のパラメーターが1、2および3の好適な最小値を有することが開示されており、およびこのパラメーターが9および10の好適な最大値を有することが開示されている場合には、以下の範囲もすべて意図されているものと理解される。1から9まで、1から10まで、2から9まで、2から10まで、3から9まで、および3から10まで。
【実施例】
【0068】
実施例1:ラテックス
ラテックスの製造において使用された成分。
【表1】

【0069】
ポリマーラテックスは次のようにして製造した。
a.エマルジョンを製造するために使用される容器中にBPDCD(キシレン中40重量%溶液)を入れ、アジテーターを開始させた。
b.撹拌しながら、固体CSMポリマーおよび相溶化ポリマー(固体または液体形態、溶液でない)を添加し、全てのポリマーが溶解するまで室温で混合した。
c.使用される装置の最大まで撹拌を増大させた(Cowlesミキサーが使用された場合には、撹拌は3500rpmを超えた;混合乳化機またはローターステーターが使用された場合には、撹拌は5000rpmを超えた;異なる装置を使用することにより効果の差は観察されなかった)。界面活性剤およびコロイド安定化物質(前記リストの最初の4つの成分)をポリマー溶液に添加し、次の物質に取りかかる前に固体界面活性剤を溶解させた。
d.全ての界面活性剤を入れた時点で、溶液は均質であり、60〜70分にわたって水をゆっくりと添加した。反転点(inversion point)に達したら、水の添加速度を増大させた。反転点は、エマルジョンの粘度が濃厚なペーストと同程度の最大値に達する点であって、追加の水を急速に添加すると、粘度が低下する。これは、エマルジョンが油中水エマルジョンから水中油エマルジョンに移行する点である。
e.水が全て添加されたら、バッチをストリッピング容器に移し、バッチを次に70〜80℃に加熱した。
f.バッチが所望の温度に達したら、容器中の圧力を低下させて、溶媒を除去した。
注:エマルジョン1B−Cに関して、CSMおよびCPEを溶媒に入れ、溶解させ、プロセスは前記のように進行した。
【0070】
実施例2:接着剤組成物
【表2】

【0071】
実施例3:接着剤配合物の試験
引っ張りボタン試験(本明細書においては「ボタン」)(ASTM D−429A)、90°剥離試験(本明細書において「剥離」)(ASTM D−429B)、およびプリベーク試験(同じくASTM D−429B)を用いて接着剤配合物を試験した。90°剥離試験および引っ張りボタン試験に関して、スチールバーを清浄化し、グリットブラストし、次いでRobond(商標) TR−100(Rohm and Haas Co.)で下塗りし、次いで0.0102mmから0.0152mm(0.0004インチから0.0006インチ)の厚さにスプレーすることにより、接着剤配合物でコートした。接着剤層を70℃で10分間乾燥した。次いで、ゴム層を適用し、次のように硬化させた。
【0072】
【表3】

【0073】
試験結果は次の通りであった。
【表4】

【0074】
サンプル2Aおよび比較サンプル2B−Cは、比較サンプル2B−Cが酸化剤を欠き、かつ、より高レベルのポリマー系ジニトロソベンゼンを有する以外は類似している。これらの2つのサンプルを比較した場合、2Aは低減された量のポリマージニトロソベンゼンを有しているにもかかわらず、2Aおよび2B−Cは匹敵する結果を有する。
【0075】
同様に、サンプル2Cおよび比較サンプル2D−Cは、比較サンプル2D−Cが酸化剤を欠き、かつより高レベルのポリマー系ジニトロソベンゼンを有する以外は類似している。これらの2つのサンプルを比較した場合、低減された量のポリマー系ジニトロソベンゼンを有しているにもかかわらず、2Cおよび比較サンプル2D−Cは類似の結果を有する。いくつかの場合において、2Cは実際に、特にプリベーク特性において改善された性能を有する。ジニトロソベンゼン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1種のフィルム形成性ポリマー、
(ii)ポリニトロソ化合物、ポリニトロソ前駆体、およびその混合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、および
(iii)少なくとも1種の酸化剤を含み、
酸化剤の架橋剤に対するモル比が0.3〜2.0である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記フィルム形成性ポリマーが、ハロゲン化ポリオレフィン、ハロスルホン化ポリオレフィン、およびその混合物から選択される、請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記架橋剤が、p−キノンジオキシムを含む、請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記接着剤組成物が水性である、請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記酸化剤が二酸化マンガンを含む、請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記架橋剤がポリマー系ジニトロソベンゼンを含む、請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項7】
基体を一緒に結合させる方法であって、
(I)請求項1記載の接着剤組成物の層を第一基体に、場合によって前記第一基体にプライマーを適用した後に適用し、
(II)任意に、前記接着剤組成物の前記層を乾燥し、および次いで
(III)1以上の追加の基体を前記接着剤組成物の前記層と接触させることを含み、
前記第一基体および前記追加の基体:の1以上がエラストマーである方法。
【請求項8】
前記第一基体が金属であり、および1以上の前記追加の基体がエラストマーである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
請求項7記載の方法により形成される物品。
【請求項10】
前記第一基体が金属であり、および1以上の前記追加の基体がエラストマーである、請求項9記載の物品。

【公開番号】特開2008−150589(P2008−150589A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−294696(P2007−294696)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】