説明

エレクトロルミネセント装置の中間層及びエレクトロルミネセント装置

本発明は、単独で利用されてもある程度の光をなお吸収する導電性ポリマーのような基本材料を有する中間層(11)に関する。コロイド粒子(12)と組み合わせられると、この中間層(11)はほぼ完全に透明になる。その中に含まれるコロイド粒子(12)のためにほぼ完全に透明である中間層(11)を備えるエレクトロルミネセント装置は、改善された効率をもち、従って、同じ発光特性に対してはより少ないエネルギーを必要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセント(EL)装置の中間層に関する。
【背景技術】
【0002】
中間層は、正孔(hole,ホール)(正電荷)注入及び/又は正孔輸送層か、又は電子(負電荷)注入及び/又は電子輸送層の何れであってもよく、発光層とともに2つの電極の間に配される。電圧が2つの電極の両端に印加される場合、EL装置は電流の流れのために光を発する。
【0003】
EL装置は、無機半導体材料又は有機材料(OLED:有機発光ダイオード)から構成され得る。
【0004】
従って、ポリマーから成る少なくとも1つの層を有するLEDは、PolyLED即ちPLED(ポリマー発光ダイオード)と呼ばれる。PolyLEDに使用される一般的なポリマーは、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT又はPDOT)であり、これは可視光に対して高度な吸収性をもつ材料である。それゆえ、非常に薄いPolyLED層でさえ、放出光の約5〜10パーセントを吸収する。
【0005】
PolyLEDは、モノクロ又はフルカラーRGB(赤色/緑色/青色)PolyLED装置のディスプレイのために使用される。PolyLEDディスプレイの概略的な構造体が、従来技術に関する図1に示されている。このディスプレイの前方側を形成するガラスパネル1は、構造化されたインジウムスズ酸化物(ITO)電極2を備えている。2つの有機層3,4が、例えば、スピンコーティング又はインクジェット方式でITO電極2に堆積される。ITO電極2に堆積される第1の有機層3は、正電荷担体又は正孔の輸送及び注入のために使用される導電性ポリマーから成る。第2の層4は、電圧が印加されるときに光を発するポリマーから成る。高効率及び良好な寿命スパンを達成するために、通常、PDOT及びPSSポリ(スチレンスルホン酸塩)の混合物を使用する。第3の層5として、カソード金属が放出層4に堆積される。ゲッタ7を有するカバーの蓋6が、接着剤8で構造体に付着されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アノード電極とカソード電極との間に配される、少なくとも1つの発光層とともに、少なくとも1つの正孔(正電荷)又は電子(負電荷)輸送及び/又は注入層を有するエレクトロルミネセント装置の中間層であって、電圧が2つの電極の両端に印加される場合、エレクトロルミネセント装置が光を発し、中間層が可視スペクトル範囲のより少ない光を吸収する中間層を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、可視スペクトル範囲の光の吸収が減少し、同じ発光に対してより少ないエネルギーを使用することにより、改善される効率をもつエレクトロルミネセント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
中間層に関して、この目的は、可視スペクトル範囲の光に対して透明である10−7乃至10−4cmの範囲の粒径をもつコロイド粒子を有する輸送及び/又は注入層によって解決される。コロイド粒子は、塩素処理後(postchlorinated)のポリ塩化ビニル(PC:polyvinyl chloride)若しくはラテックスのような有機材料、又は酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩若しくはホウ酸塩のような無機材料の何れであってもよい。これらの粒子は、製造条件、例えば、PLEDの製造中の処理温度が200℃まで上昇するなどの条件との互換性さえあればよい。
【0009】
有利なことに、コロイド粒子の屈折率が基本材料の屈折率の範囲内にあり、そのため、昼光でのコントラストは最高である。
【0010】
中間層のコロイド粒子は、コロイド性のシリコン二酸化粒子であってもよい。測定の結果は、基本材料が更にシリコン二酸化粒子を有するとき、層構造体から発する光のパーセンテージが増大することを示した。
【0011】
エレクトロルミネセント装置に関して、上記の目的は、基本材料と、更に、コロイド粒子とともに、
可視スペクトル範囲の光を透過するアノード電極及び可視スペクトル範囲の光を反射するカソード電極、
可視スペクトル範囲の光を透過するカソード電極及び可視スペクトル範囲の光を反射するアノード電極、又は、
双方とも可視光を透過するカソード及びアノードと、を有する中間層を備えるEL装置によって解決される。
【0012】
コロイド粒子の存在は、光の高められたアウトカップリング(出力)をもたらす。そのために、EL装置が従来技術と比較して同じ発光をもつ場合、2つの電極の両端に印加される電圧は低減されることができる。
【0013】
エレクトロルミネセント装置のある実施形態によれば、カソード電極は透明であるので光を透過し、薄くそれゆえ透明な銀層を有し、この銀層の上に1つ以上の他の透明な誘電層が堆積される。この装置は、好ましくは、追加的なトランジスタが選択されて個別にアクティブな状態にされたピクセルをもつアクティブマトリックスディスプレイのために使用される。
【0014】
エレクトロルミネセント装置の好ましい実施形態によれば、コロイド粒子の平均粒径は輸送層の厚さの2倍の大きさよりも小さい。なぜならば、この条件下では、この装置の電気特性がほとんど変わらないからである。
【0015】
ある実施形態によれば、エレクトロルミネセント装置は、好ましくは、正孔を輸送し、PDOT又はTPD(Triphenyldiamine derivatives:トリフェニルジアミン誘導体)から作製されるコロイド粒子をもつ輸送層を有する。
【0016】
他の実施形態によれば、エレクトロルミネセント装置は、好ましくは、電子を輸送するコロイド粒子をもつ輸送層を有する。
【0017】
エレクトロルミネセント装置の発光層は、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)のようなポリマー及び/又は溶解処理された有機材料であってもよい。
【0018】
エレクトロルミネセント装置の発光層は、トリ(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)のような真空蒸着された有機材料から作製されてもよい。
【0019】
好ましい実施形態によれば、電荷輸送層は、120nmの大きさ(粒径)をもつ二酸化ケイ素(SiO)粒子の量(質量)の5倍を有するPDOTから構成される。
【0020】
エレクトロルミネセント装置は、モノクロ又はフルカラーアプリケーションの何れかのためのアクティブマトリックスディスプレイ、パッシブマトリックスディスプレイ又は光源として使用されることができる。
【0021】
以下において、本発明は添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図2は、平均粒径が電荷輸送層11の厚さに対応するコロイド粒子12をもつ概略的なディスプレイの断面図を示す。輸送層11は、正電荷又は負電荷の何れでも輸送することができ、この実施例では、ITOアノード10である電極に堆積される。放出(放射)層13が輸送層11に堆積され、この放出層13は、更に、アノード10の突出エッジを覆う。この実施例では、大半がカソード電極14で覆われており、このカソード電極14は、放出層13の大部分及びガラスパネル9の一部を覆う。ガラスパネルは、電子新聞に使用されるような可撓性の透明材料によって置き換えられてもよく、その場合、ガラス粒子が透明プラスチック材料に堆積される。この実施例は、可視光を透過するアノード10及び可視光を反射するカソード14をもつLEDに関する。
【0023】
図3は、平均粒径が電荷輸送層11の厚さの半分の大きさに対応するコロイド粒子12をもつ図2の断面図を示す。
【0024】
図4は、平均粒径が電荷輸送層11の厚さの2倍の大きさに対応するコロイド粒子12をもつ図2の断面図を示す。この大きさまでならば、LEDの電気的な振る舞いに対する影響はほとんど無視できるので、この大きさが最大である。
【0025】
本発明は、単独で利用されてもある程度の光をなお吸収する導電性ポリマーのような基本材料を有する中間層により、概要を述べる。コロイド粒子と組み合わせられると、中間層はほぼ完全に透明になる。その中に含まれるコロイド粒子のためにほぼ完全に透明である中間層を備えるエレクトロルミネセント装置は、改善された効率をもち、それゆえ、同じ発光特性に対してはより少ないエネルギーを必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来技術のPolyLEDディスプレイの概略的な構造を示す図である。
【図2】平均粒径が電荷輸送層の厚さに対応するコロイド粒子をもつ概略的なディスプレイの断面図である。
【図3】平均粒径が電荷輸送層の厚さの半分の大きさに対応するコロイド粒子をもつ図2の断面図である。
【図4】平均粒径が電荷輸送層の厚さの2倍の大きさに対応するコロイド粒子をもつ図2の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極とカソード電極との間に配される、少なくとも1つの発光層と、基本材料を具える少なくとも1つの正孔(正電荷)又は電子(負電荷)輸送及び/又は注入層とを有するエレクトロルミネセント装置のための中間層であって、前記アノード電極及び前記カソード電極の両端に電圧が印加される場合、前記エレクトロルミネセント装置が光を発する中間層において、
前記輸送及び/又は注入層が、更に、コロイド粒子を有することを特徴とする中間層。
【請求項2】
前記コロイド粒子が、有機材料、特に、PC又はラテックスから構成されるグループから選択される有機材料であることを特徴とする、請求項1に記載の中間層。
【請求項3】
前記コロイド粒子が、無機材料、特に、酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩又はホウ酸塩から構成されるグループから選択される無機材料であることを特徴とする、請求項1に記載の中間層。
【請求項4】
前記コロイド粒子の屈折率は、前記基本材料の屈折率の範囲内にあることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の中間層。
【請求項5】
アノード電極が可視スペクトル範囲の光を透過し、カソード電極が前記可視スペクトル範囲の光を反射するか、
前記カソード電極が前記可視スペクトル範囲の光を透過し、前記アノード電極が前記可視スペクトル範囲の光を反射するか、又は
前記カソード電極も前記アノード電極も可視光を透過することを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の中間層を備えるエレクトロルミネセント装置。
【請求項6】
前記カソード電極は、光を透過し、1つ以上の他の透明な誘電層が堆積される薄い銀層を有することを特徴とする、請求項5に記載のエレクトロルミネセント装置。
【請求項7】
コロイド粒子の平均粒径が、輸送層の厚さの2倍の大きさよりも小さいことを特徴とする、請求項5又は6に記載のエレクトロルミネセント装置。
【請求項8】
前記コロイド粒子をもつ前記輸送層が、好ましくは、正孔を輸送し、PDOT又はTPDから構成されるグループから選択される材料で作製されることを特徴とする、請求項5乃至7の何れか一項に記載のエレクトロルミネセント装置。
【請求項9】
前記コロイド粒子をもつ前記輸送層が、好ましくは、電子を輸送することを特徴とする、請求項5乃至7の何れか一項に記載のエレクトロルミネセント装置。
【請求項10】
発光層が、ポリマー及び/又は溶解処理された有機材料であることを特徴とする、請求項5乃至9の何れか一項に記載のエレクトロルミネセント装置。
【請求項11】
前記発光層が、真空蒸着された有機材料から作製されることを特徴とする、請求項5乃至9の何れか一項に記載のエレクトロルミネセント装置。
【請求項12】
モノクロ又はフルカラーアプリケーションの何れかに対するアクティブマトリックスディスプレイ、パッシブマトリックスディスプレイ又は光源としての、請求項5乃至11の何れか一項に記載のエレクトロルミネセント装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−531297(P2007−531297A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505690(P2007−505690)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050978
【国際公開番号】WO2005/096407
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】