説明

エラストマー補強用の単撚り鋼コード

いくつかの特定の問題を解消しつつ、高い費用対効果で簡単に製造可能な、タイミングベルトなどのエラストマーベルトの補強用の鋼コード(200)が記載されている。コード(200)は、コアフィラメント(202)の周りに第1層および第2層のフィラメント(204,210,212)が撚り合わされ、全てのフィラメントが同一の撚り長さおよび同一の撚り方向で撚られた、単撚り鋼コードである。撚り長さ、コアフィラメント直径、および第1層のフィラメント直径(後者は、前者よりも大きいかまたは等しい)の適切な選択によって、第2層のフィラメント(210′)を断続的に捕捉する集合間隙が形成されている。この集合間隙は、コアフィラメント(202)を他のフィラメント(204,210,212)と同一の撚り長さおよび同一の撚り方向で変形させる望ましい効果を得るために、コアフィラメント直径の40%〜70%である。変形したコアフィラメント(202)は、その移動が抑制されることになる。加えて、コード(200)の著しく粗い表面によって、エラストマー内での良好な機械的固定が生じ、コード(200)に加えられた荷重は、全てのフィラメントに良好に分散される。このコードは、タイミングベルトの利用に限定されるものではなく、タイヤ、ホース、引上げベルト、駆動ベルト、補強帯片等への有効な利用が見込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強材がエラストマーに埋設され、繰り返される引張り/引張りサイクルを受ける用途の補強に特に適するより効果的な鋼コードを製造する簡単な方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、当技術分野において「歯付きベルト」、「伝動ベルト」、または「タイミングベルト」としても知られている同期ベルトは、もはや運動の高精度かつ高出力の伝達に特に好ましい機械にのみ用いられるものではなく、ガレージドアオープナーまたはスライドドアのような日常的な機器にも用いられている。これらの用途では、同期ベルトは、作動中の騒音に関して、従来のケーブル機構またはチェーン機構よりも好ましい。これらのシステムでは、同期ベルトは、力および速度に関して相対的に中程度の負荷を受けるようになっているが、システム全体の価格および寿命のような、他の課題が重要になってきている。
【0003】
少なくとも鋼コード、これまでの例では、通常、ストランドコードによって補強されている同期ベルトの場合、これらのコ−ドは、例外なく、コストに関する欠点(「コストの問題」)を有している。実際、ストランドコードは、多数のストランドを撚り合わせて作製されるが、これらのストランドの各々が、まず多数の鋼フィラメントを撚り合わせて作製されなければならない。その結果として、少なくとも2回の加工手順が必要になる。このようなストランドコードは、典型的には、3×3、7×3、3+5×7、・・・の型式を有している。例えば、最後の式は、互いに撚られた3本のフィラメントからなるコアストランドが、5本のストランドであって、各々が単一コアワイヤの周囲に6本の外側ワイヤを撚ることによって得られた、5本のストランドによって囲まれていることを示している。この型式のものは、極めて初期の鋼コードを代表するものであり、1930年代の終わりにラジアルタイヤの補強に用いられ、1960年代になってこの目的のために多量に用いられるようになった。これらの鋼コードは、ベルト、特に、同期ベルトの補強に第2の製品寿命を見出している。特に、ポリウレタンベルトは、主に、このような鋼コードによって補強されている。この用途では、鋼コードは、エラストマー素地内における機械的固定(anchorage)に適している。実際、例えば、3×3鋼コードは、極めて粗い外周面を有しており、ベルトの押出成形中にこの外周面にポリウレタンが浸透することになる。冷却後、固化したポリウレタンがコードをベルト内に固定する。さらに、ストランド内におけるフィラメントの捩れおよびコード内におけるストランドの捩れによって、どのフィラメントもポリウレタンに接触することになる。その結果、ベルトの歯に加えられた力は、ポリウレタンを介して、コード内の全てのフィラメントに伝達される。従って、全てのフィラメントは、略同じ大きさの力を受けることになる。
【0004】
しかし、ストランドコードは、いくつかの欠点を有している。製造コストが高いこと以外に、ストランドコードは、やや高い初期伸びを有する傾向がある。実際、ストランド(撚線)は、コード内で螺旋バネとして機能するので、初期状態ではより低い力によって作用し、(従って「寸法の問題」を生じさせ)、例えば、同期ベルトの場合、歯−歯の距離を制御するのが困難になることがある。これに対する解決策が特許文献1に記載されている。しかし、この解決策は、コストの課題を解消していない。すなわち、タイヤ補強用の鋼コードに関して、最初の段階ではこのような層構造が導入されたが、コストの圧迫から、コスト低減を意図するさらなる段階として、コンパクトコード構造が導入されている。同じように層構造を用いる解決策が、同期ベルトに対して試みられている(例えば、特許文献2参照)。分類する上で、層構造は、フィラメントまたはストランド(例えば、3×1または4×1の単一ストランド)のいずれでもよいコアの周りに、フィラメントの層が、コアの撚り長さや撚り方向と異なる撚り長さや撚り方向にて撚り合わされる構造である。典型的な例は、3+9である。これは、3×1のコアストランドが、コアの撚り長さまたは撚り方向と異なる撚り長さまたは撚り方向で撚られた9本のフィラメントによって、囲まれていることを示している。このような積層プロセスを繰り返すことによって、1+6+12または3+9+15のような構造を得ることができる。後者の構造は、極めて一般的なタイヤ補強用の鋼コードである。このような層状コードの製造は、2つ以上のステップを含んでいるが、フィラメントを用いるステップにおける機械の運転時間の方が、ストランド(一般的に太く、機械のスプールに巻かれる長さが短い)を用いるステップにおける機械の運転時間よりも著しく長くなる。
【0005】
最終的なコスト節約は、コードの全てのフィラメントに同一の撚り長さおよび同一の撚り方向を与えることによって、これらの全てのフィラメントを単一の処理ステップで一緒に回転させることによって達成することができる。このようなコードは、「単撚り」コードと呼ばれている。具体的には、19コンパクトコードまたは27コンパクトコードのような構造が得られている(このような鋼コードの最先の開示は、おそらく特許文献3である)。19コンパクトコードまたは27コンパクトコードは、同一の撚り長さで撚り合わされた19本または27本の同一の鋼フィラメントから構成されている。フィラメントは、「コンパクト」な6角形状に配列され、これが、この構造の名称の由来になっている。これらの「コンパクト構造」は、好ましい製造コストに加えて、多数の利点、例えば、フィラメント間の線接触(層構造におけるフィラメントが互いに交差する点接触であるのとは対照的)によって、フィラメントの強度を最適に利用でき、かつ、それにより耐用期間を改善できるという利点が得られる。しかし、コンパクトコードは「コア移動の問題」を有している。コア移動の問題は、エラストマーに埋設されたコードが周期的に曲げられる際に生じる。中心フィラメントは、鋼フィラメントからなる周囲層によってしか保持されておらず、これらのフィラメント間における摩擦が比較的小さいので、これらの中心フィラメントは、鋼コードから外に移動する傾向にある。
【0006】
「コア移動」を解消する多くの解決策が提案されている。例えば、特許文献4に示唆されているように、コード内のフィラメントに相対的な位置変化を導入する方法が提案されている。特許文献5に示唆されているように、フィラメントを互いに絡み合わせることによって、コード内にランダム性を導入する他の解決策も提案されている。さらに他の解決策は、外層内のより細いフィラメントによって囲まれたコア内により太いフィラメントを導入するもので、一般的な例は、3|9である(縦線「|」は、内側のコアフィラメントを外層のフィラメントから区別して示すものである。例えば、特許文献6参照)。より太いコアフィラメントが外層を拡げ、その結果、ゴムがコアに達することができるので、ゴムとコアフィラメントの付着性被覆との間に生じる付着力によって、コアフィラメントが固定されることになる。これらの解決策、特に、最後の解決策は、タイヤ補強の分野では極めて有効であることが判明しているが、同期ベルトに用いられる場合には、特に、エラストマーがポリウレタンのような熱可塑性材料である場合には、役に立たないことが判明している。
【0007】
これは、以下に述べるような多くの理由に起因している。
【0008】
A. ベルトの補強材は、繰り返される引張り/引張りサイクルを受け、この場合、最も大きい引張力は、駆動プーリの方に移動するベルト部分(送り経路、張り側)に加えられ、より低い力が、駆動プーリから離れるベルト部分(戻り経路、弛み側)に加えられることになる。このようなベルトが、戻り経路において弛むと、コードは、圧縮を受けることもある。これは、システムの機能にとって、極めて好ましくない。この場合、繰り返される引張り/引張りサイクルによって、層状コードまたはコンパクトコードのコアに「蠕動」作用が生じ、これによって、コアは、ゆっくりであるが、確実にベルトから抜け出ることになる。従って、「コア移動」の問題は、タイヤ補強におけるよりも、ベルト補強の場合に、より一層著しくなる。
【0009】
B. 外側のフィラメントしかエラストマーに接触しない可能性がある。この場合、プーリの歯に加えられた力は、補強材の外側フィラメントにしか伝達されないことになる。コアの鋼フィラメントと外層の鋼フィラメントとの間には、摩擦が殆どまたは全く存在しないので、外側フィラメントのみが全ての負荷(超過分の負荷さえも)を受ける一方、コアフィラメントは負荷を受けない状態にある。これを解消するために、補強材を部分的に大径にする試みもなされているが、この試みは、層状コード構造やコンパクトコード構造を導入することによって得られたコスト面での優位性を無効にするものである。特許文献6(前出)において示唆されている解決策は、ここでは役に立たない。何故なら、ポリウレタンベルトの製造中に作用する圧力は、例えば、ゴムの加硫中の圧力よりも低いので、ポリウレタンはコアまで浸透できず、かつ、化学的な付着性の欠如によって、コアを外側フィラメントに接着させることができないからである。
【0010】
C. 層状構造の外面は、極めて滑らかである。すなわち、多くの細いフィラメントが互いに密に配置されている。その結果、エラストマー内に鋼コードの機械的固定が生じる可能性が低下することになる。コンパクトコードは、撚り長さのピッチを有するスクリュー状の規則的な多角形の外形を有しているが、このスクリュー状の表面は、中程度の機械的固定をもたらすのにさえ不充分である。また、特許文献5において示唆されているようなフィラメントの絡み合いは、ここでは改良をもたらさない。何故なら、特許文献5におけるフィラメントの位置変化は、多数の撚り長さに亘ってのみ生じるので、個々の位置における固定をもたらさないからである。
【0011】
前記理由Aによって、抜け出たコアフィラメントがプーリ軸に絡みつき、ベルト伝達システムに全面的な機能障害をもたらすことがある。この問題は、例えば、(1+3n)型式の構造におけるように、コアが単一フィラメントである場合にさらに悪化する。何故なら、直線状のコアフィラメントは、周囲の層によって保持されているが、圧縮され難いからである。
【0012】
ドアオープナー(ガレージの)におけるように、ある長さの歯付きベルトの一端が、(ベルトを締め付けることなく)最後の3〜10の歯を保持する噛合クランプによって、保持される用途では、前記理由Bによって、クランプ位置に予期しないベルトの破断が生じる場合があり、この際、コアフィラメントは破断せずに外側フィラメントのみが破断する場合がある。これは「順次破断の問題(sequential breakage problem)」と呼ばれている。また、最悪の場合には、前記理由Cによって、すなわち、滑らかな表面による「機械的固定」の欠如によって、鋼コード全体がエラストマーから分離する場合がある。
【0013】
要約すると、同期ベルトの補強材としての鋼コードの使用を進展させるためには、実際に克服しなければならないいくつかの課題、例えば、
1.コストの問題
2.寸法の問題
3.コア移動の問題
4.順次破断の問題
5.機械的固定の問題
がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許出願公開第2005/043003号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,158,946号明細書
【特許文献3】特開昭51−58555号公報
【特許文献4】米国特許第4,724,663号明細書
【特許文献5】米国特許第4,828,001号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0194011号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、上記の5つの問題の少なくともいくつかを個々に解消するレベルのコードを見出すことにある。好ましくは、少なくともコア移動の問題、順次破断の問題、および固定の問題を解消するコードを見出すことにある。本発明のさらに他の目的は、単一コードに関連する全ての問題を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
最終的に、本発明者らは、先行技術に関連する問題を解消することができるコードを見出している。このコードの根底にある発想は、請求項1に記載の特徴を有するあらゆる種類の構造に効果的に拡張させることができるものである。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0017】
当初から、単撚りコードのみがコストの問題を解消できると見込まれていた。何故なら、単撚りコードは、撚り合わせステップを1回しか用いない唯一のコードだからである。単撚りコードは、高弾性率および低初期伸びを有するコードでもある。しかし、先述したように、タイヤ補強を目的とする先行技術の解決策は、ポリウレタンベルトに適用した場合には役に立たない。何故なら、製造に用いられる圧力が低く、ポリウレタンとの化学的な付着性が欠如しているこの用途では、コア移動の問題がより著しく生じるからである。
【0018】
出発点として、コアフィラメント直径「d」を有するコアフィラメントを備える単撚りコードを選択することにする。このコアの周囲に、第1層のフィラメント群が配置されている。第1層の各フィラメントの直径は、互いに異なっていてもよいしまたは等しくてもよいが、いずれにしても、これらの直径のいずれか1つは、コアフィラメントの直径よりも大きいかまたは等しくなっている。このような第1層の周囲に、第2層のフィラメント群が配置されている。ここで、第2層の各フィラメントの直径は、互いに異なっていてもよいが、これらの直径の各々は、コアフィラメントの直径と等しいかまたはそれより大きい。これらのフィラメントが、1回の加工手順によって、同一の単撚り長さおよび同一の単撚り方向で互いに撚られることになる。このプロセスによって、第1層および第2層の鋼フィラメントは塑性変形し、コードから解されても、撚り合わされた際の単撚り長さおよび単撚り方向を呈している。
【0019】
このような型式のコードは周知であり、第1層の互いに等しい5本のフィラメントによって囲まれた単一コアを有する特定の例が、欧州特許出願公開第1474566号明細書に記載されている。これらの型式のコードでは、第1層のフィラメント間の間隙は、一般的に小さく、しかし、各フィラメントが撚られるときに互いに接触せずかつコアフィラメントの固定が維持されるべく、過度に小さくならないように維持されている。これは、通常、規則正しく配置された第1層のフィラメントと接線方向に接触するのに必要とされるよりもいくらか大きいコアフィラメント直径を選択することによって行われている。このような配列は比較的安定し、これらのフィラメントは、製造中および使用中において位置を変えることができない。
【0020】
ここで、コアが当技術分野において容認できると見なされているよりもはるかに大きくなっている配列をさらに検討することによって、本発明者らは、いくつかの驚くべき効果を見出した。撚り長さ、コアフィラメント直径、および第1層のフィラメントの直径のそれぞれの特定値によって、第1層のフィラメントの全てが互いに寄せ集められたとき、第1層内に1つの未充填区域(unfilled segment)を生じる。この未充填区域は、第2層のフィラメントを拘束できるような幅を有する間隙を構成することになる。「集合間隙(aggregate gap)」の定義は、図1を考察することによって、最もよく理解されるだろう。この図は、dに関して極めて大きい撚り長さ(例えば、dの50倍)を有するコード構造の断面を表している。集合間隙「δ」は、δよりも大きい寸法の円形フィラメントを通過させることはできないが、δよりも小さい直径のフィラメントを(コアフィラメントが妨げる可能性を無視した場合に)通過させることができる「ゲート」である。第1層のフィラメント群が、第1の直径dを有する互いに等しいフィラメントからなる場合、高校の幾何学によって、間隙「δ」は、第1の近似として、以下の式で表されるδと等しいことが分かる。
【0021】
【数1】

【0022】
「n」は、第1層内に互いに干渉せずに嵌合し得る第1層のフィラメント数であり、「L」は、全てのフィラメントに付与される単撚り長さである。この近似式は、撚り長さが大きい場合、および、撚り長さは一般的であるが直径が充分な精度を有している場合には、完全なものに近くなる。第1層が互いに異なる直径(但し、いずれの直径もdよりも大きいかまたは等しい)を有するフィラメントからなる場合、上式は、より複雑になるが、以下に説明する本発明の着想は、依然として適用可能である。従って、上式は、本発明を制限すると見なされるべきはなく、基本となる着想を説明するための媒体と見なされるべきである。
【0023】
第1層のフィラメント直径が適切に選択されると、第2層のフィラメントがこの集合間隙内に捕捉される可能性がある。第1のフィラメント直径「d」の40%〜60%の幅を有する間隙であれば、捕捉された第2層のフィラメントを取り込むのに充分である。このような構造は、本質的に不安定である。何故なら、捕捉されたフィラメントは、第1層内に入り込もうとするからである。その結果、第1層から他のフィラメントが無理やり押し出され、これによって、第1層のフィラメントが第2層のフィラメントに置き換えられることになる。この過程は、おおよそ、撚り長さごとに繰り返される。従って、フィラメントの取り込みは断続的であり、第2層の異なるフィラメントが、順次、第1層内に取り込まれることになる。従って、この集合間隙は、一定の静止間隙と見なされるべきではなく、コードの長さに沿って連続的に角度変位する、第1層の互いに隣接するフィラメントの変動対間に形成された区域と見なされるべきである。これらの位置変化は、全て、コードの形成中に生じるので、このような配置によって、コアフィラメントは、もはや直線状ではなく、他のフィラメントと同一の撚り長さおよび同一の撚り方向の変形を呈することになる。この変形は、コードの軸に沿って変化する半径を有する実質的に螺旋状に生じる。この螺旋状に変形したコアフィラメントは、コア移動を阻止するのに役立ち、先行技術によるこの種のコードには見られないものである。他の有利な間隙の範囲は、dの47%〜70%、またはdの40%〜64%、さらにdの47%〜64%である。間隙が小さすぎても、また、大きすぎても安定構造をもたらし、この安定構造は、直線状のコアフィラメント、すなわち、未変形のコアフィラメントをもたらすことになる。
【0024】
フィラメントは、0.02mm〜0.30mm、さらに好ましくは、0.04mm〜0.175mmの直径を有する実質的に丸い鋼フィラメントである。好ましくは、普通炭素鋼が用いられる。このような鋼は、一般的に、最小0.40wt%C、または少なくとも0.70wt%C、最も好ましくは、少なくとも0.80wt%C、かつ最大1.1wt%Cの炭素含有量、0.10wt%Mnから0.90wt%Mnの範囲内のマンガン量、および各々が好ましくは0.03wt%未満の硫黄量およびリン含有量を含み、さらに、付加的なマイクロ合金元素、例えば、網羅的な列挙ではないが、(0.2wt%から0.4wt%までの)クロム、ボロン、コバルト、ニッケル、バナジウムなどを含んでいてもよい。このような炭素鋼フィラメントでは、2,000MPaを超える強度、好ましくは、2,700MPaを超える強度のものが製造可能であり、現在では、3,000MPaを超える強度のものが普及しており、さらに4,000MPaを超える強度のものも用いられている。また、好ましいのは、ステンレス鋼である。ステンレス鋼は、最小12wt%Cr、およびかなりの量のNiを含んでいる。さらに好ましいのは、より冷間成形に適するオーステナイトステンレス鋼である。最も好ましい組成は、AISI(アメリカ鉄鋼協会)302、AISI301、AISI304、およびAISI316、またはEN1.4462の規格で知られている二相ステンレス鋼として、当技術分野において周知である。
【0025】
代替例では、集合間隙を塞ぐフィラメントは、前記第1層と前記第2層との間の略中間の位置を占有している。第1層のフィラメントが全て互いに等しくなっている簡素化された場合における、コアフィラメントと第2層のフィラメントとの間の距離の推定値が、以下の表1に示されている。
【0026】
この「崩れた」第2層のフィラメントによって、溝がコードの外面に生じることになる。このような溝は、コードをエラストマー内に係止するのに役立つので特に有利である。さらに、この溝は、鋼コードの長さの全体に亘って角度位置が変化しているので、コードの外面は、特に粗くかつ不規則になり、コードをポリウレタン内に係留するのに役立つことになる。この結果をさらに推し進め、本発明者らは、可能となる最大の「飽和」レベルからフィラメント数を減少させることによって、「不飽和」な層を生じさせることを試みた。飽和状態にある第2層は、この出願の目的のために、第1層を形成するフィラメントの数の2倍のフィラメントを備えている第2層として理解されたい。この「不飽和層」によって、エラストマーが流入して良好な固定をもたらし得るさらに深い溝が利用可能になる。また、集合間隙の存在によって、第2層のフィラメントがその層内において蛇行し、コードの長手方向における不規則さを増すのにさらに寄与することになる。これらの全てによって、コードがエラストマー内に埋設されたとき、より多くのフィラメントがエラストマーに接触するので、良好な力の分布が得られることになる。第2層内のフィラメントの数は、最終的に1本まで減少させることができる。第2層のフィラメントの他の有利な数は、第1層のフィラメントの数と同じか、または、第1層のフィラメントの数の2倍である。第2層のフィラメントは、少なくともコアフィラメント直径と同じ直径を有していなければならない。何故なら、そのような直径を有していない場合、これらのフィラメントが間隙内に入り、安定構造を生じる可能性があるからである。好ましい構造は、第2層が、コアフィラメント直径を有するフィラメントおよび第1のフィラメント直径を有するフィラメントを備えている場合であり、または第2層が、第1のフィラメント直径を有するフィラメントのみを備えている場合である。
【0027】
最も好ましい構造は、コアフィラメントが、3本、4本、または5本の第1層フィラメントによって囲まれているものである。0.40×dと0.70×dとの間に集合間隙を有する要件は、d/dの比率に関連している。
【0028】
【表1】

【0029】
これは、無限の撚り長さに対するものである。有限の撚り長さを導入すると、第1層のフィラメント間の間隙が減少することになる。
【0030】
エラストマー内においてフィラメントを良好に機能させるために、フィラメントは、有機被膜または無機被膜、例えば、金属被膜によって被覆されている。このような被膜は、鋼コードを腐食に対して良好に保護するのに有用なものであってもよいし、または機械的な固着に加えて、エラストマーとの化学的な付着性を可能にするのに有用なものであってもよい。当技術分野において知られている適切な被膜は、以下のものである。
【0031】
−耐食性被膜は、例えば、亜鉛または亜鉛/アルミニウム合金である。最も好ましいのは、欧州特許出願公開第1280958号明細書に記載されているような薄い溶融亜鉛メッキ被膜である。このような亜鉛被膜は、2μm未満、好ましくは、1μm未満、例えば、0.5μmの厚みを有している。亜鉛−鋼の合金層が、亜鉛被膜と鋼との間に形成されることになる。
【0032】
−金属付着層は、ゴムがエラストマーとして用いられるときは、真鍮被膜である。所謂、3相真鍮、例えば、銅−亜鉛−ニッケル(例えば、64wt%/35.5wt%/0.5wt%)および銅−亜鉛−コバルト(例えば、64wt%/35.7wt%/0.3wt%)、または亜鉛−ニッケルまたは亜鉛−コバルトのような銅を含まない付着系である。
【0033】
−有機付着被膜は、好ましくは、国際特許出願公開第99/20682号明細書(NVベーカートSA)に記載されているような有機官能基シラン、有機官能基チタン酸塩、または有機官能基ジルコン酸塩に基づく被膜である。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、コードを製造するプロセスが権利主張されている。前記方法は、当技術分野において知られているような単撚りコードの製造に用いられている標準的な方法を、本発明のいくつかの特徴によって修正したものである。所定の直径を有する鋼フィラメントが、長さに応じた多数のスプールによって供給されることになる。フィラメント直径は、前述したようにして選択されている。各フィラメントは、回転撚り線機によって、同一の撚り方向および同一の撚り長さで撚り合わされる。このような撚り線機は、明確に確定された回転軸心を有する撚り線機またはバンチャー機である。第1の撚合点において、第1層のフィラメント群がコアフィラメントの周囲に配置され、これによって、中間ストランドを形成することになる。第2の撚合点において、第2層のフィラメント群がこの中間ストランドに加えられることになる。先行技術と異なっているのは、コアフィラメントが傾斜して第1の撚合点に進入し、これによって、第1の撚合点に進入するコアフィラメントと回転軸心とによって画成される仮想平面が、撚り線機に対して静止状態に維持されることである。回転軸心とコアフィラメントとの間の角度は、好ましくは、1〜10°、さらに好ましくは、2〜5°である。このような偏位によって、コアフィラメントが中心から外方に僅かに引張され、それによって、第1層のフィラメントが一方に片寄って配置され、集合間隙が生成されることになる。
【0035】
第1層のフィラメントの不均一な分布は、第1層のフィラメントを一方に片寄らせて供給することによって改良されてもよい。「一方に片寄る」とは、例えば、5本のフィラメントが第1の撚合点に供給される場合、これらのフィラメントが、72°の均一な角度で供給されず、例えば、60°の角度で供給される(この場合、明らかに120°の大きな1つの間隙が生じる)ことを意味している。
【0036】
各フィラメントは、機械に進入する際に、所定の張力を付与され緊張状態に保持されていなければならない。ここで、コアフィラメントの張力が第1層のフィラメントの張力よりも低い値に保たれていると、コアフィラメントは、第1層のフィラメントによって、断続的に位置を変化することになる。
【0037】
本発明の第3の態様によれば、本発明の鋼コードによって補強されたエラストマー製品が規定されている。本発明の鋼コードは、主にガレージドアオ―プナーに用いられるベルトの補強材として開発されたものであるが、当技術分野においてタイミングベルトまたは同期ベルトとも呼ばれているあらゆる種類のベルトにも同様に良好に使用可能である。また、エレベータに用いられる引上げベルトが、本発明の鋼コードによって補強されてもよく、これによって、既存の種類の補強材に対して費用効率の高い良好な代替品を提供することができる。食品加工産業におけるようなコンベヤベルトを補強するために、このコードを用いることも考えられる。また、高圧ホースを補強するのに、このコードが用いられてもよい。このコードのタイヤコードとしての使用は、まだ試験されていないが、既存の層状コードまたはコンパクトコードに対する代替品として良好であると考えられる。
【0038】
以下、添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】コードの構造的特徴を明確にするための幾何学的配置を示す図である。
【図2a】本発明に係るコードの第1実施形態を示す断面図である。
【図2b】本発明に係るコードの第1実施形態を示す他の断面図である。
【図2c】本発明に係るコードの第1実施形態を示す他の断面図である。
【図3a】本発明に係るコードの第2実施形態を示す断面図である。
【図3b】本発明に係るコードの第2実施形態を示す他の断面図である。
【図3c】本発明に係るコードの第2実施形態を示す他の断面図である。
【図4a】本発明に係るコードの第3実施形態を示す断面図である。
【図4b】コードの撚り長さの半分にわたる個々のフィラメントの移動軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
低コストの代替品を提供するための初期の提案は、欧州特許出願公開第1474566号明細書に記載されているような(1|3×n)型式の構造、例えば、d+(5×d|5×d|5×d)を用いることであった。この構造では、コアフィラメント直径dは、直径dの5本のフィラメントからなる第1層の中心に適合するために、充分に小さくなっている。直径dのフィラメントおよび直径dのフィラメントが、第1層を囲む第2層を形成している。括弧内のフィラメントは、1回の加工手順によって、単一撚りで撚り合わされことになる。線「|」は、「規則的に配置された」ときに中心に対して異なる円上に位置するフィラメントを区別して示すものである。「規則的に」配置されるというのは、第1層のフィラメントの中心が正n角形上にあることを意味し、nは、その層におけるフィラメントの数である。第2層のフィラメントは、それらのフィラメントが供給されるときの周方向配列(例えば、「d」と「d」の交互配列)に従って、第1層の2つのフィラメントに隣接し、これらのフィラメントによって形成された間隙に適合している。このような規則的な配列は、欧州特許出願公開第1474566号明細書に記載されているように中心フィラメントがいくらか大きくなっていても、コア移動を生じる傾向にある。
【0041】
ここで、第1層のフィラメント直径に対して、コアフィラメント直径を当業者が通常合理的と考えている限界を越えて、さらに大きくすることによって興味深い現象が生じた。第1層のフィラメント間の間隙が極めて大きくなると、第2層のフィラメントの1つが、第1層の2つのフィラメント間に介入し、これによって、形成された間隙が拡大し、第1層の他のフィラメントを共に押圧することになる。しかし、この介入した第2層のフィラメントに充分な空間は設けられていないので、第1層内に完全には介入することができない。従って、このフィラメントは、一時的に第1層と第2層との中間に位置している。その結果、不安定構造が形成され、第1層のフィラメントおよび第2層のフィラメントの相対的な位置は、コード形成中に変化することになる。驚くべきことに、これによって、コアフィラメントが影響を受けないはずがなく、コードを解すと、コアフィラメントが、他のフィラメントと同一の撚り長さおよび同一の撚り方向で(半径の変化を伴うものの)実質的に螺旋状の変形を呈することが見出された。この特徴は、「安定構造」が得られる場合には見出されないものである。他の主な特徴として、このコードは、特に粗い外観を有している。この外観は、欧州特許出願公開第1474566号明細書に記載されている正確な多角形の断面および規則的な態様のスクリュー形状の何れとも類似していない。
【0042】
図2に示される第1実施形態では、以下の幾何学的配列を有するコード200を製造した。
【0043】
0.12+(5×0.13;5×0.13;5×0.12)8mmS
【0044】
すなわち、0.12mmのコアフィラメント202が、第1層において、0.13mmの5本のフィラメント204によって囲まれ、このフィラメント204が、第2層の(交互に並んだ0.13mmのフィラメント212および0.12mmのフィラメント210からなる)10本のフィラメントによって囲まれている。このコードに対して、いくつかのフィラメントがコアに対して1つの円上にもはや位置することができなくなるような態様が選択されている。図2a,2bは、コードに沿って異なる箇所で切断されたこのようなコードの断面図である。
【0045】
/dの比率は、1.08である。コアフィラメントおよび第1層のフィラメントは、8mmの撚り長さにおいて5本のフィラメントがコアを囲むとき、0.13mmの55%の集合間隙が形成されるように選択されている。この間隙は、第2層のフィラメントの1つを捕捉するのに充分な大きさを有しているが、第1層に6本のフィラメントを収容するほど大きくない。第2層の1本のフィラメント、例えば、フィラメント210′が第1層に介入した場合にも、空間が充分ではないので、第1層からフィラメント204′が押し出されることになる。第2層から1本のフィラメントが少なくとも部分的に第1層に介入するので、第2層が未飽和になり、断面図が示しているように、コードは、概して粗い外観を有することになる。コードを解すと、コアフィラメントは、S方向において、8mmの同一撚り長さで、半径が変化するが実質的に螺旋状の変形を呈している。
【0046】
いくつかのさらなる詳細について述べると、このコードは、亜鉛被覆フィラメントから作製され、その直径は、0.603mmであり、(12mm直径の円形アンビルを有する標準的なマイクロメータによって測定された)最大直径と最小直径との間の差は、0.007mmと極めて大きい。線密度は、1.58g/mである。529Nの破断強度および0.012%と極めて小さい構造伸びが測定されている。
【0047】
本発明のコードの利点は、ポリウレタンに埋設して引張り試験を行ったときに、特に顕著になる。具体的には、約12cmの試料コードの両端を、試料を型内に保持し、その型内に溶融ポリウレタンを注入することによって、長さ5cm、幅2cm、高さ1cmのブロックに埋設した。冷却の後、2つのポリウレタンブロックを互いに離れる方向に引っ張り、破断に至る挙動を観察した。参考例として、(1+6+12×0.120mm)型式のコード(層状構造)を用いた。参考コードは、標準的な引張り試験(埋設せず)において、620Nの破断強度を有している。2回の埋設試験を行うことによって、以下の結果が得られた。
【0048】
【表2】

【0049】
参考コードは、明らかに、効率の悪い強度の挙動を示している。何故なら、コアがポリウレタンに接触していないので、コアに引張力が殆ど作用せず、引張力がコードの外側シースを介してのみコードに伝達されるからである。本発明のコードは、標準試験における破断強度はかなり低いにも拘わらず、良好な実用上での強度を有することを明確に示している。これは、コアフィラメントの良好な固定が得られ、かつ第2層内に第1層が介入し、第2層が未飽和になることによって、ポリウレタンとの良好な接触が得られたことによると言える。なお、標準試験に対して埋設試験での破断強度が増加しているのは、試料の作製中に加えられた熱によって硬化が促進したことによると思われる。このように、本発明のコードは、順次破断の問題を解消することができる。
【0050】
第2の実施形態において、上記の結果を他の幾何学的配列によって確認した。
【0051】
0.17+(5×0.185;5×0.185;5×0.17)12mmS
【0052】
第1層における集合間隙は、0.185mm×55.00%として計算することができる。d/dの比率は、1.09である。図3a,3b,3cは、コードに沿って数mm間隔で切断した種々の断面300を示している。コアフィラメント302が他のフィラメントから識別されるだろう。第2層のフィラメントは、元々は、交互配列、すなわち、310→312→310→312→310→312→310→312→310→312の順序でコアを取り囲んで、第2の撚合点内に供給されることになる。しかし、この順序は、完全に変化する可能性がある。何故なら、外層のフィラメントは、外層の他の「陥没した」フィラメントを飛び越え、その結果として、例えば、図2aに示される配列、すなわち、310→310→312→312→310→310→312→310→312→312の順序に並ぶ可能性があるからである。
【0053】
このコードは、以下の特性、すなわち、3.179g/mの線密度、1107Nの破断強度、2737MPaの有効引張り強度、および194,760MPaの弾性率(180,000MPaの弾性率を有する7×3型または3×3型のストランドコードよりも大きい)を有している。大きな弾性率は、伸びが殆ど許容されない補強用途において、特に有益である。
【0054】
最後に、以下の幾何学的配列による著しく不飽和な第2層を有する実施形態を製造した。
【0055】
0.175+(5×0.20;3×0.20)12mmS
【0056】
この構造の集合間隙は、0.20mmの45%である。d/dの比率は、1.14である。図4は、コードの断面400を示している。この断面において、コアフィラメント402、第1層のフィラメント404、および第2層のフィラメント412の差異が明らかに識別されるだろう。このような断面は、コードを硬質ポリマー成形物内に固定し、この試料を切断し、かつ研磨することによって得られた。層ごとに徐々に研磨することによって、一連の断面を得ることができる。これらの断面から、フィラメント中心(図面では「×」によって示されている)の移動軌跡を再現することができる。成形物内に2つの平行ワイヤ420を導入することによって、基準フレーム422を構築すれば、この基準フレーム422に対するフィラメント中心の位置を測定可能となる。図4bでは、0mm、0.134mm、2.68mm、4.09mm、5.45mm、および6.98mmの箇所における断面、すなわち、撚り長さの約半分の距離における6つの前記断面に基づいて、フィラメント軌跡の変化が示されている。コアフィラメント402の移動軌跡は、「◆」によって示されている。記号を結ぶ線は、便宜的に付けられたものである。明らかに、コアフィラメントは、直線状ではなく、螺旋状の変形を呈している。このような断面に基づいて、図4aでは、「重心」も矢印423によって示されている。この「重心」は、図4bにおいてハッチング領域424で示されるように、フレーム422に対して大きく移動していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー物品補強用の鋼コードであって、コアフィラメント直径を有するコアフィラメントと、前記コアフィラメントの周囲に配置され、前記コアフィラメント直径よりも大きいかまたは等しい直径を有する複数のフィラメントからなる第1層と、前記第1層の周囲に配置され、前記コアフィラメント直径よりも大きいかまたは等しい直径を有する複数のフィラメントからなる第2層と、を備え、前記フィラメントの全てが、同一の撚り長さおよび同一の撚り方向で撚り合わされているものにおいて、
前記コアフィラメント直径の少なくとも40%でありかつ最大70%の幅を有する集合間隙が、前記第1層のいずれかのフィラメント間に形成されるように、前記撚り長さと、前記コアフィラメント直径と、前記第1層のフィラメント直径とが決定され、前記第2層のいずれかフィラメントが前記集合間隙内に断続的に取り込まれ、前記コアフィラメントが、前記撚り長さおよび撚り方向において実質的に螺旋状に変形されていることを特徴とする鋼コード。
【請求項2】
前記第1層は、第1のフィラメント直径を有する複数のフィラメントを含み、前記第1のフィラメント直径は、前記コアフィラメント直径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の鋼コード。
【請求項3】
前記第1層は、前記第1のフィラメント直径を有する前記複数のフィラメントに隣接して前記コアフィラメント直径を有する複数のフィラメントを含むことを特徴とする請求項2に記載の鋼コード。
【請求項4】
前記第1層は、前記第1のフィラメント直径を有する前記複数のフィラメントとそれらに隣接して前記コアフィラメント直径を有する複数のフィラメントとからなることを特徴とする請求項2に記載の鋼コード。
【請求項5】
前記第1層のフィラメント数は3,4,または5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼コード。
【請求項6】
前記第1層のフィラメント数は5であり、前記第1のフィラメント直径の前記コアフィラメント直径に対する比率は102%〜120%であることを特徴とする請求項5に記載の鋼コード。
【請求項7】
前記第2層のフィラメント数は1〜10であることを特徴とする請求項6に記載の鋼コード。
【請求項8】
前記第2層の前記複数のフィラメントは、前記コアフィラメン直径または前記第1のフィラメント直径(d)のいずれかを有していることを特徴とする請求項7に記載の鋼コード。
【請求項9】
前記第2層の前記複数のフィラメントは、全てが前記第1のフィラメント直径を有していることを特徴とする請求項7に記載の鋼コード。
【請求項10】
前記第1層のフィラメント数は4であり、前記第1のフィラメント直径の前記コアフィラメント直径に対する比率は170%〜205%であることを特徴とする請求項5に記載の鋼コード。
【請求項11】
前記第2層のフィラメント数は2〜8であることを特徴とする請求項10に記載の鋼コード。
【請求項12】
前記第2層の前記フィラメントは、前記コアフィラメント直径または前記第1のフィラメント直径のいずれかを有していることを特徴とする請求項11に記載の鋼コード。
【請求項13】
前記第2層の前記複数のフィラメントは、全てが前記第1のフィラメント直径を有していることを特徴とする請求項11に記載の鋼コード。
【請求項14】
前記フィラメントは、真鍮被覆されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の鋼コード。
【請求項15】
前記フィラメントは、亜鉛被覆されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の鋼コード。
【請求項16】
前記亜鉛被膜は、2μmよりも薄く、溶融亜鉛メッキによって付与されていることを特徴とする請求項15に記載の鋼コード。
【請求項17】
前記フィラメントは、有機官能基シラン、有機官能基チタン酸塩、または有機官能基ジルコン酸塩のうちの少なくとも1つを含む接着プライマーによって被覆されていることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載の鋼コード。
【請求項18】
鋼コードの製造方法であって、
スプールに巻かれたコアフィラメントを準備するステップと、
スプールに巻かれた第1層の複数のフィラメントおよび第2層の複数のフィラメントを準備するステップであって、前記第1層の前記複数のフィラメントおよび前記第2層の前記複数のフィラメントが請求項1〜17のいずれか一項に従って選択された直径を有するようなステップと、
前記複数のフィラメントを所定の撚り長さおよび撚り方向で撚り合わせるための回転軸心を有する撚り線機を準備するステップと、
前記各フィラメントを前記各スプールから前記撚り線機に供給するステップであって、第1の撚合点で、前記第1層の前記複数のフィラメントの中心に前記コアフィラメントが導入されて中間ストランドが形成され、更なる撚合点で、前記中間ストランドの周囲に残余の複数のフィラメントが配置されるようなステップと、
を含むものにおいて、
前記コアフィラメントが、前記撚り線機の前記回転軸心に対して静止角度を有して前記第1の撚合点に導入されることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記第1層の前記複数のフィラメントは、前記第1層の前記複数のフィラメントに、前記第2層のフィラメントが断続的に取り込まれるような集合間隙を形成すべく、前記コアフィラメントに対して角度を有して一方に片寄って供給されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記各フィラメントは、それぞれ所定の巻出し張力で前記撚り線機に供給され、前記コアフィラメントの巻出し張力は、フィラメント位置の断続的な変化を引き起こすために、前記第1層および前記第2層のフィラメントの巻出し張力のいずれか1つよりも小さいことを特徴とする請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
タイヤ、ホース、引上げベルト、コンベヤベルト、駆動ベルト、および補強帯片からなる群から選択される補強エラストマー製品であって、請求項1〜17のいずれか一項に記載の鋼コードを備えた補強エラストマー製品。
【請求項22】
前記エラストマーは、ポリウレタンであることを特徴とする請求項21に記載の補強エラストマー製品。
【請求項23】
前記エラストマーは、ゴムであることを特徴とする請求項21に記載の補強エラストマー製品。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2010−514947(P2010−514947A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543417(P2009−543417)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063038
【国際公開番号】WO2008/080715
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(592014377)ナムローゼ・フェンノートシャップ・ベーカート・ソシエテ・アノニム (81)
【氏名又は名称原語表記】N V BEKAERT SOCIETE ANONYME
【Fターム(参考)】