説明

エレクトロステリックに安定化されたポリウレタン樹脂、その製法及びその使用

本発明は、改良された特性プロフィールを有するエレクトロステリックに安定化されたポリウレタン樹脂に関するが、これは単一分子量分布を有する親水性及び溶剤不含のマクロモノマー(A)(ii)をアルキル−又はアリールポリアルキレングリコール(A)(i)及びポリイソシアネート成分(B)(i)から製造し、引き続きこの前付加物をイソシアネート反応性化合物(C)と反応させることによって得られる。マクロモノマー(A)(ii)は多段連続反応法でポリウレタン分散液の製造に使用される。このポリウレタン分散液は結合剤として、有利には鉱物性結合剤中に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン分散液、その製法並びに特に鉱物性結合剤の変性及び改良用の使用に関する。
【0002】
水性ポリウレタンの種類の結合剤は、40年以上前から公知である。水性ポリウレタンの特性は、最近の十年間に絶えず改良を重ねられており、これはこの一連のテーマに関する多数の特許明細書及び公開公報によって明らである。水性ポリウレタンの化学及び技術に関しては、D.Dieterich、K.Uhlig著、Ulmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry第6版1999、電子公開、Wiley−VCH;D.Dieterich著、Houben−Weyl、Methoden der Organischen Chemie 第E20巻、H.Bartl、J.Falbe(編集責任者)、Georg Thieme Verlag、Stuttgart1987、1641頁以下;D.Dieterich、Prog.Org.Coat.9(1981)281−330;J,W.Rosthauser、K.Nachtkamp、Journal of Coated Fabrics16(1986)39〜79;R.Arnoldus、Surf.Coat.3(Waterborne Coat.)を参照にされたい。
【0003】
乳化剤不含の自己乳化性ポリウレタンは昔から公知である。これは、そうでない場合に疎水性であるポリウレタン主鎖の自己乳化性を保証する化学的に組み込まれた親水性中心を含有する。原則的に2つの異なる種類の共有結合した親水性中心に分けられる。これは一方ではイオン基、例えばカルボキシレート−又はスルホネート基(静電安定化)であり、しかし他方では親水性非イオン基、例えばポリエチレンオキシド(立体安定化)でありうる。
【0004】
ポリウレタン分散液は、親水性中心の種類に応じて異なる特性を有する。イオン安定化されたポリウレタン分散液は、温度上昇に対して十分に安定である。それは含有される塩基の溶解性が実質的に温度に左右されないからである。これに対して非イオン安定化されたポリウレタン分散液は、既に約60℃の温度で加熱する際にポリエチレンオキシド側鎖の水溶性が僅かになるために凝集する。
【0005】
イオン安定化されたポリウレタン分散液に対して、これは優れた電解質安定性を有し、凍結及び解凍後でも尚安定である。
【0006】
組み込まれた親水性中心は、当然ポリウレタン分散液の乾燥させた塗膜の耐水性を必然的に著しく低下させる。
【0007】
しかし、イオン及び側鎖位の非イオン親水基の組合せ組込により、良好な分散性を損なうことなしに、親水性中心の総数をこの2種類の一方だけを単独で使用する場合に得られるであろうよりも実質的により僅かにすることができることが公知である。
【0008】
イオン及び非イオン親水基はここで更に相乗的に作用する、即ちこのようにして安定化されたポリウレタン分散液は同時に霜及び加熱に対して安定であり、更に電解質安定性も有する。
【0009】
US3905929B1には、側鎖位にポリアルキレンオキシド鎖を有する、水に分散可能な単に非イオン安定化されたポリウレタンが記載されている。ポリアルキレンオキシド側鎖はジオール成分を介してポリウレタン主鎖に組み込まれる。これは主としてエチレンオキシド単位及び場合によりブチレンオキシド−、スチレンオキシド又はプロピレンオキシド単位から成るモノアルコール開始ポリエーテルから、3〜10倍過剰のジイソシアネートとの反応によって、次いでジエタノールアミン又は比較可能な化合物との反応によって製造される。過剰のジイソシアネートはビスウレタン生成を抑制するために、最終的反応工程前に蒸留により除去する。ここで過剰のジイソシアネートによってのみビスウレタンの生成が抑制される。その際、各々反応性のイソシアネート基にヒドロキシル基の付加の選択性を高めるための触媒はもちろん使用されない。US3920598B1によれば、ポリエチレンオキシド鎖をアロファネート−又はビウレート−生成を介してジイソシアネート分子と共有結合する方法が公開されている。
【0010】
DE2551094A1から、イオン親水性中心と結合した末端−又は側鎖位のポリアルキレンオキシド−ポリエーテル鎖(非イオン親水性基)を有する水中に分散可能な乳化剤不含のポリウレタンが公知であり、その際、イオン中心は好適な塩形成性の反対イオンと結合している四級アンモニウム−、カルボキシレート−又はスルホネートイオンである。組み合わせた組込により、親水性基の総数をイオン又は非イオン基の単独使用で可能であるよりも実質的に僅かにすることができる。ここで、主としてエチレンオキシド単位から成るが、しかしプロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド又はポリテトラヒドロフランを含有してよい側鎖位のポリエーテル単位は、ジオール−又はジイソシアネート−成分を介してプレポリマー中に組み込まれる。
【0011】
DE2651505C2によれば、同じくジオール−又はジイソシアネート−成分を介してプレポリマー中に組み込まれる、末端−又は側鎖位にポリアルキレンオキシド−ポリエーテル鎖と結合したカチオン性の水に分散可能なポリウレタン系が記載されている。
【0012】
2つの特許で、親水性基の効果は専らその数により限定され、プレポリマー中のその分布により限定されない。
【0013】
DE2314512A1又はDE2314513A1から、専ら非イオン的にポリエチレンオキシド側鎖を介して安定化されている乳化剤不含の水性ポリウレタンが公知であり、これはジオール成分又はジイソシアネート成分を介してプレポリマー中に組み込まれる。
【0014】
DE2730514A1にはポリウレタンイオノマーの電解質安定性の水溶液が開示されている。側鎖−又は末端位のポリウレタン鎖内部の親水性ポリエーテルセグメントは高いイオン電荷で電解質に対する保護作用を生じる。比較的高い割合の親水性基によって、このポリウレタン系の硬化した塗膜の耐水性は特別良好というわけではない。
【0015】
DE2659617C2により、水性の室温で安定な水溶性電解質を含有する末端−又は側鎖位にエチレンオキシド鎖を有するイオン性ポリウレタン分散液の製法が開示されているが、これは確かに霜に敏感ではなくかつ電解質を含有する添加物、例えば顔料及び充填剤に対して安定であるが、溶解した電解質によって高い熱敏感性を有する。
【0016】
DE2151094A1に記載の方法の改良がDE2816815A1に提案されている。ここでは、スルホネート基並びにポリエーテル鎖内部に配置されたエチレンオキシド単位を有する、末端−又は側鎖位に親水性の構造成分を有する水に分散可能であるか又は可溶性のポリウレタンである。全ての前記した特許又は公開公報では、2種類の親水性原子団(イオン性及び非イオン性)は相互に別々にポリウレタン鎖中に組み込まれる。
【0017】
最後に、DE3831169A1又はDE3831170A1により、遊離の中和してない酸−又は遊離の中和されてない第三アミノ基と組み合わせたポリエチレンオキシド側鎖を有する可溶性又は水に分散可能な非イオン性ポリウレタンが記載されており、これは高い貯蔵安定性をもたらす。
【0018】
前記特許又は公開公報に記載の水性ポリウレタン系の可能な使用分野として、通常種々の材料、例えば織物、木材、皮革、金属、セラミックなどの薄い被覆又は含浸用の結合剤が挙げられる。
【0019】
しかし組み込まれた親水性のイオン及び非イオン成分の必要量は安定な水性系を得るべきである場合に、全ての場合に比較的高く、それによって必然的に耐水性の悪化を伴い、更にポリウレタン系の全特性プロフィールに対して不利な影響を有する。これは製造方法によるポリウレタン主鎖に添った親水性ポリアルキレンオキシド側鎖の非均質な分布のためであり、これは親水性中心の総必要量を高めることになる。
【0020】
イオン性及び非イオン性安定化の比が最適に調整されていないこのポリウレタン系では加工特性も、特に例えばセメントをベースとする平衡材料(Ausgleichsmasse)のような鉱物結合剤を有する系では、許容可能はなものでない。
【0021】
従って、本発明の根底をなす課題は、第一に鉱物性結合剤の変性及び改良用の、イオン及び非イオン親水性原子団間の最適化した比並びにポリウレタン主鎖に添った均質な分布を有するエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン分散液を開発することであったが、これは公知技術の前記欠点を有さず、改良された材料−及び適応特性を有し、同時に生態学的、経済的及び生理的観点を考慮して製造することができるものである。
【0022】
この課題は本発明によりエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂の製造により解決されたが、これは、
(a)単一分子量分布を有する親水性及び溶剤不含のマクロモノマー(A)(ii)を製造し、その際、
(a)イソシアネート基に対して反応性の第一及び/又は第二ヒドロキシル基及び分子量250〜5000ダルトンを有する親水性アルキル−及び/又はアリールポリアルキレングリコール(A)(i)50〜100質量部を、同一又は異なる反応性の2個以上の脂肪族又は芳香族イソシアネート基を有する少なくとも1種のジイソシアネート、ポリイソシアネート、ポリイソシアネート誘導体又はポリイソシアネート同族体から成るポリイソシアネート(B)(i)1〜100質量部と場合により触媒の存在で反応させ、
(a)工程(a)からの前付加物を2個以上のイソシアネート基に対して反応性の第一及び/又は第二アミノ基及び/又はヒドロキシル基及び分子量50〜500ダルトンを有する化合物(C)0.5〜200質量部と完全に反応させ、並びに
(b)ポリウレタン分散液を製造し、その際、
(b)2個以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び分子量500〜5500ダルトンを有する親水性及び溶剤不含のマクロモノマー(A)(ii)2〜50質量部を、2個以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアネート基を有する、少なくとも1種のポリイソシアネート、ポリイソシアネート誘導体又はポリイソシアネート同族体から成るポリイソシアネート成分(B)(ii)25〜250質量部と場合により溶剤成分(D)0〜50質量部の添加下及び場合により触媒の存在で反応させ、
(b)工程(b)からのポリウレタン前付加物を2個以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び分子量500〜5000ダルトンを有する高分子量ポリオール(A)(iii)50〜100質量部及び場合により2個以上のヒドロキシル基及び分子量50〜499ダルトンを有する低分子量ポリオール成分(A)(iv)0.5〜10質量部を有する組成物と場合により触媒の存在で反応させ、
(b)工程(b)からのポリウレタン前付加物を1個、2個又はそれ以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び1個以上の不活性カルボン酸−及び/又はスルホン酸基(これは塩基を用いて部分的にか又は完全にカルボキシレート−又はスルホネート基に変えてもよいし又は既にカルボキシレート−及び/又はスルホネート基の形で存在する)及び分子量100〜1000ダルトンを有する低分子量のアニオン変性可能なポリオール成分(A)(v)2〜20質量部と場合により触媒の存在で反応させ、
(b)工程(b)からのポリウレタン−プレポリマーに水に分散させる前又はその間に酸基を部分的にか又は完全に中和させるために中和成分(E)2〜20質量部を加え、
(b)工程(b)からの場合により(部分的に)中和したポリウレタン−プレポリマーを、場合によりなお配合成分(F)0〜100質量部を含有する水50〜1500質量部中に分散させ、最後に
(b)工程(b)からの(部分的に)中和したポリウレタン−プレポリマー−分散液を鎖長延長成分(G)3〜60質量部並びに引き続いてか又は同時に連鎖停止成分(H)0〜30質量部と反応させることによって得られる。
【0023】
即ち意外にも、単一分子量分布を有する親水性及び溶剤不含のマクロモノマー(A)(ii)を反応工程(a)から(a)により反応工程(b)から(b)によるポリウレタン−プレポリマー用の3段階の製造方法と組み合わせて製造し及び使用することによって、エレクトロステリックに安定化されたポリウレタン−分散液に関して下記の利点が得られることが判明した:
・ポリイソシアネートに対して選択的な親水性アルキル−及び/又はアリールポリアルキレングリコール(A)(i)の特別な組成によりマクロモノマー(A)(ii)の製造に際して副生成物なし、
・ポリウレタン−プレポリマーの合成の範囲で既に非イオン性安定剤(マクロモノマー(A)(ii))とポリウレタン−主鎖間の相溶性、
・ポリウレタン−プレポリマーに関する3段階の製造方法によるポリウレタン−ポリマー中の非イオン性安定剤(マクロモノマー(A)(ii))の最適な配置/分布、
・全体的に非常に僅かな安定剤必要量(アニオン性+非イオン性)及び比較的非常に僅かな親水性、
・pH1〜14における凝集なし、
・真の分散液:非常に僅かな安定剤必要量(アニオン性+非イオン性)による低い粘度における高い固体含量(公知技術参照:非常に高い安定剤必要量による高い固体含量における高い粘度)、
・完全なVOC不含結合剤が入手可能であること、
・高い長期貯蔵安定性(公知技術参照:非イオン性安定剤中の副生成物による緩慢な不安定化)、
・同様の使用のためのアクリレートをベースとする結合剤と比較して加水分解抵抗性及び低温柔軟性、
・特性プロフィール、材料特性及び加工挙動が公知技術に対して新しい種類のポリマー構造により有利な影響を受ける。
【0024】
本発明によるエレクトロステリックに安定化されたポリウレタン分散液は、多段製造方法により定義される。反応工程(a)で、先ず単一分子量分布を有する親水性及び溶剤不含のマクロモノマー(A)(ii)を製造し、これを次いで反応工程(b)で更に反応させて溶剤低含有又は溶剤不含の、エレクトロステリックに安定化されたポリウレタン分散液にする。
【0025】
この方法を実施するために、ポリウレタン化学で常用の技術の使用下で反応工程(a)で、イソシアネート基に対して反応性の第一及び/又は第二及び/又は第三ヒドロキシル基及び分子量250〜5000ダルトンを有する親水性アルキル−及び/又はアリールポリアルキレングリコール(A)(i)50〜100質量部を、同一又は異なる反応性の2個以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアネートを有する少なくとも1種のジイソシアネート、ポリイソシアネート、ポリイソシアネート誘導体又はポリイソシアネート同族体から成るポリイソシアネート(B)(i)1〜100質量部と場合により触媒の存在で溶剤の不在下で反応させるが、その際、反応条件及び成分(A)(i)及び(B)(i)の選択性を、成分(B)(i)のイソシアネート基1個のみが成分(A)(i)と反応するように選択する。反応工程(a)によるポリウレタン前付加生成物の製造は、有利には成分(A)(i)に数分から数時間までの時間内に成分(B)(i)を加えるか又は添加し又はこれと反対に成分(B)(i)に数分から数時間までの時間内に成分(A)(i)を加えるか又は添加するようにして行う。
【0026】
次ぎの反応工程(a)で、工程(a)からの均一な前付加物を2個以上のイソシアネート基に対して反応性の第一及び/又は第二アミノ基及び/又はヒドロキシル基及び分子量50〜500ダルトンを有する化合物(C)0.5〜200質量部と溶剤の不在下で完全に反応させ、その際、反応条件及び成分(C)の選択性を、成分(C)反応性基1個のみが前付加物の1個又は数個の遊離イソシアネート基と反応するように選択する。 成分(A)(ii)は、工程(a)における2個以上の分子(A)(i)の分子(B)(i)への付加及びそれによる工程(a)における2個以上の分子(C)の分子(B)(i)への付加によって生成しうる不所望な副生成物が存在しないことによって、単一分子量分布を有する。
【0027】
これはMALDI−TOF−検査によって明らかに実証することができた。既に記載した公知技術に対して、所望のマクロモノマー(A)(ii)の他に、生成するポリウレタン分散液の生成物品質を著しく悪化させるであろう、外部乳化剤及び架橋剤の形での副生成物も全く生じない。前者はポリウレタン−ポリマー中に組み込まれず、従って分散液の安定性を減少させ、2番目のものはポリウレタン−ポリマーの過剰架橋を起こし、従って同様に分散液の安定性を減少させる。両方の副生成物が常に生成するので、その効果が相互に増強する。この事実に基づいて公知技術により製造した生成物は建築化学用用途に限定的に好適であるにすぎない。副生成物の生成は工程実施に著しく左右されるので、文献から公知の系では再現性にも非常に問題がある。
【0028】
反応工程(a)及び(a)の実施は、反応条件に関して比較的問題がない。反応バッチを反応工程(a)及び(a)で重付加反応の発熱を使用して計算又は理論的NCO−含量に達するまで10〜30℃、有利には15〜25℃で、不活性雰囲気下で攪拌する。必要な反応時間は数分から数時間の範囲であり、反応パラメーター、例えば成分の反応性、成分の化学量論及び温度により決定的に影響される。
【0029】
反応工程(a)のNCO/OH−当量比は1.9〜2.1であり、反応工程(a)のNCO/OH+NH−当量比は0.95〜1.05に調整する。
【0030】
次の反応工程(b)で2個以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び分子量500〜5500ダルトンを有する単一分子分布を有する親水性及び溶剤不含マクロモノマー(A)(ii)2〜50質量部を、2個以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアネート基を有する、少なくとも1種の、ポリイソシアネート、ポリイソシアネート誘導体又はポリイソシアネート同族体から成るポリイソシアネート成分(B)(ii)25〜250質量部と場合により溶剤成分(D)0〜50質量部の添加下及び場合により触媒の存在で反応させる。反応工程(b)によるポリウレタン前付加物の製造は有利には、成分(A)(ii)を数分から数時間の時間内に成分(B)(ii)に加えるか又は添加するか又は反対に成分(B)(ii)を数分から数時間の時間内に成分(A)(ii)に加えるか又は添加するようにして行う。次ぎの反応工程(b)で工程(b)からのポリウレタン−前付加物を2個以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び分子量500〜5000ダルトンを有する高分子量ポリオール(A)(iii)50〜100質量部及び場合により2個以上のヒドロキシル基及び分子量50〜499ダルトンを有する低分子量ポリオール成分(A)(iv)0.5〜10質量部と場合により触媒の存在で反応させる。引き続き反応工程(b)で、工程(b)からのポリウレタン−前付加物を、1個、2個又はそれ以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び1個以上の不活性カルボン酸−及び/又はスルホン酸基(これは塩基を用いて部分的にか又は完全にカルボキシレート−又はスルホネート基に変えてもよいし又は既にカルボキシレート−及び/又はスルホネート基の形で存在する)及び分子量100〜1000ダルトンを有する低分子量のアニオン変性可能なポリオール成分(A)(v)2〜20質量部と場合により触媒の存在で反応させる。反応工程(b)又は(b)で使用される反応工程(b)又は(b)からのポリウレタン−前付加物は、相応する工程実施又は不完全な反応ではイソシアネート基及び/又はポリイソシアネートモノマーの他になお遊離ヒドロキシル基を有してもよい。
【0031】
反応工程(b)、(b)又は(b)の実施は、反応条件に関して比較的問題がない。反応バッチを反応工程(b)、(b)又は(b)で重付加反応の発熱を使用して計算又は理論的NCO−含量に達するまで60〜120℃、有利には80〜100℃で不活性雰囲気下で攪拌する。必要な反応時間は数時間の範囲であり、反応パラメーター、例えば成分の反応性、成分の化学量論及び温度により決定的に影響される。
【0032】
工程(b)の成分(A)(i)、A(ii)、A(iii)、A(iv)、(A)(v)及び(B)(ii)のNCO/OH−当量比は1.25〜2.5、有利には1.4〜2.0の値に調整する。
【0033】
工程(a)、(b)及び(b)の成分(A)、(B)及び(C)の反応はポリイソシアネートの重付加反応用に常用の触媒の存在で行うことができる。必要な場合にはこの触媒の添加を成分(A)及び(B)に対して0.01〜1質量%の量で行う。ポリイソシアネートの重付加反応用の慣用の触媒は、例えば酸化ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫(DBTL)、トリエチルアミン、オクトエ酸錫(II)、1,4−ジアザ−ビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,4−ジアザ−ビシクロ[3,2,0]−5−ノネン(DBN)、1,5−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)である。
【0034】
成分(A)(i)は、イソシアネート基に対して反応性の第一及び/第二ヒドロキシル基及び分子量250〜5000ダルトンを有する親水性アルキル−及び/又はアリールポリアルキレングリコールから成る。好適な親水性アルキル−及び/又はアリールポリアルキレングリコールとしては、エチレンオキシド90〜10質量%及びアルキレンオキシド当たり炭素原子4〜30個を有するその他のアルキレンオキシド10〜90質量%から成り、第一及び/又は第二及び/又は第三ヒドロキシル基を有する、鹸化安定なコポリマー及び/又はランダムコポリマー及び/又はブロックコポリマー、有利にはエチレンオキシド90〜10質量%及びその他のアルキレンオキシド10〜90質量%から成る、第二又は第三ヒドロキシル基を有する、一官能性アルキル−ポリ−(エチレンオキシド−コ/ランダム−アルキレンオキシド)及び/又はアルキル−ポリ−(エチレンオキシド−ブロック−アルキレンオキシド)及び/又はナトリウムスルホネートプロピル−ポリ−(エチレンオキシド−コ/ランダム−アルキレンオキシド)及び/又はナトリウムスルホネートプロピル−ポリ−(エチレンオキシド−ブロック−アルキレンオキシド)を使用することができる。アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ドデシルオキシド、イソアミルオキシド、オキセタン、置換されたオキセタン、α−ピネンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン又はその他のアルキレンオキシド当たり炭素原子4〜30個を有する脂肪族又は芳香族アルキレンオキシド又はその混合物が有利である。
【0035】
成分(A)(iii)は、2個以上のポリイソシアネートに対して反応性のヒドロキシル基及び平均分子量(数平均)500〜5000ダルトンを有する高分子量ポリオールから成る。好適な高分子量ポリオールとしては、線状又は二官能性ポリアルキレングリコール、脂肪族又は芳香族ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、α,ω−ポリメタクリレートジオール、α,ω−ジヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン、ヒドロキシ官能性マクロモノマー、ヒドロキシ官能性両端二官能性分子(Telechele)、ヒドロキシ官能性エポキシド樹脂又はこれらから成る好適な混合物を使用することができる。ポリアルキレングリコールを使用するのが有利である。好適なポリアルキレングリコールは、例えばポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール又はポリテトラヒドロフラン、ABA−、BAB−又は(AB)−構造を有する鹸化安定なプロックコポリマーから成る疎水性変性ブロックコポリマーであり、その際、Aは疎水化作用特性を有するポリマーセグメントを表し、Bはポリプロピレンオキシドをベースとするポリマーセグメントを表し、平均分子量(数平均)1000〜3000ダルトンを有する。ポリマー−セグメントAとしては、ポリブチレンオキシド、ポリドデシルオキシド、ポリイソアミルオキシド、ポリオキセタン、置換されたポリオキセタン、ポリ−α−ピネンオキシド、ポリスチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、アルキレンオキシド当たり炭素原子4〜30個を有するその他の脂肪族又は芳香族ポリオキシアルキレン、α,ω−ポリメタクリレートジオール、α,ω−ジヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン、マクロモノマー、両端二官能性分子又はそれから成る混合物が有利である。
【0036】
成分(A)(iv)は、2個以上のポリイソシアネートに対して反応性のヒドロキシル基及び平均分子量50〜499ダルトンを有する低分子量ポリオールから成る。好適な低分子量ポリオールとしては、例えば1,2−エタンジオール又はエチレングリコール、1,2−プロパンジオール又は1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール又は1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール又は1,6−ヘキサメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール又はネオペンチルグリコール、1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン又はシクロヘキサンジメタノール、1,2,3−プロパントリオール又はグリセロール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパノール又はトリメチロールエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール又はトリメチロールプロパン、2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール又はペンタエリスリットを使用することができる。
【0037】
成分(A)(v)は、1個、2個又はそれ以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び1個以上の不活性カルボン酸−及び/又はスルホン酸基(これは塩基を用いて部分的にか又は完全にカルボキシレート−又はスルホネート基に変えてもよいし又は既にカルボキシレート−及び/又はスルホネート基の形で存在する)及び分子量100〜1000ダルトンを有する低分子量のアニオン変性可能なポリオール成分から成る。低分子量のアニオン変性可能なポリオールとしては、例えば2−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロパン酸又はジメチロール酢酸、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパン酸又はジメチロールプロピオン酸、2−ヒドロキシメチル−2−エチル−3−ヒドロキシプロパン酸又はジメチロール酪酸、2−ヒドロキシメチル−2−プロピル−3−ヒドロキシプロパン酸又はジメチロールバレリアン酸、クエン酸、酒石酸、[トリス−(ヒドロキシメチル)−メチル]−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS、Fa.Raschig GmbH)、1,3−プロパンスルホンをベースとするビルディングブロック(Fa.Raschig GmbH)及び/又は3−メルカプトプロパンスルホン酸−ナトリウム−塩(MPS、Fa.Raschig GmbH)を使用することができる。これらのビルディングブロックは場合によりヒドロキシル基の代わりにアミノ基を有してもよい。分子量100〜200ダルトンを有するビスヒドロキシアルカンカルボン酸、特に2−ヒドロキシメチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパン酸又はジメチロールプロピオン酸(Fa.Trimet Technical Productsの商標名DMPA(R))が有利である。
【0038】
成分(B)(i)及び(B)(ii)は、2個以上の脂肪族又は芳香族イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネート、ポリイソシアネート誘導体又はポリイソシアネート同族体から成る。特にポリウレタン化学で十分に公知のポリイソシアネート又はその組合せ物が好適である。好適な脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば1,6−ジイソシアネートヘキサン(HDI)、1−イソシアネート−5−イソシアネートメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス−(4−イソシアネートシクロ−ヘキシル)−メタン(H12MDI)、1,3−ビス−(1−イソシアネート−1−メチル−エチル)−ベンゼン(m−TMXDI)又は個々の芳香族ポリイソシアネートの技術的異性体混合物を使用することができる。好適な芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば2,4−ジイソシアネートトルエン又はトルエンジイソシアネート(TDI)、ビス−(4−イソシアネートフェニル)−メタン(MDI)及び場合によりそのより高級な同族体(高分子MDI)又は個々の芳香族ポリイソシアネートの技術的異性体−混合物を使用することができる。更に、ビス−(4−イソシアネートシクロ−ヘキシル)−メタン(H12MDI)、1,6−ジイソシアネートヘキサン(HDI)、1−イソシアネート−5−イソシアネートメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)をベースとするいわゆる“ラックポリイソシアネート(Lackpolyisocyanate)”が基本的に好適である。概念“ラックポリイソシアネート”は、モノマーのジイソシアネートの基含量を公知技術に相応して最低に減少させた、これらのジイソシアネートのアロファネート−、ビウレット−、カルボジイミド−、イソシアヌレート−、ウレトジオン−、ウレタン基を有する誘導体である。更に例えば1,6−ジイソシアネートヘキサン(HDI)をベースとする“ラックポリイソシアネート”の親水性変性により得られる変性されたポリイソシアネートを使用することもできる。成分(B)(i)で、脂肪族ポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートに対して有利である。更に異なる反応性のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが有利である。成分(B)(ii)で2,4−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート及び2,6−トルエンジイソシアネートから成る異性体混合物又はイソホロンジイソシアネートから成る異性体混合物が有利である。
【0039】
より僅かな非均質性を有する狭い分子量分布を得るために、異なる反応性のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを使用するのが有利である。従って、二官能性ポリオール−及びポリイソシアネート−成分から成る線状構造を有するポリウレタン−プレポリマーが有利である。
【0040】
有利な態様によれば、成分(A)(i)として一官能性ポリアルキレングリコール及び成分(B)(i)として少なくとも二官能性ポリイソシアネートを使用する。
【0041】
成分(C)は2個以上のイソシアネート基に対して反応性の第一及び/又は第二アミノ基及び/又はヒドロキシル基及び分子量50〜500ダルトンを有する化合物から成る。好適な化合物としては、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタノール及びトリメチロールプロパンを使用することができる。ジエタノールアミンを使用するのが有利である。
【0042】
ポリウレタン−プレポリマーの粘度を低下させるために又はポリウレタン−分散液の凝集を改善するために、反応工程(b)による製造の間又はその後に有機溶剤を添加することができる。有利にはポリウレタン−分散液は10質量%より少ない有機溶剤を含有する。特に有利な態様によれば、ポリウレタン分散液は溶剤不含で存在する。
【0043】
溶剤成分(D)は、製造後にポリウレタン分散液中に残留するか又は蒸留により再び全部又は部分的に除去される、ポリイソシアネートに対して不活性の有利には水と完全にか又は部分的に混合可能な有機溶剤から成る。好適な溶剤としては、例えば高沸点及び親水性有機溶剤、例えばN−メチルピロリドン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(Fa.DowのProglyde DMM(R))、低沸点溶剤、例えばアセトン、ブタノン又はその任意の混合物を使用することができる。製造後分散液中に残留し、凝集助剤として作用する高沸点及び親水性溶剤、例えばN−メチルピロリドンを使用するのが有利である。
【0044】
ポリウレタン−プレポリマーの粘度は比較的低く及び使用されたポリオール−及びポリイソシアネート−成分の構造に完全に無関係である。粘度を減少させるため又はポリウレタン−プレポリマーの分散特性を改善するために溶剤の添加は通常必要ない。プレポリマーの特別な構造は非常に高い固体含量を有する生成物の製造を可能にする。更に、ポリウレタン−ポリマー上のカルボキシレート−又はスルホネート基の均質な分布により相応するポリウレタン分散液の安定化用に非常に僅かな電荷密度が必要であるにすぎない。
【0045】
反応工程(b)からのポリウレタン−プレポリマーは、水50〜1500質量部中に分散させる前又はその間に中和成分(E)2〜20質量部と反応させてカルボン酸−及び/又はスルホン酸基を部分的又は完全に中和する(直接又は間接中和)。直接中和の場合には、中和成分(E)を水に分散させる前に既にポリウレタン−プレポリマー中に入れ、間接中和の場合には中和成分(E)を水に分散させる前に前装入する。所望の場合には直接及び間接中和の組合せを使用することもできる。
【0046】
反応工程(b)は温度40〜60℃、特に有利には約50℃で実施する。
【0047】
中和成分(E)は、カルボン酸−及び/又はスルホン酸基の完全又は部分的な中和に使用できる1種以上の塩基から成る。成分(A)(v)が既に塩の形で存在する限り、中和成分(E)を省略することができる。好適な塩基としては、例えば第三アミン、例えばN,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−メチルジイソプロパノールアミン、トリイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、アンモニア又は水酸化アルカリ、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用することができる。水酸化アルカリ、特に水酸化ナトリウムを使用するのが有利である。
【0048】
中和成分(E)は、ポリウレタン−プレポリマーの遊離カルボン酸−及び/又はスルホン酸基に対する中和度が25〜100当量%、有利には50〜100当量%である、ような量で添加する。。中和に際してカルボン酸−及び/又はスルホン酸基から、ポリウレタン−分散液のアニオン性変性又は安定化用に役立つカルボキシレート−及び/又はスルホネート基が生成される。
【0049】
反応工程(b)からの場合により(部分)中和されたポリウレタン−プレポリマーを次の反応工程(b5)で、場合によりな配合成分(F)質量部0〜100質量部を含有する(現場配合)水50〜1500質量部中に分散させる。
【0050】
配合成分(F)は、消泡剤、脱気剤、潤滑−及び流展添加物、放射線硬化添加物、分散添加物、支持体湿潤添加物、疎水化剤、流動学的添加物、例えばポリウレタン増粘剤、凝集助剤、つや消し剤、接着助剤、凍結防止剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、抗菌剤、抗真菌剤、その他のポリマー及び/又はポリマー分散剤並びに充填剤、顔料、つや消し剤又はこれらから成る好適な組合せ物から成る。その際、個々の配合成分は不活性と見なす。
【0051】
反応工程(b)は有利には温度40〜60℃、特に約50℃で実施する。
【0052】
分散に際してポリウレタン−プレポリマーを分散媒体中に移し、その際ポリウレタン−プレポリマー−分散液が生成する。その際、中和されたポリウレタン−プレポリマーは、表面で安定化作用を有するカルボキシレート−及び/又はスルホネート基並びにポリアルキレンオキシド鎖及び内部に反応性イソシアネート基を有するミセルを形成する。アニオン性カルボキシレート−及び/又はスルホネート基に対するカチオン性反対イオンは全て分散媒体に溶解している。概念“分散”又は“分散液”は、ミセル構造を有する分散された成分の他に溶媒和及び/又は懸濁した成分も含有されていてよいことを意味する。ポリウレタン−プレポリマーを水相中へ移すために、ポリウレタン−プレポリマーを分散媒体中に混入するか又は分散媒体をポリウレタン−プレポリマー中へ(逆−法)混入することができる。
【0053】
反応工程(b)からの(部分)中和されたポリウレタン−プレポリマー−分散液を次の反応工程(b)で鎖長延長成分(G)3〜60質量部並びに引き続いてか又は同時に連鎖停止成分(H)0〜30質量部と反応させる。
【0054】
反応工程(b)は有利には温度30〜50℃、特に約40℃で実施する。
【0055】
鎖長延長成分(G)は2個以上のポリイソシアネートに対して反応性のアミノ基を有するポリアミンから成る。好適なポリアミンとして、例えばアジピン酸ジヒドラジド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、イソホロンジアミン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタノール、Fa.Huntsman CorporationのJeffamine(R)(ポリオキシアルキレンアミン)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸(AMPS)の塩及びエチレンジアミンからの付加物、(メタ)アクリル酸の塩及びエチレンジアミンからの付加物、1,3−プロパンスルホン及びエチレンジアミンからの付加物又はこれらのポリアミンの任意の組合せ物を使用することができる。二官能性第一アミン及び特にエチレンジアミンを使用するのが有利である。
【0056】
鎖長延長成分(G)は、ポリウレタン−プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する鎖長延長度が50〜100当量%、有利には70〜80当量%であるような量で添加する。鎖長延長成分(G)は、アミンの水和による付加的な発熱を抑制するために、前もって取り出した含分の水中で質量比1:1〜1:10で希釈する。
【0057】
連鎖停止成分(H)はポリイソシアネートに対して反応性のアミノ基を有するモノアミンから成る。好適なモノアミンとしてエチルアミン、ジエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン又はこれらモノアミンの任意の組合せを使用することができる。一官能性第一アミン及び特にイソプロピルアミンを使用するのが有利である。
【0058】
連鎖停止成分(H)は、ポリウレタン−プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する連鎖停止度が0〜50当量%、有利には20〜30当量%であるような量で添加する。連鎖停止成分(H)は、アミンの水和による付加的な発熱を抑制するために、前もって取り出した含分の水中で質量比1:1〜1:10で希釈する。
【0059】
ポリウレタン−プレポリマー−分散液の鎖長延長及び連鎖停止によって、ミセル内部の分子量が生成され及びより高い分子量のポリウレタン−プレポリマー−分散液が生成される。その際、鎖長延長成分(G)及び連鎖停止成分(H)は反応性イソシアネート基と水より著しく速く反応する。
【0060】
反応工程(b)に引き続きて場合によりなお存在する遊離イソシアネート基を水で完全に連鎖延長させる。
【0061】
成分(A)、(B)、(C)、(E)、(G)及び(H)から成るポリウレタン−ポリマー中のエチレンオキシド基の含量は0.5〜10質量%、有利には2〜5質量%に調整する。
【0062】
成分(A)、(B)、(C)、(E)、(G)及び(H)から成るポリウレタン−ポリマーの固体含量はポリウレタン−分散液の全量に対して30〜70質量%、有利には50〜55質量%に調整する。
【0063】
成分(A)、(B)、(C)、(E)、(G)及び(H)から成るポリウレタン−ポリマー中のカルボキシレート−及び/又はスルホネート基の含量は5〜25meq・(100g)−1、有利には10〜20meq・(100g)−1に調整し、酸価は5〜30meqKOH・g−1、有利には10〜25meqKOH・g−1に調整する。
【0064】
ポリウレタン分散液のミセルの平均粒度(AF−FFF)は50〜500nm、有利には100〜400nmである。
【0065】
成分(A)、(B)、(C)、(E)、(G)及び(H)から成るポリウレタン−ポリマーの平均分子量(数平均)は、25000〜500000ダルトンである。
【0066】
特に有利な態様では、ポリウレタン分散液はHigh Solids Zero VOC Processにより製造する(WO99/50325及びDE19949971参照)。この方法はオーダーメードのポリウレタン分散液の一般的製法である。方法の技術的要求が僅かであること及び揮発性及び/又は非揮発性有機溶剤の完全な省略により、低いコストで高い空間/時間収率が可能になる。溶剤不含、固体含量及び材料特性に関する本発明によるポリウレタン分散液の性能は、卓越している。更に方法の単純性及び再現性並びに生成物の貯蔵安定性も際だっている。
【0067】
ポリウレタン−ポリマーの理想的な線状分割された構造により、分子内に硬質セグメント及び軟質セグメントから成る非常に優れた規則的な領域構造が生じる。硬質部分は、硬質ウレタン−及び尿素基並びに単鎖ジオールを有する構造要素から成り、これは強力な内部結合(interchenare)変換作用を生じる。軟質部分は、炭酸−、エステル−及びエーテル基を有するフレキシブルな構造要素から成り、これは弱い内部結合変換作用を生じる。ポリウレタン分散液はその製法により理想的な線状分割された構造を有する。その際、表現“理想的な線状分割された構造”とは、ポリウレタン−ポリマーが線状構造を有し、全構造成分を規則的配置及び順序で含有し、これからポリウレタン分散液の特別な材料特性を生じることを意味する。応力及び引張強さは広い範囲でほぼ任意に変えることができる。
【0068】
本発明のもう一つの目的は、構造化学生成物中のエレクトロステリックに安定化されたポリウレタン樹脂の使用に関する。
【0069】
本発明により提案されたエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂は、(a)合成樹脂化粧塗り、(b)ビチューメン材料及びアスファルト並びに(c)場合により鉱物性結合剤の添加下における断熱複合系の単一成分の形の液状及びペースト状構造物製品の結合剤として好適である。
【0070】
本発明により提案されたエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂は、更に(a)セメント床、床サーフェイサー−及び流展剤用のモルタル添加分散液、(b)構造物−、タイル−及びWDVS接着剤用のモルタル添加分散液、(c)2K−パッキングマッド用モルタル添加物としての分散液、(d)コンクリート修復系用のモルタル添加分散液並びに(e)コンクリート建造物中の添加物としてのポリマー分散液の形の鉱物構造物製品の改良成分として好適である。
【0071】
本発明により提案されたエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂は、(a)ゴム顆粒又は繊維並びに場合により骨材から成る弾性層用の結合剤、(b)運動場床材の基礎用の接着助剤又は下塗、(c)場合により構造−充填剤を有する、弾性又は硬質基礎上に塗布するための吹付被覆、(d)弾性又は硬質基礎上に塗布するための流展被覆、(e)弾性又は硬質基礎の目塗り用のサーフェイサー、(f)前もって製造した弾性層の接着用の接着剤、(g)場合により顔料を有する、シール剤並びに(h)罫引きインクの形の、運動場床材及びテニスコート床材用の−場合により鉱物性結合剤を含有する−配合剤中の結合剤としても好適である。
【0072】
本発明により提案されたエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂は、更に、(a)地面−、水泳用−又は甲板並びに吹付被覆層又は有利には下塗した建造物表面の請求項1から22のいずれか1項に記載のポリウレタン分散液のシール剤、(b)(場合により防炎)屋根被覆又は屋根塗料並びに(c)露天−又は地下構造物の建造物の(場合により防炎)パッキングの形の、亀裂橋かけ作用を有する被覆系用の場合により鉱物性結合剤を含有する配合物中の結合剤として好適である。
【0073】
前記用途で、本発明により提案されたエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂は特に場合によりセメントをベースとする水性厚被覆の製造用の結合剤として好適である。
【0074】
本発明により提案されたエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂は、建築分野で更に、被覆、パッキング、印刷インキ、染料及びラッカー、下塗、接着剤、鉱物性建造物、例えばコンクリート、石膏、セラミック、粘土、セメントの表面用の膜、並びにガラス、ゴム、木及び木材、プラスチック、金属、紙、合成材料の表面用の結合剤として使用することができる。
【0075】
更に、本発明により提案されたエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂は、本物及び合成皮革並びに紙及びボール紙の被覆用及び合成皮革製造用の結合剤として好適である。
【0076】
本発明により提案されたエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂は、一、二又は多成分系で使用することができ、その際、その他の成分は配合成分及び/又は硬化剤を含有することができる。その際、本発明によるポリウレタン樹脂を配合成分及び場合によりその他のポリマーと組み合わせて再分散可能な分散粉末の形又は結合剤として、完全に配合された最終生成物に対して0.5〜75質量%の量で使用することができる。
【0077】
原則として、配合物内で本発明によりエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂を水性又は非水性結合剤と及び/又は本発明によるポリウレタン樹脂をベースとする配合剤を水性又は非水性結合剤をベースとする配合剤と組み合わせることができる。その際、概念水性又は非水性結合剤とは、水性ポリウレタン、ポリマー分散液、再分散可能なポリマー粉末又は非水性溶剤含有又は溶剤不含及び場合により反応性ポリマーを表す。
【0078】
個々の配合成分には、充填剤、顔料、可塑剤、繊維材料、消泡剤、脱気剤、滑剤及び流展添加物、分散添加物、支持体湿潤添加物、疎水化剤、流動学的助剤、接着助剤、防炎剤、凍結防止剤、酸化防止剤、紫外線安定剤及び保存剤が挙げられる。
【0079】
配合成分は、ポリウレタン分散液の製造中及び/又はその後に装入することができる。現場配合ポリウレタン分散液の場合には、配合を結合剤製法に統合する、即ち(不活性)配合物成分を既に全部又は部分的に分散媒質に前装入する。
【0080】
本発明により提案されたエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂の塗布は、公知方法で、例えば流し塗布、流延、ナイフ塗布、吹付、はけ塗り、浸漬、ローラ塗りで行う。
【0081】
次ぎに本発明を実施例につき詳説する。
【0082】
実施例
例A.1
A.1.1メチル−ポリ−(エチレンオキシド−コ/ランダム−プロピレンオキシド):
メチルジグリコール102.2g(1モル)及びカリウムメタノラート7.0g(0.1モル)を反応器中に入れた。注意深く純粋な窒素で洗浄後、115℃に加熱し、エチレンオキシド437g(9.93モル)及びプロピレンオキシド173g(2.98モル)から成る混合物を20分間以内に添加した。圧力一定になるまでの後反応時間後、もう一度エチレンオキシド437g(9.93モル)及びプロピレンオキシド173g(2.98モル)から成る混合物を20分間以内に添加した。モノマー混合物の完全な導入後、温度を一定のマノメーター圧力が後反応終了を示すまで115℃に保った。最後に80〜90℃で反応しなかった残モノマーを真空中で除去した。得られた生成物を燐酸を用いて中和し、水を蒸留により、生成した燐酸カリウムを濾過により濾過助剤と一緒に除去した。
【0083】
仮定官能性1でヒドロキシル価の測定からの分子量は、M=1140g/モルであった。
【0084】
A.1.2ビルディングブロック合成(“分散性ジオール”)
KPG−攪拌機、還流冷却器、内部サーモメーター及び窒素保護装置(Stickstoff−Deckung)を装備した四首フラスコ中に純粋な2,4−トルイレンジイソシアネート(TDI)(Desmodur T 100、Bayer AG)0.1モルを窒素下で前装入し、約15〜20℃に冷却した。その際、2,4−トルイレンジイソシアネート(TDI)の再結晶は完全に阻止した。触媒としてジラウリン酸ジブチル錫(DBTL)2滴添加後、冷却下で約2時間以内に等モル量のメチルポリ(エチレンオキシド−コ/ランダム−プロピレンオキシド)を徐々に滴加した。滴加終了後、バッチを更に2時間同じ温度で所望のNCO値に達するまで攪拌した。前付加物に引き続き冷却下で等モル量のジエタノールアミン(DEA)を徐々に滴加した。
【0085】
反応はNCO値がゼロに下がった時に終了する。
【0086】
例A.2
製造は例A1.2と同様にして行った。親水性アルキルポリアルキレングリコールとして分子量M=1275g/モルを有するナトリウムスルホネートプロピル−ポリ−(エチレンオキシド−コ/ランダム−プロピレンオキシド)(Tego Chemie Service GmbH)を使用した。
【0087】
例B.1
PPG2000及び例A.1からのビルディングブロック(“分散性ジオール”)をベースとする、溶剤不含エレクトロステリックに安定化されたポリウレタン分散液
KPG−攪拌機、還流冷却器、サーモメーター及び窒素保護装置を装備した四首フラスコ中に、ビルディングブロック(例A1からの)9.02g及びイソホロンジイソシアネート(Vestanat(R)IPDI、Degussa AG)41.52gから成る混合物を先ず窒素保護下で約30分間45℃で触媒としてジラウリン酸ジブチル錫(DBTL)0.1gの存在で攪拌する。ヒドロキシル価56.1mgKOH・g−1を有するポリプロピレングリコール(Fa.Arco ChemicalのArco Arcol PPG2000)100.00g及び1,4−ブタンジオール0.58gを前付加物に添加後、混合物を窒素保護下で80〜90℃で更に1.5時間攪拌する。引き続き微細に粉砕したジメチロールプロピオン酸(Fa.Mallinckrodtの商標名DMPA(R))4.11gを添加し、混合物を更に2.5時間変わらない温度で、計算NCO−含量に達するまで攪拌する(理論値:5.06質量%、NCO/OH=2.00)。反応経過は酸滴定により追跡する。
【0088】
70℃に冷却後、次いでプレポリマーを強力な攪拌下で、前もって水酸化ナトリウム水溶液(4質量%)21.44g(70当量%中和)を加えておいた水130.59g中に分散させ、約15分間後攪拌する。引き続きポリウレタン分散液を生成するために、水中のJeffamin(R)D−230(Fa.Huntamanの)の80質量%溶液18.83g(70当量%)を用いて鎖延長する。
【0089】
下記特性を有する安定なポリウレタン分散液が得られる:
【0090】
【表1】

【0091】
例B.2
疎水化したポリアルキレンオキシド(ポリ−(プロピレンオキシド)−ブロック−ポリ−(ブチレンオキシド)−ブロック−ポリ−(プロピレンオキシド及び例A.1からのビルディングブロック(“分散性ジオール”)をベースとする、溶剤不含エレクトロステリックに安定化されたポリウレタン分散液
製造は例B.1と同様に行ったが、ポリプロピレングリコールの代わりに、ポリブチレンオキシド−ミドルブロック42質量%及びヒドロキシル価53.1mgKOH・g−1を有する疎水化されたポリプロピレングリコール(Fa.Tego Chemie Service GmbH)を使用する。
【0092】
【表2】

【0093】
例B.3
PPG2000及び例A.2からのビルディングブロック(“分散性ジオール”)をベースとする、溶剤不含のエレクトロステリックに安定化されたポリウレタン分散液
KPG−攪拌機、還流冷却器、サーモメーター及び窒素保護装置を装備した四首フラスコ中に、ビルディングブロック(例A2からの)10.18g及びイソホロンジイソシアネート(Vestanat(R)、Degussa AG)37.77gから成る混合物を先ず窒素保護下で約30分間45℃で触媒としてジラウリン酸ジブチル錫(DBTL)0.1gの存在で攪拌する。ヒドロキシル価56.1mgKOH・g−1を有するポリプロピレングリコール(Fa.Arco ChemicalのArco Arcol PPG2000)100.00g及び1,4−ブタンジオール0.58gを前付加物に添加後、混合物を窒素保護下で80〜90℃で更に1.5時間攪拌する。引き続き微細に粉砕したジメチロールプロピオン酸(Fa.Mallinckrodtの商標名DMPA(R))2.98gを添加し、混合物を更に2.5時間変わらない温度で、計算NCO−含量に達するまで攪拌する(理論値:4.71質量%、NCO/OH=2.00)。反応経過は酸滴定により追跡する。
【0094】
70℃に冷却後、次いでプレポリマーを強力な攪拌下で、前もって水酸化ナトリウム水溶液(4質量%)13.42g(DMPAに対して60当量%中和)を加えておいた水139.27g中に分散させ、約15分間後攪拌する。引き続きポリウレタン分散液を生成するために、水中のエチレンジアミン50質量%溶液7.15g(70当量%)を用いて鎖延長する。
【0095】
下記特性を有する安定なポリウレタン分散液が得られる:
【0096】
【表3】

【0097】
例B.4
ポリテトラヒドロフラン(PTHF)及び例A.1からのビルディングブロック(“分散性ジオール”)をベースとする、溶剤不含エレクトロステリックに安定化されたポリウレタン分散液
製造は例B.1及びB.2と同様に行ったが、ポリプロピレングリコールの代わりに、ヒドロキシル価56.1mgKOH・g−1を有するポリテトラヒドロフランジオール(PTHF)(BASF AG)を使用する。
【0098】
【表4】

【0099】
ビルディングブロックA.1及びA.2の使用下の例B.1からB.4から成る溶剤不含のエレクトロステリックに安定化されたポリウレタン分散液(全概観)
製造は例B.1又はB.3と同様にして行った。しかし下記を使用した:
【0100】
【表5】

【0101】
例B.1からB.4から成る溶剤不含のエレクトロステリックに安定化されたポリウレタン分散液の特性
【0102】
【表6】

EN ISO 527による材料特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)単一分子量分布を有する親水性及び溶剤不含のマクロモノマー(A)(ii)を製造し、その際、
(a)イソシアネート基に対して反応性の第一及び/又は第二及び/又は第三ヒドロキシル基及び分子量250〜5000ダルトンを有する親水性アルキル−及び/又はアリールポリアルキレングリコール(A)(i)50〜100質量部を、同一又は異なる反応性の2個以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアネート基を有する少なくとも1種のジイソシアネート、ポリイソシアネート、ポリイソシアネート誘導体又はポリイソシアネート同族体から成るポリイソシアネート(B)(i)1〜100質量部と場合により触媒の存在で反応させ、
(a)工程(a)からの前付加物を2個以上のイソシアネート基に対して反応性の第一及び/又は第二アミノ基及び/又はヒドロキシル基及び分子量50〜500ダルトンを有する化合物(C)0.5〜200質量部と完全に反応させ、並びに
(b)ポリウレタン分散液を製造し、その際、
(b)2個以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び分子量500〜5500ダルトンを有する単一分子量分布を有する親水性及び溶剤不含のマクロモノマー(A)(ii)2〜50質量部を、2個以上の(環式)脂肪族又は芳香族イソシアネート基を有する、少なくとも1種のポリイソシアネート、ポリイソシアネート誘導体又はポリイソシアネート同族体から成るポリイソシアネート成分(B)(ii)25〜250質量部と場合により溶剤成分(D)0〜50質量部の添加下及び場合により触媒の存在で反応させ、
(b)工程(b)からのポリウレタン前付加物を2個以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び分子量500〜5000ダルトンを有する高分子量ポリオール(A)(iii)50〜100質量部及び場合により2個以上のヒドロキシル基及び分子量50〜499ダルトンを有する低分子量ポリオール成分(A)(iv)0.5〜10質量部と場合により触媒の存在で反応させ、
(b)工程(b)からのポリウレタン前付加物を1個、2個又はそれ以上のイソシアネート基に対して反応性のヒドロキシル基及び1個以上の不活性カルボン酸−及び/又はスルホン酸基(これは塩基を用いて部分的にか又は完全にカルボキシレート−又はスルホネート基に変えてもよいし又は既にカルボキシレート−及び/又はスルホネート基の形で存在する)及び分子量100〜1000ダルトンを有する低分子量のアニオン変性可能なポリオール成分(A)(v)2〜20質量部と場合により触媒の存在で反応させ、
(b)工程(b)からのポリウレタン−プレポリマーに、水に分散させる前又はその間に酸基を部分的にか又は完全に中和させるために中和成分(E)2〜20質量部を加え、
(b)工程(b)からの場合により(部分的に)中和したポリウレタン−プレポリマーを、場合によりなお配合成分(F)0〜100質量部を含有する水50〜1500質量部中に分散させ、最後に
(b)工程(b)からの(部分的に)中和したポリウレタン−プレポリマー−分散液を鎖長延長成分(G)3〜60質量部並びに引き続いてか又は同時に連鎖停止成分(H)0〜30質量部と反応させることによって得られる、改良された特性プロフィールを有するエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
成分(A)(i)が、第一及び/又は第二及び/又は第三ヒドロキシル基を有する、エチレンオキシド90〜10質量%及びアルキレンオキシド当たり炭素原子4〜30個を有するその他のアルキレンオキシド10〜90質量%から成る、コポリマー及び/又はランダムコポリマー及び/又はブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン分散液。
【請求項3】
成分(A)(i)が、エチレンオキシド90〜10質量%及びその他のアルキレンオキシド10〜90質量%から成る、第一及び/又は第二及び/又は第三ヒドロキシル基を有する、一官能性アルキル−ポリ−(エチレンオキシド−コ/ランダム−アルキレンオキシド)及び/又はアルキル−ポリ−(エチレンオキシド−ブロック−アルキレンオキシド)及び/又はナトリウムスルホネートプロピル−ポリ−(エチレンオキシド−コ/ランダム−アルキレンオキシド)及び/又はナトリウムスルホネートプロピル−ポリ−(エチレンオキシド−ブロック−アルキレンオキシド)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリウレタン分散液。
【請求項4】
アルキレンオキシドが、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ドデシルオキシド、イソアミルオキシド、オキセタン、置換されたオキセタン、α−ピネンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン又はその他のアルキレンオキシド当たり炭素原子4〜30個を有する脂肪族又は芳香族アルキレンオキシドであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項5】
成分(A)(i)が一官能性ポリアルキレングリコールであり、成分(B)(i)が少なくとも官能性ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項6】
成分(B)(i)が2,4−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート及び2,6−トルエンジイソシアネートから成る異性体混合物又はイソホロンジイソシアネートから成る異性体混合物であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項7】
成分(C)がジエタノールアミンであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項8】
成分(A)(iii)として、分子量500〜5000ダルトンを有する線状又は二官能性ポリアルキレングリコールを使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項9】
成分(A)(iii)が、ポリプロピレングリコール及び/又はABA−、BAB−又は(AB)−構造(その際Aは疎水化作用特性を有するポリマーセグメントを表し、Bはポリプロピレンオキシドをベースとするポリマーセグメントを表す)を有する疎水性変性ブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項10】
ポリマー−セグメントAが、ポリブチレンオキシド、ポリドデシルオキシド、ポリイソアミルオキシド、ポリオキセタン、置換されたポリオキセタン、ポリ−α−ピネンオキシド、ポリスチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、アルキレンオキシド当たり炭素原子4〜30個を有するその他の脂肪族又は芳香族ポリオキシアルキレン、α,ω−ポリメタクリレートジオール、α,ω−ジヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン、マクロモノマー、両端二官能性分子又はそれから成る混合物から成る、請求項9に記載のポリウレタン分散液。
【請求項11】
成分(A)(v)がビスヒドロキシアルカンカルボン酸であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項12】
ビスヒドロキシアルカンカルボン酸としてジメチロールプロピオン酸を使用することを特徴とする、請求項11に記載のポリウレタン分散液。
【請求項13】
工程(a)でNCO/OH−当量比を1.9〜2.1に調整し、工程(a)でNCO/OH+NH−当量比を0.95〜1.05に調整することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項14】
工程(b)で成分(A)(i)、(A)(ii)、(A)(iii)、(A)(iv)、(A)(v)及び(B)(ii)のNCO/OH−当量比を1.25〜2.5の値、有利には1.4〜2.0に調整することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項15】
中和成分(E)が、ポリウレタン−プレポリマーの遊離カルボン酸−及び/又はスルホン酸基に対する中和度が25〜100当量%、有利には50〜100当量%である、ような量で添加することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項16】
鎖長延長成分(G)を、ポリウレタン−プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する鎖長延長度が50〜100当量%、有利には70〜80当量%であるような量で添加することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項17】
連鎖停止成分(H)を、ポリウレタン−プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する連鎖停止度が0〜50当量%、有利には20〜30当量%であるような量で使用することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項18】
成分(A)、(B)、(C)、(E)、(G)及び(H)から成るポリウレタン−ポリマー中でエチレンオキシド基の含量が0.5〜10質量%、有利には2〜5質量%であることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項19】
成分(A)、(B)、(C)、(E)、(G)及び(H)から成るポリウレタン−ポリマー中でカルボキシレート−及び/又はスルホネート基の含量を5〜25meq・(100g)−1、有利には10〜20meq・(100g)−1に調整し、酸価を5〜30meqKOH・g−1、有利には10〜25meqKOH・g−1に調整することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項20】
成分(A)、(B)、(C)、(E)、(G)及び(H)から成るポリウレタン−ポリマーの固体含量をポリウレタン−分散液の全量に対して30〜70質量%、有利には50〜55質量%に調整することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項21】
ミセルの平均粒度が50〜500nm、有利には100〜400nmであることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項22】
平均分子量(数平均)が25000〜500000ダルトンであることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液。
【請求項23】
(a)単一分子量分布を有する親水性及び溶剤不含のマクロモノマー(A)(ii)を、
(a)親水性アルキル−又はアリールポリアルキレングリコール(A)(i)50〜100質量部を、ポリイソシアネート成分(B)(i)1〜100質量部と場合により触媒の存在で溶剤なしに反応させ、その際、反応条件及び成分(A)(i)及び(B)(i)の選択性を、成分(B)(i)のイソシアネート基1個のみが成分(A)(i)と反応するように選択し、引き続き
(a)工程(a)からの均質な前付加物を化合物(C)0.5〜200質量部と溶剤なしに反応させ、その際、反応条件及び成分(C)の選択性を成分(C)の反応基1個のみが前付加物の1個又は数個の遊離イソシアネート基と反応するように選択することによって製造し、
(b)ポリウレタン分散液を、
(b)親水性及び溶剤不含のマクロモノマー(A)(ii)2〜50質量部を、ポリイソシアネート成分(B)(ii)25〜250質量部と場合により溶剤成分(D)0〜50質量部並びに触媒の存在で反応させ、
(b)工程(b)からのポリウレタン前付加物を高分子量ポリオール(A)(iii)50〜100質量部及び場合により低分子量ポリオール成分(A)(iv)0.5〜10質量部と場合により触媒の存在で反応させ、
(b)工程(b)からの均質なポリウレタン前付加物をポリオール成分(A)(v)2〜20質量部と場合により触媒の存在で反応させ、
(b)工程(b)からの均質なポリウレタン−プレポリマーに、水50〜1500質量部に分散させる前又はその間に中和成分(E)2〜20質量部を加え、
(b)工程(b)からの場合により(部分的に)中和したポリウレタン−プレポリマーを、場合によりなお配合成分(F)0〜100質量部を含有する水50〜1500質量部中に分散させ、最後に
(b)工程(b)からの(部分的に)中和したポリウレタン−プレポリマー−分散液を鎖長延長成分(G)3〜60質量部並びに引き続いてか又は同時に連鎖停止成分(H)0〜30質量部と反応させることによって製造することを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載のエレクトロステリックに安定化された水性ポリウレタン分散液の製法。
【請求項24】
反応工程(a)で成分(B)(i)を成分(A)(i)に又は成分(A)(i)を成分(B)(i)に添加することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
反応工程(a)及び(a)を温度10〜30℃で行うことを特徴とする、請求項23に記載の方
【請求項26】
反応工程(b)、(b)及び(b)を温度60から120℃、有利には80〜100℃で行うことを特徴とする、請求項23から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
反応工程(b)及び(b)を温度40〜60℃で行うことを特徴とする、請求項23から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
反応工程(b)を温度30〜50℃で行うことを特徴とする、請求項23から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
反応工程(b)に引き続いて場合によりなお存在する遊離NCO基を水で完全に鎖延長させることを特徴とする、請求項23から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1から22までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液の、
(a)合成樹脂化粧塗り、
(b)ビチューメン材料及びアスファルト並びに
(c)場合により鉱物性結合剤の添加下における断熱複合系の単一成分
の形の液状及びペースト状構造物製品の結合剤としての使用。
【請求項31】
請求項1から22までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液の、
(a)セメント床、床サーフェイサー−及び流展剤用のモルタル添加分散液、
(b)構造物−、タイル−及びWDVS接着剤用のモルタル添加分散液、
(c)2K−パッキングマッド用モルタル添加物としての分散液、
(d)コンクリート修復系用のモルタル添加分散液並びに
(e)コンクリート建造物中の添加物としてのポリマー分散液
の形の鉱物構造物製品の改良成分としての使用。
【請求項32】
請求項1から21までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液の、
(a)ゴム顆粒又は繊維並びに場合により骨材から成る弾性層用の結合剤、
(b)運動場床材の基礎用の接着助剤又は下塗、
(c)場合により構造−充填剤を有する、弾性又は硬質基礎上に塗布するための吹付被覆、
(d)弾性又は硬質基礎上に塗布するための流展被覆、
(e)弾性又は硬質基礎の目塗り用のサーフェイサー、
(f)前もって製造した弾性層の接着用の接着剤、
(g)場合により顔料を有する、シール剤並びに
(h)罫引きインク
の形の、運動場床材及びテニスコート床材用の−場合により鉱物性結合剤を含有する−配合剤中の結合剤としての使用。
【請求項33】
請求項1から22までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液の、
(a)地面−、水泳−又は甲板被膜並びに有利には下塗した建造物表面の吹付被覆又はシール剤、
(b)(場合により防炎)屋根被覆又は屋根塗料並びに
(c)露天−又は地下構造物の建造物の(場合により防炎)パッキング
の形の、亀裂橋かけ作用を有する被覆系用の場合により鉱物性結合剤を含有する配合物中の結合剤としての使用。
【請求項34】
請求項1から22までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液の、場合によりセメントをベースとする水性厚被覆の製造用の結合剤としての使用。
【請求項35】
請求項1から22までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液の、被覆、パッキング、印刷インキ、染料及びラッカー、下塗、接着剤、鉱物性建造物、例えばコンクリート、石膏、セラミック、粘土、セメントの表面用の膜、並びにガラス、ゴム、木及び木材、プラスチック、金属、紙、合成材料の表面用の結合剤としての使用。
【請求項36】
請求項1から22までのいずれか1項に記載のポリウレタン分散液の、本物及び合成皮革並びに紙及びボール紙の被覆用及び合成皮革製造用の結合剤としての使用。
【請求項37】
ポリウレタン分散液を一、二又は多成分系で使用し、その際、その他の成分が配合成分及び/又は硬化剤を含有することができることを特徴とする、請求項30から36までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
ポリウレタン分散液を配合成分及び場合によりその他のポリマーと組み合わせて再分散可能な分散粉末の形で使用することを特徴とする、請求項30から36までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
ポリウレタン分散液を結合剤として、完全に配合された最終生成物に対して0.5〜75質量%の量で使用することを特徴とする、請求項30から36までのいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2006−522190(P2006−522190A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504954(P2006−504954)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003480
【国際公開番号】WO2004/087779
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【Fターム(参考)】