説明

エラストマー組成物およびゴムローラ

【課題】耐摩耗性に優れたエラストマー組成物、および当該エラストマー組成物から作製され、摩擦係数が高く、かつその摩擦係数を長期間維持できる耐久性に優れたゴムローラを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴムの少なくとも1種を含むゴム成分100質量部に対し、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物を2〜150質量部、軟化剤を50〜250質量部、複数突起を有するフィラーを1〜200質量部、および架橋剤を含み、前記ゴム成分が前記架橋剤による動的架橋で前記熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物中に分散されていることを特徴とするエラストマー組成物、および当該エラストマー組成物を用いるゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー組成物および該エラストマー組成物を用いて成形されているゴムローラに関し、詳しくは、耐摩耗性に優れ、画像形成装置の紙送りローラとして好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター、レーザープリンター、静電式複写機、ファクシミリ装置や自動預金支払機(ATM)等の画像形成装置の給紙機構、画像形成機構、定着機構および排紙機構等には紙送りローラが用いられている。該紙送りローラとは、紙(紙以外の薄葉体状物を含む。以下同様。)と接触して回転およびロール表面の摩擦によって紙を搬送するローラであり、具体的には、給紙ローラ、搬送ローラ、レジストローラ、転写ローラ、排紙ローラ等として用いられている。
【0003】
紙送りローラには、紙との摩擦係数が高いことが要求され、しかも、この高い摩擦係数が長期間維持されることが要求される。しかし、実際には通紙枚数が増えるとともにローラと紙との摩擦係数が低下して、紙の不送りが発生するという問題が生じ得る。その原因としては、紙との摩擦によってローラの表面形状が変化すること、紙粉やトナーに含まれる低分子量の樹脂やワックスがローラ表面に付着すること等が考えられている。
【0004】
上記問題を解決するため、例えば、特開2003−128296号公報(特許文献1)では、周面をローレット形状の凹凸を形成するという手段が挙げられる。この手段は吐出流路の断面形状が凹凸の口金を用いた押出成形により、比較的安価に且つ工程数の増加を招くことなく製造することができるメリットがある。
しかし、紙送りローラの外周面に幅が数mm程度の溝(凹部)を設けると、紙送りローラと紙の接触面積が大きく減少するため、摩擦係数が低下し得るという問題がある。また、摩耗により溝の深さが浅くなり、繰り返しの使用により溝が消滅すると、異物の付着を防止することができず、摩擦係数の低下につながる問題もある。
【0005】
そこで、紙に対する引っ掻き効果を発揮できる紙送りローラが開発されている。
例えば、特開2004−346137号公報(特許文献2)には、エラストマーからなるマトリクス中に、該マトリクスよりも耐摩耗性を有する樹脂がナノ分散化させている。この場合、マトリクスの表面露出部分が摩耗すると、前記樹脂が突起として残存し、摩擦係数を維持させている。
また、特開2005−280964号公報(特許文献3)では、特定形状の短繊維を含むゴム組成物からなる紙送りローラが開示され、該短繊維の少なくとも一部をローラ表面と接する平面と10度以上90度以下の角度で径方向に配向させ、該短繊維の一端をローラ内部からローラ表面に露出させている。
これらの紙送りローラは紙との摩擦係数が高く、しかも高い摩擦係数が長期間維持されるが、通紙による摩擦係数の低下を抑制し、耐摩耗性に優れたゴムローラとするためには、更なる改良の余地がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−128296号公報
【特許文献2】特開2004−346137号公報
【特許文献3】特開2005−280964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐摩耗性に優れたエラストマー組成物を提供することを課題とすると共に、該エラストマー組成物から成形され、摩擦係数が高く、該摩擦係数を長期間維持できる耐久性に優れたゴムローラを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、ジエン系ゴムまたはEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)の少なくとも1種を含むゴム成分100質量部に対し、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物を2〜150質量部、軟化剤を50〜250質量部、複数突起を有するフィラーを1〜200質量部、および架橋剤を含み、
前記ゴム成分が前記架橋剤による動的架橋で前記熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物中に分散されていることを特徴とするエラストマー組成物を提供している。
【0009】
本発明者らは、摩擦係数低下の抑制について鋭意検討したところ、特許文献2および特許文献3において引っ掻き効果を発揮しているナノ分散化された樹脂や特定形状の短繊維が紙送り時の刺激や紙との強い摩擦により脱落する場合があり得ることを知見した。この知見に基づき脱落しにくく、かつ引っ掻き効果を有する材料について検討した結果、前記した2以上の突起を有するフィラーを用いている。
前記フィラーを用いると、図1に示すように、前記エラストマー組成物から紙送りローラ10を成形した場合、2以上の突起を有するフィラー11の少なくとも1つの突起11aはエラストマー組成物12内に埋まってアンカー効果を発揮し、給紙の刺激や摩耗によってフィラーの脱落を防ぐことができる一方、他の突起11bがローラ10の表面から突出するミクロの突起となり、紙との引っ掻き効果を発現でき、長期間にわたり紙との間に高い摩擦係数を維持させることができ、給紙性能を低下を防止することができる。
【0010】
本発明において、前記「複数突起を有するフィラー」とは、隣接する突起の各先端とフィラーの中心とを結ぶ直線間の角度が180度未満、具体的には、図2(a)に示すように突起11aの先端とフィラーの中心(変曲点)Pを結ぶ直線S1と、突起11bの先端とフィラーの中心(変曲点)Pを結ぶ直線S2との交差角度Xが180度未満である場合、複数突起を有するフィラーであるとしている。
【0011】
言い換えると、突起11aの先端からフィラーの表面に沿って他の突起11bの先端まで最短距離で結ぶと折曲点11xを有する形状であり、突起が2個の「く」の字状や、フィラーの中心から3以上の突起が放射状に突出する形状としている。
図2(b)に示すように、Xが180度で、突起11aの先端からフィラーの表面に沿って突起11bの先端まで最短距離を結ぶ線上に折曲点11xがあっても180度以上であれば、本発明の複数突起を有するフィラーからは除外している。よって、フィバーや線状のフィラーは本発明の複数突起を有するフィラーから除外される。
【0012】
前記フィラーの突起数は、特に限定されず、2以上であればよいが、3以上であることが好ましい。上限値は特に限定されないが、突起数が多くなると製造コストが上がり品質維持も難しくなることから20以下程度が好ましい。特に、突起数は3以上6以下であることがより好ましい。
複数突起を有するフィラーにおいて、前記任意の隣接する2つの突起間の角度は、0度を超えて180度未満であればよいが、より好ましくは、30〜150度で、特に60〜120度であることがより好ましい。
突起が3以上の場合、突起間の角度Xは2以上存在するが、これらの角度Xは同一とする必要はないが、角度Xの差の最大値が100度以下であることが好ましく、より好ましくは60度以下、さらに、30度以下が好ましく、実質的に0度である同一角度とすることが最も好ましい。
なかでも、複数突起を有するフィラーは4つの突起を有するテトラポッド状のフィラーであることが最も好適である。
【0013】
複数突起を有するフィラーにおいて、各突起の長さは1〜5000μmの範囲としている。これは、突起の長さが1μm未満であるとエラストマー組成物内でのアンカー効果が十分に示されず、フィラーの脱落を有効に防止できなくなる可能性がある一方、突起の長さが5000μmをこえるとエラストマー組成物の耐摩耗性が著しく低下する傾向があることによる。各突起の長さは、好ましくは3〜1000μm、さらに3〜200μmが好ましく、特に、10〜200μmが好ましい。なお、突起の長さとはフィラーの中心から突起の先端までの距離をいう。
【0014】
複数突起を有するフィラーにおいて、各突起の太さ(径)は0.5〜200μmの範囲としている。これは、突起の径が0.5μm未満であると紙の引っ掻き効果が十分に得られなくなる可能性がある一方、突起の径が200μmをこえるとエラストマー組成物の耐摩耗性が著しく低下する傾向があることによる。各突起の太さは好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは0.5〜20μm、特に0.7〜15μmが好ましい。
【0015】
複数突起を有するフィラーの材質は、エラストマー組成物内でのアンカー効果と紙に対する引っ掻き効果を発揮できる程度の強度があれば特に限定されない。
具体的には、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムナトリウム、ホウ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、二ホウ化チタン、石膏、アルミナ、クリソタイル、セピオライトまたはゾノトライト等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、沖縄県産の星の砂などの混合物であってもよい。
なかでも、複数突起を有するフィラーとしては酸化亜鉛ウィスカが最も好ましい。
【0016】
複数突起を有するフィラーは、ゴムへの接着力を向上させるために、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルアルコール(PVA)およびカップリング剤やシリル化剤などで表面処理されていてもよい。カップリング剤としてはシラン系、クロム系、チタン系、シリルパーオキサイド系、有機リン酸系のカップリング剤が使用できるが、特にシランカップリング剤が好ましい。
表面処理の仕方は一般的な粉体の表面処理方法が適用できる。表面処理剤のスラリーの中にフィラーを入れてよく混合した後フィラーを取り出す方法や、表面処理剤を含んだ溶液をスプレーする方法などが挙げられる。
【0017】
複数突起を有するフィラーは、下記に詳述するゴム成分100質量部に対し1〜200質量部の割合で配合されている。これは、フィラーの配合量が1質量部未満であると、通紙による摩擦係数低下の抑制効果が十分に得られない一方、フィラーの配合量が200質量部を越えると、エラストマー組成物の強度や耐摩耗性が低下し、そのうえ製造コストも高くなりすぎるなどの問題が生じるによる。
前記フィラーの配合量は、好ましくは、10〜200質量部、より好ましくは30〜200質量部、特に50〜180質量部が好ましい。
【0018】
前記複数突起を有するフィラーは動的架橋熱可塑性エラストマーに分散されている。
前記動的架橋熱可塑性エラストマーとは、具体的に、ジエン系ゴムまたはEPDMゴムの少なくとも1種を含むゴム成分100質量部に対し、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物を2〜150質量部、軟化剤を50〜250質量部および架橋剤を含み、前記ゴム成分が前記架橋剤による動的架橋で前記熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物中に分散されているエラストマーである。
この動的架橋熱可塑性エラストマーについて下記に詳述する。
【0019】
本発明のエラストマー組成物は、ゴム成分としてジエン系ゴムまたはEPDMゴムの少なくとも1種を含んでいる。
前記ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)または1,2−ポリブタジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
EPDMゴムにはゴム成分のみからなる非油展タイプのEPDMゴムとゴム成分とともに親展油を含む油展タイプのEPDMゴムとが存在するが、本発明ではいずれのタイプのものも使用可能である。EPDMゴムにおけるジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエンまたはシクロオクタジエンなどが挙げられる。
【0020】
ゴム成分としてジエン系ゴムまたはEPDMゴム以外の他のゴムを含んでいてもよい。前記「他のゴム」としては、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴムまたはクロロスルフォン化ポリエチレン等が挙げられる。
【0021】
本発明のエラストマー組成物においては、ゴム成分としてEPDMゴムを必ず含むことが好ましい。全ゴム成分に占めるEPDMゴムの比率は50質量%以上が好ましい。これは、EPDMゴムは主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖に二重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気または光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくく、従って最終製品、例えばゴムローラの耐候性を高めることができるためである。
より好ましくは80質量%以上、特に95〜100質量%が好ましい。
【0022】
本発明のエラストマー組成物は熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性樹脂の混合物を含んでいる。熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物は、混合後もエラストマーであることが望ましい。その理由は、ゴム成分を分散させて最終的に得られるエラストマー組成物の硬度がより低くなるからである。
【0023】
前記熱可塑性エラストマーとしては公知の熱可塑性エラストマーを使用できる。
具体的には、例えばスチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、アイオノマー、エチレンエチルアクリレート樹脂(EEA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0024】
前記熱可塑性エラストマーのうち、スチレン系エラストマーを用いることが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン化合物を主体とするブロック(B)のブロック共重合体および該ブロック共重合体の共役ジエン重合単位を水素添加したものを例示することができる。前記スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンまたはt−ブチルスチレンなどを例示することができる。これらモノマーは1種類のみを使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。スチレン系モノマーとしては、なかでもスチレンが好ましい。また前記共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチルブタジエンなどを例示することができる。これらは1種類のみを使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0025】
スチレン系エラストマーとして、具体的にはスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)またはスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
スチレン系エラストマーのなかでも、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることがより好ましく、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)を用いることが特に好ましい。
【0026】
前記熱可塑性樹脂としては公知のものを使用でき、例えば、オレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン等が挙げられる。なかでもオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンエチルアクリレート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂またはアイオノマー樹脂等が挙げられるが、ポリプロピレンまたはポリエチレン用いることが好ましく、ポリプロピレンを用いることがより好ましい。
【0027】
本発明のエラストマー組成物は、前記熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物をゴム成分100質量部に対し2〜150質量部の割合で含んでいる。
前記混合物の配合量が2質量部未満であると、樹脂成分が少なくなりすぎてゴム成分を樹脂マトリックス中に分散できず加工がしにくくなると共に、成形品の強度および耐摩耗性が低下する。一方、前記混合物の配合量が150質量部を超えると、樹脂成分が多くなりすぎるため硬度が高くなる。その結果、本発明のエラストマー組成物からなるゴムローラを紙送りローラとして用いた場合、紙に対する摩擦係数が低下し、かつ耐摩耗性も低下するという問題が生じ得る。
【0028】
前記混合物において熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂との混合割合は、使用するエラストマーおよび樹脂に応じて適切な混合割合を決定できるが、熱可塑性エラストマー100質量部に対して熱可塑性樹脂が1質量部以上100質量部以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂の混合量が1質量部未満であると熱可塑性樹脂を混合した効果が見られないからであり、熱可塑性樹脂の混合量が100質量部より多いと混合物がエラストマーでなくなるからである。熱可塑性樹脂の混合量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して5〜90質量部であることがより好ましく、10〜80質量部であることがさらに好ましい。
【0029】
さらに、本発明のエラストマー組成物は、軟化剤をゴム成分100質量部に対し50〜250質量部の割合で含んでいる。軟化剤の配合量が50質量部未満であると、加工しにくくなると共に、ゴムローラに成形したときに低硬度を実現することが困難になる。一方、軟化剤の配合量が250質量部を超えると、ゴムローラ等の成形品に成形したときに強度や耐摩耗性が低下するという問題が生じ得る。
軟化剤としては市販されている石油系軟化剤または可塑剤を任意に使用できる。石油系軟化剤としては、アロマ系、ナフテン系、パラフィン系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなる公知の合成油、またはプロセスオイルが挙げられる。可塑剤としては、フタレート系、アジペート系、セバケート系、フォスフェート系、ポリエーテル系、ポリエステル系等の可塑剤が挙げられる。
【0030】
本発明においては、パラフィン系オイルが軟化剤として好ましい。パラフィン系オイルはアロマ分を全く含まないものが好ましい。アロマ分を少しでも含むと紙を汚染してしまう可能性があるからである。本発明においてはなかでもパラフィン系プロセスオイルが軟化剤として特に好ましい。
【0031】
本発明のエラストマー組成物は架橋剤を含む。
該架橋剤の配合量は架橋剤の種類等により適宜選択すればよいが、例えばゴム成分100質量部に対して1質量部以上20質量部以下とすることが好ましい。架橋剤の配合量が1質量部未満であると架橋不足が起こり成形品の耐久性が低下してしまうことがある。逆に、架橋剤の配合量が20質量部を越えると過剰架橋となって動的架橋時の異常発熱により熱劣化が生じてしまうことがある。
【0032】
架橋剤としては、例えば樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤など公知の架橋剤を用いることができる。2種以上の架橋剤を組み合わせて用いてもよい。なかでも、架橋剤として樹脂架橋剤を含むことが好ましい。
樹脂架橋剤は加熱等によってゴムに架橋反応を起させる合成樹脂であり、例えば、フェノール樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられる。なかでもフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
フェノール樹脂の具体例としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノールもしくはレゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドもしくはフルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が挙げられる。フェノール樹脂のアルデヒドユニットに少なくとも一個のハロゲン原子が結合したハロゲン化フェノール樹脂を用いることもできる。
特に、ベンゼンのオルト位またはパラ位にアルキル基が結合したアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとの反応によって得られるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相溶性に優れるとともに反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基は、通常、炭素数が1から10のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等が挙げられる。また、このアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のハロゲン化物も好適に用いられる。
さらに、硫化−p−第三ブチルフェノールとアルデヒド類とを付加縮合させた変性アルキルフェノール樹脂や、アルキルフェノール・スルフィド樹脂も樹脂架橋剤として使用可能である。
【0034】
前記樹脂架橋剤の配合量はゴム成分100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましい。これは、樹脂架橋剤の配合量が2質量部未満ではゴム成分の架橋が不十分となるため耐摩耗性が劣ることとなる一方、樹脂架橋剤の配合量が20質量部を越えると、ゴムローラに成形したときに硬くなりすぎて紙との摩擦が低下するなどの問題が発生することによる。樹脂架橋剤の配合量はゴム成分100質量部に対し5〜15質量部であることが好ましい。
【0035】
過酸化物架橋剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,4−ビス[(tert−ブチル)パーオキシイソプロピル]ベンゼン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジtert−ブチルパーオキシドまたは2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキセン等の有機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記過酸化物架橋剤の配合量はゴム成分100質量部に対し1〜3質量部であることが好ましく、1〜2.5質量部であることがより好ましく、1〜2質量部であることがさらに好ましい。これは、過酸化物架橋剤の配合量が1質量部未満ではゴム成分の架橋が不十分となるため耐摩耗性の改善効果が得られない一方、過酸化物架橋剤の配合量が3.0質量部を越えると分子切断による物性低下が起ってしまううえに分散不良などが発生して加工も困難となることによる。
過酸化物架橋剤の配合量は、樹脂架橋剤等の他の架橋剤と併用する場合、ゴム成分100質量部に対し0.2〜2質量部程度の少量でも良い。
【0037】
上記過酸化物架橋剤を用いる場合は、過酸化物架橋剤とともに共架橋剤を配合してもよい。共架橋剤とはそれ自身も架橋するとともにゴム分子とも反応して架橋し全体を高分子化する働きをするものである。この共架橋剤を用いて共架橋することにより架橋分子の分子量が増大し、耐摩耗性を向上させることができる。
上記共架橋剤としては、例えば多官能性モノマー、メタクリル酸あるいはアクリル酸の金属塩、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、複素環ビニル化合物、アリル化合物、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマー類、ジオキシム類等が挙げられる。
当該共架橋剤の配合量は共架橋剤の種類または用いる他の成分との関係で適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して好ましくは5質量部以上20質量部以下、より好ましくは10質量部以上15質量部以下とする。
【0038】
本発明のエラストマー組成物には、上述の複数突起を有するフィラー以外にも、必要に応じて他の充填剤を配合することができる。他の充填剤としては、例えばシリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、二塩基性亜リン酸塩(DLP)、塩基性炭酸マグネシウムまたはアルミナ等の粉体を挙げることができる。他の充填剤を配合する場合、他の充填剤はエラストマー組成物全質量の15質量%以下で配合するのが好ましい。これは他の充填剤の配合はエラストマー組成物の引張強度および引裂強度等の改善には有効であるものの、あまり多く配合するとエラストマー組成物の柔軟性が低下してローラとした時のローラの摩擦係数が低下する傾向を示すためである。
本発明のエラストマー組成物においては、上記成分の他に、本発明の目的に反しない限り、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤または気泡防止剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0039】
前記エラストマー組成物全体に対して、軟化剤や複数突起を有するフィラー、他の充填剤等の非ポリマー分を除くポリマー分(ゴム成分+熱可塑性エラストマー+熱可塑性樹脂+樹脂架橋剤+その他の添加樹脂)の割合は40質量%以上95質量%以下が好ましく、59質量%以上95質量%以下がより好ましい。
40質量%以上としているのはエラストマー組成物の耐摩耗性を確保するためであり、95質量%以下としているのはエラストマー組成物の混練り加工性および成形性を確保するためである。
【0040】
本発明のエラストマー組成物では、前記ゴム成分を前記架橋剤により動的架橋し、熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性樹脂の混合物中にゴム成分を分散させている。
前記動的架橋は、塩素、臭素、フッ素またはヨウ素等のハロゲンの存在下に行ってもよい。動的架橋時にハロゲンを存在させるには、上述したハロゲン化された樹脂架橋剤を用いるか、エラストマー組成物中にハロゲン供与性物質を配合してもよい。前記ハロゲン供与性物質としては、塩化第二スズ等の塩化スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅等が挙げられる。ハロゲン供与性物質は1種類の物質を単独で用いてもよく、2種以上の物質を併用してもよい。
架橋反応を適切に行うために架橋助剤(活性剤)を用いてもよい。架橋助剤としては金属酸化物が使用され、特に酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましい。
【0041】
本発明のエラストマー組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
即ち、前記ゴム成分、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物、軟化剤、複数突起を有するフィラー、架橋剤、さらに所望により他の添加剤をヘンシェルミキサー、スーパーミキサーまたはタンブラー型ミキサー等の混練機に投入して混練する。この混練物を一軸もしくは2軸押出機またはニーダー等に投入し、150〜250℃に加熱しながら架橋剤によりゴム成分を動的架橋し、熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性樹脂の混合物中にゴム成分を分散させる。
【0042】
本発明のエラストマー組成物は、各種成形物あるいはシート、フィルム等の形態で利用される。成形物の場合には熱可塑性エラストマーの成形に適用される成形加工方法をすべて適用できる。具体的には、射出成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、ブロー成形などが挙げられるが、特に各種射出成形や押出成形あるいは真空成形が適している。
【0043】
以上述べてきた本発明のエラストマー組成物は種々の用途に使用することができる。なかでも、複写機、プリンター、ファクシミリまたはATM等のOA機器等において紙の搬送に寄与する部材として用いることが好ましい。より具体的には、紙の重送を防止するための分離シートや分離パッド、紙送りローラに応用することができる。なかでも、給紙機構を構成する給紙ローラ、搬送ローラまたは排紙ローラ等の紙送りローラに応用することが特に好ましい。
【0044】
本発明は、前記エラストマー組成物を用いて成形されるゴムローラを提供している。
前記ゴムローラは少なくとも表層に前記本発明のエラストマー組成物からなる層を備えたものであれば、いかなる構造を有するものであってよい。しかし、本発明のエラストマー組成物からなる層のみを有するゴムローラが、構造が簡単で、製造工程管理およびコスト面からみて好ましい。本発明のゴムローラは通常金属やセラミックス等からなる芯金を中心に挿入した状態で使用される。
本発明のゴムローラの厚さは1〜20mmであることが好ましく、2〜20mmであることがより好ましい。厚さが1mm未満では弾性が不足し搬送性能が低下しやすく、厚さが20mmを超えるとゴムローラが大きくなりすぎ、複写機やプリンター等に搭載しにくくなるからである。
【0045】
本発明のゴムローラは、JIS K 6253に準拠して測定した硬度を30以上50以下に設定している。硬度を30以上50以下としているのは、この範囲の硬度を有するゴムローラは良好な柔軟性を示し、ゴムローラを比較的小さい圧接力で紙やフィルムに押し付けてもゴムローラが充分に変形し、紙やフィルムとの間に大きい接触面積を得ることができるからである。硬度が30未満であると摩耗量が多くなるという問題があり、硬度が50を越えると通紙中に不送りが発生するという問題がある。本発明のゴムローラの硬度は35以上50以下であることがより好ましい。
【0046】
本発明のゴムローラは、例えば以下のようにして製造することができる。
即ち、前記本発明のエラストマー組成物を2軸押出機より押し出してペレット化し、該ペレットを押出機によりチューブ状に押し出し、それをカットすることによってゴムローラとしてもよいし、ペレットを射出(インジェクション)成形機により射出してチューブ状に成形し、この成形品の表面を研磨した後、所要寸法にカットしてゴムローラとしてもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明のエラストマー組成物には複数突起を有するフィラーが配合されており、エラストマー組成物から飛び出たミクロの突起が引っ掻き効果を発現するため高い摩擦係数を発揮することができ、さらにこの突起があることでゴム表面への紙粉等の付着も防止することができる。そのうえ、エラストマー組成物内に埋まっている突起がアンカー効果を示してフィラーが脱落しにくくなり、またたとえ表面が摩滅してフィラーが脱落しても内部から次々とフィラーが現れるため、通紙による摩擦係数の低下を抑制し、高い摩擦係数を長期間維持することができる。
【0048】
本発明のエラストマー組成物は、ゴム成分が動的架橋により熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性樹脂中に分散されているため、加硫ゴムと類似した弾性性能を示すとともに樹脂のごとく耐候性にも優れ、さらに射出・押出・ブロー等のあらゆる加工方法への対応が可能である。さらに、加硫ゴムとは異なり成形後に加硫等の熱処理工程を必要とせず、リサイクルも可能で、環境への影響の低減およびトータルコストの低廉を容易にすることができる。
【0049】
また、本発明のゴムローラは、摩擦係数が高い上にその硬度が30以上50以下に設定されているため、複写機やプリンター等のOA機器における紙送りローラとして用いた場合に、紙搬送能力が高く、かつ通紙中の不送り等の搬送不良が長期に渡り抑制されるという優れた性能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施形態について説明する。
実施形態のエラストマー組成物は、ゴム成分としてEPDMゴムと、熱可塑性エラストマーとして水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂としてポリプロピレンとの混合物と、軟化剤としてパラフィン系プロセスオイルと、複数突起を有するフィラーとしてテトラポッド形状の酸化亜鉛と、架橋剤としてフェノール系樹脂架橋剤を含み、該架橋剤により動的架橋して前記熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物中に前記ゴム成分を分散させている。
【0051】
前記複数突起を有するフィラーであるテトラポッド形状の酸化亜鉛において、各突起の長さは2〜50μmで、各突起の太さ(径)は0.7〜14μmとされている。該酸化亜鉛は表面処理がされていないものを用いている。
テトラポッド形状の酸化亜鉛は、EPDMゴム100質量部に対して50〜180質量部、好ましくは75〜150質量部の割合で配合されている。
【0052】
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとポリプロピレンの混合物は、EPDMゴム100質量部に対して30〜100質量部、好ましくは50〜90質量部の割合で配合されている。前記混合物における水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとポリプロピレンの混合割合は、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対してポリプロピレンが10〜80質量部、好ましくは20〜60質量部としている。
【0053】
架橋剤であるフェノール系樹脂架橋剤はゴム成分100質量部に対し5〜15質量部の割合で配合されている。
軟化剤であるパラフィン系プロセスオイルはEPDMゴム100質量部に対して100〜250質量部、好ましくは150〜250質量部の割合で配合されている。
さらに、本実施形態のエラストマー組成物は架橋助剤として酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛はEPDMゴム100質量部に対して1〜10質量部の割合で配合されている。
【0054】
本実施形態のエラストマー組成物は、以下の手順で製造している。
前記成分を所要の配合比でタンブラー型混練機に投入し、混練りする。混練り時の温度は150〜300℃、好ましくは200〜250℃としている。混練り時間は1〜60分、好ましくは5〜30分としている。
得られた混練材を2軸押出機に投入して、150〜250℃、好ましくは200℃で動的架橋を行い、ゴム成分を均一に分散させて、本発明のエラストマー組成物をペレットとして作製している。
【0055】
このペレットを190〜230℃の条件下で単軸押出機を用いてチューブ状に押し出して所定長さに裁断し、ゴムローラをえている。該ゴムローラの中空部に金属製の芯金を圧入し、あるいは両者を接着剤で接合して固定している。
円筒形状に成形したローラの中空部に略D字形状の芯材を圧入することにより略D字形状のゴムローラとすることもできる。
なお、本発明のゴムローラの表面にはローレット状の溝を設けても良い。
前記工程で製造した本発明のゴムローラは、JIS K 6253に準拠して測定した硬度を40以上50以下としている。
【0056】
「実施例」
実施例および比較例を示し、本発明について詳述する。
下記の表1に示す配合からなるエラストマー組成物を用いてゴムローラを製造し、得られたゴムローラについて後述する方法により、硬度、耐摩耗性および摩擦係数の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表中の各成分については下記製品を用いた。
・EPDMゴム;住友化学(株)製「エスプレン505A」
・熱可塑性エラストマー;水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー((株)クラレ製「セプトン4077」)
・熱可塑性樹脂;ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製「ノバテックPP」)
・軟化剤;パラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルPW−380」)
・フィラー;テトラポッド形状の酸化亜鉛(松下電器産業(株)製「パナテトラWZ−0501」)
・架橋剤;フェノール系樹脂架橋剤(田岡化学工業(株)製「タッキロール250−III」)
・架橋助剤;亜鉛華(三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」)
【0059】
ゴムローラを以下の工程で製造した。
まず、材料の計量を行い、表1に示した量のEPDMゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、軟化剤、フィラー、架橋剤および架橋助剤を配合し、タンブラーに投入し10分混合した。その後、200℃で2軸押出機(アイベック(株)製HTM38)にてEPDMゴムを動的架橋してエラストマー組成物を作製し、押し出してペレット化した。
次に、このペレットを単軸押出機(笠松加工研究所(株)製、φ50押出機)を用いて20rpm、温調190℃〜230℃の条件下チューブ状に押し出し、外径22mm、内径18mmの押出成形品を得た。このチューブ状押出成形品を15mm幅に定寸カットし、し、その中空部に芯金を挿入して固着した。
【0060】
ゴムローラの試験方法を示す。
(硬度)
JIS K 6253に準拠して、雰囲気温度23℃にて測定した。
(耐摩耗性)
実施例および比較例の各ゴムローラを給紙ローラとして複写機に取付け、温度23℃、相対湿度55%の条件下で、A4サイズの紙(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製PPC用紙)20,000枚を10時間かけて通紙し、通紙前後のゴムローラの質量を測定することにより摩耗量を求めた。
表1には比較例1の摩耗量を100とした場合の指数で示しており、指数が大きいほど耐摩耗性が優れている。
【0061】
(初期摩擦係数)
図3に示す装置を用いて摩擦係数の評価を行った。
実施例および比較例の各ゴムローラ1とプレート3の間に、ロードセル5に接続したA4サイズのPPC用紙4(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製)を挟み、黒矢印で示すようにゴムローラ1の芯金2に250gfの荷重Wを加え、ゴムローラ1をプレート3に圧接させた。ついで、温度23℃
、相対湿度55%の条件下で、ゴムローラ1を矢印aの示す方向に周速300mm/秒で回転させ、通紙の前後において白矢印で示す方向に発生した力F(gf)をロードセル5によって測定した。そして、この測定値F(gf)と荷重W(W=250gf)とから下記式1により摩擦係数μを求めた。
表1には比較例1の摩擦係数を100とした場合の指数で示しており、指数が大きいほど摩擦係数が高く紙の搬送力が優れている。
μ=F(gf)/W(gf)…(式1)
【0062】
(通紙後の摩擦係数)
実施例および比較例の各ゴムローラを給紙ローラとして複写機に取付け、温度23℃、相対湿度55%の条件下で、A4サイズの紙(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製PPC用紙)10,000枚を5時間かけて通紙した。その後、複写機からゴムローラを取り出し、取り出したゴムローラについて初期摩擦係数の測定と同一の方法で通紙後の摩擦係数を測定した。
表1には比較例1の初期摩擦係数を100とした場合の指数で示している。
【0063】
比較例1〜6のゴムローラにおいては通紙後の摩擦係数が初期摩擦係数に比して指数換算で10〜30%も低下しているのに対し、実施例1,2のゴムローラにおいては通紙後の摩擦係数の初期摩擦係数に対する低下率が指数換算で5%以下である。このことから、本発明のエラストマー組成物からなるゴムローラは通紙による摩擦係数の低下が抑制され、高い摩擦係数を長期間維持できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のエラストマー組成物における複数突起を有するフィラーが奏する効果を説明するための模式図である。
【図2】複数突起を有するフィラーについて説明するための模式図であり、(a)は本発明で用いる複数突起のフィラーの模式図、(b)は本発明で除外されるフィラーの模式図である。
【図3】実施例において摩擦係数を測定するための装置の模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ゴムローラ
2 芯金
3 プレート
4 PPC用紙
5 ロードセル
10 エラストマー組成物
11 複数突起を有するフィラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムまたはEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)の少なくとも1種を含むゴム成分100質量部に対し、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物を2〜150質量部、軟化剤を50〜250質量部、複数の突起を有するフィラーを1〜200質量部、および架橋剤を含み、
前記ゴム成分が前記架橋剤による動的架橋で前記熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物中に分散されていることを特徴とするエラストマー組成物。
【請求項2】
前記フィラーは、隣接する突起の各先端とフィラーの中心とを結ぶ直線間の角度が180度未満で、突起が2個の「く」の字状、フィラーの中心から3〜6個の突起が放射状に突出する形状、あるいはテトラポット状である請求項1に記載のエラストマー組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエラストマー組成物を用いて成形されていることを特徴とするゴムローラ。
【請求項4】
JIS K6253に準拠して測定した硬度が30以上50以下である請求項3に記載のゴムローラ。
【請求項5】
画像形成装置の紙送りローラとして用いられる請求項3または請求項4に記載のゴムローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−13691(P2008−13691A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187279(P2006−187279)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】