説明

エレクトロルミネセンス材料の精製方法、エレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子

本発明は、Pd、Pを効果的に除去することが可能な精製方法、これを用いたエレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子を提供することを目的とする。本発明は、不純物としてPd及び/又はPを含有するエレクトロルミネセンス材料を、酸化剤で処理した後、カラムで処理することにより、Pd及び/又はPを除去することを特徴とするエレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、エレクトロルミネセンス材料の精製方法、これを用いたエレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子に関するものである。
【背景技術】
エレクトロルミネセンス素子は、例えば、白熱ランプ、ガス充填ランプの代替えとして、大面積ソリッドステート光源用途に注目されている。一方で、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイを置き換えることのできる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されている。特に、素子材料が有機材料によって構成されている有機エレクトロルミネセンス(EL)素子は、低消費電力型のフルカラーFPDとして製品化が進んでいる。中でも、有機材料が高分子材料により構成されている高分子型の有機EL素子は、真空系での成膜が必要な低分子型の有機EL素子と比較して、印刷やインクジェットなどの簡易成膜が可能なため、今後の大画面有機ELディスプレイには、不可欠な素子である。
これまで、高分子型有機EL素子には、共役ポリマー、例えば、ポリ(p−フェニレン−ビニレン)(例えば、国際公開第90/13148号パンフレット参照)および非−共役ポリマー(例えば、I.Sokolikら.,J.Appl.Phys.1993.74,3584参照)のいずれかのポリマー材料が使用されてきた。しかしながら、素子としての発光寿命が低く、フルカラーディスプレイを構築する上で、障害となっていた。
これらの問題点を解決する目的で、近年、種々のポリフルオレン型およびポリ(p−フェニレン)型の共役ポリマーを用いる高分子型有機EL素子が提案されているが、これらも安定性の面では、満足いくものは見出されていない。その原因として、ポリマー中に含まれる不純物、中でもPd又はPの存在が挙げられる。
【発明の開示】
例えば、エレクトロルミネセンス材料として用いられる材料の、Pd触媒を用いた合成反応では、反応後、エレクトロルミネセンス材料中にPdや、Pd触媒に配位子として用いられているPが残存する。PdやPがエレクトロルミネセンス材料中に残存していると、発光特性上の問題として、発光開始電圧の上昇、発光効率の低下、安定性の低下などの問題が発生し易くなる。これらの問題を解決するためには、エレクトロルミネセンス材料の反応後の精製が必要になってくる。一般的なエレクトロルミネセンス材料の精製方法としては、ソックスレー抽出法や再沈殿法などが知られている。しかしながら、これらの方法ではPdやPを除去することは困難であった。
本発明は、これらの問題点を解決するものであって、Pd、Pを効果的に除去することが可能な精製方法、これを用いたエレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子を提供するものである。
即ち本発明は、不純物としてPd及び/又はPを含有するエレクトロルミネセンス材料を、酸化剤で処理した後、カラムで処理することにより、Pd及び/又はPを除去することを特徴とするエレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。
また本発明は、前記エレクトロルミネセンス材料が、Pd触媒を用いて合成されたものである前記エレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。
また本発明は、前記エレクトロルミネセンス材料が、ポリマーもしくはオリゴマーである前記エレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。
また本発明は、前記エレクトロルミネセンス材料が、共役ポリマーもしくはオリゴマーである前記エレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。
また本発明は、前記精製方法により精製されたエレクトロルミネセンス材料に関する。
また本発明は、Pd及びP濃度が各々100ppm以下である前記エレクトロルミネセンス材料に関する。
さらに本発明は、前記エレクトロルミネセンス材料を用いて得られるエレクトロルミネセンス素子に関する。
本発明の開示は、2003年6月5日に出願された特願2003−160762号及び特願2003−160763号に記載の主題と関連しており、それらの開示内容は引用によりここに援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の精製方法は、不純物としてPd及び/又はPを含有するエレクトロルミネセンス材料を、酸化剤で処理した後、カラムで処理することにより、Pd及び/又はPを除去することを特徴とする。酸化剤で処理する方法は、特に限定されず、本発明においては、エレクトロルミネセンス材料を含む溶液と、前記溶液と混和しない酸化剤溶液とを混合し、エレクトロルミネセンス材料を含む溶液を酸化剤溶液で洗浄する方法が好ましく用いられる。
好ましい実施態様として、先ず、Pd及び/又はPを不純物として含有するエレクトロルミネセンス材料を、適当な溶剤に溶解させてエレクトロルミネセンス材料溶液を得る。溶剤としては、エレクトロルミネセンス材料を溶解し、酸化剤と反応せず、水と混ざらないものであれば如何なるものでも使用できるが、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、キシレン、又はこれらの混合溶媒等が好ましい。エレクトロルミネセンス材料の溶解濃度は、溶剤100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲に設定される。溶解温度は、10℃以上使用溶剤の沸点以下に設定されるのが好ましい。得られたエレクトロルミネセンス材料溶液は、必要に応じて濾過し、不溶分を除去することができる。
次いで、得られたエレクトロルミネセンス材料溶液を酸化剤で処理する。具体的には、例えば、エレクトロルミネセンス材料溶液に希酸化剤水溶液を加えて数回、収量、工程数や、精製後のPd濃度を勘案し、好ましくは1〜5回洗浄する。洗浄は、溶液の一般的な洗浄方法によればよく、例えば分液ロートが用いられる。酸化剤水溶液の酸化剤濃度は、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲に設定される。また、酸化剤水溶液は、エレクトロルミネセンス材料溶液に対し、通常1:10〜10:1の容量比で用いられる。本発明においては、酸化剤水溶液による洗浄に続き、水による洗浄を数回、好ましくは1〜5回行ってもよい。
本処理において、エレクトロルミネセンス材料に含まれるPd及び/又はPの極性が変化し、後に行うカラム処理によって分離除去が可能となるものと考えられる。
その後、有機溶剤層を抽出し、ロータリーエバポレーター等で濃縮し、溶剤を取り除き固体(エレクトロルミネセンス材料)を得る。得られた固体(エレクトロルミネセンス材料)を少量の溶剤に溶解し、カラムに通す。溶出液(エレクトロルミネセンス材料溶液)をエバポレーター等により濃縮し、溶剤を取り除く。このようにして精製したエレクトロルミネセンス材料が、水飴状である場合には、減圧乾燥を行っても乾燥され難く、溶剤が残留しやすい。したがって、水飴状のエレクトロルミネセンス材料を、これを溶解する溶剤に再び溶解し、次いで得られた溶液を、エレクトロルミネセンス材料を沈殿させる溶剤中に撹拌しながら滴下し、目的とするエレクトロルミネセンス材料を繊維状に析出させることもできる。エレクトロルミネセンス材料を溶解する溶剤としては上述のものを使用することができ、また、エレクトロルミネセンス材料を沈殿させる溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。
また、本発明の精製方法は、さらに任意の他の工程を含んでいてもよい。
酸化剤としては、エレクトロルミネセンス材料と反応しないものであればよく、水に溶解するものが好ましい。酸化剤として、過酸化物、ペルオキソ酸(塩)などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。具体的には、過酸化水素、OXONE(Dupont社製商品名、過硫酸塩混合物)、過酢酸等を用いることが好ましい。
カラムクロマトグラフィーの充填剤としては、シリカゲル、アルミナ、ジルコニア、チタニア等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、エレクトロルミネセンス材料としては、Pd及び/又はP、好ましくはPd及びPを不純物として含むものであれば如何なるものでも使用できるが、特に、Pd触媒を用いて合成されるエレクトロルミネセンス材料が好ましく、Pを含む化合物が配位したPd触媒を用いて合成されるエレクトロルミネセンス材料がより好ましい。このようなPを含む化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリエチルホスファイト等が挙げられる。
Pd触媒は、Pd(0)錯体であってもよいし、Pd(II)塩であってもよい。Pd触媒の例として、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロライド、テトラキス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム、ビス(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、テトラキス(トリエチルホスファイト)パラジウム等を挙げることができる。
Pd触媒を用いるエレクトロルミネセンス材料の合成法としては、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ビニルと末端オレフィンとを反応させ置換オレフィンを得るHeck反応、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化アルカンと末端アセチレンとを反応させ二置換アセチレンを得る薗頭カップリング反応、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ビニルと有機スズ化合物とを反応させるStilleカップリング反応、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ビニルとホウ素化合物とを反応させる鈴木カップリング反応などが挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明においては、鈴木カップリング反応により合成したエレクトロルミネセンス材料が好ましく用いられる。
本発明においてエレクロトルミネセンス材料は、ポリマーまたはオリゴマーであることが好ましく、共役ポリマーまたはオリゴマーであることがさらに好ましい。また、エレクトロルミネセンス材料の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは100,000以上であり、また、溶媒に溶解した際に撹拌可能な粘度であればよく、好ましくは1,000,000以下である。
本発明において、用語「共役系ポリマー」とは、完全に共役したポリマー、換言すれば、その高分子鎖の全長に亘って共役したポリマー、または、部分的に共役したポリマー、換言すれば、共役した部分と共役していない部分とをともに含んだポリマーのいずれかをいう。用語「共役オリゴマー」についても同様である。
具体的なエレクトロルミネセンス材料としては、主骨格として、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリフェナントレン、ポリピレン等のポリ(アリーレン)またはその誘導体、ポリチオフェン、ポリキノリン、ポリカルバゾール等のポリ(ヘテロアリーレン)またはその誘導体、ポリ(アリーレンビニレン)またはその誘導体、ポリ(アリーレンエチニレン)またはその誘導体を含むポリマーもしくはオリゴマーが挙げられ、また、ユニットとして(即ち、主骨格中の構造だけではなく、側鎖の構造であってもよい)、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ルブレン、ピレン、ペリレン、インデン、アズレン、アダマンタン、フルオレン、フルオレノン、ジベンゾフラン、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、チオフェン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、ノルボルネン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、クマリン、シノリン、キノキサリン、アクリジン、フェナントロリン、フェノチアジン、フラボン、トリフェニルアミン、アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ピコリン酸、シロール、ポルフィリン、イリジウム等の金属配位化合物等又はそれらの誘導体の構造を含むポリマーもしくはオリゴマー等が挙げられる。また、これらの骨格を有する低分子化合物であってもよい。
本発明においては、主骨格として、ポリ(アリーレン)またはその誘導体、ポリ(ヘテロアリーレン)またはその誘導体を含むポリマーもしくはオリゴマーであることが好ましい。また、ユニットとして、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、フルオレン、ジベンゾフラン、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、フラン、チオフェン、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピリジン、トリアジン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントロリン、トリフェニルアミン、アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、イリジウム等の金属配位化合物等またはその誘導体を含むポリマーもしくはオリゴマーであることが好ましい。
また、本発明の精製方法により精製されたエレクトロルミネセンス材料において、Pd含有量が100ppm以下であり、P含有量が100ppm以下であることが好ましく、Pd含有量が50ppm以下であり、P含有量が50ppm以下であることがより好ましい。
本発明の精製方法によって得られるエレクトロルミネセンス材料を使用するエレクトロルミネセンス素子の一般構造は、特に制限はなく、例えば、米国特許第4,539,507号および米国特許第5,151,629号に記載されている。また、ポリマー含有のエレクトロルミネセンス素子については、例えば、国際公開WO第90/13148号または欧州特許公開第0 443 861号に記載されている。
これらは通常、電極の少なくとも1つが透明であるカソードとアノードとの間に、エレクトロルミネセント層(発光層)を含むものである。さらに、1つ以上の電子注入層および/または電子移動層が、エレクトロルミネセント層(発光層)とカソードとの間に挿入され得るもので、さらに、1つ以上の正孔注入層および/または正孔移動層が、エレクトロルミネセント層(発光層)とアノードとの間に挿入され得るものである。カソード材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Mg/Ag、LiFなどの金属または金属合金であるのが好ましい。アノードとしては、透明基体(例えば、ガラスまたは透明ポリマー)上に、金属(例えば、Au)または金属導電率を有する他の材料、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)を使用することもできる。
本発明の精製方法は、発光層に用いられるエレクトロルミネセンス材料に限らず、上記エレクトロルミネセンス素子が通常有する層に用いられるエレクトロルミネセンス材料にも適応することが可能である。
本発明のエレクトロルミネセンス材料の精製方法は、実施例および比較例からも明らかなように、優れた不純物除去効果を示し、優れた発光特性、安定性等を示すエレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子の製造に好適である。
【実施例】
本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
合成例1 ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)の合成
2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(0.4mmol)、化合物(1)で表される9,9−ジオクチルフルオレンのジボロン酸エステル(0.4mmol)、Pd(0)(PPh(0.008mmol)、ジカプリルメチルアンモニウムクロリド(3%)のトルエン溶液に、2MのKCO水溶液を加え、激しく攪拌しながら、窒素下で48時間還流した。

反応混合物を室温まで冷却した後、メタノール−水中に注ぎ、固体を沈殿させた。析出した固体を吸引濾過し、メタノール−水で洗浄することにより、固体を得た。濾取した固体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール−アセトン中に注ぎ、固体を沈殿させた。析出した固体を吸引濾過し、メタノール−アセトンで洗浄することにより、ポリフルオレンを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は800ppm、P含有量は900ppmであった。
なお、ICP発光分析によるPd、Pの定量法は次の通りである。
サンプル約5mgを秤量して、硫酸、硝酸、過塩素酸及びフッ化水素酸を加え加熱分解し、分解物を希王水溶液にて溶解して試料とし、ICP発光分析装置としてセイコーインスツルメンツ(株)製 SPS3000を用いて測定した(以下同様)。
得られたポリマーは、エレクトロルミネセンス材料として用いられる、共役ポリマーのポリフルオレンである。
実施例1 ポリフルオレンの精製(1)
合成例1で得たポリフルオレン(100mg)をトルエン(30mL)に溶解し、1%過酸化水素水(30mL)で3回、続いて水(30mL)で3回洗浄した。得られた有機層をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた固体をトルエンに溶解した後、トルエンを溶離液に用いてシリカゲルカラム(3cm×10cm)を通した。ポリマーを含む溶出液をロータリーエバポレーターで濃縮し溶媒を取り除いた。得られた固体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール−アセトン中に注ぎ、固体を沈殿させた。析出した固体を吸引濾過し、メタノール−アセトンで洗浄することにより、ポリマーを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は30ppm、P含有量は20ppmであった。
実施例2 ポリフルオレンの精製(2)
1%過酸化水素水を1%OXONE水溶液とした以外は、実施例1と同様にして精製した。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は20ppm、P含有量は10ppm以下であった。
比較例1 再沈殿法による精製
合成例1で得たポリフルオレンをトルエンに溶解した後、大量のメタノール−アセトン中に注ぎ、固体を沈殿させた。析出した固体を吸引濾過し、メタノール−アセトンで洗浄することにより、ポリマーを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は800ppmで、P含有量は900ppmで、Pd、Pの除去効果はなかった。
実施例3、4、比較例2 有機EL素子の作製・評価
実施例1、2及び比較例1で得たポリフルオレンのそれぞれのトルエン溶液(1.0wt%)を、ITO(酸化インジウム錫)を2mm幅にパターンニングしたガラス基板上に、乾燥窒素環境下でスピン塗布してポリマー発光層(膜厚70nm)を形成した。次いで、乾燥窒素環境下でホットプレート上で80℃/5分間加熱乾燥した。得られたガラス基板を真空蒸着機中に移し、上記発光層上にLiF(膜厚10nm)、Al(膜厚100nm)の順に電極を形成した。得られたITO/ポリマー発光層/LiF/Al素子を電源に接続し、ITOを陽極、LiF/Alを陰極にして電圧を印加したところ、1cd/mの輝度が得られる発光開始電圧、及び輝度が100cd/mにおける電力効率は表1に示す結果となった。

実施例5〜28 エレクトロルミネセンス材料の精製、エレクトロルミネセンス素子の作製・評価
ポリフルオレンの代わりに、表2に示すエレクトロルミネセンス材料を用いた以外は、実施例2と同様の方法で精製し、実施例3、4と同様の方法で有機EL素子の作製・評価を行ったところ、表2に示す結果が得られた。全ての有機EL素子において、精製前のエレクトロルミネセンス材料を用いた場合と比較して、それぞれ発光開始電圧の低下、電力効率の向上が確認された。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物としてPd及び/又はPを含有するポリマーを、酸化剤で処理した後、カラムで処理することにより、Pd及び/又はPを除去することを特徴とするエレクトロルミネセンス材料の精製方法。
【請求項2】
エレクトロルミネセンス材料が、Pd触媒を用いて合成されたものである請求項1記載のエレクトロルミネセンス材料の精製方法。
【請求項3】
エレクトロルミネセンス材料が、ポリマー又はオリゴマーである請求項1又は2記載のエレクトロルミネセンス材料の精製方法。
【請求項4】
エレクトロルミネセンス材料が、共役ポリマー又はオリゴマーである請求項1〜3いずれか記載のエレクトロルミネセンス材料の精製方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の精製方法により精製されたエレクトロルミネセンス材料。
【請求項6】
Pd及びPの濃度が各々100ppm以下である請求項5記載のエレクトロルミネセンス材料。
【請求項7】
請求項5又は6記載のエレクトロルミネセンス材料を用いたエレクトロルミネセンス素子。

【国際公開番号】WO2004/108800
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506834(P2005−506834)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008147
【国際出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(598101701)マックスデム インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】